JP6787372B2 - 車両の下部構造 - Google Patents

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Description

本発明は、車両の下部構造に関し、特に衝突時における部品間の距離の制御に関する。
車両の下部構造は、下部車体と、下部車体に装着され、サスペンションの可動部品を動作可能に支持するサスペンションメンバを含む。下記特許文献1には、フロントサイドメンバ(1)に固定されたサスペンションメンバ(35)が示されている。サスペンションメンバ(35)は後端部において、別部品を介して後方連結部(37)にてフロントサイドメンバ(1)に固定されている。また、下記特許文献1には、燃料電池スタック(13)を含むフロア下ユニット部品(17)をフロア下に搭載することが記載されている。なお、上記の( )内の符号は、下記特許文献1で用いられている符号であり、本願の実施形態の説明で用いられる符号とは関連しない。
特開2006−224877号公報
フルラップまたはオフセット前面衝突等の前面衝突時において、フロントサスペンションメンバは、下部車体に対して相対的に後方に移動する。フロントサスペンションメンバの後退の抑制に関し、改善の余地がある。
本発明は、前面衝突時において、下部車体に対するフロントサスペンションメンバの後退を抑制することを目的とする。
本発明に係る車両の下部構造は、車両の前後方向に延びる骨格部材を有する下部車体と、 下部車体の前部下方に位置し、下部車体の骨格部材に装着されているフロントサスペンションメンバと、下部車体とフロントサスペンションメンバの間に介在するスペーサとを備える。スペーサには、骨格部材に固定するためのボルトが貫通する少なくとも1つのボルト孔が形成される。スペーサは、最も車両前方に位置するボルト孔を形成する部分から車両前方に延びる延伸部を有し、この延伸部は、フロントサスペンションメンバの後壁面に対向する前端面を有する。スペーサは、延伸部以外の少なくとも一部においてフロントサスペンションメンバに溶接されている。前面衝突時において、前端面に、フロントサスペンションメンバの後壁面が当接する。
スペーサの延伸部がフロントサスペンションメンバに溶接されていないので、前面衝突時、延伸部がフロントサスペンションメンバと共に変形することが抑制され、延伸部の前端面とフロントサスペンションメンバの後壁面の対向状態が維持される。これにより、後退するフロントサスペンションのスペーサによる支持の確実性が高まる。
車両の下部構造を下から見上げた状態で模式的に示す斜視図である。 サスペンションメンバを見下ろした状態で模式的に示す斜視図である。 スペーサを示す斜視図である。 スペーサを示す側面図である。 図4に示すA−A線によるスペーサの断面図である。 サスペンションメンバとスペーサの関係を模式的に示す側面図である。 サスペンションメンバと電力線の関係を模式的に示す側面図である。 前面衝突時の下部構造の変形を模式的に示す側面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。以下の説明において、特段の断りがない場合、前後左右上下等の方向および向きを表す語句は、車両に関する方向および向きを表す。各図において、矢印FRの向きが前方、矢印UPの向きが上方、矢印LHの向きが左方である。
図1は、車両の下部構造10、特に下部構造10の前部の要部を下方から見上げた状態で示す模式図である。下部構造10は、下部車体12と、下部車体12の前部下方に位置するフロントサスペンションメンバ14(以下、サスペンションメンバ14と記す。)を備える。下部車体12は、客室のフロア16と、客室の前縁を規定するダッシュパネル18と、フロア16の下を前後方向に延び、さらに前方に延びる左右1対のサイドメンバ20を備える。ダッシュパネル18は、客室と、客室前方に位置し、電動機等の原動機が収まる原動機室の隔壁となる。左右のサイドメンバ20は、フロア16下において、前端が互いに近づくように内側に曲がり、左右の間隔が前方に向けて狭くなっている。また、サイドメンバ20のフロア16下の部分よりも前方の部分は、前方に向けてダッシュパネル18に沿って上方に湾曲し、所定の高さにおいて、前方に向けて原動機室内を略水平に延びている。1対のサイドメンバ20は、下部車体12の左右を、前後方向に延びる骨格部材として機能する。サスペンションメンバ14は、板金製であり、所定形状に成形された複数の部品を組合せ、接合して形成される。
サスペンションメンバ14は、サイドメンバ20に装着され、サスペンションの可動部品、例えばロアアームの車体側の支持点を形成する。サスペンションメンバ14は、サスペンションメンバ本体22を有し、このサスペンションメンバ本体22の左右の端部にサスペンションの可動部品の支持点が形成される。サスペンションメンバ本体22の前部の左右には取り付けアーム24が設けられ、取り付けアーム24の上端が原動機室内のサイドメンバ20に結合されている。また、サスペンションメンバ本体22の後部の左右には、後方に延びる舌状の後方取り付け部26が設けられ、後方取り付け部26がフロア16下のサイドメンバ20に結合されている。後方取り付け部26と下部車体12、特にサイドメンバ20との間には、スペーサ28が介在している。取り付けアーム24およびスペーサ28の上下方向の寸法を変えることにより、下部車体12に対するサスペンションメンバ14の上下方向における位置を変更することができる。
フロア16下には、バッテリ30が搭載される。バッテリ30は、左右のサイドメンバ20に固定された格子状の支持フレーム32に下から支持されている。支持フレーム32は、左右方向に延びて両端が左右のサイドメンバ20に締結される複数の支持ビーム34を有し、バッテリ30は支持ビーム34上に固定される。バッテリ30の前端面には、電力線36および信号線38を接続するためのレセプタクルが備えられる。電力線36は、バッテリ30に蓄えられた電力を車両駆動用の電動機に供給し、また回生制動によって電動機が発生した電力をバッテリ30に送る。信号線38は、バッテリ30の電流、電圧や、バッテリ30の温度などのバッテリ30の状態を把握するためのパラメータを示す検出信号を送出する。
図2は、スペーサ28を取り付けた状態のサスペンションメンバ14を示す斜視図である。サスペンションメンバ本体22は、略後方を向いた後壁面22aを有し、後壁面22aは左右方向において湾曲している。湾曲した後壁面22aは、中央部が前方に位置し、両端部が後方に位置し、各両端部の下部から後方取り付け部26が後方に延びている。後方取り付け部26の上下方向の寸法(厚さ)は、サスペンションメンバ本体22の厚さに比べて薄い。後方取り付け部26の上面には、スペーサ28が溶接等の手法により接合されている。サスペンションメンバ14は、前部において取り付けアーム24が、また後部において後方取り付け部26とスペーサ28がサイドメンバ20に結合されることにより、下部車体12に装着される。後方取り付け部26は、後方取り付け部26とスペーサ28を一緒に貫通するボルト42と、スペーサ28を貫通するボルト44によって、サイドメンバ20に締結される。前方のボルト42は、後方取り付け部26とカラー48をサイドメンバ20との間で挟持する。
図3〜5は、スペーサ28を示す図であり、図3が斜視図、図4が側面図、図5が図4に示すA−A線による断面図である。スペーサ28は、前後方向に延びるブラケット46と、ブラケット46を上下方向に貫通するカラー48を含む。ブラケット46は、長手方向(前後方向)に直交する断面が、下向きに開いたコの字形状であり、板金製である。ブラケット46の中央よりも前方寄りの位置において、カラー48がブラケット46を上下方向に貫通している。ブラケット46の、カラー48が貫通する部分をカラー貫通部46aと記す。ブラケット46は、カラー貫通部46aから前方に延びる延伸部46bを有する。カラー48は、ボルト42による締結力を受ける部分であり、締結力を受ける部分よりも前方に延びている部分が延伸部46bである。ブラケット46は、カラー貫通部46aから後方にも延びている。この後方に延びる部分の後端部46cには貫通孔が設けられ、この貫通孔は、ボルト44が貫通するスペーサ28の後方ボルト孔28aである。
ブラケット46の前端面46f(延伸部46bの前端面)は、サスペンションメンバ本体22の後壁面22a(図2,6参照)と対向している。ブラケット46は、スペーサ28の一部であり、ブラケット46の前端面46fは、スペーサ28の前端面でもある。
カラー48は円筒形状であり、上端面48aはブラケットの後端部46cの上面46dと同じ高さに位置し、下端面48bはブラケットのカラー貫通部46aの下縁46eと同じ高さに位置している。カラー48は、ブラケット46と溶接等の手法により接合される。具体的には、カラー48の側面とブラケットのカラー貫通部46aの上面が溶接される。カラー48は、ボルト42が貫通するスペーサの前方ボルト孔28bを形成する。
スペーサ28は、ブラケットのカラー貫通部46aの下縁46eをサスペンションメンバ14の後方取り付け部26に溶接して接合されている。一方で、延伸部46bの下縁46gは、後方取り付け部26に溶接されていない。
また、ブラケット46の前端面46fと下縁46gの形成する角46hは、面取り、特に丸面取りされている。ブラケットの前端面46fの形状は、下向きに開いたコの字形状であり、コの字の平行な2辺の下端の角46hが丸面取りされている。
図6および図7は、サスペンションメンバ14、特に後方取り付け部26の周囲の構成を側方視した模式図である。特に、図6ではサスペンションメンバ14とスペーサ28の関係が示されており、図7ではサスペンションメンバ14と電力線36の関係が示されている。図7において、サスペンションメンバ本体22の内部構造は省略されている。
図6に良く示されるように、後方取り付け部26の厚さは、サスペンションメンバ本体22の厚さに対し小さく、サスペンションメンバ14の厚さは、後方に向けて後壁面22aの付近で急激に減少している。また、図2に良く示されるように左右方向においても、後方取り付け部26の左右方向の寸法(幅)は、サスペンションメンバ本体22に比べて小さく、寸法の急激な減少が見られる。このように、寸法が急減する部分は脆弱であり、衝突時、荷重を受けると他の部分より早く変形が始まる。後方取り付け部26の付け根およびその周囲の部分は、他の部分よりも早く変形が始まる脆弱部である。
スペーサ28は、サスペンションメンバ14とサイドメンバ20の間に介在し、下部車体12に対するサスペンションメンバ14の上下方向の位置を定めている。スペーサ28の有無、またはスペーサ28の厚さを変更することでサスペンションメンバ14の上下方向の位置を変更することができる。スペーサ28は、前後方向において2箇所でサイドメンバ20に固定されている。スペーサ28は、前側ではサスペンションメンバ14と共にボルト42によってサイドメンバ20に締結され、後側ではボルト44でサイドメンバ20に締結されている。スペーサ28のブラケットの延伸部46bは、スペーサ28がボルト42によって固定されている位置から前方に向けて延び、その前端面46fがサスペンションメンバの後壁面22aに対向している。ブラケットの延伸部46bは、フルラップ前面衝突時やオフセット前面衝突時において後退してくるサスペンションメンバ14の後壁面22aに当接する。延伸部46bの長さを変更することで、サスペンションメンバ14と当接する位置を変更することができ、サスペンションメンバ14の後退量を制御することができる。
サスペンションメンバ本体22の後壁面22aは湾曲しているので、図7に示すように、後壁面22aの電力線36に対向する部分は、スペーサ28に対向する部分よりも前方に位置する。
図8は、所定の条件における前面衝突時の下部構造10の変形の様子を示す図である。前面衝突時の条件は、例えば規定されたフルラップ前面衝突試験、またはオフセット前面衝突試験の条件とすることができる。例えば、フルラップ前面衝突試験においては、車両は55km/hで壁面に正面衝突させられ、オフセット前面衝突試験おいては、定められた構造の対象物に対し40%のオーバラップ量で64km/hで衝突させられる。
車両の客室は乗員を保護するために堅固な構造を有する一方、客室より前方の部分は衝突のエネルギを吸収するために比較的変形しやすい構造を採る。下部構造10が前面衝突による衝突荷重Fを受けると、下部構造10の前部は変形し、これに伴いサスペンションメンバ14も後退する。一方、スペーサ28は、堅固なサイドメンバ20のフロア下部分に固定されているため、サスペンションメンバ14の後方取り付け部26の位置は大きく変化しない。このため、後方取り付け部26の脆弱な部分が屈曲する。図8に示すように、後方取り付け部26は、V字形に屈曲し、サスペンションメンバ本体の後壁面22aがブラケットの前端面46fに当接する。これによって、サスペンションメンバ14の後退が抑えられ、サスペンションメンバ14によるフロア16などの下部車体12の変形を抑制することができる。また、サスペンションメンバ14の後退が抑えられることで、サスペンションメンバ14のバッテリ30への衝突が回避される。さらに、サスペンションメンバ14と下部車体12の間に電力線36が挟まれることも避けられる。
ブラケットの延伸部46bの長さを適宜設定することで、サスペンションメンバ14がブラケット46に当接する位置を制御することができる。
前面衝突時、後方取り付け部26が早く変形することにより、スペーサ28が先に変形または脱落することを防止することができ、後退してくるサスペンションメンバ14を受ける確実性が高くなる。また、ブラケットの延伸部46bと後方取り付け部26が接合されていないので、後方取り付け部26のV字形への変形が阻害されない。さらに、延伸部46bも後方取り付け部26の変形に伴う力を受けないので変形が抑えられ、サスペンションメンバ本体の後壁面22aとの対向状態を維持することができる。
また、ブラケットの前端面46fの周縁の一部を面取りすることで、ブラケット46がサスペンションメンバ本体の後壁面22aに突き刺さることを抑制することができる。ブラケット46が突き刺さると、後退するサスペンションメンバ14をブラケット46が十分に支持することができず、後退の抑制効果が小さくなる。前端面46fに面取りを設けることで、ブラケット46の突き刺さりを抑え、サスペンションメンバ14の後退を効率良く抑制することができる。また、ブラケット46が後壁面22aに突き刺さると、サスペンションメンバ14の下方への動きを阻害するため、衝突荷重を逃がして下部車体12に伝達されないようにできなくなる。前端面46fに面取りを設けることで、衝突荷重を逃がし、下部車体12およびバッテリ30に伝わらないようにすることができる。
スペーサは、ブラケット46とカラー48の2部品構成に限らず、一体品とすることができる。スペーサの前端面の形状は、コの字形に限らず、例えば中実の四角形、四角の枠形状などとしてよい。面取りは、前端面の周縁全体に設けてもよく、周縁の一部に設けてもよく、また角部のみに設けてもよい。
本発明の他の態様を以下に示す。
(1)車両の前後方向に延びる骨格部材を有する下部車体と、
前記下部車体の前部下方に位置し、前記下部車体の前記骨格部材に装着されているフロントサスペンションメンバと、
前記下部車体と前記フロントサスペンションメンバの間に介在し、前記骨格部材に固定するためのボルトが貫通する少なくとも1つのボルト孔が形成されたスペーサであって、当該スペーサは、前記ボルト孔のうち最も車両前方に位置するボルト孔を形成する部分から車両前方に延びる延伸部を有し、当該延伸部は、前記フロントサスペンションメンバの後壁面に対向する前端面を有する、スペーサと、
を備え、
前記スペーサは、前記延伸部以外の少なくとも一部において前記フロントサスペンションメンバに溶接されている、車両の下部構造。
10 下部構造、12 下部車体、14 (フロント)サスペンションメンバ、16 フロア、18 ダッシュパネル、20 サイドメンバ(骨格部材)、22 サスペンションメンバ本体、22a 後壁面、24 取り付けアーム、26 後方取り付け部、28 スペーサ、28a 後方ボルト孔、28b 前方ボルト孔、30 バッテリ、32 支持フレーム、34 支持ビーム、36 電力線、38 信号線、42,44 ボルト、46 ブラケット、46a カラー貫通部、46b 延伸部、46e カラー貫通部の下縁、46f 前端面、46g 下縁、46h (丸面取りされた)角、48 カラー。

Claims (1)

  1. 車両の前後方向に延びる骨格部材を有する下部車体と、
    前記下部車体の前部下方に位置し、前記下部車体の前記骨格部材に装着されているフロントサスペンションメンバと、
    前記フロントサスペンションメンバの装着時に前記骨格部材との間に介在し、前記フロントサスペンションメンバと前記骨格部材の距離を規定するスペーサであって、当該スペーサには、当該スペーサを前記フロントサスペンションメンバと共に前記骨格部材に固定するためのボルトが貫通する少なくとも1つのボルト孔が形成され、当該スペーサは、前記ボルト孔のうち最も車両前方に位置するボルト孔を形成する部分から車両前方に延びる延伸部を有し、当該延伸部は、前記フロントサスペンションメンバの後壁面に対向する前端面を有し、前面衝突時において、前記前端面に、前記フロントサスペンションメンバの後壁面が当接する、スペーサと、
    を備え、
    前記スペーサは、前記延伸部では前記フロントサスペンションメンバに接合されておらず、前記延伸部以外の少なくとも一部において前記フロントサスペンションメンバに溶接されている、車両の下部構造。
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