<第1実施形態>
最初に、本実施形態に係る点火器について図面を参照しつつ説明する。なお、この点火器は、ディスク型のガス発生器、シリンダー型のガス発生器、およびマイクロガスジェネレータ等の他の全ての公知のガス発生器に適用することができる。詳細は後記の各実施形態で説明する。
図1に示すように、本実施形態の点火器1は、点火薬2と、当該点火薬2を収納し、熱硬化性樹脂組成物からなる硬化物9によって固定された2つの通電部42、43を有する塞栓7に嵌合されるカップ体3と、このカップ体3を覆うスクイブケース47と、塞栓7の一部を介して通電部42、43に接続された抵抗体46と、これらカップ体3、スクイブケース47および通電部42、43等を固定する基板37とにより構成されている。なお、通電部42、43および抵抗体46が点火部として機能する。
塞栓7は、例えばステンレス、アルミニウム、銅、鉄等の金属で形成されている。また、この塞栓7から延伸する通電部42、43も、同様にステンレス、アルミニウム、銅、鉄等の金属で形成されている。塞栓7には、通電部42、43の挿入を可能とする孔8、44が中心軸から偏心した位置に設けられている。通電部42は孔44の周壁に接触した状態で配置されており、通電部43は孔8の周壁に非接触の状態で配置されている。これにより、通電部43は塞栓7および通電部42と絶縁されている。抵抗体46は、通電部43の先端と塞栓7の中間部とに架橋されている。これにより、通電部43と通電部42とは互いに電気的に接続されている。また、孔8の点火薬2側と反対側には、孔8、44の両方と接続されている開口部45が形成されている。この開口部45内に硬化物9が形成されることによって、通電部43と、通電部42および塞栓7とが絶縁されている。なお、通電部42は、塞栓7の孔44に圧入されており、先端部は塞栓7の接面7aと略同一平面上に位置する平面を有している。
抵抗体46としては、ニッケルクロム合金などの導電性線材料からなる電橋線が挙げられる。なお、通電部43の先端部および塞栓7の中間部と抵抗体46との接合方法は、はんだ付け、溶接、溶着等のいずれの方法で接合されても良いが、好ましくは溶接が良く、特に抵抗溶接が良い。
塞栓7に嵌合されるカップ体3は、塞栓7と同様に、ステンレス、アルミニウム、銅、鉄等の金属で形成されている。このため、塞栓7に対して溶接することが可能である。これによって、カップ体3内への吸湿を防ぐことが可能となり、また点火器作動時であっても、塞栓7がカップ体3から飛び出すことがなくなる。なお、溶接の方法としては、レーザー溶接、電子ビーム溶接等を始め、通常の各種の溶接方法が採用可能である。また、上記のようにカップ体3を塞栓7に対して溶接して接合することに限られるものではなく、塞栓7をカップ体3に圧入した後に一体モールドで固定してもよい。なお、カップ体3を後記のスクイブケース47と同様の樹脂で形成してもよい。
また、カップ体3を覆うようにスクイブケース47が設けられている。このスクイブケース47は、カップ体3と共に基板37に一体的に固定されている。スクイブケース47は、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PA6(ナイロン6)、PA66(ナイロン66)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PPO(ポリフェニレンオキシド)、フッ素樹脂等の樹脂等で形成されている。なお、スクイブケース47は単一の部材で形成されている必要はなく、いくつかの部材を組み合わせて構成してもよいが、部品点数削減の観点から単一の部材で構成されるのが好ましい。
点火薬2としては、点火薬の機能を果すものであればいかなるものでも用いることができるが、一般にZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、ZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が用いられる。
硬化物9に使用する熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、ポリイミド、ケイ素樹脂等が挙げられるが、機械的強度、耐熱性、耐湿性、電気特性、接着性、作業性等の観点から、特にエポキシ樹脂が好適である。
ここで、基板37上には、図2に示すアンテナ素子31、通信回路32a、制御回路32b、電源回路32c、振動発電素子(発電部)33、熱発電素子(発電部)34、および二次電池36が設けられている。アンテナ素子31、通信回路32a、制御回路32b、電源回路32c、振動発電素子33、熱発電素子34、および二次電池36は、それぞれ基板37の一方側に配置されている。これらのアンテナ素子31、通信回路32a、制御回路32b、電源回路32c、振動発電素子33、熱発電素子34、および二次電池36は、保持部材6に内在されている。
保持部材6は、例えば熱可塑性樹脂で構成されている。この熱可塑性樹脂としては、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PA6(ナイロン6)、PA66(ナイロン66)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PPO(ポリフェニレンオキシド)等の合成樹脂にガラス繊維等を混合したもの等が好ましい。また、保持部材6は、熱硬化性樹脂で常温硬化型若しくは熱硬化型のもので構成されていてもよく、必要に応じて、さらに硬化剤、硬化促進剤等を配合してもよい。熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、ポリイミド、ケイ素樹脂等が挙げられる。
アンテナ素子31は、外部のコントロールユニット(図示略)から点火指令信号を受信する。通信回路32aはアンテナ素子31に接続されている。制御回路32bは通信回路32aに接続され、通信回路32aを介して点火指令信号を受ける。電源回路32cは制御回路32bに接続され、当該制御回路32bが点火指令信号を受けた際に所定量の電流を通電部42、43(図1参照)に供給する。振動発電素子33は振動を受けて発電するように構成され、熱発電素子34は熱を受けて発電するように構成され、それぞれ電力を二次電池36に供給する。二次電池36は、電力を蓄電すると共に蓄電している電力を電源回路32cに供給する。
このような構成において、制御回路32bが点火指令信号を受けると、電源回路32cは所定量の電流を通電部42、43に供給する。通電部42、43に電流が供給されることによって、抵抗体46においてジュール熱が発生し、2ミリ秒以下で点火薬2を着火することが可能となる。
以上のように、本実施形態の点火器1によれば、無線通信が可能なアンテナ素子31を備えているので、外部信号である点火指令信号を出力する外部のコントロールユニットとの間で、配線を用いることなく通信を行うことができる。また、電源回路32c、振動発電素子33および熱発電素子34を設けることにより、配線により外部から電力を供給する必要がなくなる。以上により、配線による重量増加を回避することができる。
また、本実施形態では、二次電池36に蓄電された電力が電源回路32cに供給されるので、当該電源回路32cへの電力供給が安定して実現される。
また、本実施形態では、振動発電素子33および熱発電素子34の双方を用いることにより、発電効率を高めることが可能となる。
また、本実施形態では、アンテナ素子31、通信回路32a、制御回路32b、電源回路32c、振動発電素子33、熱発電素子34、および二次電池36を基板37上に集約するようにしたので、点火器1の構造が複雑化することを回避することができる。
また、本実施形態では、アンテナ素子31、通信回路32a、制御回路32b、電源回路32c、振動発電素子33、熱発電素子34、および二次電池36が樹脂からなる保持部材6内に配設されることにより、アンテナ素子31と外部のコントロールユニットとの間における電波が遮断され難くなる。このため、アンテナ素子31と上記コントロールユニットとの無線通信の信頼性が向上する。
さらに、本実施形態では、点火器1は着火素子であるSCBチップを有してもよい。この場合、比較的低エネルギーで着火を行うことが可能となる。
なお、本実施形態では、通電部42、43が外部に露出しないように基板37に結合するように構成したが、これに限定されるものではなく、通電部42、43の中途部を露出させた状態(つまり、硬化物9と基板37とを離間させた状態)で通電部42、43の先端を基板37に結合するように構成してもよい。
<第2実施形態>
次に、本実施形態に係るガス発生器について図面を参照しつつ説明する。なお、第1実施形態と下2桁が同じ符号の部位は、特に示す場合を除き、第1実施形態で説明したものと同様であるので説明を省略する。後記の第3実施形態以降も同様とする。
本実施形態のガス発生器100はディスク型のガス発生器である。図3(a)に示すように、ガス発生器100は、軸方向の両端が閉塞された短尺略円筒状のハウジング(後述の下部側シェル10および上部側シェル20)を有している。このハウジングの内部に設けられた収容空間(燃焼室)には、点火器40、カップ状部材50、伝火薬56、ガス発生剤61、下側保持部材62、上側保持部材63、クッション材(蓋部材)64、シールテープ(閉塞部材)24、およびフィルタ材70等が収容されている。また、ハウジングの上記収容空間には、ガス発生剤61が主として収容されたガス発生剤収容室60が設けられている。
上記ハウジングは、下部側シェル(イニシエータシェル)10と上部側シェル(クロージャシェル)20とを含んでいる。下部側シェル10および上部側シェル20は、圧延された金属製の板状部材をプレス加工することによって形成されたプレス成形品からなる。
下部側シェル10および上部側シェル20は、それぞれが有底略円筒状に形成されており、これらの開口面同士が向き合うように組み合わされて接合されることによって上記ハウジングが構成される。下部側シェル10は、底板部11と周壁部12とを有しており、上部側シェル20は、天板部21と周壁部22とを有している。これにより、ハウジングの軸方向の各端部は、天板部21と底板部11とによって閉塞されている。なお、下部側シェル10と上部側シェル20との接合には、電子ビーム溶接、レーザー溶接、または摩擦圧接等が好適に利用できる。
また、上部側シェル20は、周壁部22の下端から連続して外側に向けて立設された固定部25をさらに有している。固定部25は、ハウジングを外部の部材(図示略)に対して固定するための部位であり、これにより設置後においてガス発生器100が固定部25を介して当該外部の部材によって支持されることになる。なお、上部側シェル20の厚みは、2.0mm以下であることが好ましいが、より好ましくは1.8mm以下である。
図3(a)に示すように、下部側シェル10の底板部11の中央部には、天板部21側に向かって突出する突状筒部13が設けられている。これにより、下部側シェル10の底板部11の中央部には、突状筒部13の外壁によって窪み部14が形成される。突状筒部13は、例えば樹脂により形成されハウジング内に配設された保持部35を介して点火器40が固定される部位である。そして、突状筒部13に固定された点火器40の後述の端子ピン142、143は窪み部14から外側に向けて突出して配置されており、保持部材30がこれらの端子ピン142、143に接続されるように後付けで窪み部14に配置されるようになっている。保持部材30が窪み部14に配置された状態は図示していないが、後述の図5(a)に類似する状態となる。保持部材30の詳細については後述する。なお、下部側シェル10の厚みは、2.0mm以下であることが好ましいが、より好ましくは1.8mm以下である。
突状筒部13は、有底略円筒状に形成されており、その天板部21側に位置する軸方向端部には、平面視円形状の開口部15が設けられている。この開口部15は、点火器40の一対の端子ピン142、143が挿通される部位である。
下部側シェル10は、上述したように圧延された金属製の板状部材をプレス加工することによって形成される。具体的には、下部側シェル10は、たとえば上型および下型からなる一対の金型を用いて、圧延された一枚の金属製の板状部材を上下方向からプレスすることにより、図示するような形状に成形される。
上部側シェル20は、上述したように圧延された金属製の板状部材をプレス加工することによって製作されている。具体的には、上部側シェル20は、たとえば上型および下型からなる一対の金型を用いて、圧延された一枚の金属製の板状部材を上下方向からプレスすることにより、図示するような形状に成形される。
続いて、点火器40は、火炎を発生させるための点火装置であり、点火部41と上述した一対の端子ピン142、143とを備えている。点火部41は、燃焼することで火炎を発生する点火薬と、作動時において点火薬を着火させるための抵抗体と、着火素子である半導体ブリッジチップ(SCBチップ)とを含んでいる。一対の端子ピン142、143は、点火薬を着火させるために点火部41に接続されている。上記抵抗体は、一対の端子ピン142、143の先端を連結するように取り付けられ、この抵抗体を取り囲むようにまたはこの抵抗体に近接するように上記点火薬が図示しないスクイブカップ内に装填されている。上記抵抗体としては一般にニクロム線等が利用され、上記点火薬としては一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。
ここで、衝突を検知した際には、端子ピン142、143を介して上記抵抗体に所定量の電流が流れるようになっている。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、当該抵抗体においてジュール熱が発生し、上記点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収納している上記スクイブカップを破裂させる。抵抗体に電流が流れてから点火器40が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合には一般に2ミリ秒以下である。
点火器40は、端子ピン142、143が開口部15に挿通するように下部側シェル10の内側から挿入された状態で底板部11に取り付けられる。点火器40は、上述した保持部35によりハウジング内で保持されることによって底板部11に固定されている。
開口部15の大きさは、点火器40の最大外形部分である点火部41の外形よりも小さくなっている。これにより、万一、保持部35や保持部材30に予期せぬ破損が生じた場合であっても、ハウジングの内部の圧力上昇を受けて点火器40が開口部15を通過してハウジングの外部に飛び出てしまうことが防止される。
上述したカップ状部材50は、突状筒部13、保持部35および点火器40を覆うように底板部11に組み付けられている。カップ状部材50は、底板部11側の端部が開口した略円筒形状を有しており、内部に伝火薬56が収容された伝火室55を含んでいる。カップ状部材50は、その伝火室55が点火器40の点火部41に面するようにガス発生剤収容室60内に配置されている。また、カップ状部材50は、開口端側にフランジ状に延出された先端部54を有しており、この先端部54は底板部11と下側保持部材62とによって挟み込まれた状態で固定されている。このようなカップ状部材50は、点火器40が作動することによって伝火薬56が着火された場合に伝火室55内の圧力上昇または発生した熱の伝導に伴って破裂または溶融するものであり、例えばアルミニウムや熱硬化性樹脂など機械的強度が比較的低いものが使用される。
伝火薬56は、点火器40が作動することによって生じた火炎によって点火され、燃焼することによって熱粒子を発生する。伝火薬56としては、ガス発生剤61を確実に燃焼開始させることができるものであることが必要であり、一般的には、B/KNO3等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物などが用いられる。また、伝火薬56としては、オートイグニッション(AI)機能を有するものを用いることも可能である。AI機能とは、点火器40の作動によらずに自動発火する機能である。AI機能を有する伝火薬56は、ガス発生剤61よりも低い温度で自動発火するので、ガス発生器100が組み込まれたエアバッグ装置が装備された車両等において万が一火災等が発生した場合、外部から加熱されることによるガス発生器100の異常動作の誘発を防ぐことができる。
ガス発生剤収容室60は、下部側シェル10および上部側シェル20からなるハウジングの内部の空間のうち、上述のカップ状部材50が配置された部分を取り巻く空間であって、ガス発生剤61が収容される空間を形成する。また、ガス発生剤収容室60をハウジングの径方向に取り巻く空間には、上述したフィルタ材70が当該ハウジングの内壁に沿って配置されている。フィルタ材70は、円筒状の形状を有しており、その中心軸がハウジングの軸方向と実質的に合致するように配置されることにより、ガス発生剤収容室60を径方向に取り囲んでいる。
ガス発生剤61は、点火器40が作動することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させる薬剤である。ガス発生剤61としては、非アジド系ガス発生剤を用いることが好ましく、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体としてガス発生剤61が形成される。燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジン、硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5−アミノテトラゾール等が好適に利用される。また、酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅等の塩基性硝酸塩、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、または、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。また、添加剤としては、バインダー、スラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダーとしては、たとえばカルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダー、または、合成ヒドロキシタルサイト、酸性白土等の無機バインダーが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
フィルタ材70は、例えばステンレス鋼または鉄鋼等の金属線材を巻き回して焼結したもの、金属線材を編み込んだ網材をプレス加工することによって押し固めたもの、あるいは孔あき金属板を巻き回したもの等が利用される。フィルタ材70は、ガス発生剤収容室60内で発生したガスがこのフィルタ材70中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれる残渣(スラグ)等を除去する除去手段としても機能する。したがって、ガスを十分に冷却し、かつ残渣が外部に放出されないようにするためには、ガス発生剤収容室60内で発生したガスが確実にフィルタ材70中を通過するようにすることが必要である。フィルタ材70の下端部の内周壁は下側保持部材62に保持されている。
続いて、フィルタ材70に対面する部分の上部側シェル20の周壁部22(すなわち、固定部25が設けられた位置よりも天板部21側に位置する部分の周壁部)には、ガス噴出口23が複数設けられている。このガス噴出口23は、孔であり、フィルタ材70を通過したガスをハウジングの外部に導出するためのものである。また、上部側シェル20の周壁部22のフィルタ材70側に位置する主面には、上記ガス噴出口23を閉塞するようにシールテープ24が貼付されている。このシールテープ24としては、片面に粘着部材が塗布されたアルミニウム箔等が利用される。これにより、ガス発生剤収容室60の気密性が確保されている。
下側保持部材62は、作動時において、ガス発生剤収容室60にて発生したガスが、フィルタ材70の内部を経由することなくフィルタ材70の下端と底板部11との間の隙間から流出してしまうことを防止する。下側保持部材62は、たとえば金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成されたものであり、好適には普通鋼または特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板またはステンレス鋼板等)からなる部材にて構成される。
ガス発生剤収容室60のうち天板部21側に位置する端部には、上側保持部材63が配置されている。上側保持部材63は、フィルタ材70と天板部21との境目部分を覆うように配置されている。上側保持部材63は、フィルタ材70の天板部21側に位置する内周壁に接触することでフィルタ材70を位置決めして保持するとともに、その内部に配置されたクッション材64を保持している。上側保持部材63は、作動時において、ガス発生剤収容室60にて発生したガスが、フィルタ材70の内部を経由することなくフィルタ材70の上端と天板部21との間の隙間から流出してしまうことを防止する。上側保持部材63は、下側保持部材62と同様に、たとえば金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成されたものであり、好適には普通鋼または特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板またはステンレス鋼板等)からなる部材にて構成される。
上側保持部材63の内側には、ガス発生剤収容室60に収容されたガス発生剤61に接触するように円盤形状のクッション材64が配置されている。これにより、クッション材64は、ガス発生剤収容室60の天板部21側の部分において天板部21とガス発生剤61との間に位置することになり、ガス発生剤61を底板部11側に向けて押圧している。このクッション材64は、成形体からなるガス発生剤61が振動等によって粉砕されてしまうことを防止する目的で設けられるものであり、好適にはセラミックスファイバの成形体、ロックウール、発泡樹脂(たとえば発泡シリコーン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン等)、または、クロロプレンおよびEPDMに代表されるゴム等からなる部材にて構成される。
保持部材30は、上述の保持部材6と同じ材料で形成される。図3(b)に示すように、保持部材30内には、アンテナ素子131、図2の通信回路32aと同じ通信回路(図示略)、図2の制御回路32bと同じ制御回路(図示略)、図2の電源回路32cと同じ電源回路(図示略)、振動発電素子133、熱発電素子134、二次電池136、および基板137が配設されている。なお、これらの各要素の機能は第1実施形態と同じであるため、説明を省略する。
保持部材30には、端子ピン142、143が対応して挿通される挿通孔30a、30bが設けられている。この挿通孔30aは上記電源回路等に電気的に導通する接続部38に連続し、挿通孔30bは上記電源回路等に電気的に導通する接続部39に連続している。このような構成において、保持部材30が上述の窪み部14に配置される際に、端子ピン142、143が対応する挿通孔30a、30bに挿通され、対応する接続部38、39に接続される。
以上のような構成を有するガス発生器100が搭載された車両が衝突した際には、車両に設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて車両に設けられたコントロールユニットからの通電によって点火器40が作動する。伝火室55に収容された伝火薬56は、点火器40が作動することによって生じた火炎によって点火されて燃焼し、多量の熱粒子を発生させる。この伝火薬56の燃焼によってカップ状部材50は破裂または溶融し、上述の熱粒子がガス発生剤収容室60へと流れ込む。
流れ込んだ熱粒子により、ガス発生剤収容室60に収容されたガス発生剤61が着火されて燃焼し、多量のガスを発生させる。ガス発生剤収容室60内で発生したガスは、フィルタ材70の内部を通過し、その際にフィルタ材70によって熱が奪われて冷却されると共に、ガス中に含まれるスラグがフィルタ材70によって除去されてハウジングの外周縁部に流れ込む。そして、ハウジングの内圧の上昇に伴い、上部側シェル20のガス噴出口23を閉塞するシールテープ24による封止が破られ、当該ガス噴出口23を介してガスがハウジングの外部へと噴出される。噴出されたガスは、ガス発生器100に隣接して設けられたエアバッグの内部に導入され、エアバッグを膨張および展開させるようになっている。
以上のように、本実施形態によれば、無線通信が可能なアンテナ素子131を備えているので、外部信号である点火指令信号を出力する外部のコントロールユニットとの間で、配線を用いることなく通信を行うことができる。また、上記電源回路、振動発電素子133および熱発電素子134を設けることにより、配線により外部から電力を供給する必要がなくなる。以上により、配線による重量増加を回避することができる。
また、本実施形態では、保持部材30を後付けで窪み部14に配設するように構成したので、保持部材30単体での電気特性の測定が予め可能である。さらに、車載取り付けの直前まで保持部材30を点火器40から隔離することができるので、当該点火器40が誤作動する虞がない。
また、本実施形態では、点火器40を下部側シェル10の一方側(つまり内側)に配置し、アンテナ素子131、振動発電素子133、熱発電素子134、および二次電池136を下部側シェル10の他方側(つまり外側)に配置するようにした。これにより、点火器40、アンテナ素子131等をすべて下部側シェル10の一方側(または他方側)に配置する場合に比べて、当該下部側シェル10の一方側(または他方側)におけるこれらの構成要素の配置領域を小さくすることができる。
さらに、本実施形態では、窪み部14に保持部材30が配置されることにより、当該保持部材30が下部側シェル10の外側に向けて突出することがない。これにより、ガス発生器100の構造を簡単化することができる。
なお、本実施形態では、保持部材30を後付けするように構成したが、これに限定されるものではなく、基板137の接続部38、39に、対応する端子ピン142、143が接続された状態で、射出成形により保持部材を形成してもよい。この場合、下部側シェル10の底板部11に設けられた開口部15を経由して、点火器40の一部および上記各構成要素が配設された基板137が覆われるように樹脂材料が充填されて硬化されることで保持部材が形成される。射出成形によって形成される保持部材の原料としては、硬化後において耐熱性、耐久性、および、耐腐食性等に優れた樹脂材料が好適に選択されて利用される。その場合、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂に限られず、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6またはナイロン66等)、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂を利用することも可能である。これら熱可塑性樹脂を原材料として選択する場合には、成形後において保持部材の機械的強度を確保するためにこれら樹脂材料にガラス繊維等をフィラーとして含有させることが好ましい。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係るガス発生器について、図面を参照しながら説明する。図4に示すように、第3実施形態のガス発生器200においては、保持部材30を後付けする第2実施形態と異なり、基板237が通電部242、243を介して点火器240に一体型として接続される。つまり、基板237は点火器240の下部に接触した状態で設けられる。このような構成において、下部側シェル210の底板部211の中央に開口が設けられ、当該開口を通じて射出成形により保持部材80が形成される。これにより、保持部材80が基板237の下側においてアンテナ素子231等を内在させた状態で上記開口を塞ぐように配設されるようになっている。
本実施形態においても、無線通信が可能なアンテナ素子231を備えているので、外部信号である点火指令信号を出力する外部のコントロールユニットとの間で、配線を用いることなく通信を行うことができる。また、第2実施形態と同様に、電源回路、振動発電素子233および熱発電素子234を設けることにより、配線により外部から電力を供給する必要がなくなる。以上により、配線による重量増加を回避することができる。
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係るガス発生器について、図面を参照しながら説明する。図5に示すように、第4実施形態のガス発生器300においては、第2実施形態のガス発生器100における振動発電素子133および熱発電素子134の代わりに、電磁誘導による発電が可能な発電部(受電部)181が設けられる。それ以外の構成は第2実施形態のガス発生器100と同じである。
図5に示すように、発電部181は、導電性の巻コイルであり、一端が端子ピン342に接続され、他端が端子ピン343に接続されている。また、ガス発生器300の近傍には、底板部311に対向するように外部装置としての給電部181aが設けられている。この給電部181aは、導電性の巻コイルであり、一端が電源181bに接続され、他端がスイッチ部181cに接続されている。スイッチ部181cは、初期状態ではオフ状態であり、ガス発生器300を作動させる必要があるときに、外部のコントロールユニット(図示略)から点火指令信号を受信することにより、オン状態となるものである。
このような構成において、外部のコントロールユニットからの点火指令信号によってスイッチ部181cがオン状態になる。スイッチ部181cがオン状態になると、電源181bによって給電部181aの巻コイルに電流が流れて、電磁波が発生する。この電磁波が発電部181の巻コイルに送信され、電磁誘導により発電部181の巻コイルに電流が発生し、端子ピン342、343が通電されることにより点火器340が作動する。以上の通り、電磁誘導によっても発電を行うことが可能となる。
本実施形態においても、無線通信が可能なアンテナ素子331を備えているので、外部信号である点火指令信号を出力する外部のコントロールユニットとの間で、配線を用いることなく通信を行うことができる。また、発電部181を設けることにより、配線により外部から電力を供給する必要がなくなる。以上により、配線による重量増加を回避することができる。
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態に係るガス発生器について、図面を参照しながら説明する。第5実施形態のガス発生器400は、シートベルトプリテンショナ等に好適に組み込まれるマイクロガスジェネレータである。
図6に示すように、本実施形態のガス発生器400は、開口側にフランジ部402を有する有底筒状のハウジング401と、フランジ部402をかしめるためのかしめ部404を有するホルダ403と、点火器440の端子ピン442、443を保持し、ホルダ403の内側に配設された凹状のホルダ405と、このホルダ405の凹部に保持され、アンテナ素子431等を内在する保持部材406とを備えている。ハウジング401は、その内部にガス発生剤461が収容されたガス発生剤収容室(燃焼室)460を有しており、ガス発生剤収容室460が点火器440の点火部441に面する状態で、フランジ部402がかしめ部404にかしめられることによりホルダ403に固定されている。ハウジング401の上部には脆弱部(図示略)が形成されている。ハウジング401は、例えばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材により形成される。保持部材406は、上述の保持部材6と同じ材料で形成される。
このような構成において、上述した内容と同様な方法で端子ピン442、443に所定量の電流が供給されると、点火器440で生じた火炎によってガス発生剤461が点火されて燃焼し、多量のガスが発生する。このガスは、ハウジング401の上記脆弱部を開口させてハウジング401の外部へと流出する。流出したガスは、ガス発生器400が組み込まれたシートベルトプリテンショナの作動空間に供給され、シートベルトの巻き取り動作に利用される。
本実施形態においても、無線通信が可能なアンテナ素子431を備えているので、外部信号である点火指令信号を出力する外部のコントロールユニットとの間で、配線を用いることなく通信を行うことができる。また、第2実施形態と同様に、電源回路、振動発電素子433および熱発電素子434を設けることにより、配線により外部から電力を供給する必要がなくなる。以上により、配線による重量増加を回避することができる。
<第6実施形態>
次に、本発明の第6実施形態に係るガス発生器について、図面を参照しながら説明する。第6実施形態のガス発生器500は、第5実施形態のガス発生器400の変形例であって、図7に示すように、フランジ部502を有するハウジング501と、通電部542、543を保持すると共に、フランジ部502を介してハウジング501に組み付けられる保持部材505とを備えている。ハウジング501は、その内部にガス発生剤561が収容されたガス発生剤収容室(燃焼室)560を有している。ハウジング501の上部には脆弱部(図示略)が形成されている。ハウジング501は、例えばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材により形成される。また、保持部材505は、上述の保持部材6と同じ材料で形成され、またアンテナ素子531等を内在する。
通電部542の先端と通電部543の先端とに亘り、例えばニクロム線からなる電橋線503が溶着されている。この電橋線503を覆うように1又は複数の着火薬層504が設けられている。着火薬層504の表面には被覆層(図示略)が形成されている。着火薬層504は、酸化剤成分、還元剤成分、および所望により添加物からなる鉛化合物を含まない着火薬組成物に溶剤を加え、スラリー状にした着火薬を所定の厚みになるように所定回数ディッピングして、電橋線503の表面に塗布し、乾燥および固化させることにより形成される。なお、この着火薬層503が乾燥および固化した後、その表面に酢酸ビニル系樹脂等を溶剤を用いて塗布し、上記被覆層を形成する。
このような構成において、上述した内容と同様な方法で通電部542、543に所定量の電流が供給されると、電橋線503の発熱により着火薬層504が着火し、当該着火薬層504で生じた火炎によってガス発生剤561が点火されて燃焼し、多量のガスが発生する。このガスは、ハウジング501の上記脆弱部を開口させてハウジング501の外部へと流出する。流出したガスは、ガス発生器500が組み込まれたシートベルトプリテンショナの作動空間に供給され、シートベルトの巻き取り動作に利用される。
本実施形態においても、無線通信が可能なアンテナ素子531を備えているので、外部信号である点火指令信号を出力する外部のコントロールユニットとの間で、配線を用いることなく通信を行うことができる。また、第2実施形態と同様に、電源回路、振動発電素子533および熱発電素子534を設けることにより、配線により外部から電力を供給する必要がなくなる。以上により、配線による重量増加を回避することができる。
<第7実施形態>
次に、本発明の第7実施形態に係るガス発生器について、図面を参照しながら説明する。第7実施形態のガス発生器600はシリンダー型のガス発生器である。図8に示すように、ガス発生器600は、長尺略円柱状の外形を有しており、ハウジング601と、ハウジング601の下方の開口601a側に組み付けられている保持部材605と、ハウジング601の上方の開口端を閉塞するように取り付けられている閉塞部材602とを備えている。
ハウジング601は、軸方向の両端に開口を有する長尺の円筒状の部材からなる。閉塞部材602は、所定の厚みを有する円盤状の部材からなり、その周面にかしめ固定のための環状溝部603を有している。この環状溝部603は、閉塞部材602の周面に周方向に向かって延びるように形成されている。また、ハウジング601の閉塞部材602が取り付けられた側の端部近傍の周壁にはガス噴出口604が設けられている。このガス噴出口604は、ガス発生器600の内部において発生したガスを外部に噴出するための孔であり、ハウジング601の周方向および軸方向に複数設けられている。
閉塞部材602は、ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム合金、又はステンレス合金等の金属製であって、所定の厚みを有する円盤状の部材からなる。そして、閉塞部材602の一部が内挿された状態で、環状溝部603に対応する部分のハウジング601の周壁を径方向内側に縮径させて(かしめて)当該環状溝部603に係合させることにより、閉塞部材602のかしめ固定が行なわれている。
ハウジング601の軸方向の一端部(保持部材605寄りの部分)には、ガス発生剤661の点火手段としての点火部641を有する点火器640が配置されている。点火器640は、図示しない通電部を介して基板637に接続されている。保持部材605は基板637の下面に組み付けられている。また、ハウジング601内にはホルダ606が設けられており、点火器640は、かしめ部606aによりホルダ606にかしめられることで固定されている。
ハウジング601の内部空間には、ガス発生剤661が収容されているガス発生剤収容室(燃焼室)660と、中心に略円柱状の空間670aを有した円筒状の部材からなるフィルタ材670が収容されるフィルタ室607と、点火器640が配置されている点火室608とが設けられている。本実施形態では、ガス発生剤661は、点火器640によって点火されることによって生じた火炎によって着火され、燃焼することによってガスを発生させる長筒状の一体成型物である。
このような構成において、上述した内容と同様な方法で通電部(図示略)に所定量の電流が供給されて点火器640が作動すると、点火薬の燃焼によって点火器640内の圧力が上昇し、これによって点火器640のスクイブカップ先端が破裂し、火炎が外部(点火室608)へと流れ込む。そして、流れ込んだ火炎により、ガス発生剤661が着火されて燃焼し、多量のガスを発生させる。このガス発生剤661の燃焼により、ガス発生剤収容室660内の圧力が上昇し、これによって発生したガスがフィルタ室607へと流れ込む。そして、流れ込んだガスは、フィルタ材670を経由して所定の温度にまで冷却される。冷却された多量のガスは、ガス噴出口604からガス発生器600の外部へと噴出される。ガス噴出口604から噴出されたガスはエアバッグ等に導かれる。
本実施形態においても、無線通信が可能なアンテナ素子631を備えているので、外部信号である点火指令信号を出力する外部のコントロールユニットとの間で、配線を用いることなく通信を行うことができる。また、第2実施形態と同様に、電源回路、振動発電素子633および熱発電素子634を設けることにより、配線により外部から電力を供給する必要がなくなる。以上により、配線による重量増加を回避することができる。
なお、本実施形態では、上記通電部が外部に露出しないように基板637と点火器640とが互いに接触するように構成したが、これに限定されるものではなく、通電部の中途部を露出させた状態(つまり、基板637と点火器640とが互いに離間された状態)で通電部の先端を基板637に接続するように構成してもよい。この場合、保持部材605はハウジング601の開口601aを閉塞する位置に配置される。
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
上記各実施形態では、発電素子として、振動発電素子および熱発電素子を設けるようにしたが、これに限定されるものではなく、少なくとも一方の発電素子を設ければよい。この場合、振動発電素子および熱発電素子のうち使用環境等に応じて発電効率の高い発電素子を用いることができる。
また、上記各実施形態では、二次電池を設けるようにしたが、これに限定されるものではなく、上記二次電池は必須な構成要素ではない。
さらに、上記実施形態では、発電部として、振動発電素子や熱発電素子、又は電磁誘導により電力を供給する手段を設けたが、これに限定されるものではなく、例えば光発電等の他の発電手段を採用してもよい。