JP6776048B2 - 車両用制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ベルト式の無段変速機を搭載した車両に用いられる制御装置に関する。
近年、エンジンを駆動源とする車両には、燃費の向上などの目的で、IDS(アイドリングストップ)制御が採用されてきている。IDS制御を採用した車両では、たとえば、運転者のブレーキ操作により、車速が所定のIDS開始車速以下に低下すると、エンジンが自動的に停止(アイドリングストップ)される。その後、運転者がブレーキ操作を解除すると、エンジンが自動的に再始動される。
IDS制御を採用した車両において、ベルト式の無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)を搭載した車種がある。この車種では、たとえば、トルクコンバータと無段変速機との間に前進クラッチが介装されており、車両の減速走行中にエンジンが停止(減速IDS)されると、前進クラッチが解放される。また、車両の減速走行中にエンジンが停止されると、無段変速機のセカンダリプーリに供給される油圧である挟圧が最低圧に設定される。これにより、車両の減速走行中に無段変速機のベルトに負荷されるトルクを低減(エンジンからのトルクを遮断)することができ、急制動時にイナーシャトルクによるプーリとベルトとの間での滑り(ベルト滑り)の発生を抑制することができる。
特開2013−181408号公報
エンジンの再始動によるIDS復帰時には、エンジンからの動力を無段変速機に伝達するため、前進クラッチを係合させる必要がある。油圧回路に油圧を発生させるオイルポンプとして、エンジンの動力により駆動される機械式オイルポンプのみを搭載した車両では、エンジンの停止中に油圧回路の油圧が低下しているので、IDS復帰時における油圧の上昇に時間を要する。また、油圧回路の構成上、油圧が低下した状態では、前進クラッチに供給される油圧を制御(スイープアップ)できず、機械式オイルポンプの発生油圧がそのまま前進クラッチに供給される。そのため、IDS復帰から前進クラッチの係合(車両の加速)までにタイムラグが生じるうえ、前進クラッチの急係合によるショックが発生するおそれがある。
機械式オイルポンプに加えて、電力(電動モータの動力)により駆動される電動オイルポンプを搭載した車両においても、急制動時のイナーシャトルクによるベルト滑りの発生を考慮して、アイドリングストップの際に前進クラッチを解放する必要がある。IDS復帰時には、機械式オイルポンプの発生油圧よりも先に電動オイルポンプの発生油圧を立ち上げることができ、その電動オイルポンプの発生油圧を用いて前進クラッチを係合させることができる。
ところが、電動オイルポンプのポンプ容量が小さい場合、電動オイルポンプの発生油圧が低いため、油圧回路の構成上、前進クラッチに供給される油圧を制御できず、電動オイルポンプの発生油圧がそのまま前進クラッチに供給される。そのため、IDS復帰から前進クラッチの係合までのタイムラグを短縮できるが、前進クラッチの急係合によるショックが発生するおそれをなくすことはできない。また、前進クラッチの解放とともに、挟圧が最低圧に設定されているので、前進クラッチが急係合するタイミングによっては、その係合時にベルト滑りが発生するおそれがある。
本発明の目的は、減速走行中の急制動によるベルト滑りの発生ならびに前進クラッチの急係合によるベルト滑りおよびショックの発生を抑制できる、車両用制御装置を提供することである。
前記の目的を達成するため、本発明に係る車両用制御装置は、エンジン、ベルト式の無段変速機、車輪、エンジンから車輪との間で動力を伝達/遮断する摩擦係合要素、エンジンの動力により摩擦係合要素を係合する第1係合手段、およびエンジン停止中にも摩擦係合要素を係合可能な第2係合手段を搭載した車両に用いられる制御装置であって、所定のIDS開始条件が成立したことに応じて、エンジンを停止させ、その停止中に所定のIDS復帰条件が成立したことに応じて、エンジンを再始動させるIDS制御を実行するIDS制御手段と、摩擦係合要素により遮断される車輪側の回転数を取得する後回転数取得手段と、摩擦係合要素により遮断されるエンジン側の回転数を取得する前回転数取得手段と、摩擦係合要素が係合している状態から、IDS開始条件が成立したことに応じて、摩擦係合要素を解放させ、前回転数取得手段により取得される前回転数および後回転数取得手段により取得される後回転数の両方が所定値以下、または、前回転数と後回転数との差回転および後回転数の両方が所定値以下に低下した以後に、第2係合手段を作動させて、摩擦係合手段を係合させる制御手段とを含む。
この構成によれば、IDS制御では、IDS開始条件が成立したことに応じて、エンジンが停止され、そのエンジンの停止中にIDS復帰条件が成立したことに応じて、エンジンが再始動される。
また、IDS開始条件が成立したことに応じて、摩擦係合要素が係合している状態から解放される。これにより、無段変速機のベルトに負荷されるトルクを低減することができる。そのため、急制動によるベルト滑りの発生を抑制することができる。
その後、摩擦係合要素のエンジン側の前回転数および車輪側の後回転数が取得される。IDS制御によりエンジンが停止されると、エンジンの回転数が次第に低下し、これに伴って、前回転数が低下する。また、車両の車速の低下に伴って、後回転数が低下する。前回転数および後回転数の両方が所定値以下、または、前回転数と後回転数との差回転および後回転数の両方が所定値以下に低下すると、それ以後に、第2係合手段が作動される。第2係合手段の作動により、摩擦係合要素が係合する。このとき、前回転数および後回転数がそれぞれ所定値以下、または、前回転数と後回転数との差回転および後回転数の両方が所定値以下であるので、摩擦係合要素の急係合によるベルト滑りおよびショックの発生が抑制される。摩擦係合要素が係合した状態でエンジンが再始動されることにより、エンジンの動力が無段変速機に速やかに入力されるので、車両を速やかに加速させることができる。
よって、減速走行中の急制動によるベルト滑りの発生ならびに摩擦係合要素の急係合によるベルト滑りおよびショックの発生を抑制でき、さらには、IDS復帰時の性能(車両の加速性能)を向上させることができる。
また、IDS制御によるエンジンの停止後、前回転数および後回転数の両方が所定値以下に低下するか、または、前回転数と後回転数との差回転および後回転数の両方が所定値以下に低下するまでは、摩擦係合要素が解放されるので、第2係合手段には、容量の小さいものを採用することができる。これにより、無段変速機、第1係合手段および第2係合手段を含むユニットのコストおよびサイズの低減を図ることができる。
第1係合手段は、エンジンの動力により直接駆動されるメカポンプ(機械式オイルポンプ)に加え、エンジンの動力により発電された電力により駆動される電動ポンプ(電動オイルポンプ)を含む概念であってもよい。
第2係合手段は、電動オイルポンプで構成されてもよいし、アキュムレータや電磁クラッチで構成されてもよい。
第1係合手段および第2係合手段は、共通の電動オイルポンプで構成されてもよい。
本発明によれば、減速走行中の急制動によるベルト滑りの発生ならびに摩擦係合要素の急係合によるベルト滑りおよびショックの発生を抑制することができる
本発明の一実施形態に係るECUが搭載された車両の要部の構成を示す図である。 制御内容決定処理の流れを示すフローチャートである。 第1クラッチ制御の流れを示すフローチャートである。 第1クラッチ制御時のタービン回転数、無段変速機の入力軸回転数、エンジン回転数、電動オイルポンプ(EOP)のオン/オフ状態および前進クラッチの係合/解放状態の時間変化を示す図である。 第2クラッチ制御の流れを示すフローチャートである。 第2クラッチ制御時の無段変速機の入力軸回転数、エンジン回転数、電動オイルポンプ(EOP)のオン/オフ状態および前進クラッチの係合/解放状態の時間変化を示す図である。
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
<車両の要部構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るECU51が搭載された車両1の要部の構成を示す図である。
車両1は、エンジン(E/G)2を動力源とする自動車である。エンジン2の出力は、トルクコンバータ3を介して、無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)4に入力される。トルクコンバータ3と無段変速機4との間には、油圧式の前進クラッチCが介装されている。前進クラッチCは、エンジン2からの動力を伝達/遮断するために係合/解放される。無段変速機4から出力される動力は、デファレンシャルギヤ(図示せず)を介して、車両1の駆動輪(たとえば、左右の前輪)に伝達される。
エンジン2には、エンジン2の燃焼室への吸気量を調整するための電子スロットルバルブ、燃料を吸入空気に噴射するインジェクタ(燃料噴射装置)および燃焼室内に電気放電を生じさせる点火プラグなどが設けられている。また、エンジン2には、その始動のためのスタータが付随して設けられている。
無段変速機4は、公知のベルト式の構成を有している。具体的には、無段変速機4は、エンジン2からの動力が入力される入力軸11と、入力軸11から動力が伝達されるプライマリ軸12と、プライマリ軸12と平行に設けられたセカンダリ軸13と、プライマリ軸12に相対回転不能に支持されたプライマリプーリ14と、セカンダリ軸13に相対回転不能に支持されたセカンダリプーリ15と、プライマリプーリ14とセカンダリプーリ15とに巻き掛けられたベルト16とを備えている。
プライマリプーリ14は、プライマリ軸12に固定された固定シーブ21と、固定シーブ21にベルト16を挟んで対向配置され、プライマリ軸12にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持された可動シーブ22とを備えている。可動シーブ22に対して固定シーブ21と反対側には、プライマリ軸12に固定されたピストン23が設けられ、可動シーブ22とピストン23との間に、ピストン室(油室)24が形成されている。
セカンダリプーリ15は、セカンダリ軸13に対して固定された固定シーブ25と、固定シーブ25にベルト16を挟んで対向配置され、セカンダリ軸13にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持された可動シーブ26とを備えている。可動シーブ26に対して固定シーブ25と反対側には、セカンダリ軸13に固定されたピストン27が設けられ、可動シーブ26とピストン27との間に、ピストン室28が形成されている。
なお、図示されていないが、可動シーブ26とピストン27との間には、ベルト16に初期挟圧(初期推力)を与えるためのバイアススプリングが介在されている。バイアススプリングの弾性力により、可動シーブ26およびピストン27は、互いに離間する方向に付勢されている。
また、無段変速機4は、プライマリプーリ14、セカンダリプーリ15および前進クラッチCなどに油圧を供給するための油圧回路31を備えている。
油圧回路31には、油圧の発生源として、エンジン2の動力により駆動される機械式オイルポンプ(MOP)32と、電動モータの動力により駆動される電動オイルポンプ(EOP)33とが含まれる。機械式オイルポンプ32と電動オイルポンプ33とは、並列に設けられており、互いに独立してオイルパン34に貯留されているオイルを吸い上げることができる。
また、油圧回路31には、クラッチモジュレータバルブ41、リニアソレノイドバルブ42、ガレージシフトバルブ43、SLバルブ44および挟圧コントロールバルブ45が含まれる。
クラッチモジュレータバルブ41は、クラッチモジュレータ圧を出力するバルブである。クラッチモジュレータバルブ41は、機械式オイルポンプ32または電動オイルポンプ33の発生油圧が低いために、クラッチモジュレータバルブ41に入力されるライン圧が一定圧未満であるときには、そのライン圧と同圧のクラッチモジュレータ圧を出力する。一方、ライン圧が一定圧以上であるときには、そのライン圧を調圧して、その一定圧のクラッチモジュレータ圧を出力する。
リニアソレノイドバルブ42は、ノーマルオープンタイプ(常開式)のソレノイドバルブである。リニアソレノイドバルブ42の入力ポートには、クラッチモジュレータ圧が入力される。リニアソレノイドバルブ42では、電磁コイルへの通電が制御されることにより、入力ポートに入力されるクラッチモジュレータが調圧され、その調圧により得られる油圧(制御圧)が出力ポートから出力される。
ガレージシフトバルブ43は、Nレンジ(中立レンジ)からDレンジ(前進レンジ)またはRレンジ(後進レンジ)に切り替えられるガレージシフト時に、前進クラッチCへの供給油圧を制御圧(過渡圧)と保持圧とに切り替えるためのバルブである。ガレージシフトバルブ43には、リニアソレノイドバルブ42の出力油圧が制御圧として入力され、クラッチモジュレータ圧が保持圧として入力される。
SLバルブ44は、ノーマルクローズタイプのオン/オフソレノイドバルブである。SLバルブ44は、電磁コイルへの通電(オン)により開弁し、電磁コイルへの非通電(オフ)により閉弁する。SLバルブ44には、たとえば、ライン圧を調圧して得られるモジュレータ圧が入力される。SLバルブ44が開かれると、SLバルブ44からモジュレータ圧が出力され、そのモジュレータ圧が信号圧としてガレージシフトバルブ43に入力される。モジュレータ圧が十分に高い状態で、モジュレータ圧がガレージシフトバルブ43に入力されると、ガレージシフトバルブ43のスプールがクラッチモジュレータ圧を出力する係合位置から制御圧を出力する過渡位置に変位する。
挟圧コントロールバルブ45には、リニアソレノイドバルブ42の出力油圧が入力される。挟圧コントロールバルブ45は、リニアソレノイドバルブ42から入力される油圧を所定の増幅度で増幅して出力する。挟圧コントロールバルブ45から出力される油圧は、セカンダリプーリ15のピストン室28に可動シーブ26に作用するセカンダリ圧として供給される。
車両1には、マイコン(マイクロコントローラユニット)を含む構成のECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)51が備えられている。マイコンには、たとえば、CPU、ROM、RAM、データフラッシュ(フラッシュメモリ)などが内蔵されている。図1には、無段変速機4を制御するための1つのECU51のみが示されているが、車両1には、各部を制御するため、ECU51と同様の構成を有する複数のECUが搭載されている。ECU51を含む複数のECUは、CAN(Controller Area Network)通信プロトコルによる双方向通信が可能に接続されている。
ECU51には、タービン回転数センサ52、入力軸回転数センサ53および油圧センサ54などが接続されている。
タービン回転数センサ52は、トルクコンバータ3のタービンランナの回転に同期したパルス信号を検出信号として出力する。ECU51は、タービン回転数センサ52から入力されるパルス信号の周波数をタービンランナの回転数であるタービン回転数NTに換算する。
入力軸回転数センサ53は、たとえば、無段変速機4の入力軸11の回転に同期したパルス信号を検出信号として出力する。ECU51は、入力軸回転数センサ53から入力されるパルス信号の周波数を入力軸11の回転数である入力軸回転数NINに換算する。
油圧センサ54は、無段変速機4のセカンダリプーリ15の可動シーブ26に作用する油圧(セカンダリ圧)に応じた検出信号を出力する。ECU51は、油圧センサ54の検出信号からセカンダリ圧を取得する。
ECU51は、各種センサの検出信号から取得した情報および/または他のECUから入力される種々の情報などに基づいて、電動オイルポンプ33の駆動を制御し、前進クラッチCの係合/解放の制御(クラッチ制御)やセカンダリ圧の制御(挟圧制御)のために、リニアソレノイドバルブ42およびSLバルブ44への通電を制御する。
車両1では、IDS制御(アイドリングストップ制御)が実行可能である。IDS制御は、エンジン2のアイドリングを抑制することにより燃費の向上を図る技術である。IDS制御に必要な情報として、IDS制御のためのECUであるIDSECUには、車速およびブレーキペダルの操作量などの情報が入力される。
IDS制御では、車両1の走行中に、ブレーキペダルが操作される(踏まれている)と、IDSECU(図示せず)により、所定のIDS開始条件が成立しているか否かが判定される。IDS開始条件は、たとえば、車速が所定のアイドリングストップ実施車速(たとえば、10km/h)以下であり、かつ、ブレーキペダルが一定時間以上操作されているという条件である。ブレーキペダルが操作されている間、IDS開始条件が成立しているか否かが一定の周期で判定される。そして、IDS開始条件が成立すると、IDS開始条件が成立してことに応じて、IDSECUからエンジン2を制御するためのECUであるエンジンECUにIDS要求が送信され、このIDS要求を受けて、エンジンECUにより、エンジン2が停止(アイドリングストップ)される。
アイドリングストップの開始後は、IDSECUにより、所定のIDS復帰条件が成立しているか否かが一定の周期で判定される。IDS復帰条件は、たとえば、アイドリングストップ中にブレーキペダルの操作が解除される(ブレーキペダルから運転者の足が離される)という条件である。IDS復帰条件が成立すると、IDSECUからエンジンECUにIDS復帰要求が送信され、このIDS復帰要求を受けて、エンジンECUにより、スタータが作動されて、エンジン2が再始動される。
なお、IDSECUの機能がエンジンECUに組み込まれてもよい。また、IDSECUの機能がECU51に組み込まれてもよいし、IDSECUおよびエンジンECUの機能がECU51に組み込まれてもよい。
<制御内容決定処理>
図2は、制御内容決定処理の流れを示すフローチャートである。
ECU51は、IDS制御時に実行されるクラッチ制御の内容を決定するため、制御内容決定処理を実行する。
制御内容決定処理は、IDSECUからIDS要求が出力されるまで進行しない(ステップS1のNO)。
IDS要求が出力されると(ステップS1のYES)、車両1の車速が取得される(ステップS2)。車速は、ECU51によって車速センサ55(図1参照)の検出信号から取得されるか、または、他のECUによって車速センサ55の検出信号から取得され、そのECUからECU51に入力される。
車速の取得後、車速が所定車速以上であるか否かが判定される(ステップS3)。
そして、車速が所定車速以上である場合には(ステップS3のYES)、第1クラッチ制御の実行が決定される(ステップS4)。
一方、車速が所定車速未満である場合には(ステップS3のNO)、第2クラッチ制御の実行が決定される(ステップS5)。
<第1クラッチ制御>
図3は、第1クラッチ制御の流れを示すフローチャートである。図4は、第1クラッチ制御時のタービン回転数NT、入力軸回転数NIN、エンジン回転数、電動オイルポンプ(EOP)33のオン/オフ状態および前進クラッチCの係合/解放状態の時間変化を示す図である。
第1クラッチ制御は、ECU51によって実行される。
第1クラッチ制御では、IDSECUからIDS要求が出力されると、SLバルブ44に通電されて、SLバルブ44がオンにされる。SLバルブ44のオンにより、SLバルブ44からガレージシフトバルブ43に信号圧が入力され、ガレージシフトバルブ43のスプールが係合位置から過渡位置に変位する。また、リニアソレノイドバルブ42の出力油圧が最低圧になるよう、リニアソレノイドバルブ42への通電が制御される。これにより、リニアソレノイドバルブ42の最低圧がガレージシフトバルブ43を通して前進クラッチCに供給されて、前進クラッチCが解放される(ステップS41、時刻T11)。
また、リニアソレノイドバルブ42の出力油圧が最低圧に下がると、その最低圧が挟圧コントロールバルブ45を通してセカンダリプーリ15に供給されるので、セカンダリプーリ15の可動シーブ26からベルト16に付与される挟圧が最も低くなる。そのため、車両1が急制動されても、イナーシャトルクによるベルト滑りが発生した際のベルトや可動シーブ26などの損傷を抑制できる。
その後、タービン回転数センサ52の検出信号からタービン回転数NTが取得される。また、入力軸回転数センサ53の検出信号から入力軸回転数NINが取得される。そして、タービン回転数NTおよび入力軸回転数NINの両方が所定値以下に低下したか否かが判断される(ステップS42)。タービン回転数NTおよび入力軸回転数NINの少なくとも一方が所定値より大きい間は、タービン回転数NTおよび入力軸回転数NINが繰り返し取得される(ステップS42のNO)。
なお、所定値は、0であることが好ましいが、タービン回転数NTと入力軸回転数NINとがほぼ等しくなるような十分に小さい値であれば、0でなくてもよい。
タービン回転数NTおよび入力軸回転数NINの両方が所定値以下に低下すると(ステップS42のYES、時刻T12)、前進クラッチCを解放する理由(急制動によるイナーシャトルクによるベルト滑りの懸念)がないので、SLバルブ44が非通電によりオフ(前進クラッチCの解放が終了)される(ステップS43)。SLバルブ44がオフになると、SLバルブ44からガレージシフトバルブ43への信号圧の入力がなくなり、ガレージシフトバルブ43が過渡位置から係合位置に変位する。このとき、エンジン2が停止し、機械式オイルポンプ32が停止しているので、クラッチモジュレータ圧は、0または極低圧である。したがって、ガレージシフトバルブ43が係合位置に変位して、クラッチモジュレータ圧が前進クラッチCに入力されても、前進クラッチCの解放状態が維持される。SLバルブ44を非通電にすることにより、節電になるので、節電による燃費の向上を図ることができる。
また、電動オイルポンプ33がオンされる(ステップS44、時刻T12)。電動オイルポンプ33のオンにより、電動オイルポンプ33が油圧を発生し、その発生油圧がライン圧になる。このとき、ガレージシフトバルブ43のスプールが係合位置に位置しているので、電動オイルポンプ33の発生油圧は、クラッチモジュレータバルブ41およびガレージシフトバルブ43を通して前進クラッチCに供給される。電動オイルポンプ33の発生油圧が前進クラッチCに供給されることにより、前進クラッチCが係合する。
また、電動オイルポンプ33の発生油圧は、クラッチモジュレータバルブ41およびノーマルオープンタイプのリニアソレノイドバルブ42を通してセカンダリプーリ15に供給される。電動オイルポンプ33の発生油圧がセカンダリプーリ15に供給されることにより、セカンダリプーリ15の可動シーブ26からベルト16に付与される挟圧が上昇する。
その後、油圧センサ54の検出信号から可動シーブ26に作用するセカンダリ圧が取得される。そして、セカンダリ圧が所定圧まで上昇したか否かが判断される(ステップS45)。このとき、セカンダリプーリ15が停止しているので、セカンダリ圧と挟圧とがほぼ一致する。セカンダリ圧(挟圧)が所定圧まで上昇すると(ステップS45のYES)、第1クラッチ制御が終了される。
<第2クラッチ制御>
図5は、第2クラッチ制御の流れを示すフローチャートである。図6は、第2クラッチ制御時の入力軸回転数NIN、エンジン回転数、電動オイルポンプ(EOP)33のオン/オフ状態および前進クラッチCの係合/解放状態の時間変化を示す図である。
第2クラッチ制御は、ECU51によって実行される。
第2クラッチ制御では、IDSECUからIDS要求が出力された後も、SLバルブ44が非通電のままにされる。このとき、ガレージシフトバルブ43のスプールが係合位置に位置しているので、前進クラッチCの係合状態が継続する(ステップS51、時刻T21)。
エンジン2の回転数(エンジン回転数)の低下に伴い、機械式オイルポンプ32の発生油圧が低下する。第2クラッチ制御では、エンジン回転数が取得されて、エンジン回転数が所定回転数まで低下したか否かが判断される(ステップS52)。所定回転数は、電動オイルポンプ33の駆動が必要となる回転数であり、たとえば、機械式オイルポンプ32の発生油圧で前進クラッチCの係合が維持不能なエンジン回転数の上限値より少し高い回転数に設定されている。
エンジン回転数が所定回転数まで低下すると(ステップS52のYES)、電動オイルポンプ33がオンにされる(ステップS53、時刻T22)。電動オイルポンプ33のオンにより、電動オイルポンプ33が油圧を発生し、その発生油圧がライン圧になる。このとき、ガレージシフトバルブ43のスプールが係合位置に位置しているので、電動オイルポンプ33の発生油圧は、クラッチモジュレータバルブ41およびガレージシフトバルブ43を通して前進クラッチCに供給される。電動オイルポンプ33の発生油圧が前進クラッチCに供給されることにより、前進クラッチCの係合状態が継続する。
また、電動オイルポンプ33の発生油圧は、クラッチモジュレータバルブ41およびノーマルオープンタイプのリニアソレノイドバルブ42を通してセカンダリプーリ15に供給される。電動オイルポンプ33の発生油圧がセカンダリプーリ15に供給されることにより、セカンダリプーリ15の可動シーブ26からベルト16に付与される挟圧が上昇する。
その後、油圧センサ54の検出信号から可動シーブ26に作用するセカンダリ圧が取得される。そして、セカンダリ圧が所定圧まで上昇したか否かが判断される(ステップS54)。このとき、セカンダリプーリ15が停止しているので、セカンダリ圧と挟圧とがほぼ一致する。セカンダリ圧(挟圧)が所定圧まで上昇すると(ステップS54のYES)、第2クラッチ制御が終了される。
<作用効果>
以上のように、IDS制御では、IDS開始条件が成立し、IDSECUからIDS要求が出力されたことに応じて、エンジン2が停止され、そのエンジン2の停止中にIDS復帰条件が成立し、IDSECUからIDS復帰要求が出力されたことに応じて、エンジン2が再始動される。
IDS要求が出力されると、車両1の車速に対応する車速が取得される。
車速が所定車速以上である場合、つまり車両1が減速走行中にIDS要求が出力された場合、前進クラッチCが係合している状態から解放される。これにより、車両1の減速走行中に無段変速機4のベルト16に負荷されるトルクを低減することができる。そのため、減速走行中の急制動によるベルト滑りの発生を抑制することができる。
また、車両1の停車後ではなく、減速走行中からエンジン2が停止されることにより、エンジン2の停止時間(アイドリングストップ時間)を長く取ることができ、車両1の燃費を向上させることができる。
前進クラッチCの解放後、タービン回転数NTおよび入力軸回転数NINが取得される。IDS制御によりエンジン2が停止されると、エンジン2の回転数が次第に低下し、これに伴って、タービン回転数NTが低下する。また、前進クラッチCが解放されているので、車両1の車速の低下に伴って、入力軸回転数NINが低下する。タービン回転数NTおよび入力軸回転数NINの両方が所定値以下に低下すると、それ以後に、電動オイルポンプ33がオンされる。電動オイルポンプ33のオンにより、電動オイルポンプ33で油圧が発生し、その油圧が前進クラッチCに供給されることにより、前進クラッチCが係合する。このとき、タービン回転数NTおよび入力軸回転数NINがそれぞれ所定値以下であるので、前進クラッチCの急係合によるベルト滑りおよびショックの発生が抑制される。その後、IDS復帰時には、前進クラッチCが係合した状態でエンジン2が再始動されることにより、エンジン2の動力が無段変速機4に速やかに入力されるので、車両1を速やかに加速させることができる。
よって、減速走行中の急制動によるベルト滑りの発生ならびに前進クラッチCの急係合によるベルト滑りおよびショックの発生を抑制でき、さらには、IDS復帰時の性能(車両1の加速性能)を向上させることができる。
また、IDS制御によるエンジン2の停止後、タービン回転数NTおよび入力軸回転数NINの両方が所定値以下に低下するまでは、前進クラッチCが解放されるので、電動オイルポンプ33には、ポンプ容量の小さいものを採用することができる。
一方、車速が所定車速未満である場合、つまり車両1がほぼ停止した状態または完全に停止した状態でIDS要求が出力された場合、電動オイルポンプ33が作動されて、電動オイルポンプ33の発生油圧を用いて前進クラッチCの係合が維持される。そのため、IDS復帰時に、前進クラッチCの再係合が不要であるので、IDS復帰(エンジン2の再始動)から前進クラッチCの係合(車両1の加速)までのタイムラグをなくすことができ、前進クラッチCの急係合によるショックの発生をなくすことができる。その結果、IDS復帰時の性能を向上させることができる。
なお、車速が所定車速以上であるか未満であるかにかかわらず、IDS要求が出力された場合に、電動オイルポンプ33を作動させて、前進クラッチCの係合を継続させる構成も考えられる。しかしながら、車速が所定車速以上での減速走行中の急制動によるベルト滑りの発生を抑制するためには、電動オイルポンプ33にポンプ容量の大きいものを採用して、無段変速機4のセカンダリプーリ15に供給される油圧(挟圧)を大きくする必要がある。
車速が所定車速未満の状態では、急制動によりセカンダリプーリ15に生じるイナーシャトルクが小さいので、挟圧が小さくても、イナーシャトルクによるベルト滑りの発生を抑制することができる。そのため、IDS要求出力開始時の車速が所定車速以上である場合に前進クラッチCが解放され、所定車速未満である場合に前進クラッチCが係合される構成では、電動オイルポンプ33にポンプ容量の小さいものを採用できるので、無段変速機4、機械式オイルポンプ32および電動オイルポンプ33を含むユニットのコストおよびサイズの低減を図ることができる。
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、無段変速機4を取り上げたが、本発明に係る制御装置は、動力分割式無段変速機に用いることもできる。動力分割式無段変速機は、変速比の変更により動力を無段階に変速するベルト式の無段変速機構と、動力を一定の変速比で変速する一定変速機構とを備え、駆動源の動力を2系統に分割して伝達可能な変速機である。
また、たとえば、前述の実施形態ではIDS開始要求時の車速対応値(車速)を用いて、車速対応値が所定値以上でIDS制御が実行されたか否かを判定したが、本発明に係る制御装置は、エンジン回転数が所定値以下(オイルポンプ能力が低下)したときの車速対応値を用いてもよいし、IDS開始条件に車速対応値が所定値以上であることを含め、IDS要求後の車速対応値と所定値の比較を省いてもよい。
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
1 車両
2 エンジン
4 無段変速機
32 機械式オイルポンプ
33 電動オイルポンプ
51 ECU(制御装置、IDS制御手段、回転数取得手段、クラッチ制御手段)
52 タービン回転数センサ(回転数取得手段)
53 入力軸回転数センサ(回転数取得手段)
C 前進クラッチ

Claims (1)

  1. エンジン、ベルト式の無段変速機、車輪、前記エンジンから前記車輪との間で動力を伝達/遮断する摩擦係合要素、前記エンジンの動力により前記摩擦係合要素を係合する第1係合手段、および前記エンジン停止中にも前記摩擦係合要素を係合可能な第2係合手段を搭載した車両に用いられる制御装置であって、
    所定のIDS開始条件が成立したことに応じて、前記エンジンを停止させ、その停止中に所定のIDS復帰条件が成立したことに応じて、前記エンジンを再始動させるIDS制御を実行するIDS制御手段と、
    前記摩擦係合要素により遮断される前記車輪側の回転数を取得する後回転数取得手段と、
    前記摩擦係合要素により遮断される前記エンジン側の回転数を取得する前回転数取得手段と、
    前記摩擦係合要素が係合している状態から、前記IDS開始条件が成立したことに応じて、当該成立以後に、前記第1係合手段を制御して、前記摩擦係合要素を解放させ、前記前回転数取得手段により取得される前回転数および前記後回転数取得手段により取得される後回転数の両方が所定値以下に低下した以後に、前記第2係合手段を作動させて、それより先に前記第1係合手段を制御して解放させた前記摩擦係合要素を係合させる制御手段とを含む、車両用制御装置。
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