(第1実施形態)
[渦電流式減速装置の構成]
以下に、第1の実施形態に係る減速装置100の構成について図面を参照しながら説明する。図1から図3は、減速装置100を模式的に示す図である。図1及び図3は要部の横断面図であり、図2は縦断面図である。また、図3では、ロッド120及び先端部122の図示を省略した。図4は、減速装置100における磁石3c〜3eの配列を示す斜視図である。
以下では、図1の紙面から手前に向く方向を前方向と定義し、図1の紙面から奥に向く方向を後ろ方向と定義する。前後方向は、回転軸10が延びる方向と一致する。また、回転軸10に直交し、かつ、回転軸10から離れる方向を径方向と定義する。図1の紙面で上向きを上方向と定義し、図1の紙面で下向きを下方向と定義する。上下方向は、鉛直方向と一致する。図1の紙面で右向きを右方向と定義し、図1の紙面で左向きを左方向と定義する。前後方向、上下方向及び左右方向は互いに直交している。ただし、上下方向、左右方向及び前後方向の定義は、一例であり、例示した定義に限らない。また、本明細書において、時計回り及び反時計回りとは、前方から見たときにおける時計回り及び反時計回りを意味する。
減速装置100は、図1及び図2に示すように、ロータ1、磁石保持リング2、複数の磁石3、複数のポールピース4、ポールピース保持リング5、ロータ支持部材6(図2に図示)、ステータ7(図2に図示)、制御部102及び駆動部106を備える。また、減速装置100の外部には、圧力源104が設けられる。
ロータ1は、円筒状をなしており、制動力が付与される制動部材に相当する。ロータ1は、車両の回転軸10(例:プロペラシャフト、ドライブシャフト等)にロータ支持部材6を介して固定される。これにより、ロータ1は、回転軸10と一体となって回転する。また、ロータ1の外周面には、複数の放熱フィン1a(図2に図示)が設けられる。
磁石保持リング2は、円筒状をなしており、ロータ1の内側に配置される。磁石保持リング2は、ロータ1と同心状に配置される。磁石保持リング2の外周面には、図3及び図4に示すように、複数の磁石3が固定される。これにより、複数の磁石3は、ロータ1の内周面1bと隙間を空けて対向する。また、複数の磁石3は、回転軸10を中心とする円周方向にわたり等間隔に配列される。以下では、図1に示すように、複数の磁石3を時計回りの順に磁石3a,3b,3c,3d,3e,3f・・・と呼ぶ。磁石3の2つの磁極(N極及びS極)は、回転軸10を中心とする径方向に並ぶ。ただし、互いに隣り合う磁石3同士の磁極の配置は交互に異なる(図3参照)。
磁石保持リング2は、回転軸10回りに回転可能にステータ7(図2参照)により支持される。これにより、複数の磁石3は、回転軸10回りに回転可能にステータ7により支持される。ステータ7は、車両の非回転部11(例:トランスミッションカバー)に固定される。
複数のポールピース4は、ロータ1の内周面1bと複数の磁石3との隙間に配置される。複数のポールピース4は、強磁性体である。複数のポールピース4は、回転軸10を中心とする円周方向にわたり等間隔に配列される。以下では、図1に示すように、複数のポールピース4を時計回りの順にポールピース4a,4b,4c,4d,4e,4f・・・と呼ぶ。複数のポールピース4の数は、複数の磁石3の数と同数であり、例えば16個又は32個である。そのため、隣り合う2つポールピース4と回転軸10とを結ぶ2本の線が成す角度は、隣り合う2つの磁石3と回転軸10とを結ぶ2本の線が成す角度と等しい(図1及び図3参照)。
ポールピース保持リング5は、円筒状をなしており、複数のポールピース4を保持する。ポールピース保持リング5は、非磁性体である。具体的には、複数のポールピース4は、ポールピース保持リング5に埋め込まれる。ただし、ポールピース保持リング5の径方向の厚みは、複数のポールピース4の径方向の厚みと実質的に等しい。そのため、複数のポールピース4の両主面は、ポールピース保持リング5から露出する。これにより、複数のポールピース4は、図1及び図3に示すように、複数の磁石3と隙間を空けて対向すると共に、ロータ1と隙間を空けて対向する。ポールピース保持リング5は、図2に示すように、ステータ7に固定される。これにより、複数のポールピース4は、ステータ7に固定される。
以上のように、ポールピース保持リング5がステータ7に固定され、磁石保持リング2がステータ7に回転可能に支持される。これにより、ステータ7は、複数の磁石3と複数のポールピース4との回転軸10回りにおける位置関係が変化できるように、複数の磁石3と複数のポールピース4とを支持する。
駆動部106は、複数の磁石3及び複数のポールピース4の内のいずれか一方に接続され、複数の磁石3と複数のポールピース4との回転軸10回りの位置関係を制動状態と非制動状態とに切り替える。非制動状態とは、ロータ1に制動力が発生しない状態である。制動状態とは、ロータ1に制動力が発生する状態である。減速装置100では、駆動部106は、磁石保持リング2(すなわち、複数の磁石3)に接続される。したがって、駆動部106は、磁石保持リング2を回転軸10回りに回転させることにより、複数の磁石3と複数のポールピース4との位置関係を変化させる。
駆動部106は、図1に示すように、シリンダ108、ピストン110、非制動側経路112、制動側経路114、非制動側バルブ116、制動側バルブ118、ロッド120、先端部122、ベアリング124及びベース126を含む。シリンダ108、ピストン110、非制動側経路112、制動側経路114、非制動側バルブ116及び制動側バルブ118は、アクチュエータを構成する。
シリンダ108は、中空の円柱状部材である。シリンダ108の中心軸は、回転軸10を中心とする円の接線方向(図1では、左右方向)に延びる。また、シリンダ108は、磁石保持リング2の上端近傍に配置され、ステータ7の一部であるハウジング130に固定される。磁石保持リング2の上端とは、磁石保持リング2において回転軸10の真上に位置する部分である。
ピストン110は、円板であり、シリンダ108内の空間を非制動側空間Sp1と制動側空間Sp2とに仕切る。非制動側空間Sp1は、シリンダ108内におけるピストン110よりも右方に位置する空間である。制動側空間Sp2は、シリンダ108内におけるピストン110よりも左方に位置する空間である。ピストン110は、シリンダ108内において左右に移動することができる。
非制動側経路112は、圧力源104と非制動側空間Sp1とを接続する。制動側経路114は、圧力源104と制動側空間Sp2とを接続する。圧力源104は、圧縮空気を生成し、例えば、車両のコンプレッサー及びエアタンクである。故に、圧力源104は、減速装置100の外部に設けられる。
非制動側バルブ116は、非制動側経路112に設けられ、圧力源104と非制動側空間Sp1とを接続する接続状態と、非制動側空間Sp1と大気圧となっている外部空間とを接続する解放状態と、を切り替える。接続状態では、非制動側空間Sp1に圧縮空気が供給され、非制動側空間Sp1の圧力が大気圧よりも高くなる。解放状態では、非制動側空間Sp1の圧力が大気圧となる。非制動側バルブ116は、制御部102が非制動側バルブ116に通電していないときに接続状態に制御され、制御部102が非制動側バルブ116に通電しているときに解放状態に制御される。
制動側バルブ118は、制動側経路114に設けられ、圧力源104と制動側空間Sp2とを接続する接続状態と、制動側空間Sp2と外部空間とを接続する解放状態と、を切り替える。接続状態では、制動側空間Sp2に圧縮空気が供給され、制動側空間Sp2の圧力が大気圧よりも高くなる。解放状態では、制動側空間Sp2の圧力が大気圧となる。制動側バルブ118は、制御部102が制動側バルブ118に通電しているときに接続状態に制御され、制御部102が制動側バルブ118に通電していないときに解放状態に制御される。
ロッド120、先端部122、ベアリング124及びベース126は、ピストン110と磁石保持リング2とを連結する連結部材である。ロッド120は、ピストン110の右面の中央から右方に向かって延びる。ロッド120の先端(右端)は、シリンダ108から突出する。先端部122は、ロッド120の先端に設けられ、前方から見たときに長方形状をなす板状部材である。先端部122には、上下が反転したU字状の切り欠きが設けられる。切り欠きは、前方から見たときに、先端部122の下辺から上方に向かって延びる。
ベース126は、磁石保持リング2の前面における上端近傍に固定されている板状部材である。ベアリング124は、ベース126に回転可能に支持されている円筒部材である。ベアリング124は、前後方向に延びる中心軸を有しており、中心軸回りに回転できる。また、ベアリング124は、切り欠き内に位置する。そのため、ベアリング124は、上方、右方及び左方の三方において先端部122により囲まれる。以上の構成により、ピストン110が右方に向かって移動すると、ベアリング124が先端部122により右方に押される。これにより、磁石保持リング2が時計回りに回転する。また、ピストン110が左方に向かって移動すると、ベアリング124が先端部122により左方に押される。これにより、磁石保持リング2が反時計回りに回転する。
制御部102は、駆動部106を制御する。制御部102は、例えば、CPUである。具体的には、制御部102が、非制動側バルブ116を接続状態に制御し、制動側バルブ118を解放状態に制御すると、ピストン110が左方に移動する。これにより、磁石保持リング2が反時計回りに回転し、減速装置100が非制動状態に制御される。一方、制御部102が、非制動側バルブ116を解放状態に制御し、制動側バルブ118を接続状態に制御すると、ピストン110が右方に移動する。これにより、磁石保持リング2が時計回りに回転し、減速装置100が制動状態に制御される。以上のように、制御部102は、減速装置100を制動状態と非制動状態とに切り替える。
[減速装置の動作]
次に、減速装置100の動作について図面を参照しながら説明する。図5は、制御部102のフローチャートである。図6ないし図11は、減速装置100を模式的に示す図である。図6ないし図11は要部の横断面図である。図6ないし図11において、制御部102と非制動側バルブ116及び制動側バルブ118とを接続する線が実線で示されている場合には、制御部102が非制動側バルブ116及び制動側バルブ118を通電することを意味する。また、図6ないし図11において、制御部102と非制動側バルブ116及び制動側バルブ118とを接続する線が点線で示されている場合には、制御部102が非制動側バルブ116及び制動側バルブ118を通電しないことを意味する。
まず、本処理は、例えば、車両のイグニションがONされることにより開始される。制御部102は、制御信号が出力されてきたか否かを判定する(ステップS1)。制御信号は、減速装置100を非制動状態から制動状態に切り替えることを示す信号(以下、制動ON信号とも呼ぶ)、又は、減速装置100を制動状態から非制動状態に切り替えることを示す信号(以下、制動OFF信号とも呼ぶ)である。制御信号は、車両の運転席に設けられているスイッチをドライバーが操作することによりスイッチから出力される。制御信号が出力されてきた場合、本処理はステップS2に進む。制御信号が出力されてこない場合、本処理はステップS1に戻る。この場合、制御信号が出力されるまでステップS1が繰り返される。
制御信号が出力されてきた場合、制御部102は、制御信号が制動ON信号又は制動OFF信号のいずれであるのかを判定する(ステップS2)。制動ON信号である場合、本処理はステップS3に進む。制動OFF信号である場合、本処理はステップS6に進む。
制動ON信号である場合、制御部102は、非制動側バルブ116に通電し、制動側バルブ118に通電する(ステップS3・制動側保持ステップの一例)。すなわち、制御部102は、複数の磁石3と複数のポールピース4との回転軸10回りにおける位置関係を非制動状態から制動状態に切り替えて、そのまま位置関係を保持するように駆動部106を制御する。以下に、ステップS3における減速装置100の動作について、図6及び図7を参照しながら説明する。ここでは、磁石3c,3d及びポールピース4d,4eに着目して説明する。
ステップS3の直前には、減速装置100は、図6に示す非制動状態となっている。非制動状態では、制御部102は、非制動側バルブ116に通電し、制動側バルブ118に通電しない。すなわち、制御部102は、非制動側バルブ116及び制動側バルブ118を解放状態に制御する。これにより、非制動側空間Sp1及び制動側空間Sp2の圧力が大気圧となる。そのため、ピストン110は、シリンダ108の左端近傍において左右方向に移動できる。ただし、非制動状態では、磁石3cがポールピース4dを吸引する力、及び、磁石3dがポールピース4dを吸引する力が生じる。そこで、磁石3c,3dは、これらの2つの力が釣り合う位置に移動しようとする。その結果、一つのポールピース4dが2つの磁石3c,3dを均等に跨ぐ。つまり、磁石3dとポールピース4dとが対向する面積は、磁石3cとポールピース4dとが対向する面積と等しくなる。この場合、磁石3dのN極から出た磁束は、ポールピース4dを通過し、磁石3cのS極に到達する。そのため、磁束がロータ1を通過せず、磁石3c,3dとロータ1との間に磁気回路が形成されない。その結果、ロータ1に渦電流が発生せず、ロータ1には制動力が発生しない。
ステップS3において、制御部102は、非制動側バルブ116に通電し、制動側バルブ118に通電する。すなわち、制御部102は、非制動側バルブ116を解放状態に制御し、制動側バルブ118を接続状態に制御する。これにより、非制動側空間Sp1の圧力が大気圧となる。また、制動側空間Sp2に圧縮空気が供給されて、制動側空間Sp2の圧力が大気圧よりも高くなる。その結果、図7に示すように、ピストン110が右方に向かって移動を開始する。この後、本処理はステップS4に進む。
次に、制御部102は、ステップS3の処理を開始してから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4では、制御部102は、ピストン110が右端まで移動したか否かを判定する。したがって、所定時間は、ピストン110がシリンダ108の左端から右端まで移動するのに必要な時間以上に設定される。所定時間が経過していない場合、本処理はステップS4に戻る。所定時間が経過した場合、本処理はステップS5に進む。
所定時間が経過した場合、制御部102は、非制動側バルブ116に通電し、制動側バルブ118に通電しない(ステップS5・制動側解除ステップの一例)。すなわち、制御部102は、複数の磁石3と複数のポールピース4との回転軸10回りにおける位置関係の保持を解除するように駆動部106を制御する。以下に、ステップS5における減速装置100の動作について、図8及び図9を参照しながら説明する。ここでは、磁石3c,3d及びポールピース4d,4eに着目して説明する。
ステップS4において所定時間が経過した場合、図8に示すように、ピストン110がシリンダ108の右端に到達する。このとき、ピストン110がシリンダ108の右端に押しつけられる。そのため、複数の磁石3と複数のポールピース4との位置関係は保持される。ただし、磁石3c,3dはそれぞれ、ポールピース4d,4eに完全に重なっておらず、時計回り側にポールピース4d,4eから僅かにはみ出している。
そこで、ステップS5において、制御部102は、非制動側バルブ116に通電し、制動側バルブ118に通電しない。すなわち、制御部102は、非制動側バルブ116及び制動側バルブ118を解放状態に制御する。これにより、非制動側空間Sp1及び制動側空間Sp2の圧力が大気圧となる。そのため、ピストン110は、シリンダ108の右端近傍において左右方向に移動できる。すなわち、磁石3c,3dとポールピース4d,4eとの位置関係の保持が解除される。ただし、図8では、磁石3cとポールピース4dとが完全に重ならないので、磁石3cにおいてポールピース4dからはみ出した部分がポールピース4dを吸引する。磁石3dとポールピース4eとが完全に重ならないので、磁石3dにおいてポールピース4eからはみ出した部分がポールピース4eを吸引する。よって、磁石保持リング2は僅かに反時計回りに回転する(図9参照)。その結果、磁石3cがポールピース4dに完全に重なり、磁石3dがポールピース4eに完全に重なる。すなわち、減速装置100が制動状態となる。これにより、磁石3dのN極から出た磁束は、ポールピース4e、ロータ1及びポールピース4dを通過し、磁石3cのS極に到達する。そのため、磁束がロータ1を通過し、磁石3c,3dとロータ1との間に磁気回路が形成される。その結果、ロータ1に渦電流が発生し、ロータ1に制動力が発生する。この後、本処理はステップS9に進む。
制動OFF信号である場合、制御部102は、非制動側バルブ116に通電せず、制動側バルブ118に通電しない(ステップS6・非制動側保持ステップの一例)。すなわち、制御部102は、複数の磁石3と複数のポールピース4との回転軸10回りにおける位置関係を制御状態から非制御状態に切り替えて、そのまま位置関係を保持するように駆動部106を制御する。以下に、ステップS6における減速装置100の動作について、図9及び図10を参照しながら説明する。ここでは、磁石3c,3d及びポールピース4d,4eに着目して説明する。
ステップS6の直前には、減速装置100は、図9に示す制動状態となっている。減速装置100の制動状態については既に説明を行ったので、これ以上の説明を省略する。
ステップS6において、制御部102は、非制動側バルブ116に通電せず、制動側バルブ118に通電しない。すなわち、制御部102は、非制動側バルブ116を接続状態に制御し、制動側バルブ118を解放状態に制御する。これにより、非制動側空間Sp1に圧縮空気が供給されて、非制動側空間Sp1の圧力が大気圧よりも高くなる。また、制動側空間Sp2の圧力が大気圧となる。その結果、図10に示すように、ピストン110が左方に向かって移動を開始する。この後、本処理はステップS7に進む。
次に、制御部102は、ステップS6の処理を開始してから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS7)。ステップS7では、制御部102は、ピストン110が左端まで移動したか否かを判定する。したがって、所定時間は、ピストン110がシリンダ108の右端から左端まで移動するのに必要な時間以上に設定される。所定時間が経過していない場合、本処理はステップS7に戻る。所定時間が経過した場合、本処理はステップS8に進む。
所定時間が経過した場合、制御部102は、非制動側バルブ116に通電し、制動側バルブ118に通電しない(ステップS8・非制動側解除ステップの一例)。すなわち、制御部102は、複数の磁石3と複数のポールピース4との回転軸10回りにおける位置関係の保持を解除するように駆動部106を制御する。以下に、ステップS8における減速装置100の動作ついて、図11及び図6を参照しながら説明する。ここでは、磁石3c,3d及びポールピース4d,4eに着目して説明する。
ステップS7において所定時間が経過した場合、図11に示すように、ピストン110がシリンダ108の左端に到達する。このとき、ピストン110がシリンダ108の左端に押しつけられる。そのため、複数の磁石3と複数のポールピース4との位置関係は保持される。ただし、図6に示す非制動状態に比べて、図11に示す状態では、磁石3が僅かに反時計回り側に位置する。そのため、磁石3cとポールピース4dとが対向する面積は、磁石3dとポールピース4dとが対向する面積よりも小さい。
そこで、ステップS8において、制御部102は、非制動側バルブ116に通電し、制動側バルブ118に通電しない。すなわち、制御部102は、非制動側バルブ116及び制動側バルブ118を解放状態に制御する。これにより、非制動側空間Sp1及び制動側空間Sp2の圧力が大気圧となる。そのため、ピストン110は、シリンダ108の左端近傍において左右方向に移動できる。すなわち、磁石3c,3dとポールピース4c,4dとの位置関係の保持が解除される。ただし、磁石3cとポールピース4dとが対向する面積は、磁石3dとポールピース4dとが対向する面積よりも小さいので、磁石3cがポールピース4dを吸引する力と磁石3dがポールピース4dを吸引する力とに差が生じる。そこで、磁石3c,3dは、これらの2つの力が釣り合う位置に移動しようとする。よって、磁石保持リング2は僅かに時計回りに回転する(図6参照)。その結果、磁石3cとポールピース4dとが対向する面積は、磁石3dとポールピース4dとが対向する面積と等しくなる。すなわち、減速装置100が非制動状態となる。減速装置100の非制動状態については既に説明を行ったので、これ以上の説明を省略する。この後、本処理はステップS9に進む。
前記ステップS9において、制御部102は、減速装置100の制御が終了したか否かを判定する(ステップS9)。制御部102は、車両のイグニションがOFFされた場合には減速装置100の制御が終了したと判定する。この後、本処理は終了する。一方、制御部102は、車両のイグニションがOFFされない場合には減速装置100の制御が終了していないと判定する。この後、本処理はステップS1に戻る。
[効果]
以上のように構成された減速装置100によれば、非制動状態において、ロータ1に制動力が発生することを抑制できる。より詳細には、図22に示すように、特許文献1に記載の減速装置500では、非制動状態における複数のポールピース504と複数の磁石505との位置関係にずれが生じるおそれがある。この場合、ポールピース504aと磁石505aとが対向する面積が、ポールピース504aと磁石505bとが対向する面積よりも小さくなる。また、ポールピース504bと磁石505bとが対向する面積が、ポールピース504bと磁石505cとが対向する面積よりも小さくなる。その結果、磁石505b、ポールピース504a、ロータ502、ポールピース504b、磁石505cの順に通過する磁気回路が形成される。よって、非制動状態において、ロータ502に渦電流が発生し、ロータ502に制動力が発生する。
そこで、減速装置100では、制御部102は、複数の磁石3と複数のポールピース4との回転軸10回りにおける位置関係を制動状態から非制動状態に切り替えて、そのまま位置関係を保持するように駆動部106を制御する。その後、制御部102は、複数の磁石3と複数のポールピース4との回転軸10回りの位置関係の保持を解除するように駆動部106を制御する。すなわち、制御部102は、非制動側バルブ116及び制動側バルブ118を解放状態に制御する。これにより、ピストン110は、シリンダ108の左端近傍において左右方向に移動することが可能となる。そして、磁石3c,3dは、磁石3cがポールピース4dを吸引する力と磁石3dがポールピース4dを吸引する力とが釣り合う位置に移動しようとする。その結果、図6に示すように、磁石3cとポールピース4dとが対向する面積は、磁石3dとポールピース4dとが対向する面積と等しくなる。図6に示す状態では、磁石3dのN極から出た磁束は、ポールピース4dを通過して、磁石3cのS極に到達する。そのため、磁束がロータ1を通過しない。よって、減速装置100によれば、非制動状態において、ロータ1に制動力が発生することを抑制できる。
なお、減速装置100は、制動状態において正常に動作することができる。より詳細には、減速装置100では、制御部102は、複数の磁石3と複数のポールピース4との回転軸10回りにおける位置関係を非制動状態から制動状態に切り替えて、そのまま位置関係を保持するように駆動部106を制御する。その後、制御部102は、複数の磁石3とポールピース4との回転軸10回りの位置関係の保持を解除するように駆動部106を制御する。すなわち、制御部102は、非制動側バルブ116及び制動側バルブ118を解放状態に制御する。これにより、ピストン110は、シリンダ108の右端近傍において左右方向に移動することが可能となる。そして、磁石3cは、図9に示すように、磁石3cとポールピース4dとが完全に重なる位置に移動する。また、磁石3dは、図9に示すように、磁石3dとポールピース4eとが完全に重なる位置に移動する。図9に示す状態では、磁石3dのN極から出た磁束は、ポールピース4e、ロータ1、ポールピース4dを通過して、磁石3cのS極に到達する。そのため、磁束がロータ1を通過する。すなわち、減速装置100が制動状態となる。
また、減速装置100が非制動状態と制動状態とに正常に切り替わることが可能となる。より詳細には、非制動状態において、制御部102は、ピストン110がシリンダ108の左端に到達後にピストン110が左右方向に移動できるように、駆動部106を制御する。したがって、図11に示すようにピストン110が左端に到達したときに、複数の磁石3は、図6に示す非制動状態における複数の磁石3よりも反時計回りに少し回転しすぎることが好ましい。これにより、ピストン110が左右方向に移動できるようになると、複数の磁石3は、吸引力により時計回りに回転して、図6に示す非制動状態の位置に移動できる。同様に、制動状態において、制御部102は、ピストン110がシリンダ108の右端に到達後にピストン110が左右方向に移動できるように、駆動部106を制御する。したがって、図8に示すようにピストン110が右端に到達したときに、複数の磁石3は、図9に示す制動状態における複数の磁石3よりも時計回りに少し回転しすぎることが好ましい。これにより、ピストン110が左右方向に移動できるようになると、複数の磁石3は、吸引力により反時計回りに回転して、図9に示す制動状態の位置に移動できる。
以上のような動作を実現するためには、以下の条件を満たす必要がある。ピストン110のストローク量に相当する複数の磁石3の回転角をθ1(図1参照)と定義する。ピストン110のストローク量に相当する複数の磁石3の回転角とは、ピストン110がシリンダ108の右端から左端まで(又は左端から右端まで)移動したときに、複数の磁石3が回転軸10を中心として回転する角度である。また、複数の磁石3のピッチの半分をθ2(図1参照)と定義する。ピッチとは、円周方向に隣り合う2つの磁石3と回転軸10とを結ぶ2本の直線が成す角度である。このとき、式(1)が成立する。
θ1>θ2 (1)
式(1)が成立することにより、図11に示すようにピストン110が左端に到達したときに、複数の磁石3は、図6に示す非制動状態における複数の磁石3よりも反時計回りに少し回転しすぎる。また、図8に示すようにピストン110が右端に到達したときに、複数の磁石3は、図9に示す制動状態における複数の磁石3よりも時計回りに少し回転しすぎる。そこで、図11に示す状態においてピストン110が左右方向の移動を許されると、複数の磁石3は、吸引力により非制動状態の位置に移動する。また、図8に示す状態においてピストン110が左右方向の移動を許されると、複数の磁石3は、吸引力により制動状態の位置に移動する。このように、式(1)が成立することによって、減速装置100が非制動状態と制動状態とに正常に切り替わることが可能となる。
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態に係る減速装置100aの構成について図面を参照しながら説明する。図12は、減速装置100aにおける磁石3Ac〜3Ae,3Bc〜3Beの配列を示す斜視図である。図13から図16は、減速装置100aを模式的に示す図である。図13及び図14は、非制動状態における減速装置100aの図である。図15及び図16は、制動状態における減速装置100aの図である。図13及び図15は、磁気回路の発生状況を示す縦断面図であり、図14及び図16は、磁気回路の発生状況を示す横断面図である。
減速装置100aは、永久磁石及び磁石保持リングの構造において減速装置100と相違する。以下に、係る相違点を中心に、減速装置100aの構成について説明する。
減速装置100aは、磁石保持リング2の代わりに磁石保持リング2A,2Bを備える。磁石保持リング2A,2Bは、同じ形状及び同じ大きさを有しており、円筒状をなす。すなわち、磁石保持リング2A,2Bは、磁石保持リング2が前後に2つに分割された構造を有する。磁石保持リング2A,2Bは、前方から後方へとこの順に並ぶ。磁石保持リング2A,2Bは、ロータ1の内側においてロータ1と同心状に配置される。
また、減速装置100aは、複数の磁石3の代わりに、複数の磁石3A及び複数の磁石3Bを備える。磁石保持リング2Aの外周面には、複数の磁石3Aが固定される。複数の磁石3Aは、ロータ1の内周面1bと隙間を空けて対向し、回転軸10(図示せず)を中心とする円周方向にわたり等間隔に配列される。以下では、図12、図14及び図16に示すように、複数の磁石3Aを時計回りの順に磁石3Aa,3Ab,3Ac,3Ad,3Ae,3Af・・・と呼ぶ。磁石3Aの2つの磁極(N極及びS極)は、回転軸10(図示せず)を中心とする径方向に並ぶ。ただし、互いに隣り合う磁石3A同士の磁極の配置は交互に異なる(図12参照)。
磁石保持リング2Bの外周面には、複数の磁石3Bが固定される。複数の磁石3Bは、ロータ1の内周面1bと隙間を空けて対向し、回転軸10(図示せず)を中心とする円周方向にわたり等間隔に配列される。以下では、図12に示すように、複数の磁石3Bを時計回りの順に磁石3Ba,3Bb,3Bc,3Bd,3Be,3Bf・・・(図12では、磁石3Bc,3Bd,3Beのみ図示)と呼ぶ。磁石3Bの2つの磁極(N極及びS極)は、回転軸10(図示せず)を中心とする径方向に並ぶ。ただし、互いに隣り合う磁石3B同士の磁極の配置は交互に異なる。
複数のポールピース4は、ロータ1の内周面1bと複数の磁石3A及び複数の磁石3Bとの隙間に配置される。複数のポールピース4は、回転軸10(図示せず)を中心とする円周方向にわたり等間隔に配列される。以下では、図14及び図16に示すように、複数のポールピース4を時計回りの順にポールピース4a,4b,4c,4d,4e,4f・・・と呼ぶ。複数のポールピース4の数は、複数の磁石3Aの数及び複数の磁石3Bの数と同数である。複数のポールピース4は、磁石保持リング2A,2Bとは異なり、分割されない。
磁石保持リング2Aは、回転軸10(図示せず)回りに回転可能にステータにより支持される。一方、磁石保持リング2Bは、ステータ7に固定される。駆動部106(図12から図16には図示せず)は、磁石保持リング2A(すなわち、複数の磁石3A)に接続され、複数の磁石3Aと複数の磁石3Bとポールピース4との回転軸10回りの位置関係を制動状態と非制動状態とに切り替える。したがって、駆動部106は、磁石保持リング2Aを回転軸10回りに回転させることにより、複数の磁石3Aと複数の磁石3Bと複数のポールピース4との位置関係を変化させる。減速装置100aの駆動部106の構造は、減速装置100の駆動部106の構造と同じであるので説明を省略する。
次に、減速装置100aの非制動状態及び制動状態について説明する。以下の説明では、磁石3Ab,3Ac,3Ad,3Bb,3Bc,3Bd及びポールピース4c,4d,4eに着目して説明する。
非制動状態では、図13に示すように、磁石3Aa,3Ab,3Ac,3Ad,3Ae,3Af・・・はそれぞれ、磁石3Ba,3Bb,3Bc,3Bd,3Be,3Bf・・・と前後方向において完全に重なる(図13では、磁石3Ad,3Bdのみを図示)。このとき、前後方向において互いに隣り合う磁石3A及び磁石3B同士の磁極の配置は異なる。これにより、図13に示すように、磁石3BdのN極から出た磁束は、ポールピース4dを通過し、磁石3AdのS極に到達する。そのため、磁束がロータ1を通過せず、磁石3Ad,3Bdとロータ1との間に磁気回路が形成されない。その結果、ロータ1に渦電流が発生せず、ロータ1には制動力が発生しない。
制動状態では、図15に示すように、磁石3Aa,3Ab,3Ac,3Ad,3Ae,3Af・・・はそれぞれ、磁石3Bb,3Bc,3Bd,3Be,3Bf,3Bg・・・と前後方向において完全に重なる(図15では、磁石3Ac,3Bdのみを図示)。このとき、前後方向において互いに隣り合う磁石3A及び磁石3B同士の磁極の配置は同じになる。これにより、図15及び図16に示すように、磁石3AcのN極から出た磁束は、ポールピース4d及びロータ1を通過し、磁石3AbのS極又は磁石3AdのS極に到達する。また、図示を省略するが、磁石3BdのN極から出た磁束は、ポールピース4d及びロータ1を通過し、磁石3BcのS極又は磁石3BeのS極に到達する。そのため、磁束がロータ1を通過し、磁石3Ab,3Acとロータ1との間に磁気回路が形成される。同様に、磁石3Ac,3Adとロータ1との間に磁気回路が形成される。また、磁石3Bc,3Bdとロータ1との間に磁気回路が形成される。また、磁石3Bd,3Beとロータ1との間に磁気回路が形成される。その結果、ロータ1に渦電流が発生し、ロータ1に制動力が発生する。
以上のような減速装置100aでは、減速装置100と同様に、製造ばらつきによって、シリンダ108(図示せず)の取り付け位置が設計時の位置からずれたり、ポールピース4の回転軸10回りの位置が設計時の位置からずれたりすることがある。そこで、減速装置100aにおいても、減速装置100と同様に、制御部102は、複数の磁石3Aと複数の磁石3Bと複数のポールピース4との回転軸10回りにおける位置関係を制動状態から非制動状態に切り替えて、そのまま位置関係を保持するように駆動部106を制御する。その後、制御部102は、複数の磁石3Aと複数の磁石3Bと複数のポールピース4との回転軸10回りの位置関係の保持を解除するように駆動部106を制御する。これにより、非制動状態においてロータ1に制動力が発生することを抑制できる。
(第3の実施形態)
以下に、第3の実施形態に係る減速装置100bの構成について図面を参照しながら説明する。図17から図19は、減速装置100bを模式的に示す図である。図17は、減速装置100bの縦断面図である。ただし、図17では、減速装置100bの上半分のみの断面を示す。図18は、非制動状態における減速装置100bの要部を示す図である。図19は、制動状態における減速装置100bの要部を示す図である。図18及び図19は、減速装置100bのロータ1の周方向に沿う断面図である。
減速装置100bは、ロータ、永久磁石、磁石保持リング、ポールピース及びポールピース保持リングの構造において減速装置100と相違する。以下に、係る相違点を中心に、減速装置100bの構成について説明する。
ロータ1は、ディスク1A,1Bを含んでいる。ディスク1A,1Bは、前側から見たときに円環状をなす板状部材である。ディスク1A,1Bは、前方から後方へとこの順に並ぶ。ディスク1Aとディスク1Bとの間には隙間が設けられている。ただし、ディスク1Aとディスク1Bとは、連結されており、回転軸10回りに一体となって回転できる。
磁石保持リング2は、前側から見たときに円環状をなす板状部材であり、ディスク1Aとディスク1Bとの間に配置される。磁石保持リング2は、複数の磁石3を保持する。具体的には、複数の磁石3は、磁石保持リング2に埋め込まれる。ただし、複数の磁石3の両主面は、磁石保持リング2から露出する。これにより、複数の磁石3は、ディスク1Aの後面1Ab(図18参照)と隙間を空けて対向すると共に、ディスク1Bの前面1Bb(図18参照)と隙間を空けて対向する。更に、複数の磁石3は、回転軸10を中心とする円周方向にわたり等間隔に配列される。以下では、図18及び図19に示すように、複数の磁石3を時計回りの順に磁石3a,3b,3c,3d・・・と呼ぶ。複数の磁石3の2つの磁極(N極及びS極)は、前後方向に並ぶ。ただし、互いに隣り合う磁石3同士の磁極の配置は交互に異なる(図18及び図19参照)。
磁石保持リング2は、回転軸10回りに回転可能にステータにより支持される。これにより、磁石3は、回転軸10回りに回転可能にステータにより支持される。
また、減速装置100bは、複数のポールピース4の代わりに、複数のポールピース4A及び複数のポールピース4Bを備える。複数のポールピース4Aは、ディスク1Aの後面1Abと複数の磁石3との隙間に配置される。複数のポールピース4Aは、回転軸10を中心とする円周方向にわたり等間隔に配列される。以下では、図18及び図19に示すように、複数のポールピース4Aを時計回りの順にポールピース4Aa,4Ab,4Ac,4Ad・・・と呼ぶ。複数のポールピース4Bは、ディスク1Bの前面1Bbと複数の磁石3との隙間に配置される。複数のポールピース4Bは、回転軸10を中心とする円周方向にわたり等間隔に配列される。以下では、図18及び図19に示すように、複数のポールピース4Bを時計回りの順にポールピース4Ba,4Bb,4Bc,4Bd・・・と呼ぶ。また、ポールピース4Aa,4Ab,4Ac,4Ad・・・はそれぞれ、ポールピース4Ba,4Bb,4Bc,4Bd・・・と前後方向において重なるように配置される。複数の磁石3の数と、複数のポールピース4Aの数と、複数のポールピース4Bの数とは、同数である。
減速装置100bは、ポールピース保持リング5の代わりに、ポールピース保持リング5A,5Bを備える。ポールピース保持リング5Aは、複数のポールピース4Aを保持する。具体的には、複数のポールピース4Aは、ポールピース保持リング5Aに埋め込まれる。ただし、ポールピース保持リング5Aの前後方向の厚みは、複数のポールピース4Aの前後方向の厚みと実質的に等しい。そのため、複数のポールピース4Aの両主面は、ポールピース保持リング5Aから露出する。これにより、複数のポールピース4Aは、複数の磁石3と隙間を空けて対向すると共に、ディスク1Aと隙間を空けて対向する。
ポールピース保持リング5Bは、複数のポールピース4Bを保持する。具体的には、複数のポールピース4Bは、ポールピース保持リング5Bに埋め込まれる。ただし、ポールピース保持リング5Bの前後方向の厚みは、複数のポールピース4Bの前後方向の厚みと実質的に等しい。そのため、複数のポールピース4Bの両主面は、ポールピース保持リング5Bから露出する。これにより、複数のポールピース4Bは、複数の磁石3と隙間を空けて対向すると共に、ディスク1Bと隙間を空けて対向する。
ポールピース保持リング5A,5Bは、ステータに固定される。これにより、ポールピース4A,4Bは、ステータに固定される。
駆動部106(図17から図19には図示せず)は、磁石保持リング2(すなわち、磁石3)に接続され、複数の磁石3と複数のポールピース4A及び複数のポールピース4Bとの回転軸10回りの位置関係を制動状態と非制動状態とに切り替える。したがって、駆動部106は、磁石保持リング2を回転軸10回りに回転させることにより、複数の磁石3と複数のポールピース4A及び複数のポールピース4Bとの位置関係を変化させる。減速装置100bの駆動部106の構造は、減速装置100の駆動部106の構造と同じであるので説明を省略する。
次に、減速装置100bの非制動状態及び制動状態について説明する。以下の説明では、磁石3b,3c及びポールピース4Ab,4Ac,4Bb,4Bcに着目して説明する。
非制動状態では、図18に示すように、磁石3bとポールピース4Abとが対向する面積は、磁石3cとポールピース4Abとが対向する面積と等しい。これにより、磁石3cのN極から出た磁束は、ポールピース4Abを通過し、磁石3bのS極に到達する。そのため、磁束がディスク1Aを通過せず、磁石3b,3cとディスク1Aとの間に磁気回路が形成されない。その結果、ディスク1Aに渦電流が発生せず、ディスク1Aには制動力が発生しない。
同様に、非制動状態では、図18に示すように、磁石3bとポールピース4Bbとが対向する面積は、磁石3cとポールピース4Bbとが対向する面積と等しい。これにより、磁石3bのN極から出た磁束は、ポールピース4Bbを通過し、磁石3cのS極に到達する。そのため、磁束がディスク1Bを通過せず、磁石3b,3cとディスク1Bとの間に磁気回路が形成されない。その結果、ディスク1Bに渦電流が発生せず、ディスク1Bには制動力が発生しない。
制動状態では、図19に示すように、磁石3bがポールピース4Ab,4Bbに完全に重なり、磁石3cがポールピース4Ac,4Bcに完全に重なる。これにより、磁石3cのN極から出た磁束は、ポールピース4Ac、ディスク1A及びポールピース4Abを通過し、磁石3bのS極に到達する。そのため、磁束がディスク1Aを通過し、磁石3b,3cとディスク1Aとの間に磁気回路が形成される。その結果、ディスク1Aに渦電流が発生し、ディスク1Aに制動力が発生する。
同様に、制動状態では、磁石3bのN極から出た磁束は、ポールピース4Bb、ディスク1B及びポールピース4Bcを通過し、磁石3cのS極に到達する。そのため、磁束がディスク1Bを通過し、磁石3b,3cとディスク1Bとの間に磁気回路が形成される。その結果、ディスク1Bに渦電流が発生し、ディスク1Bに制動力が発生する。
以上のような減速装置100bでは、減速装置100と同様に、製造ばらつきによって、シリンダ108(図示せず)の取り付け位置が設計時の位置からずれたり、複数のポールピース4A及び複数のポールピース4Bの回転軸10回りの位置が設計時の位置からずれたりすることがある。そこで、減速装置100bにおいても、減速装置100と同様に、制御部102は、複数の磁石3と複数のポールピース4A及び複数のポールピース4Bとの回転軸10回りにおける位置関係を制動状態から非制動状態に切り替えて、そのまま位置関係を保持するように駆動部106を制御する。その後、制御部102は、複数の磁石3と複数のポールピース4A及び複数のポールピース4Bとの回転軸10回りの位置関係の保持を解除するように駆動部106を制御する。これにより、非制動状態においてロータ1に制動力が発生することを抑制できる。
(その他の実施形態)
本発明に係る減速装置は、減速装置100,100a,100bに限らずその要旨の範囲内において変更可能である。
なお、減速装置100,100a,100bの構成を任意に組み合わせてもよい。
なお、減速装置100,100a,100bでは、ポールピースがステータに固定され、磁石がステータに回転可能に支持される。しかしながら、磁石がステータに固定され、ポールピースがステータに回転可能に支持されてもよい。この場合、駆動部は、ポールピースを保持するポールピース保持リングに接続される。
また、減速装置100,100a,100bでは、駆動部106は、空気圧により駆動しているが、油圧により駆動してもよいし、電動であってもよい。