JP6789492B2 - 天然皮革積層体及びそれを縫製して成るバッグ - Google Patents
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Description
そこで、本明細書でも、厳密な使い分けはせず、一般的に使用される「皮革」という言葉を使う。即ち、本明細書では、「皮を鞣したもの」という意味で「皮革」という言葉を用いる。
但し、耐磨耗処理など、所要の処理が施されたもの、例えば、特許文献1とか特許文献2とかに示される処理が施された皮革も、ここにいう「天然皮革」に含まれるものとする(その本体が「本来の動物由来のもの」であるので。)。
この場合、皮革様シートとしては、天然皮革、合成皮革、人工皮革、ビニールレザー(塩ビレザー)等が有る。このうち、合成皮革、人工皮革、ビニールレザー等は、コストの点で天然皮革より有利である。
これらは、天然由来であればこそのものである。合成皮革等では未だ実現されていない(特許文献1、第2頁、第3欄、第36行〜第37行。特許文献2、段落0002、第1行〜第3行。)。
また、請求項1を引用する請求項2の天然皮革積層体では、前記天然皮革が牛革とされている。
また、請求項3を引用する請求項4のバッグでは、前記天然皮革が牛革とされている。
因みに、開発の過程でデニムとの貼り合せも試した。このとき、色どめのため塩と酢で洗濯をした。そうしたら、本発明に係る積層体は、浮いて不都合だった。それぐらい軽量化された。
この結果、先ずは、縫い合わせ部分の重なりが無くなる。それにより、この重なりの分、重量が減る。
別の言い方をすれば、今まで実現しにくかった球面的形状も容易に実現できる。デザインの自由度が大幅に向上し、斬新というか、新たな美感というか、新たなデザインの案出が期待できる。
更に、従来のものは裏地が付く。本発明では、ナイロンのジャージ地を貼り付けて3層構造としている。ジャージ地が其の儘内装材になる。裏地の縫い付けなどが不要になり、その分、工数が減る。その分、軽量化にも繋がる。リバーシブルにもなる。
なお、市場に出ている薄い皮革としては、0.7mm厚の豚革というものもある。しかし、これは靴の内装や財布小物とかに使用されるもので、大幅に手を加えてキメの粗さを誤魔化すために様々な加工を施さなければならないというレベルのもので、バッグとかに使用、流通している頻度は低く、腰の強さを説明する以前に天然皮革のバッグとして牛皮以上の価値観に至らない。
同じく、緩衝材としての効果があり、中に硬いものを入れても人体に強く当ることは無い。
同じく、中に硬いものを入れても、バッグ自身の破損が防止される。
同じく、例えば、スマートフォン、タブレットとかを直に入れることが出来、スマホケースなどと呼ばれる収納用品が不要になる。
同じく、天然皮革をその儘使用したバッグ等より防水性が高く、バッグの底を水の中に沈めても、縫い目から僅かに水がしみて来る程度である。
3層構造の一般的なダブルジャージとの張り合わせ(ローラーホットメルト使用)
第一層 牛皮ステアシュリンク
第一層と第二層の間 蜘蛛の巣芯
第二層 接着芯
第三層 ナイロンジャージ地
第四層 クロロプレンゴムシート(発泡型)
第五層 ナイロンジャージ地
接着芯=通常の服飾用の接着芯。ポリエステル生地をベースにドット状に熱融着型樹脂が塗布されている。
第三層〜第五層=この3層で1枚の製品である。上記ダブルジャージという商品名で市販されている。
第二層と第三層とを張り合わせたのち、第一層と第二層とを蜘蛛の巣芯で張り合わせて仕上げるので、工程が倍掛かりコスト高(張り合わせが2回必要)。
また、ローラーホットメルトの機械を通したため、第一層の牛皮ステアシュリンクが伸びてしまい、皮革スムースに近い表面となった。これでは天然皮革の風味、特徴が損なわれてしまう。
張り合わせに関しては、少し力を加えると手で剥がせる状態だった。場所によっては樹脂が溶解せず剥離している部分があり安定化しなかった。
3層構造の一般的なダブルジャージとの張り合わせ(プレス式ホットメルト使用)
第一層 牛皮ステアシュリンク
第一層と第二層の間 蜘蛛の巣芯
第二層 ナイロンジャージ地
第三層 クロロプレンゴムシート(発泡型)
第四層 ナイロンジャージ地
プレス式ホットメルトの機械で押圧したが、機械自体が小さく2回プレスする必要があり、且つ、蜘蛛の巣芯使用はコスト高で再考を要した。
張り合わせに関しては、熱有りでプレスし樹脂を融解したが、この手法だと、冷える間に蜘蛛の巣芯が第一層或いは第二層から剥離してしまうようで、融着しない部分があった。
開発1回目と同じく、少し力を加えると手で剥がせるため安定化しなかった。
なお、蜘蛛の巣芯の密度を変えて何度も試行したが、所望の成果は得られなかった。
3層構造の一般的なダブルジャージとの張り合わせ(1度熱有りで蜘蛛の巣芯を融解、直後に熱無しで押圧 蜘蛛の巣芯は高密度型)
第一層 牛皮ステアシュリンク
第一層と第二層の間 蜘蛛の巣芯(高密度型)
第二層 ナイロンジャージ地
第三層 クロロプレンゴムシート(発泡型)
第四層 ナイロンジャージ地
第一層と第二層とが容易に融着するように、一度熱有りで蜘蛛の巣芯を融解し、直後に熱無しで再度押圧して冷却。しかし、やや強い力を加えると手で剥がせてしまい安定化しなかった。
この時点で、第二層のナイロンジャージ地に撥水加工されていたことが判明。これが原因で、蜘蛛の巣芯が樹脂としてナイロンジャージ地に浸透しなかったことをつき止めた。これが安定化しない理由だった。
また、プレス式ホットメルトの機械を使用したので、熱有りで2度押しするし、熱無しでも2度押しする、そればかりか、蜘蛛の巣芯も使用する。即ち、コスト高。
3層構造の一般的なダブルジャージで張り合わせ(撥水加工無しダブルジャージ使用)
第一層 牛皮ステアシュリンク
第一層と第二層の間 蜘蛛の巣芯
第二層 ナイロンジャージ地(撥水加工無し)
第三層 クロロプレンゴムシート(発泡型)
第四層 ナイロンジャージ地
3回目と工程は同じだが、力を加えても剥がれず安定化。
プレス式ホットメルトの機械を使用し、熱有りで2度押し、熱無しで2度押し。これが未だコスト高の原因。
この工程の多さに加え、ダブルジャージがもともとコストが高く、密度が高い蜘蛛の巣芯もコスト高。更にコストを下げるべく開発は続行。
● 開発5回目(本願発明の一実施の形態例の前身)
コストも考え、2層構造の一般的な素材を使用することとする。この素材はスキンと呼ばれ、片面が発泡型クロロプレンゴム露出の2層構造になっている(第二層、第三層)。これを第一層の牛皮と張り合わせた。
第一層 牛皮ステアシュリンク
第一層と第二層の間 クロロプレンゴム系接着剤 皮革裏面と発泡型クロロプレンゴムシート表面に塗布
第二層 クロロプレンゴムシート(発泡型)
第三層 ナイロンジャージ地
注:第二層〜第三層=上述したように、この2層で1枚の製品である。スキンという商品名で市販されている。ナイロンジャージ地にクロロプレンゴムの溶液を塗布し、加熱して発泡させる。これで、ナイロンジャージ地とクロロプレンゴムシートは接着されて1枚のシートとなる。
ローラー式ホットメルト工程で接着するも、クロロプレンゴム系接着剤で天然皮革が固定されることで、この天然皮革が伸びることも無く、天然皮革と発泡型クロロプレンゴムシートが貼着されるというよりも融着される感じで安定化した(但し、加熱はしていない。前記「融着」の語は、「そのぐらい良くくっついた」というニュアンスで使用している。)。
工程1回となり、ベース素材に二層タイプを選択したし、芯材も使わないのでコストも抑えられた。
(a)第一層 天然皮革
牛革 ステアハイド11(一般的に出回っている牛革。生後3〜6ヶ月の間に去勢した雄の成牛の革。厚手で、銀面はカーフやキップより粗いが、耐久性に優れている。)。表面処理名 シュリンクしぼ 面積縦約90cm 横約220cm(動物なのでいびつ)発売元は株式会社章利 皮革厚さ 元は2.5mm〜5mm これを、肉面の漉き加工で、0.5mm厚にする。加工機械名:バンドナイフマシンスライサー(皮漉機)。
本実施の形態例では、以下の発泡型クロロプレンゴムシート12と、ナイロンジャージ地13とをこれに積層する。これらで十分な強度が出る。そこで、このステアハイド11自体は、上記厚み0.5mmを目標値としている。これで、重量が減り、柔軟性が向上する。
(c)第三層 ナイロンジャージ地13 南海合繊 品番220 140cm幅 約230cm使用 素材 ナイロン 厚み0.4mm(目標値)
(1)加工方法 ラミネート。機械名 熱圧着ラミネート機 ローラー状の機械に挟み込み片面ずつ張る。
(2)接着剤 クロロプレンゴム系接着剤(不図示)
第一層のステアハイド11と、第二層の発泡型クロロプレンゴムシート12とを接着する。また、この発泡型クロロプレンゴムシート12と第三層のナイロンジャージ地13とを接着する。
接着剤塗布方法 機械処理(熱圧着ラミネート機の専用タンクに注ぐ。)
なお、ステアハイド11の肉面側は粗面になっており、クロロプレンゴム系接着剤による接着力に加え、このように粗面であることも強固な接着に寄与している。
(3)加工温度 ツヤ無しは熱無し ツヤ有りは熱有り77度〜120度
以上の手順で生成した天然皮革積層体10から、型紙などを使って、身頃27、マチ28を切り出す。これら身頃27及びマチ28の端面を突き合わせ(23)、図4に示すように掬いミシン縫い24で縫い合わせる。これで、接続部分に段差やゴロツキの無いバッグが生成される。なお、ここに言う身頃27、マチ28が、請求項に云う部材に当る。
また、実施の形態例では牛革を使用した。本発明の適用対象はこれに限られない。カンガルー革その他の天然皮革にも適用可能である。
しかし、必ずしも、この厚みに限定される訳ではない。製造誤差は当然にあるし、厚みの増減があっても、或る程度までは、従来の皮革をその儘使用する場合より、効果が認められるであろう。
即ち、1.4倍までは、四捨五入すると1倍であり、元の値と同等と見ることが出来る、非常に乱暴ではあるが。そして、この1.4倍を増減で表せば4割増となる。これを元に薄い方を表現すると4割減となる。
但し、天然皮革については、厚みが大きい側のみを規定している。薄い方は、実施の形態例ぐらいが限界に近く、それ以上は、加工中や使用中に破れたりしない範囲で、天然皮革の種類ごとに、或いは、個々の天然皮革ごとに個別に定めるべきと思われるからである。
11…ステアハイド(一般的に出回っている牛革)
12…発泡型クロロプレンゴムシート
13…ナイロンジャージ地
20…バッグ
21…開口部(バッグの)
22…底部(バッグの)
23…突合せ部分(バッグの)
24…掬いミシン縫い
27…身頃
28…マチ
Claims (4)
- 厚さの目標値が0.5mmとされ、仕上がり厚さが該目標値の4割増以下となるように、その肉面側が皮漉きされた天然皮革と、
厚さの目標値が1.5mmとされ、仕上がり厚さが該目標値の4割増から4割減の範囲に収まるように生成された発泡型ゴムシートと、
厚さの目標値が0.4mmとされ、仕上がり厚さが該目標値の4割増から4割減の範囲に収まるように生成されたナイロンのジャージ地とが、
この記載の順序で積層接着されている
ことを特徴とする天然皮革積層体。 - 前記天然皮革が牛革とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の天然皮革積層体。 - 厚さの目標値が0.5mmとされ、仕上がり厚さが該目標値の4割増以下となるように、その肉面側が皮漉きされた天然皮革と、厚さの目標値が1.5mmとされ、仕上がり厚さが該目標値の4割増から4割減の範囲に収まるように生成された発泡型ゴムシートと、厚さの目標値が0.4mmとされ、仕上がり厚さが該目標値の4割増から4割減の範囲に収まるように生成されたナイロンのジャージ地とが、この記載の順序で積層接着されている天然皮革積層体から、その各部材が切り出され、
それらの端面同士が突き合わせられ、縫い合わせされている。
ことを特徴とするバッグ。 - 前記天然皮革が牛革とされている
ことを特徴とする請求項3に記載のバッグ。
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