以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1〜3には、本発明に従う構造とされたブラケット付き防振装置の第一の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、第一の取付部材としてのインナ軸部材12が、第二の取付部材としてのアウタ筒部材14に挿通されていると共に、それらインナ軸部材12とアウタ筒部材14が本体ゴム弾性体16によって相互に弾性連結された構造を有している。なお、以下の説明では、原則として、上下方向とは図2中の上下方向を、左右方向とは図2中の左右方向を、前後方向とは図3中の左右方向を、それぞれ言う。
より詳細には、インナ軸部材12は、金属などで形成された高剛性の部材であって、全体として上下方向に延びるロッド状とされている。更に、インナ軸部材12は、図4に示すように、略四角柱形状の連結部18を備えており、連結部18の下端面に開口するねじ穴20が連結部18の中心軸上を上下に直線的に延びて形成されている。更にまた、インナ軸部材12の上端部には、上方へ向けて次第に大径となる円形テーパ状の拡径部22が設けられており、拡径部22が連結部18の上側に一体形成されている。
アウタ筒部材14は、金属などで形成された高剛性の部材であって、全体として薄肉大径の略円筒形状を有している。また、アウタ筒部材14の上端部には、外周側へ屈曲して突出するフランジ状の上端突部24が一体形成されている一方、アウタ筒部材14の下端部には、内周側へ屈曲して突出する下端突部26が一体形成されている。
そして、インナ軸部材12がアウタ筒部材14に対して上下に貫通するように略同軸的に配置されており、インナ軸部材12とアウタ筒部材14が本体ゴム弾性体16によって相互に弾性連結されている。本体ゴム弾性体16は、全体として略円錐台形状を呈しており、内周部分にインナ軸部材12が貫通状態で配されて加硫接着されていると共に、下部の外周面がアウタ筒部材14の内周面に加硫接着されている。これにより、本体ゴム弾性体16は、インナ軸部材12とアウタ筒部材14を備えた一体加硫成形品として形成されている。なお、本体ゴム弾性体16の上部の外周面は、下方に向けて大径となるテーパ面とされている。
さらに、本体ゴム弾性体16には、大径凹所28が形成されている。この大径凹所28は、本体ゴム弾性体16の下面に開口しており、周壁部が上下方向で略直線的に延びる断面形状とされていると共に、底壁部が内周側へ向けて上傾する断面形状とされている。また、大径凹所28は、図3に示す前後方向の両側において、図2に示す左右方向の両側よりも軸直角方向寸法と深さ寸法が大きくされている。
なお、本体ゴム弾性体16は、図2,3に示すように、下面の外周端部がアウタ筒部材14の下端突部26の上面に加硫接着されており、大径凹所28がアウタ筒部材14の下端突部26よりも内周側で下方に向けて開口している。また、大径凹所28が形成されていることにより、本体ゴム弾性体16の内周面がインナ軸部材12における連結部18の上部と拡径部22の外周面に固着されていると共に、インナ軸部材12における連結部18の下部が本体ゴム弾性体16から露出している。
また、インナ軸部材12の下端部には、第一のブラケットとしてのインナブラケット30が取り付けられている。インナブラケット30は、金属などで形成された高剛性の部材であって、インナ軸部材12に固定される連結基部32と、連結基部32の側方に一体形成された取付端部34とを、一体的に備えている。
連結基部32は、上下方向と略直交して広がる板状とされており、略一定の幅寸法で左右方向へ延びている。また、連結基部32の幅方向両端部には、下方へ突出する補強壁部36がそれぞれ一体形成されている。更に、連結基部32には、上下に貫通する連結用ボルト孔38が形成されている。なお、連結基部32における連結用ボルト孔38の周囲が、上方および右方へ開口する凹所状に凹んでおり、インナ軸部材12の下端部を連結用ボルト孔38に対して位置決めし易くなっている。
インナブラケット30の取付端部34は、全体として厚肉の板状とされており、連結基部32の左端部から更に左方へ突出して設けられている。また、取付端部34は、図1に示すように、連結基部32から離れるに従って次第に幅広となっている。更に、幅広とされた取付端部34の端部は、幅方向の二か所において上面に凹部が形成されることで厚さ寸法が小さくされており、この薄肉とされた部分には上下に貫通する取付用ボルト孔40が形成されている。
かくの如き構造とされたインナブラケット30は、図2,3に示すように、連結基部32がインナ軸部材12の下方に配置されて、連結基部32の上面がインナ軸部材12の連結部18の下端面に重ね合わされる。そして、インナブラケット30の連結用ボルト孔38に挿通された連結用ボルト42が、インナ軸部材12のねじ穴20に螺着されることにより、インナ軸部材12とインナブラケット30が相互に固定されている。これにより、インナブラケット30の取付端部34がインナ軸部材12に対して側方(左方)へ延び出しており、アウタ筒部材14よりも左方に配置されている。
一方、アウタ筒部材14には、第二のブラケットとしてのアウタブラケット44が取り付けられている。アウタブラケット44は、金属などで形成された高剛性の部材であって、図1〜3に示すように、アウタ筒部材14に外嵌される装着筒部46と、装着筒部46に固定された取付部48と、それら装着筒部46および取付部48に固定されたストッパ筒部50とを、備えている。
装着筒部46は、大径の略円筒形状とされており、アウタ筒部材14が圧入固定されるようになっている。なお、アウタ筒部材14の上端突部24が装着筒部46の上面に当接することで、アウタ筒部材14と装着筒部46が軸方向で相互に位置決めされるようになっている。
取付部48は、装着筒部46の外周面に固着される第一取付金具52と、装着筒部46の外周面および第一取付金具52の上面に固着される第二取付金具54とを、備えている。
第一取付金具52は、装着筒部46を挟んで前後に配される一対の取付脚部56,56を備えていると共に、それら一対の取付脚部56,56の下端部が相互に連結された構造を有している。そして、第一取付金具52は、取付脚部56,56の上端部が装着筒部46の外周面に溶接などの手段で固定されることにより、装着筒部46に固定されている。なお、取付脚部56,56には、それぞれ第一ボルト孔58が形成されている。
第二取付金具54は、板状とされており、第一取付金具52における取付脚部56,56の上端面に重ね合わされていると共に、装着筒部46の外周面に対して半周以上の領域で重ね合わされて、溶接などの手段でそれら第一取付金具52および装着筒部46に固定されている。なお、第二取付金具54は、第一取付金具52および装着筒部46への固定部分から突出する取付片60が、突出先端に向けて上傾する板状とされて、厚さ方向に貫通する第二ボルト孔62を備えている。
ストッパ筒部50は、角部を丸められた略四角筒状とされて略左右方向に延びていると共に、上壁部を上下に貫通する略四角断面の貫通孔66を備えている。この貫通孔66の開口周縁部には、一対の当接壁部68,68が左右両側に形成されており、それぞれ板状とされたそれら当接壁部68,68が左右方向で対向して配置されている。なお、当接壁部68,68は、前後方向の幅寸法が貫通孔66の前後方向の内法寸法よりも小さくされており、貫通孔66の開口周縁部の前後中央部分に形成されている。
さらに、ストッパ筒部50の上壁部は、左右外側へ突出する当接部70,70を備えている。この当接部70は、図1に示すように、突出先端が装着筒部46の外周面に略沿うように湾曲しており、当接部70の上面が装着筒部46の下面に重ね合わされて、溶接などの手段で装着筒部46と固着されている(図1,2参照)。また、ストッパ筒部50の側壁部は、第一取付金具52における取付脚部56,56の前後内面に重ね合わされて、溶接などの手段で固着されている。なお、ストッパ筒部50の下壁部には、上下に貫通して連結用ボルト42を挿通可能なボルト挿通孔72が形成されており、アウタブラケット44をアウタ筒部材14に装着した状態において、インナ軸部材12とインナブラケット30を連結用ボルト42によって固定することが可能とされている。
そして、アウタブラケット44は、装着筒部46がアウタ筒部材14に対して下方から外嵌固定されることにより、アウタ筒部材14に装着されている。また、アウタブラケット44のアウタ筒部材14への装着状態において、インナブラケット30の連結基部32がアウタブラケット44のストッパ筒部50に左方から差し入れられており、ストッパ筒部50が連結基部32の周囲を囲むように外挿状態で配設されている。更に、アウタブラケット44のストッパ筒部50に形成された貫通孔66には、インナ軸部材12の連結部18が挿通されており、インナ軸部材12の下端部がストッパ筒部50に差し入れられたインナブラケット30の連結基部32に固定されている。
そして、インナブラケット30の連結基部32と、アウタブラケット44のストッパ筒部50との当接によって、インナ軸部材12とアウタ筒部材14の相対変位量が上下方向および前後方向で制限される。一方、インナ軸部材12の連結部18と、アウタブラケット44のストッパ筒部50における貫通孔66の内周面との当接によって、インナ軸部材12とアウタ筒部材14の相対変位量が左右方向で制限される。要するに、インナ軸部材12およびインナブラケット30とアウタブラケット44の当接によって、相互に直交する3方向の両側において、インナ軸部材12とアウタ筒部材14の相対変位量が制限されるようになっている。
より具体的には、インナブラケット30の連結基部32と、アウタブラケット44のストッパ筒部50の上壁部が当接することにより、インナ軸部材12のアウタ筒部材14に対する上側への相対変位量を制限するストッパとしてのリバウンドストッパ74が構成される。また、インナブラケット30の連結基部32と、アウタブラケット44のストッパ筒部50の下壁部が当接することにより、インナ軸部材12のアウタ筒部材14に対する下側への相対変位量を制限するストッパとしてのバウンドストッパ76が構成される。
さらに、インナブラケット30の連結基部32とアウタブラケット44のストッパ筒部50の前後側壁部が当接することにより、インナ軸部材12のアウタ筒部材14に対する前後方向の相対変位量を制限するストッパとしての前方ストッパ78と後方ストッパ80が構成される。
更にまた、アウタブラケット44の貫通孔66に挿通されたインナ軸部材12の連結部18が、アウタブラケット44の当接壁部68,68に当接することにより、インナ軸部材12のアウタ筒部材14に対する左右方向の相対変位量を制限するストッパとしての左方ストッパ82と右方ストッパ84が構成される。
ここにおいて、アウタブラケット44のストッパ筒部50に差し入れられるインナブラケット30の連結基部32には、ストッパゴム86が装着されている。ストッパゴム86は、図2,3に示すように、連結基部32の上下および前後の各面を覆う筒状部88を備えており、筒状部88が連結基部32に外挿状態で装着されるようになっている。
より具体的には、ストッパゴム86の筒状部88は、図5〜8にも示すように、全体として略四角筒状とされていると共に、上壁部90が下壁部92よりも右側(図2,6中の右側)へ突出しており、前後の側壁部94,94の右端が右側へ行くに従って上傾している。更に、筒状部88は、上壁部90の左右両端部に上側へ突出して厚肉とされた上方ストッパ部96をそれぞれ備えていると共に、前後側壁部94,94の左右中間部分に前後外側へ突出して厚肉とされた側方ストッパ部98,98を備えている。なお、上方ストッパ部96および側方ストッパ部98,98の各突出先端面と、下壁部92の下面には、筒状部88の周方向へ延びる凹溝100がそれぞれ形成されており、これによって後述するアウタブラケット44への当接時に当接初期のばねが柔らかく設定されている。
さらに、ストッパゴム86における筒状部88の上壁部90には、上下に貫通する挿通孔としてのインナ挿通孔102が形成されている。このインナ挿通孔102は、略角丸四角の孔形状とされて、左右方向の内法寸法がインナ軸部材12の連結部18の左右方向寸法よりも小さくされていると共に、前後方向の内法寸法がインナ軸部材12の連結部18の前後方向寸法よりも大きくされている。本実施形態では、インナ軸部材12の連結部18の左右方向寸法と前後方向寸法が略同じとされていることから、インナ挿通孔102の左右方向の内法寸法が前後方向の内法寸法よりも小さくされている。なお、ストッパゴム86の筒状部88の下壁部92には、後述する連結用ボルト42を挿通可能な円形のボルト挿通孔104が、上下に貫通して形成されている。
さらに、ストッパゴム86の筒状部88におけるインナ挿通孔102の開口周縁部には、一対の緩衝壁部106,106が一体形成されている。緩衝壁部106,106は、全体として略矩形板状のゴム弾性体であって、それぞれ左右方向と略直交して広がっている。そして、一対の緩衝壁部106,106は、図5〜7に示すように、インナ挿通孔102の開口周縁部における左右方向両側で上側へ向けて突出するように形成されており、左右方向で相互に所定の距離を隔てて対向している。
更にまた、ストッパゴム86の筒状部88におけるインナ挿通孔102の開口周縁部には、前後方向の両側に一対の接続補強部108,108の各一方が一体形成されている。接続補強部108,108は、筒状部88の上壁部90から上側へ向けて緩衝壁部106,106よりも小さな突出寸法で突出している。そして、接続補強部108,108は、左右両端部が緩衝壁部106,106の各一方に一体的に接続されて、それら緩衝壁部106,106の前後両端部をインナ挿通孔102の周方向で相互に接続している。これにより、緩衝壁部106,106の厚さ方向に倒れる変形が基端部において制限されており、緩衝壁部106,106が相互に対向して立設された状態に維持されている。なお、本実施形態の接続補強部108,108は、左右両端部がそれぞれ前後内側へ向けて厚さ方向で湾曲していることから、変形剛性が有利に確保されている。
かくの如き構造とされたストッパゴム86は、図1〜3に示すように、筒状部88がインナブラケット30の連結基部32に外嵌状態で装着されており、筒状部88が連結基部32の外周面に当接して重ね合わされている。要するに、連結基部32の上面にストッパゴム86の筒状部88の上壁部90が重ね合わされていると共に、連結基部32の下面にストッパゴム86の筒状部88の下壁部92が重ね合わされており、更に、連結基部32の前後側面にストッパゴム86の筒状部88の前後側壁部94,94の各一方が重ね合わされている。なお、本実施形態では、ストッパゴム86の筒状部88が、インナブラケット30の連結基部32に対して、弾性的に締め付けるように当接状態で装着されており、ストッパゴム86がインナブラケット30に対して非接着で位置決めされている。
さらに、インナブラケット30がインナ軸部材12に取り付けられた状態では、貫通孔66に挿通されたインナ軸部材12の連結部18が、ストッパゴム86のインナ挿通孔102に挿通されており、ストッパゴム86における緩衝壁部106,106の対向面間に配されている。緩衝壁部106,106は、連結部18の前後表面に沿って広がって当接状態で重ね合わされており、緩衝壁部106,106が連結部18に打ち当てられることによる打音の発生などが防止される。本実施形態では、緩衝壁部106,106が連結部18に対して弾性的に押し当てられているが、緩衝壁部106,106は、連結部18に対して実質的に押し当てられることなく接触するように重ね合わされていても良い。また、緩衝壁部106,106は、アウタブラケット44の貫通孔66に下方から差し入れられており、貫通孔66の内周面に対して左右方向で所定の距離を隔てて対向している。なお、インナ軸部材12の連結部18は、ストッパゴム86におけるインナ挿通孔102の内周面に対して、左右方向で当接していると共に、前後方向で離れている。
更にまた、本実施形態の緩衝壁部106,106は、接続補強部108,108によって相互に連結されており、緩衝壁部106,106の基端部が相互に接近又は離隔し難くなっている。これにより、緩衝壁部106,106がインナ軸部材12の連結部18から離れ難くなっていることから、緩衝壁部106,106の連結部18に対する押圧力を大きくすることなく、緩衝壁部106,106の連結部18への打ち当たりが防止されている。しかも、緩衝壁部106,106が接続補強部108,108によって対向方向内側へ倒れ込み難くされていると共に、連結部18の左右方向寸法と緩衝壁部106,106の対向面間距離の差を小さく設定できることから、連結部18を緩衝壁部106,106の対向面間へ差し入れる作業も容易になる。
このようにストッパゴム86がインナ軸部材12およびインナブラケット30に装着されることにより、インナ軸部材12の連結部18およびインナブラケット30の連結基部32と、アウタブラケット44のストッパ筒部50との当接に際して、当接面間にストッパゴム86が介在するようになっており、当接時の衝撃や打音などが低減されるようになっている。
すなわち、リバウンドストッパ74において、インナブラケット30の連結基部32と、アウタブラケット44のストッパ筒部50の上壁部が、ストッパゴム86の筒状部88の上壁部90を介して当接する。また、バウンドストッパ76において、インナブラケット30の連結基部32と、アウタブラケット44のストッパ筒部50の下壁部が、ストッパゴム86の筒状部88の下壁部92を介して当接するようになっている。更に、前方ストッパ78と後方ストッパ80において、インナブラケット30の連結基部32と、アウタブラケット44のストッパ筒部50の前後側壁部が、ストッパゴム86の筒状部88の前後側壁部94,94を介して当接するようになっている。
更にまた、左方ストッパ82と右方ストッパ84において、アウタブラケット44の貫通孔66に挿通されたインナ軸部材12の連結部18と、アウタブラケット44の当接壁部68,68が、ストッパゴム86の緩衝壁部106,106を介して当接するようになっている。なお、ストッパゴム86の緩衝壁部106,106は、アウタブラケット44の当接壁部68,68よりも上下方向寸法が大きくされており、左右方向の投影において、当接壁部68,68の全体が緩衝壁部106,106と重なり合っている。
これらによって、エンジンマウント10は、上下方向と前後方向と左右方向の各両側において、インナ軸部材12とアウタ筒部材14の相対変位量を制限するストッパが構成されており、それら各ストッパの当接面間に何れもストッパゴム86が介在している。従って、各ストッパにおいて、ストッパゴム86による緩衝作用が発揮されるようになっており、当接時の打音や衝撃が一つのストッパゴム86によって低減されるようになっている。
ところで、ストッパゴム86は、例えば、アウタブラケット44をアウタ筒部材14に装着する前に、アウタブラケット44のストッパ筒部50に差し入れられて、インナブラケット30の連結基部32に対してストッパ筒部50の内周側で装着される。即ち、図9に示すように、アウタ筒部材14へ装着される前のアウタブラケット44のストッパ筒部50に対して、ストッパゴム86が左右外側から差し入れられて、ストッパゴム86の緩衝壁部106,106がストッパ筒部50の当接壁部68,68の対向面間で貫通孔66に挿通された状態で配設される。更に、ストッパ筒部50の内周側に配されたストッパゴム86の筒状部88に対して、インナブラケット30の連結基部32が図2中の左方から差し入れられる。
そして、ストッパゴム86がインナブラケット30の連結基部32に装着された状態で、図2,3に示すように、アウタブラケット44の装着筒部46がアウタ筒部材14に装着されると共に、インナ軸部材12の連結部18がストッパゴム86のインナ挿通孔102とアウタブラケット44の貫通孔66に挿通されて、インナ軸部材12の下端部がインナブラケット30に連結用ボルト42で固定される。
なお、図9では、理解を容易にするために、ストッパゴム86とアウタブラケット44のストッパ筒部50だけを図示しているが、ストッパ筒部50は、ストッパゴム86が差し入れられるより前に、アウタブラケット44を構成する他の部材と溶接などの手段で固定されていることが望ましい。
このような構造とされたエンジンマウント10は、インナブラケット30の取付端部34が、取付用ボルト孔40に挿通される図示しないボルトによって、図2に示すように、振動伝達系を構成する一方の部材であるパワーユニット110に取り付けられる。また、エンジンマウント10は、アウタブラケット44の取付脚部56,56が、各第一ボルト孔58に挿通される図示しないボルトによって、振動伝達系を構成する他方の部材である車両ボデー112に取り付けられると共に、アウタブラケット44の取付片60が、第二ボルト孔62に挿通される図示しないボルトによって車両ボデー112に取り付けられる。
なお、図1〜3では、車両へ装着される前の単体状態のエンジンマウント10が示されており、パワーユニット110の分担支持荷重が作用していないが、車両への装着状態では、パワーユニット110の分担支持荷重がインナ軸部材12に対して下向きに入力されることで、インナブラケット30の連結基部32がアウタブラケット44のストッパ筒部50に対して適当な上下位置に変位して、リバウンドストッパ74とバウンドストッパ76のストッパクリアランスが適切に設定される。
そして、エンジンマウント10の車両への装着状態において、振動源であるパワーユニット110側から入力される振動がエンジンマウント10による振動減衰作用や振動絶縁作用によって低減されて、防振対象である車両ボデー112側へ伝達される振動が低減されるようになっている。
また、車両に装着されたエンジンマウント10に対して大荷重が入力されると、インナ軸部材12の連結部18やインナブラケット30が、アウタブラケット44のストッパ筒部50に当接することで、インナ軸部材12とアウタ筒部材14の相対変位量がストッパ74,76,78,80,82,84によって制限される。これにより、本体ゴム弾性体16の過大な弾性変形が防止されて、本体ゴム弾性体16の耐久性の向上が図られる。
さらに、各ストッパ74,76,78,80,82,84において、インナ軸部材12の連結部18やインナブラケット30とアウタブラケット44のストッパ筒部50は、ストッパゴム86を介して当接するようになっていることから、当接時の打音や振動が低減される。
特に、インナブラケット30の連結基部32に外挿状態で取り付けられるストッパゴム86の筒状部88の壁部が、リバウンドストッパ74とバウンドストッパ76と前方ストッパ78と後方ストッパ80の各当接面間に配されていると共に、筒状部88から上方へ突出するストッパゴム86の緩衝壁部106,106が、左方ストッパ82と右方ストッパ84の各当接面間に配されている。これにより、各ストッパ74,76,78,80,82,84において緩衝作用を付与するゴム弾性体が、一つのストッパゴム86で構成されており、部品点数を少なくすることができると共に、ゴム弾性体を各ストッパ74,76,78,80,82,84の当接面間へ配設する作業も容易になる。
しかも、ストッパゴム86は、本体ゴム弾性体16とは別体とされており、本体ゴム弾性体16とは異なる材料で形成可能とされている。これにより、本体ゴム弾性体16に要求されるばね特性と、ストッパゴム86に要求されるばね特性や耐久性などとを、各別に調節し易くなって、本体ゴム弾性体16とストッパゴム86の両方において優れた性能を実現することができる。
また、左方ストッパ82と右方ストッパ84は、ストッパ筒部50における貫通孔66の内周面とインナ軸部材12の連結部18との当接によって構成されることから、他のストッパ74,76,82,84に比して当接面積が小さくなり易い。しかし、本実施形態では、貫通孔66の開口周縁部において上方へ突出する当接壁部68,68が形成されていることから、左方ストッパ82と右方ストッパ84の当接面積が大きく確保されて、当接面に作用するストッパ荷重の分散による耐久性の向上などが図られる。
加えて、本実施形態では、インナ軸部材12の連結部18が略四角柱とされており、平板形状とされた当接壁部68,68に当接する連結部18の表面が略平面とされていることから、連結部18と当接壁部68,68の当接面積が大きく確保されている。なお、インナ軸部材12の拡径部22は、略円形断面で上下に延びる形状とされていることから、例えば、略円筒形状の本体ゴム弾性体16が拡径部22によって圧縮される振動入力時に、本体ゴム弾性体16に周方向で局所的に応力が集中するのを防いで、耐久性の向上が図られ得る。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、インナ軸部材12は、必ずしも連結部18と拡径部22を備える構造に限定されず、例えば、全体が一様な筒状とされた構造なども採用され得る。
さらに、インナ軸部材12の連結部18は、四角柱形状に限定されるものではなく、例えば円柱形状などであっても良い。なお、好適には、インナ軸部材12の連結部18とアウタブラケット44の当接壁部68,68は、それら連結部18と当接壁部68,68の対向面が相互に対応する形状とされて、連結部18と当接壁部68,68の当接面積が大きく確保される。したがって、例えば円柱形状の連結部18を採用する場合には、当接壁部68,68が厚さ方向に湾曲する円弧状の湾曲板形状とされることが望ましい。
また、前記実施形態では、板状とされた緩衝壁部106,106が実質的に周方向で相互に独立して設けられている構造を例示したが、例えば、ストッパゴム86のインナ挿通孔102の開口周縁部において上方へ突出する筒状のゴム弾性体によって左右の緩衝壁部106,106を設けることも可能であり、それら左右の緩衝壁部106,106が周方向で連続して一体とされていても良い。また、例えば、ストッパゴム86におけるインナ挿通孔102の開口周縁部の前後両側から上方へ突出するゴム弾性体を、インナ軸部材12の連結部18とアウタブラケット44の貫通孔66の内周面との間に配することで、インナ軸部材12とアウタブラケット44の当接によって前後方向の補助的なストッパを構成することもできる。