以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
実施の形態1.
実施の形態1に係る、オイルコントロールバルブ(Oil Control Valve:以下、OCVと称す)を備えたバルブタイミング調整装置について、図1から図6を用いて詳細に説明する。
先ず、実施の形態1に係るOCVの構成について、図1を用いて説明する。図1Aは、OCVの外観図である。図1Bは、OCVの部分縦断面図である。図1Cは、OCVの縦断面図である。図1Dは、スプールの先端面を軸方向から見たときの図である。
バルブタイミング調整装置は、内燃機関となるエンジンの運転状態に応じて、その吸気バルブまたは排気バルブの開閉タイミングを調整するものである。これに対して、OCV10は、バルブタイミング調整装置の進角油圧室及び遅角油圧室に対するオイルの供給または排出あるいは保持を制御するものである。即ち、オイルは、バルブタイミング調整装置の作動流体となるものである。
OCV10は、センターボルト11、スプール12、ストッパ13、及び、ばね14を備えている。
センターボルト11は、バルブタイミング調整装置をカムシャフトに固定するためのボルトである。このセンターボルト11は、筒状をなしており、供給ポート21、進角ポート22、遅角ポート23、ドレインポート24、及び、仕切り25〜29を有している。なお、センターボルト11は、OCV10のハウジングを構成するものである。
供給ポート21、進角ポート22、及び、遅角ポート23は、センターボルト11の外周面と内周面との間を繋いでいる。更に、供給ポート21は、オイルの供給源と連通している。進角ポート22は、バルブタイミング調整装置の進角油圧室と連通しており、遅角ポート23は、バルブタイミング調整装置の遅角油圧室と連通している。また、ドレインポート24は、センターボルト11の先端側開口部を構成しており、OCV10の外部と常に連通している。なお、オイルの供給源は、バルブタイミング調整装置及びOCV10の外部に設けられている。
仕切り25〜29は、センターボルト11における内周面の周方向に沿って、環状に形成されると共に、その内周面から径方向内側に向けて突出している。そして、供給ポート21は、仕切り26,27の間に開口している。また、進角ポート22は、仕切り25,26の間に開口している。更に、遅角ポート23は、仕切り27,28の間に開口している。
但し、センターボルト11は、仕切り25,26の間に開口するポートを進角ポート22とし、仕切り27,28の間に開口するポートを遅角ポート23とする構成となっているが、仕切り25,26の間に開口するポートを遅角ポート23とし、仕切り27,28の間に開口するポートを進角ポート22とする構成としても構わない。即ち、供給ポート21は、センターボルト11の軸方向において、進角ポート22と遅角ポート23との間に配置されていれば良い。
スプール12は、センターボルト11における仕切り25〜29の径方向内側において、当該センターボルト11の軸方向に往復移動可能に支持されている。また、スプール12は、中空状をなしており、ドレインポート31、流路32、仕切り33〜38、及び、横溝39を有している。これにより、OCV10は、スプール12の移動量となるストローク量に応じて、供給ポート21、進角ポート22、遅角ポート23、及び、ドレインポート24を介して、バルブタイミング調整装置に対するオイルの給排を行うことができる。
ドレインポート31は、スプール12の外周面と内周面との間を繋いでおり、OCV10の外部と常に連通している、また、流路32は、スプール12内において、当該スプール12の軸方向に延びる流路であって、その基端側がドレインポート31と連通する一方、その先端がセンターボルト11のドレインポート24と連通している。
仕切り33〜38は、スプール12における外周面の周方向に沿って、環状に形成されると共に、その外周面から径方向外側に向けて突出している。即ち、仕切り33〜38は、仕切り25〜29内において、センターボルト11の軸方向において往復移動可能に支持されている。そして、ドレインポート31は、仕切り33よりもスプール12の軸方向外側で開口している。
横溝39は、流路32及び仕切り38をその径方向に貫通するように設けられており、当該仕切り38を切り欠くように形成されている。
ストッパ13は、スプール12の移動を規制するものである。このストッパ13は、環状をなしており、センターボルト11の基端側開口部内に設けられている。また、ストッパ13は、スプール12における最も基端側に配置された仕切り33が当接可能となると共に、ドレインポート31とその径方向において対向するように設けられている。
ばね14は、センターボルト11の先端側内部と、スプール12における流路32の先端との間に設けられており、スプール12をストッパ13に向けて付勢している。これにより、スプール12は、ストッパ13に対して仕切り33がセンターボルト11の先端側から当接するため、その基端側への移動が規制される。
このとき、仕切り33がストッパ13に当接したときのスプール12の移動位置は、初期位置となり、そのストローク量は、最小となる。また、仕切り33がストッパ13から最も離れたときのスプール12の移動位置は、最終位置となり、そのストローク量は、最大となる。即ち、スプール12は、初期位置と最終位置との間で往復移動する。
また、スプール12は、その基端が外部ソレノイドによって押圧される。これにより、スプール12の移動位置は、ばね14の付勢力と外部ソレノイドの押圧力との釣り合いによって決定される。言い換えれば、スプール12のストローク量は、外部ソレノイドに印加される電流値もしくはDuty値によって変化する。
更に、OCV10は、そのスプール12のストローク量の変化によって、5つの状態に移行可能となっている。具体的には、OCV10は、初期状態、遅角供給状態、中間保持状態、進角供給状態、及び、最終状態のうち、いずれか1つの状態に移行することができる。
次に、実施の形態1に係るOCVの5つの状態について、図2を用いて説明する。図2は、実施の形態1におけるスプールのストローク量に対する進角ポート及び遅角ポートの遷移状態を示した図である。
OCV10は、スプール12のストローク量が大きくなるに従って、初期状態、遅角供給状態、中間保持状態、進角供給状態、及び、最終状態の順に移行する。このとき、OCV10は、スプール12のストローク量が最小になった場合に、当該スプール12が初期位置に配置されて、初期状態に移行する。また、OCV10は、スプール12のストローク量が最大になった場合に、当該スプール12が最終位置に配置されて、最終状態に移行する。
初期状態とは、供給ポート21と進角ポート22とが連通することにより、供給ポート21に流入したオイルを、進角ポート22を介して、進角油圧室に供給する一方、供給ポート21と遅角ポート23とが連通することにより、供給ポート21に流入したオイルを、遅角ポート23を介して、遅角油圧室に供給する状態のことである。
遅角供給状態とは、進角ポート22とセンターボルト11の基端側開口部とが連通することにより、進角油圧室に貯留するオイルを、上記基端側開口部を介して排出する一方、供給ポート21と遅角ポート23とが連通することにより、供給ポート21に流入したオイルを、遅角ポート23を介して、遅角油圧室に供給する状態である。即ち、遅角供給状態とは、バルブタイミング調整装置のロータが遅角方向に向けて回転する状態である。
中間保持状態とは、進角ポート22が供給ポート21及びドレインポート24,31と遮断されることにより、進角油圧室内の油圧が現状のまま保持される一方、遅角ポート23が供給ポート21及びドレインポート24,31と遮断されることにより、遅角油圧室内の油圧が現状のまま保持される状態のことである。即ち、中間保持状態とは、バルブタイミング調整装置のロータが、現位相のまま保持される状態のことである。
進角供給状態とは、供給ポート21と進角ポート22とが連通することにより、供給ポート21に流入したオイルを、進角ポート22を介して、進角油圧室に供給する一方、遅角ポート23とドレインポート24,31とが連通することにより、遅角油圧室に貯留するオイルを、ドレインポート24,31を介して排出する状態のことである。即ち、進角供給状態とは、バルブタイミング調整装置のロータが進角方向に向けて回転する状態である。
最終状態とは、進角ポート22とセンターボルト11の基端側開口部とが連通することにより、進角油圧室に貯留するオイルを、上記基端側開口部を介して排出する一方、遅角ポート23とドレインポート24,31とが連通することにより、遅角油圧室に貯留するオイルを、ドレインポート24,31を介して排出する状態のことである。
次に、実施の形態1に係るOCVの動作について、図3及び図4を用いて説明する。図3Aは、OCVの初期状態を示した図である。図3Bは、OCVの遅角供給状態を示した図である。図3Cは、OCVの中間保持状態を示した図である。図4Aは、OCVの進角供給状態を示した図である。図4Bは、OCVの最終状態を示した図である。なお、図3A、図3B、図4A、及び、図4Bに記載した矢印は、オイルの流れを示している。
図3Aに示した初期状態のOCV10においては、仕切り25と仕切り34とは、互いに全周に亘って接触しており、それらの間をシールしている。仕切り28と仕切り38とは、互いに全周に亘って接触しており、それらの間をシールしている。
従って、供給ポート21から流入したオイルは、仕切り26,35,36の間を通過した後、仕切り25,34間のシールによって、進角ポート22に供給される。また、供給ポート21から流入したオイルは、仕切り27,36,37の間を通過した後、仕切り28,29間のシールによって、遅角ポート23に供給される。
図3Bに示した遅角供給状態のOCV10においては、仕切り26と仕切り35とは、互いに全周に亘って接触しており、それらの間をシールしている。仕切り28と仕切り38とは、互いに全周に亘って接触しており、それらの間をシールしている。
従って、進角ポート22に貯留するオイルは、仕切り25,33,34の間を通過した後、センターボルト11の基端側開口部からOCV10の外部に排出される。また、供給ポート21から流入したオイルは、仕切り27,36,37の間を通過した後、仕切り28,38間のシールによって、遅角ポート23に供給される。このとき、上記オイルは、仕切り26,35間のシールによって、進角ポート22に供給されることはない。
図3Cに示した中間保持状態のOCV10においては、仕切り25と仕切り33とは、互いに全周に亘って接触しており、それらの間をシールしている。仕切り26と仕切り35とは、互いに全周に亘って接触しており、それらの間をシールしている。仕切り27と仕切り36とは、互いに全周に亘って接触しており、それらの間をシールしている。仕切り28と仕切り38とは、互いに全周に亘って接触しており、それらの間をシールしている。
従って、供給ポート21から流入したオイルは、仕切り26,35間のシールによって、進角ポート22に供給されることはない。また、供給ポート21から流入したオイルは、仕切り27,36間のシールによって、遅角ポート23に供給されることはない。更に、進角ポート22に貯留するオイルは、仕切り25,33間のシールによって、OCV10の外部に排出されることはない。一方、遅角ポート23に貯留するオイルは、仕切り28,38間のシールによって、ドレインポート24,31から排出されることはない。
図4Aに示した進角供給状態のOCV10においては、仕切り25と仕切り33とは、互いに全周に亘って接触しており、それらの間をシールしている。仕切り27と仕切り36とは、互いに全周に亘って接触しており、それらの間をシールしている。
従って、供給ポート21から流入したオイルは、仕切り26,34,35の間を通過した後、仕切り25,33間のシールによって、進角ポート22に供給される。このとき、上記オイルは、仕切り27,36間のシールによって、遅角ポート23に供給されることはない。また、遅角ポート23に貯留するオイルは、仕切り28,37,38の間を通過した後、横溝39から流路32に流入して、ドレインポート24,31から排出される。
図4Bに示した最終状態のOCV10においては、仕切り26と仕切り34とは、互いに全周に亘って接触しており、それらの間をシールしている。仕切り27と仕切り36とは、互いに全周に亘って接触しており、それらの間をシールしている。
従って、供給ポート21から流入したオイルは、仕切り26,34間のシールによって、進角ポート22に供給されることはない。また、供給ポート21から流入したオイルは、仕切り27,36間のシールによって、遅角ポート23に供給されることはない。更に、進角ポート22に貯留するオイルは、仕切り25,33の間を通過した後、センターボルト11の基端側開口部からOCV10の外部に排出される。一方、遅角ポート23に貯留するオイルは、仕切り28,37,38の間を通過した後、横溝39から流路32に流入して、ドレインポート24,31から排出される。
次に、実施の形態1に係るバルブタイミング調整装置の構成について、図5を用いて説明する。図5は、実施の形態1に係るバルブタイミング調整装置の横断面図である。
図5に示した実施の形態1に係るバルブタイミング調整装置は、ロータ52を任意の位相でロックすることができる。また、そのバルブタイミング調整装置は、OCV10を一体的に備えるものであるが、当該OCV10を別体として備えても構わない。なお、図5に示したOCV10は、簡略して図示している。
バルブタイミング調整装置は、OCV10、ケース51、ロータ52、ばね53、ホルダ54、及び、ロックピン55a,55bを備えている。
ケース51は、環状をなしており、エンジンのクランクシャフトに対して同期回転するものである。このケース51は、複数のシュー51a及びスプロケット51bを有している。シュー51aは、ケース51の内周面からその径方向内側に向けて突出するように設けられている。スプロケット51bは、ケース51の外周部に沿って設けられており、クランクシャフトの回転駆動力を受けるものである。
ロータ52は、ケース51の内部において、当該ケース51に対して相対回転可能に同軸上に配置されており、エンジンにおけるバルブ開閉用のカムシャフトと一体的に回転するものである。また、ロータ52は、複数のベーン52aを有している。ベーン52aは、ロータ52の外周面からその径方向外側に向けて突出するように設けられている。更に、ベーン52aは、隣接するシュー51a間に形成される油圧室に進入するように配置されている。
これにより、上記油圧室は、ベーン52aによって、進角油圧室61と遅角油圧室62とに仕切られており、ケース51の内周面とロータ52の外周面との間には、進角油圧室61及び遅角油圧室62が区画形成されている。そして、進角油圧室61は、OCV10における進角ポート22と連通している。また、遅角油圧室62は、OCV10における遅角ポート23と連通している。
即ち、オイルがOCV10から進角油圧室61または遅角油圧室62に供給されると、ベーン52aは、それらの圧力差に応じて、ケース51に対して相対的に回転する。オイルが進角油圧室61に供給された場合には、ロータ52は、進角方向に位相がずれるため、ケース51の位相よりも進んで回転する。一方、オイルが遅角油圧室62に供給された場合には、ロータ52は、遅角方向に位相がずれるため、ケース51の位相よりも遅れて回転する。
ばね53、ホルダ54、及び、ロックピン55a,55b、は、ケース51の内周面とベーン52aの先端面との間に設けられている。なお、ロックピン55aは、進角側ロックピンを構成し、ロックピン55bは、遅角側ロックピンを構成している。
ばね53は、ホルダ54を介して、ベーン52aの先端面に設けられている。また、ばね53は、付勢方向がケース51及びロータ52の各軸方向と略直交するように配置されている。
ロックピン55a,55bは、ばね53をその付勢方向両側から挟み込むように設けられている。また、ロックピン55a,55bは、その軸方向がケース51及びロータ52の各軸方向と略一致するように配置されている。
具体的には、ロックピン55aは、ばね53の進角油圧室61側で、且つ、当該進角油圧室61と対接するように配置されている。これにより、ロックピン55aは、ばね53によって、進角油圧室61側に向けて付勢されることになり、ケース51の内周面とベーン52aの先端面との間に挟まれた状態となる。
一方、ロックピン55bは、ばね53の遅角油圧室62側で、且つ、当該遅角油圧室62と対接するように配置されている。これにより、ロックピン55bは、遅角油圧室62側に向けて付勢されることになり、ケース51の内周面とベーン52aの先端面との間に挟まれた状態となる。
次に、実施の形態1に係るバルブタイミング調整装置の動作について、図6及び図7を用いて説明する。図6Aは、ロータが遅角側から原位相に復帰するときのバルブタイミング調整装置の横断面図である。図6Bは、ロータが進角側から原位相に復帰するときのバルブタイミング調整装置の横断面図である。図7Aは、OCVの遅角供給状態におけるバルブタイミング調整装置の横断面図である。図7Bは、OCVの進角供給状態におけるバルブタイミング調整装置の横断面図である。図7Cは、OCVの最終状態におけるバルブタイミング調整装置の横断面図である。
但し、図6Aから図7Cにおいては、ロータ52のロック位相となる原位相を、最進角位相と最遅角位相との間の中間位相として説明しているが、原位相は、最進角位相と最遅角位相との間における任意の位相であれば良い。このとき、原位相は、最進角位相または最遅角位相であっても構わない。
図6A及び図6Bに示すように、バルブタイミング調整装置におけるロータ52は、現在の位相が進角側または遅角側のどちらかに位置していようと、OCV10が初期状態に移行した場合には、その位相が原位相に復帰するようになっている。
OCV10が初期状態に移行した場合には、供給ポート21から流入したオイルは、進角ポート22及び遅角ポート23の両ポートに供給され続けるため、進角油圧室61及び遅角油圧室62の両油圧室は、オイルで満たされる。これにより、ロータ52には、進角油圧室61側及び遅角油圧室62側の両方向から油圧が作用することになるが、結果として、それらの油圧は、逆方向に作用して打ち消し合うため、相殺される。
従って、ロータ52に作用する力は、ロータ52を進角方向に向けて付勢するためのアシストトルクTaと、カムシャフトに設けられたカムの反力となるカムトルクTcとになる。また、ロックピン55a,55bは、進角油圧室61及び遅角油圧室62からの油圧をそれぞれ受けるため、互いにばね53の付勢力に抗して移動することになり、ロータ52はケース51に対してロックが解除された状態となる。なお、アシストトルクTaの付勢範囲は、最遅角位相から原位相までの範囲となっている。
よって、図6Aに示しように、ロータ52の位相が原位相よりも遅角側に位置する場合には、当該ロータ52には、進角方向へのアシストトルクTaと、遅角方向へのカムトルクTcとが作用している。これにより、バルブタイミング調整装置は、アシストトルクTaの値をカムトルクTcの平均値よりも大きく設定することにより、ロータ52を原位相に復帰させることができる。
また、図6Bに示すように、ロータ52の位相が原位相よりも進角側に位置する場合には、当該ロータ52には、遅角方向へのカムトルクのみが作用している。これにより、バルブタイミング調整装置は、ロータ52を原位相に復帰させることができる。
図7Aに示した遅角供給状態におけるバルブタイミング調整装置は、オイルは、遅角油圧室62に供給されている。これにより、ロックピン55bは、遅角油圧室62から作用する油圧によって、ばね53の付勢力に抗して、ケース51の内周面とベーン52aの先端面との間から脱し、遅角方向に向けて移動する。これに伴って、ベーン52aが遅角方向に向けて回転し始めると、ロックピン55aは、ケース51の内周面とベーン52aの先端面との間から脱して、進角方向に向けて滑る。従って、ロータ52は、ケース51に対して、遅角方向に回転する。
図7Bに示した進角供給状態におけるバルブタイミング調整装置は、オイルは、進角油圧室61に供給されている。これにより、ロックピン55aは、進角油圧室61から作用する油圧によって、ばね53の付勢力に抗して、ケース51の内周面とベーン52aの先端面との間から脱し、進角方向に向けて移動する。これに伴って、ベーン52aが進角方向に向けて回転し始めると、ロックピン55bは、ケース51の内周面とベーン52aの先端面との間から脱して、遅角方向に向けて滑る。従って、ロータ52は、ケース51に対して、進角方向に回転する。
図7Cに示した最終状態におけるバルブタイミング調整装置は、オイルは、進角油圧室61及び遅角油圧室62の双方に供給されていない。これにより、ばね53は、ロックピン55aを、進角油圧室61側に向けて付勢して、ケース51の内周面とベーン52aの先端面との間に挟み込む一方、ロックピン55bを、遅角油圧室62側に向けて付勢して、ケース51の内周面とベーン52aの先端面との間に挟み込む。従って、ロータ52は、ケース51に対する相対回転が規制され、当該ケース51に対してロックされた状態となる。なお、図7Cは、ロータ52が原位相でロックされた状態を示している。
従って、実施の形態1に係るバルブタイミング調整装置は、エンジンのアイドリングスタート/ストップモードにおいて、アイドリングストップに移行する直前に、その時のオイルの温度に応じた位相を予め求めた後、ロータ52をその位相まで回転させてから、OCV10を最終状態に移行させることができる。これにより、バルブタイミング調整装置は、アイドリングストップ直前において、ロータを、エンジンにおける燃焼室の温度に相関するオイルの温度に応じた位相で、ロックすることができるので、エンジン再始動時において、ノイズの発生を抑えつつ、燃費向上及び排ガス低減を図ることができる。なお、アイドリングスタート/ストップモードとは、車速がゼロで、且つ、エンジンが駆動しているモードのことである。
また、エンジンのアイドル状態で、ロータが原位相とは異なる位相に配置された場合であって、車両がキーオフされてからエンジンが停止するまでの僅かな期間において、そのロータが原位相まで復帰できなかった場合には、従来のバルブタイミング調整装置は、次回の車両へのキーオン時において、その進角油圧室及び遅角油圧室からオイルが排出されているため、エンジン始動時に、ロータがケースに衝突して、ノイズが発生していた。
これに対して、実施の形態1に係るバルブタイミング調整装置は、上述した僅かな期間でも、OCV10を初期状態に移行させて、ロータ52を原位相に復帰させることができる。その後、エンジンが完全に停止すると、進角油圧室及び遅角油圧室に貯留するオイルは、自然に排出されるため、ロータ52は、原位相でロックされる。
次に、実施の形態1に係るバルブタイミング調整装置をエンジンのアイドル状態において使用したときの動作について、図8を用いて説明する。図8Aは、車両がキーオフされたときの状態を示した図である。図8Bは、ロータが原位相に復帰する状態を示した図である。図8Cは、ロータがロックされた状態を示した図である。
図8Aに示したバルブタイミング調整装置は、エンジンのアイドル状態において、ロータ52を原位相よりも進角側に回転させて使用している。このような使用状態から車両がキーオフされた場合には、OCV10を駆動させるための外部ソレノイドへの通電は、遮断されるため、当該外部ソレノイドは、無通電状態となる。この結果、スプール12のストローク量は最小となり、これに伴って、OCV10は初期状態に移行する。
次いで、図8Bに示すように、ロータ52は、車両がキーオフされてからエンジンが停止するまでの僅かな期間において、原位相に復帰する。そして、図8Cに示すように、エンジンが完全に停止することにより、進角油圧室61及び遅角油圧室62貯留するオイルは、当該進角油圧室61及び遅角油圧室62から排出される。これにより、ロータ52は、ロックピン55a,55bの働きによって、原位相でロックされる。
従って、バルブタイミング調整装置は、エンジンのアイドル状態で、ロータ52が原位相とは異なる位相に配置された場合であって、車両がキーオフされてからエンジンが停止するまでの僅かな期間において、ロータ52がどのような位相に配置されていても、当該ロータ52を原位相に復帰させることができる。これにより、バルブタイミング調整装置は、次回のキーオン時であっても、ロータ52をロックしているため、エンジン始動時において、ロータ52のケース51への衝突を防止することができるので、ノイズの発生を抑えることができる。
以上より、実施の形態1に係るバルブタイミング調整装置におけるロータ52は、最遅角位相から当該最遅角位相と最進角位相との間に位置する原位相まで進角方向に向けて付勢されている。また、実施の形態1に係るバルブタイミング調整装置におけるOCV10は、オイルの供給源と連通する供給ポート21、進角油圧室61と連通する進角ポート22、遅角油圧室62と連通する遅角ポート23、及び、OCV10の外部と連通するドレインポート24を有するセンターボルト11と、センターボルト11内における初期位置と最終位置との間で往復移動し、ストローク量に応じて、供給ポート21、進角ポート22、遅角ポート23、及び、ドレインポート24を介して、オイルの給排を行うスプール12とを備えている。そして、OCV10は、スプール12が初期位置に配置されたときに、供給ポート21と進角ポート22及び遅角ポート23とを連通させる。また、OCV10は、スプール12が最終位置に配置されたときに、進角ポート22とOCV10の外部とを連通させる一方、遅角ポート23とドレインポート24とを連通させる。
これにより、バルブタイミング調整装置は、エンジンのアイドリングスタート/ストップモードにおいて、ロータ52をオイルの温度に応じた位相でロックすることができる。この結果、バルブタイミング調整装置は、エンジン再始動時において、ノイズの発生を抑えつつ、燃費向上及び排ガス低減を図ることができる。
実施の形態2.
実施の形態2に係るバルブタイミング調整装置は、実施の形態1に係るバルブタイミング調整装置に対して、初期状態及び最終状態におけるオイルの給排関係を逆に設定したものである。
先ず、実施の形態2に係るOCVに構成について図9を用いて説明する。図9Aは、OCVの外観図である。図9Bは、OCVの部分縦断面図である。図9Cは、OCVの縦断面図である。図9Dは、スプールの先端面を軸方向から見たときの図である。図9Eは、ストッパのストッパ面を軸方向から見たときの図である。
OCV10Aは、センターボルト11、スプール12A、ストッパ13、及び、ばね14を備えている。なお、センターボルト11は、OCV10Aのハウジングを構成するものである。
スプール12Aは、センターボルト11における仕切り25〜29の径方向内側において、当該センターボルト11の軸方向に往復移動可能に支持されている。また、スプール12Aは、中空状をなしており、ドレインポート31、流路32、横溝39、及び、仕切り41〜47を有している。これにより、OCV10Aは、スプール12Aの移動量となるストローク量に応じて、供給ポート21、進角ポート22、遅角ポート23、及び、ドレインポート24を介して、バルブタイミング調整装置に対するオイルの給排を行うことができる。
仕切り41〜47は、スプール12Aにおける外周面の周方向に沿って、環状に形成されると共に、その外周面から径方向外側に向けて突出している。即ち、仕切り41〜47は、仕切り25〜29内において、センターボルト11の軸方向に往復移動可能に支持されている。そして、ドレインポート31は、仕切り41よりもスプール12Aの軸方向外側で開口している。また、横溝39は、流路32及び仕切り47の中心を通るように形成されている。
ストッパ13は、横溝13aを有している。この横溝13aは、当該ストッパ13の中心を通るように形成されている。また、横溝13aは、センターボルト11の軸方向において、仕切り41と対向しており、センターボルト11の内周面とスプール12Aの外周面との間に形成される隙間通路と連通している。
ばね14は、センターボルト11の先端側内部と、スプール12Aにおける流路32の先端との間に設けられており、スプール12Aをストッパ13に向けて付勢している。これにより、スプール12Aは、ストッパ13に対して仕切り41がセンターボルト11の先端側から当接するため、その基端側への移動が規制される。
このとき、仕切り41がストッパ13に当接したときのスプール12Aの移動位置は、初期位置となり、そのストローク量は、最小となる。また、仕切り41がストッパ13から最も離れたときのスプール12Aの移動位置は、最終位置となり、そのストローク量は、最大となる。即ち、スプール12Aは、初期位置と最終位置との間で往復移動する。
また、スプール12Aは、その基端が外部ソレノイドによって押圧される。これにより、スプール12Aの移動位置は、ばね14の付勢力と外部ソレノイドの押圧力との釣り合いによって決定される。言い換えれば、スプール12Aのストローク量は、外部ソレノイドに印加される電流値もしくはDuty値によって変化する。
更に、OCV10Aは、そのスプール12Aのストローク量の変化によって、5つの状態に移行可能となっている。具体的には、OCV10Aは、初期状態、遅角供給状態、中間保持状態、進角供給状態、及び、最終状態のうち、いずれか1つの状態に移行することができる。
次に、実施の形態2に係るOCVの5つの状態について、図10を用いて説明する。図10は、実施の形態2におけるスプールのストローク量に対する進角ポート及び遅角ポートの遷移状態を示した図である。
初期状態とは、進角ポート22とセンターボルト11の基端側開口部とが連通することにより、進角油圧室に貯留するオイルを、上記基端側開口部を介して排出する一方、遅角ポート23とドレインポート24,31とが連通することにより、遅角油圧室に貯留するオイルを、ドレインポート24,31を介して、排出する状態のことである。
遅角供給状態とは、進角ポート22とセンターボルト11の基端側開口部とが連通することにより、進角油圧室に貯留するオイルを、上記基端側開口部を介して排出する一方、供給ポート21と遅角ポート23とが連通することにより、供給ポート21に流入したオイルを、遅角ポート23を介して、遅角油圧室に供給する状態である。即ち、遅角供給状態とは、バルブタイミング調整装置のロータが遅角方向に向けて回転する状態である。
中間保持状態とは、進角ポート22が供給ポート21及びドレインポート24,31と遮断されることにより、進角油圧室内の油圧が現状のまま保持される一方、遅角ポート23が供給ポート21及びドレインポート24,31と遮断されることにより、遅角油圧室内の油圧が現状のまま保持される状態のことである。即ち、中間保持状態とは、バルブタイミング調整装置のロータが、現位相のまま保持される状態のことである。
進角供給状態とは、供給ポート21と進角ポート22とが連通することにより、供給ポート21に流入したオイルを、進角ポート22を介して、進角油圧室に供給する一方、遅角ポート23とドレインポート24,31とが連通することにより、遅角油圧室に貯留するオイルを、ドレインポート24,31を介して、排出する状態のことである。即ち、進角供給状態とは、バルブタイミング調整装置のロータが進角方向に向けて回転する状態である。
最終状態とは、供給ポート21と進角ポート22とが連通することにより、供給ポート21に流入したオイルを、進角ポート22を介して、進角油圧室に供給する一方、供給ポート21と遅角ポート23とが連通することにより、供給ポート21に流入したオイルを、遅角ポート23を介して、遅角油圧室に供給する状態のことである。
次に、実施の形態2に係るOCVの動作について、図11及び図12を用いて説明する。図11Aは、OCVの初期状態を示した図である。図11Bは、OCVの遅角供給状態を示した図である。図11Cは、OCVの中間保持状態を示した図である。図12Aは、OCVの進角供給状態を示した図である。図12Bは、OCVの最終状態を示した図である。なお、図11A、図11B、図12A、及び、図12Bに記載した矢印は、オイルの流れを示している。
図11Aに示した初期状態のOCV10Aにおいては、仕切り26と仕切り42とは、互いに全周に亘って接触しており、それらの間をシールしている。仕切り27と仕切り44とは、互いに全周に亘って接触しており、それらの間をシールしている。
従って、供給ポート21から流入したオイルは、仕切り26,42間のシールによって、進角ポート22に供給されることはない。また、供給ポート21から流入したオイルは、仕切り27,44間のシールによって、遅角ポート23に供給されることはない。更に、進角ポート22に貯留するオイルは、仕切り25,41の間を通過した後、横溝13aを介して、センターボルト11の基端側開口部から排出される。一方、遅角ポート23に貯留するオイルは、仕切り28,46,47の間を通過した後、横溝39から流路32に流入して、ドレインポート24,31から排出される。
図11Bに示した遅角供給状態のOCV10Aにおいては、仕切り26と仕切り42とは、互いに全周に亘って接触しており、それらの間をシールしている。仕切り28と仕切り46とは、互いに全周に亘って接触しており、それらの間をシールしている。
従って、進角ポート22に貯留するオイルは、仕切り25,41の間を通過した後、センターボルト11の基端側開口部からOCV10の外部に排出される。また、供給ポート21から流入したオイルは、仕切り27,43,44の間を通過した後、仕切り28,46間のシールによって、遅角ポート23に供給される。このとき、上記オイルは、仕切り26,42間のシールによって、進角ポート22に供給されることはない。
図11Cに示した中間保持状態のOCV10Aにおいては、仕切り25と仕切り41とは、互いに全周に亘って接触しており、それらの間をシールしている。仕切り26と仕切り42とは、互いに全周に亘って接触しており、それらの間をシールしている。仕切り27と仕切り43とは、互いに全周に亘って接触しており、それらの間をシールしている。仕切り28と仕切り46とは、互いに全周に亘って接触しており、それらの間をシールしている。
従って、供給ポート21から流入したオイルは、仕切り26,42間のシールによって、進角ポート22に供給されることはない。また、供給ポート21から流入したオイルは、仕切り27,43間のシールによって、遅角ポート23に供給されることはない。更に、進角ポート22に貯留するオイルは、仕切り25,41間のシールによって、OCV10Aの外部に排出されることはない。一方、遅角ポート23に貯留するオイルは、仕切り28,46間のシールによって、ドレインポート24,31から排出されることはない。
図12Aに示した進角供給状態のOCV10Aにおいては、仕切り25と仕切り41とは、互いに全周に亘って接触しており、それらの間をシールしている。仕切り27と仕切り43とは、互いに全周に亘って接触しており、それらの間をシールしている。
従って、供給ポート21から流入したオイルは、仕切り26,42の間を通過した後、仕切り25,41間のシールによって、進角ポート22に供給される。このとき、上記オイルは、仕切り27,43間のシールによって、遅角ポート23に供給されることはない。また、遅角ポート23に貯留するオイルは、仕切り28,45,46の間を通過した後、横溝39から流路32に流入して、ドレインポート24,31から排出される。
図12Bに示した最終状態のOCV10Aにおいては、仕切り25と仕切り41とは、互いに全周に亘って接触しており、それらの間をシールしている。仕切り28と仕切り45とは、互いに全周に亘って接触しており、それらの間をシールしている。
従って、供給ポート21から流入したオイルは、仕切り26,42の間を通過した後、仕切り25,41間のシールによって、進角ポート22に供給される。また、供給ポート21から流入したオイルは、仕切り27,42,43の間を通過した後、仕切り28,45間のシールによって、供給ポート21に供給される。
以上より、実施の形態2に係るバルブタイミング調整装置におけるロータ52は、最遅角位相から当該最遅角位相と最進角位相との間に位置する原位相まで進角方向に向けて付勢されている。また、実施の形態2に係るバルブタイミング調整装置におけるOCV10Aは、オイルの供給源と連通する供給ポート21、進角油圧室61と連通する進角ポート22、遅角油圧室62と連通する遅角ポート23、及び、OCV10Aの外部と連通するドレインポート24を有するセンターボルト11と、センターボルト11内における初期位置と最終位置との間で往復移動し、ストローク量に応じて、供給ポート21、進角ポート22、遅角ポート23、及び、ドレインポート24を介して、オイルの給排を行うスプール12Aとを備えている。そして、OCV10Aは、スプール12Aが初期位置に配置されたときに、進角ポート22とOCV10Aの外部とを連通させる一方、遅角ポート23とドレインポート24とを連通させる。また、OCV10Aは、スプール12Aが最終位置に配置されたときに、供給ポート21と進角ポート22及び遅角ポート23とを連通させる。
これにより、バルブタイミング調整装置は、エンジンのアイドリングスタート/ストップモードにおいて、ロータ52をオイルの温度に応じた位相でロックすることができる。この結果、バルブタイミング調整装置は、エンジン再始動時において、ノイズの発生を抑えつつ、燃費向上及び排ガス低減を図ることができる。
なお、本願発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは、各実施の形態における任意の構成要素の変形、もしくは、各実施の形態における任意の構成要素の省略が可能である。