JP6774326B2 - 積層シート、並びにこれを用いた成形品とその製造方法 - Google Patents
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Description
UV硬化性インク等のIJ印刷用インクの密着性が良好な成分としては、スチレン系共重合体が挙げられる。例えば、特許文献1には、ポリオレフィン系樹脂とスチレン系共重合樹脂とを含有するフィルム層を含むシート状基材と、中間処理層と、インク受容層とを有するIJ印刷用ポリオレフィン系樹脂シートが開示されている(請求項1)。
メタクリル系樹脂は、蒸発ガスによる上記問題(蒸発ガスによる異臭または発煙、および蒸発ガスの付着による切削面の外観不良)が生じがたく、レーザー切削加工性が良い傾向がある。これに対して、分子内に芳香環構造を有するスチレン系共重合体は、蒸発ガスによる上記問題(蒸発ガスによる異臭または発煙、および蒸発ガスの付着による切削面の外観不良)が生じやすく、レーザー切削加工性があまり良くない傾向がある。
前記第1の樹脂層中のスチレン系単量体単位の質量分率をCstとし、前記第1の樹脂層の厚みをz1とし、前記第2の樹脂層の厚みをz2とし、シート全体の厚みをZとしたとき、下記式(1)〜(6)を充足する、積層シート。
[3] 共押出成形シートである、[1]または[2]の積層シート。
[4] [1]〜[3]のいずれかの積層シートからなり、半径0.5〜2mmの曲線切削部を有する、成形品。
[5] [1]〜[3]のいずれかの積層シートを、出力100W以上のレーザー加工機にて350cm/min以上の速度で切削加工する、成形品の製造方法。
本発明の積層シートは、スチレン系共重合体(A)を含み表層を構成する第1の樹脂層とメタクリル系重合体(B)を含む第2の樹脂層とを有し、第1の樹脂層中のスチレン系単量体単位の質量分率をCstとし、第1の樹脂層の厚みをz1とし、第2の樹脂層の厚みをz2とし、シート全体の厚みをZとしたとき、下記式(1)〜(6)を充足する。
2つの第1の樹脂層のうち、一方の第1の樹脂層の厚みをz11、スチレン系単量体単位の質量分率をCst1とし、他方の第1の樹脂層の厚みをz12、スチレン系単量体単位の質量分率をCst2とする。
z11≠z12である場合、z11とz12のうち値の大きい方の第1の樹脂層と第2の樹脂層とが式(1)〜(6)を充足すればよい。具体的には、式(1)〜(6)中のz1およびCstの値としては、z11とz12のうち値の大きい方の第1の樹脂層のz1およびCstの値を採用する。
z11=z12であり、かつ、Cst1≠Cst2である場合、Cst1とCst2のうち値の大きい方の第1の樹脂層と第2の樹脂層とが式(1)〜(6)を充足すればよい。具体的には、式(1)〜(6)中のz1およびCstの値としては、Cst1とCst2のうち値の大きい方の第1の樹脂層のz1およびCstの値を採用する。
本発明の積層シートは、表層をなす第1の樹脂層に対してIJ印刷を施すことができる。本発明の積層シートはまた、IJ印刷を施した後、必要に応じてレーザーおよびNCルーター等を用いて切削加工して、所望の形状に成形することができる。このようにして得られる成形品は、キーホルダー等の雑貨および什器等に好ましく用いることができる。かかる用途において、IJ印刷用インクとしては、UV硬化性インク等が好ましく用いられる。
一般的に、メタクリル系樹脂は、蒸発ガスによる上記問題(蒸発ガスによる異臭または発煙、および蒸発ガスの付着による切削面の外観不良)が軽減され、レーザー切削加工性が良好である。ただし、UV硬化性インク等のIJ印刷用インクの浸透性があまり良くなく、IJ印刷用インクの密着性があまり良くない傾向がある。
第1の樹脂層は必要に応じて、スチレン系共重合体(A)と合わせて、スチレン単独重合体を含むことができる。
第1の樹脂層は必要に応じて、メタクリル系重合体等の他の任意成分を含むことができる。
なお、図2に示す実施形態の3層構造の積層シートにおいて、2つの第1の樹脂層の組成は同一でも非同一でもよい。
第2の樹脂層は必要に応じて、他の任意成分を含むことができる。
本発明の積層シートは、公知のシート成形法により製造でき、生産効率および層間接着性の観点から、押出成形法等が好ましい。押出成形法の場合、異なる押出機を用いて溶融混練されたスチレン系共重合体(A)とメタクリル系重合体(B)とを異なる押出ダイ(Tダイ等)からそれぞれシート状に押出した後に積層してもよいし、異なる押出機を用いて溶融混練されたスチレン系共重合体(A)とメタクリル系重合体(B)とを共通の押出ダイから共押出してもよい。本発明の積層シートは、共押出成形シートであることが好ましい。共押出ダイの方式としては、マルチマニホールドダイ方式およびフィードブロック方式等が挙げられる。
本発明の積層シートは、IJ印刷用樹脂シートとして好ましく用いることができる。本発明の積層シートの表層をなす第1の樹脂層に対してIJ印刷を施すことで、印刷物を提供することができる。本発明の積層シートはまた、IJ印刷を施した後、必要に応じてレーザーおよびNCルーター等を用いて切削加工して、所望の形状に成形することができる。
本発明の積層シートはレーザー切削加工性が良好であるため、微細な切削加工が可能である。例えば、半径0.5〜2mmの曲線切削部を有する成形品を形状精度良く製造することができる。
本発明の積層シートはレーザー切削加工性が良好であるため、高出力のレーザー加工機を用い、高速で生産性良く切削加工することができる。例えば、本発明の積層シートを、出力100W以上のレーザー加工機にて350cm/min以上の速度で切削加工して、成形品を製造することができる。
本発明の積層シートおよび成形品は、印刷、広告、サイン・ディスプレイ、イベント、アミューズメント、建築、およびインテリア等の種々の分野に用いることができる。
本発明の積層シートおよび成形品は、キーホルダー等の雑貨および什器等に好ましく用いることができる。
[評価項目および評価方法]
(インク密着性)
IJ印刷を施した積層または単層の樹脂シートに対して、インク密着性の評価を実施した。白および黒のUV硬化性インクの硬化物からなる印刷層において10mm四方の評価領域を縦横1mm間隔で100マス(縦10マス×横10マス)にクロスカットした。この評価領域上に全体的にセロハンテープを貼り付け、その上から消しゴムでこすってセロハンテープを印刷面に充分に密着させた後、セロハンテープを90°方向に剥離させた。目視にて評価対象の100マスのうちインクが樹脂シートから剥離したマスの数を求めた。評価基準は以下の通りである。
◎(優):すべてのマスにインク剥離が見られなかった。
○(良):1以上10未満のマスにインク剥離が見られた。
△(可):10以上50未満のマスにインク剥離が見られた。
×(不可):50以上のマスにインク剥離が見られた。
IJ印刷を施した積層または単層の樹脂シートに対して、レーザー切削加工性の評価を実施した。
<切削面の外観>
レーザー切削加工後に得られた10個の成形品サンプルについて、30cm直線切削部の切削面の欠点の有無を光学顕微鏡観察および指触検査により評価した。主な欠点は以下の通りである。
荒れ:切削面が全体的に一様でなく、触るとざらつきがあった。
角荒れ:切削面の角部に部分的に荒れがあり、触るとざらつきがあった。
樹脂溜り:切削面の一部に溶融した樹脂溜りが見られた。
異物:切削面に有色異物が見られた。
評価基準は以下の通りである。
◎(優):0〜1個の成形品サンプルに欠点が見られた。
○(良):2〜4個の成形品サンプルに欠点が見られた。
△(可):5〜7個の成形品サンプルに欠点が見られた。
×(不可):8〜10個の成形品サンプルに欠点が見られた。
レーザー切削加工時の発煙または臭気発生の有無を官能評価した。評価基準は以下の通りである。
○(良):発煙または臭気が少しあった。
△(可):○と×との中間。
×(不良):発煙または臭気が顕著にあった。
<MS樹脂>
(A1)新日鉄住金化学株式会社製エスチレン600(Cst=0.35)、
(A2)(A1)と株式会社クラレ社製メタクリル樹脂パラペット(登録商標)HM1000(Cst=0)を3:4の質量比で溶融混練した組成物(Cst=0.15)。
<MS樹脂シート>
(A3)JSP株式会社製アクリエースUV(Cst=0.35、3mm厚)。
(B1)株式会社クラレ製パラペットEH−S、
(B2)株式会社クラレ製パラペットHR−S、
(B3)株式会社クラレ製パラペットGH−S。
<メタクリル系樹脂シート>
(B4)株式会社クラレ製コモグラスCG(3mm厚)。
(積層シートの製造)
上層および下層(2つの第1の樹脂層)の材料として、MS樹脂(A1)を東芝機械株式会社製65mmφ単軸押出機を用いて溶融した。中層(第2の樹脂層)の材料として、メタクリル系樹脂(B1)を東芝機械株式会社製150mmφ単軸押出機を用いて溶融した。マルチマニホールド型ダイスを用いて溶融状態のMS樹脂(A1)と溶融状態のメタクリル系樹脂(B1)と溶融状態のMS樹脂(A1)とをこの順で積層し、Tダイから押出し、互いに隣接した4個の冷却ロールを用いて冷却し、引取りロールで引き取った。以上の共押出成形により、MS樹脂(A1)(上層、0.15mm厚)/メタクリル系樹脂(B1)(中層、2.7mm厚)/MS樹脂(A1)(下層、0.15mm厚)の2種3層の積層シートを製造した。主な製造条件と各種パラメータ値を表1に示す。
得られた積層シートの上層(一方の第1の樹脂層)の表面に対して以下の条件でIJ印刷を実施し、上記のインク密着性の評価を実施した。印刷パターンは、短径1.8cm×長径2.8cmの略楕円形ベタ印刷とした。
装置:ローランド ディー.ジー.株式会社製LEF−300、
温度:室温(20〜25℃)、
UV硬化性インク(白):ローランド ディー.ジー.株式会社製EUV−BK、
UV硬化性インク(黒):ローランド ディー.ジー.株式会社製EUV−WH。
上記IJ印刷後の積層シートに対して以下の条件でレーザー切削加工を実施して、サイズが短径20mm×長径30mmで半径1mmの曲線切削部を有するテレビアニメのキャラクター形状の成形品を得た。
装置:SEI社製MERCURY609、
温度:室温(20〜30℃)、
レーザー種別:炭酸ガスレーザー、
レーザー出力:200W、
切削速度:350〜400cm/min。
各層の材料と厚みを表1に示す条件に変更した以外は実施例1と同様にして、MS樹脂(上層)/メタクリル系樹脂(中層)/MS樹脂(下層)の2種3層の積層シートを製造した。得られた積層シートに対して実施例1と同様に、IJ印刷およびレーザー切削加工を実施し、評価を実施した。
MS樹脂シート(A3)を用意し、実施例1と同様に、IJ印刷およびレーザー切削加工を実施し、評価を実施した。
[比較例2]
メタクリル系樹脂シート(B4)を用意し、実施例1と同様に、IJ印刷およびレーザー切削加工を実施し、評価を実施した。
各層の厚みを表1に示す条件に変更した以外は実施例1と同様にして、MS樹脂(上層)/メタクリル系樹脂(中層)/MS樹脂(下層)の2種3層の積層シートを製造した。得られた積層シートに対して実施例1と同様に、IJ印刷およびレーザー切削加工を実施し、評価を実施した。
評価結果を表2に示す。
実施例1〜6では、MS樹脂/メタクリル系樹脂/MS樹脂の3層構造からなり、式(1)〜(6)を充足する積層シートを製造した。実施例1〜6で得られた積層シートは表層(上層)が分子内に芳香環構造を有するMS樹脂からなることから、インク浸透性が良好で、インク密着性が良好であった。実施例1〜6で得られた積層シートは式(1)〜(6)を充足し、積層シートにおいて、メタクリル系樹脂の占める割合が多く、MS樹脂の占める割合が少ないため、レーザー切削加工性が良好であった。
比較例1で用いたMS樹脂からなる単層シートは、インク密着性は良好であったが、レーザー切削加工性があまり良くなかった。比較例2で用いたメタクリル系樹脂からなる単層シートは、レーザー切削加工性は良好であったが、インク密着性があまり良くなかった。メタクリル系樹脂は、分子内に芳香環構造を有するMS樹脂に対して、インク浸透性が低く、インク密着性が劣ると考えられる。
比較例3で得られた積層シートは、インク密着性は良好であったが、MS樹脂の占める割合が多いため、レーザー切削加工性があまり良くなかった。
11 第1の樹脂層
12 第2の樹脂層
Claims (6)
- 前記第2の樹脂層の両面にそれぞれ前記第1の樹脂層を有する3層構造である、請求項1に記載の積層シート。
- 共押出成形シートである、請求項1または2に記載の積層シート。
- キーホルダー用である、請求項1〜3のいずれかに記載の積層シート。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の積層シートからなり、前記表層上にインクジェット印刷が施され、半径0.5〜2mmの曲線切削部を有する、成形品。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の積層シートを、出力100W以上のレーザー加工機にて350cm/min以上の速度で切削加工する、成形品の製造方法。
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