JP6790393B2 - α−オレフィン低重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
従来、一酸化炭素が反応系内に存在していると、触媒活性種の遷移金属に一酸化炭素が強く配位し、触媒活性は低下すると考えられていたが、本発明において意外にも触媒活性は向上した。これは、一酸化炭素が反応系内でアルキルアルミニウム化合物(c)と反応してアシルアルミニウム化合物となり、この生成物が触媒活性種と相互作用することで触媒がより活性化されることによると考えられる。
本発明のα−オレフィン低重合体の製造方法において、原料として使用するα−オレフィンとしては、例えば、炭素数が2〜8の置換又は無置換のα−オレフィンが挙げられる。このようなα−オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。中でも、本発明の原料のα−オレフィンとしてはエチレンが好適である。
原料のα−オレフィンは1種を単独で用いても、複数用いてもよい。
一方、原料エチレン中の反応性不純物成分は、存在させない又は極力少なくする方が望ましいと一般的に考えられている。具体的な反応性不純物成分は、プロピレン、プロパジエン、1,3−ブタジエン、メタノール、プロパノール、水素、酸素、水、アセチレン、二酸化炭素、一酸化炭素、硫化水素、硫化カルボニル、アルシン、オイル、窒素含有化合物類、カルボニル化合物類、酸素含有化合物類、塩素含有化合物類等が挙げられる。
なお、通常ポリマーグレードエチレンに不純物として一酸化炭素を含む場合であっても、その含有量は実質0.1モルppm未満であり、このように不純物として一酸化炭素を含むエチレンを原料として供給するのみでは、本発明で必要とする一酸化炭素供給量を満たすことはできない。
本発明で製造されるα−オレフィン低重合体とは、前記原料α−オレフィンを低重合反応させたものである。α−オレフィンの低重合反応とは、原料α−オレフィンをオリゴマー化することである。
α−オレフィン低重合体は、具体的には、原料であるα−オレフィンが2個〜10個、好ましくは2個〜5個結合したオリゴマーである。エチレンを原料とした場合、目的生成物であるα−オレフィン低重合体としては、炭素数4〜10の置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖のα−オレフィンが好ましく、炭素数4〜10の無置換の直鎖のα−オレフィンがより好ましい。具体的には、エチレンの二量体である1−ブテン、三量体である1−ヘキセン、四量体である1−オクテン、五量体である1−デセン等が挙げられ、1−ヘキセン又は1−オクテンが好ましく、1−ヘキセンがより好ましい。目的生成物が1−ヘキセンである場合、生成物の混合物中、1−ヘキセンの含有率は90重量%以上が好ましい。
本発明で使用する触媒は、遷移金属原子含有化合物(a)、窒素原子含有化合物(b)及びアルキルアルミニウム化合物(c)を含有する。また、更に塩素原子含有化合物(d)を含有してもよい。
本発明の触媒の構成成分として好適に使用される遷移金属原子含有化合物(a)(以下「触媒成分(a)」と称す場合がある。)に含有される金属としては、遷移金属であれば特に限定されないが、中でも、周期表第4〜6族の遷移金属が好ましく用いられる。具体的に、好ましくはクロム、チタン、ジルコニウム、バナジウム及びハフニウムからなる群より選ばれる1種類以上の金属であり、更に好ましくはクロム又はチタンであり、最も好ましくはクロムである。
無機基としては、硝酸基、硫酸基等の金属塩形成基が挙げられる。
陰性原子としては、酸素、ハロゲン等が挙げられる。なお、ハロゲンが含まれる遷移金属原子含有化合物(a)は、後述する塩素原子含有化合物(d)には含まれない。
これらの遷移金属原子含有化合物(a)の中でも、クロム含有化合物が好ましく、クロム含有化合物の中でも特に好ましくはクロム(III)2−エチルヘキサノエートである。
本発明において、触媒の構成成分として好適に使用される窒素原子含有化合物(b)(以下「触媒成分(b)」と称す場合がある。)は、特に限定されないが、アミン類、アミド類又はイミド類等が挙げられる。
本発明では、これらの中でも、アミン類が好ましく、中でもピロール化合物がより好ましく、特に好ましくは2,5−ジメチルピロール又はジエチルアルミニウム(2,5−ジメチルピロライド)である。
本発明の触媒成分として好適に使用されるアルキルアルミニウム化合物(c)(以下「触媒成分(c)」と称す場合がある。)は、特に限定されないが、トリアルキルアルミニウム化合物、アルコキシアルキルアルミニウム化合物、水素化アルキルアルミニウム化合物、アルキルアルミノキサン化合物などが挙げられる。
なお、塩素化アルキルアルミニウム化合物は、アルキルアルミニウム化合物(c)には含まれず、後述の塩素原子含有化合物(d)に含まれるものとする。
これらの中でも、トリアルキルアルミニウム化合物が好ましく、トリエチルアルミニウムが更に好ましい。
本発明においては、触媒として更に塩素原子含有化合物(d)(以下、「触媒成分(d)」と称す場合がある。)を用いてもよい。塩素原子含有化合物(d)としては、塩素化炭化水素化合物、塩素化典型金属原子含有化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。このうち、塩素化典型金属原子含有化合物としては、周期表第12〜15族の典型金属原子を含有する塩素化合物が挙げられ、具体的には、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、三塩化アルミニウム、エチルアルミニウムエトキシクロリド、塩化錫(II)、塩化錫(IV)、四塩化ゲルマニウム、塩化アンチモン(III)、塩化アンチモン(V)、塩化亜鉛等が挙げられる。これらの中でも、アルミニウムクロリド類が好ましく、ジエチルアルミニウムクロリドが更に好ましい。
遷移金属原子含有化合物(a)、窒素原子含有化合物(b)、及びアルキルアルミニウム化合物(c)の各構成成分の比率は、特に限定されないが、通常、遷移金属原子含有化合物(a)の遷移金属原子1モルに対し、窒素原子含有化合物(b)が1モル〜100モル、好ましくは2モル〜50モルであり、アルキルアルミニウム化合物(c)のアルミニウム原子が1モル〜2000モル、好ましくは10モル〜500モルである。また、塩素原子含有化合物(d)を用いる場合、遷移金属原子含有化合物(a)の遷移金属原子1モルに対し、塩素原子含有化合物(d)の下限は通常1モル、好ましくは2モル、更に好ましくは3モル、上限は通常200モル、好ましくは150モル、より好ましくは100モル、更に好ましくは50モルである。なお、遷移金属原子含有化合物(a)の遷移金属原子1モルに対するモル数とは、低重合反応系内における遷移金属原子に対するモル倍量と同義である。
本発明において、α−オレフィン(原料α−オレフィン)としてエチレンを用いた場合、エチレンの低重合反応は、遷移金属原子含有化合物(a)としてクロム含有化合物を用い、遷移金属原子含有化合物(a)とアルキルアルミニウム化合物(c)とが予め接触しない態様でエチレンと遷移金属原子含有化合物(a)であるクロム含有化合物とを接触させて行うのが好ましい。
このような接触態様により、選択的にエチレンの三量化反応を行わせ、原料のエチレンから選択率90%以上でエチレンの三量体である1−ヘキセンを得ることができる。さらに、この場合、ヘキセンに占める1−ヘキセンの比率を99%以上にすることができる。
ここで、「遷移金属原子含有化合物(a)とアルキルアルミニウム化合物(c)とが予め接触しない態様」とは、エチレンの低重合反応の開始時に限定されず、その後の追加的なエチレン及び触媒成分の反応器への供給においても、このような態様が維持されることを意味する。また、回分反応形式についても同様の態様を利用するのが望ましい。
本発明においてはまた、低重合反応系への上記触媒の遷移金属含有化合物(a)の遷移金属原子換算の供給量に対して、一酸化炭素を通常0.1以上30以下(モル比)、好ましくは0.3以上29以下(モル比)、より好ましくは1以上28以下(モル比)、特に好ましくは3以上27以下(モル比)の割合で供給する。
低重合反応系への一酸化炭素の供給量が上記上限よりも多いと、触媒活性種への一酸化炭素とアルキルアルミニウム化合物(c)の反応生成物の配位が多くなりすぎ、原料であるα−オレフィンの配位を阻害するため、反応活性が低下するおそれがある。また、上記下限よりも少ないと、一酸化炭素を供給することによる反応活性の向上効果を十分に得ることができないおそれがある。低重合反応系への遷移金属含有化合物(a)の遷移金属原子の供給量に対する一酸化炭素の供給量を前記モル比の範囲とすることより触媒活性を向上させることができる。
一酸化炭素は原料α−オレフィンとは別に供給してもよく、例えば、反応器に直接一酸化炭素供給配管を経て供給してもよいし、未反応α−オレフィン又は溶媒の循環配管に一酸化炭素供給配管を経て供給してもよい。
回分式の反応系の場合、触媒仕込み量に合わせて一酸化炭素を供給すればよい。
本発明のα−オレフィン低重合体の製造方法では、α−オレフィンの低重合反応を反応溶媒中で行う。
反応溶媒としては特に限定されないが、飽和炭化水素が好適に使用され、好ましくは、ブタン、ペンタン、3−メチルペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、2−メチルヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、2,2,4−トリメチルペンタン、デカリン等の炭素数が3〜20の、鎖状飽和炭化水素又は脂環式飽和炭化水素である。また、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、テトラリン等の芳香族炭化水素や低重合反応で生成するα−オレフィン低重合体そのもの、具体的には、エチレンを三量化する際に得られる1−ヘキセンやデセン等を用いることもできる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合溶媒として使用することもできる。
ここで、前記原料α−オレフィン供給量は、反応器内で反応する原料α−オレフィンの消費量と反応溶媒に溶解する原料α−オレフィンの溶解量の和に等しい。
本発明におけるα−オレフィンの低重合反応の反応温度としては、特に限定されないが、通常0〜250℃であり、好ましくは50〜200℃、更に好ましくは80〜170℃である。
また、反応圧力としては、特に限定されないが、通常、常圧〜25MPaGであり、好ましくは、0.5〜15MPaG、さらに好ましくは、1〜10MPaGの範囲である。
反応器内での滞留時間は、特に限定されないが、通常1分〜10時間、好ましくは3分〜3時間、更に好ましくは5〜60分の範囲である。
反応形式は、特に限定されず、回分式、半回分式または連続式のいずれであってもよい。
以下に、本発明のα−オレフィン低重合体の製造方法の一態様を示す図1を参照して、本発明によるα−オレフィン低重合体の製造工程を説明する。
以下の説明では、α−オレフィンとしてエチレンを原料とする1−ヘキセン(エチレンの三量体)の製造方法を例示するが、本発明は何らエチレンからの1−ヘキセンの製造に限定されない。
また、第3供給管14からアルキルアルミニウム化合物(c)が反応器10に直接導入される。アルキルアルミニウム化合物(c)は、触媒供給管13a及び13bから触媒成分が供給される前の第2供給管13の反応溶媒で希釈された後、反応器10に供給されてもよい(図示せず)。
これらの触媒成分は、反応器10内の液相部に供給されることが好ましい。
<触媒液の調製>
140℃で2時間以上加熱乾燥させた、撹拌機を有する500mlのガラス製三つ口フラスコに、窒素雰囲気下で2,5−ジメチルピロールを0.37g(3.9mモル)とn−ヘプタンを234ml仕込み、これにn−ヘプタンで50g/Lに希釈したトリエチルアルミニウムを8.9ml(3.9mモル)添加した。その後、フラスコをオイルバスに浸した後に昇温し、窒素雰囲気下でn−ヘプタンの還流を98℃で3時間行うことで、窒素原子含有化合物であるジエチルアルミニウム(2,5−ジメチルピロライド)(b)を調製した。その後、80℃まで冷却した。続いて、n−ヘプタンで50g/Lに希釈したクロム(III)−2−エチルヘキサノエート(a)を6.3ml(0.65mモル)添加した。添加後、窒素雰囲気下で80℃で、30分間加熱、撹拌し、触媒液を調製した。その後、クロム(III)−2−エチルヘキサノエート(a)の濃度が0.88g/Lとなるよう、触媒液をn−ヘプタンで希釈した。尚、n−ヘプタンは、モレキュラーシーブ4Aで脱水されたものを使用した。(後述のn−ヘプタンも脱水品を使用した。)
次に、140℃で2時間以上加熱乾燥させた500mlオートクレーブ一式を熱いうちに組み立て、真空窒素置換を行った。以後の操作は、窒素雰囲気下で実施し、酸素及び水分の混入を防止した。このオートクレーブには耐圧の破裂板を備えた触媒フィード管を取り付けた。フィード管には、予め上記のように調製した触媒液を2ml仕込んだ。オートクレーブの胴側には、n−ヘプタン及びトリエチルアルミニウム(c)、ヘキサクロロエタン(d)の各n−ヘプタン希釈液をクロム(III)−2−エチルヘキサノエート(a):トリエチルアルミニウム(c):
ヘキサクロロエタン(d)=1:54:6(モル比)になるように仕込んだ。
反応溶媒であるn−ヘプタンはオートクレーブの胴側で計168ml(各触媒成分を希釈したn−ヘプタンを含む)になり、更に、ガスクロマトグラフィーで組成分析する際の内部標準として使用するn−ウンデカン(モレキュラーシーブ4A 脱水品)をオートクレーブの胴側に5ml仕込んだ。
更に、オートクレーブの胴側には、クロム(III)−2−エチルヘキサノエート(a)に対して20モル比の一酸化炭素を液相に仕込んだ。
60分後、エチレンの導入と撹拌を停止し、オートクレーブを素早く冷却した後すぐに、気相ノズルよりガスを全量サンプリングした。そして反応液をサンプリングし、ガスクロマトグラフィーでそれぞれの組成分析を行った。また反応液を濾過して乾燥後、反応液中に含まれるポリマー重量の測定を行った。これらの結果から反応生成物の重量(単位:g)を算出した。
実施例1において、オートクレーブの胴側に、一酸化炭素を仕込まなかった以外は、全て同様の方法で行った。その結果、触媒活性は、300000g/g−Crであった。
実施例1において、オートクレーブの胴側に、クロム(III)−2−エチルヘキサノエート(a)に対して40モル比の一酸化炭素を仕込んだ以外は、全て同様の方法で行った。その結果、触媒活性は、230000g/g−Crであった。
10a 撹拌機
20 脱ガス槽
30 エチレン分離塔
40 高沸分離塔
50 ヘキセン分離塔
60 圧縮機
Claims (5)
- 遷移金属原子含有化合物(a)、窒素原子含有化合物(b)及びアルキルアルミニウム化合物(c)を含む触媒と、反応溶媒の存在下に、α−オレフィンの低重合反応を行ってα−オレフィン低重合体を製造する方法において、
該低重合反応系への該遷移金属原子含有化合物(a)の遷移金属原子の供給量に対し0.1以上30以下(モル比)の範囲で一酸化炭素の供給を行う、α−オレフィン低重合体の製造方法。 - 前記遷移金属原子含有化合物(a)における遷移金属がクロムを含み、前記窒素原子含有化合物(b)がピロール化合物を含む請求項1に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
- 前記触媒が、更に、塩素原子含有化合物(d)を含む請求項1又は請求項2に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
- 前記低重合反応系への一酸化炭素の供給方法が、前記一酸化炭素を前記α−オレフィン中に含有させて、前記α−オレフィンと共に前記低重合反応系へ供給する方法であって、該α−オレフィン中の一酸化炭素の濃度が1.5モルppm以上30モルppm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
- 前記α−オレフィンがエチレンであり、前記α−オレフィン低重合体が1−ヘキセンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のα−オレフィン低重合体の製造方法。
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