以下に添付図面を参照して、ヒータ制御装置の実施の形態について詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明に係るヒータ制御装置を備えた画像形成装置の概略構成を示すブロック図である。実施の形態の画像形成装置100は、図1に示すように、画像を読み取るスキャナ部10と、スキャナ部10で読み取った画像に対して所定の画像処理を施し、処理を施した後の画像に応じたトナー像を転写紙に転写するエンジン部20と、転写紙を格納するための給紙トレイ30と、エンジン部20で転写紙に転写されたトナー像を定着させるための定着装置50とから構成されている。なお、本発明に係るヒータ制御装置は、定着装置50に備えられる。
スキャナ部10では、原稿をスキャン露光することによって、原稿に係る文書情報を画像信号に変換し、当該画像信号をエンジン部20に出力する。
スキャナ部10から画像信号が出力されると、エンジン部20では、スキャナ部10から出力された画像信号に対して、色変換、階調補正などの画像処理を施す。そして、エンジン部20では、画像処理を施した画像に応じて静電潜像を像担持体(不図示)に作像し、作像した静電潜像にトナーを付着してトナー像を形成する。エンジン部20は、さらに、形成したトナー像を給紙トレイ30から搬送路40を介して搬送された転写紙に転写して、当該転写紙を、搬送路40を介して定着装置50に向けて送り出す。
トナー像が転写された転写紙がエンジン部20から搬送路40を介して定着装置50に送り出されると、定着装置50では、円筒状の定着ローラ51aによる熱と加圧ローラ51bによる圧力により、転写紙に転写されているトナー像を定着させて、排紙トレイ(不図示)に向けて排紙する。
図2は、画像形成装置100が備えるヒータ制御装置60の要部構成を示すブロック図である。ヒータ制御装置60は、図2に示すように、定着装置50に備えられて、定着ローラ51aと、ヒータ52と、交流電源53と、トライアック54と、温度センサ55と、制御部56と、ゼロクロス検知部57と、電圧検知部58とを有する。
定着ローラ51aは、加圧ローラ51b(図1)と圧接しながら回転して、転写紙に転写されているトナー像を定着させる。
ヒータ52は、加熱手段の一例であり、定着ローラ51aに内蔵されて、転写紙に転写されているトナー像を熱で溶かし、転写紙の繊維の中に埋め込み定着させる。なお、ヒータ52には、例えば、ハロゲンランプを点灯した際に発生する放射熱によって加熱を行うハロゲンヒータが用いられる。
交流電源53は、ヒータ52に対して交流電圧を供給する。本実施の形態では、時間とともに正弦波状に変化する交流電圧を供給するものとする(図3(a)参照)。
トライアック54は、スイッチング手段であり、交流電源53から供給される交流電圧を、制御部56から指示されたタイミングでスイッチング(オン/オフ)する。そして、トライアック54は、スイッチングされた交流電圧をヒータ52に供給する。なお、トライアック54がオン時には、ヒータ52が通電して発熱する。そして、トライアック54がオフ時には、ヒータ52が非通電となる。
温度センサ55は、温度検知手段の一例であり、定着ローラ51aの表面温度を測定する。温度センサ55は、例えば、温度に応じて抵抗値が変化するサーミスタを内蔵しており、当該サーミスタの抵抗値に基づいて定着ローラ51aの表面温度を測定する。温度センサ55は、定着ローラ51aに内蔵してもよいし、また、温度センサ55を定着ローラ51aの表面に対向する位置に設置して、定着ローラ51aの表面温度を非接触で計測してもよい。
ゼロクロス検知部57は、交流電源53から供給される交流電圧が0ボルトをプラス側からマイナス側、またはマイナス側からプラス側に横切るタイミング(以下、ゼロクロスのタイミングと呼ぶ)を検知する。そして、ゼロクロス検知部57は、ゼロクロスのタイミングを検知した場合に、制御部56に対して、ゼロクロス検知信号を出力する。
電圧検知部58は、交流電源53から供給される交流電圧の電圧値eを検知する。そして、電圧検知部58は制御部56に対して、検知した電圧値eを出力する。
制御部56は、温度センサ55が測定した定着ローラ51aの表面温度と、ゼロクロス検知部57が検知した交流電圧のゼロクロスのタイミングと、電圧検知部58が検知した交流電圧の電圧値eとに基づいて、交流電圧をスイッチングするタイミングを決定する。そして、制御部56は、決定したタイミングに基づいてトライアック54を動作させる。
制御部56は、図2に不図示のCPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、入出力インタフェースとがバスを介して接続されたコンピュータとして実装される。CPUは、ROMが記憶しているプログラムを読み出して実行する。読み出されたプログラムは、実行可能な形式でCPU上に展開されて、必要電圧推定部62と加熱制御部63とを構成する。ROMは、記憶手段の一例であり、前記したプログラムと、ヒータ52が備えるハロゲンランプに供給する電圧パターンを登録した供給電圧テーブル64等を記憶する。
供給電圧テーブル64は、交流電源53がヒータ制御装置60に供給する交流電圧の2周期分、すなわち4半波を1周期として、加熱手段であるヒータ52が備えるハロゲンランプに供給する電圧パターンを記憶する。供給電圧テーブル64は、例えば3種類の異なるテーブル(第1の電圧パターンE1、第2の電圧パターンE2、第3の電圧パターンE3)を記憶する(図3、図4、図5、図6参照)。
また、ヒータ制御装置60の制御部56は、後述する処理(図9参照)を行うことによって、第1の電圧パターンE1、第2の電圧パターンE2、第3の電圧パターンE3に基づいて、図3(b)に記載した供給電圧パターンテーブルV1、および図3(c)に記載した供給電圧パターンテーブルV2に相当する供給電圧パターンテーブルVを作成する。そして、供給電圧テーブル64は、作成された供給電圧パターンテーブルVを記憶する。
また、供給電圧テーブル64は、定着ローラ51aの表面温度と、供給する交流電圧の点灯デューティ比Doとの関係を記憶する。この表面温度と点灯デューティ比Doとの関係は、ヒータ52に供給する電圧パターンの初期値を決定するために用いる。例えば、定着ローラ51aの表面温度が低いときは、点灯デューティ比Doを大きく設定して多くの電力を供給し、表面温度を短時間で上昇させる。また、印刷動作を繰り返し行って定着ローラ51aの表面温度が高くなっているときは、点灯デューティ比Doを小さく設定して供給する電力を少なくする。
さらに、供給電圧テーブル64は、ヒータ制御装置60に所定の電圧パターンを供給した際の高調波マージンを、電圧パターン(E1、E2、E3)毎および位相デューティ比Dp毎に記憶する。高調波マージンとは、電圧パターンを供給した際に発生する高調波電流の最大値が設計目標をどの程度下回っているかの余裕を示す量である。詳しくは後述する。また、位相デューティ比Dpとは、ヒータ制御装置60に電圧の供給を開始するタイミングを示す値である。詳しくは後述する。
必要電圧推定部62は、必要電圧推定手段の一例であり、温度検知手段である温度センサ55の検知結果に基づいて、定着ローラ51aの表面を目標温度まで加熱するために供給する交流電圧を推定する。そして、必要電圧推定部62は、推定した交流電圧に近似する交流電圧パターンを、供給電圧テーブル64の中から選択して読み出す。より詳しくは、必要電圧推定部62が推定した点灯デューティ比Doに対応する交流電圧パターンを、供給電圧パターンテーブルVの中から選択して読み出す。必要電圧推定部62は、供給する交流電圧パターンを選択する際に、例えばヒータ52の消費電力を参照してもよい。すなわち、消費電力の大きいヒータ52を使用する際には、高調波電流に対して有利な電圧パターンを選択するのが望ましい。
また、必要電圧推定部62は、供給電圧テーブル64の中から選択した交流電圧パターンを、高調波電流に対して有利になるように、必要に応じて調節する。電圧パターンの具体的な調節方法について、詳しくは後述する(図7参照)。
加熱制御部63は、加熱制御手段の一例であり、必要電圧推定部62が推定結果に基づいて供給電圧テーブル64から読み出した供給電圧パターンテーブルVに対応する交流電圧をヒータ52に供給することによって、定着ローラ51aの表面温度を制御する。
(供給電圧テーブルの説明)
次に、記憶手段であるROMが記憶する供給電圧テーブル64の内容について、図3、図4、図5、図6を用いて説明する。
図3は、供給電圧テーブル64が記憶する供給電圧パターンテーブルVの一例を示す図であり、図3(a)は、図2に示した交流電源53が供給する電圧パターンの諸元を示す図である。図3(b)は規定の電源インピーダンスを想定した際の供給電圧パターンテーブルV1の一例を示す図である。図3(c)は、電圧検知部58(図2)が実際に検知した交流電圧に基づいて算出した電源インピーダンスを考慮した供給電圧パターンテーブルV2の一例を示す図である。
供給電圧テーブル64は、交流電源53が供給する交流電圧の4半波を1周期として記述されている。図3(a)は、供給電圧テーブル64の記述内容を説明するために必要な諸元を示す。
交流電源53が供給する電圧値eは、波高値e0を有する周期Tの正弦波で記述されるものとする。そして、時間経過順に連続した交流電圧の4半波を構成する4つの半波領域を、図3(a)に示すように、時間経過順に第1半波領域a、第2半波領域b、第3半波領域c、第4半波領域dとする。すなわち、時刻をtとしたとき、第1半波領域aは0≦t<T/2の時間範囲を表す。同様に、第2半波領域bはT/2≦t<Tの時間範囲を表し、第3半波領域cはT≦t<3T/2の時間範囲を表し、第4半波領域dは3T/2≦t<2Tの時間範囲を表す。本実施の形態のヒータ制御装置60は、図3(a)に示す4半波、すなわち2Tを制御周期として、ヒータ52が備えるハロゲンランプに供給する交流電圧を制御する。例えば、交流電源53として50Hzの100V商用交流電源を用いる場合には、制御周期は2T=40msecとなる。
図3(b)、図3(c)に示す供給電圧パターンテーブルV1、V2は、点灯デューティ比Doと、位相デューティ比Dp(Dpa、Dpb、Dpc、Dpd)とを定義したテーブルである。点灯デューティ比Do(0≦Do≦100%)は、交流電源53が制御周期2Tに亘って供給する電圧のうち何%が、ヒータ52が備えるハロゲンランプに供給されるかを示す。すなわち、例えば点灯デューティ比Do=50%とは、図3(a)に示す制御周期2Tの正弦波と電圧値e=0とがなす面積のうち、50%の面積に相当する時間に亘って交流電圧が供給される(電力が供給される)ことを表す。
また、位相デューティ比Dp(0≦Dp≦100%)は、各半波領域a、b、c、dにおける交流電圧の供給継続時間を、半波領域の時間間隔(図3(a)におけるT/2)に対する割合で示した値である。すなわち、位相デューティ比Dpは、各半波領域(a、b、c、d)に対してそれぞれ定義される。ここでは、半波領域a、b、c、dにおける位相デューティ比Dpを、それぞれDpa、Dpb、Dpc、Dpdとする。例えば、位相デューティ比Dpa=20%とは、第1半波領域aにおいて、第1半波領域aの時間間隔T/2の20%の時間、すなわち、時刻t=2T/5に電圧の供給を開始して、時刻t=T/2に至るまで、T/10の時間に亘って交流電圧の供給を継続することを表す。これを図3(a)に図示すると、領域Rで示す波形の電圧を供給することを示す。位相デューティ比Dpb、Dpc、Dpdについても同様に定義される。なお、電圧の供給を開始するタイミングは、前述したように時刻で指定する他に、交流電源53が供給する正弦波状の交流電圧の位相角で指定してもよい。
交流電源53の内部抵抗である電源インピーダンスZは0ではなく、所定の値を有する。したがって、図2の回路に通電すると、交流電源53が有する電源インピーダンスZに応じた電圧降下が発生する。そのため、交流電源53が波高値e0を有している場合であっても、実際にヒータ52に供給される交流電圧波形の波高値は
e0よりも小さくなる。すなわち、所定の電力をヒータ52に供給しようとした場合には、当該所定の電力よりも高い電力を供給する必要がある。したがって、電源インピーダンスZを0と仮定したときに算出される位相デューティ比Dpよりも高い位相デューティ比Dpの電圧を供給する必要がある。
図3(b)は、交流電源53が規定の電源インピーダンスZを有する場合にヒータ52に供給する供給電圧パターンテーブルV1の一例である。また、図3(c)は、電圧検知部58(図2)が検知した電圧に基づいて算出した電源インピーダンスZに基づいて設定した供給電圧パターンテーブルV2の一例である。なお、電源インピーダンスZは、電圧検知部58が検知した電圧ΔVとヒータ52に流れる電流Iとに基づいて、Z=ΔV/Iによって算出される。このように、本実施の形態では、予めヒータ52に交流電圧を供給して電源インピーダンスZを測定し、電源インピーダンスZに対応した電圧パターンを作成して、供給電圧テーブル64として記憶しておく。なお、画像形成装置100は、供給電圧テーブル64に、電源インピーダンスZに応じて複数の供給電圧パターンテーブルVを予め記憶しておいてもよい。この場合、画像形成装置100は、測定された電源インピーダンスZに対応した供給電圧パターンテーブルVを選択して読み出す。
次に、図4(a)〜図4(c)は、それぞれ、供給電圧テーブル64が記憶する、交流電源53がヒータ制御装置60に供給する交流電圧の2周期分、すなわち4半波を1周期とした基準となる電圧パターンを、前述した図3(b)、図3(c)と同じフォーマットでテーブル化した図である。図4(a)は第1の電圧パターンE1を示す。図4(b)は第2の電圧パターンE2を示す。そして、図4(c)は第3の電圧パターンE3を示す。第1の電圧パターンE1、第2の電圧パターンE2、第3の電圧パターンE3は、それぞれ、供給電圧パターンテーブルVと同じフォーマット、すなわち、点灯デューティ比Doと位相デューティ比Dpとの関係で記述される。なお、第1の電圧パターンE1、第2の電圧パターンE2、第3の電圧パターンE3の内容については後述する。
そして、図5(a)〜図5(c)は、それぞれ、第1の電圧パターンE1、第2の電圧パターンE2、第3の電圧パターンE3をグラフ化した図である。
例えば、図5(a)は、第1の電圧パターンE1を、横軸を点灯デューティ比Do、縦軸を位相デューティ比Dpとして表したものである。以下、図5(a)〜図5(c)を用いて、第1の電圧パターンE1、第2の電圧パターンE2、第3の電圧パターンE3について説明する。
第1の電圧パターンE1は、制御周期2Tの中で加熱手段であるヒータ52に供給する電力の増加に応じて、4半波領域の中の任意の1半波領域から順に位相デューティ比Dpを増加させる(各半波領域において電圧の供給を開始する時刻を前倒しする)電圧パターンである。
第1の電圧パターンE1は、時間経過順に連続した第1半波領域a、第2半波領域b、第3半波領域c、第4半波領域dのそれぞれにおいて、以下のように定義される。すなわち、点灯デューティ比Doが25%以下である場合には、第1半波領域aの位相デューティ比Dpaを、点灯デューティ比Doに応じて0%から100%に設定する(図5(a)の区間Q1)。そして、第2半波領域b、第3半波領域cおよび第4半波領域dの位相デューティ比Dpb、Dpc、Dpdを、ともに0%に設定する(図5(a)の区間Q2)。なお、交流電源53から供給される電圧値eは正弦波状に変化するため、位相デューティ比Dpaは、区間Q1において、点灯デューティ比Doに対して非線形に単調増加する。後述する区間Q4、Q7、Q10についても同様である。
また、第1の電圧パターンE1は、点灯デューティ比Doが25%よりも大きく50%以下である場合には、第1半波領域aの位相デューティ比Dpaを100%に設定する(図5(a)の区間Q3)。そして、第1半波領域aに隣接しない第3半波領域cの位相デューティ比Dpcを、点灯デューティ比Doに応じて0%から100%に設定する(図4(a)の区間Q4)。さらに、第2半波領域bおよび第4半波領域dの位相デューティ比Dpb、Dpdを、ともに0%に設定する(図5(a)の区間Q5)。
さらに、第1の電圧パターンE1は、点灯デューティ比Doが50%よりも大きく75%以下である場合には、第1半波領域aおよび第3半波領域cの位相デューティ比Dpa、Dpcを、ともに100%に設定する(図5(a)の区間Q6)。そして、第2半波領域bの位相デューティ比Dpbを、点灯デューティ比Doに応じて0%から100%に設定する(図5(a)の区間Q7)。さらに、第4半波領域dの位相デューティ比Dpdを0%に設定する(図5(a)の区間Q8)。
第1の電圧パターンE1は、点灯デューティ比Doが75%よりも大きい場合には、第1半波領域a、第3半波領域cおよび第2半波領域bの位相デューティ比Dpa、Dpc、Dpbを、ともに100%に設定する(図5(a)の区間Q9)。そして、第2半波領域bに隣接しない第4半波領域dの位相デューティ比Dpdを、点灯デューティ比Doに応じて0%から100%に設定する(図5(a)の区間Q10)。
次に、図5(b)に示す第2の電圧パターンE2は、点灯デューティ比Doと、位相デューティ比Dp(Dpa、Dpb、Dpc、Dpd)とを、図5(a)とは別の関係で定義したテーブルである。
第2の電圧パターンE2は、制御周期2Tの中で加熱手段であるヒータ52に供給する電力の増加に応じて、4半波領域の中の隣接しない2つの半波領域に対してそれぞれ等しく与える位相デューティ比Dp(通電時間)をともに増加させる電圧パターンである。
すなわち、図5(b)に示すように、第2の電圧パターンE2は、時間経過順に連続した各半波領域において、点灯デューティ比Doが50%以下である場合には、第1半波領域aおよび第1半波領域aに隣接しない第3半波領域cの位相デューティ比Dpa、Dpcを、点灯デューティ比Doに応じて0%から100%に設定する(図5(b)の区間Q11)。そして、第2半波領域bおよび第2半波領域bに隣接しない第4半波領域dの位相デューティ比Dpb、Dpdを、ともに0%に設定する(図5(b)の区間Q12)。なお、交流電源53から供給される電圧値eは正弦波状に変化するため、位相デューティ比Dpa、Dpcは、区間Q11において、点灯デューティ比Doに対して非線形に単調増加する。後述する区間Q14についても同様である。
また、第2の電圧パターンE2は、点灯デューティ比Doが50%よりも大きい場合には、第1半波領域aおよび第1半波領域aに隣接しない第3半波領域cの位相デューティ比Dpa、Dpcを、ともに100%に設定する(図5(b)の区間Q13)。そして、第2半波領域bおよび第2半波領域bに隣接しない第4半波領域dの位相デューティ比Dpb、Dpdを、点灯デューティ比Doに応じて0%から100%に設定する(図5(b)の区間Q14)。
さらに、図5(c)に示す第3の電圧パターンE3は、点灯デューティ比Doと、位相デューティ比Dp(Dpa、Dpb、Dpc、Dpd)とを図5(a)、(b)とは別の関係で定義したテーブルである。
第3の電圧パターンE3は、制御周期2Tの中で加熱手段であるヒータ52に供給する電力の増加に応じて、4半波領域の全ての半波領域に対してそれぞれ等しく与える位相デューティ比Dp(通電時間)をともに増加させる電圧パターンである。
すなわち、図5(c)に示すように、第3の電圧パターンE3は、時間経過順に連続した各半波領域において、位相デューティ比Dp(Dpa、Dpb、Dpc、Dpd)を、点灯デューティ比Doに応じて、0%から100%に設定する(図5(c)の区間Q15)。そして、各位相デューティ比(Dpa、Dpb、Dpc、Dpd)は、それぞれ等しい値に設定される。なお、交流電源53から供給される電圧値eは正弦波状に変化するため、位相デューティ比Dpa、Dpb、Dpc、Dpdは、区間Q15において、点灯デューティ比Doに対して非線形に単調増加する。
続いて、図6は、第1の電圧パターンE1、第2の電圧パターンE2、第3の電圧パターンE3の一例を、それぞれ模式化して表した図である。
図6に示すように、第1の電圧パターンE1は、点灯デューティ比Doが25%以下である場合(電圧波形W11)には、第1半波領域aにおいて、交流電源波形の1半波内の任意の位相において電圧供給のON/OFFを切り換える位相制御を行う。なお、第1半波領域aにおいて位相制御を行うのは一例であって、他の任意の半波領域の1つにおいて位相制御を行っても構わない。
そして、点灯デューティ比Doが25〜50%の場合(電圧波形W12)には、第1半波領域aの全域に亘って電圧(交流電圧)を供給するとともに、第1半波領域aに隣接しない第3半波領域cにおいて、供給する電圧を位相制御で制御する。なお、全域に亘って電圧を供給する半波領域は、図6の電圧波形W11において、位相制御を行った半波領域とする。例えば、電圧波形W11において第2半波領域bにおいて位相制御を行った場合には、電圧波形W12において、第2半波領域bの全域に亘って電圧を供給するとともに、第2半波領域bに隣接しない第4半波領域dにおいて位相制御を行う。
さらに、点灯デューティ比Doが50〜75%の場合(電圧波形W13)には、第1半波領域a、第3半波領域cの全域に亘って電圧を供給するとともに、第2半波領域bにおいて、供給する電圧を位相制御で制御する。
そして、点灯デューティ比Doが75〜100%の場合(電圧波形W14)には、第1半波領域a、第2半波領域b、第3半波領域cの全域に亘って電圧を供給するとともに、第2半波領域bに隣接しない第4半波領域dにおいて、供給する電圧を位相制御で制御する。
第2の電圧パターンE2は、点灯デューティ比Doが0〜50%の場合(電圧波形W21、W22)には、第1半波領域a、および第1半波領域aに隣接しない第3半波領域cにおいて、供給する電圧を位相制御で制御する。そして、点灯デューティ比Doが50〜100%の場合(電圧波形W23、W24)には、第1半波領域a、第3半波領域cの全域に亘って電圧を供給するとともに、第2半波領域b、および第2半波領域bに隣接しない第4半波領域dにおいて、供給する電圧を位相制御で制御する。
第3の電圧パターンE3は、第1半波領域a〜第4半波領域dの全てにおいて、点灯デューティ比Doによらずに、供給する電圧を位相制御で制御する(電圧波形W31、W32、W33、W34)。
なお、各半波領域における電圧の供給開始のタイミングは、ゼロクロス検知部57(図2)が検知した交流電圧のゼロクロスのタイミングと、各半波領域の位相デューティ比Dpの値を当該半波領域における時間に換算した通電時間toとを用いて、加熱制御部63が決定する。具体的には、交流電圧のゼロクロスのタイミングを基準として、そこから10msec−toだけ経過した時刻に電圧の供給を開始する。ここで、10msecは、50Hzの商用交流電源を用いた場合に、位相デューティ比Dp=100%に対応する1半波領域の時間である。
図6に示した3つの電圧パターン(第1の電圧パターンE1、第2の電圧パターンE2、第3の電圧パターンE3)を比較すると、フリッカの発生を抑制するという観点では、突入電流が最も小さい第3の電圧パターンE3が最も適している。そして、第2の電圧パターンE2、第1の電圧パターンE1の順に突入電流が大きくなるため、フリッカの発生を抑制する効果が小さくなる。
また、高調波電流の発生を抑制するという観点では、3つの電圧パターンの中で高調波成分が最も少ない第1の電圧パターンE1が最も適している。そして、第2の電圧パターンE2、第3の電圧パターンE3の順に高調波成分が多くなるため、高調波電流の発生を抑制する効果が小さくなる。このように、ヒータ52に供給する電圧パターンを選択することによって、フリッカの発生の抑制と、高調波電流の発生の抑制とを選択的に行うことができる。
さらに、必要電圧推定部62(図2)は、第3の電圧パターンE3を調節することによって、高調波電流の発生を抑制させることができる。図7は、その方法について説明する図である。
図7に示すように、必要電圧推定部62は、第3の電圧パターンE3の出力電力を一定に保ったまま、すなわち、制御周期2T内のハッチングの総面積を変えないように(点灯デューティ比Doを維持したまま)、各半波領域の位相デューティ比Dpを調節することによって、高調波電流の発生を抑制させることができる。この操作は、例えば、第2半波領域bおよび第4半波領域dの位相デューティ比Dpb、Dpdをそれぞれ小さく調節(例えば−1%)して、第1半波領域aおよび第3半波領域cの位相デューティ比Dpa、Dpcをそれぞれ大きく調節(例えば+1%)することによって実現される。なお、位相デューティ比Dpを小さく調節することは、電圧の供給を開始する時刻を遅くすること、または、電圧の供給を開始する位相角を大きくすることによって実現できる。逆に、位相デューティ比Dpを大きく調節することは、電圧の供給を開始する時刻を早くすること、または、電圧の供給を開始する位相角を小さくすることによって実現できる。なお、図7において、第1半波領域aおよび第3半波領域cの位相デューティ比Dpa、Dpcをそれぞれ小さく調節して、第2半波領域bおよび第4半波領域dの位相デューティ比Dpb、Dpdをそれぞれ大きく調節しても、同様の効果が得られる。
このように、制御周期2T内の各半波領域において、高調波成分が多い、小さい位相デューティ比Dpを有する半波領域の数を少なくすることによって、高調波電流の発生を抑制させることができる。そのため、フリッカの発生を抑制できる効果が高い第3の電圧パターンE3を用いて、さらに高調波電流の発生も抑制することができる。
(ヒータ制御装置が行う一連の処理の流れの説明)
次に、ヒータ制御装置60の制御部56(図2)が行う一連の処理の流れについて、図8を用いて説明する。図8は、ヒータ制御装置60が行う一連の処理の流れを示すフローチャートである。
必要電圧推定部62は、ヒータ52に供給する電圧パターンの初期値を決定する電圧パターン決定処理を行う(ステップS10)。なお、電圧パターン決定処理の詳細は後述(図9参照)する。ここで、ステップS10で行う電圧パターン決定処理は、画像形成装置100に代わって、画像形成装置100と接続された外部装置で実行してもよい。この場合、外部装置は、複数の供給電圧パターンテーブルVを予め取得して記憶しておく。そして、外部装置は、画像形成装置100が測定した電源インピーダンスZに基づいて、電源インピーダンスZに対応した供給電圧パターンテーブルVを選択して読み出してもよい。
続いて、加熱制御部63は、プリント開始時、定常状態時、プリント終了時等、画像形成装置100の所定の動作状態を検出して、ヒータ52に供給する電圧パターンを切り換える電圧パターン切換処理を行う(ステップS12)。なお、電圧パターン切換処理の詳細は後述(図10参照)する。
続いて、ステップS14において、制御部56は、画像形成装置100の電源がオフになったかを確認する。画像形成装置100の電源がオフであるとき(ステップS14:Yes)は、ヒータ制御装置60は、図8の処理を終了する。一方、画像形成装置100の電源がオフでないとき(ステップS14:No)は、ステップS10に戻る。
(電圧パターン決定処理の流れの説明)
次に、必要電圧推定部62(図2)が、ヒータ52に供給する電圧パターン(E1、E2、E3)を決定する電圧パターン決定処理の流れについて、図9を用いて説明する。図9は、必要電圧推定部62(図2)が行う電圧パターン決定処理の流れを示すフローチャートである。以下、各ステップで行われる処理の内容について順を追って説明する。
必要電圧推定部62は、ヒータ52に供給する電圧パターンを、点灯デューティ比Doを0%から100%まで所定値ずつ増加させながら決定する。なお、図9では、点灯デューティ比Doを1%ずつ増加させるものとする。まず、必要電圧推定部62は、点灯デューティ比Doを0%に設定する(ステップS28)。
次に、必要電圧推定部62は、図6の中でフリッカの低減効果が最も高い電圧パターンE3を設定する(ステップS30)。なお、ステップS30において設定した電圧パターンを、以後、初期波形と呼ぶ。
次に、必要電圧推定部62は、ステップS30において設定した初期波形を、位相デューティ比Dpの調節を行わず、すなわち、Dpa=Dpb=Dpc=Dpdの状態でヒータ52に供給した場合に、高調波マージンが設計目標を上回っているかを判定する(ステップS32)。高調波マージンが設計目標を上回っていると判定されたとき(ステップS32:Yes)はステップS34に進み、それ以外のとき(ステップS32:No)はステップS36に進む。
なお、高調波マージンが設計目標を上回るとは、高調波の各次数の電流の最大値が、規格値に対して所定のマージンを有し(例えば規格値の85%以下)、なおかつ、その他次数の電流の最大値が規格値に対して所定のマージンを有する(例えば規格値の50%以下)等、予め設定した設計目標を達成することを指す。なお、ステップS32で行う判定処理は、具体的には、前述したように、ヒータ制御装置60に所定の電圧パターン(E1、E2、E3)および所定の位相デューティ比Dpの電圧を供給した際の高調波マージンを予め実験等によって求めて供給電圧テーブル64に記憶しておき、当該テーブルを参照することによって行う。
ステップS32において、高調波マージンが設計目標を上回っていると判定されたときに、加熱制御部63は、ステップS30で設定した初期波形を、位相デューティ比Dpの調節なしにヒータ52に供給する設定とする(ステップS34)。その後、ステップS46に進む。
一方、ステップS32において、高調波マージンが設計目標を上回っていないと判定された場合(ステップS32:No)には、必要電圧推定部62は、ステップS30で設定した初期波形に対して、点灯デューティ比Doを維持したまま位相デューティ比Dpを調節して(図7参照)ヒータ52に供給した場合に、高調波マージンが設計目標を上回っているかを判定する(ステップS36)。高調波マージンが設計目標を上回っていると判定されたとき(ステップS36:Yes)はステップS38に進み、それ以外のとき(ステップS36:No)はステップS40に進む。
なお、ステップS36で行う位相デューティ比Dpの調節は、例えば、第1半波領域aの位相デューティ比Dpaと、第1半波領域aに隣接しない第3半波領域cの位相デューティ比Dpcと、をそれぞれ1%ずつ増加させて、第2半波領域bの位相デューティ比Dpbと、第2半波領域bに隣接しない第4半波領域dの位相デューティ比Dpdと、をそれぞれ1%ずつ減少させて、高調波マージンの大きさの評価を繰り返すことによって実行する。
ステップS36において、高調波マージンが設計目標を上回っていると判定されたとき(ステップS36:Yes)に、加熱制御部63は、ステップS30で設定した初期波形に対して位相デューティ比Dpを調節した電圧をヒータ52に供給する設定とする(ステップS38)。その後、ステップS46に進む。
一方、ステップS36において、高調波マージンが設計目標を上回っていない(ステップS36:No)と判定された場合には、必要電圧推定部62は、ステップS30で設定した初期波形と同じ点灯デューティ比Doを有する第2の電圧パターンE2をヒータ52に供給した場合に、高調波マージンが設計目標を上回っているかを判定する(ステップS40)。高調波マージンが設計目標を上回っていると判定されたとき(ステップS40:Yes)はステップS42に進み、それ以外のとき(ステップS40:No)はステップS44に進む。なお、ステップS40で行う判定処理は、前述したステップS32、S36と同様に行う。
ステップS40において、高調波マージンが設計目標を上回っていると判定されたとき(ステップS40:Yes)に、加熱制御部63は、第2の電圧パターンE2をヒータ52に供給する設定とする(ステップS42)。その後、ステップS46に進む。
一方、ステップS40において、高調波マージンが設計目標を上回っていないと判定された場合(ステップS40:No)には、加熱制御部63は、ステップS30で設定した初期波形と同じ点灯デューティ比Doを有する第1の電圧パターンE1をヒータ52に供給する設定とする(ステップS44)。その後、ステップS46に進む。
必要電圧推定部62は、全ての点灯デューティ比Doに対応する電圧パターンの設定を完了したかを判定する(ステップS46)。全ての点灯デューティ比Doに対応する電圧パターンの設定を完了したとき(ステップS46:Yes)、すなわち、点灯デューティ比Do=0〜100%に対応する電圧パターンの設定が完了したときは、図9の処理を終了してメインルーチン(図8)に戻る。一方、全ての点灯デューティ比Doに対応する電圧パターンの設定を完了していないとき(ステップS46:No)は、ステップS48に進む。
点灯デューティ比Doを1%加算する(ステップS48)。その後、ステップS30に戻り、前述した処理を繰り返す。なお点灯デューティ比Doの加算量は1%に限定されるものではなく、設計パラメータとして適宜設定してよい。
(電圧パターン切換処理の流れの説明)
加熱制御部63(図2)は、前述した電圧パターン決定処理で決定した電圧パターンを、定着装置50の動作状態に基づいて適宜切り換える電圧パターン切換処理を行う。図10を用いて、この電圧パターン切換処理の流れについて説明する。図10は、電圧パターン切換処理の流れを示すフローチャートである。以下、各ステップで行われる処理の内容について順を追って説明する。
加熱制御部63は、ヒータ52に対して電圧の供給を開始するかを判断する(ステップS50)。ヒータ52に対して電圧の供給を開始する場合(ステップS50:Yes)はステップS52に進み、それ以外の場合(ステップS50:No)はステップS50を繰り返す。加熱制御部63は、例えば、画像形成装置100に対して印刷開始の指示があるとともに、電圧パターン決定処理(図9)が完了したことに基づいて、電圧の供給を開始すると判定する。
加熱制御部63は、ヒータ52に供給する電圧を、初期波形に至るまで徐々に増加させるソフトスタート処理を開始する(ステップS52)。なお、ソフトスタート処理の詳細については後述する(図11参照)。
加熱制御部63は、ヒータ52に対して、ソフトスタート処理を行うための電圧波形を供給する(ステップS54)。
加熱制御部63は、ソフトスタート処理を終了するかを判断する(ステップS56)。ソフトスタート処理を終了するとき(ステップS56:Yes)はステップS58に進み、それ以外のとき(ステップS56:No)はステップS54に戻る。なお、加熱制御部63は、ソフトスタート処理を行う際に、位相デューティ比Dpの変更回数に基づいて、ソフトスタート処理を終了するかを判定する。詳しくは後述する(図11参照)。
加熱制御部63は、ヒータ52に、電圧パターン決定処理(図9)で決定した電圧パターンを供給する(ステップS58)。
加熱制御部63は、供給する電圧パターンの点灯デューティ比Doの変動量が所定値以内で、なおかつ電圧供給時間が許容制御周期Taを超えたかを判定する(ステップS60)。点灯デューティ比Doの変動量が所定値以内であって、なおかつ電圧供給時間が許容制御周期Taを超えたとき(ステップS60:Yes)はステップS62に進み、それ以外のとき(ステップS60:No)はステップS58に戻る。ここで、許容制御周期Taとは、定着装置50に印刷媒体を通した際に、印刷媒体が定着ローラ51aを通過するのに要する時間、すなわち、印刷媒体が定着ローラ51aに接触している時間である。
ステップS60において、電圧供給時間が許容制御周期Taを超えたかを判定するのは、初期波形をヒータ52に連続的に供給する場合には、高調波電流の時間平均値が増加することによって高調波電流の影響が発生する可能性があるためである。すなわち、許容制御周期Taを超えて初期波形の供給を続ける際には、より高調波成分が少ない電圧波形を供給するのが望ましいため、ステップS60において、電圧供給時間が許容制御周期Taを超えたと判定されたときには、電圧パターンの切り換えを行う。
なお、ヒータ52を連続的に点灯した際に、電圧波形の点灯デューティ比Doはほぼ一定に保たれるが、場合によっては多少ばらつく。このばらつきの許容量を許容変動デューティと定める。そして、前述したステップS60では、電圧波形の点灯デューティ比Doが、許容変動デューティ以内であるかを併せて判定する。
ステップS60において、電圧波形の点灯デューティ比Doの変動量が所定値以内で、なおかつ電圧供給時間が許容制御周期Taを超えたと判定されたとき(ステップS60:Yes)、加熱制御部63は、供給電圧テーブル64が記憶する第1の電圧パターンE1を選択する(ステップS62)。なお、ステップS62で第1の電圧パターンE1を選択するのは、高調波電流の影響がより少ない電圧パターンに切り換えるためである。
一方、ステップS60において、電圧波形の点灯デューティ比Doの変動量が所定値以内で、なおかつ電圧供給時間が許容制御周期Taを超えたと判定されないとき(ステップS60:No)は、ステップS58に戻る。
加熱制御部63は、ヒータ52に対して、ステップS62で選択した第1の電圧パターンE1を、必要電圧推定部62が推定した点灯デューティ比Doに基づいて供給する(ステップS64)。
ステップS64に続いて、加熱制御部63は、プリントが終了したかを判定する(ステップS66)。プリントが終了したと判定される(ステップS66:Yes)と、ステップS68に進み、それ以外のとき(ステップS66:No)はステップS64に戻る。なお、プリントが終了したかの判定は、例えば、プリント枚数がプリント開始時に設定した設定枚数に達したことを検知して行えばよい。あるいは、枚数設定のないプリント作業の場合には、印刷媒体が定着ローラ51aを通過した後で所定時間経過したこと等を検知して行えばよい。
ステップS66において、プリントが終了したと判定される(ステップS66:Yes)と、加熱制御部63は、ヒータ52に供給する電圧を徐々に減少させるソフトストップ処理を開始する(ステップS68)。なお、ソフトストップ処理の詳細については後述する(図12参照)。
加熱制御部63は、ヒータ52に対して、ソフトストップ処理を行うための電圧波形を供給する(ステップS70)。
続いて、加熱制御部63は、ソフトストップ処理を終了するかを判断する(ステップS72)。ソフトストップ処理を終了するとき(ステップS72:Yes)は、図10の処理を終了してメインルーチン(図8)に戻る。一方、ソフトストップ処理を終了しないとき(ステップS72:No)はステップS70に戻る。なお、加熱制御部63は、ソフトストップ処理を行う際に、位相デューティ比Dpの変更回数に基づいて、ソフトストップ処理を終了するかを判定する。詳しくは後述する(図12参照)。
(ソフトスタート処理の説明)
次に、図11を用いて、ソフトスタート処理の概要について説明する。図11は、ソフトスタート処理の概要を示す図である。制御部56がソフトスタート処理を行う際には、加熱制御部63は、ヒータ52に第2の電圧パターンE2または第3の電圧パターンE3を供給する。
図11において、時刻t0から時刻t8の間は、第3の電圧パターンE3を用いてソフトスタート処理を行う様子を示している。ソフトスタート処理が開始されると、加熱制御部63は、1周期目(最初の4半波期間)には点灯デューティ比Do=20%に基づいて決定する第3の電圧パターンE3を供給する(t=t0〜t4)。そして、2周囲目(2回目の4半波期間)には、点灯デューティ比Do=40%に基づいて決定する第3の電圧パターンE3を供給する(t=t4〜t8)。なお、1周期目と2周期目の点灯デューティ比Doの変更幅(図11の例では+20%)は、予め設定した変動量上限値内で適宜設定すればよい。また、ソフトスタート処理を何周期に亘って行うかも適宜設定すればよい。
このように、ソフトスタート処理を行ってヒータ52に供給する電圧を徐々に増加させることにより、ヒータ52への通電開始時に大きな突入電流が発生するのを防止することができるため、フリッカの発生を抑制することができる。
ソフトスタート処理を終えると、ヒータ52に対して、供給電圧パターンテーブルVに基づく電圧パターンを供給する定常供給期間(時刻t=t8以降)へと移行する。この定常供給期間の間には、必要に応じて、図10のステップS62で説明した電圧パターン切換処理が行われる。
(ソフトストップ処理の説明)
次に、図12を用いて、ソフトストップ処理の概要について説明する。図12は、ソフトストップ処理の概要を示す図である。図12において、定常供給期間を終えると、制御部56は、電圧波形を徐々に減少させるソフトストップ処理を行う。
図12において、時刻t25から時刻t33の間は、第3の電圧パターンE3を用いてソフトストップ処理を行う様子を示している。ソフトストップ処理が開始されると、加熱制御部63は、1周期目(最初の4半波期間)には点灯デューティ比Do=40%に基づいて決定する第3の電圧パターンE3を供給する(t=t25〜t29)。そして、2周囲目(2回目の4半波期間)には、点灯デューティ比Do=20%に基づいて決定する第3の電圧パターンE3を供給する(t=t29〜t33)。なお、1周期目と2周期目の点灯デューティ比Doの変更幅(図12の例では−20%)は、予め設定した変動量上限値内で適宜設定すればよい。また、ソフトストップ処理を何周期に亘って行うかも適宜設定すればよい。
ソフトストップ処理を終えると、CPUは、ヒータ52に対する電圧値eの供給を終了する。
このように、ソフトストップ処理を行ってヒータ52に供給する電圧値eを徐々に減少させることにより、ヒータ52への通電停止時に、電流値が急にゼロになるのを防止することができるため、フリッカの発生を抑制することができる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係るヒータ制御装置を備えた画像形成装置の概略構成について説明する。
図13は、画像形成装置100aが備えるヒータ制御装置60aの要部構成を示すブロック図である。ヒータ制御装置60aは、前述したヒータ制御装置60に対して、定着ローラ51aを加熱するヒータを2個(ヒータ152a、152b)備える点が異なっている。すなわち、ヒータ制御装置60aは、図13に示すように、定着装置50aに備えられて、定着ローラ51aと、ヒータ152a、152bと、交流電源153と、トライアック154a、154bと、温度センサ155a、155bと、制御部156aと、ゼロクロス検知部157aと、電圧検知部158aとを有する。
定着ローラ51aは、前述したように、加圧ローラ51b(図1)と圧接しながら回転して、転写紙に転写されているトナー像を定着させる。
ヒータ152a、152bは、加熱手段の一例であり、定着ローラ51aに内蔵されて、転写紙に転写されているトナー像を熱で溶かし、転写紙の繊維の中に埋め込み定着させる。
交流電源153は、ヒータ152a、152bに対して交流電圧を供給する。本実施の形態では、時間とともに正弦波状に変化する交流電圧を供給するものとする。
トライアック154a、154bは、スイッチング手段であり、交流電源153から供給される交流電圧を、制御部156aから指示されたタイミングでスイッチング(オン/オフ)する。そして、トライアック154a、154bは、スイッチングされた交流電圧をヒータ152a、152bに供給する。なお、トライアック154a、154bがオン時には、ヒータ152a、152bが通電して発熱する。そして、トライアック154a、154bがオフ時には、ヒータ152a、152bが非通電となる。
温度センサ155a、155bは、温度検知手段の一例であり、定着ローラ51aの表面温度を測定する。温度センサ155a、155bは、例えば、温度に応じて抵抗値が変化するサーミスタを内蔵しており、当該サーミスタの抵抗値に基づいて定着ローラ51aの表面温度を測定する。なお、温度センサ155aは、定着ローラ51aの表面のうち、ヒータ152aによって加熱された領域の温度を測定する。また、温度センサ155bは、定着ローラ51aの表面のうち、ヒータ152bによって加熱された領域の温度を測定する。
ゼロクロス検知部157aは、交流電源153から供給される交流電圧が0ボルトをプラス側からマイナス側、またはマイナス側からプラス側に横切るタイミング(以下、ゼロクロスのタイミングと呼ぶ)を検知する。そして、ゼロクロス検知部157aは、ゼロクロスのタイミングを検知した場合に、制御部156aに対して、ゼロクロス検知信号を出力する。
電圧検知部158aは、交流電源153から供給される交流電圧の電圧値eを検知する。そして、電圧検知部158aは、制御部156aに対して、検知した電圧値eを出力する。
制御部156aは、温度センサ155a、155bが測定した定着ローラ51aの表面温度と、ゼロクロス検知部157aが検知した交流電圧のゼロクロスのタイミングと、電圧検知部158aが検知した交流電圧の電圧値eとに基づいて、交流電圧をスイッチングするタイミングを決定する。そして、制御部156aは、決定したタイミングに基づいてトライアック154a、154bを動作させる。
制御部156aは、図13に不図示のCPUと、RAMと、ROMと、入出力インタフェースとがバスを介して接続されたコンピュータとして実装される。CPUは、ROMが記憶しているプログラムを読み出して実行する。読み出されたプログラムは、実行可能な形式でCPU上に展開されて、必要電圧推定部162aと加熱制御部163aとを構成する。ROMは、記憶手段の一例であり、前記したプログラムと、ヒータ152a、152bが備えるハロゲンランプに供給する電圧パターンを登録した供給電圧テーブル164aとを記憶する。
供給電圧テーブル164aは、交流電源153が供給する交流電圧の2周期分、すなわち4半波を1周期として、加熱手段であるヒータ152a、152bが備えるハロゲンランプに供給する電圧パターンを記憶する。供給電圧テーブル164aは、それぞれ、第1の実施の形態で説明した供給電圧パターンテーブルV、および3種類の異なる電圧パターン(第1の電圧パターンE1、第2の電圧パターンE2、第3の電圧パターンE3)を記憶する。なお、供給電圧テーブル164aの具体例は後述する(図14、図15、図16参照)。
また、供給電圧テーブル164aは、第1の実施の形態で説明したのと同様に、定着ローラ51aの表面温度と、供給する交流電圧の点灯デューティ比Doとの関係を記憶する。
さらに、供給電圧テーブル164aは、第1の実施の形態で説明したのと同様に、ヒータ制御装置60aに所定の電圧パターンを供給した際の高調波マージンを、電圧パターン(E1、E2、E3)毎および位相デューティ比Dp毎に記憶する。
必要電圧推定部162aは、必要電圧推定手段の一例であり、温度検知手段である温度センサ155a、155bの測定結果に基づいて、定着ローラ51aの表面を目標温度まで加熱するために必要な交流電圧を推定する。そして、必要電圧推定部162aは、推定した交流電圧に近似する交流電圧パターンを供給電圧テーブル164aから読み出す。
加熱制御部163aは、加熱制御手段の一例であり、必要電圧推定部162aが供給電圧テーブル164aから読み出した供給電圧パターンテーブルV、または電圧パターンE1、E2、E3の電圧をヒータ152a、152bに供給することによって、定着ローラ51aの表面温度を制御する。
(供給電圧テーブルの説明)
次に、供給電圧テーブル164aの内容について、図14、図15、図16を用いて説明する。
図14は、供給電圧テーブル164aの一例を示す図である。図14に示す供給電圧テーブル164aは、2本のヒータ152a、152bに、ともに第1の電圧パターンE1を供給する場合の例を示す。
まず、図14(a)について説明する。図14(a)は、ヒータ152aに点灯デューティ比Do=0〜25%の電圧を供給する場合の供給電圧テーブル164aの一例である。なお、図14〜図16において、「位相」と記載されている箇所は、位相制御を行うことを表す。また、「半波」と記載されている箇所は、波数制御を行うことを表す。例えば、ヒータ152aの第1半波領域aに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。このとき、ヒータ152bに点灯デューティ比Do=0〜25%の電圧を供給する場合には、第1半波領域aと隣接しない第3半波領域cに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。このように、ヒータ152aに供給する電圧とヒータ152bに供給する電圧とは、電圧を供給する半波領域が互いに隣接しないように設定する。なお、図14〜図16の説明において、位相制御を行う際の位相デューティ比Dpは、0〜100%の任意の値を設定することができる。
また、図14(a)において、ヒータ152bに、点灯デューティ比Do=25〜50%の電圧を供給する場合には、第3半波領域cに、位相デューティ比Dp=100%の半波を供給する波数制御を行う。そして、第2半波領域bまたは第4半波領域dのいずれか一方に、位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。なお、図14〜図16に記載した記号()は、()内に記載された情報が互いに入れ替え可能であることを示す。
そして、図14(a)において、ヒータ152bに、点灯デューティ比Do=50〜75%の電圧を供給する場合には、第3半波領域cに半波を供給する波数制御を行う。そして、第2半波領域bに半波を供給する波数制御を行い、第4半波領域dに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。なお、第2半波領域bに供給する電圧と、第4半波領域dに供給する電圧と、は入れ替え可能である。
さらに、図14(a)において、ヒータ152bに、点灯デューティ比Do=75〜100%の電圧を供給する場合には、第2半波領域b、第3半波領域cおよび第4半波領域dに半波を供給する波数制御を行う。そして、第1半波領域aに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。
なお、図14(a)においては、ヒータ152aに供給する電圧波形として、第1半波領域aに供給する電圧を位相制御したが、これは、図6の説明の際に言及した通り、他の半波領域に対して位相制御を行っても構わない。そして、他の半波領域に対して位相制御を行った際には、当該半波領域の位置に応じて、ヒータ152bに供給する電圧波形のパターンを変更すればよい。以下に説明する図15、図16についても同様である。
次に、図14(b)について説明する。図14(b)は、ヒータ152aに点灯デューティ比Do=25〜50%の電圧を供給する場合の供給電圧テーブル164aの一例である。例えば、ヒータ152aの第1半波領域aに半波を供給する波数制御を行うとともに、第3半波領域cに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。このとき、ヒータ152bに点灯デューティ比Do=0〜25%の電圧を供給する場合には、第2半波領域bまたは第4半波領域dのいずれか一方に、位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。
また、図14(b)において、ヒータ152bに点灯デューティ比Do=25〜50%の電圧を供給する場合には、第2半波領域bに半波を供給する波数制御を行う。そして、第4半波領域dに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。なお、第2半波領域bに供給する電圧と、第4半波領域dに供給する電圧と、は入れ替え可能である。
そして、図14(b)において、ヒータ152bに点灯デューティ比Do=50〜75%の電圧を供給する場合には、第2半波領域bおよび第4半波領域dに半波を供給する波数制御を行う。そして、第3半波領域cに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。
さらに、図14(b)において、ヒータ152bに、点灯デューティ比Do=75〜100%の電圧を供給する場合には、第2半波領域b、第3半波領域cおよび第4半波領域dに半波を供給する波数制御を行う。そして、第1半波領域aに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。
次に、図14(c)について説明する。図14(c)は、ヒータ152aに点灯デューティ比Do=50〜75%の電圧を供給する場合の供給電圧テーブル164aの一例である。例えば、ヒータ152aの第1半波領域aおよび第3半波領域cに半波を供給する波数制御を行うとともに、第2半波領域bまたは第4半波領域dのいずれか一方に、位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。このとき、ヒータ152bに、点灯デューティ比Do=0〜25%の電圧を供給する場合には、第4半波領域dに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。
また、図14(c)において、ヒータ152bに点灯デューティ比Do=25〜50%の電圧を供給する場合には、第4半波領域dに半波を供給する波数制御を行う。そして、第2半波領域bに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。
そして、図14(c)において、ヒータ152bに、点灯デューティ比Do=50〜75%の電圧を供給する場合には、第2半波領域bおよび第4半波領域dに半波を供給する波数制御を行う。そして、第1半波領域aまたは第3半波領域cのいずれか一方に、位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。
さらに、図14(c)において、ヒータ152bに、点灯デューティ比Do=75〜100%の電圧を供給する場合には、第2半波領域bおよび第4半波領域dに半波を供給する波数制御を行う。そして、第1半波領域aに半波を供給する波数制御を行い、第3半波領域cに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。なお、第1半波領域aに供給する電圧と、第3半波領域cに供給する電圧と、は入れ替え可能である。
さらに、図14(d)は、ヒータ152aに点灯デューティ比Do=75〜100%の電圧を供給する場合の供給電圧テーブル164aの一例である。例えば、ヒータ152aの第1半波領域aおよび第3半波領域cに半波を供給する波数制御を行うとともに、第2半波領域bに半波を供給する波数制御を行い、第4半波領域dに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。なお、第2半波領域bに供給する電圧と、第4半波領域dに供給する電圧と、は入れ替え可能である。このとき、ヒータ152bに点灯デューティ比Do=0〜25%の電圧を供給する場合には、第4半波領域dに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。
また、図14(d)において、ヒータ152bに、点灯デューティ比Do=25〜50%の電圧を供給する場合には、第4半波領域dに半波を供給する波数制御を行うとともに、第2半波領域bに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。
そして、図14(d)において、ヒータ152bに、点灯デューティ比Do=50〜75%の電圧を供給する場合には、第2半波領域bおよび第4半波領域dに半波を供給する波数制御を行う。そして、第1半波領域aまたは第3半波領域cのいずれか一方に、位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。
さらに、図14(d)において、ヒータ152bに、点灯デューティ比Do=75〜100%の電圧を供給する場合には、第2半波領域bおよび第4半波領域dに半波を供給する波数制御を行う。そして、第1半波領域aに半波を供給する波数制御を行い、第3半波領域cに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。なお、第1半波領域aに供給する電圧と、第3半波領域cに供給する電圧と、は入れ替え可能である。
続いて、図15について説明する。図15に示す供給電圧テーブル164aは、ヒータ152aに第1の電圧パターンE1を供給して、ヒータ152bに第2の電圧パターンE2を供給する場合の例を示す。なお、図15に記載した記号()は、()内に記載された情報が互いに入れ替え可能であることを示す。
まず、図15(a)について説明する。図15(a)は、ヒータ152aに点灯デューティ比Do=0〜25%の電圧を供給する場合の供給電圧テーブル164aの一例である。例えば、ヒータ152aの第1半波領域aに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。このとき、ヒータ152bに点灯デューティ比Do=0〜50%の電圧を供給する場合には、第2半波領域bおよび第4半波領域dに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。
また、図15(a)において、ヒータ152bに、点灯デューティ比Do=50〜100%の電圧を供給する場合には、第2半波領域bおよび第4半波領域dに半波を供給する波数制御を行う。そして、第1半波領域aおよび第3半波領域cに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。
次に、図15(b)について説明する。図15(b)は、ヒータ152aに点灯デューティ比Do=25〜50%の電圧を供給する場合の供給電圧テーブル164aの一例である。例えば、ヒータ152aの第1半波領域aに半波を供給する波数制御を行うとともに、第3半波領域cに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。このとき、ヒータ152bに点灯デューティ比Do=0〜50%の電圧を供給する場合には、第2半波領域bおよび第4半波領域dに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。
また、図15(b)において、ヒータ152bに点灯デューティ比Do=50〜100%の電圧を供給する場合には、第2半波領域bおよび第4半波領域dに半波を供給する波数制御を行う。そして、第1半波領域aおよび第3半波領域cに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。
次に、図15(c)について説明する。図15(c)は、ヒータ152aに点灯デューティ比Do=50〜75%の電圧を供給する場合の供給電圧テーブル164aの一例である。例えば、ヒータ152aの第1半波領域aおよび第3半波領域cに半波を供給する波数制御を行うとともに、第2半波領域bまたは第4半波領域dのいずれか一方に、位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。このとき、ヒータ152bに点灯デューティ比Do=0〜50%の電圧を供給する場合には、第2半波領域bおよび第4半波領域dに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。
そして、図15(c)において、ヒータ152bに、点灯デューティ比Do=50〜100%の電圧を供給する場合には、第2半波領域bおよび第4半波領域dに半波を供給する波数制御を行うとともに、第1半波領域aおよび第3半波領域cに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。
さらに、図15(d)は、ヒータ152aに点灯デューティ比Do=75〜100%の電圧を供給する場合の供給電圧テーブル164aの一例である。例えば、ヒータ152aの第1半波領域aおよび第3半波領域cに半波を供給する波数制御を行うとともに、第2半波領域bに半波を供給する波数制御を行い、第4半波領域dに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。なお、第2半波領域bに供給する電圧と、第4半波領域dに供給する電圧と、は入れ替え可能である。このとき、ヒータ152bに点灯デューティ比Do=0〜50%の電圧を供給する場合には、第2半波領域bおよび第4半波領域dに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。
また、図15(d)において、ヒータ152bに、点灯デューティ比Do=50〜100%の電圧を供給する場合には、第2半波領域bおよび第4半波領域dに半波を供給する波数制御を行うとともに、第1半波領域aおよび第3半波領域cに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。
続いて、図16について説明する。図16に示す供給電圧テーブル164aは、ヒータ152aに第1の電圧パターンE1を供給して、ヒータ152bに第3の電圧パターンE3を供給する場合の例を示す。
まず、図16(a)について説明する。図16(a)は、ヒータ152aに点灯デューティ比Do=0〜25%の電圧を供給する場合の供給電圧テーブル164aの一例である。例えば、ヒータ152aの第1半波領域aに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。このとき、ヒータ152bに対して、第1半波領域a、第2半波領域b、第3半波領域c、第4半波領域dの全てに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。なお、このとき、高調波電流の影響を低減するために、各半波領域の位相デューティ比Dpをさらに調節してもよい。
すなわち、点灯デューティ比Doを一定に保ったまま、第1半波領域aの位相デューティ比Dpaと、第2半波領域bの位相デューティ比Dpbと、第3半波領域cの位相デューティ比Dpcと、第4半波領域dの位相デューティ比Dpとを、それぞれ個別に調整してもよい。より具体的には、図7で説明した考え方に沿って、第1半波領域aの位相デューティ比Dpaおよび第3半波領域cの位相デューティ比Dpcを小さく、すなわち、電圧の供給を開始する時刻を遅く(電圧の供給を開始する位相角を大きく)調節して、第2半波領域bの位相デューティ比Dpbおよび第4半波領域dの位相デューティ比Dpdを大きく、すなわち、電圧の供給を開始する時刻を早く(電圧の供給を開始する位相角を小さく)調節する。すなわち、2本のヒータ152a、152bに対して、ともに電圧を印加する期間がなるべく小さくなるように、位相デューティ比Dpの調整を行う。なお、この位相デューティ比Dpの調整方法は、以下に説明する図16(b)〜図6(d)についても同様に適用することができる。
次に、図16(b)について説明する。図16(b)は、ヒータ152aに点灯デューティ比Do=25〜50%の電圧を供給する場合の供給電圧テーブル164aの一例である。例えば、ヒータ152aの第1半波領域aに半波を供給する波数制御を行うとともに、第3半波領域cに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。このとき、ヒータ152bに対して、第1半波領域a、第2半波領域b、第3半波領域c、第4半波領域dの全てに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。
次に、図16(c)について説明する。図16(c)は、ヒータ152aに点灯デューティ比Do=50〜75%の電圧を供給する場合の供給電圧テーブル164aの一例である。例えば、ヒータ152aの第1半波領域aおよび第3半波領域cに半波を供給する波数制御を行うとともに、第2半波領域bまたは第4半波領域dのいずれか一方に位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。このとき、ヒータ152bに対して、第1半波領域a、第2半波領域b、第3半波領域c、第4半波領域dの全てに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。
また、図16(d)は、ヒータ152aに点灯デューティ比Do=75〜100%の電圧を供給する場合の供給電圧テーブル164aの一例である。例えば、ヒータ152aの第1半波領域aおよび第3半波領域cに半波を供給する波数制御を行うとともに、第2半波領域bに半波を供給する波数制御を行い、第4半波領域dに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。なお、第2半波領域bに供給する電圧と、第4半波領域dに供給する電圧と、は入れ替え可能である。このとき、ヒータ152bに対して、第1半波領域a、第2半波領域b、第3半波領域c、第4半波領域dの全てに位相デューティ比Dpの電圧を供給する位相制御を行う。
ヒータ制御装置60aは、第1の実施の形態で説明したヒータ制御装置60と同様に作用する。その際、ヒータ制御装置60aは2本のヒータ152a、152bを備えているため、各ヒータ152a、152bに対して、それぞれ、必要電圧推定部162aが加熱に必要な交流電圧を推定して、加熱制御部163aが、供給する電圧パターンの選択と供給を行う。詳細な動作の内容と手順は、第1の実施の形態で説明したのと同様であるため、説明は省略する。
このように、複数のヒータ152a、152bを備える場合であっても、ヒータ52を1本のみ備える場合と同様に、ヒータ152a、152bに交流電圧を供給した際のフリッカの発生と高調波電流の発生とをともに抑制することができる。
以上説明したように、第1の実施の形態に係るヒータ制御装置60によれば、温度センサ55(温度検知手段)が検知した定着ローラ51aの表面温度に基づいて、必要電圧推定部62(必要電圧推定手段)が定着ローラ51aの加熱に必要な電圧パターンを推定する。そして、加熱制御部63(加熱制御手段)が、推定された電圧パターンを、記憶手段であるROMに記憶された、交流電圧の半周期を1半波領域としたときに、連続する4半波領域(第1半波領域a、第2半波領域b、第3半波領域c、第4半波領域d)を1周期とする複数の電圧パターン(第1の電圧パターンE1、第2の電圧パターンE2、第3の電圧パターンE3)の中から選択する。加熱制御部63は、さらに、選択された電圧パターンをヒータ52(加熱手段)に供給することによって、定着ローラ51aの表面温度を制御する。したがって、フリッカの発生と高調波電流の影響と、をともに抑制することができる。
また、第1の実施の形態に係るヒータ制御装置60によれば、電圧パターンは、ヒータ52(加熱手段)に供給する電力の増加に応じて、4半波領域の中の任意の1半波領域から順に位相デューティ比Dp(通電時間)を増加させる第1の電圧パターンE1を含む。したがって、電圧波形に含まれる高調波成分が少なくなるため、より一層高調波電流の影響の少ない電圧パターンを提供することができる。
また、第1の実施の形態に係るヒータ制御装置60によれば、電圧パターンは、ヒータ52(加熱手段)に供給する電力の増加に応じて、4半波領域の中の隣接しない2つの半波領域に対してそれぞれ等しく与える位相デューティ比Dp(通電時間)をともに増加させる第2の電圧パターンE2を含む。したがって、第1の電圧パターンE1に比べて高調波成分は増加するが、突入電流が減るため、よりフリッカの発生を抑制することができる電圧パターンを提供することができる。
また、第1の実施の形態に係るヒータ制御装置60によれば、電圧パターンは、ヒータ52(加熱手段)に供給する電力の増加に応じて、4半波領域の全ての半波領域に対してそれぞれ等しく与える位相デューティ比Dp(通電時間)をともに増加させる第3の電圧パターンE3を含む。したがって、より一層フリッカの発生を抑制することができる電圧パターンを提供することができる。
また、第1の実施の形態に係るヒータ制御装置60によれば、加熱制御部63(加熱制御手段)は、第1の電圧パターンE1、第2の電圧パターンE2、第3の電圧パターンE3(複数の電圧パターン)の中から、ヒータ52(加熱手段)の消費電力の大きさと、各電圧パターンを供給した際に発生する高調波電流の最大値が設計目標をどの程度下回るかの余裕を示す高調波マージンと、に基づいて、ヒータ52に供給する電圧パターンを選択する。したがって、フリッカの発生と高調波電流の影響とを確実に抑制することができる。
また、第1の実施の形態に係るヒータ制御装置60によれば、加熱制御部63(加熱制御手段)は、4半波領域の通電時間の総和の変動が所定値以内であって、なおかつ、同じ電圧パターンを所定時間以上供給していることを条件として、高調波電流の影響がより少ない電圧パターンに切り替えてヒータ52(加熱手段)に供給する。したがって、高調波電流の影響が表れる前に、ヒータ52(加熱手段)に供給する電圧パターンを、高調波電流の影響が少ない電圧パターンに切り替えることができる。
また、第1の実施の形態に係るヒータ制御装置60によれば、加熱制御部63(加熱制御手段)は、通電時間の割合の変動量を制御している期間は、フリッカの発生を抑制することができる電圧パターンに切り替えてヒータ52(加熱手段)に供給する。したがって、フリッカの発生を確実に抑制することができる。
また、第1の実施の形態に係るヒータ制御装置60によれば、必要電圧推定部62(必要電圧推定手段)は、さらに、4半波領域における通電時間を一定に保ったままで、各半波領域の通電時間をそれぞれ変更する機能を有する。したがって、ヒータ52に供給する電力を一定に保ったままで、高調波電流の影響をより一層低減する電圧パターンを供給することができる。
以上、実施の形態について説明したが、その各部の具体的な構成、処理の内容等は、実施の形態で説明したものに限るものではない。
例えば、第1の実施の形態で説明したプログラムは、予め記憶手段であるROMに記憶されて提供される以外に、インストール可能な形式、または実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。さらに、プログラムをインターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。