JP6795985B2 - 副室式ガスエンジン - Google Patents

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Description

本開示は、副燃焼室(副室)で生成された燃焼火炎を少なくとも一つの噴孔を介して主燃焼室(主室)に噴出せしめることで、主燃焼室の混合気を燃焼させる副室式ガスエンジンに関する。
従来から、希薄予混合気を効率良く燃焼させることが可能なエンジンとして副室式ガスエンジンが知られている(例えば、特許文献1〜2)。副室式ガスエンジンは、ピストンとシリンダヘッドとの間に画定される主燃焼室(主室)と、シリンダ上部などの主燃焼室に近接して設けられた副室とを有しており、複数の噴孔を介して、主燃焼室と副室とが連通される。そして、点火プラグなどの着火装置により副室の混合気を着火することにより、この着火によって生じた燃焼火炎が副室の下部に設けられた複数の噴孔の各々から噴出し、主燃焼室の希薄予混合気を燃焼させる。より詳細には、エンジンの吸気行程でシリンダ内に導入された希薄予混合気の一部が、圧縮行程において複数の噴孔の各々を介して副室に流入し、副室ガス供給装置によって副室に供給されている副室燃料と混合されて、副室には着火に適した濃度を有する混合気が生成される。この状態の混合気が着火装置により着火され、その燃焼火炎が噴孔からシリンダへ噴出し、これを火種(トーチ)として主燃焼室の希薄予混合気が着火、燃焼する。これによって、主燃焼室における希薄燃料の燃焼が可能となり、低燃費(高効率化)を実現している。また、主燃焼室での希薄混合ガスの燃焼は、比較的低温の燃焼であるため、NOx等の発生量を低減し、低公害を実現可能としている。
このような副室式ガスエンジンでは、主燃焼室の混合気(希薄予混合気)は、燃焼行程において複数の噴孔の各々を介して副室から主燃焼室に噴出する燃焼火炎(トーチジェット)により着火されるところ、主燃焼室において混合気の燃焼火炎の火炎伝搬にばらつきがあると、ノッキング等の異常現象の一因となる。このような課題に対して、特許文献2では、上記の主燃焼室における火炎伝播速度のばらつきの要因は、給気ポートが存在する側の給気側領域におけるシリンダ壁面の温度が、排気ポートが存在する側の排気側領域におけるシリンダ壁面の温度よりも低いことにあるとの知見に基づいて、給気側領域に配置された給気側噴孔の噴孔面積の合計が、排気側領域に配置された排気側噴孔の噴孔面積の合計よりも大きくすることが開示されている。これによって、給気側噴孔からのトーチジェットにより着火された給気側混合気の火炎がシリンダ壁面まで到達する時間を短くし、ノッキング発生の抑制を図っている。
また、特許文献3には、上述した副室を備えていない内燃機関が開示されている。より詳細には、シリンダヘッドの底面とシリンダブロックのボアと当該ボア内を摺動するピストンの頂面とから燃焼室が構成され、シリンダヘッドの底面に点火プラグが設けられた内燃機関が開示されている。この特許文献3には、シリンダヘッドの底面やピストンの頂面に形成される遮熱膜が開示されており、この遮熱膜による断熱性能を点火プラグ近傍が最も高く、点火プラグから遠ざかるにつれて徐々に低減させることにより、断熱性と耐ノッキング性の向上を図っている。
特開2016−3608号公報 特開2014−62484号公報 特許第5673160号公報
しかしながら、副室式のガスエンジンにおいて、特許文献3のような、ピストンとシリンダヘッドとの間に画定される主燃焼室の内面に遮熱膜を形成して、この遮熱膜による断熱性能を副室内の点火プラグに最も近い主燃焼室の噴孔近傍を最も高く、噴孔から遠ざかるにつれて徐々に低減させる構成にしても、ノッキングの発生を抑制することはできない。
この理由としては、副室を備えていない内燃機関と、副室式ガスエンジンとの火炎の伝播の違いが挙げられる。すなわち、点火プラグにより直接着火される副室を備えていない内燃機関とは異なり、副室式ガスエンジンは、複数の噴孔から主燃焼室に噴出するトーチジェットにより主燃焼室の混合気が着火されるので、火炎の伝播に違いが生じる。このため、上述した特許文献3のような構成にした場合には、主燃焼室において断熱性能が不足する部分が生じるおそれがある。
主燃焼室の断熱性能が適切でないと、主燃焼室の内面であるピストンの頂面やシリンダヘッドの底面に、トーチジェットから伝播した火炎が到達した際に、火炎と、当該火炎よりも低温であるピストンの頂面やシリンダヘッドの底面との温度差が大きくなるので、ピストンの頂面やシリンダヘッドの底面に熱を奪われて火炎の一部が消炎するおそれがある。そして、消炎が発生すると、トーチジェットから伝播した火炎が主燃焼室全体に広がるまでにその分時間がかかることになる。
火炎が主燃焼室全体に広がるまでにかかる時間が長いと、主燃焼室内の火炎が到達していない部分の未燃ガスが長期間高温にさらされることになるので、ノッキング等の一因となり、ガスエンジンの熱効率や出力向上が阻害されることになる。
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、主燃焼室における火炎伝播の局所的な停滞によるノッキングの発生を防止することが可能な副室式ガスエンジンを提供することを目的とする。
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る副室式ガスエンジンは、
主燃焼室を形成する主室形成部と、
前記主燃焼室と少なくとも一つの噴孔を介して連通される副室を形成する副室形成部と、
前記副室に設けられた着火装置と、を備え、
前記副室において副室用燃料を燃焼して形成したトーチジェットを前記少なくとも一つの噴孔を介して前記主燃焼室に噴射する副室式ガスエンジンであって、
前記主室形成部は、ピストンと、シリンダヘッドとを含み、
前記ピストン、又は、前記シリンダヘッドの少なくともいずれか一方は、
前記少なくとも一つの噴孔から噴射される前記トーチジェットのポテンシャルコアの先端を含む領域である第1火炎伝播領域に面する第1内面と、
前記第1火炎伝播領域の周囲に形成される領域である第2火炎伝播領域に面する第2内面と、を含み、
前記第1内面は、前記第2内面よりも高い断熱性能を有する。
上記(1)の構成によれば、主室形成部のピストンとシリンダヘッドの少なくともいずれか一方は、第1火炎伝播領域に面する第1内面と第2火炎伝播領域に面する第2内面とを含み、第1内面は第2内面よりも高い断熱性能を有しているので、燃焼行程により加えられた熱が排気行程、吸気行程および圧縮行程を経ても保持され第1内面は高温を維持する。ここで、本発明者らは、主室形成部における燃焼火炎は、噴孔から噴射されたトーチジェットのポテンシャルコア、このポテンシャルコアの先端を含む領域である第1火炎伝播領域、第1火炎伝播領域の周囲に形成される第2火炎伝播領域の順に伝播され、第1火炎伝播領域の面する第1内面は第2火炎伝播領域の面する第2内面よりも先に火炎が到達することを見出した。上述したように、第1内面は高温を維持するため、第1内面に接する火炎は、第1内面に接する時間が第2内面に接する火炎が第2内面に接する時間よりも長くても、第1内面に接する火炎と第1内面との温度差が小さく、第1内面により熱を奪われてその一部が消炎することを防止することができる。そして、火炎の一部が消炎することを防止できるので、トーチジェットから伝播した火炎が主燃焼室全体に広がるまでにかかる時間を短縮することができ、ノッキングの発生を防止することができる。
また、第2内面は、第1内面よりも低い断熱性能を有しているため、第1内面よりも低温となるが、第2内面に接する火炎は、第2内面に接する時間が第1内面に接する火炎が第1内面に接する時間よりも短いので、第2内面により熱を奪われてその一部が消炎することを防止することができる。さらに、第2内面近傍の未燃ガスが過度に高温になることを防止することができるので、ノッキングの発生を防止することができる。
したがって、上記の構成によれば、第1内面が第2内面よりも高い断熱性能を有することにより主燃焼室における火炎伝播の局所的な停滞によるノッキングの発生を防止することができる。
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記第1内面には、前記第2内面に形成される遮熱膜よりも高い断熱性能を有する遮熱膜が形成される。
上記(2)の構成によれば、第1内面と第2内面のそれぞれに形成された遮熱膜により第1内面と第2内面は断熱性能を有し、かつ、各々の遮熱膜の断熱性能の違いにより第1内面の断熱性能を第2内面よりも高くすることができ、主燃焼室における火炎伝播の局所的な停滞を防止することができる。
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(2)の構成において、
前記少なくとも一つの噴孔は、第1噴孔と、前記第1噴孔と隣接する第2噴孔とを含み、
前記第1噴孔から噴射されたトーチジェットによる火炎伝播領域と、前記第2噴孔から噴射されたトーチジェットによる火炎伝播領域とが重複する領域に面する前記主室形成部の内面は、前記第1噴孔を基準とした断熱性能、及び前記第2噴孔を基準とした断熱性能のいずれか高い方の断熱性能を有する。
上記(3)の構成によれば、第1噴孔から噴射されたトーチジェットによる火炎伝播領域と、第1噴孔と隣接する第2噴孔から噴射されたトーチジェットによる火炎伝播領域とが重複する領域に面する主室形成部の内面は、第1噴孔と第2噴孔のそれぞれを基準とした断熱性能の内、高い方の断熱性能を有する。これによって、第1噴孔と第2噴孔それぞれから噴射されたトーチジェットから伝播される火炎の内、重複する領域に面する主室形成部の内面に、先に到達する火炎に対応した断熱性能を有するので、重複する領域に面する主室形成部の内面の近傍における火炎伝播の局所的な停滞を防止することができる。
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)〜(3)の構成において、
前記第1内面には、前記第2内面に形成される遮熱膜よりも膜の厚さが厚い遮熱膜が形成される。
上記(4)の構成によれば、遮熱膜の厚さを厚くすると断熱性能は高くなる。このため、第1内面の遮熱膜を第2内面の遮熱膜よりも膜の厚さを厚くすることで、第1内面の断熱性能を第2内面よりも高くすることができ、主燃焼室における火炎伝播の局所的な停滞を防止することができる。
(5)幾つかの実施形態では、上記(2)〜(4)の構成において、
前記第1内面には、前記第2内面に形成される遮熱膜よりも表面粗さが小さい遮熱膜が形成される。
上記(5)の構成によれば、遮熱膜の表面粗さを小さくすると、その伝熱面積が小さくなり放熱性能が低下することから断熱性能は高くなる。このため、第1内面の遮熱膜を第2内面の遮熱膜よりも膜の表面粗さを小さくすることで、第1内面の断熱性能を第2内面よりも高くすることができ、主燃焼室における火炎伝播の局所的な停滞を防止することができる。
(6)幾つかの実施形態では、上記(2)〜(5)の構成において、
前記第1内面には、前記第2内面に形成される遮熱膜よりも気孔率が高い遮熱膜が形成される。
上記(6)の構成によれば、遮熱膜の気孔率が高いと、放熱性能が低下することから断熱性能は高くなる。このため、第1内面の遮熱膜を第2内面の遮熱膜よりも気孔率の高いものにすることで、第1内面の断熱性能を第2内面よりも高くすることができ、主燃焼室における火炎伝播の局所的な停滞を防止することができる。
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(6)の構成において、
前記第1火炎伝播領域に面する前記シリンダヘッドの内面であるシリンダヘッド側第1内面は、前記第1火炎伝播領域に面する前記ピストンの内面であるピストン側第1内面よりも高い断熱性能を有する。
上記(7)の構成によれば、シリンダヘッド側第1内面はピストン側第1内面よりも高い断熱性能を有する。ここで、同じ第1火炎伝播領域に面するシリンダヘッド側第1内面とピストン側第1内面であっても、シリンダヘッド側第1内面の方がトーチジェットから伝播される火炎が先に到達する部分が多いので、シリンダヘッド側第1内面の断熱性能をピストン側第1内面よりも高くすることで、主燃焼室における火炎伝播の局所的な停滞を防止することができる。
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)〜(7)の構成において、
前記第2火炎伝播領域に面する前記シリンダヘッドの内面であるシリンダヘッド側第2内面は、前記第2火炎伝播領域に面する前記ピストンの内面であるピストン側第2内面よりも高い断熱性能を有する。
上記(8)の構成によれば、シリンダヘッド側第2内面はピストン側第2内面よりも高い断熱性能を有する。ここで、同じ第2火炎伝播領域に面するシリンダヘッド側第2内面とピストン側第2内面であっても、シリンダヘッド側第2内面の方がトーチジェットから伝播される火炎が先に到達する部分が多いので、シリンダヘッド側第2内面の断熱性能をピストン側第2内面よりも高くすることで、主燃焼室における火炎伝播の局所的な停滞を防止することができる。
本発明の少なくとも一実施形態によれば、主燃焼室における火炎伝播の局所的な停滞によるノッキングの発生を防止することが可能な副室式ガスエンジンが提供される。
本発明の一実施形態にかかる副室式ガスエンジンを概略的に示す断面図である。 図1に示す、噴孔径と、副室形成部の噴孔からのトーチジェットによるポテンシャルコアとの関係の一例を示した概略図である。 本発明の一実施形態にかかる主燃焼室において、副室形成部の噴孔からのトーチジェットによるポテンシャルコアと、火炎伝播領域と、主燃焼室の内面との関係を説明するための説明図である。 本発明の一実施形態にかかる主燃焼室において、副室形成部の噴孔からのトーチジェットによるポテンシャルコアと、火炎伝播領域と、遮熱膜との関係を説明するための説明図である。 副室形成部の互いに隣接する噴孔それぞれからのトーチジェットによるポテンシャルコアと、火炎伝播領域と、主燃焼室の内面との関係を示した、模式的な部分拡大平面図である。
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
図1は、本発明の一実施形態にかかる副室式ガスエンジン1を概略的に示す断面図である。図2は、図1に示す、噴孔径dと、副室形成部3の噴孔4からのトーチジェットtjによるポテンシャルコアpcとの関係の一例を示した概略図である。図3は、主燃焼室2rにおいて、副室形成部3の噴孔4からのトーチジェットtjによるポテンシャルコアpcと、火炎伝播領域と、主燃焼室2rの内面との関係を説明するための説明図である。図4は、主燃焼室2rにおいて、副室形成部3の噴孔4からのトーチジェットtjによるポテンシャルコアpcと、火炎伝播領域と、遮熱膜hfとの関係を説明するための説明図である。図5は、副室形成部3の互いに隣接する噴孔4からのトーチジェットtjによるポテンシャルコアpcと、火炎伝播領域と、主燃焼室2rの内面との関係を示した、模式的な部分拡大平面図である。
図1〜図5に示されるように、副室式ガスエンジン1は、エンジンの主燃焼室2rを形成する主室形成部2と、副室3rを形成する副室形成部3と、副室3rの内部に設けられた着火装置5と、を備える。
以下、副室式ガスエンジン1が備える上記の各々の構成について、それぞれ説明する。
図1〜図5に示される実施形態では、副室式ガスエンジン1は、図1に示されるように、円筒状の筒構造を内部に有するシリンダブロック11およびこの筒構造の上部に蓋をすることが可能な窪み構造を内部に有するシリンダヘッド12とで構成されるシリンダ13と、シリンダ13内に収納され往復運動するピストン14と、シリンダヘッド12の周囲に接続された吸気ポート15及び排気ポート16と、吸気ポート15を開閉する吸気弁17と、排気ポート16を開閉する排気弁18と、副室口金19と、を備えている。そして、シリンダ13とピストン14との間に画定される主燃焼室2r(主室)が設けられる。副室3rは、主燃焼室2rの上部(ピストン14の反対側)に位置するようにシリンダヘッド12に設置された副室口金19によって形成されている。すなわち、図1〜図5に示される実施形態では、シリンダ13とピストン14とで主室形成部2が構成され、副室口金19によって副室形成部3が形成されている。
副室形成部3は、図1に示されるように、その内部に形成された副室3rと外部とを連通する複数の噴孔4を有しており、これらの複数の噴孔4を介して主燃焼室2rと副室3rとが連通される。ただし、本発明は本実施形態に限定されず、副室形成部3は、主燃焼室2rと副室3rを連通する噴孔4を一つだけ有するようになっていてもよい。
また、副室形成部3は、所定の内径を有する筒状の小径筒室31rであって、複数の噴孔4が接続される小径筒室31rを形成する小径筒形成部31と、小径筒室31rよりも大きい内径を有する筒状の大径筒室33rを形成する大径筒形成部33と、で構成されている。つまり、副室3rは、小径筒室31rと大径筒室33rとを有する。また、大径筒室33rは、小径筒室31rに接続されると共に、小径筒室31rから離れるに従って内径が増大する筒状の拡径筒部33dと、この拡径筒部33dに接続され、拡径筒部33dの最大径を内径とする筒状の定径筒部33cを有している。そして、副室中心軸線Csは、小径筒室31rの中心軸線となっている。ただし、本発明は本実施形態には限定されず、他の幾つかの実施形態では、副室3rは、一定の内径を有した筒状の形状をしているなど、他の形状を有していても良い。また、図1に示される実施形態では、主室中心軸線Cmと副室中心軸線Csとが一致しているが、これには限定されず、他の幾つかの実施形態では、主室中心軸線Cmに対して副室中心軸線Csが傾いているなど、主室中心軸線Cmと副室中心軸線Csとは一致していなくても良い。また、小径筒室31rの中心軸線と大径筒室33rの中心軸線とが、一致していなくても良い。
着火装置5は、図1に示されるように、副室3rの大径筒室33rに設けられる。より詳細には、着火装置5は、混合気を着火(点火)することが可能な着火部51を有する。図1に示される実施形態では、着火装置5は点火プラグであり、点火プラグの電極(着火部51)が副室中心軸線Cs上に位置するように、着火装置5はエンジンに設置されている。ただし、本発明は本実施形態に限定されず、着火装置5は、着火部51が主燃焼室2rの中心軸線(以下、主室中心軸線Cm)から所定距離だけ離間されるようにエンジンに設置されていても良い。
副室ガス供給装置6は、主燃焼室2rを介さずに副室3rに副室用燃料ガスを直接供給する。図1に示される実施形態では、副室ガス供給装置6は大径筒室33rに副室燃料ガスを供給するように構成されており、副室燃料ガス供給弁61によって副室3rへの副室用燃料ガスの供給が制御される(図1参照)。
そして、上述したような構成を有する副室式ガスエンジン1は、例えば、吸気行程において、ピストン14が下降する際には、吸気弁17が開き、排気弁18が閉じる。吸気弁17が開くと、吸気弁17に繋がる吸気ポート15から燃料ガスと空気を混合させた希薄予混合気がシリンダ13内に導入され、また、副室燃料ガス供給弁61が開くことにより、副室燃料ガスが副室3rに導入される。他方、圧縮行程において、ピストン14が上昇する際には副室燃料ガス供給弁61が閉じる。そして、吸気ポート15を介してシリンダ13内に導入された希薄予混合気はピストン14の上昇に伴って圧縮されるに伴って、その一部が、副室3rの複数の噴孔4の各々を通って副室3rに導入される。主燃焼室2rから副室3rに導入された希薄予混合気は、副室燃料ガスと混合して、副室3rに着火に適した濃度の混合気が生成される。そして、ピストン14が圧縮上死点近傍に位置する際の所定のタイミングで着火装置5により副室3rの混合気を着火すると、副室3rの混合気が燃焼し、この燃焼によって生じた燃焼火炎が複数の噴孔の各々からシリンダ13へ噴出し、シリンダ13内の希薄予混合気を着火することで、主燃焼室2rの希薄予混合気の燃焼に至る。
ここで、副室式ガスエンジン1では、燃焼行程においてなされる、主燃焼室2rの内面(図1に示されるシリンダヘッド12の底面12bやピストン14の頂面14tなど)と、主燃焼室2rの燃焼火炎との間の熱の遣り取りが、主燃焼室2rにおける燃焼火炎の一部が消炎する現象に大きな影響を与える。そして、主燃焼室2rの内面の中で燃焼火炎が到達するまでの時間が短い内面ほど、その分だけ主燃焼室2rの内面と燃焼火炎の接触時間が長くなり熱の遣り取りが長時間にわたって行われる。他方、主燃焼室2rの内面の中で燃焼火炎が到達するまでの時間が長い内面は、その分だけ主燃焼室2rの内面と燃焼火炎の接触時間が短くなり熱の遣り取りは短時間で終わる。そこで、本発明者らは、後述するように、主燃焼室2rの内面の中で燃焼火炎が到達するまでの時間が短い内面ほど高い断熱性能を有するようにすることによって、主燃焼室2rにおいて燃焼火炎の一部が消炎することを防止し、かつ、トーチジェットtjから伝播した火炎が主燃焼室2r全体に広がるまでにかかる時間を短縮することができ、ノッキングの発生を防止することができることを見出した。
さらに、本発明者らは、トーチジェットtjを副室形成部3の噴孔4の噴孔径dの6〜7倍のポテンシャルコア長さLを持つ噴流(図2参照)と想定すると、この噴流の先端(噴流先端jt)を基点して図3中放射方向に徐々に火炎が伝播されることを見出した。ここで、噴流先端jtが基点となるのは、主燃焼室2rの噴孔近傍や噴流の上流部分では、噴流と噴流の周りの未燃ガスとの間には大きな速度勾配が生じて、主燃焼室2r内の未燃ガスが噴流に巻き込まれる方向に流れが発生するため、これらの部分からは火炎がその周囲にわたって伝播しづらいからである。
そして、トーチジェットtjは、図2中噴孔4の開口部を一辺とする三角形で示されるような、噴孔4から噴射した噴流の速度が減衰せずに、噴孔4における噴流と同じ速度を保つことができる領域を有しており、この領域をポテンシャルコアpcという。
主燃焼室2r内の火炎は、トーチジェットtjのポテンシャルコアpcの噴流先端jtを基点とすると、この噴流先端jtからの距離が短い順、すなわち、図3中においては、噴流先端jtを含む第1火炎伝播領域F1、第1火炎伝播領域F1の周囲に形成される領域である第2火炎伝播領域F2、第2火炎伝播領域F2の周囲に形成される領域である第3火炎伝播領域F3、主燃焼室2r内の第3火炎伝播領域F3の外側に形成される領域である第4火炎伝播領域F4の順に伝播される。ここで、第1火炎伝播領域F1、第2火炎伝播領域F2、第3火炎伝播領域F3のそれぞれは、噴流先端jtを基点とする図3中所定の直径を有する円と、主燃焼室2rの内面とによりその領域が画されている。
幾つかの実施形態では、図3に示されるように、主燃焼室2rのシリンダヘッド12の底面12bは、以下の4つに区分されている。すなわち、シリンダヘッド12の底面12bは、第1火炎伝播領域F1に面する第1内面b1、第2火炎伝播領域F2に面する第2内面b2、第3火炎伝播領域F3に面する第3内面b3および第1火炎伝播領域F1から第3火炎伝播領域F3までのいずれにも面しない第4内面b4に区分されている。ここで、シリンダヘッド12の第2内面b2は、第1内面b1より主室径方向内側の第2内面b21と、第1内面b1より主室径方向外側の第2内面b22とを含むものである。
そして、シリンダヘッド12の底面12bは、第1内面b1が最も高い断熱性能を有し、第2内面b2、第3内面b3、第4内面b4の順に高い断熱性能を有している。このように第1火炎伝播領域F1に面する第1内面b1は、第2火炎伝播領域F2に面する第2内面b2よりも高い断熱性能を有しているので、燃焼行程により加えられた熱が排気行程、吸気行程および圧縮行程を経ても保持され第1内面b1は高温を維持する。また、各々の断熱性能の違いにより、第1内面b1、第2内面b2、第3内面b3、第4内面b4の順に高い温度を有している。
また、主燃焼室2rにおける燃焼火炎は、噴孔4から噴射されたトーチジェットtjのポテンシャルコアpc、このポテンシャルコアpcの噴流先端jtを含む第1火炎伝播領域F1、第2火炎伝播領域F2、第3火炎伝播領域F3、第4火炎伝播領域F4の順に伝播されるので、第1内面b1、第2内面b2、第3内面b3、第4内面b4の順に火炎が到達する。
上述したように、第1内面b1は高温を維持するため、第1内面b1に接する火炎は、第1内面b1に接する時間が第2内面b2に接する火炎が第2内面b2に接する時間よりも長くても、第1内面b1に接する火炎と第1内面b1との温度差が小さく、第1内面b1により熱を奪われてその一部が消炎することを防止することができる。そして、火炎の一部が消炎することを防止できるので、トーチジェットtjから伝播した火炎が主燃焼室2r全体に広がるまでにかかる時間を短縮することができ、ノッキングの発生を防止することができる。
また、第2内面b2は、第1内面b1よりも低い断熱性能を有しているため、第1内面b1よりも低温となるが、第2内面b2に接する火炎は、第2内面b2に接する時間が第1内面b1に接する火炎が第1内面b1に接する時間よりも短いので、第2内面b2により熱を奪われてその一部が消炎することを防止することができる。さらに、第2内面b2近傍の未燃ガスが過度に高温になることを防止することができるので、ノッキングの発生を防止することができる。
したがって、上記の構成によれば、第1内面b1が第2内面b2よりも高い断熱性能を有することにより主燃焼室2rにおける火炎伝播の局所的な停滞によるノッキングの発生を防止することができる。
また、第2内面b2と第3内面b3、第3内面b3と第4内面b4についても、第1内面b1と第2内面b2と同様に互いの断熱性能に違いが設けられているので、上述した第1内面b1と第2内面b2の作用効果と同様の作用効果を有するものである。
なお、上述した実施形態によれば、第1火炎伝播領域F1、第2火炎伝播領域F2、第3火炎伝播領域F3のそれぞれは、噴流先端jtを基点とする図3中所定の直径を有する円と、主燃焼室2rの内面とによりその領域が画されていたが、これに限定されるわけではない。例えば、第1火炎伝播領域F1、第2火炎伝播領域F2、第3火炎伝播領域F3のそれぞれは、噴孔4から噴孔4の中心線Cpに沿って離れるにつれて、上述した中心線Cpに直交する長さが長くなる三角形であって各々の角が丸められた略三角形と、主燃焼室2rの内面とによりその領域が画されるようになっていたり、噴流先端jtを基点としない噴流先端jtを含む第1火炎伝播領域F1が設けられるようになっていてもよい。
また、他の幾つかの実施形態では、図3に示されるように、ピストン14の頂面14tは、以下の3つに区分されている。すなわち、ピストン14の頂面14tは、第2火炎伝播領域F2に面する第1内面t1、第3火炎伝播領域F3に面する第2内面t2および第2火炎伝播領域F2と第3火炎伝播領域F3のどちらにも面しない第3内面t3に区分されている。ここで、ピストン14の第2内面t2は、第1内面t1より主室径方向内側の第2内面t21と、第1内面t1より主室径方向外側の第2内面t22とを含むものである。
そして、ピストン14の頂面14tは、第1内面t1が最も高い断熱性能を有し、第2内面t2、第3内面t3の順に高い断熱性能を有している。このように第2火炎伝播領域F2に面する第1内面t1は、第3火炎伝播領域F3に面する第2内面t2よりも高い断熱性能を有しているので、燃焼行程により加えられた熱が排気行程、吸気行程および圧縮行程を経ても保持され第1内面t1は高温を維持する。また、各々の断熱性能の違いにより、第1内面t1、第2内面t2、第3内面t3の順に高い温度を有している。
また、主燃焼室2rにおける燃焼火炎は、噴孔4から噴射されたトーチジェットtjのポテンシャルコアpc、このポテンシャルコアpcの噴流先端jtを含む第1火炎伝播領域F1、第2火炎伝播領域F2、第3火炎伝播領域F3、第4火炎伝播領域F4の順に伝播されるので、第1内面t1、第2内面t2、第3内面t3の順に火炎が到達する。
上述したように、第1内面t1は高温を維持するため、第1内面t1に接する火炎は、第1内面t1に接する時間が第2内面t2に接する火炎が第2内面t2に接する時間よりも長くても、第1内面t1に接する火炎と第1内面t1との温度差が小さく、第1内面t1により熱を奪われてその一部が消炎することを防止することができる。そして、火炎の一部が消炎することを防止できるので、トーチジェットtjから伝播した火炎が主燃焼室2r全体に広がるまでにかかる時間を短縮することができ、ノッキングの発生を防止することができる。
また、第2内面t2は、第1内面t1よりも低い断熱性能を有しているため、第1内面t1よりも低温となるが、第2内面t2に接する火炎は、第2内面t2に接する時間が第1内面t1に接する火炎が第1内面t1に接する時間よりも短いので、第2内面t2により熱を奪われてその一部が消炎することを防止することができる。さらに、第2内面t2近傍の未燃ガスが過度に高温になることを防止することができるので、ノッキングの発生を防止することができる。
したがって、上記の構成によれば、第1内面t1が第2内面t2よりも高い断熱性能を有することにより主燃焼室2rにおける火炎伝播の局所的な停滞によるノッキングの発生を防止することができる。
また、第2内面t2と第3内面t3についても、第1内面t1と第2内面t2と同様に互いの断熱性能に違いが設けられているので、上述した第1内面t1と第2内面t2の作用効果と同様の作用効果を有するものである。
また、他の幾つかの実施形態では、図3に示されるように、主燃焼室2rのシリンダヘッド12の底面12bは4つに、ピストン14の頂面14tは3つに区分されている。
シリンダヘッド12の底面12bとピストン14の頂面14tのそれぞれは、第1内面b1、第2内面b2、第1内面t1、第3内面b3、第2内面t2、第4内面b4と第3内面t3の順に高い断熱性能を有している。
上記の構成よれば、シリンダヘッド12の第2内面b2とピストン14の第1内面t1は、同じ第2火炎伝播領域F2に面しているが、シリンダヘッド12の第2内面b2の方がトーチジェットtjから伝播される火炎が先に到達する部分が多いので、第2内面b2の断熱性能を第1内面t1よりも高くすることで、主燃焼室2rにおける火炎伝播の局所的な停滞を防止することができる。また、同じ第3火炎伝播領域F3に面しているシリンダヘッド12の第3内面b3と、ピストン14の第2内面t2についても同様である。
また、他の幾つかの実施形態では、上述した各々の実施形態(図1〜図3参照)において、シリンダヘッド12とピストン14の少なくともいずれか一方の、その底面12bまたは頂面14tに、陽極酸化被膜(アルマイト被膜)からなる遮熱膜hfが形成されている。
より具体的には、図4に示されるように、シリンダヘッド12は、その底面12bのうち、第1火炎伝播領域F1に面する第1内面b1には第1遮熱膜bf1が、第2火炎伝播領域F2に面する第2内面b2には第2遮熱膜bf2が、第3火炎伝播領域F3に面する第3内面b3には第3遮熱膜bf3が、第4火炎伝播領域F4に面する第4内面b4には第4遮熱膜bf4が形成されている。ここで、遮熱膜hfは、第1遮熱膜bf1、第2遮熱膜bf2、第3遮熱膜bf3、第4遮熱膜bf4の順に高い断熱性能を有している。
また、ピストン14は、その頂面14tのうち、第2火炎伝播領域F2に面する第1内面t1には第1遮熱膜tf1が、第3火炎伝播領域F3に面する第2内面t2には第2遮熱膜tf2が、第4火炎伝播領域F4に面する第3内面t3には第3遮熱膜tf3が形成されている。ここで、遮熱膜hfは、第1遮熱膜tf1、第2遮熱膜tf2、第3遮熱膜tf3の順に高い断熱性能を有している。
そして、シリンダヘッド12の底面12bは、遮熱膜hf(第1遮熱膜bf1、第2遮熱膜bf2、第3遮熱膜bf3、第4遮熱膜bf4)が形成されることにより、第1内面b1、第2内面b2、第3内面b3、第4内面b4の順に高い断熱性能を有している。また、ピストン14の頂面14tは、遮熱膜hf(第1遮熱膜tf1、第2遮熱膜tf2、第3遮熱膜tf3)が形成されることにより、第1内面t1、第2内面t2、第3内面t3の順に高い断熱性能を有している。
上記の構成によれば、シリンダヘッド12の第1内面b1と第2内面b2のそれぞれに形成された第1遮熱膜bf1、第2遮熱膜bf2により、第1内面b1と第2内面b2は断熱性能を有し、各々の遮熱膜hfの断熱性能の違いにより第1内面b1の断熱性能を第2内面b2よりも高くすることができ、主燃焼室2rにおける火炎伝播の局所的な停滞を防止することができる。また、シリンダヘッド12の第2内面b2と第3内面b3や、ピストン14の第1内面t1と第2内面t2などについても、第1内面b1と第2内面b2と同様に遮熱膜hfにより互いの断熱性能に違いが設けられているので、上述した第1内面b1と第2内面b2の作用効果と同様の作用効果を有するものである。
なお、本実施例に示される実施形態では、遮熱膜hfは陽極酸化被膜(アルマイト被膜)からなるものであったが、これに限定されるものではない。また、遮熱膜hfはシリンダヘッド12の底面12b全体、または、ピストン14の頂面14t全体にわたって形成されていなくてもよい。
また、「各々の遮熱膜hfの断熱性能の違い」の実施の形態として、以下で示す3つの形態を挙げることができる。
その一つの形態においては、例えば、シリンダヘッド12の第1内面b1に、第2内面b2に形成される第2遮熱膜bf2よりも膜の厚さが厚い第1遮熱膜bf1が形成される。本形態によれば、遮熱膜hfの厚さを厚くすると断熱性能は高くなる。このため、シリンダヘッド12の第1内面b1の第1遮熱膜bf1を第2内面b2の第2遮熱膜bf2よりも膜の厚さを厚くすることで、第1内面b1の断熱性能を第2内面b2よりも高くすることができ、主燃焼室2rにおける火炎伝播の局所的な停滞を防止することができる。
また、他の形態においては、例えば、シリンダヘッド12の第1内面b1に、第2内面b2に形成される第2遮熱膜bf2よりも表面粗さが小さい第1遮熱膜bf1が形成される。本形態によれば、遮熱膜hfの表面粗さを小さくすると、その伝熱面積が小さくなり放熱性能が低下することから断熱性能は高くなる。このため、第1内面b1の第1遮熱膜bf1を第2内面b2の第2遮熱膜bf2よりも膜の表面粗さを小さくすることで、第1内面b1の断熱性能を第2内面b2よりも高くすることができ、主燃焼室2rにおける火炎伝播の局所的な停滞を防止することができる。
さらに、他の形態においては、例えば、遮熱膜hfの内部に気孔が形成されていて、シリンダヘッド12の第1内面b1に、第2内面b2に形成される第2遮熱膜bf2よりも気孔率が高い第1遮熱膜bf1が形成される。本形態によれば、遮熱膜hfの気孔率が高いと、放熱性能が低下することから断熱性能は高くなる。このため、第1内面b1の第1遮熱膜bf1を第2内面b2の第2遮熱膜bf2よりも気孔率の高いものにすることで、第1内面b1の断熱性能を第2内面b2よりも高くすることができ、主燃焼室2rにおける火炎伝播の局所的な停滞を防止することができる。
また、他の幾つかの実施形態では、図5に示されるように、副室形成部3には、主室中心軸線Cmを中心とする円周方向に等間隔に設けられた複数の噴孔4の内、互いに隣接する第1噴孔41と第2噴孔42とが設けられている。
そして、第1噴孔41から噴射したトーチジェットtjのポテンシャルコアpcの噴流先端jtを基点として第1火炎伝播領域F1、第2火炎伝播領域F2、第3火炎伝播領域F3、第4火炎伝播領域F4が形成されている。また、第2噴孔42から噴射したトーチジェットtjのポテンシャルコアpcの噴流先端jtを基点として第1火炎伝播領域F1、第2火炎伝播領域F2、第3火炎伝播領域F3、第4火炎伝播領域F4が形成されている。このため、第1噴孔41から噴射されたトーチジェットtjによる火炎伝播領域と、第2噴孔42から噴射されたトーチジェットtjによる火炎伝播領域とが重複する領域が発生する。
例えば、図5に斜線部で示す部分については、第1噴孔41から噴射されたトーチジェットtjによる第1火炎伝播領域F1と、第2噴孔42から噴射されたトーチジェットtjによる第2火炎伝播領域F2とが重複する領域である。この重複領域に面するシリンダヘッド12の底面12bの該当部分は、第1噴孔41を基準とした断熱性能と第2噴孔42を基準とした断熱性能のいずれか高い方の断熱性能を有する。
ここで、第1噴孔41を基準とした断熱性能とは、複数の噴孔4から噴射される噴流のうち、第1噴孔41から噴射される噴流のみを想定した場合において、ポテンシャルコアpcの噴流先端jtを基点とする複数の火炎伝播領域のうち、重複領域が含まれる火炎伝播領域が面するであろう、シリンダヘッド12の底面12bの該当部(火炎伝播領域が主燃焼室2rの内面により領域が画定される際の、その火炎伝播領域を画定する内面)が有する断熱性能と同一の断熱性能である。
また、第2噴孔42を基準とした断熱性能とは、複数の噴孔4から噴射される噴流のうち、第2噴孔42から噴射される噴流のみを想定した場合において、ポテンシャルコアpcの噴流先端jtを基点とする複数の火炎伝播領域のうち、重複領域が含まれる火炎伝播領域が面するであろう、シリンダヘッド12の底面12bの該当部(火炎伝播領域が主燃焼室2rの内面により領域が画定される際の、その火炎伝播領域を画定する内面)が有する断熱性能と同一の断熱性能である。
第1噴孔41を基準とした断熱性能について、図5に斜線部で示す部分により具体的に説明する。まず斜線部で示す部分は、第1噴孔41から噴射したトーチジェットtjの、ポテンシャルコアpcの噴流先端jtを基点とした領域のうち、第1火炎伝播領域F1に含まれる。この第1火炎伝播領域F1は、図3に示されるように、シリンダヘッド12の底面12bのうち、第1内面b1によりその領域が画定されている。このため、斜線部で示す部分における第1噴孔41を基準とした断熱性能は、シリンダヘッド12の第1内面b1が有する断熱性能と同一の断熱性能となる。
次に、第2噴孔42を基準とした断熱性能について、図5に斜線部で示す部分により具体的に説明する。斜線部で示す部分は、第2噴孔42から噴射したトーチジェットtjの、ポテンシャルコアpcの噴流先端jtを基点とした領域のうち、第2火炎伝播領域F2に含まれる。この第2火炎伝播領域F2は、図3に示されるように、シリンダヘッド12の底面12bのうち、第2内面b2によりその領域が画定されている。このため、斜線部で示す部分における第2噴孔42を基準とした断熱性能は、シリンダヘッド12の第2内面b2が有する断熱性能と同一の断熱性能となる。
そして、第1内面b1の断熱性能と第2内面b2の断熱性能を比較すると、第1内面b1の断熱性能の方が高いので、重複領域に面するシリンダヘッド12の底面12bの該当部分は、第1内面b1の断熱性能、すなわち、第1噴孔41を基準とした断熱性能となる。
上記の構成によれば、第1噴孔41から噴射されたトーチジェットtjによる火炎伝播領域と、第1噴孔41と隣接する第2噴孔42から噴射されたトーチジェットtjによる火炎伝播領域とが重複する領域に面する主燃焼室2rの内面は、第1噴孔41と第2噴孔42のそれぞれを基準とした断熱性能の内、高い方の断熱性能を有する。これによって、第1噴孔41と第2噴孔42それぞれから噴射されたトーチジェットtjから伝播される火炎の内、重複する領域に面する主燃焼室2rの内面に、先に到達する火炎に対応できる断熱性能を有するので、重複する領域に面する主燃焼室2rの内面の近傍における火炎伝播の局所的な停滞を防止することができる。
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した実施形態においては、図3に示されるような、主燃焼室2rの内部は、第1火炎伝播領域F1、第2火炎伝播領域F2、第3火炎伝播領域F3、第4火炎伝播領域F4の4つにより区分されるようになっていたが、第1火炎伝播領域F1、第2火炎伝播領域F2、第3火炎伝播領域F3の少なくとも一つ以上が存在しないような構成にしてもよい。
1 副室式ガスエンジン
11 シリンダブロック
12 シリンダヘッド
12b 底面
13 シリンダ
14 ピストン
14t 頂面
15 吸気ポート
16 排気ポート
17 吸気弁
18 排気弁
19 副室口金
2 主室形成部
2r 主燃焼室
3 副室形成部
3r 副室
31 小径筒形成部
31r 小径筒室
33 大径筒形成部
33r 大径筒室
33c 定径筒部
33d 拡径筒部
4 噴孔
41 第1噴孔
42 第2噴孔
5 着火装置
51 着火部
6 副室ガス供給装置
61 副室燃料ガス供給弁
b1 第1内面
b2 第2内面
b21 主室径方向内側の第2内面
b22 主室径方向外側の第2内面
b3 第3内面
b4 第4内面
bf1 第1遮熱膜
bf2 第2遮熱膜
bf3 第3遮熱膜
bf4 第4遮熱膜
Cm 主室中心軸線
Cs 副室中心軸線
Cp 噴孔の中心線
d 噴孔径
F1 第1火炎伝播領域
F2 第2火炎伝播領域
F3 第3火炎伝播領域
F4 第4火炎伝播領域
hf 遮熱膜
jt 噴流先端
L ポテンシャルコア長さ
pc ポテンシャルコア
t1 第1内面
t2 第2内面
t21 主室径方向内側の第3内面
t22 主室径方向外側の第3内面
t3 第3内面
tf1 第1遮熱膜
tf2 第2遮熱膜
tf3 第3遮熱膜
tj トーチジェット

Claims (5)

  1. 主燃焼室を形成する主室形成部と、
    前記主燃焼室と少なくとも一つの噴孔を介して連通される副室を形成する副室形成部と、
    前記副室に設けられた着火装置と、を備え、
    前記副室において副室用燃料を燃焼して形成したトーチジェットを前記少なくとも一つの噴孔を介して前記主燃焼室に噴射する副室式ガスエンジンであって、
    前記主室形成部は、ピストンと、シリンダヘッドとを含み、
    前記ピストン及び前記シリンダヘッドは、
    前記少なくとも一つの噴孔から噴射される前記トーチジェットのポテンシャルコアの先端を基点とする第1円球からなる領域である第1火炎伝播領域に含まれる第1内面と、
    前記第1火炎伝播領域の周囲に形成される領域である第2火炎伝播領域であって、前記ポテンシャルコアの先端を基点とする第2円球からなる第2火炎伝播領域に含まれる第2内面と、を含み、
    前記ピストン及び前記シリンダヘッドの各々の前記第1内面および前記第2内面には、それぞれ遮熱膜が形成され、
    前記ピストン及び前記シリンダヘッドの各々において、前記第1内面に形成される前記遮熱膜は、前記第2内面に形成される前記遮熱膜よりも高い断熱性能を有し、
    前記シリンダヘッドの前記第2内面に形成される前記遮熱膜は、前記ピストンの前記第2内面に形成される前記遮熱膜よりも高い断熱性能を有することを特徴とする副室式ガスエンジン。
  2. 前記少なくとも一つの噴孔は、第1噴孔と、前記第1噴孔と隣接する第2噴孔とを含み、
    前記第1噴孔から噴射されたトーチジェットによる火炎伝播領域と、前記第2噴孔から噴射されたトーチジェットによる火炎伝播領域とが重複する領域に面する前記主室形成部の内面は、前記第1噴孔を基準とした断熱性能、及び前記第2噴孔を基準とした断熱性能のいずれか高い方の断熱性能を有することを特徴とする請求項1に記載の副室式ガスエンジン。
  3. 前記ピストン及び前記シリンダヘッドの各々において、前記第1内面には、前記第2内面に形成される遮熱膜よりも膜の厚さが厚い遮熱膜が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の副室式ガスエンジン。
  4. 前記ピストン及び前記シリンダヘッドの各々において、前記第1内面には、前記第2内面に形成される遮熱膜よりも表面粗さが小さい遮熱膜が形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の副室式ガスエンジン。
  5. 前記ピストン及び前記シリンダヘッドの各々において、前記第1内面には、前記第2内面に形成される遮熱膜よりも気孔率が高い遮熱膜が形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の副室式ガスエンジン。
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