JP6783973B2 - 封止剤 - Google Patents

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Description

本発明は、封止剤に関する。
近年、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子という)などの表示素子を用いた表示装置が開発されているが、表示素子は一般的に、大気中の水分や酸素によって劣化しやすい。そのため、各種表示装置では、表示素子が封止層によって封止(面封止)されていることが一般的である。また、太陽電池素子や、半導体素子等の各種素子を封止するためにも封止剤は使用されている。
例えば有機EL素子等、各種素子を含む装置では、有機EL素子等の素子が、硬化性樹脂を含む封止剤の硬化物によって面封止されることがある。従来、封止剤は、スクリーン印刷法で塗布(印刷)することが一般的であった。しかしながら近年、装置のフレキシブル化を図るため、封止剤の硬化物(以下、「封止層」とも称する)を平坦化したり、薄膜化したりすることが求められている。そこで、封止剤をインクジェット法により塗布することが検討されている。封止剤をインクジェット装置で塗布する場合、長期にわたり、ノズルから安定して封止剤を吐出できることが求められる。また、インクジェット装置のヘッド部分に用いられている接着剤やゴム材料の膨潤を抑制し、装置へのダメージが少ないことが求められる。
ここで、インクジェット装置で塗布するための組成物として、エポキシ化植物油と、脂環式エポキシ基含有化合物と、オキセタン基含有化合物と、光カチオン重合開始剤とを含む、インクジェット組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。
特開2016−108512号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の面封止剤はインクジェット装置から安定して塗布することが難しかった。
また近年、タッチパネル付き表示装置が多く普及している。当該表示装置では、封止層によって封止された表示素子がタッチパネル等のセンサと近接して配置される。そして、封止層の厚みが薄くなると、表示素子とセンサとが干渉しやすくなり、表示装置の動作が不安定になりやすい。このような動作の不安定化を防止するためには、封止層の誘電率は低いことが望ましい。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、インクジェット法による塗布を長期にわたり安定に実施するのに適した封止剤の提供を目的とする。
本発明は、以下の封止剤を提供する。
[1](A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物と、(B)多官能オキセタン化合物と、(C)単官能グリシジルエーテルとを含む、封止剤。
[2]E型粘度計によって25℃、20rpmの条件で測定される粘度が8〜40mPa・sである、[1]に記載の封止剤。
[3]前記(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物が、下記式(I)で表されるエポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2−エチルヘキシルである、[1]または[2]のいずれかに記載の封止剤。
Figure 0006783973
[4]前記(C)単官能グリシジルエーテルが、フェニルグリシジルエーテル誘導体である、[1]〜[3]のいずれかに記載の封止剤。
[5]前記(C)単官能グリシジルエーテルにエチレン・プロピレン・ジエンゴム試験片を25℃で1週間浸漬した際に生じる、前記試験片の浸漬前後の重量変化率で表されるエチレン・プロピレン・ジエンゴムの膨潤率Aが5%以下である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の封止剤。
[6]前記(C)単官能グリシジルエーテルの、E型粘度計によって25℃、20rpmの条件で測定される粘度が35mPa・s以下である、[1]〜[5]のいずれかに記載の封止剤。
[7]前記封止剤にエチレン・プロピレン・ジエンゴム試験片を40℃で1週間浸漬した際に生じる、前記試験片の浸漬前後の重量変化率で表されるエチレン・プロピレン・ジエンゴムの膨潤率Bが10%以下である、[1]〜[6]のいずれかに記載の封止剤。
[8]前記封止剤を、波長395nmのUV−LEDランプを使用して、照度:1000mW/cm、積算光量:1500mJ/cmの条件下で紫外線硬化させた後、温度100℃で30分にわたり熱硬化させた硬化物の、周波数100kHzにおける誘電率が3.10以下である、[1]〜[7]のいずれかに記載の封止剤。
[9]表示素子用である、[1]〜[8]のいずれかに記載の封止剤。
[10]インクジェット法による塗布に用いられる、[1]〜[9]のいずれかに記載の封止剤。
[11]前記表示素子が、有機エレクトロルミネッセンス素子である、[10]に記載の封止剤。
本発明によれば、インクジェット法による塗布に適した封止剤を提供することができる。
1.封止剤
本発明の封止剤は、表示素子や太陽電池素子、半導体素子等の各種素子を面封止したり、液晶表示素子の液晶を封止したりするための封止剤である。当該封止剤は、(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物と、(B)多官能オキセタン化合物と、(C)単官能グリシジルエーテルとを含む。ただし、必要に応じてこれら以外の成分を含んでいてもよく、例えば、(D)カチオン重合開始剤、(E)各種添加剤等を含んでいてもよい。
本発明者らが鋭意検討した結果、(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物と、(B)多官能オキセタン化合物と、(C)単官能グリシジルエーテルとを適切に組み合わせることで、封止剤の粘度をインクジェット塗布に適した値とすることができる。また、インクジェット装置のインクジェットヘッド部に用いられている接着剤やゴム材料の膨潤を抑制することで、インクジェットヘッド部の変形を抑制して、長期にわたる安定した封止剤の吐出を可能にする。さらに封止剤の硬化物の誘電率を低減できることも見出された。
この理由は明らかではないが、以下のように推測される。インクジェット装置のヘッド部分に用いられる接着剤やゴム材料は、例えばEPDMゴムなどの極性の低い材料で構成されていることが多い。これに対し、封止剤が(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物のような嵩高い構造の化合物を含むと、封止剤と極性の低いゴム材料等とが親和しにくくなり、当該ゴム材料の封止剤に対する膨潤率が低減しやすくなる。また、封止剤が(B)多官能オキセタン化合物を含むと、封止剤の粘度が低減しやすい。さらに封止剤が(C)単官能グリシジルエーテルを含むと、封止剤に対する接着剤やゴム材料などの膨潤率が低減しやすい。また、封止剤の硬化物の誘電率も低減しやすい。このような封止剤によれば、インクジェット法により、長期にわたり、平坦性が高く、厚みの薄い封止層を安定的に形成することが可能である。また、このような封止剤を用いて表示素子を封止した場合、当該表示素子がタッチパネル等のセンサと干渉し難くなり、センサと近接して配置することが可能となる。したがって、表示装置の薄型化が可能である。
なお、本発明の封止剤は、インクジェット法による塗布に特に適しているが、その塗布方法は、インクジェット法に制限されず、ディスペンサ、スクリーン印刷、スピンコート法等によって塗布することも可能である。
・(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物
(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物は、分子中に脂環式炭化水素構造およびエポキシ基をそれぞれ1以上有し、且つエチルヘキシル基を2以上有する化合物である限り、特に限定はない。エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物は、エチルヘキシル基を1つ有する脂環式エポキシ化合物よりも嵩高な構造であることから、インクジェットヘッド部に存在しうるゴム材料を膨潤させ難い。
(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物は、25℃において液状の化合物であることが好ましく、E型粘度計で25℃、20rpmの条件で測定される粘度が10〜500mPa・sであることが好ましく、30〜300mPa・sであることがより好ましい。(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物の粘度が当該範囲であると、封止剤の粘度が後述する範囲に収まりやすく、インクジェット法により安定して塗布しやすくなる。
(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物の分子量もしくは重量平均分子量は、100〜790であることが好ましく、140〜500であることがより好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値(ポリスチレン換算)である。(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物の分子量もしくは重量平均分子量が100以上であると、(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物がインクジェット装置内で揮発し難い。また、分子量もしくは重量平均分子量が790以下であると、(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物の粘度が過度に高まらず、ひいては封止剤の粘度を上述の範囲とすることができる。
また、(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物は、下記式(1)で表される酸素原子含有率が15%以上であることが好ましい。
酸素原子含有率(%)=1分子中の酸素原子の合計質量/重量平均分子量×100・・・(1)
(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物の酸素原子含有率が15%以上であると、当該化合物の極性を高くしうるため、インクジェット装置のヘッド部分に用いられる極性の低い接着剤やゴム材料(例えばEPDMゴムなど)と親和しにくくし、膨潤させにくくしうる。それにより、接着剤やゴム材料の劣化(装置へのダメージ)を低減できる。酸素原子含有率は、上記観点から、18%以上であることが好ましい。酸素原子含有率の上限値は、得られる封止層の誘電率が大きくなりすぎない程度であればよく、例えば30%以下であることが好ましい。
(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物の1分子中の酸素原子の合計質量は、GC−MS法、NMR法などにより当該脂環式エポキシ化合物の構造を特定し、当該化合物の1分子中の酸素原子の数を特定し、それに酸素原子の原子量を乗じて算出することができる。そして、(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物の酸素原子含有率は、得られた酸素原子の合計質量と、前述のGPC法により測定された重量平均分子量とを、前述の式(1)に当てはめて算出することができる。
(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物の酸素原子含有率は、例えば、分子中のエポキシ基の数や、酸素原子を有する基(例えば−CO−(カルボニル基)、−O−CO−O−(カーボネート基)、−COO−(カルボニルオキシ基またはエステル基)、−O−(エーテル基)、−CONH−(アミド基)など)の数によって調整することができる。すなわち、酸素原子含有率を低減するためには、1分子中の酸素原子を有する基の数を少なくすることが好ましい。
(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物は、1つのシクロアルケンオキサイドを有し、2つのエチルヘキシル基のそれぞれが脂環構造に結合するものであることが好ましい。さらに、2つのエチルヘキシル基のそれぞれがエステル結合を介して脂環構造に結合するものであることがより好ましい。
このような化合物の具体例としては、下記式(I)で表される、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2−エチルヘキシルが挙げられる。
Figure 0006783973
上記エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2−エチルヘキシルの市販品の例には、サンソサイザーE−PS(新日本理科株式会社製)等が含まれる。
(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物の量は、封止剤の全質量に対して10〜50質量%であることが好ましい。(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物の量が10質量%以上であると、封止材の誘電率が低減しやすい。一方で、50質量%以下であると、封止剤の粘度が適当な値となり、インクジェットヘッド部分に用いられる接着剤やゴム材料の封止剤に対する膨潤率が低減しやすい。さらには(B)多官能オキセタン化合物の量が相対的に多くなり、誘電率が低くなりやすい。(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物の含有量は、封止剤の全質量に対して、10〜40質量%であることがより好ましく、15〜30質量%であることがさらに好ましい。
・(B)多官能オキセタン化合物
(B)多官能オキセタン化合物は、オキセタニル基を2以上有する、2官能以上の化合物であればよいが、分子量もしくは重量平均分子量が180以上であることが好ましい。また、前述の式(1)で表される酸素原子含有率が15%以上であることが好ましい。
(B)多官能オキセタン化合物の重量平均分子量が180以上であると、当該化合物の揮発性を低くすることができる。そのため、封止剤をインクジェット法で塗布する際の作業環境の悪化や被塗布物(表示素子)へのダメージを少なくすることができる。(B)多官能オキセタン化合物の重量平均分子量は、封止剤の揮発性を低くする観点から、190以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましい。重量平均分子量の上限は、封止剤のインクジェット法により塗布する際の吐出性を損なわない程度であればよく、例えば400以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量は、前述と同様の方法で測定することができる。
(B)多官能オキセタン化合物の酸素原子含有率が15%以上であると、当該化合物の極性を高くしうるため、インクジェット装置のヘッド部分に用いられる極性の低い接着剤やゴム材料などの劣化(装置へのダメージ)を低減できる。(B)多官能オキセタン化合物の酸素原子含有率は、装置へのダメージを低減する観点から、20%以上であることが好ましい。酸素原子含有率は、封止層の誘電率が大きくなりすぎないように観点から、例えば30%以下であることが好ましい。酸素原子含有率は、前述と同様に、定義および測定することができる。
当該(B)多官能オキセタン化合物は、25℃において液状の化合物であることが好ましく、E型粘度計で25℃、20rpmの条件で測定される粘度が1〜500mPa・sであることが好ましく、1〜300mPa・sであることがより好ましい。(B)多官能オキセタン化合物の粘度が当該範囲であると、封止剤の粘度が上述の範囲に収まりやすく、インクジェット法により安定して塗布しやすくなる。
(B)多官能オキセタン化合物の酸素原子含有率を高めるためには、例えば当該化合物の1分子中のオキセタニル基の数や、酸素原子含有基(例えば後述する式(B−1)のRで表されるポリオキシアルキレン基や、Rに含まれる酸素原子や、カルボニル基やスルホニル基などの酸素原子含有基)の数を多くすればよい。
(B)多官能オキセタン化合物は、下記式(II−1)または(II−2)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 0006783973
式(II−1)および(II−2)のRは、それぞれ水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、アリル基、アリール基、アラルキル基、フリル基またはチエニル基である。Rは、それぞれ2価の有機残基である。ただし、RおよびRは、式(II−1)および(II−2)で表される化合物の重量平均分子量および酸素原子含有率が前述の範囲を満たすように選択される。
炭素原子数1〜6のアルキル基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基が含まれる。アリール基の例には、フェニル、ナフチル、トリル、キシリル基が含まれる。アラルキル基の例には、ベンジル、フェネチル基が含まれる。
2価の有機残基の例には、アルキレン基、ポリオキシアルキレン基、フェニレン基、キシリレン基、下記式で示される構造が含まれる。
Figure 0006783973
式中のRは、酸素原子、硫黄原子、−CH−、−NH−、−SO−、−SO−、−C(CF−または−C(CH−である。
は、炭素原子数1〜6のアルキレン基またはアリーレン基である。アルキレン基の例には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、シクロヘキシレン基などの炭素原子数1〜15のアルキレン基が含まれる。ポリオキシアルキレン基は、炭素原子数が4〜30、好ましくは4〜8のポリオキシアルキレン基であることが好ましく、その例には、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基が含まれる。
一般式(II−2)で表される化合物の例には、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン等が含まれ、その市販品の例には、アロンオキセタンOXT−221(東亞合成株式会社製)等が含まれる。
(B)多官能オキセタン化合物の量は、封止剤の全質量に対して20〜80質量%であることが好ましい。(B)多官能オキセタン化合物の含有量が20質量%以上であると、封止剤の粘度を十分に低くしつつ硬化性を高めやすく、80質量%以下であると、(A)成分や(C)成分が少なくなりすぎることによる硬化性の低下を抑制しやすい。(B)多官能オキセタン化合物の含有量は、上記観点から、封止剤の全質量に対して25〜80質量%であることがより好ましく、30〜70質量%であることがさらに好ましい。
・(C)単官能グリシジルエーテル
封止剤は、(C)単官能グリシジルエーテルをさらに含む。(C)単官能グリシジルエーテルは、グリシジルエーテル基を1つのみ含む化合物であり、グリシジルエーテル基と結合する基は、脂肪族、脂環族、芳香族のいずれでもよい。(C)単官能グリシジルエーテルは嵩高い構造であることから、封止剤に含まれると、ゴム材料の封止剤に対する膨潤率が低下する。また、(C)単官能グリシジルエーテルは酸素含有量が低い化合物であることから、封止剤に含まれると、封止剤の硬化物の誘電率が低下する。
(C)単官能グリシジルエーテルの例には、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、エトキシブチルグリシジルエーテル、1−アリルオキシ−2,3−エポキシプロパン、1−(1’,1’−ジメチルプロパルギルオキシ)−2,3−エポキシプロパン、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、ナフチルグリシジルエーテル、フェニルフェノールグリシジルエーテル、ベンジルアルコールグリシジルエーテル等が含まれる。
(C)単官能グリシジルエーテルとしては、グリシジルエーテル基が芳香族と結合しているものが好ましく、さらには、当該芳香族基がフェニル基であるフェニルグリシジルエーテル誘導体がより好ましい。フェニルグリシジルエーテル誘導体の例には、フェニルグリシジルエーテル、オルソクレジルグリシジルエーテル、メタパラソクレジルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、ターシャリーブチルフェニルグリシジルエーテル、フェニルフェノールグリシジルエーテル等が含まれる。フェニルグリシジルエーテル誘導体は、単官能グリシジルエーテルの中では嵩高な構造であることから、膨潤率を低減する効果が発揮されやすい。
さらに(C)単官能グリシジルエーテルは、(C)単官能グリシジルエーテルにEPDM試験片を25℃で1週間浸漬した際に生じる、当該試験片の浸漬前後の重量変化率で表されるエチレン・プロピレン・ジエンゴムの膨潤率Aが5%以下であることが好ましい。このような(C)単官能グリシジルエーテルを用いることで、インクジェットヘッド部に使用されているEPDMゴムなどのゴム材料や接着剤の封止剤に対する膨潤率を低減させることができる。当該膨潤率Aは、後述の方法で測定することができる。
(C)単官能グリシジルエーテルは、E型粘度計によって25℃、20rpmの条件で測定される粘度が35mPa・s以下であることが好ましい。(C)単官能グリシジルエーテルの粘度が当該範囲であると、封止剤の粘度が後述する範囲に収まりやすく、インクジェット法により安定して塗布しやすくなる。(C)単官能グリシジルエーテルの粘度は、3〜30mPa・sであることがより好ましく、5〜25mPa・sであることがより好ましい。封止剤の粘度が3mPa・s以上であると、封止剤の硬化性が高まり、硬化物の誘電率を低減させやすくなる。
(C)単官能グリシジルエーテルの量は、封止剤の全質量に対して5〜50質量%であることが好ましい。(C)単官能グリシジルエーテルの量が5質量%以上であると、インクジェット装置のヘッド部分に用いられる接着剤やゴム材料の、封止剤に対する膨潤率が低減しやすい。一方で、50質量%以下であると、硬化物の誘電率が低くなりやすい。(C)単官能グリシジルエーテルの含有量は、封止剤の全質量に対して、10〜40質量%であることがより好ましく、15〜30質量%であることがさらに好ましい。
・(D)カチオン重合開始剤
封止剤は、(D)カチオン重合開始剤をさらに含んでいてもよい。(D)カチオン重合開始剤は、紫外線などの光照射によりカチオン重合を開始可能な酸を発生する光カチオン重合開始剤であってもよく、加熱によって酸を発生する熱カチオン重合開始剤であってもよい。封止剤は、光カチオン重合開始剤のみを含んでいてもよく、熱カチオン重合開始剤のみを含んでいてもよく、両方を含んでいてもよい。また、封止剤は、(D)カチオン重合開始剤を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。ただし加熱による素子へのダメージを低減する、すなわち光によって封止剤を硬化させることが好ましく、光カチオン重合開始剤を一種以上含むことが好ましい。
光カチオン重合開始剤の例には、アニオン部分がBF 、(RPF6−n(Rは有機基、nは1〜5の整数)PF 、SbF 、またはBX (Xは、少なくとも2つ以上のフッ素またはトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基)である、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族アンモニウム塩等が含まれる。
芳香族スルホニウム塩の例には、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラフルオロボレート等が含まれる。
芳香族ヨードニウム塩の例には、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が含まれる。
芳香族ジアゾニウム塩の例には、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、フェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、フェニルジアゾニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が含まれる。
芳香族アンモニウム塩の例には、1−ベンジル−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート等が含まれる。
光カチオン重合開始剤の市販品の例には、Irgacure250、Irgacure270、Irgacure290(BASF社製)、CPI−100P、CPI−101A、CPI−200K、CPI−210S、CPI−310B、CPI−400PG(サンアプロ社製)、SP−150、SP−170、SP−171、SP−056、SP−066、SP−130、SP−140、SP−601、SP−606、SP−701(ADEKA社製)が含まれる。中でも、Irgacure270、Irgacure290、CPI−100P、CPI−101A、CPI−200K、CPI−210S、CPI−310B、CPI−400PG、SP−150、SP−170、SP−171、SP−056、SP−066、SP−601、SP−606、SP−701等のスルホニウム塩が好ましい。
(D)カチオン重合開始剤の量は、封止剤全体の質量に対して0.1〜10質量%であることが好ましい。(D)カチオン重合開始剤の量が0.1質量%以上であると、封止剤の硬化性を高めやすく、10質量%以下であると、封止剤の硬化物の着色を抑制しやすい。(D)カチオン重合開始剤の量は、封止剤全体の質量に対して0.1〜5質量%であることがより好ましく、0.1〜3質量%であることがさらに好ましい。
・(E)その他の成分
本発明の封止剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述した以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分の例には、芳香族エポキシ化合物、増感剤、シランカップリング剤、レベリング剤等が含まれる。
芳香族エポキシ化合物の例には、芳香環を含むアルコール(多価アルコールを含む)のグリシジルエーテルが含まれる。芳香族エポキシ化合物の例には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールO型エポキシ樹脂、2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂等が含まれる。封止剤は、芳香族エポキシ化合物を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
芳香族エポキシ化合物の酸素原子含有率や重量平均分子量は、特に制限されないが、化合物の揮発性や、封止剤の硬化物の誘電率を低減するとの観点から、上述の式(1)で表される酸素原子含有率が10%以上30%以下であることが好ましく、重量平均分子量は100以上であることが好ましい。
ただし、封止剤が、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂や、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を多く含むと、その粘度が高くなりやすい。また、封止剤が芳香族エポキシ樹脂を多く含むと、封止剤の硬化物が着色しやすい。したがって、芳香族エポキシ樹脂の含有量は、封止剤の粘度や硬化物の着色に影響が少ない程度に調整されていることが好ましい。
増感剤は、上述の(D)カチオン重合開始剤の重合開始効率をより向上させて、封止剤の硬化反応をより促進させる機能を有する。増感剤の例には、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物や、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、9,10−ジブトキシアントラセン等が含まれる。封止剤は、増感剤を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
シランカップリング剤は、封止剤と被封止物との接着性を高める。シランカップリング剤は、エポキシ基、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアネート基などの反応性基を有するシラン化合物とすることができる。そのようなシラン化合物の例には、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が含まれる。封止剤は、シランカップリング剤を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
レベリング剤は、封止剤の塗膜の平坦性を向上させる。レベリング剤の例には、シリコーン系、アクリル系、フッ素系のものが含まれる。レベリング剤の市販品の例には、BYK−340、BYK−345(いずれもビックケミー・ジャパン社製)、サーフロンS−611(AGCセイミケミカル社製)等が含まれる。封止剤は、レベリング剤を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
(E)他の成分の合計量は、封止剤の揮発を抑制し、かつ装置へのダメージを低減する観点から、封止剤の全質量に対して20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
・封止剤の物性
(粘度)
封止剤の、E型粘度計により25℃、20rpmで測定される粘度は、8〜40mPa・sであることが好ましく、10〜30mPa・sであることがより好ましく、11〜28mPa・sであることがさらに好ましく、11〜25mPa・sであることが最も好ましい。封止剤の粘度が上記範囲であると、封止剤をインクジェット装置から吐出しやすくなる。また、塗布後に過度に濡れ広がらず、所望の厚みの硬化物(封止層)を形成しやすくなる。
(EPDMの膨潤率B)
封止剤に対するエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)の膨潤率(以下、EPDM膨潤率Bともいう)は10.0%以下であることが好ましく、9.5%以下であることがより好ましく、9.0%以下であることがさらに好ましい。EPDM膨潤率Bが上記範囲内であると、長期にわたりインクジェット装置を用いて封止剤を塗布しても、ヘッド部などのEPDMを含む部品のダメージを抑制することができる。
当該EPDM膨潤率は、以下の方法で測定した値である。
重さ0.56g(W)のエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM;株式会社カクダイ社製の「水栓パッキン 9074」の)試験片を用意して、そのまま状態で20mLの褐色スクリュー管に入れ、そこに封止剤10gを加えて、EPDM試験片を浸漬させる。スクリュー管に蓋をした後、40℃で1週間放置する。その後、EPDM試験片を封止剤から取り出し、IPA(イソプロピルアルコール)で洗浄後、その表面をウエスで拭き取った後、重量(W)を計測する。下記式に基づき、封止剤に浸漬した後のEPDM試験片の重量変化から、EPDM膨潤率Bを計算する。
EPDM膨潤率B=(W−W)/W×100
(誘電率)
封止剤を、波長395nmのUV−LEDで照度1000mW/cm、積算光量1500mJ/cmで硬化させ、さらに100℃で30分の熱硬化させた硬化物の周波数100kHzにおける誘電率は、3.10以下であり、3.00以下であることが好ましく、2.90以下であることがより好ましく、2.80以下であることがさらに好ましい。硬化物の誘電率が3.10以下であると、当該硬化物(封止層)によって例えば表示素子を封止した際に、硬化物の絶縁性が十分に高く、表示素子と、他の部材(例えばセンサ等)との干渉を抑制できる。当該誘電率は、LCRメーターHP4284A(アジレント・テクノロジー社製)を用いて、自動平衡ブリッジ法により測定することができる。
封止剤の硬化物の誘電率は、封止剤全体の酸素含有率によって調整することが可能である。酸素含有率は、30%以下とすることが好ましく、25%以下とすることがより好ましく、20%以下とすることがさらに好ましい。封止剤全体の酸素原子含有率は、(封止剤に含まれる酸素原子の合計質量/封止剤の全質量)×100(%)として算出することができる。封止剤に含まれる酸素原子の合計質量は、元素分析により酸素原子の含有割合を算出し、それに酸素原子の原子量を乗ずることで算出できる。
(光線透過率)
封止剤の硬化物の、厚み10μmにおける光線透過率は、波長380〜800nmにおける光線透過率の平均値は、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。封止剤の硬化物の光線透過率が上記範囲であると、良好な光透過性を有するため、例えば有機EL素子の面封止剤として好適である。平均光線透過率は、例えば紫外可視分光光度計(SHIMADZU社製)を用いて、波長380〜800nmにおいて波長1nm毎に測定した光線透過率の平均値として測定することができる。
・封止剤の調製方法
封止剤は、上述の成分を混合し、例えばホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロールなどの混合機を用いて混合して得ることができる。なお、封止剤を安定に混合する観点では、(D)カチオン重合開始剤以外の成分を混合した後、(D)カチオン重合開始剤を混合することがより好ましい。
・封止剤の用途
上述の封止剤は、例えば、有機EL素子やLED素子、半導体素子、太陽電池素子等の各種素子の封止に好適である。ただし、その用途は、素子の面封止に限定されず、例えば液晶表示装置の液晶シール剤等としても用いることができる。また特に、光透過性に優れることから、表示素子用の面封止剤として好適である。
2.各種装置の製造方法
以下、上述の封止剤を用いて、各種素子を面封止する、各種装置の製造方法を説明する。ただし、上述の封止剤を用いた装置の製造方法は、当該方法に限定されない。当該各種装置の製造方法は、1)素子を準備する工程と、2)当該素子上に上述の封止剤を塗布し、素子を封止する工程と、を含んでいればよく、他の工程を含んでいてもよい。
1)の工程では、素子を準備する。通常、素子は基板上に配置される。基板は、ガラス基板であってもよいし、樹脂基板であってもよい。フレキシブルな表示装置を得る場合、樹脂基板(樹脂フィルム)であることが好ましい。
また、素子の種類は特に制限されず、半導体素子等であってもよいが、電気を光に変換するか、または光を電気に変換する素子であることが好ましい。このような素子の例には、有機EL素子やLED素子、太陽電池素子等が含まれる。中でも、素子は、有機EL素子であることが好ましい。素子が有機EL素子である場合、有機EL素子は、通常、反射画素電極層と、有機EL層と、透明対向電極層とを含む。なお、有機EL素子は、必要に応じて他の機能層をさらに含んでいてもよい。
2)の工程では、基板に配置された素子を覆うように、上述の封止剤をインクジェット法で塗布する。上述の封止剤をインクジェット法で塗布することにより、平坦性が高く、厚みの薄い塗膜を高速で形成することができる。
その後、素子上に塗布した封止剤を硬化させて、硬化物層を得る。封止剤の硬化は、光硬化であることが好ましい。光硬化には、キセノンランプ、カーボンアークランプ等の公知の光源を用いることができる。また、照射量は、封止剤を十分に硬化できる程度であれば特に制限されず、例えば、波長300〜400nmの光を、300〜3000mJ/mの積算光量で照射することができる。
また、光硬化後に熱硬化を実施することで、硬化物の誘電率をさらに低下させることもできる。光硬化後にさらに実施する熱硬化は、素子へのダメージを生じさせずに、硬化性をさらに高める観点から、加熱温度を50〜120℃程度とすることが好ましく、加熱時間は1分〜1時間とすることが好ましい。
封止剤の硬化物層(封止層)の厚みは、素子を十分に封止でき、さらには平坦性の高い膜とできればよく、例えば1〜20μmであることが好ましく、3〜10μmとすることがより好ましい。
以下において、実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。これらの実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
1.封止剤の材料
(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物
・サンソサイザーE−PS(新日本理科株式会社製、下記式で表されるエポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2−エチルヘキシル、分子量:410)
Figure 0006783973
(B)多官能オキセタン化合物
・OXT−221(東亞合成株式会社製、アロンオキセタンOXT−221(下記式で表される3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン))
Figure 0006783973
(C)単官能グリシジルエーテル
・m,p−CGE(阪本薬品工業株式会社製、m,pクレジルグリシジルエーテル、エポキシ等量165g/eq、粘度:7mPa・s、EPDM膨潤率A:4.3%)
・ED−509S(株式会社ADEKA製、p−ターシャリーブチルフェニルグリシジルエーテル、エポキシ等量206g/eq、粘度:20mPa・s、EPDM膨潤率A:1.2%)
尚、上記EPDM膨潤率Aは、封止剤の代わりに(C)単官能グリシジルエーテルを使用し、評価温度を25℃にすること以外は後述のEPDM膨潤率Bと同様にして測定した値である。
(D)カチオン重合開始剤
・CPI−210S(サンアプロ社製、下記式で表されるジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート)
Figure 0006783973
:(RPF6−n (Rは有機基、nは1〜5の整数)
(E)増感剤
・UVS−1331(川崎化成工業社製、アントラキュアー UVS−1331(下記式で表される9,10−ジブトキシアントラセン))
Figure 0006783973
(F)エポキシ化脂肪酸エステル
・D−32(株式会社ADEKA製、アデカイザーD−32(エポキシ化脂肪酸オクチルエステル)、粘度:52mPa・s)
・D−55(株式会社ADEKA製、アデカイザーD−55(エポキシ化脂肪酸アルキルエステル)、粘度:20mPa・s)
2.封止剤の調製
表1に示される組成となるように、(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物と、(B)多官能オキセタン化合物と、(C)単官能グリシジルエーテルと、(E)増感剤と、(F)エポキシ化脂肪酸エステルとをフラスコに入れ、混合した。得られた混合物に、表1に示される量の(D)カチオン重合開始剤を入れて、さらに混合した。その後、粉状物が見えなくなるまで攪拌し、封止剤を得た。なお、表1に示す各成分の組成に関する単位は、質量部である。
3.評価
得られた封止剤の粘度、EPDM膨潤率Bおよび誘電率を以下のように評価した。
[粘度]
得られた封止剤の粘度を、E型粘度計(BROOKFIELD社製、LV−DV−II+)を用いて、25℃、20rpmで測定した。また、封止剤の塗布中、もしくは塗布後の様子から、以下のように評価した。
〇:インクジェット装置から安定して塗布することができ、所望の厚みの硬化物を作製できた
×:インクジェットの吐出時にミストが発生した
[EPDM膨潤率B]
重さ0.5g(W)のエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)試験片を用意してスクリュー管に入れ、そこに得られた封止剤を加えて、EPDM試験片を浸漬させた。スクリュー管に蓋をした後、40℃で1週間放置した。その後、EPDM試験片を封止剤から取り出し、その表面をウエスで拭き取った後、重量(W)を計測した。下記式に基づき、封止剤に浸漬した後のEPDM試験片の重量変化から、EPDM膨潤率を計算した。
EPDM膨潤率B=(W−W)/W×100
さらにEPDM膨潤率を、次の基準に従って評価した。
〇:EPDM膨潤率≦10%
×:EPDM膨潤率>10%
[誘電率]
得られた封止剤を、インクジェットカートリッジDMC−11610(富士フイルムDimatix社製)に導入した。そのインクジェットカートリッジをインクジェット装置DMP−2831(富士フイルムDimatix社製)にセットし、吐出状態の調整を行った後、無アルカリガラス上にアルミを100nmの厚みで蒸着した基板に、硬化後の厚みが10μmとなるように、5cm×5cmのサイズで塗布した。得られた塗膜を1分間、室温(25℃)で放置した後、波長395nmのUV−LEDで照度1000mW/cm、積算光量1500mJ/cmで硬化させた。得られた硬化物を「UV硬化のみ」の硬化物とした。
次に、「UV硬化のみ」の硬化物を100℃、30分の熱硬化に付した。得られた硬化物を「UV硬化+熱硬化」の硬化物とした。
得られた各硬化物について、インクジェット塗布面にアルミを100nmの厚みで蒸着し、LCRメーターHP4284A(アジレント・テクノロジー社製)にて、自動平衡ブリッジ法により条件100kHzにて誘電率を測定した。
さらに誘電率を、次の基準に従って評価した。
〇:誘電率≦3.10
×:誘電率>3.10
Figure 0006783973
表1に示されるように、(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物と、(B)多官能オキセタン化合物と、(C)単官能グリシジルエーテルとを含む実施例1および2の封止剤は、(C)単官能グリシジルエーテルの種類によらず、粘度およびEPDM膨潤率Bの評価が良好であり、さらにUV硬化後の封止剤の誘電率も3.10以下と良好であった。また、UV硬化後に熱硬化を行うことで、誘電率をさらに低下させることができた。
一方、(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物を含むが、(B)多官能オキセタン化合物および(C)単官能グリシジルエーテルを含まない比較例1の封止剤は、粘度が40.0mPa・sを超えて非常に高く、インクジェット装置による塗布を行うことができなかった。
また、(B)多官能オキセタン化合物を含むが、(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物および(C)単官能グリシジルエーテルを含まない比較例2の封止剤は、粘度が8mPa・s以上40mPa・s以下の範囲内で良好であるが、EPDM膨潤率Bが10質量%を超えて高かった。
さらに、(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物および(B)多官能オキセタン化合物を含むが、(C)単官能グリシジルエーテルを含まない比較例3の封止剤は、粘度が8mPa・s以上40mPa・s以下の範囲内で良好であるが、EPDM膨潤率Bは10質量%を超えて高かった。同様に、(B)多官能オキセタン化合物を含み、(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物の代わりに(D)エポキシ化脂肪酸エステルを含み、(C)単官能グリシジルエーテルを含む比較例4および5の封止剤は、粘度が8mPa・s以上40mPa・s以下の範囲内で良好であるが、EPDM膨潤率Bが10質量%を超えて高かった。
本出願は、2018年8月31日出願の特願2018−163001に基づく優先権を主張する。当該出願明細書に記載された内容は、全て本願明細書に援用される。
本発明の封止剤は、インクジェット装置のインクジェットヘッド部へのダメージを抑制することが可能であるため、インクジェット法により長期にわたり安定して塗布することができる。また、当該封止剤の硬化物の誘電率も低いため、当該封止剤によって表示素子を封止した場合、当該表示素子は、センサ等と近接して配置することが可能であり、薄型の表示装置や、設計の自由度が高い表示装置を作製可能である。

Claims (10)

  1. (A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物と、
    (B)多官能オキセタン化合物と、
    (C)単官能グリシジルエーテルと
    含む封止剤であって、
    前記封止剤の全質量に対して、前記(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物の含有量は10〜50質量%であり、前記(B)多官能オキセタン化合物の含有量は20〜80質量%であり、前記(C)単官能グリシジルエーテルの含有量は5〜50質量%であり、
    E型粘度計によって25℃、20rpmの条件で測定される粘度が8〜25mPa・sである、封止剤。
  2. 前記(A)エチルヘキシル基を2以上有する脂環式エポキシ化合物が、下記式(I)で表されるエポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2−エチルヘキシルである、
    請求項1に記載の封止剤。
    Figure 0006783973
  3. 前記(C)単官能グリシジルエーテルが、フェニルグリシジルエーテル誘導体である、
    請求項1または2に記載の封止剤。
  4. 前記(C)単官能グリシジルエーテルにエチレン・プロピレン・ジエンゴム試験片を25℃で1週間浸漬した際に生じる、前記試験片の浸漬前後の重量変化率で表されるエチレン・プロピレン・ジエンゴムの膨潤率Aが5%以下である、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の封止剤。
  5. 前記(C)単官能グリシジルエーテルの、E型粘度計によって25℃、20rpmの条件で測定される粘度が35mPa・s以下である、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の封止剤。
  6. 前記封止剤にエチレン・プロピレン・ジエンゴム試験片を40℃で1週間浸漬した際に生じる、前記試験片の浸漬前後の重量変化率で表されるエチレン・プロピレン・ジエンゴムの膨潤率Bが10%以下である、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載の封止剤。
  7. 前記封止剤を、波長395nmのUV−LEDランプを使用して、照度:1000mW/cm、積算光量:1500mJ/cmの条件下で紫外線硬化させた後、温度100℃で30分にわたり熱硬化させた硬化物の、周波数100kHzにおける誘電率が3.10以下である、
    請求項1〜6のいずれか1項に記載の封止剤。
  8. 表示素子用である、
    請求項1〜7のいずれか1項に記載の封止剤。
  9. インクジェット法による塗布に用いられる、
    請求項1〜8のいずれか1項に記載の封止剤。
  10. 前記表示素子が、有機エレクトロルミネッセンス素子である、
    請求項8または9に記載の封止剤。
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