JP6785539B2 - 重機用足場材の移動方法、重機用足場材 - Google Patents
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Description
なお、この出願で「重機」とは、履帯や車輪などの移動手段を具備する移動式の建設機械の略称であり、その具体例としては移動式クレーンであるクローラクレーンなどが挙げられる。
具体的には、桟橋施工の起点となる既設道路などから工事目的物(橋梁やトンネルなど)に到達するまでの区間の桟橋工において、
(1) 施工のため借地できる範囲が限定されている、
(2) 地形上やむを得ない、
(3) 工期短縮やコスト軽減などが原因で桟橋の延長を短縮する必要がある、
などの理由で、目的とする2地点(起点・終点)の高低差を連絡するための縦断勾配が急となり、結果として、例えば最大15%にも及ぶ縦断勾配が桟橋に付与されるといったことも少なくない。
特に、上記手延べ式の桟橋施工方法においては、クレーンが延設方向の最先端の覆工面で作業をする必要があるのに対して、上り勾配で延設する施工の際にはクレーンの乗り入れ前に足場材を設置することが困難であり、合理的な対策が求められていた。
すなわち、縦断勾配を成す桟橋上に設置するクレーン設置用の足場の断面は略三角形を成すが、クレーン進入に先行して覆工面の延設方向の最先端に設置しようとする場合、上り勾配施工においては、上記足場はその三角形のひとつの(最鋭角となる)頂点側を延設方向に向け覆工面最先端位置に設置されることになり、従ってクレーンが待機する側には、桟橋の本来の覆工面(仕上がり面)と、上記三角形の足場高さ(クレーン設置高さ)との間に生じた前記三角形の頂点に対向する一辺(底辺)分の大きな段差が生じているため、その段差によりクレーンの履帯による進入ができない状態となる。
そのため、一旦クレーンが縦断勾配の生じている覆工面の最先端部に乗り込んだ後、本体の低い側を一時的に何らかの方法でジャッキアップなどすることによりクレーン本体が水平になるような体勢を確保し、その間に足場を何らかの方法で重機下面に生じているスペースに挿入する必要があるが、足場が重量物である上、足場の設置位置上空はクレーンにより占有されているため、標準的な懸垂による移動が困難であるという問題が生じていた。
また、本発明の他の目的は、例えば傾斜構台(構築途中のものを含む)などにおける傾斜面に重機を設置して作業を行う場合において、水平堅土上での作業と同等の安全性・安定性を確保できる傾斜面用の重機用足場材(傾斜面で利用可能な重機用の足場構造物)と、その移動方法を提供することにある。
前記足場材を移動させるための線材の一つの固定点を重機側または重機走行面側であって、且つ、前記足場材を所望の移動方向に誘導可能な位置に設ける工程と、
前記線材を、前記固定点から前記足場材に設けた係合手段の位置に到達するように、且つ、前記足場材の移動方向に略平行になるように配設する工程と、
前記線材を前記足場材の係合手段を経由して引っ張り上げる工程と、を含む重機用足場材の移動方法によって達成される。
前記足場材を移動させるための線材の一つの固定点を重機側または重機走行面側であって、且つ、前記足場材を所望の移動方向に誘導可能な位置に設ける工程と、
前記線材を、前記固定点から前記足場材に設けた係合手段の位置に到達するように、且つ、前記足場材の移動方向に略平行になるように配設する工程と、
前記線材を前記足場材の係合手段を経由して引っ張り上げて、当該重機に近寄る方向に足場材を摺動させる工程と、を含む重機用足場材の移動方法によって達成される。
引っ張り上げる線材は、重機用足場材の線材係合手段を経由するとともに、重機の一方の縁端部から、その反対側の縁端部までを通り抜けるように配置されており、更にその先で、重機走行面側または重機側に固定されている。言い換えると、引っ張り上げる線材は、その途中で重機用足場材の係合手段を経由して方向を変え(つまり係合手段に接した状態で屈曲し)、重機の占有位置に沿ってその縁端部からその反対側の縁端部までを通り抜け(その際、重機側面に沿うよう、および/または重機の真下を潜るようにして)更にその先で重機側または重機走行面側に動かないように固定されている。
このような位置関係・係合関係で線材を引っ張り上げることで、線材に対して引っ張り力を印可するもとが「力点」として機能し、また、重機用足場材に係合する線材の部分が「作用点」として機能し、当該作用点において、重機用足場材を摺動させる方向の分力Fxと、重機用足場材を持ち上げる方向の分力Fyが作用する(図7参照)。
重機用足場材を摺動させる方向の分力Fxは、重機走行面に沿って当該足場材を摺動させるように作用する。重機用足場材は、上記作用点において分力Fxを受けて、重機に近寄る方向に摺動して、最終的に当該重機の真下に潜り込む。
重機用足場材を持ち上げる方向の分力Fyは、重機用足場材の荷重の一部を支えるので、重機走行面側に対する接触荷重が大幅に軽減される。したがって、分力Fyを受けて重機用足場材が摺動する際に、摩擦音(大重量の重機用足場材が走行面に対して擦れて発生する不快な騒音)が大幅に緩和され、滑るように移動するので、周辺環境や作業環境に対する騒音被害を防止できる。
また、走行面側に対する重機用足場材の接触荷重が大幅に軽減されることで、重機用足場材が摺動する際の走行面に対する摩擦抵抗が大幅に軽減され、その結果、大重量の重機用足場材を滞りなく且つ静かでスムーズに(走行面上を滑るように)移動させることができる。さらに、重機走行面に対する重機用足場材の接触荷重が大幅に軽くなる結果、走行面側の損壊等を防止することもできる。
また、このような方法であれば、重機用足場材を、重機真下のスペースに省力で簡単に設置する(潜り込ませる)ことができる。
このように本発明は、「線材を上方に引っ張り上げて、その引っ張り力を利用して重機用足場材を横方向に摺動させる」というシンプルなアイデアに基づいているため、重機用足場材を移動させるための構成が簡易で済み、効率的な足場材移動手段を低コストで実現することができる。
はじめに、図1に基づいて、本発明に係る重機用足場材の移動に必要な機材構成等について概略的に説明する。
なお、以下の実施形態では、重機用足場材を利用する施工現場の具体例として、縦断勾配の付いた桟橋(構築途中の桟橋)を例示する。
また、特許請求の範囲に記載の「重機」の具体例として、移動式クレーンであるクローラクレーンを例示する。
図1に示す平面視略楔形状の重機用足場材1は、何らかの動力を利用して、移動を停止しているクレーン2の下部走行体22の真下にセッティングする、すなわちクレーン2の真下に挿入するように移動させる。重機用足場材1の移動には、例えば、図1に例示するような相番クレーン4(補助クレーン)を利用する。
次に、図2〜図4に基づいて、重機用足場材の具体的構造については説明する。
図2(a)は重機用足場材1の平面図であり、図2(b)は重機用足場材1の側面図である。
図3は、図2(a)に示す重機用足場材1の後部側の拡大図である。
図4は、図2(b)に示す重機用足場材1の前部側の拡大図である。
・側面視略楔状(あるいは略三角形状や略台形状などでも可)の足場本体12と、
・足場材1を移動させるための線材6を経由・係合させる線材係合手段14と、
・線材6に沿って摺動するように足場材1をガイドするためのガイド部材16を具備している。
なお、線材6を構成する部材の具体例としては、ワイヤー(ワイヤーロープ)、チェーン、ベルトなどが挙げられる。
なお、線材6の形状に対応して滑車31が必要に応じて歯車(スプロケット)状となっていても良い。
次に、添付に基づいて、「移動を停止しているクレーン下部に重機用足場材を挿入する重機用足場材の移動方法」の具体的実施形態について説明する。
なお、以下の実施形態では、重機用足場材を利用する施工現場の具体例として、図1に例示するような縦断勾配の付いた桟橋(構築途中の桟橋)を想定し、また、図1に例示するような機材を利用することを想定している。
また、図6A〜図6Gに例示する実施形態では、「縦断勾配の付いた桟橋(構築途中の桟橋)」の具体的構造を省略し、傾斜した覆工面(重機走行面)のみを図示する。
また、図6A〜図6Gでは、特許請求の範囲に記載の「重機」の具体例として、図1と同様にクレーンを図示するが、紙面の都合上、上部旋回体の図示を省略する。
図6Aに示すクレーン2は、図1に示す状況と同様の状態にある。すなわち、図6Aに示すように構築途中の傾斜した覆工面上にクレーン2を据え付けた場合、その縦断勾配によってクレーン2が傾斜するため、そのように傾斜した状態のままでは、クレーン作業(荷の吊り込みや旋回などの作業)の安全性・安定性を確保することができない。すなわち、クレーン2には、水平堅土上での作業と同等の安全性・安定性を確保できるような足場構造物が必要である。
そこで、図6Bに示すような、一対の重機用足場材1(傾斜面でも利用可能な重機用の足場構造物)を利用して、水平堅土上での作業と同等の安全性・安定性を確保する。
続いて図6Cに示すように、クレーンの下部走行体22が具備する各ジャッキアップ装置23を作動させ、クレーン2の傾きがほぼ無くなるようにジャッキアップする。このとき、クレーン2が水平堅土上で支持された様な略水平状態が確保されるように、各ジャッキアップ装置23の油圧シリンダの伸長長さ(ストローク長)を制御し、下部走行体22を略水平状態にジャッキアップさせる。
重機用足場材1の側面視鋭角状の先端側をクレーン2の方へ向けた状態で設置し、当該クレーンのジャッキアップが完了したら、クレーンの下部走行体22の前方側に、略棒状の線材固定部材50を配置・固定する。線材固定部材50はワイヤーなどの線材を固定するための固定部材として機能する。線材固定部材50によって固定された線材部分は、特許請求の範囲に記載の「固定点」として機能する。
次に、図6Eに示すように線材6を、固定点から重機用足場1に設けた係合手段14の位置に直線的に到達するように、且つ、重機用足場1の移動方向に略平行になるように配設する。「固定点」とは、線材固定部材50によって固定された線材6の一部分である。「重機用足場1の移動方向」とは、重機足場1をクレーン2の真下スペースに挿し込む方向である。
以下、本工程の具体的手順を説明する。
このように、クレーン2の履帯24の最後端部から最先端部位置に向かい通り抜けるように線材6を配設して、相番クレーン4によって当該線材6を上方に引っ張り続けることで、重機用足場材1がクレーン真下に向かって滑り込むように押し進められ、やがて、クレーン真下の楔形スペースに挿し込まれる。その過程で、重機用足場材1はピンと張った線材6とガイド部材16によって真っ直ぐにガイドされるので、クレーン2の履帯底面と重機用足場材1の上面とが相互に正対するように、該重機用足場材1を楔形スペース3に挿入することができる。
一対の重機用足場材1,1をクレーン真下のスペースにセッティングしたら、最後に、ジャッキアップ装置23の油圧シリンダを徐々に縮退させて、クレーン2の荷重を重機用足場材1に預ける。(その後、現場の状況等に応じて必要であれば、図6Gに示すように、クレーンの下部走行体の全体が重機用足場材1の上に載るようにクレーンを僅かに後退させる。)
以上、本発明の実施形態の一例について具体的に説明したが、特許請求の範囲に記載された本発明は、上記実施形態を包含するのは勿論のこと、他の実施形態や変形例を広く包含するものである。
図8に示すような略水平状態の場所で本発明を適用することで、例えば、クレーン2の現位置よりも高くなるように段差が生じている所望の位置(高所位置)への移動が、スロープなどの連絡部を経由することなく、従って重機が走行して高所位置へ移動するための傾斜路を長く設ける必要がないため省スペース施工が可能であるため狭隘地でも利用でき、安全でスムーズに移動させることができるなどのメリットがある。
また、図8に例示するような略水平状態が確保された現場で施工する場合には、側面視略矩形の足場材1を使うことが可能である。
2 クローラクレーン(第1のクレーン/重機)
3 楔形スペース
4 相番クレーン(補助クレーン/第2のクレーン/重機)
5 上部構造構成部材(パネル状部材)
6 線材(ワイヤー/ガイドワイヤー)
9 鋼管杭(支持杭)
12 足場本体
14 線材係合手段
16 ガイド部材
17 ガード
18 ガード
21 上部旋回体
22 下部走行体
23 ジャッキアップ装置
24 履帯(クローラベルト)
31 滑車
33 固定金具
35 連結金具
41 シャックル
43 固定金具
50 略棒状の線材固定部材
51 本体
53 シャックル
56 固定金具
Claims (5)
- 重機下部に重機用足場材を挿入する重機用足場材の移動方法であって、
前記足場材を移動させるための線材の一つの固定点を重機側または重機走行面側であって、且つ、前記足場材を所望の移動方向に誘導可能な位置に設ける工程と、
前記線材を、前記固定点から前記足場材に設けた係合手段の位置に到達するように、且つ、前記足場材の移動方向に略平行になるように配設する工程と、
前記線材を前記足場材の係合手段を経由して引っ張り上げる工程と、を含む重機用足場材の移動方法。 - 重機下部に重機用足場材を挿入する重機用足場材の移動方法であって、
前記足場材を移動させるための線材の一つの固定点を重機側または重機走行面側であって、且つ、前記足場材を所望の移動方向に誘導可能な位置に設ける工程と、
前記線材を、前記固定点から前記足場材に設けた係合手段の位置に到達するように、且つ、前記足場材の移動方向に略平行になるように配設する工程と、
前記線材を前記足場材の係合手段を経由して引っ張り上げて、当該重機に近寄る方向に足場材を摺動させる工程と、を含む重機用足場材の移動方法。 - 請求項1又は2に記載の方法で用いる重機用足場材であって、
重機用足場材を移動させるための線材が経由できるように構成され、当該線材を引っ張り上げる方向の力によって足場材を重機走行面に沿って滑るように摺動させるための線材係合手段を具備する重機用足場材。 - 前記線材係合手段が前記線材と係合可能な滑車を含んで構成されていることを特徴とする請求項3に記載の重機用足場材。
- 前記線材に沿って摺動するように重機用足場材をガイドするためのガイド部材を具備することを特徴とする請求項3に記載の重機用足場材。
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