JP6794993B2 - R−t−b系焼結磁石の製造方法およびr−t−b系焼結磁石 - Google Patents

R−t−b系焼結磁石の製造方法およびr−t−b系焼結磁石 Download PDF

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Description

本発明は、R214B型化合物を主相として有するR−T−B系焼結磁石(Rは希土類元素、TはFeまたはFeとCo)及びその製造方法に関する。
214B型化合物を主相とするR−T−B系焼結磁石は、永久磁石の中で最も高性能な磁石として知られており、ハードディスクドライブのボイスコイルモータ(VCM)や、ハイブリッド車搭載用モータ等の各種モータや家電製品等に使用されている。
R−T−B系焼結磁石は、高温で固有保磁力HcJ(以下、単に「HcJ」と表記する)が低下するため、不可逆熱減磁が起こる。不可逆熱減磁を回避するため、モータ用等に使用する場合、高温下でも高いHcJを維持することが要求されている。
R−T−B系焼結磁石は、主相中のRの一部を重希土類元素RH(Dy、Tb)で置換すると、HcJが向上することが知られている。高温で高いHcJを得るためには、R−T−B系焼結磁石中に重希土類元素RHを多く添加することが有効である。しかし、R−T−B系焼結磁石において、Rとして軽希土類元素RL(Nd、Pr)を重希土類元素RHで置換すると、HcJが向上する一方、残留磁束密度Br(以下、単に「Br」と表記する)が低下してしまうという問題がある。また、重希土類元素RHは希少資源であるため、その使用量を削減することが求められている。
そこで、近年、Brを低下させないように、より少ない重希土類元素RHによってR−T−B系焼結磁石のHcJを向上させることが検討されている。例えば、重希土類元素RHを効果的にR−T−B系焼結磁石に供給し拡散させる方法として、特許文献1〜4にRH酸化物またはRHフッ化物と、各種金属MまたはMの合金との混合粉末をR−T−B系焼結磁石の表面に存在させた状態で熱処理することによって、RHやMを効率よくR−T−B系焼結磁石に拡散させて、R−T−B系焼結磁石のHcJを高める方法が開示されている。
特許文献1には、M(ここでMはAl、Cu、Znから選ばれる1種又は2種以上)を含有する粉末とRHフッ化物の粉末の混合粉末を用いることが開示されている。また、特許文献2には、熱処理温度で液相となるRTMAH(ここでMはAl、Cu、Zn、In、Si、Pなどから選ばれる1種または2種以上、Aはホウ素または炭素、Hは水素)からなる合金の粉末を用いることが開示されており、この合金の粉末とRHフッ化物などの粉末との混合粉末でも良いと開示されている。
特許文献3、特許文献4では、RM合金(ここでRは希土類元素、MはAl、Si、C、P、Tiなどから選ばれる1種または2種以上)の粉末またはM1M2合金(M1およびM2はAl、Si、C、P、Tiなどから選ばれる1種または2種以上)の粉末と、RH酸化物との混合粉末を用いることによって熱処理時にRM合金やM1M2合金によりRH酸化物を部分的に還元し、より多量のRを磁石内に導入することが可能であると開示されている。
なお、特許文献5には、Rのフッ化物を含有する粉末をR−T−B系焼結磁石の表面に存在させた状態で熱処理を施すことが開示されている。特許文献5によれば、当該粉末に含まれるフッ素がRと共に磁石内に吸収されることによりRの粉末からの供給と磁石の結晶粒界における拡散を著しく高める。また、その実施例の図面において、熱処理後の磁石内に面積割合で6%を超える(本発明者の画像解析による)フッ素含有化合物が存在していることが示されている。
特開2007−287874号公報 特開2007−287875号公報 特開2012−248827号公報 特開2012−248828号公報 国際公開第2006/043348号
特許文献1〜4に記載の方法は、より多量のRHを磁石内に拡散させることができるという点で注目に値する。しかしながら、これらの方法によれば、磁石表面に存在させたRHを有効にHcJの向上に結びつけることができず、改良の余地がある。特に特許文献3では、RM合金とRH酸化物の混合粉末を用いているが、その実施例を見る限り、RM合金の拡散によるHcJの向上自体が大きく、RH酸化物を用いた効果はわずかであり、RM合金によるRH酸化物の還元効果はあまり発揮されていないと思われる。また、特許文献5に記載の方法は、フッ素によってRの拡散効果を高めるという点で優れた方法である。しかしながら、フッ素自体は磁石の磁気特性に対して決して好ましいとは言えず、磁石内部にフッ素を含有させずに拡散効果を高める方法があれば、そのほうが好ましいと言える。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、磁石表面に存在させるRHの量を少なくし、かつフッ素を磁石内部にほとんど拡散させることなく、RHを効果的に磁石内部に拡散させることによって、高いHcJと向上した耐食性を有するR−T−B系焼結磁石を製造する方法、および当該方法で製造されるR−T−B系焼結磁石を提供することである。
本開示のR−T−B系焼結磁石の製造方法は、ある態様において、R−T−B系焼結磁石を用意する工程と、前記R−T−B系焼結磁石の表面にRLM合金(RLはNdおよび/またはPr、MはCu、Fe、Ga、Co、Niから選ばれる1種以上)の粉末と、RHフッ化物(RHはDyおよび/またはTb)の粉末とを存在させた状態において、前記R−T−B系焼結磁石の焼結温度以下で熱処理を行う工程と、熱処理後の前記R−T−B系焼結磁石の表面を深さ方向に400μm以下研削する工程とを含み、前記RLM合金はRLを50原子%以上含み、かつ、前記RLM合金の融点は前記熱処理の温度以下であり、前記熱処理は、前記RLM合金の粉末と前記RHフッ化物の粉末とが、RLM合金:RHフッ化物=96:4〜50:50の質量比率で前記R−T−B系焼結磁石の表面に存在する状態で行われる。
ある実施形態では、前記R−T−B系焼結磁石の前記表面を研削する工程において、深さ方向に200μm以下研削する。
ある実施形態では、前記R−T−B系焼結磁石の表面において、前記RHフッ化物の粉末に含まれるRH元素の質量は、前記表面の1mm2あたりで0.03〜0.35mgである。
ある実施形態では、前記R−T−B系焼結磁石の表面において、前記RLM合金の粉末と前記RHフッ化物の粉末とは混合された状態にある。
ある実施形態では、前記R−T−B系焼結磁石の表面において、RH酸化物の粉末は実質的に存在していない。
本開示のR−T−B系焼結磁石は、ある態様において、軽希土類元素RL(NdおよびPrの少なくとも1種)を主たる希土類元素Rとして含有するR2Fe14B型化合物結晶粒を主相として有し、重希土類元素RH(Dy、Ho、およびTbからなる群から選択された少なくとも1種)を含有するR−T−B系希土類焼結磁石であって、前記重希土類元素の濃度は、磁石表面から磁石中心部に向かって低下し、前記磁石表面に対して垂直な断面において、前記磁石表面から100μmの深さまでの表層領域における酸化物粒子の面積割合は、前記磁石中心部における深さ方向の厚さが100μmの中央領域における酸化物粒子の面積割合よりも低く、フッ素が内部に拡散していない。
ある実施形態において、前記磁石表面に対して垂直な断面において、前記表層領域中の前記酸化物粒子の面積割合は、前記中央領域中の前記酸化物粒子の前記断面における面積割合の95%以下である。
ある実施形態において、前記磁石表面に対して垂直な断面において、前記表層領域中の前記酸化物粒子の面積割合は、前記中央領域中の前記酸化物粒子の前記断面における面積割合の75%以下である。
ある実施形態において、前記磁石表面から100μmの深さまでの表層領域におけるフッ素含有化合物の面積割合は1%以下である。
本発明の実施形態によれば、RLM合金がRHフッ化物を還元してRHをR−T−B系焼結磁石内部に拡散させることができるので、磁石内部にフッ素をほとんど拡散させることなく、従来技術よりも少ないRH量で従来技術と同等以上にHcJを向上させることができる。また、拡散熱処理に伴って磁石表面に近い表層領域が改質され、耐食性に優れたR−T−B系焼結磁石が得られる。
上から順に、拡散剤(TbF3)のX線回折データ、拡散助剤と拡散剤の混合粉末を900℃で4時間熱処理したもののX線回折データ、拡散助剤(Nd70Cu30)のX線回折データを示すグラフである。 RLM合金の粉末とRHフッ化物の粉末とから構成される残存塗布層200がR−T−B系焼結磁石100の上面および下面に接触した状態を模式的に示す斜視図である。 拡散熱処理が行われた後において、R−T−B系焼結磁石100の上面および下面に残存塗布層201が存在している状態を模式的に示す斜視図である。 塗布層が除去された状態のR−T−B系焼結磁石100を模式的に示す斜視図である。 図2Cの破線に沿ってR−T−B系焼結磁石100を中央で2つに切断し、中央部の断面(切断面)100Cを露出させた状態を示す斜視図である。 研削前におけるR−T−B系焼結磁石100の断面100Cを模式的に示す断面図である。 100μmの研削後におけるR−T−B系焼結磁石100の断面100Cを模式的に示す断面図である。 400μmの研削後におけるR−T−B系焼結磁石100の断面100Cを模式的に示す断面図である。 図3Bの領域Aに相当する部分の断面SEM-EDXマッピングを示す図である。 図3Cの領域Bに相当する部分の断面SEM-EDXマッピングを示す図である。 図3Cの領域Cに相当する部分の断面SEM-EDXマッピングを示す図である。 比較例について、領域Aに相当する部分の断面SEM-EDXマッピングを示す図である。 領域C(図3A)に相当する部分の断面SEM像を示す図である。 領域A(図3B)に相当する部分の断面SEM像を示す図である。 領域B(図3C)に相当する部分の断面SEM像を示す図である。 実施例のサンプルS1〜S6についてプレッシャークッカー(PCT)試験を行った後の磁石の減耗量とPCT試験時間との関係を示すグラフである。 実施例のサンプルS1〜S6についてPCT試験を行った後の磁石の減耗量と研削量との関係を示すグラフである。 比較例について、領域Aに相当する部分の断面SEM像を示す図である。 比較例について、領域Cに相当する部分の断面SEM像を示す図である。 比較例で用いた装置の構成を示す図である。 比較例で用いた装置の構成を示す図である。
本発明のR−T−B系焼結磁石の製造方法は、R−T−B系焼結磁石の表面にRLM合金(RLはNdおよび/またはPr、MはCu、Fe、Ga、Co、Niから選ばれる1種以上)の粉末と、RHフッ化物(RHはDyおよび/またはTb)の粉末を存在させた状態でR−T−B系焼結磁石の焼結温度以下で熱処理する工程を含む。RLM合金はRLを50原子%以上含み、その融点が前記熱処理の温度以下である。上記の熱処理は、RLM合金の粉末とRHフッ化物の粉末を、RLM合金:RHフッ化物=96:4〜50:50の質量比率でR−T−B系焼結磁石の表面に存在させて行う。また、前記熱処理(拡散熱処理)後におけるR−T−B系焼結磁石の表面を深さ方向に400μm以下研削する。
本発明者は、より少ないRHを有効に利用してHcJを向上させる方法として、R−T−B系焼結磁石表面にRH化合物を、熱処理中にRH化合物を還元する拡散助剤とともに存在させて熱処理する方法が有効であると考えた。本発明者の検討の結果、特定のRLとMの組み合わせの合金(RLM合金)であって、RLを50原子%以上含みその融点が熱処理温度以下であるRLM合金が、磁石表面に存在させたRH化合物の還元能力に優れていることを見出した。また、このようなRLM合金とともに熱処理する方法においては、RH化合物としてRHフッ化物が最も効果が高いこと、および、RH化合物としてRHフッ化物を採用しても、R−T−B系焼結磁石内部にほとんどフッ素が拡散しないことを見出した。
更に、上記の熱処理(拡散熱処理)によって得られたR−T−B系焼結磁石は、内部にフッ素をほとんど含有せず、また、R−T−B系焼結磁石の表面に近い領域における酸化物粒子(酸炭化物を含んでいてもよい)の含有比率(濃度)が磁石中心部に比べて減少し、熱処理後のR−T−B系焼結磁石の表面を深さ方向に400μm以下研削した磁石は耐食性が向上しているという現象を見出して、本発明を完成するに至った。
なお、本明細書において、RHを含有する物質を「拡散剤」、拡散剤のRHを還元して拡散し得る状態にする物質を「拡散助剤」と称する。
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
[R−T−B系焼結磁石母材]
まず、本発明では、重希土類元素RHの拡散の対象とするR−T−B系焼結磁石母材を準備する。なお、本明細書では、わかりやすさのため、重希土類元素RHの拡散の対象とするR−T−B系焼結磁石をR−T−B系焼結磁石母材と厳密に称することがあるが、「R−T−B系焼結磁石」の用語はそのような「R−T−B系焼結磁石母材」を含むものとする。このR−T−B系焼結磁石母材は公知のものが使用でき、例えば以下の組成を有する。
希土類元素R:12〜17原子%
B(B(ボロン)の一部はC(カーボン)で置換されていてもよい):5〜8原子%
添加元素M´(Al、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Hf、Ta、W、Pb、およびBiからなる群から選択された少なくとも1種):0〜2原子%
T(Feを主とする遷移金属元素であって、Coを含んでもよい)および不可避不純物:残部
ここで、希土類元素Rは、主として軽希土類元素RL(Nd、Prから選択される少なくとも1種の元素)であるが、重希土類元素を含有していてもよい。なお、重希土類元素を含有する場合は、DyおよびTbの少なくとも一方を含むことが好ましい。
上記組成のR−T−B系焼結磁石母材は、任意の製造方法によって製造される。製造されたR−T−B系焼結磁石母材は、主相(R214B型化合物)と、主相間に位置する粒界相とを含む。後述するように、R−T−B系焼結磁石母材の表面は、拡散熱処理の後に研削されるが、拡散熱処理を行う前に機械加工によって切断加工または研削などの処理がなされ得る。
[拡散助剤]
拡散助剤としては、RLM合金の粉末を用いる。RLとしてはRHフッ化物を還元する効果の高い軽希土類元素が適している。また、RLもMも磁石中に拡散してHcJを向上させる効果を持つ場合があるが、主相結晶粒内部にまで拡散しやすくBrを低下させやすい元素は避けるべきである。このRHフッ化物を還元する効果が高く、主相結晶粒内部に拡散しにくいという観点から、RLはNdおよび/またはPr、MはCu、Fe、Ga、Co、Niから選ばれる1種以上とする。中でもNd−Cu合金やNd−Fe合金を用いると、NdによるRHフッ化物の還元能力が効果的に発揮されるので好ましい。また、RLM合金はRLを50原子%以上含み、かつ、その融点が熱処理温度以下の合金を用いる。このようなRLM合金は、熱処理時にRHフッ化物を効率よく還元し、より高い割合で還元されたRHがR−T−B系焼結磁石中に拡散して少量でも効率よくR−T−B系焼結磁石のHcJを向上させることができる。RLM合金の粉末の粒度は500μm以下が好ましい。
[拡散剤]
拡散剤としては、RHフッ化物(RHはDyおよび/又はTb)の粉末を用いる。本発明者の検討によれば、上記のような拡散助剤をR−T−B系焼結磁石母材の表面にともに存在させて熱処理した場合のHcJ向上効果はRH酸化物よりもRHフッ化物の方が大きいことがわかった。RHフッ化物の粉末の粒度は100μm以下が好ましい。なお、本発明におけるRHフッ化物には、RHフッ化物の製造工程における中間物質であるRH酸フッ化物が含まれていてもよい。
[拡散熱処理]
RLM合金の粉末とRHフッ化物の粉末とをR−T−B系焼結磁石母材の表面に存在させる方法はどのようなものであってもよい。例えば、RLM合金の粉末とRHフッ化物の粉末をR−T−B系焼結磁石母材の表面に散布する方法や、RLM合金の粉末とRHフッ化物の粉末とを純水や有機溶剤などの溶媒に分散させ、これにR−T−B系焼結磁石母材を浸漬して引き上げる方法、RLM合金の粉末とRHフッ化物の粉末とをバインダーや溶媒と混合してスラリーを作製し、このスラリーをR−T−B系焼結磁石母材の表面に塗布する方法、等が挙げられる。バインダーや溶媒は、その後の熱処理の昇温過程において、拡散助剤の融点以下の温度で熱分解や蒸発などでR−T−B系焼結磁石の表面から除去されるものであればよく、特に限定されるものではない。バインダーの例としては、ポリビニルアルコールやエチルセルロースなどがあげられる。またRLM合金の粉末とRHフッ化物の粉末は、それらを混合した状態でR−T−B系焼結磁石母材の表面に存在させてもよいし、別々に存在させてもよい。RLM合金の粉末とRHフッ化物の粉末とをバインダーや溶媒と混合して作製したスラリーをR−T−B系焼結磁石母材の表面に塗布して静置すると、比重の大きなRLM合金の粉末が優先して沈降し、RLM合金粉末層とRHフッ化物層の2層に分離することがある。このことは、RLM合金がRHフッ化物を還元して、磁石内部にRHのみを拡散させフッ素を拡散させないために都合がよい。なお、本発明の方法においては、RLM合金はその融点が熱処理温度以下であるため熱処理の際に溶融し、R−T−B系焼結磁石の表面は還元されたRHがR−T−B系焼結磁石内部に拡散しやすい状態になる。したがって、RLM合金の粉末とRHフッ化物の粉末とをR−T−B系焼結磁石母材の表面に存在させる前にR−T−B系焼結磁石母材の表面に対して酸洗などの特段の清浄化処理を行う必要はない。もちろん、そのような清浄化処理を行うことを排除するものではない。また、RLM合金粉末粒子の表面が多少酸化されていてもRHフッ化物を還元する効果にほとんど影響はない。
粉末状態にあるRLM合金およびRHフッ化物のR−T−B系焼結磁石母材の表面における存在比率(熱処理前)は、質量比率でRLM合金:RHフッ化物=96:4〜50:50とする。存在比率はRLM合金:RHフッ化物=95:5〜60:40であることがより好ましい。本発明は、RLM合金およびRHフッ化物の粉末以外の粉末(第三の粉末)がR−T−B系焼結磁石母材の表面に存在することを必ずしも排除しないが、第三の粉末がRHフッ化物中のRHをR−T−B系焼結磁石の内部に拡散することを阻害しないように留意する必要がある。R−T−B系焼結磁石母材の表面に存在する粉末の全体に占める「RLM合金およびRHフッ化物」の粉末の質量比率は、70%以上であることが望ましい。ある態様では、R−T−B系焼結磁石母材の表面において、RH酸化物の粉末は実質的に存在していない。
なお、ここで「実質的に存在しない」とは、R−T−B系焼結磁石母材の表面に存在する粉末におけるRH酸化物の含有量が不可避不純物の含有量以下、具体的には、1質量%以下であることを意味する。
本発明によれば、少ない量のRHで、効率的にR−T−B系焼結磁石のHcJを向上させることが可能である。R−T−B系焼結磁石母材の表面に存在させる粉末中のRH元素の量は、磁石表面1mm2あたり0.03〜0.35mgであることが好ましく、0.05〜0.25mgであることが更に好ましい。
RLM合金の粉末とRHフッ化物の粉末とをR−T−B系焼結磁石母材の表面に存在させた状態で熱処理を行う。なお、熱処理の開始後、RLM合金の粉末は溶融するため、RLM合金が熱処理中に常に「粉末」の状態を維持する必要はない。熱処理の雰囲気は真空または不活性ガス雰囲気が好ましい。熱処理温度はR−T−B系焼結磁石の焼結温度以下(具体的には例えば1000℃以下)であり、かつ、RLM合金の融点よりも高い温度である。熱処理時間は例えば10分〜72時間である。また前記熱処理の後必要に応じてさらに400〜700℃で10分〜72時間の熱処理を行ってもよい。
拡散熱処理後のR−T−B系焼結磁石において、重希土類元素の濃度は、磁石表面から磁石中心部に向かって低下している。これは、R−T−B系焼結磁石の外部から粒界拡散によって磁石内部に導入された重希土類元素の濃度に勾配が生じているためである。また、後述するように、磁石表面に近い表層領域の酸素が拡散反応時に消費され、表層領域における含有酸素量の低下していることが確認された。含有酸素量が低下している領域、すなわち、含有酸素量が磁石中央に比べて減少している領域は、磁石表面(混合粉末に接触していた拡散面)から400〜500μm程度の深さまでの領域である。
[拡散熱処理後の研削]
本発明の好ましい実施形態では、拡散熱処理後のR−T−B系焼結磁石の表面を深さ方向に400μm以下研削する工程を行う。研削量は0μm超、例えば5μm以上、典型的には10μm以上、好ましくは50μm以上である。研削量が200μm以下のとき、より優れた耐食性が発揮される。研削は、例えば、平面研削盤などの公知の工作機械または装置を用いて行うことができる。このような研削を行った後の磁石表面およびその近傍では、酸素量(酸化物量)が低減するように改質された領域が存在し、磁石の耐食性が向上していると考えられる。希土類や鉄など磁石を構成している元素は酸化物の方が安定であり、通常、当業者は酸化物量が減少すると耐食性が低下すると考える。本発明のように酸化物量が低減して耐食性が向上するという結果は、当業者が全く予想し得ないものである。
酸素量(酸化物量)は、後述するように、磁石表面から深さ方向に勾配をもって変化しているため、磁石断面の走査型電子顕微鏡観察によって定量的な評価を行う。なお、拡散熱処理後のR−T−B系焼結磁石表面には、熱処理前にはRLM合金の粉末とRHフッ化物の粉末の層であり拡散熱処理によって変質した層が残存している。このような層を、本明細書では、便宜上、「残存塗布層」と呼ぶが、塗布でなく散布した層が変質した残存物を広く含むものとする。この残存塗布層は例えば研削によって除去され得る。残存塗布層の研削による除去は、拡散熱処理後の磁石の残存塗布層が存在する面を元々のR−T−B系焼結磁石母材の寸法まで研削することによってなされる。残存塗布層の厚さは熱処理前に存在させた粉末の量などによって異なり得る。本発明における400μm以下の研削量は、前記残存塗布層を除去した後の、磁石母材寸法からのさらなる研削量を意味する。残存塗布層の除去と前記400μm以下の研削は一度に行ってもよい。
こうして得られたR−T−B系希土類焼結磁石は、軽希土類元素RL(Ndおよび/またはPr)を主たる希土類元素Rとして含有するR2Fe14B型化合物結晶粒を主相として有し、重希土類元素RH(Dyおよび/またはTb)を含有する。そして、重希土類元素の濃度は、磁石表面から磁石中心部に向かって低下している。また、磁石表面に対して垂直な断面において、前記磁石表面から100μmの深さまでの表層領域におけるフッ素含有化合物の面積割合は1%以下であり、磁石表面から100μmの深さまでの表層領域における酸化物粒子の面積割合は、磁石中心部における深さ方向の厚さが100μmの中央領域における酸化物粒子の面積割合よりも低いという特徴を備えている。好ましい実施形態では、磁石表面に対して垂直な断面において、前記表層領域中の酸化物粒子の面積割合は、前記中央領域中の酸化物粒子の前記断面における面積割合の95%以下である。更に好ましい実施形態では、磁石表面に対して垂直な断面において、前記表層領域中の酸化物粒子の面積割合は、前記中央領域中の酸化物粒子の前記断面における面積割合の75%以下である。
なお、磁石表面に対して垂直な断面において、「磁石表面から100μmの深さまでの表層領域」における酸化物粒子の面積割合は、以下のようにして決定される。
拡散熱処理後の研削工程が完了した後の磁石表面(加工表面)に垂直な断面において、当該磁石表面から深さ方向に100μmの幅を持つ矩形領域を含む走査型電子顕微鏡写真(断面SEM像)を撮像する。前記矩形領域の水平方向長さは、任意であるが、好適には深さ方向の幅以上の大きさに設定され得る。前記矩形領域のうち、酸化物粒子(希土類の酸化物および/または酸炭化物)が占める領域の矩形領域に対する面積比率(割合)を算出する。このようにして求められる酸化物粒子の面積割合は、実質的に酸素濃度に対応している。
同様に、磁石表面に対して垂直な断面において、「中央領域」における酸化物粒子の面積割合は、以下のようにして決定される。すなわち、拡散熱処理後の研削工程が完了した後の磁石表面(加工表面)に垂直な断面において、磁石中央部に位置する深さ方向に100μmの幅を持つ矩形領域を含む走査型電子顕微鏡写真(断面SEM像)を撮像する。表層領域について行った方法と同じ方法を用い、この矩形領域のうち、酸化物粒子が占める領域の面積割合を算出する。
以下、本開示によるR−T−B系希土類焼結磁石における酸化物粒子の分布と耐食性との関係をより詳しく説明する。
図1は 熱処理前の拡散剤と拡散助剤、および熱処理後の混合粉末に対し、X線回折法による解析結果を示すグラフである。図1は上から順に、拡散剤(TbF3)のX線回折データ、拡散助剤(Nd70Cu30)と拡散剤の混合粉末を100PaのAr雰囲気中900℃で4時間熱処理したもののX線回折データ、拡散助剤のX線回折データである。拡散剤のメイン回折ピークはTbF3のピークであり、拡散助剤のメイン回折ピークはNdおよびNdCuのピークである。これに対して、混合粉末を熱処理したもののX線回折データではTbF3とNdCuの回折ピークは消失し、NdF3の回折ピークがメイン回折ピークとして発現している。また、混合粉末を熱処理したもののX線回折データでは、NdOFのピークも存在する。すなわち、熱処理により、Nd70Cu30がTbF3を還元し、Ndがフッ素および酸素と結びついていることがわかる。なお、上記の熱処理は、拡散剤と拡散助剤との混合粉末に対して行われたものであり、熱処理時の混合粉末は磁石表面に接触していない。Ndと結びついた酸素は、熱処理雰囲気中に微量に存在していたものであると推測される。また、上記の熱処理では還元されたTbは混合粉末中に残っていると推測されるが、混合粉末を熱処理したもののX線回折データには、Tbのピークがマイナーピークとして発現していることを確認している。
上記の結果から、混合粉末中の拡散助剤(Nd70Cu30)は、熱処理中に生じる還元反応の結果、酸素と結びつきやすい状態のNdまたはNdF3を生じさせると考えられる。したがって、このような混合粉末を磁石母材の表面に接触させた状態で熱処理を行うと、混合粉末中のTbF3に含まれていたTbが磁石内部に拡散するだけではなく、還元反応によって生じたNdまたはNdF3が周辺の酸素と結合すると考えられる。すなわち、このような混合粉末を磁石母材の表面に接触させた状態で熱処理(拡散熱処理)を行うと、磁石の表層領域中で酸素(酸化物粒子)の減少していることが観察され、それに伴って磁石の耐食性が向上した。
図2Aは、RLM合金粉末とRHフッ化物粉末とから構成される混合粉末の塗布層200がR−T−B系焼結磁石100の上面および下面に接触した状態の一例を模式的に示す斜視図である。拡散熱処理は、このような状態で行われ得る。図には、参考のため、直交するX軸、Y軸およびZ軸からなるXYZ座標が示されている。この例には示されていないが、R−T−B系焼結磁石100の側面にも混合粉末の塗布層200が設けられていてもよい。
拡散熱処理の結果、R−T−B系焼結磁石100の表面における塗布層200から内部に向かってRH(Dyおよび/またはTb)が拡散する。拡散熱処理後のR−T−B系焼結磁石の表面には、熱処理によってRLM合金の粉末およびRHフッ化物の粉末の層から変質した層(残存塗布層)が残存している。この残存塗布層は研削によって除去される。図2Bは拡散熱処理が行われた後において、R−T−B系焼結磁石100の上面および下面に残存塗布層201が存在している状態を模式的に示している。図2Cは、残存塗布層202が除去された状態のR−T−B系焼結磁石100を模式的に示している。
図2Dは、R−T−B系焼結磁石100における酸化物の深さ方向(Z軸方向)における濃度分布を評価するため、図2Cの破線に沿ってR−T−B系焼結磁石100を中央で2つに切断し、断面(切断面)100Cを露出させた状態を示している。
図3A、図3B、および図3Cは、いずれも、図2DにおけるR−T−B系焼結磁石100の断面100Cを模式的に示す断面図である。図3Aには、R−T−B系焼結磁石100の研削前磁石表面120からの深さが異なる3つの矩形領域A、B、Cが示されている。矩形領域Cは、R−T−B系焼結磁石100の中央に位置する中央領域180内に含まれている。
図3Bは、研削前磁石表面120から深さ方向(Z軸方向)に100μm程度だけ研削した状態におけるR−T−B系焼結磁石100の断面100Cを模式的に示している。研削後におけるR−T−B系焼結磁石100の表面140は、拡散熱処理直後においてはR−T−B系焼結磁石100の表面(残存塗布層と磁石との界面)120から深さ100μmだけ磁石内部側に位置していた。この例における領域Aは、R−T−B系焼結磁石100の表面140から深さ100μmまでの表層領域160に含まれている。
図3Cは、研削前磁石表面120から深さ方向に400μm程度だけ研削した状態におけるR−T−B系焼結磁石100の断面100Cを模式的に示している。研削後におけるR−T−B系焼結磁石100の表面140は、拡散熱処理直後においてはR−T−B系焼結磁石100の表面(残存塗布層と磁石との界面)120から深さ400μmだけ磁石内部側に位置していた。この例における領域Bは、研削後におけるR−T−B系焼結磁石100の表面140から深さ100μmまでの表層領域160に含まれている。
図3Bおよび図3Cでは、R−T−B系焼結磁石100の上面側に位置する表面120から研削が行われる例を記載しているが、研削は下面側に位置する表面から行われても同様である。RLM合金粉末とRHフッ化物粉末とから構成される混合粉末と接触して拡散が生じた各面に対して研削が行われ得る。「深さ方向」とは、着目する表面(拡散面)に対して垂直な方向である。
図4A、図4B、および図4Cは、それぞれ、図3Bの領域A、図3Cの領域B、および領域Cに相当する部分の断面SEM-EDXマッピングを示す図である。それぞれ、酸素(O)、フッ素(F)、鉄(Fe)、ネオジム(Nd)、テルビウム(Tb)、および銅(Cu)の元素マッピングを示している。
図4Aからわかるように、100μm研削後の表層領域160ではTbが結晶粒界に網目状に検出され、フッ素は検出されなかった(フッ素の含有量は検出レベル以下)。拡散剤のTbF3からは、Tbのみが磁石中に拡散し、フッ素は拡散していないことがわかる。このように、本発明のR−T−B系焼結磁石は磁石内部にフッ素をほとんど含有していない。本発明においては、フッ素をほとんど含有しないということを、磁石表面に対して垂直な断面において、前記磁石表面から100μmの深さまでの表層領域におけるフッ素含有化合物の面積割合が1%以下である、とする。また、図4Bおよび図4Cからわかるように、磁石表面から深さ方向に沿ってTb濃度は減少している。
また、図4Bおよび図4Cからわかるように、領域Bおよび領域Cでは、酸化物粒子が観察された。これらは、NdのマッピングにおいてNdが強く検出されている部分と一致しているため、希土類酸化物であると考えられる。なお、「粒子」の用語は、対象物の形状および大きさを特定のものに限定しない。領域Bで観察される酸化物粒子の量(密度または濃度、あるいは面積)は、領域Cで観察される酸化物粒子の量(密度または濃度、あるいは面積)よりも少なかった。一方、図4Aからわかるように、領域Aでは、上記のような酸化物粒子はほとんど観察されなかった。なお、図4Aおよび図4Bの酸素のマッピングにおいて最上部に検出されている酸素は、分析用のサンプルを調製するために用いた樹脂中に含まれるものである。
図4Dは、TbF3の粉末をバインダーや溶媒と混合して作製したスラリーをR−T−B系焼結磁石母材の表面に塗布して熱処理することによって作製したR−T−B系焼結磁石(特許文献5に開示されている磁石に相当する比較例の磁石)における、図3Bの領域Aに相当する部分の断面SEM-EDXマッピングを示す図である。
図4Dからわかるように、RLM合金の粉末を含まずにTbF3を含むスラリーを塗布して熱処理した磁石における100μm研削後の表層領域160では、フッ素が検出されている。さらに詳細な解析によると、フッ素が検出された部分には、希土類フッ化物および/または酸フッ化物が存在していることが確認された。特許文献5相当の磁石では、拡散剤のTbF3からは、Tbとフッ素の両方が磁石中に拡散していることがわかる。更に、下記に示す酸化物粒子の面積割合を求める場合と同様の画像解析によって、磁石表面から100μmの深さから深さ方向の幅が100μmの表層領域の希土類フッ化物または酸フッ化物の面積割合を求めたところ、7.0%であった。なお、RLM合金ではなくM金属、具体的には、Al粉末やCu粉末などをTbF3粉末と混合した粉末に対しても同様に塗布、熱処理する実験も行ったが、TbF3の粉末だけの場合と同様に磁石の表層領域からフッ素が検出された。
図5は、図3Aに示される領域Cに相当する部分の断面SEM像を示す図である。明度が相対的に低い部分(暗い部分)は主相であり、明度が相対的に高い部分(明るい部分)は、粒界相である。図5には、断面SEM像の右下に位置する一部を拡大した写真の図も示している。この拡大した写真の図に明瞭に示されるように、粒界相中には、明度が異なる2種類の領域が存在している。走査型電子顕微鏡によると、このような明度の差異は、組成物の平均原子番号の差異によって生じる。平均原子番号とは、2種類以上の元素からなる化合物の場合の平均的な原子番号であり、それぞれの元素の質量濃度に応じた重みづけを考慮して計算される。「酸化物粒子」と記載された部分は、別途行った図4A〜Cと同様の酸素およびNdのマッピング分析から、希土類元素(この例ではNd)に酸素が結合した化合物であることがわかった。明度の違いに基づいて画像処理を行うことにより、断面SEM像を主相(R−Fe−B相)、粒界相(R−リッチ相)、酸化物粒子(R−Oおよび/またはR−C−O)のそれぞれの領域に分けることができ、かつ、各領域の面積割合を算出することができる。このような画像処理および面積割合の計算は、例えば画像処理ソフトとしてScandium(OLYMPUS社製)を使用して行うことができる。
図6Aおよび図6Bは、それぞれ、領域A(図3B)および領域B(図3C)に相当する部分の断面SEM像を示す図である。倍率および視野の大きさは、図5の断面SEM像と同様である。画像処理用の図を作製する際、面積割合の算出精度および再現性を高めるため、研削表面に存在する微小な凹凸部分を領域A、Bの視野から排除しても良い。そのような凹凸を含む極表面の領域は厚さ10μm程度またはそれ以下である。酸化物粒子の面積割合を算出する際、画像処理の対象とする領域A(図3B)および領域B(図3C)の位置を極表面から10μm程度だけ磁石内部側にシフトさせ、それによって極表面の凹凸を視野から排除しても、算出される面積割合の値に実質的な差異は生じない。
図5、図6Aおよび図6Bに示される断面SEM像は、深さ方向の幅(Z軸方向のサイズ)が180μm程度の広い視野を有している。このため、上記の断面SEM像は、深さ方向の幅(Z軸方向のサイズ)が100μmの「表層領域」および「中央領域」の外側に拡がる部分を含んでいる。画像処理による面積比率の計算に際しては、対象領域を「表層領域」または「中央領域」から外れないように適切に領域選択を行うことが好ましい。ただし、酸化物粒子の濃度が深さ方向に沿って緩やかに変化している場合、計算に用いる断面SEM像の視野のサイズ200μm以下であれば、その視野が「表層領域」または「中央領域」よりも広くても、酸化物粒子の面積割合を評価するうえで影響はほとんどない。
図5、図6Aおよび図6Bに示される断面SEM像から上記の画像処理ソフトを用いて深さ方向の幅が100μmの中央領域および表層領域の酸化物粒子の面積割合を求めたところ、領域A、領域Bおよび領域Cのそれぞれにおいて、酸化物粒子の面積割合は、0.5%、1.8%、および2.4%であった。すなわち、研削量が100μm程度の磁石では、表層領域における酸化物粒子の面積割合は0.5%であり、研削量が400μm程度の磁石では、表層領域における酸化物粒子の面積割合は1.8%である。いずれも、中央領域における酸化物粒子の面積割合(2.4%)よりも小さい。具体的には、研削量が100μm程度の磁石では、表層領域における酸化物粒子の面積割合(0.5%)が、中央領域における酸化物粒子の面積割合(2.4%)の75%以下の範囲内である。また、研削量が400μm程度の磁石では、表層領域における酸化物粒子の面積割合(1.8%)が、中央領域における酸化物粒子の面積割合(2.4%)の95%以下の範囲内である。
拡散熱処理を行っていない磁石に対して上記と同様に断面観察を行ったところ、いずれの領域においても、酸化物粒子は上記磁石中央領域における面積割合と同程度の面積割合を示した。
以上のことから、拡散熱処理を行っていない磁石の表層領域では、中央領域と同程度の密度で酸化物粒子が存在しているが、拡散熱処理を行った磁石では、表層領域における酸化物粒子の密度または濃度が中央領域に比べて減少することがわかった。拡散熱処理により、表層領域に存在していた希土類酸化物が還元された可能性が高い。その還元の効果は、磁石表面から深さ方向に進むにつれて弱まり、磁石中央領域ではほとんど見られない。なお、「酸化物粒子」は、一部または全部が酸炭化物粒子であってもよい。
これらの結果は、以下の実施例に示す耐食性試験の結果とも一致している。本発明のR−T−B系焼結磁石においては、磁石表層部分が拡散熱処理によって還元されたことにより、表層部分の耐食性が向上していると考えられる。
[実験例1]
まず、公知の方法で、組成比Nd=13.4、B=5.8、Al=0.5、Cu=0.1、Co=1.1、残部=Fe(原子%)のR−T−B系焼結磁石を作製した。これを機械加工することにより、3.1mm×32.3mm×36.5mmのR−T−B系焼結磁石母材を得た。得られたR−T−B系焼結磁石母材の磁気特性をB−Hトレーサーによって測定したところ、HcJは1029kA/m、Brは1.45Tであった。なお、R−T−B系焼結磁石母材は、磁石中央部から3.1×7×7mmの試験片を機械加工によって切り出し、測定した。また、別途R−T−B系焼結磁石母材の不純物量をガス分析装置によって測定したところ、酸素が810ppm、窒素が370ppm、炭素が870ppmであった。
次に組成がNd70Cu30(原子%)(融点520℃:RLMの二元系状態図で示される値)の拡散助剤を用意した。拡散助剤は超急冷法によって作製した合金薄帯をコーヒーミルで粉砕し、粒度150μm以下とした。得られた拡散助剤の粉末と粒度20μm以下のTbF3粉末を60:40で混合し、混合粉末を得た。この混合粉末とエチルセルロース、シランカップリング剤および溶媒を混合してスラリーを得た。このスラリーを、R−T−B系焼結磁石母材の32.3mm×36.5mmの上下2面に、R−T−B系焼結磁石表面(拡散面)1mm2あたりのRH量が0.1mg/mm2となるように塗布し、乾燥した。
このR−T−B系焼結磁石母材を配置したMo板を処理容器に収容して蓋をした。この蓋は容器内外のガスの出入りを妨げるものではない。これを熱処理炉に収容し、100PaのAr雰囲気中、400℃で2時間および900℃で8時間の熱処理を行った。熱処理は、室温から真空排気しながら昇温し、雰囲気圧力および温度が上記条件に達してから上記条件で行った。その後いったん室温まで降温してからMo板を取り出してR−T−B系焼結磁石を回収した。回収したR−T−B系焼結磁石を処理容器に戻して再び熱処理炉に収容し、10Pa以下の真空中、490℃で3時間の熱処理を行った。この熱処理も室温から真空排気しながら昇温し、雰囲気圧力および温度が上記条件に達してから上記条件で行った。その後いったん室温まで降温してからR−T−B系焼結磁石を回収した。
得られたR−T−B系焼結磁石の表面をそれぞれ厚さ方向(Z方向)に表1の値ずつ、厚さ方向に垂直な方向(X、Y方向)はそれぞれ200μmずつ機械加工によって研磨除去し、厚さ方向の寸法がM(mm)のサンプルS1〜S6を得た。なお、表1の研削量は熱処理後のR−T−B系焼結磁石表面上に存在する残存塗布層を含まない値であり、残存塗布層はR−T−B系焼結磁石表面の研削と同時に除去した(S1は残存塗布層のみを研削除去)。またサンプルS1〜S6と同じ研削量のサンプルの磁石中央部からそれぞれM×7×7mmの試験片を機械加工によって切り出し、磁気特性をB−Hトレーサーによって測定し、HcJとBrを求めた。結果を表1に示す。
サンプルS1〜S6について、エタノール中で超音波洗浄を行った後、温度125℃、相対湿度85%、12時間で3サイクルのプレッシャークッカー(PCT)試験を行った。図7は、PCT試験後の磁石の減耗量と試験時間との関係を示すグラフである。図8は、試験後の磁石の減耗量と研削量(研削によって除去される磁石領域の厚さ)との関係を示すグラフである。
図7および図8からわかるように、研削量が0(ゼロ)、50μm、100μm、200μm、300μm、400μmのとき、すなわち、研削量が400μm以下のとき、拡散熱処理を行っていない磁石素材に比べて、耐食性が向上している。特に研削量が50μm〜200μmのとき、耐食性の向上が著しい。
次に、サンプルS1と同じ研削量のサンプルについて、図2Dに示すように中央で2つに切断して断面を露出させた状態とし、表2に示す測定位置毎に酸化物の深さ方向(Z軸方向)の濃度分布を評価した。評価方法は上述の図5、図6Aおよび図6Bを参照しながら説明した方法と同様である。結果を表2に示す。
表2における測定位置の深さが0〜100μmの範囲は、研削量がゼロのサンプルS1の表層領域(厚さ100μm)に相当する。同様に、100〜200μmの範囲はサンプルS3の表層領域(厚さ100μm)、200〜300μmの範囲はサンプルS4の表層領域(厚さ100μm)、300〜400μmの範囲はサンプルS5の表層領域(厚さ100μm)、400〜500μmの範囲はサンプルS6の表層領域(厚さ100μm)にそれぞれ相当する。
以上のことからわかるように、拡散熱処理後のR−T−B系焼結磁石の磁石表面(拡散面)から400μm以下の研削を行った場合、研削後の磁石表面近傍、すなわち表層領域(磁石表面から100μm深さまでの、厚さが100μmの領域)における酸化物粒子の含有割合は、磁石の中央領域における酸化物粒子の含有割合に比べて低下している。このことは、拡散熱処理が行われた後の磁石表面(研削前の磁石表面)から深さ400μmの領域では、拡散熱処理に生じる反応によって酸素濃度が低下する現象が進行し、研削後に磁石表面として露出する部分で耐食性が向上したと考えられる。
研削によって現れた磁石表面に接する「表層領域」中の酸化物粒子の面積割合が、磁石表面に対して垂直な断面において、中央領域中の前記酸化物粒子の前記断面における面積割合の95%以下である場合に耐食性の向上が観察され、75%以下である場合に耐食性の向上が大きく、50%以下である場合に耐食性の向上が顕著である。
[実験例2]
実験例1と同じR-T-B系焼結磁石母材(3.1mm×32.3mm×36.5mm、HcJ=1029、Br=1.45)を用い、塗布する混合粉末および塗布条件を変更して実験例2を行った。具体的には、表3に示す拡散助剤および拡散剤を表3に示す混合質量比で混合したスラリーを用い、表3に示す塗布量でR-T-B系焼結磁石母材の上下面に塗布した。この点以外の条件は、実験例1と同様である。
得られたR−T−B系焼結磁石母材に対して実験例1と同様に熱処理を行った。熱処理後のR−T−B系焼結磁石の上面および下面の各表面から厚さ方向にそれぞれ100μm(熱処理後の残存塗布層の厚さを含まない値)ずつ研削を行った。また、熱処理後のR−T−B系焼結磁石の側面に対しては厚さ方向に垂直な方向(X、Y方向)に、それぞれ200μmずつ研削を行った。その結果、厚さ方向の寸法が2.90mmのサンプル1〜20(実施例)を得た。サンプル1〜20の磁気特性を実験例1と同様の方法で測定した。結果を表4に示す。
また、サンプル1〜20のそれぞれについて、実験例1と同じ条件でPCT試験を行った。PCT試験後の磁石の減耗量を評価したところ、全ての磁石において、減耗量が1.2×10-4g/cm2を下回っていた。さらに、サンプル1〜20のそれぞれについて、図3Aに示す領域A、B、Cで断面SEM観察を行い、図5、図6Aおよび図6Bを参照しながら説明した方法と同様の方法で酸化物粒子の面積割合を測定した。すべてのサンプルにおいて、磁石の表層領域における酸化物粒子の面積割合は中央領域における酸化物粒子の面積割合の95%以下であった。
[実験例3]
以下の方法でサンプル21〜29(比較例)を作製した。
(1)蒸着拡散法によりRHを拡散した磁石
公知の方法で作製したR−T−B系焼結磁石母材と純度99.9%のDy板を、図10に示す構成を有する処理容器に配置した。処理容器はMoから形成されていた。R−T−B系焼結磁石母材とDy板との間隔は5〜9mm程度に設定した。この処理容器を真空熱処理炉において加熱し、900℃×3時間と500℃×1時間の熱処理を行った。得られた磁石をサンプル21とする。
(2)回転接触拡散法によりRHを拡散した磁石1
公知の方法で作製したR−T−B系焼結磁石母材に対し、図11に示す装置を用いて熱処理を行った。筒の容積は128000mm3であった。ロール急冷法で作製して粉砕し、篩で3mm以下に粒度調整した50gのDy60Fe40(質量比)合金片と、50gのR−T−B系焼結磁石母材を投入して、筒を回転させながら850℃×5時間と500℃×1時間の熱処理を行った。得られた磁石をサンプル22とする。
(3)回転接触拡散法によりRHを拡散した磁石2
合金片をTb60Fe40(質量比)合金片とし、熱処理条件を900℃×6時間と500℃×3時間とした以外は(2)と同様にして拡散熱処理を行った。得られた磁石をサンプル23とする。
(4)RH酸化物を用いた塗布法によりRHを拡散した磁石
公知の方法で作製したR−T−B系焼結磁石母材の上下面に対し、拡散剤であるTb47をエチルセルロース、シランカップリング剤および溶媒と混合したスラリーを塗布した。この表面にTb47が存在する状態のR−T−B系焼結磁石母材に対して実験例1と同様に熱処理を行った。得られた磁石をサンプル24とする。
(5)RLM合金とRH酸化物を用いた塗布法によりRHを拡散した磁石
公知の方法で作製したR−T−B系焼結磁石母材に対し、実験例1の拡散助剤と同じ拡散助剤と、拡散剤として機能するTb47とを質量比60:40で混合して混合粉末を得た。この混合粉末と、エチルセルロース、シランカップリング剤および溶媒とを混合したスラリーを、R-T-B系焼結磁石母材の上下面に塗布した。この塗布後のR−T−B系焼結磁石母材に対して実験例1と同様に熱処理を行った。得られた磁石をサンプル25とする。
(6)RH水素化物を用いた塗布法によりRHを拡散した磁石
拡散剤としてDyH2を用いたこと以外は(4)と同様にして熱処理を行った。得られた磁石をサンプル26とする。
(7)RH合金を用いた塗布法によりRHを拡散した磁石
拡散剤としてDy60Fe40合金を用いたこと以外は(4)と同様にして熱処理を行った。得られた磁石をサンプル27とする。
(8)M金属とRH酸化物を用いた塗布法によりRHを拡散した磁石
拡散助剤としてCuを用い、拡散助剤と拡散剤の混合質量比を50:50としたこと以外は(5)と同様にして熱処理を行った。得られた磁石をサンプル28とする。
(9)スパッタ法によりRH膜を拡散した磁石
公知の方法で作製したR−T−B系焼結磁石母材に対し、Tb金属をターゲットとするスパッタ装置によって磁石母材の表面に20μmのTb膜を形成した。Tb膜が表面に形成された磁石に対し、900℃×1時間の熱処理を行った。得られた磁石をサンプル29とする。
サンプル23〜29のそれぞれについて、図3Aに示す領域A(磁石の表層部分)、C(磁石の中央部分)で断面SEM観察を行った。典型例としてサンプル25の結果を図9Aおよび図9Bに示す。図9Aはサンプル25の領域Aの部分、図9Bはサンプル25の領域Cの部分を示している。倍率および視野の大きさは、図5、図6Aおよび図6Bの断面SEM像と同様である。他の比較例のサンプルでも、同様の断面SEM像が得られた。
更に、図5、図6Aおよび図6Bを参照しながら説明した方法と同様の方法で酸化物粒子の面積割合を測定した。結果を表5に示す。比較例のすべてのサンプルにおいて、磁石の表層領域における酸化物粒子の面積割合は中央領域における酸化物粒子の面積割合を上回っていた。
[考察]
以上の実験例により、以下のことが確認された。
質量比率で50%以上のRLM合金と共にRHフッ化物を磁石母材の表面に存在させた状態で熱処理を行って得られたR−T−B系焼結磁石は、磁石中にフッ素をほとんど含有していない。しかし、特許文献5に記載されている方法のように、質量比率で50%以上のRLM合金を磁石母材の表面に存在させることなくRHフッ化物を磁石母材の表面に存在させた状態で熱処理を行ったR−T−B系焼結磁石は、磁石中に多くのフッ素を含有している。
また、フッ化物を用いない多くの公知の拡散方法によって作製された磁石の酸化物粒子の面積割合について調べたが、本発明のように磁石表層部分の酸化物粒子が磁石中央部分の酸化物粒子よりも少なくなっているものは全くなかった。
従って、表層領域の酸化物粒子が中央領域の酸化物粒子よりも少ないことで耐食性に優れ、かつ、磁石内部にフッ化物を含まないことは、本発明のR−T−B系焼結磁石独自の特徴である。
本発明によるR−T−B系焼結磁石の製造方法は、より少ない重希土類元素RHによってHcJを向上させた耐食性に優れるR−T−B系焼結磁石を提供し得る。

Claims (9)

  1. R−T−B系焼結磁石(Rは希土類元素、TはFeまたはFeとCo)を用意する工程と、
    前記R−T−B系焼結磁石の表面にRLM合金(RLはNdおよび/またはPr、MはCu、Fe、Ga、Co、Niから選ばれる1種以上)の粉末と、RHフッ化物(RHはDyおよび/またはTb)の粉末とを存在させた状態において、前記R−T−B系焼結磁石の焼結温度以下で熱処理を行う工程と、
    熱処理後の前記R−T−B系焼結磁石の前記表面を深さ方向に400μm以下研削する工程と、
    を含み、
    前記RLM合金はRLを50原子%以上含み、かつ、前記RLM合金の融点は前記熱処理の温度以下であり、
    前記熱処理は、前記RLM合金の粉末と前記RHフッ化物の粉末とが、RLM合金:RHフッ化物=96:4〜50:50の質量比率で前記R−T−B系焼結磁石の前記表面に存在する状態で行われる、R−T−B系焼結磁石の製造方法。
  2. 前記R−T−B系焼結磁石の前記表面を研削する工程において、深さ方向に200μm以下研削する、請求項1に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  3. 前記R−T−B系焼結磁石の前記表面において、前記RHフッ化物の粉末に含まれるRH元素の質量は、前記表面の1mm2あたりで0.03〜0.35mgである請求項1または2に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  4. 前記R−T−B系焼結磁石の前記表面において、前記RLM合金の粉末と前記RHフッ化物の粉末とは混合された状態にある、請求項1から3のいずれかに記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  5. 前記R−T−B系焼結磁石の前記表面において、RH酸化物の粉末は実質的に存在していない請求項1から4のいずれかに記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  6. 軽希土類元素RL(NdおよびPrの少なくとも1種)を主たる希土類元素Rとして含有するR2Fe14B型化合物結晶粒を主相として有し、重希土類元素RH(Dy、Ho、およびTbからなる群から選択された少なくとも1種)を含有するR−T−B系希土類焼結磁石であって、
    前記重希土類元素の濃度は、磁石表面から磁石中心部に向かって低下し、
    前記磁石表面に対して垂直な断面において、前記磁石表面から100μmの深さまでの表層領域における酸化物粒子の面積割合は、前記磁石中心部における深さ方向の厚さが100μmの中央領域における酸化物粒子の面積割合よりも低く、
    フッ素が内部に拡散していない、R−T−B系焼結磁石。
  7. 前記磁石表面に対して垂直な断面において、前記表層領域中の前記酸化物粒子の面積割合は、前記中央領域中の前記酸化物粒子の前記断面における面積割合の95%以下である、請求項6に記載のR−T−B系焼結磁石。
  8. 前記磁石表面に対して垂直な断面において、前記表層領域中の前記酸化物粒子の面積割合は、前記中央領域中の前記酸化物粒子の前記断面における面積割合の75%以下である、請求項6に記載のR−T−B系焼結磁石。
  9. 前記磁石表面に対して垂直な断面において、前記磁石表面から100μmの深さまでの表層領域におけるフッ素含有化合物の面積割合は1%以下である、請求項6に記載のR−T−B系焼結磁石。
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