JP6790492B2 - エポキシ樹脂組成物、繊維強化複合材料、成形品および圧力容器 - Google Patents

エポキシ樹脂組成物、繊維強化複合材料、成形品および圧力容器 Download PDF

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Description

本発明は、エポキシ樹脂組成物、その硬化物をマトリックス樹脂としてなる繊維強化複合材料、成形品および圧力容器に関するものである。
エポキシ樹脂はその優れた機械的特性を活かし、塗料、接着剤、電気電子情報材料、先端複合材料などの産業分野に広く使用されている。特に炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などの強化繊維とマトリックス樹脂からなる繊維強化複合材料では、エポキシ樹脂が多用されている。
繊維強化複合材料の製造方法としては、プリプレグ法、ハンドレイアップ法、フィラメントワインディング法、プルトルージョン法、RTM(Resin Transfer Molding)法等の工法が適宜選択される。これらの工法のうち、液状樹脂を用いるフィラメントワインディング法、プルトルージョン法、RTM法は、圧力容器、電線、自動車などの産業用途への適用が特に活発化している。
一般にプリプレグ法により製造された繊維強化複合材料は、強化繊維の配置が精緻に制御されるため、優れた機械特性を示す。一方で近年の環境への関心の高まり、温室効果ガスの排出規制の動きを受け、プリプレグ以外の、液状樹脂を用いた繊維強化複合材料でも、さらなる高強度化が求められている。
特許文献1は、置換フェニルグリシジルエーテルを用いた、作業性と機械強度に優れた繊維強化複合材料を与えるRTM向け樹脂を開示している。
特許文献2は、単官能のエポキシ、特にグリシジルフタルイミドと3官能以上のエポキシ樹脂を用い、耐衝撃性と低温下での力学特性を向上させる樹脂組成物を開示している。
特許文献3は、反応性化合物として、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテルを含む、耐熱性と圧縮特性に優れるエポキシ樹脂組成物を開示している。
特許文献4は、ゴム状平坦部剛性率が10MPa以下であることを特徴とする、ハニカムコアとの接着性と引張強度に優れるプリプレグを与える、エポキシ樹脂組成物を開示している。
特許文献5および6は、ペンダント骨格を有するエポキシまたは単官能エポキシと多官能エポキシを用い、耐熱性と強度特性に優れるFRP向けのエポキシ樹脂組成物を開示している。
特許文献7は、熱可塑性樹脂を配合することで、耐熱性と機械特性を両立するエポキシ樹脂組成物を開示している。
特開2005−120127号公報 特開2010−59225号公報 特許第4687167号公報 特開2001−323046号公報 特開2012−67190号公報 国際公開第2011/118106号 特開昭63−86758号公報
特許文献1には、低粘度で耐熱性を有する樹脂は開示されているものの、CFRPとしての機械特性は十分とはいえず、引張強度も十分とはいえない。特許文献2、3および4で開示されている樹脂組成物はプリプレグ向けの粘度が高いものであり、液状樹脂を用いるプロセスには適用できない。また、特許文献2は熱可塑性粒子の配置を制御して性能を向上させるが、このような積層体独自の設計は、液状樹脂を用いるプロセス、特にプルトルージョン法やフィラメントワインディング法への適用は困難である。特許文献3は円筒ねじり強度の向上には効果があるが、繊維強化複合材料の引張強度は十分とはいえない。特許文献4についても、高い耐熱性を有するものの、繊維強化複合材料の引張強度は十分とはいえなかった。
特許文献5、6および7においても、耐熱性に優れる樹脂は開示されているものの、繊維強化複合材料の引張強度は十分とはいえない。
また、特許文献7は、熱可塑性樹脂を配合することで引張強度などの機械特性を向上させたものであり、液状樹脂を用いるプロセスへの適用は困難である。
そこで、本発明は、耐熱性と引張強度を高いレベルで両立する繊維強化複合材料を得るための、エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。また、このエポキシ樹脂組成物を用いた繊維強化複合材料、その成形品および圧力容器を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記構成からなるエポキシ樹脂組成物を見いだし、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明のエポキシ樹脂組成物は、以下の構成からなる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、下記構成要素[A]〜[C]を含むエポキシ樹脂組成物であって、該エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物の動的粘弾性評価におけるゴム状態弾性率が10MPa以下であり、かつ該硬化物のガラス転移温度が95℃以上であることを特徴とする。
[A]tert−ブチル基、sec−ブチル基、イソプロピル基またはフェニル基で置換されたフェニルグリシジルエーテルである単官能エポキシ樹脂
[B]以下の[b1]、[b2]および[b3]からなる群から選ばれる少なくとも1つのエポキシ樹脂
[b1]置換されていてもよいジグリシジルアニリン
[b2]テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン
[b3]フルオレン構造を有する2官能以上のエポキシ樹脂
[C]アミン系硬化剤または酸無水物系硬化剤。
また、本発明の繊維強化複合材料は、上記エポキシ樹脂組成物の硬化物と強化繊維とからなる。
さらに、本発明の成形品および圧力容器は、上記繊維強化複合材料からなる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いることで、耐熱性と引張強度に優れる繊維強化複合材料を提供できる。また、前記繊維強化複合材料からなる成形品および圧力容器を提供できる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、下記構成要素[A]〜[C]を含むエポキシ樹脂組成物であって、該エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物の動的粘弾性評価におけるゴム状態弾性率が10MPa以下であり、かつ該硬化物のガラス転移温度が95℃以上であることを特徴とする。
[A]tert−ブチル基、sec−ブチル基、イソプロピル基またはフェニル基で置換されたフェニルグリシジルエーテルである単官能エポキシ樹脂
[B]以下の[b1]、[b2]および[b3]からなる群から選ばれる少なくとも1つのエポキシ樹脂
[b1]置換されていてもよいジグリシジルアニリン
[b2]テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン
[b3]フルオレン構造を有する2官能以上のエポキシ樹脂
[C]アミン系硬化剤または酸無水物系硬化剤。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記構成要素[A]〜[C]を含む。
構成要素[A]であるtert−ブチル基、sec−ブチル基、イソプロピル基またはフェニル基で置換されたフェニルグリシジルエーテルである単官能エポキシ樹脂は、耐熱性と引張強度利用率の両立に必要な成分である。構成要素[A]は、耐熱性の低下を抑えつつ、引張強度利用率を高めるために含有される。かかるエポキシ樹脂としては、例えば、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、p−イソプロピルフェニルグリシジルエーテル、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、o−フェニルフェノールグリシジルエーテルなどが挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、構成要素[A]を、全エポキシ樹脂100質量部中20〜50質量部含むことが好ましい。構成要素[A]を当該範囲とすることで、耐熱性と引張強度利用率のバランスに優れた繊維強化複合材料を与える、エポキシ樹脂硬化物が得られやすくなる。
本発明の構成要素[B]は、構成要素[A]と組み合わせることで、得られる繊維強化複合材料が、優れた耐熱性と引張強度利用率を示す。構成要素[B]は、以下の構成要素[b1]、構成要素[b2]および構成要素[b3]からなる群から少なくとも1つが選ばれて用いられる。
構成要素[b1]は、置換されていてもよいジグリシジルアニリンである。構成要素[b1]のエポキシ樹脂としては、例えばジグリシジルアニリン、ジクリシジルトルイジンなどが挙げられる。
構成要素[b2]は、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンである。
構成要素[b3]は、フルオレン構造を有する2官能以上のエポキシ樹脂である。構成要素[b3]のエポキシ樹脂としては、例えばビスヒドロキシフェニルフルオレンのジグリシジルエーテルが挙げられる。
本発明では、構成要素[B]は、構成要素[b1]または[b2]のいずれかであることが、液状樹脂としての作業性に優れるため好ましい。また、[b1]と[b2]が同時に用いられることが、より耐熱性と引張強度利用率のバランスに優れた繊維強化複合材料が得られるため好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲、特に粘度の許容される範囲において、構成要素[A]および構成要素[B]以外のエポキシ樹脂を含有することができる。構成要素[A]および構成要素[B]以外のエポキシ樹脂は、機械特性、耐熱性、耐衝撃性などのバランスや、粘度などのプロセス適合性を目的に応じて調節することができ、好適に用いられる。
構成要素[A]および構成要素[B]以外のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を含むエポキシ樹脂、構成要素[A]以外のフェニルグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、エポキシ基を有する反応性希釈剤などが挙げられる。これらは単独で用いても、複数種を組み合わせても良い。
本発明の構成要素[C]は、アミン系硬化剤または酸無水物系硬化剤である。アミン系硬化剤とは、分子内に1級または2級のアミノ基を1個以上有する化合物であり、脂肪族ポリアミンや芳香族ポリアミンが挙げられる。脂肪族アミン系硬化剤としては、例えば、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、キシリレンジアミン、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、シクロヘキサンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、アルキレングリコール構造を有する脂肪族ポリアミンなどが挙げられる。アルキレングリコール構造には、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンの共重合体などが挙げられる。中でも、末端にアミノ基を有する脂肪族ポリアミンが、エポキシ樹脂との反応性に優れ、エポキシ樹脂とのネットワークに取り込まれやすく、繊維強化複合材料の引張強度利用率を向上させるため、好適に用いられる。末端にアミノ基を有する脂肪族ポリアミンとしては、2−アミノプロピルエーテル構造、2−アミノエチルエーテル構造、または3−アミノプロピルエーテル構造を有する脂肪族ポリアミンが挙げられる。
芳香族アミン系硬化剤としては、例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルメタンなどが挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、構成要素[C]がアミン系硬化剤であって、構成要素[C]として、アミノ基のオルト位に置換基を有する芳香族ジアミンまたはアミノ基を有する炭素原子に隣接する炭素原子が置換基を有するシクロアルキルジアミンを含むことが好ましい。
アミノ基のオルト位に置換基を有する芳香族ジアミンまたはアミノ基を有する炭素原子に隣接する炭素原子が置換基を有するシクロアルキルジアミンは、構成要素[A]および構成要素[B]との組み合わせで、立体障害による分子鎖の拘束が大きくなり、より耐熱性と引張強度利用率に優れる繊維強化複合材料が得られやすくなるため好適に用いられる。このような硬化剤としては、具体的には、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルメタン、2,2’−ジメチル−4,4’−メチレンビスシクロヘキシルアミンなどが挙げられる。なかでも、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンまたはジエチルトルエンジアミンが好ましい。
これらのアミン系硬化剤は、単独または組み合わせて使用することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、構成要素[C]として、さらにアルキレングリコール構造を有する脂肪族ポリアミンを含むことが好ましい。アミノ基のオルト位に置換基を有する芳香族ジアミンまたはアミノ基を有する炭素原子に隣接する炭素原子が置換基を有するシクロアルキルジアミンと、アルキレングリコール構造を有する脂肪族ポリアミンを併用することにより、エポキシ樹脂組成物の粘度および硬化物のガラス転移温度とゴム状態弾性率のバランスが向上しやすくなる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、構成要素[C]として、さらにイソホロンジアミンを含むことが好ましい。アミノ基を有する炭素原子に隣接する炭素原子が置換基を有するシクロアルキルジアミンに加え、イソホロンジアミンを加えることにより、引張強度利用率に優れる繊維強化複合材料が得られることに加え、プロセス安定性を改善される。イソホロンジアミンを加えることで、樹脂バス中のアミンが空気中の二酸化炭素と塩を形成する現象(アミンブラッシュ)を抑え、プロセス安定性を改善するためである。
酸無水物系硬化剤とは、分子中に酸無水物基を1個以上有する化合物であり、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水マレイン酸、無水コハク酸などが挙げられる。酸無水物硬化剤は、エポキシ樹脂組成物の低粘度化と樹脂硬化物の耐熱性をバランス良く両立できるので好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、構成要素[C]として、ノルボルネン骨格またはノルボルナン骨格を有する化合物を含むことが好ましい。ノルボルネン骨格またはノルボルナン骨格を有する酸無水物は、該骨格による立体障害性により、分子鎖の拘束が大きくなり、より耐熱性と引張強度利用率に優れる繊維強化複合材料が得られやすくなるため、好適に用いられる。ノルボルネン骨格またはノルボルナン骨格を有する酸無水物としては、具体的には、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルビシクロヘプタンジカルボン酸無水物、ビシクロヘプタンジカルボン酸無水物が挙げられる。
酸無水物を硬化剤として使用する場合は、一般に硬化促進剤を併用する。硬化促進剤としては、イミダゾール系硬化促進剤、DBU塩、三級アミン、ルイス酸などが用いられる。
構成要素[C]の総量は、エポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ樹脂成分のエポキシ基に対し、活性水素当量または酸無水物当量を0.6〜1.2当量とすることが好ましい。この範囲とすることで、耐熱性と機械特性のバランスに優れた繊維強化複合材料を与える、エポキシ樹脂の硬化物が得られやすくなる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、フィラメントワインディングやプルトルージョン法などの液状プロセスに製造される繊維強化複合材料に好適に用いられる。該エポキシ樹脂組成物は強化繊維束への含浸性を向上させるため、液状であることが好ましい。具体的には、25℃における粘度が2000mPa・s以下であることが好ましい。粘度がこの範囲にあることで、樹脂バスに特段の加温機構や、有機溶剤などによる希釈を必要とせず、エポキシ樹脂組成物を強化繊維束に含浸させることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、本発明の効果を失わない範囲において、熱可塑性樹脂を含有することができる。熱可塑性樹脂としては、エポキシ樹脂に可溶な熱可塑性樹脂や、ゴム粒子および熱可塑性樹脂粒子等の有機粒子等を含有することができる。
エポキシ樹脂に可溶な熱可塑性樹脂としては、例えばポリビニルホルマールやポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール、フェノキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルピロリドン、ポリスルホンを挙げることができる。
ゴム粒子としては、架橋ゴム粒子、および架橋ゴム粒子の表面に異種ポリマーをグラフト重合したコアシェルゴム粒子を挙げることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物の動的粘弾性評価により得られるゴム状態弾性率は10MPa以下であり、かつ該硬化物のガラス転移温度は95℃以上である。ゴム状態弾性率とガラス転移温度を該範囲とすることで、得られる繊維強化複合材料が、優れた耐熱性と引張強度利用率を示す。
なお、本発明において、繊維強化複合材料の耐熱性は、繊維強化複合材料のガラス転移温度で評価する。また、繊維強化複合材料の引張強度は、引張強度利用率により評価する。引張強度利用率は、繊維強化複合材料が、強化繊維の強度をどれだけ活用しているかの指標である。引張強度利用率が高い繊維強化複合材料では、同じ種類と量の強化繊維を用いた場合、より高い強度が得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物の動的粘弾性評価により得られるゴム状態弾性率を10MPa以下とすることで、引張強度利用率に優れる、すなわち引張強度に優れる繊維強化複合材料が得られる。ここで、ゴム状態弾性率とは、架橋密度と相関がある指標であり、一般的に架橋密度が低いほど、ゴム状態弾性率も低くなる。引張強度利用率は、繊維強化複合材料の引張強度/(強化繊維のストランド強度×繊維体積含有率)×100で示され、この数値が高いことは強化繊維の性能をより高く引き出していることを表し、軽量化効果が大きいといえる。
また、エポキシ樹脂組成物を硬化した硬化物のガラス転移温度を95℃以上とすることで、繊維強化複合材料に発生するゆがみや、変形が原因となる力学特性の低下を抑制でき、耐環境性に優れた繊維強化複合材料が得られる。本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化する条件は特に規定されず、硬化剤の特性に応じて適宜選択される。
ゴム状態弾性率とガラス転移温度は、いずれもエポキシ樹脂硬化物の架橋密度と関連する指標である。ゴム状態弾性率が高いと架橋密度が高くなり、ガラス転移温度が上昇する。一方、ゴム状態弾性率が低いと架橋密度が低くなり、ガラス転移温度が低下する。本発明では、ゴム状態弾性率が低い、すなわち架橋密度が低いほど繊維強化複合材料の引張強度が向上することを見出した。また、同時に、ゴム状態弾性率を低くすると耐熱性が低下する問題も克服した。
すなわち、一般に低いゴム状態弾性率と高いガラス転移温度はトレードオフの関係にあるが、本発明のエポキシ樹脂組成物は、このトレードオフを打破し、優れた耐熱性と引張強度を両立した繊維強化複合材料を与える、液状のエポキシ樹脂組成物である。
本発明のエポキシ樹脂組成物が、耐熱性と引張強度利用率を両立できる理由、言い換えると耐熱性と低いゴム状態弾性率を両立できる理由は定かではないが、構成要素[A]が有する立体障害の大きい置換基が構成要素[B]の硬化反応に干渉し、共有結合による架橋と立体障害による分子鎖の拘束がバランスよく硬化物に含まれるためと推測している。エポキシ樹脂組成物の硬化物中で、構成要素[b1]の芳香環や構成要素[b3]のフルオレン環は、立体障害として構成要素[A]のtert−ブチル基やイソプロピル基などと干渉し、分子鎖の運動を制限する。その結果、共有結合に由来する架橋密度が低くとも、高い耐熱性を示す。また、構成要素[b2]は、一般に架橋密度を上昇させて耐熱性を向上させる成分であるが、構成要素[A]と併用した場合、一部のエポキシ樹脂が立体障害の影響を受けて未反応となり、これがさらなる立体障害となるため、構成要素[b1]、構成要素[b3]と同様に、架橋密度が低い状態で分子鎖の運動が制限される。つまり、構成要素[A]、構成要素[B]、構成要素[C]の組み合わせにより硬化されたエポキシ樹脂硬化物は、低いゴム状態弾性率と高いガラス転移温度を両立できる。さらに、該エポキシ樹脂組成物をマトリックス樹脂として用いることで、耐熱性と引張強度利用率に優れる繊維強化複合材料を得ることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物の調製には、例えばプラネタリーミキサー、メカニカルスターラーといった機械を用いて混練しても良いし、ビーカーとスパチュラなどを用い、手で混ぜても良い。
本発明の繊維強化複合材料は、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物と強化繊維とからなる。本発明の繊維強化複合材料は、耐熱性と引張強度利用率を高いレベルで両立できるため好ましい。
上記方法で調製された本発明のエポキシ樹脂組成物を、強化繊維と複合一体化した後、硬化させることにより、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物をマトリックス樹脂として含む繊維強化複合材料を得ることができる。
本発明に用いられる強化繊維は特に限定されるものではなく、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維などが用いられる。これらの繊維を2種以上混合して用いても構わない。この中で、軽量かつ高剛性な繊維強化複合材料が得られる炭素繊維を用いることが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、フィラメントワインディング法、プルトルージョン法に好適に使用できる。フィラメントワインディング法は、マンドレルまたはライナーに、強化繊維に樹脂を付着させながら巻きつけ、硬化させて成形品を得る成形法である。プルトルージョン法は、強化繊維のロービングに樹脂を付着させ、金型を通過させながら樹脂を連続的に硬化させて成形品を得る成形法である。本発明のエポキシ樹脂組成物は、いずれの工法においても、調製後に樹脂バスに投入して用いることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いた繊維強化複合材料は、圧力容器、プロペラシャフト、ドライブシャフト、電線ケーブルコア材、自動車、船舶および鉄道車両などの移動体の構造体、ケーブル用途に好ましく用いられる。なかでも、フィラメントワインディングによる圧力容器の製造に、好適に用いられる。
本発明の成形品は、本発明の繊維強化複合材料からなる。本発明の圧力容器は、フィラメントワインディング法により好ましく製造される。フィラメントワインディング法は、ライナーに、強化繊維に熱硬化性樹脂組成物を付着させながら巻きつけた後、硬化させることで、ライナーと、ライナーを被覆する、熱硬化性樹脂組成物の硬化剤と強化繊維から成る繊維強化複合材料により構成される繊維強化複合材料層を備える成形品を得る成形法である。圧力容器の製造には、金属製やポリエチレンやポリアミドなどの樹脂製のライナーが用いられ、所望の素材を適宜選択できる。また、ライナー形状においても、所望の形状に合わせ適宜選択できる。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。なお、実施例14および15は参考例と読み替えるものとする。
本実施例で用いた構成要素は以下の通りである。
<使用した材料>
構成要素[A]
・[A]−1 “デナコール(登録商標)”EX−146(p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ナガセケムテックス(株)製)
・[A]−2 “デナコール(登録商標)”EX−142(o−フェニルフェノールグリシジルエーテル、ナガセケムテックス(株)製)。
構成要素[B]
・[b1]−1 GAN(N,N’−ジグリシジルアニリン、日本化薬(株)製)
・[b1]−2 GOT(N,N’−ジグリシジルオルソトルイジン、日本化薬(株)製)
・[b2] “スミエポキシ(登録商標)”ELM434(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、住友化学(株)製)
・[b3] “オグソール(登録商標)”PG−100(フルオレン系エポキシ樹脂、大阪ガスケミカル(株)製)。
その他のエポキシ樹脂
・“jER(登録商標)”828(液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製)
・“jER(登録商標)”830(液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製)
・“アラルダイト(登録商標)”MY0500(トリグリシジル−p−アミノフェノール、ハンツマン・ジャパン(株)製)
・“デナコール(登録商標)”EX−141(フェニルグリシジルエーテル、ナガセケムテックス(株)製)。
構成要素[C]
・“ARADUR(登録商標)”5200(ジエチルトルエンジアミン、ハンツマン・ジャパン(株)製)
・“JEFFAMINE(登録商標)”D230(ポリプロピレングリコールジアミン、ハンツマン・ジャパン(株)製)
・“JEFFAMINE(登録商標)”D400(ポリプロピレングリコールジアミン、ハンツマン・ジャパン(株)製)
・“Baxxodur(登録商標)”EC201(イソホロンジアミン、BASFジャパン(株)製)
・“Baxxodur(登録商標)”EC331(3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、BASFジャパン(株)製)。
・HN−2200(メチルテトラヒドロ無水フタル酸、日立化成(株)製)
・“KAYAHARD(登録商標)”MCD(無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸と無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸の混合液(表中では、一般名の無水メチルナジック酸を記載)、日本化薬(株)製)
・“U−CAT(登録商標)”SA 102(1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7の2−エチルヘキサン酸塩、サンアプロ(株)製)
・“カオーライザー(登録商標)”No.20(N,N−ジメチルベンジルアミン、花王(株)製)
・“キュアゾール(登録商標)”2E4MZ(2−エチル−4−メチルイミダゾール、四国化成工業(株))。
<エポキシ樹脂組成物の調製方法>
ビーカー中に、構成要素[A]、[B]および必要に応じそれ以外のエポキシ樹脂を投入し、80℃の温度まで昇温させ30分加熱混練を行った。その後、混練を続けたまま30℃以下の温度まで降温させ、構成要素[C]および必要に応じそれ以外の硬化剤や硬化促進剤を加えて10分間撹拌させ、エポキシ樹脂組成物を得た。
各実施例および比較例の成分配合比について表1〜3に示した。
<エポキシ樹脂組成物の粘度測定>
上記<エポキシ樹脂組成物の調製方法>に従い調製したエポキシ樹脂組成物の粘度を、JIS Z8803(2011)における「円すい−平板形回転粘度計による粘度測定方法」に従い、標準コーンローター(1°34’×R24)を装着したE型粘度計(東機産業(株)製、TVE−30H)を使用して、回転速度10回転/分で測定した。なお、エポキシ樹脂組成物を調製後、25℃に設定した装置に投入し、1分後の粘度を測定した。
<繊維強化複合材料の作製方法>
上記<エポキシ樹脂組成物の調製方法>に従い調製したエポキシ樹脂組成物を、一方向に引き揃えたシート状にした炭素繊維“トレカ(登録商標)”T700S−12K−50C(東レ(株)製、目付150g/m)に常温で含浸させ、エポキシ樹脂含浸炭素繊維シートを得た。得られたシートを繊維方向が同じになるよう8枚重ねた後、金属製スペーサーにより厚み1mmになるよう設定した金型に挟み、その金型をプレス機で2時間加熱硬化を実施した。その後、プレス機から金型を取り出し、さらにオーブンで4時間加熱硬化し、繊維強化複合材料を得た。硬化条件は、使用する硬化剤に応じて以下のAまたはBを適用した。
・硬化条件A: 100℃で2時間硬化した後、150℃で4時間硬化。
・硬化条件B: 80℃で2時間硬化した後、110℃で4時間硬化。
<樹脂硬化物の特性評価方法>
エポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中で硬化させ、厚さ2mmの板状の樹脂硬化物を得た。硬化条件は、使用する硬化剤に応じて以下のAまたはBを適用した。
・硬化条件A: 100℃で2時間硬化した後、150℃で4時間硬化。
・硬化条件B: 80℃で2時間硬化した後、110℃で4時間硬化。
得られた樹脂硬化物から、幅12.7mm、長さ45mmの試験片を切り出し、粘弾性測定装置(ARES、ティー・エイ・インスツルメント社製)を用い、ねじり振動周波数1.0Hz、昇温速度5.0℃/分の条件下で、30〜250℃の温度範囲でDMA測定を行い、ガラス転移温度およびゴム状態弾性率を読み取った。ガラス転移温度は、貯蔵弾性率G’曲線において、ガラス状態での接線と転移状態での接線との交点における温度とした。また、ゴム状態弾性率は、ガラス転移温度を上回る温度領域で、貯蔵弾性率が平坦になった領域での貯蔵弾性率であり、ここではガラス転移温度から40℃上の温度での貯蔵弾性率とした。
<繊維強化複合材料の引張強度測定>
上記<繊維強化複合材料の作製方法>に従い作製した繊維強化複合材料から、幅12.7mm、長さ229mmになるように切り出し、両端に1.2mm、長さ50mmのガラス繊維強化プラスチック製タブを接着した試験片を用い、ASTM D 3039に準拠して、インストロン万能試験機(インストロン社製)を用いてクロスヘッドスピード1.27mm/分で引張強度を測定した。サンプル数n=6で測定した値の平均値を引張強度とした。
引張強度利用率は、繊維強化複合材料の引張強度/(強化繊維のストランド強度×繊維体積含有率)×100により算出した。
なお、繊維体積含有率は、ASTM D 3171に準拠し、測定した値を用いた。
<繊維強化複合材料のガラス転移温度測定>
上記<繊維強化複合材料の作製方法>に従い作製した繊維強化複合材料から、小片(5〜10mg)を採取し、JIS K7121(1987)に従い、中間点ガラス転移温度(Tmg)を測定した。測定には示差走査熱量計DSC Q2000(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用い、窒素ガス雰囲気下においてModulatedモード、昇温速度5℃/分で測定した。
(実施例1)
構成要素[A]として“デナコール(登録商標)”EX−146を15質量部、構成要素[B]としてGANを50質量部、その他のエポキシ樹脂として“jER(登録商標)”828を35質量部、構成要素[C]としてHN−2200を119質量部、硬化促進剤として“U−CAT(登録商標)”SA 102を2質量部用い、上記<エポキシ樹脂組成物の調製方法>に従ってエポキシ樹脂組成物を調製した。
このエポキシ樹脂組成物を“硬化条件A“で硬化して硬化物を作製し、動的粘弾性評価を行ったところ、ガラス転移温度は130℃、ゴム状態弾性率は10.0MPaであり、耐熱性とゴム状態弾性率は良好であった。
得られたエポキシ樹脂組成物から、<繊維強化複合材料の作製方法>に従って繊維強化複合材料を作製し、繊維体積含有率が65%の繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の引張強度を上記方法で測定し、引張強度利用率を算出したところ、74%であった。また、得られた繊維強化複合材料のガラス転移温度は、132℃であった。
(実施例2〜30)
樹脂組成をそれぞれ表1から4に示したように変更した以外は、実施例1と同じ方法(ただし、硬化条件は表中に記載の硬化条件AまたはBに従う)でエポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物、および繊維強化複合材料を作製した。評価結果は表1から4に示した。得られたエポキシ樹脂硬化物は、いずれも良好な耐熱性、ゴム状態弾性率を示した。得られた繊維強化複合材料の引張強度利用率および耐熱性も良好であった。
(比較例1)
構成要素[A]の代わりに、立体障害を持たない単官能エポキシである“デナコール(登録商標)”EX−141を用いた以外は、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物および樹脂硬化物を作製した。樹脂組成および評価結果は表5に示した。ガラス転移温度は116℃と良好であったが、ゴム状態弾性率が12.4MPaと高い値を示した。その結果、繊維強化複合材料の引張強度利用率は69%と、不十分であった。
(比較例2)
構成要素[A]を添加しなかった以外は、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物および樹脂硬化物を作製した。樹脂組成および評価結果は表5に示した。ガラス転移温度は136℃と良好であったが、ゴム状態弾性率が11.8MPaと高い値を示した。その結果、繊維強化複合材料の引張強度利用率は69%と、不十分であった。
(比較例3)
構成要素[B]を添加しなかった以外は、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物および樹脂硬化物を作製した。樹脂組成および評価結果は表5に示した。ガラス転移温度は125℃と良好であったが、ゴム状態弾性率が11.0MPaと高い値を示した。その結果、繊維強化複合材料の引張強度利用率は70%と、不十分であった。
(比較例4)
樹脂組成を表5に示したように変更し、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物および樹脂硬化物を作製した。樹脂組成および評価結果は表5に示した。ゴム状態弾性率は6.7MPaと良好であったが、ガラス転移温度が66℃であった。その結果、繊維強化複合材料のガラス転移温度が68℃と、耐熱性が不十分であった。
(比較例5)
構成要素[A]の代わりに、立体障害を持たない単官能エポキシである“デナコール(登録商標)”EX−141を用いた以外は、実施例26と同じ方法でエポキシ樹脂組成物および樹脂硬化物を作製した。樹脂組成および評価結果は表5に示した。ゴム状態弾性率は3.3MPaと良好であったが、ガラス転移温度が86℃であった。その結果、繊維強化複合材料のガラス転移温度が89℃と、耐熱性が不十分であった。
(比較例6)
構成要素[A]を添加しなかった以外は、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物および樹脂硬化物を作製した。樹脂組成および評価結果は表5に示した。ガラス転移温度は145℃と良好であったが、ゴム状態弾性率が13.2MPaと高い値を示した。その結果、繊維強化複合材料の引張強度利用率は70%と、不十分であった。
(比較例7)
構成要素[B]を添加しなかった以外は、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物および樹脂硬化物を作製した。樹脂組成および評価結果は表5に示した。ゴム状態弾性率は5.2MPaと良好であったが、ガラス転移温度が85℃であった。その結果、繊維強化複合材料のガラス転移温度が87℃と、耐熱性が不十分であった。
(比較例8)
樹脂組成を表5に示したように変更し、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物および樹脂硬化物を作製した。樹脂組成および評価結果は表5に示した。ゴム状態弾性率は6.4MPaと良好であったが、ガラス転移温度が70℃であった。その結果、繊維強化複合材料のガラス転移温度が72℃と、耐熱性が不十分であった。
(比較例9)
特許文献1(特開2005−120127号公報)の実施例1に記載の方法に従い、エポキシ樹脂組成物を作製した。得られた樹脂硬化物のガラス転移温度は203℃と高かったが、ゴム状態弾性率は25.0MPaと非常に高い値を示した(表6)。このエポキシ樹脂組成物は粘度が高く、上記<繊維強化複合材料の作製方法>では樹脂が繊維に含浸せず、繊維強化複合材料に多量のボイドが含まれた。そこで、エポキシ樹脂組成物を70℃に加温して含浸させ、エポキシ樹脂含浸炭素繊維シートを得た。以降は上記<繊維強化複合材料の作製方法>と同様にして、繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の引張強度利用率は61%と、不十分であった。
(比較例10)
特許文献2(特開2010−59225号公報)の実施例14に記載の方法に従い、エポキシ樹脂組成物(ベース樹脂組成物)を作製した。これを硬化させて得られた樹脂硬化物のガラス転移温度は193℃と高かったが、ゴム状態弾性率は21.1MPaと非常に高い値を示した(表6)。このエポキシ樹脂組成物は非常に粘度が高く、上記<繊維強化複合材料の作製方法>や比較例9に示した方法ではエポキシ樹脂含浸炭素繊維シートが作製できなかった。そこで、エポキシ樹脂組成物をアセトンに溶解し、液状とせしめた後に炭素繊維に含浸させ、その後減圧乾燥してアセトンを留去することで、エポキシ樹脂含浸炭素繊維シートを作製した。以降は上記<繊維強化複合材料の作製方法>と同様にして、繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の引張強度利用率は61%と、不十分であった。
(比較例11)
特許文献3(特許第4687167号公報)の実施例6に記載の方法に従い、エポキシ樹脂組成物を作製した。これを硬化させて得られた樹脂硬化物のガラス転移温度は105℃であり、ゴム状態弾性率は11.2MPaと高い値を示した(表6)。このエポキシ樹脂組成物は非常に粘度が高かったため、比較例10と同様の方法でエポキシ樹脂含浸炭素繊維シートを作製した。以降は上記<繊維強化複合材料の作製方法>と同様にして、繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の引張強度利用率は70%と、不十分であった。
(比較例12)
特許文献4(特開2001−323046号公報)の実施例6に記載の方法に従い、エポキシ樹脂組成物を作製した。これを硬化させて得られた樹脂硬化物のガラス転移温度は173℃と高かったが、ゴム状態弾性率は18.0MPaと非常に高い値を示した(表6)。このエポキシ樹脂組成物は非常に粘度が高かったため、比較例10と同様の方法でエポキシ樹脂含浸炭素繊維シートを作製した。以降は上記<繊維強化複合材料の作製方法>と同様にして、繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の引張強度利用率は63%と、不十分であった。
(比較例13)
特許文献5(特開2012−67190号公報)の実施例18に記載の方法に従い、エポキシ樹脂組成物を作製した。これを硬化させて得られた樹脂硬化物のガラス転移温度は169℃であり、ゴム状態弾性率は15.0MPaと高い値を示した(表6)。このエポキシ樹脂組成物は、非常に粘度が高かったため、比較例10と同様の方法でエポキシ樹脂含浸炭素繊維シートを作製した。以降は、上記<繊維強化複合材料の作製方法>と同様にして、繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の引張強度利用率は67%と、不十分であった。
(比較例14)
特許文献6(国際公開第2011/118106号)の実施例5に記載の方法に従い、エポキシ樹脂組成物を作製した。これを硬化させて得られた樹脂硬化物のガラス転移温度は162℃であり、ゴム状態弾性率は13.2MPaと高い値を示した(表6)。このエポキシ樹脂組成物は、非常に粘度が高かったため、比較例10と同様の方法でエポキシ樹脂含浸炭素繊維シートを作製した。以降は、上記<繊維強化複合材料の作製方法>と同様にして、繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の引張強度利用率は72%と、不十分であった。
(比較例15)
特許文献7(特開昭63−86758号公報)の実施例2に記載の方法に従い、エポキシ樹脂組成物を作製した。これを硬化させて得られた樹脂硬化物のガラス転移温度は205℃であり、ゴム状態弾性率は19.3MPaと高い値を示した(表6)。このエポキシ樹脂組成物は、非常に粘度が高かったため、比較例10と同様の方法でエポキシ樹脂含浸炭素繊維シートを作製した。以降は、上記<繊維強化複合材料の作製方法>と同様にして、繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の引張強度利用率は61%と、不十分であった。
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本発明のエポキシ樹脂組成物は、耐熱性と引張強度利用率を高いレベルで両立する繊維強化複合材料を作製するために好適に用いられる。また、本発明のエポキシ樹脂組成物および繊維強化複合材料は、一般産業用途に好ましく用いられる。

Claims (12)

  1. 少なくとも次の構成要素[A]〜[C]を含み、25℃における粘度が2,000mPa・s以下であるエポキシ樹脂組成物であって、該エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物の動的粘弾性評価におけるゴム状態弾性率が10MPa以下であり、かつ該硬化物のガラス転移温度が95℃以上であることを特徴とする、エポキシ樹脂組成物。
    [A]tert−ブチル基、sec−ブチル基またはイソプロピル基で置換されたフェニルグリシジルエーテルである単官能エポキシ樹脂
    [B]以下の[b1]、[b2]および[b3]からなる群から選ばれる少なくとも1つのエポキシ樹脂
    [b1]置換されていてもよいジグリシジルアニリン
    [b2]テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン
    [b3]フルオレン構造を有する2官能以上のエポキシ樹脂
    [C]アミン系硬化剤または酸無水物系硬化剤
  2. 構成要素[A]を、全エポキシ樹脂100質量部中20〜50質量部含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
  3. 構成要素[B]が、[b1]または[b2]のいずれか1つである、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. 構成要素[B]が、[b1]と[b2]を同時に含む、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. 構成要素[C]が、酸無水物系硬化剤である、請求項1から4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  6. 構成要素[C]として、ノルボルネン骨格またはノルボルナン骨格を有する化合物を含む、請求項5に記載のエポキシ樹脂組成物。
  7. 構成要素[C]が、液状のアミン系硬化剤であって、構成要素[C]としてアミノ基のオルト位に置換基を有する芳香族ジアミンまたはアミノ基を有する炭素原子に隣接する炭素原子が置換基を有するシクロアルキルジアミンを含む、請求項1から4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  8. 構成要素[C]として、さらにアルキレングリコール構造を有する脂肪族ポリアミンを含む、請求項7に記載のエポキシ樹脂組成物。
  9. 構成要素[C]として、さらにイソホロンジアミンを含む、請求項7に記載のエポキシ樹脂組成物。
  10. 請求項1から9のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物と強化繊維とからなる繊維強化複合材料。
  11. 請求項10に記載の繊維強化複合材料からなる成形品。
  12. 請求項10に記載の繊維強化複合材料からなる圧力容器。
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