JP6783063B2 - 窒化物半導体テンプレートおよび窒化物半導体積層物 - Google Patents
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金属酸化物を主成分とする基板と、
前記基板上に形成され、半絶縁性を有した単結晶の窒化物半導体の薄膜からなる成長下地膜と、
を備える窒化物半導体テンプレートが提供される。
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
先ず、本発明に係る窒化物半導体テンプレートの製造方法の一例を説明する。
窒化物半導体テンプレートは、後述する窒化物半導体積層物を製造する際に基体として用いられる基板状の構造体である。
本実施形態では、以下に示すステップ1〜3を実施することで、窒化物半導体テンプレートを製造する場合を例に挙げて説明する。
窒化物半導体テンプレートの製造にあたっては、図1(a)に示すように、半絶縁性を有した単結晶の窒化物半導体からなる基板として、例えば窒化ガリウム(GaN)の結晶からなる結晶基板(以下「GaN基板」ともいう。)11を用意する。このGaN基板11は、後述する成長下地膜13の基になるものである。そして、GaN基板11を用意したら、そのGaN基板11に対して、公知のイオン注入法により、水素(H)イオンの注入を行う。イオン注入は、GaN基板11におけるGa極性面とN極性面とのうち、N極性面の側から行う。これにより、GaN基板11には、N極性面の側の表面から注入エネルギーに応じた所定の深さ(例えば10μm以下、好ましくは1μm程度)にHイオンが高濃度で存在することになる。
GaN基板11へのイオン注入を行ったら、次いで、ステップ2を行う。ステップ2では、図1(b)に示すように、イオン注入後のGaN基板11への基板12の接合を行う。この基板12は、後述する成長下地膜13の支持基板として機能するものである。基板12としては、金属酸化物を主成分として構成されたものを用いる。金属酸化物は、単結晶のものであってもよいし多結晶のものであってもよいが、多結晶のものであれば窒化物半導体テンプレートの低価格化や大口径化等への対応が容易となる。多結晶の金属酸化物としては、例えば酸化ガリウム(Ga2O3)が挙げられる。このようなGa2O3を主成分とする基板(以下「Ga2O3基板」ともいう。)12のGaN基板11への接合は、そのGaN基板11におけるN極性面の側の表面(すなわち、イオン注入を行った側の表面)に対して行う。接合の手法は、特に限定されるものではなく、例えば接合面を活性化処理した後に低温雰囲気で接合する表面活性化接合法のような公知技術を利用して行うことが考えられる。
GaN基板11とGa2O3基板12とを接合したら、次いで、ステップ3を行う。ステップ3では、図1(c)に示すように、GaN基板11について、イオン注入面での剥離を行う。具体的には、GaN基板11とGa2O3基板12との接合体に対して熱処理を行って、GaN基板11におけるGaN結晶の接合をイオン注入箇所で切断し、イオン注入された所定の深さの部分13を残して、他のGaN基板11の部分14を接合体から剥離する。これにより、Ga2O3基板12との接合面上には、イオン注入深さに対応する所定の厚さ(例えば10μm以下、好ましくは1μm程度)のGaN結晶の薄膜が、成長下地膜13として形成されることになる。
本実施形態では、上述したステップ1〜3を実施することで、以下に説明する構成の窒化物半導体テンプレートを得ることができる。
次に、本発明に係る窒化物半導体積層物の製造方法の一例を説明する。
窒化物半導体積層物は、後述する半導体デバイスを製造する際に基体として用いられる基板状の構造体である。半導体デバイスの基体として用いられることから、以下、窒化物半導体積層物のことを「中間前駆体」ともいう。
本実施形態では、以下に示すステップ4を実施することで、中間前駆体を製造する場合を例に挙げて説明する。
中間前駆体の製造は、図3に示すように、上述した構成のGaNテンプレート10を基体として用い、そのGaNテンプレート10における成長下地膜13上に窒化物半導体の積層体20を形成することで行う。
本実施形態では、上述したステップ4を実施することで、以下に説明する構成の中間前駆体を得ることができる。
次に、本発明に係る窒化物半導体積層物(中間前駆体)を基体として用いて半導体デバイスを製造する場合の製造方法の一例を説明する。
本実施形態では、半導体デバイスとして、電界効果型トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)の一つである高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor:HEMT)を例に挙げる。
また、本実施形態では、以下に示すステップ5〜9を実施することで、HEMTを製造する場合を例に挙げて説明する。
HEMTの製造にあたっては、図4(a)に示すように、上述した構成の中間前駆体30を基体として用いる。そして、その中間前駆体30におけるAlGaN電子供給層23上に、ゲート電極41と、ソース電極42と、ドレイン電極43とを形成する。ゲート電極41は、例えばニッケル(Ni)と金(Au)との複層構造からなる。ソース電極42は、例えばチタン(Ti)とアルミニウム(Al)との複層構造からなる。ドレイン電極43は、例えばTiとAlとの複層構造からなる。各電極41,42,43を形成する具体的な手法等については、公知技術を利用したものであればよく、ここではその詳細な説明を省略する。
各電極41,42,43の形成を行ったら、次いで、ステップ6を行う。ステップ6では、図4(b)に示すように、各電極41,42,43が形成された後のAlGaN電子供給層23の上に、接合剤44を介して、キャリア基板45を接合する。キャリア基板45は、積層体20等の支持基板として機能するものである。キャリア基板45としては、例えばサファイア基板を用いることが考えられるが、積層体20等を支持し得るものであれば、これに限定されるものではない。キャリア基板45の厚さについても、特に限定されるものではない。また、接合剤44については、キャリア基板45の接合が可能であり、かつ、後述するステップ9で除去することが可能であれば、特に限定されるものではなく、公知のものを用いればよい。
キャリア基板45の接合を行ったら、次いで、ステップ7を行う。ステップ7では、図5(a)に示すように、Ga2O3基板12の除去を行う。Ga2O3基板12を構成する金属酸化物であるGa2O3は、成長下地膜13を構成する窒化物半導体であるGaNや、その上に形成される積層体20を構成する窒化物半導体であるGaNやAlGaN等よりも、塩酸(HCl)溶液等のエッチング液に対する耐性が低く、エッチング選択性を有する。そのため、Ga2O3基板12の除去は、制御の複雑なドライエッチングを用いることなく、HCl溶液等をエッチング液とするウエットエッチングを用いて容易に行うことができる。このように、ステップ7では、ウエットエッチングを行うことで、Ga2O3基板12を除去すること、すなわち成長下地膜13上にGaN層21、GaN電子走行層22およびAlGaN電子供給層23の積層体20が形成されたもの(ただし、キャリア基板45によって支持された状態のもの)を得ることを、容易に(すなわち、歩留りよく)行うことができる。
Ga2O3基板12の除去を行ったら、次いで、ステップ8を行う。ステップ8では、図5(b)に示すように、Ga2O3基板12を除去した後の成長下地膜13の面(すなわち、積層体20が形成されていない側の面)に、放熱用途として、熱伝導度が高い多結晶ダイヤモンドからなる基板(以下「ダイヤモンド基板」という。)46を接合する。ダイヤモンド基板46を構成する多結晶ダイヤモンドについては、公知技術を利用したものであればよく、ここでは詳細な説明を省略する。ダイヤモンド基板46の厚さについても、特に限定されるものではない。
ダイヤモンド基板46の接合を行ったら、次いで、ステップ9を行う。ステップ9では、図6に示すように、接合剤44およびキャリア基板45の除去を行う。ダイヤモンド基板46の接合後においては、積層体20等の支持基板としてのキャリア基板45が不要となるからである。除去の手法は、特に限定されるものではなく、例えば接合剤44を溶融させる薬液を用いるといった公知技術を利用して行うことが考えられる。
本実施形態では、上述したステップ5〜9を実施することで、以下に説明する構成のHEMTを得ることができる。
また、成長下地膜13の膜厚が10μm未満であれば、薄膜化により成長下地膜13を伝わる熱の伝熱性(放熱性)の向上も図れるので、より一層優れた放熱性を実現し得るようになる。
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
しかも、成長下地膜13を構成するGaNが半絶縁性を有しているので、その成長下地膜13が高抵抗なものとなり、成長下地膜13上に形成される積層体20から成長下地膜13への自由電子の拡散(逃げ、ドレインリーク電流増大などの不具合)等を抑制することができ、その結果としてGaNテンプレート10を用いて製造されるHEMTの品質(性能)を向上させることが可能となる。
また、GaNテンプレート10のGa2O3基板12を構成する金属酸化物であるGa2O3は、成長下地膜13を構成する窒化物半導体であるGaNや、その上に形成される積層体20を構成する窒化物半導体であるGaNやAlGaN等よりも、HCl溶液等のエッチング液に対する耐性が低い(エッチング選択性を有する)。そのため、ウエットエッチングを用いて、Ga2O3基板12を除去すること(すなわち、成長下地膜13上に積層体20が形成されたものを得ること)を容易に(すなわち、歩留りよく)行うことができる。
そして、成長下地膜13と積層体20とを含む窒化物半導体積層物(中間前駆体)30が得られれば、これに放熱用途のダイヤモンド基板46を接合することが可能となる。つまり、ダイヤモンド基板46上に積層体20を構成するGaN薄膜をエピタキシャル成長させる必要がないので、それぞれの熱膨張率差に起因する悪影響を排除しつつ、高品質なデバイス製造を行うことができる。その上、ダイヤモンド基板46をGaN薄膜に直接接合させることが実現可能となるので、これらの間の熱伝導不良を抑制でき、この点によっても高品質なデバイス製造が行えるようになる。
以上のように、本実施形態によれば、ダイヤモンド基板46を放熱用途に利用するHEMT(半導体デバイス)を製造する場合に、そのHEMTを高品質に製造することが可能になる。
以上、本発明の実施形態を具体的に説明した。しかしながら、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
金属酸化物を主成分とする基板と、
前記基板上に形成され、半絶縁性を有した単結晶の窒化物半導体の薄膜からなる成長下地膜と、
を備える窒化物半導体テンプレート。
前記金属酸化物が多結晶である
付記1に記載の窒化物半導体テンプレート。
前記金属酸化物と前記窒化物半導体のa軸方向との線膨張係数の差が±3.50×10-6/℃以内である
付記1または2に記載の窒化物半導体テンプレート。
前記金属酸化物の線膨張係数のほうが前記窒化物半導体のa軸方向の線膨張係数よりも大きい
付記3に記載の窒化物半導体テンプレート。
前記金属酸化物が酸化ガリウムであり、
前記窒化物半導体が窒化ガリウムである
付記1から4のいずれかに記載の窒化物半導体テンプレート。
前記成長下地膜は、表面の平均転位密度が1×107個/cm2未満である
付記1から5のいずれかに記載の窒化物半導体テンプレート。
前記成長下地膜は、電気抵抗率(比抵抗)が105Ω・cm以上である
付記1から6のいずれかに記載の窒化物半導体テンプレート。
前記成長下地膜は、膜厚が10μm未満である
付記1から7のいずれかに記載の窒化物半導体テンプレート。
付記1から8のいずれかに記載の窒化物半導体テンプレートと、
前記窒化物半導体テンプレートにおける前記成長下地膜の上に形成され、少なくとも電子走行層と電子供給層とを有する窒化物半導体の積層体と、
を備える窒化物半導体積層物(中間前駆体)。
金属酸化物を主成分とする基板上に、半絶縁性を有した単結晶の窒化物半導体の薄膜からなる成長下地膜を形成する工程
を備える窒化物半導体テンプレートの製造方法。
前記成長下地膜を形成する工程は、
半絶縁性を有した単結晶の窒化物半導体の基板を用意する工程と、
前記窒化物半導体の基板を切断して前記成長下地膜とする工程と、
を含む付記10に記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法。
前記窒化物半導体の基板を、イオン注入を利用しつつ、そのイオン注入箇所で切断する
付記11に記載の窒化物半導体テンプレートの製造方法。
付記1から8のいずれかに記載の窒化物半導体テンプレートにおける前記成長下地膜の上に、少なくとも電子走行層と電子供給層とを有する窒化物半導体の積層体を形成する工程
を備える窒化物半導体積層物(中間前駆体)の製造方法。
付記9に記載の窒化物半導体積層物(中間前駆体)における前記電子供給層の上に、電極を形成する工程と、
前記電極が形成された後の前記電子供給層の上に、接合剤を介して、キャリア基板を接合する工程と、
前記金属酸化物を主成分とする基板をウエットエッチングにより除去する工程と、
エッチング除去後における前記成長下地膜の面(前記積層体が形成されていない側の面)に、多結晶ダイヤモンドからなるダイヤモンド基板を接合する工程と、
前記ダイヤモンド基板の接合後に前記接合剤および前記キャリア基板を除去する工程と、
を備える半導体デバイスの製造方法。
12 Ga2O3基板
13 成長下地膜
20 積層体
21 GaN層
22 GaN電子走行層
23 AlGaN電子供給層
30 窒化物半導体積層物(中間前駆体)
46 ダイヤモンド基板
Claims (8)
- 金属酸化物を主成分とする基板と、
前記基板上に形成され、半絶縁性を有した単結晶の窒化物半導体の薄膜からなる成長下地膜と、
を備え、
前記基板と前記成長下地膜とが接合されてなり、
前記金属酸化物と前記窒化物半導体のa軸方向との線膨張係数の差が±3.50×10 −6 /℃以内であり、
前記基板と前記成長下地膜とはエッチング選択性を有し、
前記基板をエッチング除去して得られる前記成長下地膜の面が、多結晶ダイヤモンドからなるダイヤモンド基板との接合面を構成する
窒化物半導体テンプレート。 - 前記金属酸化物が多結晶である
請求項1に記載の窒化物半導体テンプレート。 - 前記金属酸化物の線膨張係数のほうが前記窒化物半導体のa軸方向の線膨張係数よりも大きい
請求項1または2に記載の窒化物半導体テンプレート。 - 前記金属酸化物が酸化ガリウムであり、
前記窒化物半導体が窒化ガリウムである
請求項1から3のいずれか1項に記載の窒化物半導体テンプレート。 - 前記成長下地膜は、表面の平均転位密度が1×107個/cm2未満である
請求項1から4のいずれか1項に記載の窒化物半導体テンプレート。 - 前記成長下地膜は、電気抵抗率(比抵抗)が105Ω・cm以上である
請求項1から5のいずれか1項に記載の窒化物半導体テンプレート。 - 前記成長下地膜は、膜厚が10μm未満である
請求項1から6のいずれか1項に記載の窒化物半導体テンプレート。 - 請求項1から7のいずれか1項に記載の窒化物半導体テンプレートと、
前記窒化物半導体テンプレートにおける前記成長下地膜の上に形成され、少なくとも電子走行層と電子供給層とを有する窒化物半導体の積層体と、
を備える窒化物半導体積層物。
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