<記号の説明>
以下の説明において、同一の記号が付された構成部材、演算処理、信号、特性、及び、値は、同一の機能を発揮するものである。従って、重複説明は、省略されることがある。
各種記号の末尾に付された括弧付の添字[**]は、車両の前後左右の4輪のうちの何れかに関するものであるかを示す。具体的には、各添字は、[fl]が左前輪に、[fr]が右前輪に、[rl]が左後輪に、[rr]が右後輪に、夫々、対応している。さらに、添字[**]は、省略されることもある。例えば、車輪速度センサVWA[**](添字[**]が省略された場合には、「VWA」と表記)は、左前輪用の車輪速度センサVWA[fl]、右前輪用の車輪速度センサVWA[fr]、左後輪用の車輪速度センサVWA[rl]、右後輪用の車輪速度センサVWA[rr]を包括的に示す。
本発明に係るアンチスキッド制御装置ASCを搭載した車両は、動力源PWUの出力である駆動力が4つの車輪に伝達される。即ち、車両は4輪駆動である。しかしながら、アンチスキッド制御が実行される場合には、4輪駆動から2輪駆動に切り替えられる。このため、アンチスキッド制御の実行中には、「動力源PWUに機械的に接続され、駆動力が伝達される駆動輪」と「動力源PWUには接続されず、駆動力が伝達されない従動輪」とが存在する。ここで、駆動輪に対応するもの(部材、信号等)には添字[d*]が付され、従動輪に対応するものには添字[j*]が付され、駆動輪と従動輪とが区別される。
<本発明に係る車両のアンチスキッド制御装置の全体構成>
図1の全体構成図を参照して、本発明に係るアンチスキッド制御装置ASCについて説明する。車両は、4輪の総てが駆動輪(駆動力が伝達される車輪)である4輪駆動方式の車両である。
アンチスキッド制御装置ASCを備える車両には、制動操作部材BP、制動操作量センサBPA、ブレーキスイッチBSW、コントローラECU、車輪速度センサVWA[**]、前後加速度センサGXA、及び、ブレーキアクチュエータ(単に、「アクチュエータ」ともいう)BRKが備えられる。さらに、車両の4つの車輪WH[**]には、ブレーキキャリパCP[**]、ホイールシリンダWC[**]、回転部材KT[**]、及び、摩擦部材MS[**]が備えられる。アクチュエータBRKとホイールシリンダWC[**]とは、制動配管HK[**]を介して接続されている。
また、車両は、駆動力を発生する動力源(パワーユニット)PWUと、動力源PWUに接続されたトランスミッションTRNと、を備える。例えば、動力源PWUは、内燃機関(所謂、エンジン)、電気モータである。動力源PWUの出力(駆動力)は、トランスミッションTRNによって、前輪WH[fl]、WH[fr]と後輪WH[rl]、WH[rr]とに適宜配分されて、伝達される。ここで、駆動力は、プロペラシャフトPPSを介して、トランスミッションTRNから後輪WH[rl]、WH[rr]の側に伝達される。
そして、前輪側駆動力は、前輪ディファレンシャルFDF、及び、前輪ドライブシャフトFDSを介して、左右の前輪WH[fr]、WH[fl]に、夫々伝達される。また、後輪側駆動力は、後輪ディファレンシャルRDF、及び、後輪ドライブシャフトRDSを介して、左右の後輪WH[rr]、WH[rl]に、夫々伝達される。さらに、トランスミッションTRNには、センタディファレンシャルCDFが備えられ、前輪側駆動力と後輪側駆動力とが、車両の走行状態に応じて、適宜調整される。センタディファレンシャルCDFは、コントローラECUによって制御される。
制動操作部材(例えば、ブレーキペダル)BPは、運転者が車両を減速するために操作する部材である。制動操作部材BPが操作されることによって、車輪WH[**](単に、「WH」とも表記)に対する制動トルクが調整され、車輪WHに制動力が発生される。具体的には、車両の車輪WHには、回転部材(例えば、ブレーキディスク)KT[**]が固定される。回転部材KT[**](単に、「KT」とも表記)を挟み込むようにブレーキキャリパCP[**](単に、「CP」とも表記)が配置される。
ブレーキキャリパ(単に、キャリパともいう)CPには、ホイールシリンダWC[**](単に、「WC」とも表記)が設けられる。キャリパCPのホイールシリンダWC内の液圧が調整(増加、又は、減少)されることによって、ホイールシリンダWC内のピストンが回転部材KTに対して移動(前進、又は、後退)される。このピストンの移動によって、摩擦部材(例えば、ブレーキパッド)MS[**]が、回転部材KTに押し付けられ、押圧力が発生する。回転部材KTと車輪WHとは、一体となって回転するように固定されている。このため、上記押圧力にて生じる摩擦力によって、車輪WHに制動トルク(制動力)が発生される。
制動操作部材BPには、制動操作量センサ(単に、「操作量センサ」ともいう)BPAが設けられる。操作量センサBPAによって、運転者による制動操作部材(ブレーキペダル)BPの操作量Bpaが検出される。具体的には、制動操作量センサBPAとして、マスタシリンダMCの圧力を検出する液圧センサ、制動操作部材BPの操作変位を検出する操作変位センサ、及び、制動操作部材BPの操作力を検出する操作力センサのうちの少なくとも1つが採用される。
換言すれば、操作量センサBPAは、マスタシリンダ液圧センサ、操作変位センサ、及び、操作力センサについての総称である。従って、制動操作量Bpaは、マスタシリンダMCの液圧、制動操作部材BPの操作変位、及び、制動操作部材BPの操作力のうちの少なくとも1つに基づいて決定される。操作量Bpaは、コントローラECUに入力される。
また、制動操作部材BPには、ブレーキスイッチBSWが設けられる。ブレーキスイッチBSWは、ON/OFFスイッチであり、制動操作部材BPが操作されているか、否かを検出する。ブレーキスイッチBSWによって、制動操作部材BPが操作されている場合にはON信号がコントローラECUに送信され、制動操作部材BPが操作されていない場合にはOFF信号が送信される。
コントローラ(「電子制御ユニット」ともいう)ECUは、マイクロプロセッサ等が実装された電気回路基板と、マイクロプロセッサにプログラムされた制御アルゴリズムにて構成されている。コントローラECUには、アクチュエータBRK用のコントローラECBと、トランスミッションTRN用のコントローラECTとが含まれる。ブレーキ用コントローラECBとトランスミッション用コントローラECTとは、センサ信号、内部演算値等の情報が共有され得るよう、通信バスCMBにて接続されている。換言すれば、ブレーキ用コントローラECB、及び、トランスミッション用コントローラECTの総称が、コントローラECUである。
コントローラECU(特に、ブレーキ用コントローラECB)では、車輪速度センサVWA[**](単に、「VWA」とも表記)の検出値(車輪速度)Vwa[**](単に、「Vwa」とも表記)に基づいて、アンチスキッド制御が実行される。具体的には、車輪速度Vwaに基づいて、各車輪WHのスリップ度合を表すスリップ状態量Slp(単に、「Slp」とも表記)が演算される。そして、スリップ状態量Slp[**]に基づいて、各車輪のスリップ度合を低減するよう(即ち、過大な減速スリップSgnを抑制し、車輪WHのロック傾向を防止するよう)、ホイールシリンダWC内の液圧を調整するための駆動信号Cmdが形成され、アクチュエータBRKに送信される。ここで、駆動信号Cmdには、「減少モードMgn、又は、増加モードMzoの制御モード」、「電磁弁SVのデューティ比Dug、Duz」、及び、「電気モータMTの駆動指示」が含まれる。
コントローラECU(特に、トランスミッション用コントローラECT)では、センタディファレンシャルCDFを介して、車両の走行状態に基づいて駆動力配分制御が実行される。アンチスキッド制御が実行されていない場合には、動力源PWUからの駆動力が、前輪、後輪に適宜、配分される。即ち、アンチスキッド制御の非実行時には、センタディファレンシャルCDF内のクラッチが締結状態にされ、車両の4つの車輪WH[**]が駆動輪となっている。
一方、アンチスキッド制御が実行されている場合には、センタディファレンシャルCDF内のクラッチが解放状態にされ、所謂、2輪駆動の状態にされる。例えば、後輪WH[rl]、WH[rr]が駆動輪WH[d*]のままであり、前輪WH[fl]、WH[fr]が従動輪(駆動力を伝達しない車輪)WH[j*]に切り替えられる。ここで、センタディファレンシャルCDFのクラッチの締結(拘束)/解放状態は、トランスミッション用コントローラECTからの制御信号Cdfによって指示される。
車両の車輪WHの各々には、車輪速度センサVWAが備えられる。4つの車輪速度センサVWAによって、4つの車輪速度Vwaが検出される。車輪速度Vwaは、コントローラECU(特に、ブレーキ用コントローラECB)に入力される。
車両の車体(ばね上部分)には、前後加速度センサGXAが備えられる。前後加速度センサGXAによって、車両の前後方向(前進方向)の車体加速度(「前後加速度」ともいう)Gxaが検出される。車体加速度Gxaでは、車両が前進方向に加速状態にある場合に正(プラス)の値、車両が前進方向に減速状態にある場合に負(マイナス)の値が出力されるように設定されている。
ブレーキアクチュエータBRKによって、制動操作部材BPの操作に応じて、ホイールシリンダWCの制動液圧が発生される。加えて、アンチスキッド制御が実行される場合には、アクチュエータBRKによって、ホイールシリンダWCの制動液圧が調整(増減)される。アクチュエータBRKは、ブレーキペダルBPの操作力に応じた制動液圧を発生するマスタシリンダMC、及び、ホイールシリンダWCに供給する制動液圧を独立して調整可能な液圧ユニットHUにて構成される。マスタシリンダMC、及び、液圧ユニットHUの構成は公知であるため、簡単に説明する。
マスタシリンダMCは、制動操作部材BPと、ブレーキロッドBRDを介して、機械的に接続されている。マスタシリンダMCによって、制動操作部材BPの操作力(ブレーキペダル踏力)が、制動液の圧力に変換される。
マスタシリンダMCとホイールシリンダWCとの間には、液圧ユニットHUが設けられている。アンチスキッド制御が実行される場合には、液圧ユニットHUによって、ホイールシリンダWC[**]の制動液圧が、各輪独立にて調整される。液圧ユニットHUは、複数の電磁弁SV(例えば、ON/OFFの2位置電磁弁)、低圧リザーバRV、液圧ポンプHP、及び、電気モータMTにて構成される。
アンチスキッド制御によって、制動液圧の減少が必要な場合(「減少モードMgn」という)には、電磁弁SVのうちの常開型の増圧弁が閉状態にされ、電磁弁SVのうちの常閉型の減圧弁が開状態にされる。そして、ホイールシリンダWC内の制動液が、低圧リザーバRVに移動されるため、ホイールシリンダWCの制動液圧が減少される。ここで、減圧速度(制動液圧の減少における時間勾配)は、減圧弁のデューティ比(一定周期における通電状態の時間割合)Dugによって決定される。具体的には、デューティ比Dug「100%」が、常時、開状態に対応し、制動液圧は急減される。なお、デューティ比Dug「0%」が、常時、閉状態に対応している。
アンチスキッド制御によって、制動液圧の増加が必要な場合(「増加モードMzo」という)には、電磁弁SVのうちの増圧弁が開状態にされ、電磁弁SVのうちの減圧弁が閉状態にされる。そして、制動液が、マスタシリンダMCからホイールシリンダWCに移動され、ホイールシリンダWCの制動液圧が増加される。ここで、増圧速度(制動液圧の増加における時間勾配)は、増圧弁のデューティ比(一定周期における通電状態の時間割合)Duzによって決定される。具体的には、デューティ比Duz「0%」が、常時、開状態に対応し、制動液圧は急増される。なお、デューティ比Duz「100%」が、常時、閉状態に対応している。
減少モードMgnにおいて、低圧リザーバRVに溜まった制動液は、電気モータMTによって駆動される液圧ポンプHPによって、電磁弁SVの増圧弁とマスタシリンダMCとの間の流体路に戻される。電磁弁SV(増圧弁、減圧弁)、及び、電気モータMTは、駆動信号Cmdによって駆動(制御)される。
なお、アンチスキッド制御によって、制動液圧の保持が必要な場合には、減少モードMgn、又は、増加モードMzoにおいて、電磁弁SVの減圧弁、又は、増圧弁が、常時、閉状態にされる。具体的には、減少モードMgnにおいて、制動液圧の保持が必要な場合には、駆動信号Cmdによって、減圧弁のデューティ比Dugが「0%(常閉状態)」に決定される。また、増加モードMzoにおいて、制動液圧の保持が必要な場合には、駆動信号Cmdによって、増圧弁のデューティ比Duzが「100%(常閉状態)」に決定される。
<アンチスキッド制御の処理概要>
図2のフロー図を参照して、アンチスキッド制御(車輪の過大なスリップを低減して、車輪のロック傾向を抑制する制御)の全体的な処理の概要について説明する。このアンチスキッド制御の処理は、コントローラECB内のマイクロプロセッサにプログラムされている。
アンチスキッド制御では、4つの車輪速度Vwaのうちの少なくとも1つに基づいて、車体速度Vxaが推定される。そして、車輪速度Vwaと車体速度Vxaとの比較に基づいて、ホイールシリンダWCの制動液圧が調整される。制動液圧の調整は、減少モード(減圧モード)Mgn、及び、増加モード(増圧モード)Mzoのうちの何れか1つのモードが選択されることによって達成される。ここで、減少モードMgn、及び、増加モードMzoは、「制御モード」と総称される。
ステップS110にて、制動操作量Bpa、ブレーキスイッチ信号Bsw、車輪速度Vwa[**]、前後加速度Gxa、及び、駆動信号Cmdが読み込まれる。制動操作量Bpaは、制動操作量センサBPAからの信号であり、信号Bswは、ブレーキスイッチBSWからの信号である。また、車輪速度Vwaは、車輪WHに備えられた車輪速度センサVWAによって検出される。前後加速度Gxaは、車体に備えられた前後加速度センサGXAによって検出される。駆動信号Cmdは、コントローラECB内にて処理された駆動信号であり、制御モード(減少モードMgn、及び、増加モードMzoからの選択結果)、電磁弁SVのデューティ比(目標値)Dug、Duz等の情報を含んでいる。
ステップS120にて、制動操作量Bpa、及び、スイッチ信号Bswのうちの少なくとも1つに基づいて、「車両が制動中であるか、否か」が判定される。例えば、操作量Bpaが所定値bp0以上である場合には、制動中であることが判定され、操作量Bpaが所定値bp0未満である場合には、制動中ではないことが判定される。ここで、所定値bp0は、予め設定された判定用のしきい値であり、制動操作部材(ブレーキペダル)BPの「遊び」に相当する。また、スイッチ信号Bswがオン状態(ON信号)を表す場合には、制動中であることが判定され、スイッチ信号Bswがオフ状態(OFF信号)を表す場合には、制動中ではないことが判定される。
制動操作中ではなく、ステップS120が否定される場合(「NO」の場合)には、処理は、ステップS110に戻される。制動操作中であり、ステップS120が肯定される場合(「YES」の場合)には、処理は、ステップS130に進む。
ステップS130にて、各車輪WH[**]の車輪速度Vwa[**]に基づいて、車輪加速度(車輪速度の時間変化量)dVw[**]が演算される。具体的には、車輪加速度dVw[**](単に、「dVw」とも表記)は、車輪速度Vwa[**]が時間微分されて算出される。ここで、車輪加速度dVwは、車輪WHの回転運動が加速している場合には正(プラス)符号、車輪WHの回転運動が減速している場合には負(マイナス)符号の値として演算される。
ステップS140にて、前後加速度(検出値)Gxa、及び、車輪加速度dVwに基づいて、制御状態が決定される。「制御状態」として、「特定状態」と、該特定状態ではない「通常状態」とが存在する。特定状態は駆動輪速度Vwa[d*]に加速スリップSksの影響が残留している状態に、通常状態は駆動輪速度Vwa[d*]に加速スリップSksの影響が存在しない状態に、夫々、対応している。
ステップS140では、制御状態として、通常状態(特定状態が否定される状態)が決定される場合には、これを表示するため、制御フラグ(判定フラグ)FLsjが「0」にされる。一方、制御状態として、特定状態が決定される場合には、制御フラグFLsjが「1」にされる。なお、制御状態は、初期状態(デフォルト)として、通常状態(即ち、FLsj=0)が設定されている。制御状態の詳細な決定方法については後述する。
ステップS150にて、制御状態に基づいて、車体速度Vxaが演算される。具体的には、制御状態が通常状態である場合(FLsj=0)には、4輪速度最大値Vwa[**]dに基づいて、車体速度Vxaが演算される。ここで、「4輪速度最大値Vwa[**]d」は、4つの車輪WH[**]の車輪速度Vwa[**]のうちで最も大きい値(即ち、最速のもの)である。なお、括弧後の添字「d」によって、該当する複数のもの(例えば、車輪速度Vwa[**])のうちの「最大値」であることが表示される。また、括弧後の添字「s」によって、該当する複数のもの(例えば、車輪速度Vwa[**])のうちの「最小値」であることが表示される。
一方、制御状態が特定状態である場合(FLsj=1)には、従動輪速度最大値Vwa[j*]dに基づいて、車体速度Vxaが演算される。ここで、「従動輪速度最大値Vwa[j*]d」は、2つの従動輪WH[j*]の車輪速度Vwa[j*]のうちで大きい方(即ち、最大値)である。上記同様に、括弧後の添字「d」は、該当する複数のもの(例えば、従動輪速度Vwa[j*])のうちの「最大値」であることを表現している。
さらに、車体速度Vxaが演算される場合には、車体速度Vxaの時間変化量において制限が設けられる。即ち、車体速度Vxaの増加勾配の上限値αup、及び、減少勾配の下限値αdnが設定され、車体速度Vxaの変化が、上下限値αup、αdnによって制約される。これは、車輪WHの慣性に比較して、車両全体の慣性は、非常に大きく、変化し難いことに因る。
例えば、通常状態であること(即ち、特定状態ではないこと)が判定され、且つ、変化勾配の上下限値αup、αdnの制限を受けない場合には、4輪速度最大値Vwa[**]dが、そのまま、車体速度Vxaとして演算される。一方、上下限値αup、αdnの制限を受ける場合には、4輪速度最大値Vwa[**]dが、上下限値αup、αdnに制限されて、車体速度Vxaが演算される。
また、特定状態であることが判定され、且つ、変化勾配の上下限値αup、αdnの制限を受けない場合には、従動輪速度最大値Vwa[j*]dが、そのまま、車体速度Vxaとして決定される。一方、上下限値αup、αdnの制限を受ける場合には、従動輪速度最大値Vwa[j*]dが、上下限値αup、αdnに制限されて、車体速度Vxaが演算される。ステップS150にて、車体速度Vxaが決定された後、処理は、ステップS160に進む。
ステップS160にて、車体速度Vxaと車輪速度Vwa[**]との比較に基づいて、車輪WH[**]のスリップ状態量Slp[**]が演算される。ここで、スリップ状態量Slp[**](単に、「Slp」とも表記)は、車輪WHのスリップ度合を表す状態量(変数)である。例えば、スリップ状態量Slpとして、車体速度Vxa、及び、車輪速度Vwaの偏差であるスリップ速度が採用される(Slp[**]=Vxa−Vwa[**])。また、スリップ速度が、車体速度Vxaによって無次元化されてスリップ率(=Slp[**]/Vxa)が演算され、スリップ率が、スリップ状態量Slp[**]として採用され得る。
ステップS170にて、車輪加速度dVw[**]、及び、スリップ状態量Slp[**]に基づいて、アンチスキッド制御が実行される。具体的には、アンチスキッド制御の各制御モードには、複数のしきい値が予め設定されている。これらのしきい値と、「車輪加速度dVw[**]、及び、スリップ状態量Slp[**]」と、の相互関係に基づいて、減少モードMgn、及び、増加モードMzoのうちでの何れか1つの制御モードが選択される。加えて、減圧弁のディーティ比Dug、及び、増圧弁のディーティ比Duzが決定される。そして、選択された制御モード、及び、決定されたデューティ比に基づいて、電磁弁SVが駆動され、ホイールシリンダWCの制動液圧が調整される。加えて、低圧リザーバRVから制動液を還流するため、電気モータMTの駆動信号が形成される。
<制御状態の決定処理>
図3のフロー図を参照して、上記ステップS140の制御状態の決定処理について説明する。上述したように、制御状態には、2つの状態(通常状態と特定状態)が存在する。そして、夫々の状態が、制御フラグ(判定フラグともいう)FLsjによって表現される。具体的には、通常状態では「FLsj=0」が表示され、特定状態では「FLsj=1」が表示される。
ステップS210にて、前回の演算周期における制御状態(即ち、制御フラグFLsj)に基づいて、「特定状態であるか、否か」が判定される。「FLsj=0」であり、ステップS210が否定される場合(「NO」の場合)には、処理は、ステップS220に進む。一方、「FLsj=1」であり、ステップS210が肯定される場合(「YES」の場合)には、処理は、ステップS230に進む。なお、初期値として、制御フラグFLsjは「0」に設定されている。
ステップS220にて、車体加速度Gxa、従動輪WH[j*]の制御モード、及び、従動輪加速度dVw[j*]に基づいて、「特定状態の開始条件が満足されるか、否か」が判定される。具体的には、以下の3つの条件(a)〜(c)が、同時に満足される状態が、第1所定継続時間tkx(「所定時間」に相当)に亘って継続される場合に、特定状態の開始が判定される。ここで、第1所定継続時間tkxは、時間経過判定のためのしきい値であり、予め設定された所定値である。
(a)車体加速度Gxaが第1所定車体加速度gxx(「所定車体加速度」に相当)よりも大きい。即ち、「Gxa>gxx」が成立する。ここで、第1所定車体加速度gxxは、開始判定のためのしきい値であり、予め設定された所定値である。なお、第1所定車体加速度gxxは、「0」近傍の値で、且つ、「0」以上の値として設定され得る。例えば、第1所定車体加速度gxxは、「0」に設定される。
(b)2つの従動輪WH[j*]において、減少モードMgnが選択されている。
(c)従動輪加速度dVw[j*]が第1所定車輪加速度dvx(「所定車輪加速度」に相当)の範囲内である。換言すれば、従動輪加速度dVw[j*]の絶対値が、第1所定車輪加速度dvx以下である。即ち、「|dVw[j*]|≦dvx」が成立する。ここで、第1所定車輪加速度dvxは、開始判定のためのしきい値であり、予め設定された所定値である。なお、第1所定車輪加速度dvxは、「0」よりも大きい値である。
特定状態の開始条件が満足され、ステップS220が肯定される場合(「YES」の場合)には、処理は、ステップS240に進む。ここで、ステップS220が肯定された演算周期が、特定状態の開始時点である。一方、特定状態の開始条件が満足されず、ステップS220が否定される場合(「NO」の場合)には、処理は、ステップS250に進む。
ステップS230にて、車体加速度Gxa、各車輪WH[**]の制御モード、車輪加速度dVw[**]、及び、車輪速度Vwa[**]に基づいて、「特定状態の終了条件が満足されるか、否か」が判定される。具体的には、下記の条件(d)が、第2所定継続時間tkyに亘って継続される場合に、特定状態の終了が判定される。また、下記の3つの条件(e)〜(g)が、同時に満足される状態が、第3所定継続時間tkzに亘って継続される場合に、特定状態の終了が判定される。ここで、第2、第3所定継続時間tky、tkzは、時間経過判定のためのしきい値であり、予め設定された所定値である。
(d)車体加速度Gxaが第2所定車体加速度gxy以下である。即ち、「Gxa≦gxy」が成立する。ここで、第2所定車体加速度gxyは、終了判定のためのしきい値であり、予め設定された所定値である。なお、第2所定車体加速度gxyは、「0」近傍の値で、且つ、「0」以下の値として設定され得る。そして、第1所定車体加速度gxxとの相互関係において、第2所定車体加速度gxyは、第1所定車体加速度gxx以下の値である(即ち、gxy≦gxx)。例えば、第2所定車体加速度gxyは、「0」に設定される。
(e)4つの車輪WH[**]において、減少モードMgnが選択されている。
(f)4つの車輪加速度dVw[**]が第2所定車輪加速度dvyの範囲内である。換言すれば、車輪加速度dVw[**]の絶対値が、第2所定車輪加速度dvy以下である。即ち、「|dVw[**]|≦dvy」が成立する。ここで、第2所定車輪加速度dvyは、終了判定のためのしきい値であり、予め設定された所定値である。なお、第2所定車輪加速度dvyは、「0」よりも大きい値である。
(g)4つの車輪速度Vwa[**]のうちの最大値(4輪速度最大値)Vwa[**]dと、4つの車輪速度Vwa[**]のうちの最小値(4輪速度最小値)Vwa[**]sとの差eVwが所定速度vwy以下である。即ち、「Vwa[**]d−Vwa[**]s(=eVw)≦vwy」が成立する。ここで、所定速度vwyは、終了判定のためのしきい値であり、予め設定された所定値である。上述したように、括弧後の添字「d」は、該当する複数の信号のうちの「最大値」を表示し、括弧後の添字「s」は、該当する複数の信号のうちの「最小値」を表示する。
並行して、ステップS230では、特定状態の継続時間Tkjに基づいて、「特定状態の終了条件が満足されるか、否か」が判定される。具体的には、継続時間Tkjが所定特定時間tsj以上の場合に、特定状態の終了が判定される。従って、継続時間Tkjが所定特定時間tsj未満の場合には、特定状態の終了は判定されず、特定状態が継続される。即ち、継続時間Tkjが所定特定時間tsjに一致した時点(演算周期)にて、制御状態が、特定状態から通常状態に切り替えられる。ここで、所定特定時間tsjは、終了判定のためのしきい値であり、予め設定された所定値である。
特定状態の終了条件が満足され、ステップS230が肯定される場合(「YES」の場合)には、処理は、ステップS260に進む。ここで、ステップS230が肯定された演算周期が、特定状態の終了時点である。一方、特定状態の終了条件が満足されず、ステップS230が否定される場合(「NO」の場合)には、処理は、ステップS270に進む。
ステップS240にて、特定状態が開始される。具体的には、制御状態が、通常状態から特定状態に切り替えられる。特定状態の開始時点(演算周期)にて、制御フラグFLsjが、「0」から「1」に切り替えられる。
ステップS250では、特定状態は開始されず、制御状態は、通常状態のままに維持される。即ち、制御フラグFLsjは、「0」のままである。
ステップS260にて、特定状態が終了される。具体的には、制御状態が、特定状態から通常状態に切り替えられる。特定状態の終了時点(演算周期)にて、制御フラグFLsjが、「0」から「1」に切り替えられる。
ステップS270では、特定状態は終了されず、制御状態は、特定状態のままに維持される。即ち、制御フラグFLsjは、「1」のままである。
ステップS240からステップS270までの処理にて、制御状態(即ち、制御フラグFLsj)が設定され、処理は、ステップS150に進む。ステップS150では、制御フラグFLsjが「0」である場合(特定状態ではないと判定される場合)には、車体速度Vxaが、4輪速度最大値Vwa[**]dに基づいて演算される。一方、制御フラグFLsjが「1」である場合(特定状態であることが判定される場合)には、車体速度Vxaが、従動輪速度最大値Vwa[j*]dに基づいて演算される。
≪特定状態の開始処理≫
先ず、特定状態の開始処理の意味合いについて説明する。上記の条件(a)によって、車両は未だ加速中であることが判定される。即ち、条件(a)が成立する場合に、駆動輪WH[d*]に加速スリップSksの影響が存在することが識別される。
また、上記の条件(b)が前提とされた上で、上記の条件(c)によって、制動トルクと路面反力とが平衡状態に近づきつつある(又は、既に平衡状態にある)ことが判定される。これは、「制動トルクと、路面からの反力とが平衡状態に近付きつつあると、車輪加速度dVwの絶対値が減少していく」という事象に基づく。即ち、減少モードMgnでは、制動トルクは増加されないため、従動輪加速度dVw[j*]が第1所定車輪加速度dvxの範囲内であることによって、従動輪速度Vwa[j*]が急激に変化している状態ではなく、或る程度まで収束したことが示されている。従って、条件(b)、(c)によって、車体速度Vxaの演算において、従動輪速度Vwa[j*]が採用され得る状態であることが判定される。
上記の3つの条件が全て成立している状態が、第1所定継続時間tkxに亘って継続した時点で、制御状態が、通常状態から特定状態に切り替えられる(即ち、特定状態が開始される)。特定状態の開始時点では、駆動輪WH[d*]には、加速スリップSksの影響が残るが、従動輪WH[j*]には、加速スリップSksの影響は存在しない。このため、車体速度Vxaの演算に、4輪速度最大値Vwa[**]dに代えて、従動輪速度最大値Vwa[j*]dが採用されることで、加速スリップSksの影響が補償される。結果、不必要な制動トルクの減少が抑制され、車両の減速度が確保され得る。以上、特定状態の開始処理の意味合いについて説明した。
≪特定状態の終了処理≫
次に、特定状態の終了処理の意味合いについて説明する。上記の条件(d)が満足されることは、車両は減速状態となり、駆動輪WH[d*]の加速スリップSksの影響は解消されたことを表している。また、上記の条件(e)が前提となって、上記の条件(f)が成立したことは、車輪速度Vwa[**]の変化が或る程度収束し、車輪速度Vwa[**]が車体速度Vxaの演算に採用可能な状態になったことを示している。さらに、上記の条件(g)によって、車輪速度Vwa[**]の収束状態が確認される。
上記の条件(d)が成立した状態が、第2所定継続時間tkyに亘って継続した時点で、制御状態が、特定状態から通常状態に切り替えられる(即ち、特定状態が終了される)。また、上記の条件(e)〜(g)の3つが全て成立した状態が、第3所定継続時間tkzに亘って継続した時点で、制御状態が、特定状態から通常状態に切り替えられる。特定状態は、車体速度Vxaの演算において、特殊な状態である。このため、車輪速度Vwa[**]が、車体速度Vxaの演算に採用可能になったことが判定されて、通常の状態での、車体速度Vxaの演算に復帰される。なお、上記の条件(g)は、省略され得る。該条件は、車輪速度Vwa[**]の収束状態の重複確認であることに因る。
アンチスキッド制御が実行されている途中では、既に、運転者の加速操作は終了されている。このため、駆動輪WH[d*]における加速スリップSksの影響は、長時間に亘っては継続されない。従って、特定状態の継続時間Tkjが所定特定時間tsj以上になった場合には、特定状態は終了され、通常状態に戻される。以上、特定状態の終了処理の意味合いについて説明した。
<作用・効果>
図4の時系列線図を参照して、本発明に係る車両のASCの作用・効果について説明する。急加速した直後に、急制動が行われ、アンチスキッド制御が実行された場合が想定されている。上述したように、記号末尾の添字[**]は、各車輪の包括記号である。添字[**]は省略されることもある。また、添字[d*]は駆動輪を表し、添字[j*]は従動輪を表す。
時点t0まで、車両は急加速され、4つの車輪WH[**]には、加速スリップSksが生じている。時点t0にて、加速操作が終了され、直後の時点t1にて、急激な制動操作が開始され、時点t2にて、アンチスキッド制御が開始される。アンチスキッド制御が開始された時点t2にて、4輪駆動状態から、2輪駆動状態に切り替えられる。即ち、時点t2で、4つの駆動輪WH[d*]は、2つの駆動輪WH[d*]と、2つの従動輪WH[j*]とに変更される。
時点t2から時点t3までの間は、特定状態の開始条件が満足されていない。従って、制御状態は、初期状態である、通常状態(FLsj=0)のままである。このため、車体速度Vxaは、4輪速度最大値Vwa[**]d(特に、加速スリップSksの影響が残る、駆動輪速度Vwa[d*]のうちの大きい方)に基づいて演算されている。
時点t3にて、特定状態の開始条件が満足される。具体的には、「前後加速度Gxaが第1所定車体加速度gxxより大きい(Gxa>gxx)」、且つ、「2つの従動輪WH[j*]が、ともに、減少モードMgn」、且つ、「2つの従動輪加速度dVw[j*]が第1所定車輪加速度dvxの範囲内(|dVw[j*]|≦dvx)」の状態が、第1所定継続時間tkxに亘って、連続的に満足される。換言すれば、開始条件として、「上記(a)〜(c)の3条件が、同時に成立する状態が第1所定継続時間tkxに亘って継続されること」が採用される。なお、第1所定車体加速度gxx(≧0)、第1所定車輪加速度dvx、及び、第1所定継続時間tkxは、開始判定のためのしきい値であり、予め設定された所定値である。
そして、時点t3にて、制御状態において、通常状態(FLsj=0)から特定状態(FLsj=1)に遷移される。これにより、車体速度Vxaは、4輪速度最大値Vwa[**]d(4つの車輪速度Vwaのうちで最速のもの)に代えて、従動輪速度最大値Vwa[j*]d(2つの従動輪速度Vwa[j*]のうちで速い方)に基づいて演算される(図中の矢印を参照)。従動輪速度最大値Vwa[j*]dには、加速スリップSksは含まれない。従って、従動輪速度最大値Vwa[j*]dに基づいて車体速度Vxaが演算されることにより、スリップ状態量Slpが適切に演算される。結果、制御モード(特に、減少モードMgn)が適切に選択され、車両が確実に減速され得る。
時点t4にて、特定状態の終了条件が満足される。具体的には、「4つの車輪WH[**]の全てが減少モードMgn」、且つ、「4つの車輪加速度dVw[**]が第2所定車輪加速度dvyの範囲内(|dVw[**]|≦dvy)」の状態が、第3所定継続時間tkzに亘って、連続的に満足される。換言すれば、終了条件として、「上記(e)、(f)の2条件が、同時に成立する状態が第3所定継続時間tkzに亘って継続されること」が採用される。なお、第2所定車輪加速度dvy、及び、第3所定継続時間tkzは、終了判定のためのしきい値であり、予め設定された所定値である。
そして、時点t4にて、制御状態において、特定状態(FLsj=1)から通常状態(FLsj=0)に遷移される。これにより、車体速度Vxaは、従動輪速度最大値Vwa[j*]dに代えて、4輪速度最大値Vwa[**]dに基づいて演算される。時点t4では、駆動輪速度Vwa[d*]には、既に、加速スリップSksは含まれなくなっている。このため、通常の車体速度Vxaの演算方法である、4輪速度最大値Vwa[**]dに基づくものに戻される。
特定状態の終了条件には、「4つの車輪速度Vwa[**]のうちの最大値(4輪速度最大値)Vwa[**]dと、4つの車輪速度Vwa[**]のうちの最小値(4輪速度最小値)Vwa[**]sとの差eVwが所定速度vwy以下(Vwa[**]d−Vwa[**]s≦vwy)」が、上記の2条件に追加され得る。即ち、終了条件として、「上記(e)〜(g)の3条件が、同時に成立する状態が第3所定継続時間tkzに亘って継続されること」が採用される。「全ての車輪速度Vwa[**]が所定速度vwy内に収まること」が条件に足されることによって、車輪速度Vwa(特に、駆動輪速度Vwa[d*])の収束状態が確実に判定され得る。なお、所定速度vwyは、判定のためのしきい値であり、予め設定された所定値である。
さらに、特定状態の終了条件として、「前後加速度Gxaが第2所定車体加速度gxy以下(Gxa≦gxy)の状態が、第2所定継続時間tkyに亘って継続されること」が採用され得る。該条件が満足される場合には、加速スリップSksの影響が、最早残留していない状態であることに因る。ここで、第2所定車体加速度gxy(≦0)、及び、第2所定継続時間tkyは、終了判定のためのしきい値であり、予め設定された所定値である。なお、「gxx≧gxy」の関係があり、例えば、「gxx=gxy=0」に設定され得る。
<他の実施形態>
以下、他の実施形態について説明する。他の実施形態においても、上記同様の効果(車体速度Vxaの演算における、加速スリップ影響の低減)を奏する。
上記実施形態では、ディスク型制動装置(ディスクブレーキ)の構成が例示された。この場合、摩擦部材MSはブレーキパッドであり、回転部材KTはブレーキディスクである。ディスク型制動装置に代えて、ドラム型制動装置(ドラムブレーキ)が採用され得る。ドラムブレーキの場合、キャリパCPに代えて、ブレーキドラムが採用される。また、摩擦部材MSはブレーキシューであり、回転部材KTはブレーキドラムである。
上記実施形態では、車輪WHに制動トルクを付与する装置として、制動液を介した液圧式のものが例示された。これに代えて、電気モータによって駆動される、電動式のものが採用され得る。電動式装置では、電気モータの回転動力が、直線動力に変換され、これによって、摩擦部材MSが回転部材KTに押し付けられる。従って、制動液の圧力に依らず、電気モータによって、直接、制動トルクが発生される。さらに、前輪用として、制動液を介した液圧式のものが採用され、後輪用として、電動式のものが採用された、複合型の構成が形成され得る。
上記実施形態では、4輪駆動状態が解消された場合の2輪駆動の構成として、後輪駆動になるもの(前輪が従動輪であり、後輪が駆動輪である構成)が例示された。これに代えて、2輪駆動の構成として、前輪駆動に切り替えられるもの(前輪が駆動輪、後輪が従動輪の構成)が採用され得る。この構成であっても、駆動信号Cdfに応じた、センタディファレンシャルCDFの締結/解放によって、4輪駆動状態/2輪駆動状態が、夫々、切り替えられる。
加速スリップSksの影響は、アンチスキッド制御の開始直後に現れる。このため、特定状態の開始処理は、アンチスキッド制御の開始後の所定時間tst内に限定され得る。具体的には、アンチスキッド制御の開始時点から所定時間tstを経過するまでは、特定状態の開始判定(ステップS220の処理)は許可される。しかし、所定時間tstを経過した以降は、該開始判定処理は禁止され得る。なお、所定時間tstは、制限判定のためのしきい値であり、予め設定された所定値である。
上記の所定時間tstに代えて、減少モードMgnの回数が採用され得る。即ち、アンチスキッド制御の開始後のn回目までの減少モードMgnにおいては特定状態の開始判定(ステップS220の処理)は許可される。しかし、(n+1)回目以降の減少モードMgnにおいては、該開始判定処理は禁止される。なお、「n」は、所定回数(所定の正の整数)であり、例えば、「n=1」として設定され得る。
さらに、車両の加速状態量が検出され、これに基づいて、特定状態の開始判定の要否が判定され得る。具体的には、加速状態量が所定値以上の場合には、特定状態の開始判定の処理が実行されるが、加速状態量が所定値未満の場合には、特定状態の開始判定の処理が禁止され得る。なお、加速状態量は、加速操作部材(アクセルペダル)の操作量、動力源PWU(内燃機関)のスロットル開度、噴射量、及び、動力源PWU(駆動モータ)の通電量のうちの少なくとも1つに基づいて演算され得る。