JP6785284B2 - 捕虫器 - Google Patents

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Description

本発明は、農園において害虫による栽培作物の食害を減らすために、これを誘引して駆除する捕虫器に関する。
農園における害虫防除としては第1に殺虫剤散布があるが、虫が殺虫剤抵抗性を備えるようになっており、その効果は近年著しく低下し、殺虫剤一辺倒の害虫の防除体系を改める必要がある。
そこで、光でこれらの害虫を誘引し捕獲して防除する方法も、害虫防除対策の一つとして最近注目されるようになってきた。このような害虫防除方法においては、従来、誘引光源として青色蛍光灯がある。このような青色蛍光灯の放射波長域は、300nmから550nmで、主に夜行性昆虫に対して正の走光性を生じさせることで、虫を誘引して捕獲する。
上記のような青色蛍光灯を用いた害虫防除対策として、例えば、特許文献1(特開2000−49号公報)には、波長300〜600nmの光源と、前記光源の周囲に配設した害虫光誘引トラップと、前記光源により励起される光触媒を担持した光触媒担持成形物を前記害虫光誘引トラップに近接して設けたことを特徴とする害虫捕獲衛生環境維持装置が開示されている。
特開2000−49号公報
トマト、トルコキキョウなどの黄化葉巻病、メロン、キュウリなどのウリ科の退緑黄化病の原因となるタバココナジラミ、或いは、ウリ科、キク科の黄化えそ病の原因となるミナミキイロアザミウマなどは、450nm以上の長波長域の光に誘引されるので、主に夜行性昆虫を誘引する青色蛍光灯を光源として用いた場合、必ずしも対象害虫の誘引効率が良くなく、捕獲・駆除される確率が低下し、大きな捕虫漏れが発生してしまう、という問題があった。
前記した黄化葉巻病、退緑黄化病、黄化えそ病などは、害虫を媒介して、農作物に伝染するので、害虫の捕獲・駆除確率が低下すると、農作物の生産量に対して多大な悪影響を及ぼしてしまい、問題であった。
本発明は、上記のような問題を解決するために、コナジラミ類、アザミウマ類、アブラムシ類(有翅)、ハモグリバエ類、ハエ類を効率的に誘引する光源を用いた捕虫器を提供するものである。
このために、本発明に係る捕虫器は、コナジラミ類、アザミウマ類、アブラムシ類(有翅)、ハモグリバエ類の虫に対して走光性を生じさせる光を放射する光源と、前記光源の鉛直下方に配され、前記光源から発せられた光を鉛直上方に反射するすり鉢状反射部と、前記すり鉢状反射部の鉛直下方に配され、前記すり鉢状反射部から延在する円筒部と、前記すり鉢状反射部から前記円筒部内に吸引する気流を発生させるファンと、前記ファンの鉛直下方に配され、虫を捕獲するネットと、からなる捕虫器であって、前記光源は放射波長が545nm付近、及び、575nm付近に2つの局所的な放射ピークを有し、前記すり鉢状反射部はマンセル表色系で色相が10YR〜10Yの範囲内の同系色の塗膜を有し、前記光源の545nm付近の放射強度をAとし、575nm付近の放射強度をBとしたとき、比率A/Bが0.7<A/B<1.7の関係を有することを特徴とする。
また、本発明に係る捕虫器は、コナジラミ類、アザミウマ類、アブラムシ類(有翅)、ハモグリバエ類の虫に対して走光性を生じさせる光を放射する光源と、前記光源の鉛直下方に配され、前記光源から発せられた光を鉛直上方に反射するすり鉢状反射部と、前記すり鉢状反射部の鉛直下方に配され、前記すり鉢状反射部から延在する円筒部と、前記すり鉢状反射部から前記円筒部内に吸引する気流を発生させるファンと、前記ファンの鉛直下方に配され、虫を捕獲するネットと、からなる捕虫器であって、前記光源は放射波長が545nm付近、565nm付近及び575nm付近に3つの局所的な放射ピークを有し、前記すり鉢状反射部はマンセル表色系で色相が10YR〜10Yの範囲内の同系色の塗膜を有し、前記光源の545nm付近の放射強度をAとし、575nm付近の放射強度をBとしたとき、比率A/Bが0.7<A/B<1.7の関係を有することを特徴とする。
また、本発明に係る捕虫器は、前記光源は、塗膜を施した蛍光灯からなることを特徴とする。
また、本発明に係る捕虫器は、前記光源は、LED素子からなることを特徴とする。
また、本発明に係る捕虫器は、前記すり鉢状反射部における虫の吸引空間には、目合いが5mm未満のメッシュが配されることを特徴とする。
また、本発明に係る捕虫器は、放射波長が565nm付近に最大放射ピークを有する補助光源をさらに有することを特徴とする。
また、本発明に係る捕虫器は、前記補助光源は、LED素子からなることを特徴とする。
本発明に係る捕虫器は、コナジラミ類、アザミウマ類、アブラムシ類(有翅)、ハモグリバエ類、ハエ類などの対象害虫を、450nm以上の長波長域の光源、より詳細には、放射波長が545nm付近、及び、575nm付近に2つの局所的な放射ピークを有し、545nm付近の放射強度をAとし、575nm付近の放射強度をBとしたとき、比率A/Bが0.7<A/B<1.7の関係を有する光源で、捕虫する。さらに、本発明に係る捕虫器は、マンセル表色系で色相が10YR〜10Yの範囲内の同系色の塗膜を有するすり鉢状反射部を備えており、光源との相乗効果により、対象害虫を効率的に誘引することで、対象害虫の捕獲・駆除確率を向上し、農作物の生産量を増大させることができる。
本発明の第1実施形態に係る捕虫器100の概要を説明する図である。 すり鉢状反射部160と円錐状部150の間の吸引空間に配されるメッシュ140を抜き出して示す図である。 本発明の第1実施形態に係る光源200の効果を検証するための構成を説明する図である。 本発明の第2実施形態に係る捕虫器100の概要を説明する図である。 本発明の第2実施形態に係る捕虫器100における配置関係を説明する図である。 本発明の第3実施形態に係る捕虫器100の概要を説明する図である。 本発明の第3実施形態に係る補助光源220の効果を検証するための構成を説明する図である。 本発明の第4実施形態に係る捕虫器100に用いる光源200の構成を説明する図である。 本発明の第4実施形態に係る捕虫器100に用いる光源200の分光特性図である。 本発明の第5実施形態に捕虫器100に用いる係る光源200の分光特性図である。 本発明の第6実施形態に捕虫器100に用いる係る光源200の分光特性図である。 本発明に係る捕虫器100に用いる係る光源200及び補助光源220の分光特性の模式図である。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る捕虫器100の概要を説明する図である。
本発明に係る光源200は、コナジラミ類、アザミウマ類、アブラムシ類(有翅)、ハモグリバエ類、ハエ類などの対象害虫に対して、基本的に正の走光性を生じさせることで、誘引することを想定している。しかしながら、一方で、当該光源200は他の種類の虫(例えば、夜蛾類、カメムシ類など)に対して負の走光性を生じさせることもある。
光源200を用いた捕虫器100は、例えば、吊下線110によりこれを吊り下げることで利用することが想定されるものである。捕虫器100の主要構成は、吊下線110が通る仮想軸OO’を中心として、略対称な構成となっている。例えば、光源200は略ドーナツ状の形態をなすものである。
吊下線110は、円錐状部150を吊り下げるようになっている。円錐状部150の周面の上側3箇所からは、固定金具151が該周面から延出するように設けられており、3つの固定金具151により光源200が支持されるようになっている。
なお、円錐状部150の周面に設ける固定金具151の数は、上記のように3つに限定されるものではない。
上記の光源200は、不図示の安定器により発光する蛍光管(白色の蛍光灯;色温度4200K)の管表面に塗膜が形成されたものである。光源200は発光すると、対象害虫を誘引する光源として機能する。なお、本実施形態においては、光源200として環状の蛍光灯を用いたが、直管、ツイン蛍光灯なども用いることもできる。
蛍光管の管表面の塗膜は光学フィルタとして機能し、500nm付近より短波長の放射光を遮断し、それより長波長域の放射光を効率よく透過するようにしている。水酸基含有アクリル樹脂とベンズイミダゾロンの混合物、エポキシ樹脂、クリヤー、硬化剤(イソシアネート化合物)、シンナーの混合物が、蛍光管に塗布されることで、このような塗膜が形成される。
上記のような塗膜が施されてなる光源200は、放射波長が545nm付近、及び、575nm付近の2つに局所的な放射ピークを有するものが好ましいが、光源200は放射波長で500nm付近から650nm付近に2つの局所的な放射ピークを有するものであってもよい。
545nm付近の放射強度をAとし、575nm付近の放射強度をBとしたとき、本発明に係る光源200においては、比率A/Bが、0.7<A/B<1.7の関係を有することが好ましい。
本発明に係る光源200としては、1.0<A/B<1.5の関係を有することがより好ましい。さらに、本発明に係る光源200としては、1.1<A/B<1.4の関係を有することがさらにより好ましい。
上記のように、放射波長が545nm付近、及び、575nm付近の2つに局所的な放射ピークを有する光源200によれば、コナジラミ類、アザミウマ類、アブラムシ類(有翅)、ハモグリバエ類、ハエ類を効率的に誘引することができる。
捕虫器100において、円錐状部150の底部における3箇所からは、不図示の支持棹が延出しており、これらの支持棹ですり鉢状反射部160と円錐状部150が連結されるようになっている。また、すり鉢状反射部160の底部からは鉛直下方に円筒部170が延在している。
円錐状部150の底部とすり鉢状反射部160との間における、支持棹以外の空間(吸引空間)は間隙となっており、この間隙から害虫を吸引したり、光源200からの光が下方側に進入したりすることができるようになっている。
すり鉢状反射部160と円錐状部150との間の隙間である吸引空間には、目合いが5mm未満の格子状部材が配されている。このような格子状部材として、本実施形態では、円錐状部150の外周縁に沿った穴部145が形成されたメッシュ140が用いられる。図2はすり鉢状反射部160と円錐状部150の間の吸引空間に配されるメッシュ140を抜き出して示す図である。
作物の交配にミツバチやマルハナバチが用いられる場合、仮にメッシュ140が設けられていないと、ミツバチやマルハナバチが吸引空間から捕獲ネット310で捕獲されてしまうこととなり、作物の交配に影響を及ぼしてしまう可能性がある。本発明に係る捕虫器100では、吸引空間にメッシュ140を配し、かつ、その目合いは5mm未満とすることで、対象害虫より体長が大きいハチが吸引空間を通過し、捕獲ネット310で捕獲されることを防ぐようにしている。すなわち、当該メッシュ140をハチの保護用網として機能する。
すり鉢状反射部160、円錐状部150、円筒部17などは鉄やステンレスなどの材料を用いて構成する。さらに、これらの各部材には耐候性を有する塗料を塗膜することが好ましい。
また、メッシュ140も、マンセル表色系で色相が10YR〜10Yの範囲内の同系色の発色を有するものが好ましい。
特に、すり鉢状反射部160、円錐状部150には、マンセル表色系で色相が10YR〜10Yの範囲内の同系色の塗膜を施すことが好ましい。マンセル表色系で色相が10YR〜10Yの範囲内の同系色は、感覚的にはオレンジ・黄色の中間色〜黄色に相当するものである。
本発明に係る捕虫器100においては、コナジラミ類、アザミウマ類、アブラムシ類(有翅)、ハモグリバエ類、ハエ類などの対象害虫を、450nm以上の長波長域の光源200、より詳細には、放射波長が545nm付近、及び、575nm付近の2つに局所的な放射ピークを有する光源200で誘引し、捕虫する。さらに、本発明に係る捕虫器100は、マンセル表色系で色相が10YR〜10Yの範囲内の同系色の塗膜を有するすり鉢状反射部160、円錐状部150を備えており、光源200との相乗効果により、対象害虫を効率的に誘引することで、対象害虫の捕獲・駆除確率を向上し、農作物の生産量を増大させる。
円筒部170内においては、不図示のモーターにより回転駆動するファン190が設けられている。上記のファン190が回転することで、円錐状部150とすり鉢状反射部160と間のメッシュ140の箇所において、すり鉢状反射部160内の鉛直下方に吸引する気流を発生させる。
ファン190によって発生される、すり鉢状反射部160の開口から円筒部170内に吸引する気流によって、光源200で誘引された害虫は、円筒部170を介して捕獲ネット310へと導かれる。
光源200が発光することで、光源200の鉛直下方に配されている円錐状部150の斜線部が反射面として機能することによって、反射光r1が形成されるようになっている。
また、光源200が発光することで、光源200の鉛直下方に配されているすり鉢状反射部160の内面部が反射面として機能することによって、反射光r2が形成されるようになっている。
また、光源200が発光することで、円筒部170の下方からの照射光tが形成されるようになっている。照射光tによりすり鉢状反射部160の下方のエリアにいる害虫も誘引光源によって誘引され、ファン190で発生する気流により吸引され捕獲される。
また、光源200の発光と共に、すり鉢状反射部160、円錐状部150におけるマンセル表色系で色相が10YR〜10Yの範囲内の同系色の塗膜により、相乗効果で対象害虫を効率的に誘引することできる。
このように、本発明に係る捕虫器100によれば、透明長尺円筒部180を介して下方側のエリアにも、光源200からの光が到達するので、当該エリアにいる害虫が光源200によって誘引されて、捕獲・駆除されるので、害虫の駆除確率をより高めることが可能となり、害虫による果樹、野菜、作物への被害を抑制することができるようになる。
また、照射光tは日照時間の増加と同様の作用を作物に与えるために、作物の生産量増加にも寄与し得るものである。
なお、本実施形態においては、光源200は略ドーナツ状の形態をなすものとして説明しているが、本発明に係る捕虫器100においては、光源の形状がこれに限定されるものではない。
本発明に係る捕虫器100においては、捕獲ネット310の網目(の目合い)が0.1mm〜0.3mm程度のものを用いるのがよい。或いは、捕獲ネット310の網目(の目合い)が異なるものを二重にして用いるようにすることもできる。
なお、アザミウマ類を、捕獲する捕獲ネット310の網目(の目合い)は0.13mmとすることが好ましい。また、アザミウマ類以外の虫には、捕獲ネット310の網目(の目合い)は0.2mm×0.4mm程度とすることが好ましい。
例えば、捕獲ネット310としては、網目(の目合い)が0.1mm〜0.3mm程度のものと、網目(の目合い)が5mm程度のものを二重にすることも好適な実施形態である。比較的大型の昆虫が捕獲されてしまったような場合でも、目が粗い箇所が当該昆虫に食い破られ穴ができことはないので、捕獲した害虫が前記ネットから逃げてしまうことがなく、害虫の駆除確率をより高めることが可能となり、害虫による果樹、野菜、作物への被害を抑制することができる。
本実施形態においては、捕虫器100を吊下線110により吊り下げて、仮想軸OO’が鉛直方向と平行となる設置形態で説明したが、果樹、野菜、作物の種類によっては、捕虫器100の仮想軸OO’が水平と平行となるように、捕虫器100を設置する形態で利用することもできる。
以下、本発明の実施形態に係る光源200の効果を検証したので、これについて説明する。図3は本発明の第1実施形態に係る光源200の効果を検証するための構成を説明する図である。
図3に示す構成により光源200における放射強度の最適な比率が検証された。
図3においては、光源200から3mの距離で上方1mの場所にオンシツコナジラミの成虫を200匹入れた容器が設置された。当該容器の一面には、虫が自由に出入りすることができるメッシュ材が配された。オンシツコナジラミは予め飼育されたものが用いられた。
当該一面は光源側に向いており、オンシツコナジラミは光源200側のみから飛翔できるようにされている。光源200に近づいたオンシツコナジラミは、捕虫器100で吸引し、捕獲ネット310に取り込む。前記の容器及び捕虫器100を設置してから4時間後の捕虫数を調べた。実験は25℃の暗室で行った。この結果を表1に示す。
Figure 0006785284
表1に示すように545nm付近の放射強度をAとし、575nm付近の放射強度をBとしたとき、比率A/Bが1.2であるときの捕虫数が最も高かったので、A/B=1.2における捕虫数を1として規格化を行った。
本発明に係る光源200においては、表1を参照すると、比率A/Bが0.7<A/B<1.7の関係を有していれば、捕虫器100による対象害虫の捕獲が可能であることがわかる。
さらに、本発明に係る光源200として、1.0<A/B<1.5の関係を有すると、A/B=1.2における捕虫数の8割以上の捕虫数を実現できる。
さらに、本発明に係る光源200として、1.1<A/B<1.4の関係を有すると、A/B=1.2における捕虫数の9割以上の捕虫数を実現できる。
以上、本発明に係る捕虫器100は、コナジラミ類、アザミウマ類、アブラムシ類(有翅)、ハモグリバエ類、ハエ類などの対象害虫を、450nm以上の長波長域の光源、より詳細には、放射波長が545nm付近、及び、575nm付近の2つに局所的な放射ピークを有する光源で誘引し、捕虫する。さらに、本発明に係る捕虫器100は、マンセル表色系で色相が10YR〜10Yの範囲内の同系色の塗膜を有するすり鉢状反射部160、円錐状部150を備えており、光源との相乗効果により、対象害虫を効率的に誘引することで、対象害虫の捕獲・駆除確率を向上し、農作物の生産量を増大させることができる。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図4は本発明の第2実施形態に係る捕虫器100の概要を説明する図である。
捕虫器100を夜間に使用する際、作物への光の照射を抑制する必要がある作物がある。例えば、キク、或いはイチゴといった作物では、夜間における捕虫器100の光源200の点灯による、特に花芽分化への影響が多大である。
そこで、第2実施形態に係る捕虫器100では、捕虫器100下方側への光源200からの光の漏洩を極力抑制するように構成されている。
図5は図4の要部を抜き出して示す図であり、本発明の第2実施形態に係る捕虫器100における配置関係を説明する図である。図5において、線A−A’は、すり鉢状反射部160の上方における開口端部を含む水平面に含まれる線を示している。線B−B’は、光源200における鉛直方向の中間となる面が含まれる線を示している。
第2実施形態に係る捕虫器100においては、線B−B’が、線A−A’より鉛直下方に配されるように設置されることを特徴としている。さらに、このような配置と共に、捕獲ネット310としては黒色のものを用いて捕獲ネット310で光を吸収し、捕虫器100の下方側における作物への光の漏洩を極力抑制するようにされる。第2実施形態に係る捕虫器100によれば、作物側における照度は1lux以下とすることができる。
このような第2実施形態に係る捕虫器100は、第1実施形態で説明した効果に加え、捕虫器100の夜間点灯の影響を受けやすいキクやイチゴといった作物にも有効に利用することが可能となる。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図6は本発明の第3実施形態に係る捕虫器100の概要を説明する図である。第3実施形態に係捕虫器100が、第1実施形態のものと相違する点は、光源として光源200に加え、吊下線110の途中に補助光源220が配されている点である。
補助光源220は、第1実施形態で用いられていた光源200とは種別が異なるものである。第1実施形態で用いられていた光源200には、蛍光灯に所定の塗膜を施したものが用いられていた。一方、補助光源220にはLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)素子が用いられる。
補助光源220は例えば、吊下線110の途中に配することが好ましいが、このような補助光源220を配する態様はこれに限定されるものではない。補助光源220には複数個のLED素子223が用いられる。一般的にLED素子223から出射される光は指向性を有する。指向性があると効率的な害虫の誘引ができないために、LED素子223から出射された光を拡散するための光拡散手段として、透明な光拡散樹脂23が設けられている。本発明で用い得る光拡散手段は透明樹脂に限定されるものではなく、ガラスなどの導光材料も用いることができる。
第3実施形態に係る捕虫器100に含まれる補助光源220は、前述したようにLED素子223により構成されている。本発明に係る光源200の補助光源220に用いるLED素子223は、放射波長が565nm付近に最大放射ピークを有するものを用いることが好ましい。
上記のように、放射波長が545nm付近、及び、575nm付近の2つに局所的な放射ピークを有する光源200と、放射波長が565nm付近に最大放射ピークを有する補助光源220と、からなる光源によれば、コナジラミ類、アザミウマ類、アブラムシ類(有翅)、ハモグリバエ類、ハエ類をより効率的に誘引することができる。
また、第3実施形態に係る捕虫器100においては、捕獲ネット310は、第1捕獲ネット330と、この第1捕獲ネット330の外周を包囲する第2捕獲ネット340とからなっている。このように、捕獲ネット310を構成することは、本発明に係る捕虫器100の全ての実施形態に適用することができる。第1捕獲ネット330の網目は、第2捕獲ネット340の網目と同じであることが好ましい。
本発明に係る捕虫器100においては、虫が活動的に飛翔しない温度条件(15℃〜20℃)以下では稼働されない。捕虫器100の稼働時に捕獲ネット310で捕獲された虫が、捕虫器100の非稼働時に逃げ出さないようにするために、捕獲ネット310の上方が、第1捕獲ネット330と第2捕獲ネット340とで二重構造となっている、所謂返し構造が採用されることは好ましい。
次に、本発明の実施形態に係る光源200に含まれる補助光源220の効果を検証したので、これについて説明する。図7は本発明の第3実施形態に係る補助光源220の効果を検証するための構成を説明する図である。
図7に示す検証では、補助光源220を模擬する、各種波長のLED素子によりオンシツコナジラミの誘引効果を調査した。
平板に12個のLED素子223を固定し、その上に粘着スプレーを吹き付けた透明なラップを取り付ける。LED素子223に誘引されて、当該ラップに粘着し捕獲されたオンシツコナジラミの捕虫数を調べた。
LED素子223から3mの距離で上方1mの場所にオンシツコナジラミの成虫を200匹入れた容器を設置した。当該容器の一面には、虫が自由に出入りすることができるメッシュ材が配された。オンシツコナジラミは予め飼育されたものが用いられた。
当該一面は光源側に向いており、オンシツコナジラミは光源側のみから飛翔できるようにされている。
光源側に飛来したオンシツコナジラミは、前記の粘着スプレー由来の粘着材にトラップされる。前記の容器及び光源を設置してから4時間後の捕虫数を調べた。実験は25℃の暗室で行った。この結果を表2に示す。
Figure 0006785284
表2に示すように補助光源220のピーク波長が565nmであるときに、捕虫数が最も高かった。このときの捕虫数を1として規格化を行った。
本発明に係る補助光源220としては、表2の結果が示すように、補助光源220のピーク波長が565nmであるものを用いたときが最善の実施形態となる。
なお、本明細書の説明で、例えば、補助光源220のピーク波長を、ピンポイント的に565nmとして言及する場合は、その波長の±15nm程度のずれも含まれるものとする。すなわち、表2によれば、補助光源220としては、放射波長が565nm付近(565nm±15nm)に最大放射ピークを有するときに、捕虫数が最も高かったものと言い換えることもできる。本明細書では、上記のように、波長の範囲を、指定した波長とその波長の±15nmの範囲で規定しているが、このように範囲をもって波長を規定する理由は、同じ種類の虫であっても、地域等による多様性があり、光源の波長に対する補虫効果には例えば地域差が発生するからである。
また、表2によれば、本発明に係る補助光源220として、補助光源220のピーク波長が525nm〜612nmであるものを用いたときも十分な捕虫効果を期待することができる。
また、表2に示されるデータは、本発明において主として用いる光源である光源200を設計する際にも用いることができ、光源200にもピーク波長が525nm〜612nmであるものを用いることも好ましい。
以上、本発明に係る光源200、及びそのような光源200を用いた捕虫器100は、コナジラミ類、アザミウマ類、アブラムシ類(有翅)、ハモグリバエ類、ハエ類などの対象害虫を450nm以上の長波長域の光で効率的に誘引し、捕虫する。
そして、このような本発明に係る光源200、及びそのような光源200を用いた捕虫器100によれば、対象害虫を効率的に誘引することで、対象害虫の捕獲・駆除確率を向上し、農作物の生産量を増大させることができる。
第3実施形態に係る捕虫器100は、放射波長が545nm付近、及び、575nm付近の2つに局所的な放射ピークを有する光源200に加え、放射波長が565nm付近に最大放射ピークを有する補助光源220を用いることで、コナジラミ類、アザミウマ類、アブラムシ類(有翅)、ハモグリバエ類、ハエ類などの対象害虫をより効率的に誘引することで、対象害虫の捕獲・駆除確率を向上し、農作物の生産量をされに増大させることができる。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。これまで説明してきた実施形態では、光源200には、蛍光灯に所定の塗膜を施したものが用いられていた。本発明の第4実施形態に係る捕虫器100では、そのような塗膜を有する蛍光灯に代えて、LED素子を用いた光源200を採用している。第1実施形態乃至第3実施形態に係る捕虫器100に用いる光源200を、以下で説明するLED素子を用いた光源200に代えることができる。
以下、このようなLED素子を用いた光源200について説明する。図8は本発明の第4実施形態に係る捕虫器100に用いる光源200の構成を説明する図である。また、図9は本発明の第4実施形態に係る光源200の分光特性図である。
第4実施形態の光源200は、ドーナツ状の環状基材400と、この環状基材400の外周縁に配される複数のLED素子410と、環状基材400と複数のLED素子410とを包囲するように設けられる光拡散樹脂430と、を有している。光拡散樹脂430は、LED素子410で照射される指向性のある光を分散・拡散する略透明な光拡散手段である。このような光拡散手段としては、光拡散樹脂430に代えてガラス材料などを用いることもできる。
複数のLED素子410には、放射波長が545nm付近に最大放射ピークを有するLED素子、及び575nm付近に最大放射ピークを有するLED素子の2種類のLED素子が少なくとも含まれている。なお、本発明は、LED素子410として、560nm付近又は565nm付近に最大放射ピークを有する1種類のLED素子を用いても実現し得ることを付言しておく。
図9は、上記のような2種類のLED素子により構成された第4実施形態で用いられる光源200の分光特性を示しており、光源200全体としては545nm付近及び575nm付近に局所的なピークを有している。また、図9において、光源200全体の545nm付近の放射強度をAとし、575nm付近の放射強度をBとしたとき、比率A/Bが0.7<A/B<1.7の関係を有するように、2種類のLED素子を配するようにしている。
第4実施形態で示すように、1種類、或いは2種類以上のLED素子を用いた光源200により、白色の蛍光灯に塗膜を施した光源(第1実施形態のもの)を代替することも可能である。第4実施形態の光源200を用いた捕虫器100によれば、低消費電力・長寿命の光源200を利用しつつ、先の効果を享受することが可能となる。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。これまで説明してきた実施形態では、主要な光源としては放射波長が545nm付近、及び、575nm付近の2つに局所的な放射ピークを有するものを用いるようにしていた。このような2つに局所的な放射ピークを有するものを用いるのに代え、第5実施形態に係る捕虫器100で用いる光源200は、放射波長が545nm付近、及び、575nm付近(又は585nm付近)の平均の放射波長、すなわち、560nm付近又は565nm付近に最大放射ピークを有する光源を用いるようにしている。
より詳しくは、第5実施形態で用いる光源200は、放射波長が450nm以上の長波長域で560nm付近又は565nm付近に最大放射ピークを有している。
図10は本発明の第5実施形態に係る捕虫器100に用いる光源200の分光特性図である。このような分光特性を有する光を放射するものとしては、LED素子を挙げることができる。一方、560nm付近(又は565nm付近)に最大放射ピークを有する、このような分光特性を有する光を放射する蛍光灯は、蛍光灯の管内壁に塗布する蛍光体を適切に選定することで実現することが可能である。
このような560nm(又は565nm付近)に最大放射ピークを有する、第5実施形態の光源200を用いることによっても、本発明に係る捕虫器100を構成することが可能であり、このような捕虫器100によっても、先の効果を享受することが可能となる。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図6で示した第3実施形態に係る捕虫器100では、放射波長が545nm付近、及び、575nm付近の2つに局所的な放射ピークを有する主となる光源200と、放射波長が565nm付近に最大放射ピークを有する補助光源220との2つの光源を用いるようにしていた。
一方、第6実施形態に係る捕虫器100で用いる光源200としては、放射波長が545nm付近、565nm付近、及び、575nm付近の3つに局所的な放射ピークを有するものを用いるようにする。
図11は本発明の第6実施形態に捕虫器100に用いる係る光源200の分光特性図である。このような分光特性を示す光源200は、放射波長が545nm付近に最大放射ピークを有するLED素子、放射波長が565nm付近に最大放射ピークを有するLED素子、及び575nm付近に最大放射ピークを有するLED素子の3種類のLED素子を組み合わせて構成することができる。
より詳しくは、第6実施形態で用いる光源200は、放射波長が500nm付近から650nm付近に3つの局所的な放射ピークを有するものである。さらに、3つの局所的な放射ピークは、545nm付近、565nm付近及び575nm付近にあり、545nm付近の放射強度をAとし、575nm付近の放射強度をBとしたとき、比率A/Bが0.7<A/B<1.7の関係を有するものである。
第6実施形態に係る光源200としては、1.0<A/B<1.5の関係を有することがより好ましい。さらに、第6実施形態に係る光源200としては、1.1<A/B<1.4の関係を有することがさらにより好ましい。
以上のような、放射波長が545nm付近、565nm付近、及び、575nm付近の3つに局所的な放射ピークを有する光源200を用いた第6実施形態に係る捕虫器100によれば、コナジラミ類、アザミウマ類、アブラムシ類(有翅)、ハモグリバエ類、ハエ類をより効率的に誘引することができる、という効果を有する。また、このような捕虫器100によれば、低消費電力・長寿命の光源200を利用しつつ、先の効果を享受することが可能となる。
なお、第6実施形態に係る光源200としては、3種類のLED素子を組み合わせて構成する例で説明を行ったが、このような光源は、蛍光灯単体や塗膜を施した蛍光灯によっても実現することができる。
以上、本発明に係る捕虫器は、コナジラミ類、アザミウマ類、アブラムシ類(有翅)、ハモグリバエ類、ハエ類などの対象害虫を、450nm以上の長波長域の光源、より詳細には、450nm以上の長波長域で560nm付近に最大放射ピークを有する光源で誘引し、捕虫する。さらに、本発明に係る捕虫器は、マンセル表色系で色相が10YR〜10Yの範囲内の同系色の塗膜を有するすり鉢状反射部を備えており、光源との相乗効果により、対象害虫を効率的に誘引することで、対象害虫の捕獲・駆除確率を向上し、農作物の生産量を増大させることができる。
以下、本発明に用いる光源200についてまとめる。図12は本発明に係る捕虫器100に用いる係る光源200及び補助光源220の分光特性の模式図である。
図12(A)乃至図12(E)は光源200に好ましい分光特性を示しており、図12(F)は補助光源220に好ましい分光特性を示している。
光源200の図12(A)乃至図12(E)に示す分光特性は蛍光灯とLED素子の双方により実現することが可能である。一方、補助光源220の図12(F)に示す分光特性は基本的にLED素子により実現される。
図12(A)は、450nm以上の長波長域で560nm(又は565nm付近)に最大放射ピークを有する分光特性である。虫に対して有効な走光性を生じさせる光は基本的には、560nm(又は565nm付近)に最大放射ピークを有するものである。
図12(B)は、545nm付近、及び、575nm付近(又は585nm付近)の2つに局所的な放射ピークを有する分光特性のパターンである。本パターンの場合、ピークである545nmと、575nm(又は585nm)の算術平均が、560nm(又は565nm)となっており、このようなパターンの分光特性も、虫に対して有効な走光性を生じさせる。
図12(C)は、波長α[nm] 付近、及び、波長β[nm]付近の2つに局所的な放射ピークを有する分光特性のパターンである。ただし、(α+β)/2=560(又は565)を満たすα、βが選択される。このパターンでも、2つのピーク波長(α、β)の平均値が、560nm(又は565nm)となる。
図12(D)は、545nm付近、560nm付近(又は565nm付近)、及び、575nm付近(又は585nm付近)の3つに局所的な放射ピークを有する分光特性のパターンである。3つピークのうち、両脇のピーク波長の平均値は、560nm(又は565nm)となっている。
図12(E)は、波長α[nm] 付近、560nm付近(又は565nm付近)及び、波長β[nm]付近の3つに局所的な放射ピークを有する分光特性である。ただし、(α+β)/2=560(又は565)を満たすα、βが選択される。このパターンにおいても、2つのピーク波長(α、β)の平均値が、560nm(又は565nm)となる。
図12(F)は、560nm(又は565nm付近)に最大放射ピークを有する分光特性である。補助光源220の分光特性としても、560nm(又は565nm付近)に最大放射ピークを有することが、虫に対して有効な走光性を生じさせる上で重要である。
100・・・捕虫器
110・・・吊下線
140・・・メッシュ
145・・・穴部
150・・・円錐状部
151・・・固定金具
160・・・すり鉢状反射部
170・・・円筒部
190・・・ファン
200・・・光源
220・・・補助光源
223・・・LED素子
230・・・光拡散樹脂(光拡散手段)
310・・・捕獲ネット
330・・・第1捕獲ネット
340・・・第2捕獲ネット
400・・・環状基材
410・・・LED素子
430・・・光拡散樹脂(光拡散手段)

Claims (7)

  1. コナジラミ類、アザミウマ類、アブラムシ類(有翅)、ハモグリバエ類の虫に対して走光性を生じさせる光を放射する光源と、
    前記光源の鉛直下方に配され、前記光源から発せられた光を鉛直上方に反射するすり鉢状反射部と、
    前記すり鉢状反射部の鉛直下方に配され、前記すり鉢状反射部から延在する円筒部と、
    前記すり鉢状反射部から前記円筒部内に吸引する気流を発生させるファンと、
    前記ファンの鉛直下方に配され、虫を捕獲するネットと、からなる捕虫器であって、
    前記光源は放射波長が545nm付近、及び、575nm付近に2つの局所的な放射ピークを有し、
    前記すり鉢状反射部はマンセル表色系で色相が10YR〜10Yの範囲内の同系色の塗膜を有し、
    前記光源の545nm付近の放射強度をAとし、575nm付近の放射強度をBとしたとき、比率A/Bが0.7<A/B<1.7の関係を有することを特徴とする捕虫器。
  2. コナジラミ類、アザミウマ類、アブラムシ類(有翅)、ハモグリバエ類の虫に対して走光性を生じさせる光を放射する光源と、
    前記光源の鉛直下方に配され、前記光源から発せられた光を鉛直上方に反射するすり鉢状反射部と、
    前記すり鉢状反射部の鉛直下方に配され、前記すり鉢状反射部から延在する円筒部と、
    前記すり鉢状反射部から前記円筒部内に吸引する気流を発生させるファンと、
    前記ファンの鉛直下方に配され、虫を捕獲するネットと、からなる捕虫器であって、
    前記光源は放射波長が545nm付近、565nm付近及び575nm付近に3つの局所的な放射ピークを有し、
    前記すり鉢状反射部はマンセル表色系で色相が10YR〜10Yの範囲内の同系色の塗膜を有し、
    前記光源の545nm付近の放射強度をAとし、575nm付近の放射強度をBとしたとき、比率A/Bが0.7<A/B<1.7の関係を有することを特徴とする捕虫器。
  3. 前記光源は、塗膜を施した蛍光灯からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の捕虫器。
  4. 前記光源は、LED素子からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の捕虫器。
  5. 前記すり鉢状反射部における虫の吸引空間には、目合いが5mm未満のメッシュが配されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の捕虫器。
  6. 放射波長が565nm付近に最大放射ピークを有する補助光源をさらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の捕虫器。
  7. 前記補助光源は、LED素子からなることを特徴とする請求項6に記載の捕虫器。
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