実施形態の詳細な説明
今般開示される主題は、スーパー抗原は従前に示されるようにCD28と直接結合するだけでなく、CD28補助リガンド、すなわち、B7−2とも結合するという驚くべき発見に基づく。本明細書では、スーパー抗原によるB7−2の結合がスーパー抗原機能に不可欠であることが示される。
また、本明細書では、スーパー抗原はそのホモ二量体界面においてB7−2と会合することも示される。以下に示される実施例から明らかなように、B7−2二量体界面の短いペプチド模倣物は、ヒト末梢血単核細胞において、多様なスーパー抗原と結合し、スーパー抗原により媒介されるIL2、IFN−γおよびTNF−αの誘導を阻害し、in vivoにおいて致死的スーパー抗原刺激からマウスを保護する有効なアンタゴニストである。
よって、B7−2二量体界面は、スーパー抗原中毒に対する新規な治療標的として役立つ。この発見は、B7−2の二量体界面を模倣するペプチドを介して、スーパー抗原とB7−2の二量体界面との、またはCD28の二量体界面との不可欠な相互作用を遮断することを含む、スーパー抗原中毒の後遺症に対する新規な宿主指向治療アプローチを提供する。
これまで、B7−2は、免疫応答において補助刺激リガンドとして機能するとだけ考えられていた。以下に示す実施例が、スーパー抗原である、あるクラスの微生物病原体に対する受容体としてのB7−2の予期しない新規な役割を明らかにする。よって、直接的結合を介して、スーパー抗原は、CD28(10)、MHC−IIおよびTCRの使用だけでなく、B7−2の使用も独創的とする。
B7−2ホモ二量体界面の短いペプチド模倣物は、例えば、実施例1に示されるように、本明細書では、ヒト末梢血単核細胞においてスーパー抗原により媒介されるIL2、IFN−γおよびTNF−αの誘導を阻害できることが示される。さらに、B7−2ホモ二量体界面のこれらの短いペプチド模倣物はまた、実施例3および図5に示されるように、in vivoにおいて致死的毒素刺激からマウスを保護する有効なSEBアンタゴニストであることも示される。
本開示はまた、SEBとB7−2の二量体界面に由来するペプチドに関して見られる相互作用(図3Aおよび図3B)から暗示されるように、スーパー抗原はその二量体界面においてB7−2と直接会合することを示す。
よって、B7−2の二量体界面は、スーパー抗原中毒に対する新規な治療標的として役立つ。特に、例えば、図1に示されるように、B7−2の二量体界面に由来するペプチドD−Ala−pB2−4およびD−Ala−pB2−6(それぞれ配列番号6および配列番号10で示されるように両末端にD−Alaが隣接している)は、マウスにおいて特定のスーパー抗原SEBの致死性を遮断した。図5に示されるように、1/5の対照マウスだけがSEB刺激から生残し、SEB投与時にD−Ala−pB2−4およびD−Ala−pB2−6をそれぞれ受容した4/5および5/5のマウスが生残を示した。注目すべきは、これらのペプチドはSEBの2〜2.4倍モル過剰が存在するだけで保護を示した。さらに、図1に示されるように、これもまたB7−2の二量体界面に由来し、pB2−4のC末端領域とpB2−6のN末端領域の両方とオーバーラップするB7−2の二量体界面の領域にわたるD−Ala−pB2−7(配列番号12で示される)は、D−Ala−pB2−7(配列番号12で示される)がSEBとほぼ等モル比で存在する場合であっても、マウスにおいてSEB刺激に対して保護力があることを示し、6/6のマウスが生残した(図5)。この高い有効性は、B7−2二量体界面がスーパー抗原に対して有害な応答の媒介に重要な役割を果たすことを示唆する。
CD28だけでなくその補助リガンドB7−2も、スーパー抗原である、あるクラスの微生物病原体の直接的センサーであるという発見は、病原体パターン認識機構の範囲を拡大する。
本明細書の下記に示される発見の直接的結果は、B7−2またはCD28二量体界面のいずれのペプチド模倣物も二重のアンタゴニスト活性を有し、いずれの受容体に対しても相互にスーパー抗原の結合に干渉する。ここで述べられるこの二重の作用は、B7−2二量体界面のデカペプチド模倣物であるD−Ala−pB2−7(配列番号12で示されるアミノ酸配列を有する)、またはCD28二量体界面のオクタペプチド模倣物(10)であるp2TAが、238アミノ酸のタンパク質分子であるスーパー抗原が、B7−2またはCD28のいずれかと結合することに加えてTCRおよびMHC−II分子と相互作用するという事実にもかかわらず、なぜSEBによる致死的刺激からマウスを効果的に保護できるかを説明し得る。
スーパー抗原はTCRおよびMHC−II分子と、ならびにCD28とマイクロモルの親和性で会合することが従前に報告されており(10)、これは本明細書の以下に示される、B7−2二量体界面ペプチドも多様なスーパー抗原に対してマイクロモルの親和性を示すという結果(表2参照)と一致する。B7−2を含むその4つの受容体に対するスーパー抗原の大きいとはいえない親和性は、同様に大きいとはいえない親和性で結合するペプチドがなぜシナプスを乱し、従って、Th1サイトカイン応答を減弱することができるかを説明し得る。
また、SEBによるTh1サイトカイン応答の活性化はB7−2に依存するがB7−1には依存せず、B7−2に対するモノクローナル抗体により排除されるということも従前に報告されている(10)。これらの結果は、MYPPPYドメインにおけるB7−2とCD28の相互作用を介した補助刺激の必要によって説明できるが、以下に示される本発明者らの発見は、スーパー抗原は異なるドメイン、すなわち、複合二量体界面においてB7−2と直接会合することを実証する(1)。この結合はスーパー抗原の作用に重要であるということは、ex vivoおよびin vivoの両方において以下に示されるように、B7−2二量体界面ペプチドの強力なスーパー抗原アンタゴニスト活性により強く裏づけられる。
CD28およびB7−2はアミノ酸配列およびそれらのホモ二量体界面における構造が異なり、ヘテロ二量体を形成しないが、スーパー抗原はこれらの受容体のいずれにもマイクロモル範囲の親和性で結合することができる。
スーパー抗原およびMHC−II、TCRおよびCD28またはB7−2のいずれかの間の4分子複合体の形成は構造上実現可能である。抗原提示細胞とT細胞の間の免疫シナプス内では、複数のCD28およびB7−2分子がB7−2/CD28ペアとして互いに会合し、それによりネットワークを作っていると仮定されている(1)。よって、理論に縛られるものではないが、両方の受容体が免疫シナプス内で会合されている限り、所与のペア内の両方にではなく一方だけの受容体にスーパー抗原が結合することでT細胞の活性化亢進には十分であると考えられる。シナプスでは、IL10の誘導ではなく、有害な炎症性サイトカイン誘導のシグナル伝達を達成するには、複数のスーパー抗原分子が共働的にCD28およびB7−2と会合しなければならない。これらの発見は、スーパー抗原作用に関する現在の見解を修正する。
B7−2二量体界面は、補助刺激における役割は知られておらず、従前に報告されているようにCD28結合部位から十分に分離されている。スーパー抗原の会合はB7−2単量体間の接触に取って代わるはずであり、B7−2単量体はCD28とは異なって二量体界面の外側で分子間ジスルフィド結合を介して連結されておらず、従って、再二量体化に二次結合反応を必要とする。以下に示される実施例は、スーパー抗原がおそらくはB7−2/CD28軸を介してシグナル伝達を活性化するB7−2の立体配座変化を誘導するという解釈を裏づける。SEBは、Th1およびTh2サイトカインの活発な発現を誘導するが、ここでIL2、IFN−γおよびTNF−α遺伝子の誘導により定義されるTh1応答のみがB7−2の会合に依存する。このことは、これまでのところIL4およびIL10の誘導ではなく、スーパー抗原によるIL2、IFN−γおよびTNF−α遺伝子の誘導における、CD28の選択的要求を反映している(10)。この応答を減弱することにより、本開示によるアンタゴニストペプチドはこれらのサイトカイン間の相乗作用を軽減し、生存を可能とするであろう。
よって、本発明者らの今般の発見に基づけば、これにより、スーパー抗原とB7−2の二量体界面の不可欠な相互作用を、B7−2の二量体界面を模倣するペプチドによって遮断することを含む、スーパー抗原中毒の後遺症に対する新規な宿主指向治療アプローチが提供される。
従って、ヒトB7−2の細胞外ドメインの領域内の結晶学的二量体界面の少なくとも1個のアミノ酸残基を含んでなる、単離および精製されたペプチドであって、前記領域は配列番号13で示されるアミノ酸配列からなり、前記結晶学的二量体界面は、配列番号13のアミノ酸残基Thr−11、Leu−26、Ser−27、Leu−46、Gly−47、Lys−48、Glu−49、Phe−51、Met−59、Gly−60、Arg−61、Thr−62、Ser−63、Phe−64、Asp−65、Ser−66、Asp−67、Arg−72、His−74およびAsn−75からなり、前記単離および精製されたペプチドは、そのC末端および/またはN末端に少なくとも2個の付加的アミノ酸残基をさらに含んでなり、前記付加的アミノ酸残基は、配列番号13内の前記結晶学的二量体界面の前記少なくとも1個のアミノ酸残基にすぐ隣接する配列番号13の連続するアミノ酸残基であり、前記単離および精製されたペプチドは、3〜約30個のアミノ酸残基からなる、単離および精製されたペプチド、ならびにその機能的断片および誘導体が今般開示される。
本明細書に言及されるヒトB7−1(CD80、受託番号NM_005191)およびB7−2(CD86、受託番号1I85_A)は、(1)に記載の通りである。別段の記載がない限り、用語「B7−1」および「B7−2」は、それぞれヒトB7−1(「hB7−1」とも呼ばれる)およびヒトB7−2(「hB7−2」とも呼ばれる)を意味する。
本明細書で使用する場合、用語「結晶学的二量体界面」は、2つの同一の単量体タンパク質分子間に形成される接点を意味する。理論に縛られるものではないが、これらの接点は各単量体タンパク質分子の界面に含まれる特定のアミノ酸残基間で形成される疎水結合、ファンデルワールス力、および塩橋に基づき、それにより、二量体化界面が形成される。当技術分野で公知のように、また、本明細書で以下に示されるように、各単量体タンパク質分子の界面に含まれ、二量体界面形成の際に会合される特定のアミノ酸残基は、一次アミノ酸配列内に必ずしも連続するアミノ酸残基として位置しなくてよい。用語「B7−1の結晶学的二量体界面」および「B7−1の二量体界面」は、本明細書では互換的に使用される。用語「B7−2の結晶学的二量体界面」および「B7−2の二量体界面」は、本明細書では互換的に使用される。
特に、今般開示される主題は、単量体hB7−2タンパク質分子間で形成される二量体界面(B7−2の結晶学的二量体界面とも呼ばれる)に関する。ヒト7−2二量体界面の形成に関与する特定の残基は、Schwartzらにより従前に報告されており(1)、図1に下線で示される。B7−2の二量体界面は、ヒトB7−2およびの細胞外ドメインの領域内に位置し、よって、今般開示される主題は、ヒトB7−2の細胞外ドメインの領域内の二量体界面の少なくとも1個のアミノ酸残基からなる単離および精製されたペプチドを提供する。
従って、上記で詳細に示すように、今般開示される主題は、ヒトB7−2の細胞外ドメインの領域内の二量体界面の少なくとも1個のアミノ酸残基を含んでなる単離および精製されたペプチドを提供し、前記ヒトB7−2の細胞外ドメインの領域は、配列番号13で示されるアミノ酸配列、すなわち、アミノ酸配列
からなる。以下のアミノ酸残基が単量体B7−2タンパク質分子間の二量体界面の形成に関与する:配列番号13のナンバリングに基づきThr−11、Leu−26、Ser−27、Leu−46、Gly−47、Lys−48、Glu−49、Phe−51、Met−59、Gly−60、Arg−61、Thr−62、Ser−63、Phe−64、Asp−65、Ser−66、Asp−67、Arg−72、His−74およびAsn−75。
よって、本開示による単離および精製されたペプチドは、上記に列挙された単量体B7−2タンパク質分子間での二量体界面の形成に関与するアミノ酸残基のうちの少なくとも1個と、そのC末端および/またはN末端のそれぞれにおける少なくとも2個の付加的アミノ酸残基とからなり、前記付加的アミノ酸残基は、配列番号13の前記二量体界面の前記少なくとも1個のアミノ酸残基にすぐ隣接する配列番号13の連続するアミノ酸残基であり、前記単離および精製されたペプチドは、3〜約30個のアミノ酸残基からなり、ならびにその機能的断片および誘導体である。
よって、上記およびその他の実施形態では、本開示による単離および精製されたペプチドの長さはアミノ酸残基3〜約30個である。いくつかの実施形態では、本開示による単離および精製されたペプチドの長さは、アミノ酸残基3〜29、3〜28、3〜27、3〜26、3〜25、3〜24、3〜23、3〜22、3〜21、3〜20、3〜19、3〜18、3〜17、3〜16、3〜15、3〜14、3〜13、3〜12、3〜11、3〜10、3〜9、3〜8、3〜7、3〜6、3〜5、3〜4個である。特定のペプチドは、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13および14個のアミノ酸残基からなる。本発明によるペプチドの誘導体(このペプチドは1以上のアミノ酸残基で延長される)は、以下に記載されるようにより長くてよい。
今般開示される主題の上記およびその他の実施形態では、本発明による単離および精製されたペプチドは、前記結晶学的二量体界面の前記少なくとも1個のアミノ酸残基と、そのC末端および/またはN末端における2〜約8個、例えば、2〜8個、3〜8個、4〜8個、5〜8個、6〜8個または7〜8個、より具体的には、2、3、4、5、6、7または8個の前記付加的アミノ酸残基とを含んでなり、ならびにその機能的断片および誘導体である。
本明細書で定義される用語「アミノ酸配列の連続するアミノ酸残基」は、前記二量体界面の前記少なくとも1個のアミノ酸残基にすぐ隣接する位置の、参照アミノ酸配列(すなわち、配列番号13または配列番号14)のアミノ酸残基に相当し、参照アミノ酸配列において連続している(順々に位置する)アミノ酸残基を意味する。
用語「アミノ酸配列のアミノ酸にすぐ隣接する」とは、本明細書で使用する場合、相当する位置において/参照アミノ酸残基において、このアミノ酸残基に隣接する、またはすぐ前にある、またはすぐ後ろに続くアミノ酸残基を意味する。
いくつかの実施形態では、今般開示される主題の単離および精製されたペプチドは、配列番号5(EKFDSVHSKYM、ペプチドpB2−4とも呼ばれる)、配列番号9(DSDSWTLR ペプチドpB2−6とも呼ばれる)、配列番号11(MGRTSFDSDS、pB2−7とも呼ばれる)、配列番号18(FNETADLP)、配列番号20(NQSLSELV)、配列番号22(YLGKEKFD)、配列番号24(TLRLHNLQ)、配列番号26(YMGRTSFDSD)、および配列番号44(LGKEKFDSVHSKYMGRTSFDSDSWTLRLHN(で示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列、ならびにその機能的断片および誘導体からなる。
他の実施形態では、今般開示される主題による単離および精製されたペプチドは、配列番号11(MGRTSFDSDS、pB2−7とも呼ばれる)、配列番号5(EKFDSVHSKYM、ペプチドpB2−4とも呼ばれる)および配列番号9(DSDSWTLR ペプチドpB2−6とも呼ばれる)で示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列、ならびにその機能的断片および誘導体からなる。
特定の実施形態では、今般開示される主題による単離および精製されたペプチドは、配列番号5(EKFDSVHSKYM、ペプチドpB2−4とも呼ばれる)で示されるアミノ酸配列である。
他の特定の実施形態では、今般開示される主題による単離および精製されたペプチドは、配列番号9(DSDSWTLR ペプチドpB2−6とも呼ばれる)で示されるアミノ酸配列である。
さらなる特定の実施形態では、今般開示される主題による単離および精製されたペプチドは、配列番号11(MGRTSFDSDS、pB2−7とも呼ばれる)で示されるアミノ酸配列である。
上記で定義されるようにヒトB7−2の細胞外ドメインの二量体界面の少なくとも1個のアミノ酸残基を含んでなる単離および精製されたペプチドだけが、サイトカイン誘導を旺盛に阻害することが示されたことに注目される。例えば図2Aに示されるように、前記二量体界面のアミノ酸残基を含んでならないペプチドD−Ala−pB2−2、D−Ala−pB2−3およびD−Ala−pB2−5(下記の表3に示されるアミノ酸配列を有する)は、ヒトPBMCにおいてSEBにより媒介されるIFN−γの誘導を阻害できなかったが、D−Ala−pB2−4およびD−Ala−pB2−6は極めて強い阻害活性を示した。同様に、図2Bに示されるように、D−Ala−pB2−4およびD−Ala−pB2−6はSEBによるIL2およびTNF−αの誘導を阻害したが、他の3つのペプチドD−Ala−pB2−2、D−Ala−pB2−3およびD−Ala−pB2−5ペプチドは阻害しなかった。
別の態様によれば、今般開示される主題は、ヒトB7−1の細胞外ドメインの領域内の結晶学的二量体界面の少なくとも1個のアミノ酸残基を含んでなる単離および精製されたペプチドであって、前記領域は、配列番号14で示されるアミノ酸配列からなり、前記結晶学的二量体界面は、配列番号14のアミノ酸残基Val−15、Leu−29、Ala−30、Ser−48、Gly−49、Asp−50、Met−51、Lys−58、Asn−59、Arg−60、Thr−61、Ile−62、Phe−63、Asp−64、Ile−65、Thr−66、Val−72、Leu−74およびAla−75からなり、前記単離および精製されたペプチドは、そのC末端および/またはN末端に少なくとも2個の付加的アミノ酸残基をさらに含んでなり、前記付加的アミノ酸残基は、配列番号14内の前記結晶学的二量体界面の前記少なくとも1個のアミノ酸残基にすぐ隣接する配列番号14の連続するアミノ酸残基であり、前記単離および精製されたペプチドは、3〜約30個のアミノ酸残基からなる、単離および精製されたペプチド、ならびにその機能的断片および誘導体を提供する。
よって、上記に示されるように、今般開示される主題はまた、hB7−2と同族のhB7−1の単量体タンパク質分子間で形成される二量体界面にも関する。
B7−1は、B7−2と同族であり、両方とも抗原提示細胞(APC)の表面で発現される補助刺激リガンドとして働く。T細胞補助刺激受容体CD28およびCTLA−4へのこれらの分子の結合は、T細胞免疫の活性化および調節に不可欠である。強い構造的類似性にもかかわらず、B7−1とB7−2は、異なる生化学的特徴を示し、それらの補助刺激受容体への結合は、異なるT細胞の機能的帰結ともたらす。
ヒトB7−1二量体界面の形成に関与する特定の残基は、Schwartz, J.C. et al.(1およびその中の参照文献)にも記載されている。加えて、ヒトB7−1二量体界面の形成に関与する特定の残基のいくつかは図12に下線で示されている。
B7−1の二量体界面は、ヒトB7−1の細胞外ドメインの領域内に位置し、従って、本発明は、ヒトB7−1の細胞外ドメインの領域内の二量体界面の少なくとも1個のアミノ酸残基からなる単離および精製されたペプチドを提供する。
従って、今般開示される主題は、ヒトB7−1の細胞外ドメインの領域内の二量体界面の少なくとも1個のアミノ酸残基を含んでなる単離および精製されたペプチドに関し、前記領域は、配列番号14で示されるアミノ酸配列、すなわち、アミノ酸配列:
からなる。
以下のアミノ酸残基が単量体B7−1タンパク質分子間の二量体界面の形成に関与する:配列番号14のナンバリングに基づきVal−15、Leu−29、Ala−30、Ser−48、Gly−49、Asp−50、Met−51、Lys−58、Asn−59、Arg−60、Thr−61、Ile−62、Phe−63、Asp−64、Ile−65、Thr−66、Val−72、Leu−74およびAla−75。
よって、本開示によるB7−1関連の単離および精製されたペプチドは、上記に列挙された単量体B7−1タンパク質分子間での二量体界面の形成に関与するアミノ酸残基のうちの少なくとも1個と、そのC末端および/またはN末端のそれぞれにおける少なくとも2個の付加的アミノ酸残基からなり、前記付加的アミノ酸残基は、配列番号14の前記二量体界面の前記少なくとも1個のアミノ酸残基にすぐ隣接する配列番号14の連続するアミノ酸残基であり、前記単離および精製されたペプチドは3〜約30個のアミノ酸残基からなり、ならびにその機能的断片および誘導体である。
よって、上記およびその他の実施形態では、本開示によるB7−1関連の単離および精製されたペプチドは、上記に列挙された単量体B7−1タンパク質分子間での二量体界面の形成に関与するアミノ酸残基のうちの少なくとも1個と、そのC末端および/またはN末端のそれぞれにおける、配列番号14でそれにすぐ隣接する2〜約8個の連続するアミノ酸残基とからなり、およびその機能的誘導体である。
言い換えれば、いくつかの実施形態では、本発明による単離および精製されたペプチド ば、ヒトB7−1の細胞外ドメインの領域内の結晶学的二量体界面の前記少なくとも1個のアミノ酸残基を含んでなり、前記領域は、配列番号14で示されるアミノ酸配列と、そのC末端および/またはN末端における2〜約8個、例えば、2〜8個、3〜8個、4〜8個、5〜8個、6〜8個または7〜8個、より具体的には、2、3、4、5、6、7または8個の付加的アミノ酸残基とからなり、前記付加的アミノ酸残基は、配列番号14で前記結晶学的二量体界面の前記少なくとも1個のアミノ酸残基にすぐ隣接して位置する配列番号14の連続するアミノ酸残基であり、ならびにその機能的断片および誘導体である。
いくつかの実施形態では、本発明によるB7−1関連の単離および精製されたペプチドは、配列番号28(VKEVATLS)、配列番号30(VEELAQTR)、配列番号32(MSGDMNIW)、配列番号34(SIVILALR)、配列番号36(YKNRTIFDIT)、配列番号38(MNIWPEYK、pB1−4で示される)、配列番号40(KNRTIFDITN、pB1−7で示される)および配列番号42(DITNNLSIV、pB1−6で示される)、配列番号46(SGDMNIWPEYKNRTIFDITNNLSIVILA)および配列番号48(YKNRTIFD、pB1−8で示される)で示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列からなる単離および精製されたペプチドおよび機能的誘導体からなる。
さらなる実施形態では、本発明によるB7−1関連の単離および精製されたペプチドは、配列番号38(MNIWPEYK、pB1−4で示される)、配列番号40(KNRTIFDITN、pB1−7で示される)、配列番号42(DITNNLSIV、pB1−6で示される)、配列番号46(SGDMNIWPEYKNRTIFDITNNLSIVILA)および配列番号48(YKNRTIFD、pB1−8で示される)で示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列からなる単離および精製されたペプチドおよびその機能的誘導体からなる。
上記で示されるように、今般開示される主題は、ヒトB7−2の細胞外ドメインの領域内の二量体界面の少なくとも1個のアミノ酸残基からなる単離および精製されたペプチド、またはヒトB7−1の細胞外ドメインの領域内の二量体界面の少なくとも1個のアミノ酸残基からなる単離および精製されたペプチド、およびその機能的誘導体を提供する。用語「ペプチド」、「オリゴペプチド」または「ポリペプチド」は、本明細書で使用する場合、ペプチド結合により連結されたアミノ酸残基を意味する。
より具体的には、「アミノ酸配列」または「ペプチド配列」は、ペプチド結合により連結されたアミノ酸残基がペプチドおよびタンパク質の鎖内にある順序である。配列は一般に、遊離アミノ基を含むN末端からアミドを含むC末端へと示される。
用語「アミノ酸」は、本明細書で使用する場合、天然および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様に機能し得るアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物を意味する。天然アミノ酸は、遺伝コードによりコードされているもの、ならびに後に修飾されたアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、およびO−ホスホセリンである。「アミノ酸類似体」は、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を有する化合物を意味する。このような類似体は、改変されたR基または改変されたペプチド骨格を有するが、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。「アミノ酸模倣物」は、アミノ酸の一般化学構造とは異なる構造を有するが天然アミノ酸と同様に機能する化学化合物を意味する。アミノ酸は、本明細書には、それらの一般に知られている三文字記号またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される一文字記号によって言及され得る。
本発明によるポリペプチドは合成により、または組換えDNA技術により生産可能であることに留意されたい。ポリペプチド、ペプチドの生産方法は当技術分野で周知である。
これらの任意のペプチドに加えて、今般開示される主題にはさらにそのいずれの機能的断片も包含されることに留意されたい。これらの開示の範囲内の「機能的断片」は、開示される新規なペプチドの3〜約20個のアミノ酸残基断片であり、その少なくとも1個のアミノ酸残基は、本ヒトB7−2由来ペプチドの断片としては、ヒトB7−2の二量体界面のアミノ酸残基(配列番号13のThr−11、Leu−26、Ser−27、Leu−46、Gly−47、Lys−48、Glu−49、Phe−51、Met−59、Gly−60、Arg−61、Thr−62、Ser−63、Phe−64、Asp−65、Ser−66、Asp−67、Arg−72、His−74およびAsn−75)、または本ヒトB7−1由来ペプチドの断片としては、ヒトB7−1の二量体界面の少なくとも1個のアミノ酸残基(配列番号14のVal−15、Leu−29、Ala−30、Ser−48、Gly−49、Asp−50、Met−51、Lys−58、Asn−59、Arg−60、Thr−61、Ile−62、Phe−63、Asp−64、Ile−65、Thr−66、Val−72、Leu−74およびAla−75)である。
本発明の任意のペプチドに加えて、本発明はさらにそのいずれの機能的誘導体も包含することに留意されたい。用語「誘導体」の「機能的誘導体」(functional derivative" of “derivative”)は、元のポリペプチドの活性を変化させないそのアミノ酸配列(ペプチド)に対する任意の挿入、欠失、置換および修飾を有するアミノ酸配列(ペプチド)を定義して使用される。用語「誘導体」とはまた、そのホモログ、変異体および類似体、ならびに本発明に従ってなされるポリペプチドの共有結合的修飾を意味する。
用語「断片」、「誘導体」および「機能的誘導体」は、本明細書で使用する場合、本明細書に記載されるように、細菌およびその他の感染、ならびにそれらに関連する炎症に治療上影響を与えるそれらの能力に干渉しない、そのペプチドに対する任意の挿入、欠失、置換および修飾を有する、本発明の任意のペプチド、具体的には、本明細書に定義されるhB−1模倣ペプチドまたはhB−2模倣ペプチドを意味する。
いくつかの実施形態では、誘導体は、今般開示される主題において具体的に定義されるペプチドとはアミノ酸残基の挿入または欠失によって異なるペプチドを意味する。用語「挿入」または「欠失」とは、本明細書で使用する場合、本発明により使用されるポリペプチドに対するアミノ酸残基の、1〜50個の間のアミノ酸残基、1〜1個の間のアミノ酸残基(between 1 to 1 amino acid residues)、特に、1〜10個のアミノ酸残基の、それぞれいずの付加または欠失も意味すると認識されるべきである。より詳しくは、挿入または欠失は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸のうちのいずれか1つであり得る。本発明により包含される挿入または欠失は、改変ペプチドのいずれの位置ならびにそのN末端および/またはC末端にあってもよいことに留意されたい。
限定されない例として、用語「改変」は、本明細書で使用する場合、正電荷を有する、負電荷を有する、または中性の、今般開示される主題によるペプチドの誘導体を意味する。加えて、本発明のペプチドは、内部架橋、短距離環化、延長または他の化学修飾によって獲得可能な二量体、多量体または制約立体配座の形態であってよい。
さらに、本ペプチドは、そのN末端および/またはC末端において、種々の同一または異なるアミノ酸残基で延長されてもよい。このような延長の一例として、ペプチドは、そのN末端および/またはC末端において、天然または合成アミノ酸残基であり得る同一または異なる疎水性アミノ酸残基で延長されてもよい。ペプチドがそのN末端および/またはC末端で延長され得る特定の合成アミノ酸残基は、D−アラニンである。
このような延長のさらなる例は、そのN末端および/またはC末端の両方においてシステイン残基で延長されたペプチドにより提供され得る。いくつかの実施形態では、今般開示されるペプチドは、それらのN末端を介してラウリル−システイン(LC)残基とおよび/またはそれらのC末端を介してシステイン(C)残基と結合させることができる。本来、このような延長は、ジスルフィド結合の形成からのCys−Cys環化のために制約立体配座をもたらし得る。
別の例として、リシンをリンカーとして機能させ、パルミチン酸を疎水性アンカーとして機能させるN末端リシル−パルミトイルテールの組み込みが挙げられる。加えて、本ペプチドは、天然または合成アミノ酸残基であり得る芳香族アミノ酸残基で延長されてもよく、例えば、特定の芳香族アミノ酸残基はトリプトファンであり得る。本ペプチドは、そのN末端および/またはC末端において、非天然または合成アミノ酸である種々の同一または異なる有機部分で延長されてもよい。このような延長の一例として、ペプチドはそのN末端および/またはC末端において、N−アセチル基で延長されてもよい。
今般開示される主題において使用され、本明細書に開示されるどの単一のペプチド配列についても、ペプチド鎖の方向が逆転された対応する逆転配列、および総てのアミノ酸がD系に属すものも含まれる。
今般開示される主題はまた、本明細書に開示されるペプチドのいずれの置換も包含する。機能的に同等のアミノ酸を示す保存的置換表は当技術分野で周知である。このような保存的修飾変異体は、本発明の多型変異体、種間ホモログ、ならびに対立遺伝子および類似体ペプチドに加えてのものであり、それらを排除するものではない。
例えば、脂肪族アミノ酸(G、A、I、L、またはV)がその群の別のメンバーで置換されるもの、またはある極性残基の別のものでの置換、例えば、アルギニンをリシン、グルタミン酸をアスパラギン酸、またはグルタミンをアスパラギンなどの置換を行うことができる。以下の8群のそれぞれは、互いに保存的置換となる他の例示的アミノ酸を含む:
1)アラニン(A)、グリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リシン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7)セリン(S)、トレオニン(T);および
8)システイン(C)、メチオニン(M)
より具体的には、アミノ酸「置換」は、あるアミノ酸を、類似の構造的および/または化学的特性を有する別のアミノ酸で置換することの結果、すなわち、保存的アミノ酸置換である。アミノ酸置換は、含まれる残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/または両親媒性の類似性に基づいて行うことができる。例えば、非極性「疎水性」アミノ酸は、バリン(V)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、システイン(C)、アラニン(A)、チロシン(Y)、ヒスチジン(H)、トレオニン(T)、セリン(S)、プロリン(P)、グリシン(G)、アルギニン(R)およびリシン(K)からなる群から選択され;「極性」アミノ酸は、アルギニン(R)、リシン(K)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)からなる群から選択され;「正電荷」アミノ酸は、アルギニン(R)、リシン(K)およびヒスチジン(H)から選択され;「酸性」アミノ酸は、アスパラギン酸(D)、アスパラギン(N)、グルタミン酸(E)およびグルタミン(Q)からなる群から選択される。
今般開示される主題はまた、今般開示される主題によるそれらのアミノ酸配列により特に定義される、本明細書に開示されるペプチドのホモログ、変異体および類似体(ヒトB7−2の二量体界面に由来するペプチド(本明細書では「hB7−2模倣ペプチド」とも呼ばれる)またはヒトB7−1の二量体界面に由来するペプチド(本明細書では「hB7−1模倣ペプチド」とも呼ばれる)のいずれか)を包含する。
いくつかの実施形態では、今般開示される主題による単離および精製されたペプチドの機能的誘導体は、
i.そのN末端および/またはC末端において、配列番号13で示されるアミノ酸配列の対応する位置にすぐ隣接して存在する1〜4個の連続するアミノ酸残基だけ延長された前記B7−2模倣ペプチド;
ii.そのN末端および/またはC末端において、
(a)システインによりまたはラウリルシステインにより;
(b)非天然有機部分によりまたは合成アミノ酸残基により;
(c)N−アセチルまたはリシル−パルミトイル残基により;
(d)天然または合成アミノ酸残基であり得る1または複数の疎水性アミノ酸残基により、
延長された前記B7−2模倣ペプチド;または
iii.(i)および(ii)のペプチドのいずれかの二量体または多量体;
iv.前記B7−2模倣ペプチドの制約立体配座;
v.挿入、欠失、置換から選択される少なくとも1つの合成突然変異により改変された、前記B7−2模倣ペプチドのいずれかおよび(i)〜(iv)に定義されるそれらの誘導体であって、改変ペプチドが前記二量体界面の少なくとも1個のアミノ酸残基を含んでなる、前記B7−2模倣ペプチドのいずれかおよび(i)〜(iv)に定義されるそれらの誘導体
のうちのいずれか1つであり、前記誘導体は3〜約40個のアミノ酸残基からなる。
いくつかの他の実施形態では、今般開示される主題による単離および精製されたペプチドの機能的誘導体は、
i.そのN末端および/またはC末端において、配列番号14で示されるアミノ酸配列の対応する位置にすぐ隣接して存在する1〜4個の連続するアミノ酸残基だけ延長された前記B7−1模倣ペプチド;
ii.そのN末端および/またはC末端において、
(a)システインによりまたはラウリルシステインにより;
(b)非天然有機部分によりまたは合成アミノ酸残基により;
(c)N−アセチルまたはリシル−パルミトイル残基により;
(d)天然または合成アミノ酸残基であり得る1または複数の疎水性アミノ酸残基により、
延長された前記B7−1模倣ペプチド;または
iii.(i)および(ii)のペプチドのいずれかの二量体または多量体;
iv.前記B7−1模倣ペプチドの制約立体配座;
v.挿入、欠失、置換から選択される少なくとも1つの合成突然変異により改変された、前記B7−1模倣ペプチドのいずれかおよび(i)〜(iv)に定義されるそれらの誘導体であって、改変ペプチドが前記二量体界面の少なくとも1個のアミノ酸残基を含んでなる、前記B7−1模倣ペプチドのいずれかおよび(i)〜(iv)に定義されるそれらの誘導体
のうちのいずれか1つであり、前記誘導体は3〜約40個のアミノ酸残基からなる。
いくつかの特定の実施形態では、今般開示される主題による単離されたペプチドは、そのN末端および/またはそのC末端においてD−Alaアミノ酸残基で延長されている。
さらなる実施形態では、今般開示される主題による単離されたペプチドは、そのN末端および/またはそのC末端においてアミノ酸D−Alaで延長され、hB7−2の二量体界面に由来するペプチドでは、配列番号6、配列番号10、配列番号12、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27および配列番号45からなる群から、また、hB7−1の二量体界面に由来するペプチドでは、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号47および配列番号49からなる群から選択される。
いくつかの実施形態では、本明細書で定義される単離されたペプチドは、配列番号6で示されるアミノ酸配列(D−A)EKFDSVHSKYM(D−A)からなるペプチド(本明細書ではペプチドD−Ala−pB2−4とも呼ばれる)、配列番号10で示されるアミノ酸配列(D−A)DSDSWTLR(D−A)からなるペプチド(本明細書ではペプチドD−Ala−pB2−6とも呼ばれる)および配列番号12で示されるアミノ酸配列(D−A)MGRTSFDSDS(D−A)からなるペプチド(本明細書ではペプチドD−Ala−pB2−7とも呼ばれる)のうちのいずれか1つである。
特定の実施形態では、本明細書で定義される単離されたペプチドは、配列番号6で示されるアミノ酸配列(D−A)EKFDSVHSKYM(D−A)のものである(本明細書ではペプチドD−Ala−pB2−4とも呼ばれる)。
他の特定の実施形態では、本明細書で定義される単離されたペプチドは、配列番号10で示されるアミノ酸配列(D−A)DSDSWTLR(D−A)のものである(本発明ではペプチドD−Ala−pB2−6とも呼ばれる)。
さらなる特定の実施形態では、本明細書で定義される単離されたペプチドは、配列番号12で示されるアミノ酸配列(D−A)MGRTSFDSDS(D−A)のものである(本発明ではペプチドD−Ala−pB2−7とも呼ばれる)。
D−Ala残基は、単に生物学的アッセイにおいてより大きなプロテアーゼ耐性を付与するために、本開示のhB7−2模倣ペプチドのC末端およびN末端に付加された。用語「D−Ala−」および「(D−A)」は、本明細書では互換的に使用される。
さらなる特定の実施形態では、本明細書で定義される単離されたペプチドは、配列番号39で示されるアミノ酸配列(D−A)MNIWPEYK(D−A)からなるペプチド(D−Ala−pB1−4とも呼ばれる)、配列番号41で示されるアミノ酸配列(D−A)KNRTIFDITN(D−A)からなるペプチド(D−Ala−pB1−7とも呼ばれる)、配列番号43で示されるアミノ酸配列(D−Ala)DITNNLSIV(D−Ala)からなるペプチド(D−Ala−pB1−6とも呼ばれる)、および配列番号49で示されるアミノ酸配列(D−Ala)YKNRTIFD(D−Ala)からなるペプチド(D−Ala−pB1−8とも呼ばれる)のうちのいずれか1つである。
D−Ala残基は、単に生物学的アッセイにおいてより大きなプロテアーゼ耐性を付与するために、本開示のhB7−1模倣ペプチドのC末端およびN末端に付加された。
本開示の全ての態様および実施形態による単離および精製されたペプチド、およびそれらの機能的断片および誘導体は、合成、非天然、人造ペプチドである。本ペプチドは、それらのアミノ酸のいずれかまたは総てがそれ自体天然である場合でも、合成、非天然、人造ペプチドである。
用語「合成ペプチド」、「非天然ペプチド」および「人造ペプチド」は、本明細書で使用する場合、それらの特定の長さおよびアミノ酸配列ではそれ自体、自然界に見られないペプチドを意味すると理解されるべきである。
本明細書で使用する場合、今般開示される主題に関して用語「単離された」は、天然ペプチドと部分的なまたは完全な相同性を持ち得るアミノ酸配列を意味し、ポリペプチドはタンパク質であるが、限定されない長さであり、そのような天然配列とは少なくとも長さが異なる。例えば、今般開示される主題による単離されたペプチドは、ヒトB7−2またはヒトB7−1の細胞外ドメインの領域の、それらの自然環境ではそれ自体見られるとは思われない、より短い特定の定義される断片であり得る。単離されたペプチドは一般に、合成により、化学合成により、化学的にまたは酵素的に、天然配列を切断することにより、または場合により組換え技術によって調製される。
従って、「単離された」とは、アミノ酸分子が精製された程度を必ずしも表さない。しかしながら、ある程度まで生成されたこのような分子は「単離された」と理解されるであろう。前記分子が自然環境中に存在しなければ、すなわち、それらが自然界に存在しなければ、その分子はそれが存在する場所にかかわらず「単離された」ものである。
さらに、用語「精製された」または「実質的に精製された」は、ペプチドに適用される場合、それらのペプチドが、それらが自然状態で随伴している他の細胞成分を実質的に含まないことを表す。むしろ、これらのペプチドは、乾燥状態でも溶液中にあってもよいが、均質な状態である。純度および均質性は一般に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーなどの分析化学技術を用いて決定される。調製物中に存在する優勢種であるペプチド分子は精製されているか、または実質的に精製されている。
本開示はさらに、有効成分として本明細書で定義される少なくとも1種類の単離および精製されたペプチドを含んでなり、場合によりさらに薬学上許容可能な担体、希釈剤、アジュバントおよび/または賦形剤を含んでなる医薬組成物を提供する。
いくつかの実施形態では、本明細書で定義される医薬組成物は、有効成分として、少なくとも1種類、または少なくとも2種類、または少なくとも3種類またはそれを超える本明細書で定義される単離および精製されたペプチドを含んでなり、場合によりさらに薬学上許容可能な担体、希釈剤、アジュバントおよび/または賦形剤を含んでなる。
以下の実施例3および図5Aおよび5Bに示されるように、SEB刺激の30分前にペプチドD−Ala−pB2−4、D−Ala−pB2−6およびD−Ala−pB2−7を投与されたSEB刺激マウスは、SEB刺激から生残した(図5A)。特に、ペプチドD−Ala−pB2−7は、SEBの2〜3倍モル過剰が存在するだけで保護を示した(図5B)。この高い有効性は、スーパー抗原に対する有害応答の媒介におけるB7−2二量体界面の重要な役割を裏づける。
従って、その態様の別のもので、本開示は、細菌病原体、細菌病原体の混合物および/または毒性細菌成分により誘発される敗血症、毒性ショック、敗血性ショック、重度敗血症、機能喪失および結果としての死亡のうちの少なくとも1つに対して防御免疫を惹起するための、開示されるペプチドおよび本明細書で定義される、それらを含んでなる医薬組成物を提供する。
本明細書で定義される用語「防御免疫を惹起する」は、致死的病原性細菌および/または致死的毒性細菌成分に感染した動物を敗血性ショック、敗血症および/または重度敗血症、それらのいずれかからの機能喪失および結果としての死亡を含む、誘発される毒性ショックから保護し、それにより、誘発される毒性ショックからの感染/刺激動物の救済および生残をもたらすことを意味する。
理論に縛られるものではないが、致死的病原性細菌および/または致死的毒性細菌成分に感染した動物の処置および救済の結果は、致死的細菌病原体/および/または毒性細菌成分により誘発される毒性ショック、敗血性ショック、重度敗血症、機能喪失および結果としての死亡に対しての長期防御免疫の付与であり得、感染/刺激動物は球性ショックから生残するだけでなく、以降のいかなる毒素刺激に対しても防御免疫を獲得することも示唆される。これは毒性ショックをもたらす細胞性免疫応答を誘発する毒素の能力を遮断することによるためであり、本開示のアンタゴニストペプチドは、スーパー抗原に、それ自体に向けられる免疫応答を誘発させることができる。
もう1つのその態様によれば、本開示は、必要とするヒト対象において、細菌病原体、細菌病原体の混合物および/または毒性細菌成分により誘発される敗血症、毒性ショック、敗血性ショック、重度敗血症、機能喪失および結果としての死亡のうちの少なくとも1つに対する防御免疫を惹起するための方法において使用するための本明細書で定義されるペプチドを提供する。
その態様のさらに別のものによれば、本開示は、必要とするヒト対象において、細菌病原体、細菌病原体の混合物および/または毒性細菌成分により誘発される敗血症、毒性ショック、敗血性ショック、重度敗血症、機能喪失および結果としての死亡のうちの少なくとも1つに対する防御免疫を惹起するための方法において使用するための、本明細書で定義される医薬組成物を提供する。
今般開示される主題の医薬組成物は一般に、緩衝剤、その浸透圧を調整する薬剤、および場合により、1以上の薬学上許容可能な担体、希釈剤、アジュバントおよび/または賦形剤および/または当技術分野で公知の添加剤を含んでなる。補助有効成分はも本組成物に配合することができる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用により、分散物の場合には必要な粒径の維持により、および界面活性剤の使用によって維持することができる。担体、希釈剤、アジュバントおよび/または賦形剤は、本ペプチドの活性に干渉しない。
今般開示されるペプチドの塩およびエステルも今般開示される主題に包含される。本明細書で定義される用語「塩」は、薬学上許容可能な塩、例えば、当技術分野で周知の方法によって製造される、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、アンモニウム、およびプロタミン亜鉛塩を含む、製薬工業で慣用される非毒性アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびアンモニウム塩を意味する。この用語はまた、本明細書で使用される有効化合物を好適な有機または無機酸と反応させることにより一般に調製される非毒性酸付加塩も含む。特定の酸付加塩は、塩酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩またはマロン酸塩、およびそれらの溶媒和物、例えば、水和物であり得る。
本明細書で定義される用語「エステル」は、薬学上許容可能なエステル、例えば、エステル結合の加水分解時に、そのカルボン酸またはアルコールの生物学的有効性および特性を保持し、かつ、生物学的にまたはそれ以外の点でも望ましくないものではないエステルを意味する。一般に、エステル形成は、従来の合成技術によって達成することができる。
特定の実施形態では、前記医薬組成物は、徐放もしくは制御放出形、または徐放/制御放出形と即放形の組合せであり得る。
開示される主題の上記およびその他の実施形態では、ペプチドは医薬単位投与形に含まれてよく、前記投与形は場合によりさらに、生理学上適合する添加剤、担体、ペプチド安定剤、希釈剤および賦形剤のうちの少なくとも1つを含んでなる。例えば、前記投与形は、場合によりさらにプロテアーゼ阻害剤を含んでなる。
開示される主題の上記およびその他の態様および実施形態では、医薬組成物は、ヒト対象において細菌感染およびそれに関連する急性炎症のうちの少なくとも1つを処置するために使用することができる。
ヒトの細菌感染は一般に、グラム陽性菌、グラム陰性菌および毒性細菌成分のうちの少なくとも1つによって誘発される。感染が2種類以上の細菌による場合、それは以下に定義されるように他微生物感染と呼ばれることがある。
よって、開示される主題の上記およびその他の実施形態では、医薬組成物は、グラム陽性菌、グラム陰性菌、および少なくとも1つの毒性細菌成分のうちの少なくとも1つによって誘発される細菌感染およびそれに関連する急性炎症のうち少なくとも1つを処置するために市油することができる。
特定の実施形態では、ペプチドまたは有効成分として少なくとも1つの本明細書で定義される単離および精製されたペプチドを含んでなる医薬組成物は、必要とするヒト対象において細菌感染およびそれに関連する急性炎症のうち少なくとも1つを処置する方法において使用するためのものであり、前記医薬組成物は場合によりさらに、薬学上許容可能な担体、希釈剤、アジュバントおよび/または賦形剤を含んでなる。
本明細書で定義され、当技術分野で公知のグラム陰性菌は、グラム染色プロトコールにおいて、外膜の存在が染料の浸透を妨げるためにクリスタルバイオレット色素を保持しない細菌である。これに対して、グラム陽性菌は、脱色溶液中で洗浄した際にクリスタルバイオレット色素を保持する。グラム陰性菌の病原能は、多くの場合、グラム陰性細胞エンベロープ、特に、リポ多糖(LPS)層の特定の成分に関連する。ヒトでは、LPSはサイトカインの産生および免疫系の活性化を特徴とする自然免疫応答を誘発し、これが多くの場合炎症に関連する。
よって、開示される主題の上記およびその他の実施形態では、グラム陰性菌は、限定されるものではないが、プロテオバクテリア、大腸菌、サルモネラ菌属、赤痢菌属、腸内細菌科、シュードモナス、モラクセラ、ヘリコバクター、ブデロビブリオ属、ステノトロホモナス、酢酸菌、レジオネラ、アルファプロテオバクテリア、ボルバキア、グラム陰性球菌、ナイセリア種、淋菌、髄膜炎菌、モラクセラ・カタラーリス、グラム陰性桿菌、インフルエンザ菌、肺炎桿菌、レジオネラ・ニューモフィラ、緑膿菌、プロテウス・ミラビリス、エンテロバクター・クロアカ、霊菌、ピロリ菌、腸炎菌、チフス菌、アシネトバクター・バウマニ、野兎病菌、ビブリオ属、バルニフィカス、コレラ菌、フルビアリス、腸炎ビブリオ、アルギノリチカス、フォトバクター・ダムセラ、アエロモナス・ヒドロフィラ、ウェルシュ菌、クロストリジウム・ヒストリチカム、プリフィロモナス/プレボテラ種 プレボテラ・インテルメディア、プレボテラ・ブッケ、プレボテラ種、バクテロイデス・ユニフォルミスおよびNDM−1細菌株のうちのいずれか1つであり得る。
当技術分野で公知のグラム陽性菌は、本明細書では、上記に列挙されるグラム陰性菌とは対照的にグラム染色によって暗青色または紫色に染まる細菌として定義される。限定されない例として、A群連鎖球菌属(GAS)は、侵襲性および非侵襲性感染の両方の広範な原因とあるグラム陽性菌である。GASは、連鎖球菌性毒素ショック症候群などの侵襲性連鎖球菌感染症の病因に重要であると考えられている、ある範囲のスーパー抗原性毒素を産生する。
よって、開示される主題の上記およびその他の実施形態では、グラム陽性菌は、A群連鎖球菌属、化膿連鎖球菌、肺炎連鎖球菌、B群連鎖球菌属、糞便連鎖球菌、D群連鎖球菌属、G群連鎖球菌属、緑色連鎖球菌、ストレプトコッカス・ミレリ、プロピオニバクテリウム種、エンテロコッカス・フェシウム、ペプトストレプトコッカス種、微好気性連鎖球菌、乳酸菌種、表皮ブドウ球菌および黄色ブドウ球菌からなる群から選択される。
黄色ブドウ球菌(S.オーレウスまたはStaph.オーレウスとも呼ばれる)の細菌は、ヒト気道および皮膚によく見られる条件的嫌気性グラム陽性球菌である。黄色ブドウ球菌は、常に病原性であるわけではなく、皮膚感染(例えば、腫脹)、呼吸器系疾患(例えば、副鼻腔炎)、および食中毒の一般的な原因である。疾患関連系統は、強力なタンパク質毒素を産生することにより感染を促進する場合が多い。病原体性黄色ブドウ球菌の抗生物質耐性形態の出現は、臨床医療における世界的な問題である。
化膿連鎖球菌は、A群連鎖球菌感染症の原因である球形のグラム陽性菌である。化膿連鎖球菌は、その細胞壁にA群連鎖球菌抗原を呈する。世界で毎年7億を超える感染があり、死亡率25%の650,000症例を超える重度侵襲性感染があると推計される。早期の発見および処置が重要であり、診断し損なうと、敗血症および死に至り得る。
用語「多微生物感染」は、本明細書で使用する場合、数種の細菌からなる/数種の細菌による感染を意味するものと理解されるべきである。細菌感染は、グラム陽性菌の混合物、グラム陰性菌の混合物またはグラム陽性とグラム陰性菌の両方の混合物によって引き起こされる得る。多微生物感染はまた、好気性細菌、嫌気性細菌または両方の混合物によっても引き起こされ得る。
よって、開示される主題の上記およびその他の実施形態では、前記多微生物感染は、グラム陽性菌、グラム陰性菌、またはそれらの組合せによって誘発される。
細菌毒素およびその他の毒性細菌成分は当技術分野で周知である。細菌は、外毒素または内毒素のいずれかとして分類できる毒素を生成する。外毒素は生成されて活発に分泌されるが、内毒素は細菌の部分に留まる。内毒素に対する宿主の応答は、重篤な炎症を含み得る。一般に炎症プロセスは通常、臨床的には感染宿主に有益であると考えられるが、その反応が重度であれば、敗血症に至り得る。特に、用語「スーパー抗原毒素」または「スーパー抗原」(「SAg」とも呼ばれる)は、本明細書で使用する場合、T細胞の非特異的活性化を生じ、ポリクローナルT細胞の活性化および多量のサイトカイン放出をもたらす細菌発熱性外毒素のクラスを意味する。
ブドウ球菌内毒素B(SEB)は、グラム陽性球菌である黄色ブドウ球菌により産生される腸毒素である。それは多くの場合で経口摂取の数時間以内に始まる重度の下痢、悪心および腸痙攣を伴う食中毒の一般的な原因である。極めて安定であるので、毒素は、混入細菌が死滅した後でも活性を維持し得る。毒素は100℃で数分の煮沸に耐え得る。SEBは、免疫系に多量のサイトカインを放出させて多大な炎症をもたらすスーパー抗原と見なされる。
毒素ショック症候群毒素(TSST)は、黄色ブドウ球菌単離株の5〜25%で産生される22KDaの大きさのスーパー抗原である。TSSTは、多量のインターロイキン−1、インターロイキン−2、および腫瘍壊死因子(TNF)の放出を刺激することによって毒素ショック症候群(TSS)を引き起こす。一般に、この毒素は血中で増殖する細菌によって産生されず、感染の局部で産生された後、血中に入る。
TSST−1は、感受性宿主内の黄色ブドウ球菌株により分泌される原型のスーパー抗原であり、炎症、発熱、およびショックを引き起こすことにより血管系に作用する。TSST−1を産生する菌株は、ほとんどが感染女性の膣で棲息する(全TSS症例の3分の1が男性に見られる)。
連鎖球菌有糸分裂促進性外毒素Z(SMEZ)は、連鎖球菌ゲノムにより産生される最も強力なスーパー抗原性毒素の1つである。SMEZをコードする遺伝子は、調べられた総てのGAS株に存在している。SMEZとGAS疾患の関連を実証する、これまでに利用可能な臨床データはないが、SMEZにより示される有病率、効力、および抗原変異は、このスーパー抗原が連鎖球菌疾患の病因において重要な機能を持ち得ることを示唆する。
本明細書で使用する場合、用語「リポ多糖」(LPS)、または「リポグリカン」は、共有結合によって連結された脂質と多糖からなる大分子を意味し;LPSは、グラム陰性菌の外膜に見られ、内毒素として作用し、動物において強い免疫応答を惹起する。LPSは、その構造的完全性に大きく寄与する、グラム陰性菌の細菌細胞壁の主成分である。LPSは内毒素であり、正常な動物免疫系から強い応答を誘導する。
よって、開示される主題の総ての態様および実施形態で、前記毒性細菌成分は、外毒素、内毒素、スーパー抗原毒素、病原体関連分子パターン(PAMP)、傷害関連分子パターン分子(DAMP)、リポ多糖またはそれらの毒性成分、自然免疫系の細胞により認識される病原体群に関連する分子、およびToll様受容体(TLR)により認識される病原体群に関連する分子からなる群から選択されるが、これらに限定されない。
よって、今般開示される主題による医薬組成物は、プロテオバクテリア、大腸菌、サルモネラ菌属、赤痢菌属、腸内細菌科、シュードモナス、モラクセラ、ヘリコバクター、ブデロビブリオ属、ステノトロホモナス、酢酸菌、レジオネラ、アルファプロテオバクテリア、ボルバキア、グラム陰性球菌、ナイセリア種、淋菌、髄膜炎菌、モラクセラ・カタラーリス、グラム陰性桿菌、インフルエンザ菌、肺炎桿菌、レジオネラ・ニューモフィラ、緑膿菌、プロテウス・ミラビリス、エンテロバクター・クロアカ、霊菌、ピロリ菌、腸炎菌、チフス菌、アシネトバクター・バウマニ、野兎病菌、ビブリオ属、バルニフィカス、コレラ菌、フルビアリス、腸炎ビブリオ、アルギノリチカス、フォトバクター・ダムセラ、アエロモナス・ヒドロフィラ、ウェルシュ菌、クロストリジウム・ヒストリチカム、プリフィロモナス/プレボテラ種 プレボテラ・インテルメディア、プレボテラ・ブッケ、プレボテラ種、バクテロイデス・ユニフォルミスおよびNDM−1細菌株からなる群から選択されるグラム陰性菌、A群連鎖球菌属、化膿連鎖球菌、肺炎連鎖球菌、B群連鎖球菌属、糞便連鎖球菌、D群連鎖球菌属、G群連鎖球菌属、緑色連鎖球菌、ストレプトコッカス・ミレリ、プロピオニバクテリウム種、エンテロコッカス・フェシウム、ペプトストレプトコッカス種、微好気性連鎖球菌、乳酸菌種、表皮ブドウ球菌および黄色ブドウ球菌、またはそれらの組合せからなる群から選択されるグラム陽性菌、外毒素、内毒素、スーパー抗原性毒素、病原体関連分子パターン(PAMP)、傷害関連分子パターン分子(DAMP)、リポ多糖、ペプチドグリカンまたはそれらの毒性成分、自然免疫系の細胞により認識される病原体群に関連する分子、およびToll様受容体(TLR)により認識される病原体群に関連する分子からなる群から選択される毒性細菌成分により誘発される感染の処置において使用することができる。
特定の実施形態では、少なくとも1つの毒性細菌成分は、スーパー抗原性毒素である。さらなる特定の実施形態では、本明細書で定義される医薬組成物は、少なくとも1つの毒性細菌成分がスーパー抗原性毒素であるものである。
開示される主題の上記およびその他の実施形態では、投与は、いかの経路:経口投与、静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、くも膜下腔内 皮下注射のいずれによって行ってもよく、または前記投与は吸入による。静脈内投与は持続的投与、具体的には、約10〜約30分の時間であり得る。静脈内投与はあるいはプッシュ投与であってもよい。
開示される主題の上記およびその他の実施形態では、本発明による医薬組成物は、経口投与および非経口投与のいずれか1つのためのものである。
開示される主題の上記およびその他の実施形態では、本発明による医薬組成物は、経口投与および静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、くも膜下腔内、皮下注射のいずれか1つのためのものであり、または前記投与は吸入による。
今般開示される主題のさらなる実施形態では、非経口投与は、静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内の、くも膜下腔内、皮下注射のいずれか1つであり、または前記投与は吸入による。
さらに、必要とするヒト対象において細菌感染およびそれに関連する急性炎症のうちの少なくとも1つを処置する方法であって、前記対象に治療上有効な量の本明細書に定義される少なくとも1種類のペプチドまたは本明細書に定義される、前記を含んでなる組成物を投与することを含んでなる方法が開示される。この方法はまた、本明細書では「処置方法」とも呼ばれる。
本明細書で定義される用語「治療する」または「処置」またはその形態は、それを必要とする対象においてその疾患もしくは病態の悪化を予防すること、またはその疾患もしくは病態を停止させること、または緩和すること、または治癒させることを意味する。
本明細書で定義される目的でのペプチドの「治療上有効な量」(または複数の量)という用語は、その医学的状態を知立させる、または少なくとも停止させる、または少なくとも緩和するために、当技術分野で公知の考慮事項により決定される。
いくつかの実施形態では、本明細書で定義される治療上有効な量は、約0.1〜約60μg/Kg前記対象の体重である。
さらに、必要とするヒト対象において、細菌病原体、細菌病原体の混合物および/または少なくとも1つの毒性細菌成分により誘発される敗血症、毒性ショック、敗血性ショック、重度敗血症、機能喪失および結果としての死亡のうちの少なくとも1つに対する防御免疫を惹起するための方法が開示され、前記方法は、前記対象に免疫学的に有効な量の本明細書で定義されるペプチドまたはそれを含んでなる薬学上許容可能な組成物を投与することを含んでなる。この方法では、少なくとも1つの毒性細菌成分は、外毒素、内毒素、スーパー抗原性毒素、病原体関連分子パターン(PAMP)、傷害関連分子パターン分子(DAMP)、リポ多糖、ペプチドグリカンまたはそれらの毒性成分、自然免疫系の細胞により認識される病原体群に関連する分子、およびToll様受容体(TLR)により認識される病原体群に関連する分子、具体的には、スーパー抗原性毒素からなる群から選択され得る。特定の実施形態では、毒性細菌成分は、限定されるものではないが、SEB、SMEZまたはTSST−1である。今般開示されるペプチドの、これらの毒素に対する有効性は、実施例1に示される。この方法はまた、本明細書では「免疫付与の方法」とも呼ばれる。
ペプチドの「免疫学的に有効な量」(または複数の量)という用語は、原性細菌および/または毒性細菌成分により誘発される敗血症、毒性ショック、敗血性ショック、重度敗血症、機能喪失および結果としての死亡に対して免疫を付与するのに十分ないずれんぼ量も意味し、当技術分野で公知の考慮事項により決定される。
以下の実施例3に示されるように、本発明によるペプチド、例えば、ペプチドD−Ala−pB2−4、D−Ala−pB2−6およびD−Ala−pB2−7は、それらのペプチドをマウス当たり0.2〜1μgの範囲の治療上有効な量で投与した場合にマウスにおいてスーパー抗原致死を遮断ことが示された(図5Aおよび5B参照)。体重25gのマウスにおけるこの有効量は約40μg/kgに相当し、そのヒト等価用量(HED)は0.65〜3.25μg/kgである。
本明細書で開示される処置の方法および免疫付与の方法によって使用される具体的範囲は、約0.1μg〜約60μgペプチド/kg前記対象の体重であり得る。よって、開示される主題の上記およびその他の実施形態では、本開示によるペプチドは、前記ヒト対象に約0.1〜約60μgペプチド/kg前記対象体重の量で投与される。
よって、その量は、0.1μg〜60μgペプチド/kg前記対象の体重、例えば、0.1〜60.0、0.1〜55.0、0.1〜40.0、0.1〜35.0、0.1〜30.0、0.1〜25.0、0.1〜20.0、0.1〜15.0、0.1〜10.0、0.1〜9.0、0.1〜8.0、0.1〜7.0、0.1〜6.0、0.1〜5.0、0.1〜4.0、0.1〜3.0、0.1〜2.0、0.1〜1.0、0.1〜0.75、0.1〜0.5、0.1〜0.25であり得る。具体的には、治療上有効な量は、0.25、0.5、0.65、0.75、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.5、2.75、3.0、3.25、3.5、3.75、4.0、4.25、4.5、4.75、5.0、5.25、5.5、5.75、6.0、6.25、6.5、6.75、7.0、7.25、7.5、7.75、8.0、8.25、8.5、8.75、9.0、9.25、9.5、9.75、10.0、12.5、15.0、17.5、20.0、25.0、30.0、35.0、40.0、45.0、50.0、55.0または60.0μgペプチド/kg前記対象の体重のうちのいずれか1つであり得る。
投与されるペプチドの量は特定のペプチドの分子量およびその他の特徴の考慮事項において約5〜25%変動可能であることに留意されたい。よって、本明細書で定義される用語「約」は、本明細書で定義される量の5〜25%の変動を意味する。
開示される主題の上記およびその他の実施形態では、本開示による細菌感染および/またはそれに関連する急性炎症の処置において使用するためのペプチドは、前記感染およびそれに関連する急性炎症のうちの少なくとも1つの発症後の好適な時点で投与してもよい。あるいはまたは加えて、本開示による使用のためのペプチドは、前記感染またはそれに関連する急性炎症の発症直後に投与してもよい。本開示によるペプチドは、感染の急性期に、および担当の医師によって決定され得るように、必要に応じてその後にも投与してよい。
用語「発症」は、前記ヒト対象の感染時またはその臨床発現の開始もしくは前記感染に関連するもしくは前記感染を原因とする急性炎症の発現の時点と、担当の医療スタッフの熟練員による感染および炎症のいずれかの診断時との間のいずれかの時点、ならびに本開示による処置が専門的に前記対象に指定されたその間またはその後のいずれかの時点を意味する。
本明細書で使用する場合、用語「必要とするヒト対象」は、本明細書で定義される感染およびそれに関連する急性炎症のうちの少なくとも1つに苦しんでいるヒトを意味すると理解されるべきである。「必要とするヒト対象」は、致死的細菌病原体および/または細菌病原体の毒性細菌成分により誘発される敗血症、毒性ショック、敗血性ショック、重度敗血症および/または死をもたらし得る機能喪失に苦しんでいるヒト対象であり得る。「必要とするヒト対象」はまた、細菌感染およびそれに関連する急性炎症が課されるリスクのあるヒトであり得る。
開示される主題の上記およびその他の実施形態では、本発明による医薬組成物または処置の方法は、場合により、前記必要とするヒト対象に付加的治療薬を投与することをさらに含んでなる。
開示される主題の上記およびその他の実施形態では、付加的治療薬は、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬、抗生物質、静菌薬および殺菌薬、ステロイドおよび抗微生物薬のうちいずれか1つであり得る。
開示される主題の上記およびその他の実施形態では、前記ペプチドおよび前記の付加的な他の治療上有効な薬剤は、同時に投与される。あるいはまたは加えて、前記ペプチドおよび前記の付加的な他の治療上有効な薬剤は、異なる時点で、異なる投与間隔で、異なる持続時間で、または異なる順序で投与される。
例えば、処置は、本ペプチドと付加的な他の薬剤の両方の投与で始めてよく、付加的薬剤の投与は、本ペプチドの投与の前または後に止めることができる。
細菌病原体、細菌病原体の混合物および/または少なくとも1つの毒性細菌成分により誘発される敗血症、毒性ショック、敗血性ショック、重度敗血症、機能喪失および結果としての死亡のうちうの少なくとも1つに対する防御免疫を対象に付与する上記方法において、本開示によるペプチドは、具体的には、前記細菌病原体および/または毒性細菌成分による刺激の前の、または後の好適な時点で投与してよい。刺激前に投与する場合、本ペプチドは約30、25、20、15分前またはそれ以内に投与してよい。刺激後に投与する場合、本ペプチドは直後または短時間の日に投与する。
分かりすいように別の実施形態に関して記載されている今般開示される主題の特定の特徴は、単一の実施形態に組み合わせて提供されてもよいと認識される。逆に、また、簡潔にするために単一の実施形態に関して記載される本発明の様々な特徴を、個別にまたは任意の好適な部分組合せでまたは記載される他の任意の本発明の実施形態において好適として提供してもよい。様々な実施形態に関して記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素を用いない場合に無効でない限り、それらの実施形態の不可欠な特徴と見なされるべきでない。
以上に示され、以下の特許請求の範囲の節で特許請求される本発明の様々な実施形態および態様は、以下の実施例において実験的裏づけを見出す。
開示および記載される、本発明は本明細書に開示される特定の例、方法工程、および組成物に限定されないと理解されるべきであり、従って、方法工程および組成物はある程度可変である。また、本明細書で使用される用語は単に特定の実施形態を記載する目的で用いられるに過ぎず、限定を意図するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲およびその等価物によってのみ限定されると理解されるべきである。
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「1つの(a)”、「1つの(an)」、および「その(the)」は、内容がそうではないことを明示しない限り、複数の指示物を含むということに留意されたい。
さらに詳述しなくても、当業者ならば、以上の記載を用いて本発明を最大限に利用できると考えられる。よって、以下の好ましい特定の実施形態は、単に例示であって、特許請求される発明を何ら限定するものではないと解釈されるべきである。
本明細書では具体的に記載されない当技術分野で公知の標準的な分子生物学プロトコールは一般にSambrook & Russell, 2001などに本質的に従う。
本明細書では具体的に記載されない当技術分野で公知の標準的な医薬品化学法は一般に、Pergamon Presssが発行している様々な著者および編者による“Comprehensive Medicinal Chemistry”に本質的に従う。
試験手順
ペプチド
ペプチドは、フルオロニル−メトキシカルボニル化学を用いて合成し、切断し、トリフルオロ酢酸(triflouroacetic acid)で側鎖を脱保護した。ペプチドは、高速液体クロマトグラフィーにより純度>95%であり;分子量は、MALDI−TOF質量分析によって確認した。ペプチドは、生物学的アッセイでのプロテアーゼ耐性の増強のために両末端にD−Ala(D−アラニン)を付加し、かつ、表面プラズモン共鳴(SPR)のためにCys(システイン)を付加した。B7−2ペプチドはRPMI 1640組織培養培地に容易に溶解した。
抗体
αSEBモノクローナル抗体(Toxin Technology:クローンMB2B33)、セイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスIgGまたはロバ抗ヤギ(KPL)、マウスモノクローナルαCD28(クローン37407)、αCD3(クローンUCHT1)、ヤギポリクローナル抗CD28および抗B7−2(R&D Systems)抗体を用いた。固定化したB7−2−FcおよびリボヌクレアーゼAへのSEBの結合を、対応するセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合マウス抗SEBモノクローナル抗体を用いて酵素結合免疫吸着アッセイでアッセイした。
サイトカイン遺伝子発現の誘導
健康なヒトドナーからヒト末梢血単核細胞(PBMC)をフィコールパーク(Amersham)で分離し、50mlのRPMI 1640培地で2回洗浄し、4×106細胞/mlで再懸濁させ、2%ウシ胎児血清、2mMグルタミン、10mM MEM非特異的アミノ酸、100mM Na−ピルビン酸、10mM Hepes pH7.2、5×10−5M 2−メルカプトエタノール、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンおよび5μg/mlナイスタチンを添加したこの培地で培養した。ブドウ球菌内毒素B(SEB、ロット1430、米国陸軍感染症研究所毒物学部門)(10、12)を終濃度100ng/mlとなるように加えた。マウス抗ヒトモノクローナル抗体αCD3(クローンUCHT1;100ng/ml)およびαCD28(クローン37407;2.5μg/ml)(R&D Systems、ミネアポリス、MN)を誘導物質として使用した。ヒトPBMCを用いる試験のために大腸菌リポ多糖(LPS)0111:B4をSigma Aldrich(セントルイス、MO)から入手した。分泌されたサイトカインは、ELISAキット(R&D Systems)を用いて3反復で定量し、平均±SEMとして表す。
B7−2発現ベクター
B7−2を発現するベクターは、Verso RT−PCRキット(ABgene)を用い、全ヒトPBMC RNAからのヒトCD86(NM_175862)のcDNA合成により作出した。CD86 cDNAは、リン酸化PCRプライマー5’−GACGTCGACGGAAGGCTTGCACAGGGT(配列番号51で示される)および5’−CACGCGGCCGCCCAGGTCATGAGCCATTAAGC(配列番号52で示される)とともにKODポリメラーゼ(Novagen)を用いて作出した。PCR産物を、SalIIおよびNotIで消化されGFP領域を欠くpEGFP−N3 DNA(Clontech)に、Fast−Link DNAライゲーションキット(Epicentre)を用いて挿入した。
C末端でGFPまたはCherryと融合したB7−2を発現するベクターは、B7−2 cDNAベクター鋳型から、B7−2の終止コドンを削除する、リン酸化PCRプライマー5’−TACTCGAGATGGGACTGAGTAACATTC(配列番号53で示される)および5’−GTCCGCGGTGAAGCATGTACACTTTTGTCG(配列番号54で示される)を用いて作出した。XhoIおよびSacIIで消化した際に、PCR産物をpEGFP−N3 DNAまたはpmCherry−N1 DNA(Clontech)のいずれかに挿入した。B7−2C/Cherryベクターは、B7−2/Cherry鋳型から、プライマー5’−GTCTCTCGTCCTTCCGG(配列番号55で示される)および5’−CTAACTTCAGTCAACCTG(配列番号56で示される)を用いて作出した。
CD28/B7−2相互作用
細胞上のCD28に対するB7−2の結合に及ぼすSEBの影響をアッセイするために、HEK293T細胞を、細胞表面CD28(10)を発現するように、またはGFP発現エンプティーベクターでトランスフェクトした。36時間後、これらの細胞をSEB不在下または存在下で0.2μg/mlの可溶性B7−2とともに45分間インキュベートした。冷リン酸緩衝生理食塩水で3回洗浄した後、細胞を溶解させた。B7−2の結合および細胞によるCD28の発現を示すために、等量の全細胞タンパク質(ブラッドフォードアッセイ)に対して10%ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)およびウエスタンブロット法を行った。逆に、細胞上のB7−2に対するCD28の結合に及ぼすSEBの影響は、HEK293T細胞を、細胞表面B7−2を発現するようにトランスフェクトすることによりアッセイした。36時間後、細胞をSEBの不在下または存在下で0.2μg/mlの可溶性CD28とともに45分間インキュベートした。上記のように3回洗浄した後、細胞を溶解させた。CD28の結合および細胞によるB7−2の発現を示すために、等量の全細胞タンパク質に対して10%PAGEおよびウエスタンブロット法を行った。
組換えスーパー抗原
黄色ブドウ球菌COL、黄色ブドウ球菌TSST−1産生株、および化膿連鎖球菌SMEZ産生株から単離された染色体DNAを用いて、wt SEB、TSST−1およびSMEZ遺伝子をpHTT7K(14)へクローニングした。上記遺伝子の各個を、N末端His6タグを有する成熟タンパク質として大腸菌で発現させた。挿入配列をDNAシーケンシングにより確認した。全タンパク質をHis・Bindカラム(Novagen)に載せ、イミダゾールで段階的に溶出した。透析後に回収された組換えタンパク質は、SDS−PAGEで純度>98%であり、分子量標準(GE Healthcare−Amersham Pharmacia)で較正した1×30cmスーパーデックス75カラムによる分析的ゲル濾過(カラムからタンパク質を1ml/分の流速で溶出させた)で単量体として>98%均質であった。組換えSEBは10μg/mlでマウスに致死的であった。
表面プラズモン共鳴分光法
タンパク質およびペプチドを10mM酢酸ナトリウムpH4.0で10〜200μg/mlに希釈し、それぞれアミンカップリングキットおよびアミン−チオールカップリングキット(BIAcore)を用いてCM5センサーチップに固定化した。物質移動限界を最小とする低リガンド密度条件下、25mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、3.4mM EDTA、および0.005%界面活性剤P20中、20μl/分でアナライトを注入した。なお、固定化リガンドの最大結合能が50〜150応答単位の範囲であれば、結合動態の測定が可能である。再生は50mMリン酸で行った。動態分析は、BIAcore 3000装置にて25℃で行い、結合シグナルから対照フローセルシグナルを差し引いた。アナライト曲線は2反復で実施し、代表的な結果を示す。BIAavaluation 3.1ソフトウエアを用いて直線リガンド濃度域でKDを求めた(1:1ラングミュア結合)。複合体のKD決定の基準は、kaおよびkdのパーセントとしての標準誤差であり;十分に2を下回るχ2値は、理論結合値と観測結合値の間の適合の質を示し、調べたリガンドの純度を証明する。適合残差は±2の範囲内であり、良好な適合度が確認される。ヒトIgG(Jackson Laboratories)およびリボヌクレアーゼA(Sigma)を対照として用いた。
マウス致死アッセイ
雌BALB/cマウス(10〜12週;Harlan)に、スーパー抗原に感作させるためにSEBおよび20mgD−ガラクトサミンの腹腔内注射により抗原投与した(12)。アンタゴニストペプチドを抗原投与の30分前に腹膜内注射した。生存率をモニタリングした。生存率は、モニタリングした限り(2週間)、72時間以降一定に維持された。マウスを含む試験は、所内動物実験委員会により承認されたものである。
統計分析
生存曲線は、比較のためのログランク検定とともにカプラン・マイヤー法を用いて分析した。
構造モデル
タンパク質構造のCartoonモデルをPyMol(www.pymol.org)で作出した。
実施例1
B7−2はSEBと結合するためにそのホモ二量体界面を使用する
B7−2/CTLA−4複合体(1)において、CD28とCTLA−4の間で保存されているMYPPPYドメインはB7−2と会合し、その結果、B7−2二量体界面は完全に接近可能な状態で留まる。よって、B7−2結晶学的ホモ二量体界面の残基をオーバーラップする、本明細書でD−Ala−pB2−4(配列番号6で示されるアミノ酸配列(D−A)EKFDSVHSKYM(D−A)を有する)およびD−Ala−pB2−6(配列番号10で示されるアミノ酸配列(D−A)DSDSWTLR(D−A)を有する)と呼ばれる短いペプチドを合成した。これらのペプチドを、B7−2二量体界面領域について図1に示す。図1は、N末端ProがMetで置換された、配列番号50で示されるアミノ酸配列を有する配列番号13の変異体を示す。対照として、本明細書でD−Ala−pB2−2(配列番号2で示されるアミノ酸配列(D−A)DLPCQFANSQN(D−A)を有する)、D−Ala−pB2−3(配列番号4で示されるアミノ酸配列(D−A)HHKKPTGMIR(D−A)を有する)およびD−Ala−pB2−5(配列番号8で示されるアミノ酸配列(D−A)MLKIQAY(D−A)を有する)と呼ばれるペプチドを合成した。なお、これらのペプチドは二量体界面の外側にある(図1に示される通り)。
図2Aに示されるように、D−Ala−pB2−2、D−Ala−pB2−3およびD−Ala−pB2−5は、PBMCにおいてSEBにより媒介されるIFN−γの誘導を阻害することができなかったが、D−Ala−pB2−4およびD−Ala−pB2−6には強い阻害性があった。D−Ala−pB2−4およびD−Ala−pB2−6はまたIL−2およびTNF−αの誘導も阻害したが、他の2つのペプチドは阻害しなかった (図2B)。より低濃度(0.01μg/ml)では、pB2−4およびpB2−6はIL−2、IFN−γおよびTNF−αの誘導を部分的に阻害したに過ぎなかったが、それらは一緒に著しい相乗的阻害を示した(図2C)。対照的に、IL−10の誘導は、D−Ala−pB2−4およびD−Ala−pB2−6単独または組合せに耐性があった。
D−Ala−pB2−4とD−Ala−pB2−6の間の相乗作用は、それらがB7−2二量体界面の非オーバーラッピング部分をカバーしているという事実からくるものである可能性がある(図1に模式的に示される通り)。従って、次に、それらの活性を、配列番号12で示されるアミノ酸配列(D−A)MGRTSFDSDS(D−A)を有する、本明細書でD−Ala−pB2−7と呼ばれるペプチド(D−Ala−pB2−4およびD−Ala−pB2−6と部分的にオーバーラップし、アミノ酸9個の連続するホモ二量体界面ドメインをカバーしている)の活性と比較した(図1)。図2Dに示されるように、pB2−7は、SEBにより媒介されるIL−2、IFN−γおよびTNF−αの誘導を、D−Ala−pB2−4とD−Ala−pB2−6を組み合わせた場合と同等に阻害し、それらと同様にIL−10の誘導は阻害しなかった。
興味深いことに、図2Eに示されるように、同様の結果が、SEBの40倍の致死性であることが知られている連鎖球菌有糸分裂促進性外毒素Z(SMEZ、図2E1、図2E2、図2E3および図2E4)でも、また、SEBと6%の配列同一性しか持たないがβ鎖(8)/ヒンジ/αヘリックス(4)ドメイン(12)の構造が保存されているスーパー抗原としての毒素ショック症候群毒素−1でも(TSST−1、図2E5、図2E6および図2E7)得られた。
発散性のスーパー抗原による炎症性サイトカイン誘導に関するシグナル伝達を阻害するB7−2二量体界面模倣ペプチドの能力は、これらのペプチドがスーパー抗原の結合においてB7−2と競合することを示唆した。実際に、図3Aおよび図3Bに示されるように、ペプチドD−Ala−pB2−4およびD−Ala−pB2−6はそれぞれ、マイクロモル範囲のKDで(下記表2)SEBに直接結合する。D−Ala−pB2−4およびD−Ala−pB2−6は、同様に、マイクロモルの親和性で(下記表2)TSST−1およびSMEZと結合する(TSST−1の結合については図3Cおよび図3D、SMEZの結合については図3Eおよび図3F)。よって、スーパー抗原はB7−2のVドメイン内に位置するホモ二量体界面と会合する。
下記の表2では、精製した組換えスーパー抗原を用い、SEBの濃度は0.78μMから2倍刻みで6段階の範囲とし、TSST−1の濃度は0.0625μMから2倍刻みで5段階の範囲とし、SMEZの濃度は0.0625μMから2倍刻みで4段階の範囲とした。
上記の表2に示すパラメーターを得るために、精製した組換えスーパー抗原を使用した。SEBの濃度は0.78μMから2倍刻みで6段階の範囲とし;TSST−1の濃度は0.0625μMから2倍刻みで5段階の範囲とし;SMEZの濃度は0.0625μMから2倍刻みで4段階の範囲とした。ka、会合速度;kd、解離速度。BIAevaluation 3.1ソフトウエア(BIAcore)を用いて直線リガンド濃度域でKDを求めた(1:1ラングミュア結合)。複合体のKD決定の基準はkaおよびkdのパーセントとしての標準誤差であり;十分に2を下回るχ2値は、理論結合値と観測結合値の間の適合の質を示し、調べたリガンドの純度を証明する。適合残差は±2の範囲内であり、良好な適合度が確認される。
実施例2
B7−2またはCD28に対するSEBの結合:二量体界面ペプチドによる相互阻害
次に、B7−2を発現する細胞集団に対するSEBの結合を調べた。図4Aに示されるように、SEBの結合は、αB7−2抗体によって排除されたが、CD28二量体界面エピトープを標的とするモノクローナル抗体であるαCD28によっては排除されず、特異性を示す。興味深いことに、B7−2二量体界面模倣ペプチドD−Ala−pB2−4およびD−Ala−pB2−6の単独または組合せは、B7−2を発現する細胞に対するSEBの結合を効果的に遮断したが、二量体界面の外側にあるペプチドD−Ala−pB2−2は結合を阻害しなかった(図4A)。ペプチドD−Ala−pB2−7も同様に、単独でもD−Ala−pB2−4と組み合わせた場合でも、B7−2を発現する細胞に対するSEBの結合を遮断した(図4B)。
B7−2二量体界面模倣ペプチドが細胞表面B7−2に対するSEBの結合を特異的に遮断するという発見は、細胞表面B7−2内のSEB結合部位は二量体界面であることを示し、これらのペプチドはスーパー抗原と直接結合し、炎症性サイトカインの誘導を阻害することを示すこれらの結果を強く補強する。
注目すべきは、スーパー抗原と直接結合して炎症性サイトカインの誘導および毒性を阻害する(10)CD28ホモ二量体界面に由来するp2TAおよびp1TAペプチド(それぞれ本明細書では配列番号16で示されるコアアミノ酸配列SPMLVAYDおよび本明細書では配列番号17で示されるHVKGKHLCPを有する)のD−Ala誘導体は、B7−2を発現する細胞に対するSEBの結合を同等に阻害した(図4Bおよび図4C)。p2TAおよびp1TAはそのβ鎖(8)/ヒンジ/αヘリックス(4)ドメイン(10)においてSEBと結合するので、それらはスーパー抗原においてその結合部位をめぐってB7−2と競合する。
相互試験において、細胞を、細胞表面CD28を発現するようにトランスフェクトした。このような細胞に対するSEBの結合はαCD28、p1TAおよびp2TAによって排除されるが、αB7−2によっては排除されないことが従前に報告されている(10)。実際に、ペプチドD−Ala−pB2−4、D−Ala−pB2−6およびD−Ala−pB2−7は、CD28二量体界面模倣物p1TAおよびp2TAと同様に細胞表面CD28対するSEBの結合を遮断することができるが、対照ペプチドD−Ala−pB2−2は遮断できない(図4D)。
よって、スーパー抗原は、それらの二量体界面においてB7−2またはCD28のいずれかと結合するためにその保存されたβ鎖(8)/ヒンジ/αヘリックス(4)ドメインを用いるだけでなく、いずれの二量体界面のペプチド模倣物も二重のアンタゴニスト活性を有し、いずれの受容体に対するスーパー抗原の結合も相互に遮断する。
実施例3
B7−2二量体界面ペプチドはSEB致死から保護する
次に、SEB刺激マウスに対するペプチドD−Ala−pB2−4、D−Ala−pB2−6およびD−Ala−pB2−7の効果を実証するためにスーパー抗原致死に関して認知されているモデルであるD−ガラクトサミン感作マウスを使用した(10および12)。図5Aに示されるように、D−Ala−pB2−4およびD−Ala−pB2−6は、スーパー抗原致死を遮断した。1/5の対照マウスだけがSEB刺激から生残し、SEB暴露時にD−Ala−pB2−4およびD−Ala−pB2−6をそれぞれ受容した4/5および5/5のマウスが生残した(図5A)。注目すべきは、ペプチドD−Ala−pB2−7はSEBの2〜3倍モル過剰が存在するだけで保護を示した(図5B)。この高い有効性は、スーパー抗原に対する有害な応答の媒介におけるB7−2二量体界面の重要な役割を裏づける。
実施例4
B7−2二量体界面に由来するペプチドによるCD28シグナル伝達の減弱化
上記のように、αCD3により誘導されたヒトPBMCにおけるペプチドD−Ala−pB2−7の効果も調べた。図6Aおよび図6Bに示されるように、D−Ala−pB2−7は、ペプチド1μg/mlで存在した場合でも(図6A)または10倍濃度の10μg/mlが存在した場合でも(図6B)、αCD3によるIFN−γの誘導を阻害せず、このことはそれがT細胞受容体を介したシグナル伝達を遮断しないことを示す。さらに、どちらの濃度でも、すなわち、1または10μg/mlでも、D−Ala−pB2−7はそれ自体応答を誘導しなかった(それぞれ図6Aおよび図6B)。
しかしながら、図7Aおよび図7Bに示されるように、pB2−7は、これらのサイトカインの発現がαCD28を伴うαCD3によって誘導された場合には、IFN−γ(図7A)およびTNF−α(図7B)の発現を減弱した。興味深いことに、0.01およびさらには0.001μg/mlといった低いペプチド濃度でもIFN−γおよびTNF−αそれぞれの発現の有意な減弱化が見られ、強力な阻害を示した。よって、このペプチドは、CD28を介して伝達される場合、炎症性サイトカイン応答のシグナル伝達を阻害する。図8に示されるように、D−Ala−pB2−7と同様にB7−2のホモ二量体界面に由来するペプチドD−Ala−pB2−4によっては、サイトカインIFN−γおよびTNF−αに関するCD28シグナル伝達の阻害もまた示されたが、二量体界面ドメインの外側にあるD−Ala−pB2−2によってはその阻害は示されなかった。
実施例5
ペプチドpB2−4、pB2−6およびpB2−7によるLPSシグナル伝達の減弱化
リポ多糖(LPS)は、グラム陰性菌に特異的な病原性因子であり、より一般に、グラム陰性感染のホールマークである。図9Aに示されるように、大腸菌LPSによるヒトPBMCにおけるTNF−α発現の誘導は、B7−2二量体界面模倣ペプチドD−Ala−pB2−4、D−Ala−pB2−6ならびにそれらの組合せによる減弱化に感受性があった。B7−2二量体界面模倣ペプチドpB2−7の効果を図9Bに示す。
D−Ala−pB2−4とD−Ala−pB2−6の組合せに関して図9Aで示されたより大きな程度の阻害(これらのペプチドのそれぞれ単独の効果と比較)は、そのより大きなスーパー抗原アンタゴニスト活性を反映し、上記に示した結果と一致する。
注目すべきは、図10に示されるように、大腸菌LPSにより誘導されたヒトPBMCにおけるTNF−α発現の誘導は、ペプチドD−Ala−pB2−4、D−Ala−pB2−6およびD−Ala−pB2−7のそれぞれにより、それらのペプチドが0.01μg/mlの濃度で存在した場合であっても、低減された。よって、LPSにより媒介されるTNF−α誘導を減弱するには低濃度のB7−2二量体界面模倣ペプチドで十分である。
実施例6
B7−2二量体界面模倣ペプチドの効力
B7−2二量体界面は、補助刺激において既知の役割を持たず、CD28結合部位から構造的に十分に分離されている。受容体ホモ二量体界面内で、弱い、短距離ファンデルワールス相互作用は立体的適合と組み合わさって受容体のホモ二量体形成を可能とし、ヘテロ二量体の生成を妨げる。スーパー抗原の会合はB7−2単量体間の接触に取って代わるはずであり、B7−2単量体はCD28とは異なって二量体界面の外側で分子間ジスルフィド結合を介して連結されておらず、従って、再二量体化に二次結合反応を必要とする。このことは、上記に示されるように、毒素に対して低モル比であっても致死的SEB刺激からマウスを保護するD−Ala−pB2−7の能力を説明し得る。
図7、図8および図9に示されるように、B7−2二量体界面模倣ペプチドは、それらが由来する粘着性のB7−2受容体ホモ二量体界面に再び結合し、それにより、スーパー抗原の不在下であってもシグナル伝達を減弱する可能性がある。ペプチドの有効性は、B7−2単量体間の分子間ジスルフィド結合の欠如(競合する短いペプチドによるそれらの分離を助長する)によって増進される。このことはスーパー抗原の不在下で見られる過度の免疫刺激に対するB7−2二量体界面模倣ペプチドの有効性を説明し得る。
実施例7
B7−1ホモ二量体界面に由来するペプチド
B7−1はB7−2と同族であり、B7−1およびB7−2は両方とも抗原提示細胞(APC)の表面で発現される補助刺激リガンドとして働く。図11は、B7−1ホモ二量体界面に由来するペプチド、すなわち、それぞれ配列番号38、配列番号42、配列番号40および配列番号48で示されるpB1−4、pB1−6、pB1−7およびpB1−8を示す。図12は、ヒトB7−1およびヒトB7−2の両方の二量体界面に由来するセグメントのアラインメントを模式的に示し、保存されている残基を太字で示し、B7−2二量体界面に関与する残基を下線で示す。図12はまた、ヒトB7−2ペプチドpB2−4、pB2−7およびpB2−6を、B7−1配列の一部のペプチドpB1−4、pB1−7およびpB1−6とアラインしたものも示す。例えばスーパー抗原刺激などの種々の誘導の結果としてのサイトカインレベルに対する、ヒトB7−1二量体界面に由来するペプチドの効果も調べられる。
実施例8
多微生物感染モデル:盲腸結紮穿刺(Cecal Ligation and Puncture)(CLP)
マウス盲腸結紮穿刺(CLP)モデルは、多微生物感染を調べ、腹腔内感染または敗血症に対する治療薬の効果を追跡するために臨床上適切なモデルである。特定病原体不在 BALB/cマウス(8〜12週)およびCD1非近交系マウス(8〜12週間)を入手する。総ての動物試験は、試験が開始される前に所内動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committees)(IACUC)によって承認される。
動物を吸入イソフルラン(Baxter Pharmaceuticals Inc.、ディアフィールド、IL)(濃度4〜5%+0.8〜1L/分で誘導、1〜3%+0.8〜1L/分で維持)で麻酔する。
盲腸を1.5cm正中切開により体外に出し、回盲部のすぐ遠位のその長さの90%のところを5−0ナイロンモノフィラメント縫合糸で結紮する。次に、この盲腸を、23ゲージ針を用い、盲腸の腸間膜反対側(ante-mesenteric side)へ2回穿刺する。穿刺部位をから少量の管腔内容物(laminal contents)を絞り出すことにより開通していることを確認する。この臓器を腹腔に戻し、筋膜および皮膚を閉じ、術部に局所的リドカインおよびバシトラシンを塗布する。各動物に20mg/kg筋肉内用量のモキシフロキサシン(LD25の最適以下用量に相当)および1mlの標準生理食塩水の皮下ボーラスを施す。これらの動物を完全に覚醒するまで再び加温し、その後、ケージに戻す。
供試ペプチドは具体的には、静脈内投与されるD−Ala−pB2−7(配列番号12で示される通り)、D−Ala−pB2−2(配列番号2で示される通り)、D−Ala−pB2−6(配列番号10で示される通り)、D−Ala−pB1−4(配列番号39で示される通り)、D−Ala−pB1−7(配列番号41で示される通り)、D−Ala−pB1−6(配列番号43で示される通り)、D−Ala−pB1−8(配列番号49で示される通り)である。
静脈内投与(i.v.)した場合の本発明によるこれらのペプチドの有効性を試験し、動物を、敗血症の明らかな徴候および生存に関して合計7日間毎日、経過観察する。瀕死の動物(<30℃の低体温および正常な姿勢が維持できないことと定義)を安楽死させ、致死的感染動物としてスコア化する。7日の終了時に、生存個体を安楽死させ、器官組織(血液、腹膜、肝臓、肺、および脾臓)の定量的微生物学のために検査する。
CLPを受けた動物に投与した場合の本発明のペプチドの用量応答関係を調べる。手術の約2時間後に、動物を種々の用量の本発明のペプチドで処置する。0時点で、最適以下用量のモキシフロキサシン(LD25)を一部または全部の動物に与えることができる。動物を数日間経過観察し、生存率を決定する。
CLP後のサイトカインおよびケモカイン産生に対するペプチドの潜在的効果をさらに検討する。
Balb/cマウスにCLPを施し、抗生物質を添加せずに、術後約2時間で本発明によるペプチドで処置する。マウス(処置動物および対照非処置動物、ならびに付加的対照とする偽手術動物)を術後12時間および24時間で安楽死させ、心臓穿刺によりヘパリン処理シリンジに採血する。次に、遠心分離により血漿を得、分析まで−70℃で保存する。洗浄によりマウスから腹腔液を得、遠心分離により明澄化し、分析まで−70℃で保存する。ペプチド処置動物の血液(血漿)および局部感染部位(腹腔液)の両方において、Th1サイトカインの代表として、TNF−αのレベルを測定し、炎症誘発応答に関連するケモカインの代表として、RANTESおよびKCのレベルを測定する。
CLP後の腹膜および血液中のさらなるサイトカイン/ケモカインのレベルも評価する。これらには、CLPの約12時間後または約24時間後に採取した腹腔液および血漿中のTNF−α、IL−6、IL−17A、IL−10、Rantes、MCP−1およびKCが含まれる。
CLPを施した動物は、血液および腹腔液中に高い細菌量を示す。細菌は通常、腹腔液から血液に侵入し、主要には、マクロファージ表面に結合した細菌要素を認識する循環多形核細胞(polymorph nuclear cell)(PMN)によって、また、二次的には、在住マクロファージ自体によって死滅させられる。細菌は血液から肝臓および脾臓(体循環から細菌を排除するための主要部位である)に移行し、そこでそれらは在住マクロファージによって捕捉される。細菌量に対する本発明のペプチドの潜在的効果を調べるため、これらの組織/臓器における細菌の伝播を測定する。マウスにCLPを施し、群に分け(各群n=6〜8)、CLPの約2時間後にペプチドで処置するか、またはPBSを注射して対照として用いるか、または偽手術する。動物には抗生物質を施さない。マウスを手術から約12後および約24時間後に安楽死させ、各動物の血液、腹腔液、肝臓 腎臓および脾臓から組織サンプルを得る。細菌のレベルをコロニーの計数により測定し、処置群と対照群の間で比較する。
ケラチノサイトケモカイン(KC)は、臓器不全をもたらす敗血症時の全身炎症の発生における重要なプロセスと関連付けられている標的臓器への多形核細胞(PMN)の動員および蓄積を担う重要な成分である。よって、PMNのレベルは、CLP後の動物の脾臓、肝臓および腎臓で評価され、好中球の存在の間接的マーカーとして機能する、PMN活性に関連する重要な酵素ミエロペルオキシダーゼ(MPO)の活性により測定される。MPO活性は、CLP後約12時間および約24時間でホモジナイズ組織において測定する。読み取りは1分間隔で10分間、460nmで分光光度的に実施する。
重要な臓器におけるPMNのレベルの低減に関するさらなる裏づけは、好中球流入の評価のための免疫組織化学染色後に、CLP後動物の特定の組織から得られる組織学的素スライドでPMNを直接計数することにより例示される。CLP後24時間にCLP動物から得られるホルマリン固定パラフィン切片をナフトールAS−Dクロロ酢酸エステラーゼ(白血球特異的エステラーゼ)で染色し、Gillsヘマトキシリン溶液で対比染色し、カバーガラスをかける。肝臓切片中に存在する好中球(エステラーゼで陽性染色された細胞)の数を400倍の顕微鏡下で無作為にスクリーニングする(5〜7視野/サンプル)。
本発明のペプチドによる処置がエフェクター細胞上のCD28の発現に影響を及ぼすかどうかを判定するために、手術約12時間後および約24時間後に末梢血細胞および脾細胞を調べる。
細胞増殖に対する本発明のペプチドの効果を試験するために、抗CD3抗体単独または抗CD3抗体+抗CD28抗体で刺激し72時間培養した、本ペプチドで処置したまたは処置しなかった偽手術、CLPマウスから採取した単離脾細胞を用いてex vivo試験を行う。脾細胞増殖指数を決定し、偽手術動物から採取した細胞と比較する。
腎臓、肝臓および脾臓などの重要な臓器におけるアポトーシスプロセスの増加は、臓器不全に寄与する敗血症の転帰に決定的な病原上の役割を果たす。従って、CLPを施した動物における腎臓および脾臓アポトーシスに対する本発明のペプチドによる処置の潜在的効果を調べる。アポトーシスは、CLP後約24時間に動物から採取した組織学的スライドで、TUNEL染色を用いて決定する。スライドを蛍光顕微鏡下でアポトーシスのエビデンスに関して観察する。
CLP後に敗血症により誘発されるアポトーシスの程度をペプチド処置マウスとビヒクル処置マウスの間で比較するために、単離した脾細胞も、初期アポトーシスマーカーであるアネキシンVと細胞表面マーカー(CD3、CD4、CD8、B220、Gr−1)の組合せを用いて染色し、フローサイトメトリーにより分析する。