JP6789094B2 - 軸ばね - Google Patents

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Description

本発明は、大型建機、大型船舶、とりわけ鉄道車両用として好適な軸ばねに係り、詳しくは、主軸と、主軸の軸心方向視で主軸を囲繞する状態で配備される外筒と、複数の弾性材層と一又は複数の硬質材壁とを軸心に対する径内外方向へ交互に積層させた状態で、主軸と外筒との間に介装されている弾性部と、を有してなる軸ばねに関する。
この種の軸ばねは、例えば鉄道車両においては、その蛇行動や上下動時の衝撃を吸収緩和するために、台車枠と車軸側部材との間に介装されている。即ち、軸箱支持装置の一例としての軸ばねは、主軸とその周囲に配置された外筒との間に、二つの硬質材壁と三つのゴム層とが同心状態で、かつ、半径方向に交互に積層されてなる構成のものが多い。
鉄道車両用軸ばねの傾向としては、乗り心地の良さを考慮すれば弾性層をばね定数の柔らかい方が望ましいが、定員以上の乗車時などの大きな重量が負荷された場合の耐荷重を考慮すればばね定数が硬い方が望ましい。このように相反する要求を満たすため、従来では、特許文献1(図3,6を参照)や特許文献2にて開示されたように、主軸の外周面、弾性層、及び外筒の内周面を互いに同方向に傾けた傾斜型の軸ばねとされていた。
傾斜型とすることにより、クッションストロークが増すほどにばね定数も大きくなるという、いわゆるプログレッシブ特性が得られ、クッションストロークが少ないときにはソフトなばね定数による良好な乗車感を出せ、かつ、クッションストロークが大きいときにはハードなばね定数による大荷重にも踏ん張りの効く軸ばねが実現されていた。
特開2014−073726号公報 特開2015−169313号公報
このような軸ばねにおいて、主軸と外筒とが近付く方向の荷重が作用すると、弾性層における各弾性材層にもせん断応力及び圧縮応力が作用する。そして、径方向の断面で見た場合、各弾性材層においては、上部内側部は主軸から、下部外側部は硬質材壁からそれぞれ引き剥がされる力も作用する。形状的には、下部外側部より上部内側部の方がより強い引き剥がし力が作用する。これは、実験データからも裏付けられている。
そのため、実機に用いられている軸ばねにおいては、経時により、主軸外周面に連設されている最も内側の弾性材層における上端内側端の部位に、主軸との剥離や亀裂といった不具合の生じるおそれがあった。
本発明の目的は、さらなる構造工夫により、弾性部における最も内側の弾性材層の上端内側端部に、亀裂や剥離が生じるおそれを払拭し、耐久性向上が図れるように改善された軸ばねを提供する点にある。
請求項1に係る発明は、主軸1と、前記主軸1の軸心P方向視で前記主軸1を囲繞する状態で配備される外筒2と、複数の弾性材層4a,4b,4cと一又は複数の硬質材壁5a,5bとを前記軸心Pに対する径内外方向へ交互に積層させた状態で、前記主軸1と前記外筒2との間に介装されている弾性部3と、を有してなる軸ばねにおいて、
前記主軸1の外周面1aと前記外筒2の内周面2aとが、前記軸心Pに対して互いに同じ方向に傾斜した円錐面を有して形成され、前記外周面1aにおける前記主軸1の先窄まり側の先端部9の前記軸心Pに対する傾斜角度θ3が、前記外周面1aにおける前記先端部9を除いたその他部分10,11の前記軸心Pに対する傾斜角度θ4,θ5よりも大きい角度に設定され
前記外周面1aの前記主軸1の先窄まり側の基端部10の前記軸心Pに対する傾斜角度θ4を、前記その他部分10,11における前記先窄まり側の基端部10を除いた部分11の前記軸心Pに対する傾斜角度θ5よりも小として、前記外周面1aの平均角度θAが前記内周面2aの前記軸心Pに対する傾斜角度θ1に近づけられていることを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の軸ばねにおいて、
前記外周面1aの平均角度θAが前記内周面2aの前記軸心Pに対する傾斜角度θ1に等しく設定されていることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の軸ばねにおいて、
前記外筒2は前記主軸1に対して、前記軸心Pの方向における前記外周面1aの先窄まり側に寄せて配置されていることを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の軸ばねにおいて、
前記弾性材層4a,4b,4cのうちの前記外周面1aに連設されている第1弾性材層4aは、前記外周面1aの先窄まり側端を覆って前記主軸1の先窄まり側頂面1tに及ぶ状態に延設されていることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の軸ばねにおいて、
前記硬質材壁5a,5bの前記軸心Pに対する傾斜角度θ2が、前記内周面2aの前記軸心Pに対する傾斜角度θ1より小さい角度に設定されていることを特徴とする。
請求項6に係る発明は、主軸1と、前記主軸1の軸心P方向視で前記主軸1を囲繞する状態で配備される外筒2と、複数の弾性材層4a,4b,4cと一又は複数の硬質材壁5a,5bとを前記軸心Pに対する径内外方向へ交互に積層させた状態で、前記主軸1と前記外筒2との間に介装されている弾性部3と、を有してなる軸ばねにおいて、
前記主軸1の外周面1aと前記外筒2の内周面2aとが、前記軸心Pに対して互いに同じ方向に傾斜した円錐面を有して形成され、前記外周面1aにおける前記主軸1の先窄まり側の先端部9の前記軸心Pに対する傾斜角度θ3が、前記外周面1aにおける前記先端部9を除いたその他部分10,11の前記軸心Pに対する傾斜角度θ4,θ5よりも大きい角度に設定され、
前記硬質材壁5a,5bの前記軸心Pに対する傾斜角度θ2が、前記内周面2aの前記軸心Pに対する傾斜角度θ1より小さい角度に設定されていることを特徴とする。
請求項1の発明によれば、外周面における先窄まり側の先端部(先窄まり先端面)の傾斜角度を、外周面における先端部を除いたその他部分の傾斜角度よりも大きい角度とされているので、主軸に連設されている最内側の弾性材層の上端内側部は、従来の軸ばねのものに比べて内側に拡大されている。従って、最内側の弾性材層の上端内側部は体積が拡大されていて応力集中が従来のものより減少し、亀裂や主軸との剥離が生じたりする不都合が解消又は軽減されるようになる。
その結果、さらなる構造工夫により、弾性部における最も内側の弾性材層の上端内側端部に、亀裂や剥離が生じるおそれを払拭し、耐久性向上が図れるように改善された軸ばねを提供することができる。
請求項1の発明によれば、外周面における先窄まり側の基端部(先窄まり基端面)の傾斜角度を、その他部分における先窄まり側の基端部を除いた部分の傾斜角度よりも小として、外周面の平均角度が内周面の傾斜角度に近づけられている。従って、主軸の外周面と外筒の内周面とが互いに同じ傾斜角度である従来の軸ばねと、最大荷重時の弾性変形量をあまり変わらないようにすることができ、ばね定数のソフト化を図りながら踏ん張りの効く軸ばねを提供することができる。
請求項2の発明によれば、外周面の平均角度が内周面の傾斜角度に等しく設定されているので、弾性部における最大荷重時の弾性変形量は、主軸の外周面と外筒の内周面とが互いに同じ傾斜角度の従来の軸ばねと同じになり、請求項2の発明による前記作用効果をより強化することができる。
請求項3の発明によれば、外筒が主軸に対して軸心方向で主軸外周面の先窄まり側に寄せられた軸ばねであれば、請求項1〜3の発明による作用効果をより一層明確に得ることができる。
請求項4の発明によれば、最内側の弾性材層は、外周面の先窄まり側端を覆って主軸の先窄まり側頂面に延設されているので、主軸の防錆上で有利としながら、最内側の弾性材層の上端内側部に亀裂や剥離が生じるおそれをより軽減可能となる利点がある。
請求項5,6の発明によれば、少ないクッションストローク初期或いは前半部においてばね定数を無理なくソフト化し、耐最大荷重を落とすことなく乗り心地の改善が図れる軸ばねを提供することができる。
実施形態1による軸ばねの平面図 図1の軸ばねを「前−軸心P−右」で切った断面図 荷重と変位量との関係グラフを示す図
以下に、本発明による軸ばねの実施の形態を、鉄道車両用軸ばねとして図面を参照しながら説明する。
〔実施形態1〕
鉄道車両用軸ばね(以下、軸ばねと略称する)Aは、図1及び図2に示されるように、主軸1と、主軸1と互いに同一(又はほぼ同一でも良い)の縦向きの軸心Pを有する外筒2と、主軸1と外筒2との間に介装されている弾性部3とを有して構成されている。弾性部3は、三層の弾性層4と二層の中間硬質筒5とを軸心Pに対して同心状態(又はほぼ同心状態でも良い)で径内外方向へ交互に積層する積層ゴム構造として、主軸1と外筒2との間に構成されている。
ここで、図1においては、弾性層4に形成されている抜き孔6,7と軸心Pとを結ぶ線分の方向を左右、主軸1の下端部に形成されている一対のネジ孔1g,1gを結ぶ方向を前後と定義する。そして、図2においては、軸心Pを有する主軸1を基準として、主軸1の形状から先窄まり側を上、元拡がり側(反先窄まり側)を下と定義する。
主軸1は、図1,2に示されるように、金属製のものであって、上窄まり状の多段(複数段)の円錐面を有してなる多段(複数段)外周面1aを備える円錐上部1Aと、最大径の大外周面1bを有して円錐上部1Aの下側に続くフランジ部1Bと、径の細い小外周面1cを有してフランジ部1Bの下側に続く下部直胴部1Cとを備える筒状軸に形成されている。
円錐上部1Aには、軸心Pを中心として上端開口している中空部1dが形成されており、この中空部1dは下部直胴部1Cの上下中間位置まで延設されている。下部直胴部1Cには、軸心Pを有して下端開口している細径縦孔1f、及び細径縦孔1fの両脇それぞれに配置される状態でネジ孔1g,1gが形成されている。これら細径縦孔1f及びネジ孔1g、1gは、中空部1dの漏斗状底面1eに開口されている。
外筒2は、図1,2に示されるように、金属製のものであって、下拡がり状の円錐面でなる傾斜内周面2a、傾斜内周面2aの上側に続く嵌合内周面2b、円環状の上端面2cを有し、縦断面形状がハ字状を呈する筒部材に形成されている。軸心Pを備える外筒2は、主軸1に対して上側(先窄まり側)に寄せて配置されている。即ち、主軸1の上端部の高さレベルと、外筒2の下端部の高さレベルがほぼ同じとなるように外筒2が上側に寄せられている。
外筒2において、傾斜内周面2aの軸心Pに対する傾斜角度は第1角度θ1に設定されている。第1角度θ1は、例えば10度(又は10度±5度)に設定されているが、それ以外の角度でも良い。
弾性部3は、図1,2に示されるように、環状で三つのゴム層(弾性材層の一例)4a,4b,4cからなる弾性層4と、金属製又は板金製で二つの環状輪(硬質材壁の一例)5a,5bとかなる中間硬質筒5とを、軸心Pに対する径内外方向へ交互に積層させた状態で、主軸1と外筒2との間に介装することで構成されている。弾性層4は、径方向で内から内ゴム層4a、中ゴム層4b、外ゴム層4cを有している。内ゴム層4aは、主軸1の上面(符記省略)の大部分を径外側から覆う薄膜部4hを有している。上部中間硬質筒5は、径方向で内から内環状輪5a、外環状輪5bを有している。
弾性層4及び中間硬質筒5は、軸心Pに対して外筒2の傾斜内周面2aと同じ方向に傾けられている。そして、内及び外の各環状輪5a,5bの軸心Pに対して傾斜する第2角度θ2が、第1角度θ1より小さい角度に設定されている。
第2角度θ2は、例えば第1角度θ1が10度のときに7.5度に設定されている。その他、(θ1−1.5度)≧θ2≧(θ1−7.5度)、好ましくは(θ1−2.5度)≧θ2≧(θ1−4.5度)、或いは、それら以外の角度(θ1>θ2)でも良い。
図2においては、内環状輪5aの補助線cと外環状輪5bの補助線dとを二重矢印マークで互いに平行であることを表している。
内ゴム層4a、中ゴム層4b、及び外ゴム層4cは、それらのいずれも下端部の厚み(径方向の厚み)が互いに同じ(又はほぼ同じ)である。図2において、弾性部3の配設方向(軸心Pに対する径方向での延び方向)を矢印Zで表してあり、各ゴム層4a〜4cの下端部の矢印Z方向での幅は、同じ(又はほぼ同じ)となるように構成されている。
二つの環状輪5a,5bが傾斜内周面2aに対して立った角度に傾いていることにより、外ゴム層4c上端部の厚み<中ゴム層4b上端部の厚み<内ゴム層4a上端部の厚み、になっている。また、内環状輪5aは主軸1に対して上側(先窄まり側)に寄せられ、外環状輪5bは内環状輪5aに対して上側(先窄まり側)に寄せられ、外筒2は外環状輪5bに対して上側(先窄まり側)に寄せられている。
図1、図2に示されるように、外ゴム層4cと中ゴム層4bとには、左右方向に配置された各一対の抜き孔6,7が上下に貫通状態で形成されている。図1に示されるように、外及び中の各抜き孔6,7の幅方向端(軸心Pに対する周方向端)を結んで軸心Pを通る補助線f、gを引くと、各抜き孔6,7の幅角度は互いに等しい第7角度θ7に揃えられている。第7角度θ7は、前後に等しい角度ずつ振り分けられている。各抜き孔6,7は、径方向にはゴム膜4gを残してほぼゴム層4c,4bの径方向幅に近い幅を有している。ゴム膜4gは、外筒2及び各中間硬質筒5,5の防錆に役立つ。
主軸1についてより詳しく説明する。主軸1の多段外周面1aは、図1,図2に示されるように、第1角度θ1よりも大きい第3角度θ3を有する先窄まり先端面(先窄まり側の先端部)9と、第1角度θ1よりも小さい第4角度θ4を有する先窄まり基端面(先窄まり側の基端部)10と、第1角度θ1よりも僅かに小さい第5角度θ5を有する先窄まり中間面(その他部分10,11における先窄まり側の基端部10を除いた部分)11と、を備えた複数段傾斜で先窄まりした外周面に形成されている。
図2において、第4角度θ4は0度(軸心Pと平行)であり、先窄まり基端面10は、径一定の円柱面に形成されている。
多段外周面1aと内周面2aとが、軸心Pに対して互いに同じ方向に傾斜した円錐面(傾斜内周面2a、先窄まり先端面9、先窄まり中間面11)を有して形成されている。外周面1aにおける先端部である先窄まり先端面9の軸心Pに対する傾斜角度θ3が、先窄まり先端面9を除いたその他部分である先窄まり基端面10及び先窄まり中間面11それぞれの軸心Pに対する傾斜角度θ4,θ5よりも大きい角度に設定(θ3>θ4、かつ、θ3>θ5)されている。
そして、先窄まり基端面10の軸心Pに対する傾斜角度θ4を、その他部分10,11における基端部である先窄まり基端面10を除いた部分である先窄まり中間面11の軸心Pに対する傾斜角度θ5よりも小としてある。従って、多段外周面1aの平均角度θAが、傾斜内周面2aの軸心Pに対する傾斜角度である第1角度θ1に近づけられている。例えば、θ3=32.5度、θ4=0度、θ5=7.5度(=θ2)である。
図1,図2に示されるように、弾性材層4a,4b,4cのうちの多段外周面1aに連設されている内ゴム層(第1弾性材層の一例)4aは、多段外周面1aの先窄まり側端を覆って主軸1の先窄まり側頂面1tに及ぶ状態に延設された薄膜部4hを備えている。また、先窄まり基端面10は円柱面であるが、先窄まり先端面9及び先窄まり中間面11は傾斜しているから、多段外周面1aは、全体として、傾斜内周面2aと軸心Pに対して互いに同方向に傾いた傾斜外周面であると言える。
軸ばねAにおいては、外筒2に荷重が掛ると、外筒2が主軸1に対して下がる方向に弾性部3が弾性変形して懸架する。多段外周面1aと傾斜内周面2aとで挟まれている弾性部3には、せん断荷重に加えて圧縮荷重も掛る構造上、軸心P方向の荷重が増すに連れて弾性部3のばね定数が増す非線形特性、いわゆるプログレッシブ特性が得られる。
二つの環状輪5a,5bを傾斜内周面2aより(又は、傾斜内周面2a及び多段外周面1aより)立たせた角度にしてあるので、外筒2と主軸1とが軸心P方向で近付く方向の荷重が作用したときに、従来構造の弾性部(二つの環状輪5a,5bと傾斜内周面2aとが互いに同じ角度)に比べて、弾性部3としての最大荷重条件は変わらないようにしながら、弾性部3の全体としてのばね定数の増加具合を緩やかなものにすることができる。
弾性層4には、軸心P方向の荷重に対して耐せん断力と耐圧縮力との双方により弾性変位するが、中ゴム層4bについては、従来構造(環状輪5a,5bの傾斜角度θ2が傾斜内周面2aの傾斜角度θ1に等しい構造)のものより耐せん断力の割合が多くなり、荷重が増すに連れてばね定数が増加する程度、即ちプログレッシブ特性が緩やかになる。内ゴム層4aや外ゴム層4cも、片側の傾斜角度(θ2)が立っていることの影響を受け、中ゴム層4bほどではないが従来構造のものよりもプログレッシブ特性が緩やかになる。弾性部3としての内外の傾斜角度(θ1)は従来と同じであるから、ストローク後半部或いは限界近くまで荷重が増加した状態では、プログレッシブ特性は従来よりも大きくなる。従って、弾性部3としての最大荷重時における最大変位量は、従来と変わらないようにすることができる。
軸ばねにおける軸心P方向の荷重に対する弾性部3の変位量の関係を表した荷重−変位量のグラフの一例を図3に示す。ライン(a)は、環状輪5a,5bの傾斜角度が傾斜外周面1a及び傾斜内周面2aと同じである従来の軸ばねのものを示し、ライン(b)は本願による軸ばねAの荷重−変位量のグラフを示す。図3のグラフから、従来の軸ばねと実施形態1の軸ばねとでは、最大荷重時の変位量は同じであるが、ある荷重のときの変位量は実施形態1の軸ばねの方が大きく、即ち、ばね定数が小さくなっていることが分かる。
先窄まり先端面9の傾斜角度θ3を、先窄まり中間面11の傾斜角度θ5よりも大きい角度とされていて、内ゴム層4aの上端内側部が従来のものより内側に拡大されている。従って、体積が拡大された前記上端内側部の応力集中が従来のものより減少し、内ゴム層4aの上端部内側に亀裂や、主軸1との剥離が生じたりする不都合が解消又は軽減され、長期に亘って使用可能になるなど、耐久性が改善された軸ばねAを提供することができる。
内ゴム層4aは、多段外周面1aの先窄まり側端を覆って前記主軸1の先窄まり側頂面1tに及ぶ状態に延設された薄膜部4hを備えているから、主軸1の防錆上で有利としながら、前述した亀裂や剥離をより軽減可能となる利点もある。
そして、多段外周面1aの下端部である先窄まり基端面10を円錐面ではなく、径一定の外周面としてあるので、主軸1の径を従来のものより抑えられるとともに作り易くもなり、したがって、コスト及び重量軽減に寄与している。また、それによって、即ち、第1角度θ1に対して先窄まり先端面9とは反対側に傾斜する先窄まり基端面10を設けたことにより、多段外周面1a全体としての傾斜角度を第1角度θ1に近付けられ、最大荷重時の弾性変形量を従来のものと変わらないようにすることができる。
〔実施形態2〕
実施形態2の軸ばねAは、多段外周面1aの傾斜角度や長さが実施形態1のものと微妙に異なる以外は、実施形態1の軸ばねAと同じである。実施形態1と異なる構成は、多段外周面1aの平均角度θAが、傾斜内周面2aの軸心Pに対する傾斜角度である第1角度θ1に等しく設定されていることである。
即ち、図2に示されるように、先窄まり先端面9における弾性層4の矢印Zに対する幅長さをw9、先窄まり基端面10における弾性層4の矢印Zに対する幅長さをw10、先窄まり中間面11における弾性層4の矢印Zに対する幅長さをw11とした場合、式1:θ3×w9+θ4×w10+θ5×w11≒θ1×(w9+w10+w11)となる状態に構成されている。
弾性部3の配設方向Zは、三つのゴム層4a,4b,4cそれぞれの上面どうしを径内外方向に結んだ上線分の軸心Pに対する角度と、下面どうしを径内外方向に結んだ下線分の軸心Pに対する角度との平均の角度である。
上線分は、三つのゴム層4a,4b,4cそれぞれの上面において最も下方に凹入した箇所を結ぶ線分、或いは、各上面の径内外の端部それぞれと最も下方凹入した点を平均化した仮想箇所を結ぶ線分、として定義できる。
下線分は、三つのゴム層4a,4b,4cそれぞれの下面において最も上方に凹入した箇所を結ぶ線分、或いは、各下面の径内外の端部それぞれと最も上方凹入した点を平均化した仮想箇所を結ぶ線分)として定義できる。
そして、図2に示されるように、外周面1aの各面9,10,11それぞれに一体化されている弾性層4の実質厚みを、矢印Zに対する幅長さw9,w10,w11として定義している。
図2に示されるように、θ1<θ3、θ1>θ4、θ1>θ5であるから、式1は、式2:(θ3−θ1)×w9≒(θ1−θ4)×w10+(θ1−θ5)×w11とも現すことができる。例えば、θ1=10度、θ3=33.3度、θ4=0度、θ5=7.5度、w9=6、w10=11、w11=12であるとき、(33.3−10)×6=139.8、(10−0)×11=110、(10−7.5)×12=30であるから、139.8≒140(110+30)であり、±1度以下程度なら等しいと言って差し支えない。
弾性層4の幅長さw9、w10、w11とは、弾性部3の傾きを考慮して各外周面9,10,11に対応させた実質的な幅の長さである。つまり、主軸1の多段外周面1aを形成する3つの外周面9,10,11は、それらの長さと角度との合算である算術平均角度θAがθ1に等しく(又はほぼ等しく)設定されている。
このように、第3〜第5角度θ3〜θ5及び対応する各幅長さw9〜w11を適宜に設定することにより、多段外周面1aの算術平均角度θAを第1角度θ1に等しく設定された主軸1を実現させることが可能となる。これにより、ストローク前半部においては従来よりもソフト化しながら、弾性部3の最大変位量時における最大荷重を従来の軸ばねと同じにすることができる(図3を参照)。
〔別実施形態〕
例えば、図示は省略するが、直胴形状の先窄まり基端面10と先窄まり先端面9との2段による複数段外周面1aを有する主軸1や、その2段の外周面1aの平均角度θAが第1角度θ1と同じ、或いは近付けられた主軸1を持つ軸ばねAでも良い。また、先窄まり先端面9を含んで4段以上に傾斜した多段外周面を有する主軸1を持つ軸ばねAでも良い。
1 主軸
1a 外周面
1t 先窄まり側頂面
2 外筒
2a 内周面
3 弾性部
4 弾性層
4a〜4c 弾性材層
5 中間硬質筒
5a,5b 硬質材壁
9 外周面の先窄まり側の先端部
10 外周面の先窄まり側の基端部
11 その他部分における先窄まり側の基端部を除いた部分
P 軸心
θ1 内周面の軸心に対する傾斜角度
θ2 硬質材壁の軸心に対する傾斜角度
θ3 先窄まり側の先端部の傾斜角度
θ4 先窄まり側の基端部の傾斜角度
θ5 その他部分の傾斜角度

Claims (6)

  1. 主軸と、
    前記主軸の軸心方向視で前記主軸を囲繞する状態で配備される外筒と、
    複数の弾性材層と一又は複数の硬質材壁とを前記軸心に対する径内外方向へ交互に積層させた状態で、前記主軸と前記外筒との間に介装されている弾性部と、
    を有してなる軸ばねであって、
    前記主軸の外周面と前記外筒の内周面とが、前記軸心に対して互いに同じ方向に傾斜した円錐面を有して形成され、
    前記外周面における前記主軸の先窄まり側の先端部の前記軸心に対する傾斜角度が、前記外周面における前記先端部を除いたその他部分の前記軸心に対する傾斜角度よりも大きい角度に設定され
    前記外周面の前記主軸の先窄まり側の基端部の前記軸心に対する傾斜角度を、前記その他部分における前記先窄まり側の基端部を除いた部分の前記軸心に対する傾斜角度よりも小として、前記外周面の平均角度が前記内周面の前記軸心に対する傾斜角度に近づけられている軸ばね。
  2. 前記外周面の平均角度が前記内周面の前記軸心に対する傾斜角度に等しく設定されている請求項1に記載の軸ばね。
  3. 前記外筒は前記主軸に対して、前記軸心の方向における前記外周面の先窄まり側に寄せて配置されている請求項1又は2に記載の軸ばね。
  4. 前記弾性材層のうちの前記外周面に連設されている第1弾性材層は、前記外周面の先窄まり側端を覆って前記主軸の先窄まり側頂面に及ぶ状態に延設されている請求項1〜3の何れか一項に記載の軸ばね。
  5. 前記硬質材壁の前記軸心に対する傾斜角度が、前記内周面の前記軸心に対する傾斜角度より小さい角度に設定されている請求項1〜4の何れか一項に記載の軸ばね。
  6. 主軸と、
    前記主軸の軸心方向視で前記主軸を囲繞する状態で配備される外筒と、
    複数の弾性材層と一又は複数の硬質材壁とを前記軸心に対する径内外方向へ交互に積層させた状態で、前記主軸と前記外筒との間に介装されている弾性部と、
    を有してなる軸ばねであって、
    前記主軸の外周面と前記外筒の内周面とが、前記軸心に対して互いに同じ方向に傾斜した円錐面を有して形成され、
    前記外周面における前記主軸の先窄まり側の先端部の前記軸心に対する傾斜角度が、前記外周面における前記先端部を除いたその他部分の前記軸心に対する傾斜角度よりも大きい角度に設定され、
    前記硬質材壁の前記軸心に対する傾斜角度が、前記内周面の前記軸心に対する傾斜角度より小さい角度に設定されている軸ばね。
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