JP6774127B2 - ホルムアルデヒド検知センサ、および、それを用いたシステム - Google Patents

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Description

本発明は、電気抵抗値の変化を利用したホルムアルデヒド検知センサ、および、それを用いたシステムに関する。
ホルムアルデヒドは、揮発性有機化合物(VOC)の1つであり、一定量を超えると人体に有害であることが知られている。ホルムアルデヒドは、例えば、合板、ラッカー、建材などに含有され、室内において大気中に放出されて、シックハウス症候群、がんなどの病気を引き起こし得る。世界保健機構(WHO)によれば、室内におけるホルムアルデヒド濃度基準は、0.08ppm以下とされている。
このようなホルムアルデヒドを簡易に検出する方法として、検知管が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1によれば、検知管には、リン酸ヒドロキシルアミンとホルムアルデヒドとの反応を利用する充填剤が充填されており、反応によって変色するよう構成されている。しかしながら、このような検知管では、所望の場所にてホルムアルデヒドを検出することはできるが、随時ホルムアルデヒドをモニタリングすることはできず、使い捨てである。
一方、カーボンナノチューブは、室温において半導体性を示し、その表面にガス等が吸着することにより、容易に電気抵抗値が変化することが知られている。このようなカーボンナノチューブを用いたセンサが開発されている(例えば、特許文献2および3を参照)。特許文献2によれば、検知したい化合物と反応する基がグラフトされたカーボンナノチューブが電極上に配置されたセンサを開示しており、電気抵抗値の変化によって揮発性有機化合物などの化合物を検知する。特許文献3によれば、カーボンナノチューブを無線周波数識別タグに搭載し、抵抗率の変化によって、揮発性有機化合物などを検知する。しかしながら、特許文献2および3のいずれも、ホルムアルデヒドのみに選択的ではない。
カーボンナノチューブを用いた別のホルムアルデヒド検知センサが開発されている(例えば、非特許文献1を参照)。非特許文献1は、カーボンナノチューブがテトラフルオロヒドロキノン(TFQ)で官能化されており、乾燥空気中、0.15ppmのホルムアルデヒドに対して導電率が20%向上し、ホルムアルデヒドに対して高い選択性を有することを報告している。しかしながら、相対湿度が20%以上になると、感度が大幅に低下するため、通常の室内での使用に不向きである。
したがって、ホルムアルデヒドに対して高い感度を示し、選択性に優れ、常にモニタリング可能なホルムアルデヒド検知センサの開発が望まれている。
特開2003−287500号公報 特開2012−504227号公報 特表2017−509859号公報
Shiら,Sens.Actuator B−Chem.,2013,177,370−375
以上から、本発明の課題は、ホルムアルデヒドを選択的かつ高精度に、常にモニタリング可能なホルムアルデヒド検知センサを提供することである。
本発明のホルムアルデヒド検知センサは、少なくともヒドロキシルアミン塩類を含有し、ホルムアルデヒドと反応し、酸を発生させる反応部と、前記反応部で発生した酸によって電気抵抗値が変化する炭素材料を担持した電極を備える応答部とを備え、前記ヒドロキシルアミン塩類と前記炭素材料とは離間しており、これにより上記課題を解決する。
前記ヒドロキシルアミン塩類は、ヒドロキシルアミン(NHOH)のハロゲン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩およびトリフルオロ酢酸塩からなる群から選択される中和塩であってもよい。
前記ヒドロキシルアミン塩類は、NHOR(Rは、芳香族、環式または非環式の炭化水素化合物、または、それらの誘導体である)のハロゲン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩およびトリフルオロ酢酸塩からなる群から選択される中和塩であってもよい。
前記炭素材料は、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラフェン、フラーレンおよびそれらの誘導体からなる群から選択されてもよい。
前記カーボンナノチューブは、半導体型カーボンナノチューブを10重量%以上含有してもよい。
前記カーボンナノチューブは、半導体型カーボンナノチューブを60重量%以上含有してもよい。
前記炭素材料は、π共役系低分子、界面活性剤、ポリマーおよび超分子ポリマーからなる群から選択される分散剤によって被覆されていてもよい。
前記超分子ポリマーは次式で表されてもよい。
ここで、nは直鎖状のC17を表し、mは、2〜200の自然数であり、Mは、Cu、Ni、PdおよびPtからなる群から選択される2価の遷移金属イオンである。
前記ヒドロキシルアミン塩類は、多孔質材料に担持されていてもよい。
前記多孔質材料は、紙、疎水性ポリマー、親水性ポリマー、多孔質ガラス、多孔質炭素材料および多孔質酸化物からなる群から選択されてもよい。
前記反応部と前記応答部との間にスペーサを有してもよい。
前記ヒドロキシルアミン塩類は、粒子径が0.05μm以上5000μm以下の範囲を有する粒子に修飾されていてもよい。
前記粒子は、ポリスチレン(PS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカプロラクトン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルエチルアセテート、炭素、ガラスおよびシリカからなる群から選択される材料からなってもよい。
前記反応部は、塩酸、硝酸、炭酸、過塩素酸およびトリフルオロ酢酸の塩からなるからなる群から選択される揮発性酸の塩をさらに含有してもよい。
本発明のホルムアルデヒド検知システムは、ホルムアルデヒド検知センサと検出手段とを備え、前記ホルムアルデヒド検知センサは、上述のホルムアルデヒド検知センサであり、前記検出手段は、前記ホルムアルデヒド検知センサからの電気抵抗値の変化を検出し、これにより上記課題を解決する。
前記ホルムアルデヒド検知センサは、電源に接続されており、前記検出手段は、電流計または発光装置であってもよい。
前記発光装置は、発光ダイオードであってもよい。
炭素材料を担持した電極を備えるホルムアルデヒド非検知センサをさらに備え、前記ホルムアルデヒド非検知センサは、前記反応部で発生した酸が供給されないように配置されていてもよい。
前記検出手段は、前記ホルムアルデヒド検知センサからの電気抵抗値の変化と、前記ホルムアルデヒド非検知センサからのそれとを比較し、ホルムアルデヒドによる応答と前記ホルムアルデヒド以外の応答とを区別してもよい。
前記ホルムアルデヒド検知センサにおける前記応答部の前記炭素材料にエアをフローし、前記炭素材料に吸着した酸を除去するエアフロー部をさらに備えてもよい。
本発明のホルムアルデヒド検知センサは、反応部で発生した酸を応答部の炭素材料の電気抵抗値の変化によって検出できる。特に、反応部にヒドロキシルアミン塩類を採用することにより、ホルムアルデヒドに選択的に反応し、酸を発生させることができるので、本発明のセンサは、ホルムアルデヒドを選択的に検知できる。また、炭素材料は、室温下、空気中においても、実測値で0.05ppmのホルムアルデヒドを検知でき、理論的には0.016ppmのホルムアルデヒドに対しても検知できるので、極めて高精度な検知を可能にする。さらに、炭素材料に吸着した酸を空気等のフローによって単に除去するだけで、本発明のセンサを繰り返し使用することもできる。本発明のセンサを各種検出装置と組み合わせれば、ホルムアルデヒド検知システムを提供できる。
本発明の例示的なホルムアルデヒド検知センサを示す模式図 本発明の別の例示的なホルムアルデヒド検知センサを示す模式図 本発明のさらに別の例示的なホルムアルデヒド検知センサを示す模式図 本発明のホルムアルデヒド検知システムを示す模式図 本発明の別のホルムアルデヒド検知システムを示す模式図 本発明のホルムアルデヒド検知センサを製造する様子を示す図 実施例1,2及び比較例3によるセンサのホルムアルデヒドに対する応答特性を示す図 実施例1、4〜5によるセンサのホルムアルデヒドに対する応答特性を示す図 実施例1、6〜7によるセンサのホルムアルデヒドに対する応答特性を示す図 実施例1および8によるセンサのホルムアルデヒドに対する応答特性を示す図 実施例8および参考例9によるセンサのホルムアルデヒドに対する応答特性を示す図 実施例8によるセンサのホルムアルデヒドに対する応答特性のホルムアルデヒド濃度依存性を示す図 図12に基づく、実施例8によるセンサのホルムアルデヒド濃度と電流値の増大との相関関係を示す図 図13の一部拡大図 実施例8によるセンサの水(420ppm)に対する応答特性を示す図 実施例8によるセンサの水(3200ppm)に対する応答特性を示す図 実施例8によるセンサのメタノール(1200ppm)に対する応答特性を示す図 実施例8によるセンサのエタノール(440ppm)に対する応答特性を示す図 実施例8によるセンサのテトラヒドロフラン(860ppm)に対する応答特性を示す図 実施例8によるセンサのトルエン(720ppm)に対する応答特性を示す図 実施例8によるセンサの各種ガスに対する応答特性の一覧を示す図 実施例8によるセンサの応答特性に及ぼす湿度の影響を示す図 相対湿度の変化およびホルムアルデヒドへの応答について、実施例8および参考例9のセンサで比較した図 温度変化への応答について、実施例8および参考例9のセンサで比較した図 実施例10によるセンサのホルムアルデヒドに対する応答特性を示す図 実施例11によるホルムアルデヒド検知システムと、ホルムアルデヒドに対する応答の様子とを示す図 実施例12のシステムのホルムアルデヒドを導入する前のLEDの輝度の様子(A)およびホルムアルデヒドを導入した後のLEDの輝度の様子(B)を示す図
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
(実施の形態1)
実施の形態1では、本発明のホルムアルデヒド検知センサについて説明する。
図1は、本発明の例示的なホルムアルデヒド検知センサを示す模式図である。
本発明のホルムアルデヒド検知センサ100(以降では単に本発明のセンサと称する場合がある)は、検知すべきホルムアルデヒドと反応するヒドロキシルアミン塩類110を少なくとも含有し、ホルムアルデヒドとの反応によって酸を生じる反応部120と、反応部120で発生した酸によって電気抵抗値が変化する炭素材料130を担持した電極140を備える応答部150とを備える。さらに、本発明のセンサ100では、ヒドロキシルアミン塩類110と炭素材料130とが離間していることを特徴とする。なお、図1では、ヒドロキシルアミン塩類110を分かりやすさのために模式的にドットで示す。
本願発明者らは、特許文献1に示されるようにホルムアルデヒドがリン酸ヒドロキシルアミンと反応することを利用し、それによって生成した酸がカーボンナノチューブの電気抵抗値を変化させ、ホルムアルデヒドを検知するためのセンサとして機能することに着目した。しかしながら、本願発明者らは、後述する比較例3に示すように、リン酸ヒドロキシルアミン等のヒドロキシルアミン塩類110とカーボンナノチューブ等の炭素材料130とが接触している場合、電気抵抗値の変化は見られるものの、ホルムアルデヒドに応答して電気抵抗が可逆的に変化するような現象が再現性よく生じないために、センサとして機能せず、ヒドロキシルアミン塩類110と炭素材料130とが離間している場合のみ、電気抵抗値の変化が生じ、センサとして機能することを見出した。本願明細書において、離間とは、物理的に接触していない状態を意図し、反応部120で発生した酸が応答部150に導入されれば離間の距離は特に制限はないが、例示的には、0.05μm以上5000μm以下の範囲である。
ここで、本発明のセンサ100の動作原理を説明する。本発明のセンサ100に検知すべきホルムアルデヒドが導入されると、反応部120において、ヒドロキシルアミン塩類110とホルムアルデヒドとが次式にしたがって反応し、酸として揮発性の塩酸が発生する。ここでは、簡単のためヒドロキシルアミン塩類110として後述するヒドロキシルアミン塩酸塩の場合を説明するが、いずれのヒドロキシルアミン塩類110であっても、同様の反応によって酸を発生する。
HCHO+NHOH・HCl→HC=NOH+HO+HCl
次いで、発生した塩酸は、応答部150にすぐさま拡散し、炭素材料130に吸着する。炭素材料130の電気伝導率は、酸が吸着することによって、上昇する。このような電気伝導率の変化が生じれば、ホルムアルデヒドが存在することを検知できる。本発明では、反応部120に用いるヒドロキシルアミン塩類110は、ホルムアルデヒド以外のメタノール、エタノール、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)に代表されるVOCには反応しないので、ホルムアルデヒドのみを選択的かつ高精度に検知できる。
なお、ヒドロキシルアミン塩類110は、ホルムアルデヒド以外のアルデヒドやケトンと反応し、酸を発生する可能性があるが、本センサによってホルムアルデヒドの存在が示唆された場合、ホルムアルデヒド以外のアルデヒドやケトン類では干渉されない他の精密分析法(例えば、ルチジン生成による呈色法やガスクロマトグラフィーなど)を行うことにより、ホルムアルデヒドの存在を断定できる。本発明のセンサは、ホルムアルデヒドを常時モニタすることで、精密分析法による検査の必要性があることをいち早く知らせることができる。
ヒドロキシルアミン塩類110は、ヒドロキシルアミン(NHOH)のハロゲン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩およびトリフルオロ酢酸塩からなる群から選択される無機化合物の中和塩である。これらのヒドロキシルアミン塩類110は、容易に入手または合成可能である。中でも、ホルムアルデヒドと反応した際に揮発性の酸(気体)が発生するものが好ましく、例示的には、ヒドロキシルアミンのハロゲン酸塩(NHOH・HCl、NHOH・HBr、NHOH・HF)、トリフルオロ酢酸塩等である。
あるいは、ヒドロキシルアミン塩類110は、NHOR(Rは、芳香族、環式または非環式の炭化水素化合物、または、それらの誘導体である)のハロゲン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩およびトリフルオロ酢酸塩からなる群から選択される有機化合物の中和塩である。中でも、Rが芳香族のベンゼン環またはニトロベンゼンであるハロゲン酸塩(NHOR・HCl、NHOR・HBr、NHOR・HF)、トリフルオロ酢酸塩等である。
反応部120は、少なくともヒドロキシルアミン塩類110を含有すればよいが、ヒドロキシルアミン塩類110とホルムアルデヒドとの反応によって不揮発性の酸(液体)が発生する場合、炭素材料130が、不揮発性の酸を効率的に吸着できない場合がある。このため、反応部120は、ヒドロキシルアミン塩類110に加えて、塩酸、硝酸、炭酸、過塩素酸およびトリフルオロ酢酸の塩からなる群から選択される揮発性酸の塩をさらに含有してもよい。これら揮発性酸の塩は、不揮発性の酸と反応することによって、揮発性の酸を発生するので、本発明のセンサ100は、ホルムアルデヒドの検知能力を向上できる。
炭素材料130は、酸の吸着によって電気抵抗値が変化する炭素を含有する材料であれば特に制限はないが、例示的には、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラフェン、フラーレン、および、これらの誘導体からなる群から選択される材料である。これらは、酸の吸着によって電気抵抗値が変化することが知られている。中でも、カーボンナノチューブは入手が容易であり好ましい。誘導体としては、表面にアミン、カルボン酸等の官能基を有するものや、表面を分散剤等により被覆したものを意図する。
炭素材料130は、酸が吸着しやすいよう、空間を有しながら重なりあっていることが望ましく、網目構造体(ネットワーク)を形成し得る。
また、カーボンナノチューブは、グラフェンの重なりの層数によって、単層、二層、多層カーボンナノチューブと分けられるが、本発明ではいずれも採用できる。中でも、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は、高い電気伝導度を有しており、酸に対して電気抵抗値の変化を生じやすいため好ましい。
カーボンナノチューブには、半導体型および金属型の2種類あることが知られている。本発明のセンサ100に半導体型カーボンナノチューブを採用する場合には、半導体型カーボンナノチューブの含有量が10重量%未満である場合、酸に対する電気抵抗値の変化を十分に得られない可能性があるため、10重量%以上であることが好ましい。さらに好ましくは、半導体型カーボンナノチューブの含有量が60重量%以上である。これにより、ホルムアルデヒドの検知感度を向上させることができる。なお好ましくは、半導体型カーボンナノチューブの含有量は90重量%以上である。特に、半導体型単層カーボンナノチューブの含有量が、10%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
また、カーボンナノチューブは、当然ながらすべて半導体型カーボンナノチューブから構成されることが好ましいが、5重量%以上10重量%未満の範囲で金属型カーボンナノチューブを含有していても、センサの精度に問題はない。
炭素材料130は、酸の吸着を促進するよう、表面積が大きい方がよい。この観点から、炭素材料130の分散性を高めることが望ましく、炭素材料130が、π共役系低分子、界面活性剤、ポリマーおよび超分子ポリマーからなる分散剤によって部分的に被覆されていることが好ましい。これらの分散剤は、上述する炭素材料130を部分的に被覆し、分散性を高めることが知られている。電極上の炭素材料130の分散性が高まると、酸と相互作用する表面積が増大するため、ホルムアルデヒドを高精度に検知できる。なお、「部分的」とする量は、炭素材料130が完全に被覆されていなければよいが、例えば、炭素材料130がカーボンナノチューブである場合、表面積の5%以上90%以下の範囲のいずれか、好ましくは、10%以上50%以下の範囲とする。
π共役系低分子は、例示的には、ピレン、アントラセン、ポルフィリン等である。界面活性剤は、炭素材料130を溶媒に可溶化させる際に使用されるものであり、例示的には、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム(SDBS)、コール酸ナトリウム(SC)、デオキシコール酸ナトリウム(DOC)等である。ポリマーもまた、炭素材料130を溶媒に可溶化させることが知られている。このようなポリマーは、例示的には、ポリシラン、ポリチオフェン、ポリフルオレン等である。超分子ポリマーは、モノマーユニットが非共有結合により連結されたものを意図するが、例えば、次式で表される超分子ポリマーである。このような超分子ポリマーをカーボンナノチューブに被覆する技術は知られており、分散性の向上が確認されている。
ここで、nは、直鎖状のC17を示し、mは、2〜200の自然数であり、Mは、Cu、Ni、PdおよびPtからなる群から選択される2価の遷移金属イオンである。
なお、ここで具体的に明示した分散剤は、単なる例示に過ぎず、分散性を高めることができるものであれば、特に制限はない。
炭素材料130は、通常使用される電極材料からなる電極140上に担持される。電極140は、例示的には、Au、Pt、Agおよびこれらの合金からなる群から選択される材料、または、グラッシーカーボンなどの導電性炭素材料からなる。電極140の形状は、電気抵抗値の変化を検出する方法によって異なるが、例示的には、櫛形電極(例えば図1)、交差指電極等である。このため、図1では電極140は、基板160上に位置する。
ヒドロキシルアミン塩類110は、多孔質材料に担持されていてもよい。これにより、反応部120の取り扱いが簡便になるとともに、ヒドロキシルアミン塩類110とホルムアルデヒドの反応を促進し、炭素材料130との離間を容易にする。このような多孔質材料は、ヒドロキシルアミン塩類110との反応性がなく、ヒドロキシルアミン塩類110が担持可能な細孔を有する材料からなればよい。例示的には、ろ紙等に代表される紙、疎水性ポリマー、親水性ポリマー、多孔質ガラス、多孔質炭素材料および多孔質酸化物からなる群から選択される材料である。これらは市販されている多孔質材料である。
疎水性ポリマーは、例示的には、ポリフッ化ビニリデン(PFVD)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等であるが、ヒドロキシルアミン塩類110の担持が容易であり、反応性がないため好ましい。多孔質炭素材料は、例えば、シリカ多孔体をテンプレートにして得られるシリカ多孔体のレプリカなどがある。多孔質酸化物は、TiO、CeO、ZrO、ZnO、SiO等からなるが、ナノ粒子からなる中空体やコアシェル構造体であってもよい。
好ましくは、多孔質材料は、10m/g以上5000m/g以下の範囲の比表面積を有し、10nm以上100μm以下の範囲の細孔径を有し、0.05cm/g以上0.90cm/g以下の細孔容積を有する。これにより、反応に必要かつ将来的な交換を不要とするだけのヒドロキシルアミン塩類110を担持できる。
図1に示すように、本発明のセンサ100において、ヒドロキシルアミン塩類110と炭素材料130とが離間するよう、反応部120と応答部150との間にスペーサ170が位置していてもよい。スペーサ170の材料は特に制限されるものではない。スペーサ170の高さHは、上述した、0.05μm以上5000μm以下の範囲であればよい。
図2は、本発明の別の例示的なホルムアルデヒド検知センサを示す模式図である。
図2のセンサ200は、スペーサ170を設けることなく、ヒドロキシルアミン塩類110と炭素材料130との離間の方法が異なるが、それ以外はセンサ100と同様である。
詳細には、図2のセンサ200では、ヒドロキシルアミン塩類110は、炭素材料130が担持された電極の近辺にパターニングされている。このようなパターニングは、例えば、インクジェットプリンタ等によって行うことができる。スペーサ170を設けないので、センサ200の小型化および薄型化を可能にする。
図3は、本発明のさらに別の例示的なホルムアルデヒド検知センサを示す模式図である。
図3のセンサ300(図3(A))は、スペーサ170を設けることなく、ヒドロキシルアミン塩類110と炭素材料130との離間の方法が異なるが、それ以外はセンサ100と同様である。
詳細には、図3のセンサ300では、ヒドロキシルアミン塩類110が粒子310に修飾されている(図3(B))。ヒドロキシルアミン塩類110と炭素材料130とが離間するためには、粒子310の粒子径は、0.05μm以上5000μm以下を満たすことがよい。粒子径が0.05μm未満の場合、ヒドロキシルアミン塩類110と炭素材料130とが広面積にわたって接触し、酸による電気抵抗値の可逆性が損なわれるおそれがある。粒子径が5000μmを超すと、粒子表面に担持されたヒドロキシルアミン塩類110の量が少なくなり、酸の発生量が減少する結果として、ホルムアルデヒドへの感度が損なわれる可能性がある。好ましくは、粒子径は、10μm以上500μm以下、さらに好ましくは50μm以上300μm以下の範囲である。ここで粒子径は、体積基準のメディアン径(d50)であり、例えば、マイクロトラックやレーザ散乱法によって測定できる。
ヒドロキシルアミン塩類110を修飾させる粒子310は、ポリスチレン(PS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカプロラクトン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルエチルアセテート、炭素、ガラスおよびシリカからなる群から選択される材料からなる。これらの粒子は、いずれも入手が容易である。中でも、PS、PMMA等は、ヒドロキシルアミン塩類110を修飾させやすいため好ましい。
図3では、ヒドロキシルアミン塩類110が1価の酸塩(図3においてXは1価の塩基を表す)の場合を例示して示すが、粒子310に修飾するヒドロキシルアミン塩類110は、上述したヒドロキシルアミン塩類110と同じであってよい。すなわち、粒子310に修飾するヒドロキシルアミン塩類110は、NHOR(Rは、芳香族、環式または非環式の炭化水素化合物、または、それらの誘導体である)のハロゲン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩およびトリフルオロ酢酸塩からなる群から選択される有機化合物の中和塩である。
なお、図3のセンサ300において、応答部150とヒドロキシルアミン塩類110が修飾した粒子310との間に紙等の通気性のあるスペーサ(図示せず)を入れ、ヒドロキシルアミン塩類110と炭素材料130との物理的な接触を確実に防ぐようにしてもよい。
次に、本発明のホルムアルデヒド検知センサ100の例示的な製造工程を説明する。
まず、電極140を有する基板160を用意する。炭素材料130を溶媒に分散させる。溶媒は、揮発性であれば特に制限はないが、例示的には、o−ジクロロベンゼンとトルエンとの混合溶媒である。なお、炭素材料130を分散媒で被覆する際には、ここに上述した分散媒を添加すればよい。次いで、電極140上にこの懸濁液をドロップキャストする。溶媒の乾燥後、応答部150が得られる。
次いで、ヒドロキシルアミン塩類110をメタノール等溶媒に添加し、この溶液を、多孔質材料にドロップキャスト、または、浸漬する。余剰の溶媒を乾燥除去することによって、反応部120が得られる。応答部150にスペーサ170を設置し、その上を反応部120で覆い、固定すれば、本発明のセンサ100が得られる。
次に、本発明のホルムアルデヒド検知センサ200の例示的な製造工程を説明する。
応答部150の製造手順は、センサ100と同様であるため、説明を省略する。応答部150の所定の箇所をマスクし、インクジェットプリンタ等により、ヒドロキシルアミン塩類110をプリントすれば、本発明のセンサ200が得られる。
次に、本発明のホルムアルデヒド検知センサ300の例示的な製造工程を説明する。
応答部150の製造手順は、センサ100と同様であるため、説明を省略する。次に、ヒドロキシルアミン塩類110を修飾する粒子310を用意する。ヒドロキシルアミン塩類110を修飾する粒子310は、ヒドロキシルアミンまたはその誘導体が修飾された粒子310を、酸中で処理することによって、容易に得られる。これを応答部150の炭素材料130上に配置すれば、本発明のセンサ300が得られる。粒子310と応答部150の間に、紙等の通気性のあるスペーサを入れても良い。
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1で説明した本発明のホルムアルデヒド検知センサを用いたシステムについて説明する。
図4は、本発明のホルムアルデヒド検知システムを示す模式図である。
本発明のホルムアルデヒド検知システム400(以降では単に本発明のシステムと称する場合がある)は、本発明のホルムアルデヒド検知センサ100、200、300と、センサ100、200、300からの電気抵抗値の変化を検出する検出手段410とを備える。図4では、本発明のシステム400は、電源420に接続されている。電源420は固定の電源であってもよいが、電池等であってもよい。電源420として電池を採用すれば、ポータブルな小型のシステム400を提供できる。
検出手段410は、電気抵抗値の変化を検出できれば特に制限はないが、例示的には、電流計や発光装置である。電流計であれば、電源420の電圧が既知であれば、電流の大きさを測定することによって電気抵抗値の変化を検出できる。発光装置であれば、輝度の変化を観察することによって、電気抵抗値に変化を検出できる。このような発光装置として簡易的には発光ダイオードを使用できる。発光ダイオードを使用すれば、目視によって輝度の変化を検出できるので、ポータブルかつ簡便なシステム400を提供できる。あるいは、検出手段410は、音声報知器であってもよい。音声報知器が所定の電気抵抗値から変化すると音声を発生するよう設定しておけば、音声によりホルムアルデヒドの検知を可能にする。
あるいは、システム400は、温度や湿度に基づく誤応答のデータを予めデータベースに格納した制御部(図示せず)を備えており、制御部が、検出手段410が検出した本発明のセンサ100、200、300における炭素材料130の電気抵抗値の変化と、制御部のデータベースに格納されたデータとを比較し、正応答と誤応答とを区別するようにしてもよい。
実施の形態1で説明したように本発明のセンサ100、200、300は、反応部120で発生した酸が、応答部150の炭素材料130に吸着することによって生じる電気抵抗値の変化によってホルムアルデヒドを検知するが、本発明のシステム400は、応答部150の炭素材料130にエアをフローするエアフロー部やファンをさらに備えてもよい。これにより、炭素材料130に吸着した酸が素早く除去されるので、本発明のセンサ100、200、300を繰り返し利用できる。なお、エアは、空気、窒素、アルゴン等であり得る。
図5は、本発明の別のホルムアルデヒド検知システムを示す模式図である。
本発明の別のホルムアルデヒド検知システム500は、ホルムアルデヒド非検知センサ510(以降では単に非検知センサと称する)を備える点が、システム400と異なる。図5では、非検知センサ510は、炭素材料130を担持した電極を備えており、本発明のセンサ100、200、300の反応部120で発生した酸が供給されないように配置されている。このため、非検知センサ510は、ホルムアルデヒドには応答しないが、その他の温度や湿度といった環境に対しては、センサ100、200、300と同様に応答し得る。
検出手段410が、本発明のセンサ100、200、300における炭素材料130の電気抵抗値の変化(ホルムアルデヒドに基づく)と、非検知センサ510における炭素材料の電気抵抗値の変化(温度や湿度に基づく)とをそれぞれ検出し、比較すれば、正応答と誤応答とを区別することができる。ここでも、検出手段410が電流計であれば、電流値の大きさを比較することによって、検出手段410が発光装置であれば、輝度の大きさを比較することによって、容易に正応答と誤応答とを区別できるので、高精度にホルムアルデヒドのみを検知するシステムを提供できる。なお、このような比較は、目視にて行ってもよいし、別途設けられる制御部(図示せず)にて自動で行って、表示部(図示せず)に表示するように構成することもできる。
システム500では、非検知センサ510がホルムアルデヒド以外の誤応答を検知するよう構成したが、非検知センサ510として、センサ100、200、300の初期状態の電気抵抗値と同じ電気抵抗値を有する抵抗を用いてもよい。この場合、正応答と誤応答との区別は困難であるが、センサ100、200、300および非検知センサ510のそれぞれに接続された検出手段410からの電流値、輝度の変化等から容易にホルムアルデヒドを検知することができる。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明の実施の形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の範囲に限定されるものではない。
[試薬および材料]
以降の実施例、比較例および参考例で用いた試薬および材料について説明する。すべての試薬は、特級試薬であり、シグマアルドリッチ、東京化成工業株式会社、Alfa Aesarから購入し、精製することなく、そのまま使用した。ヒドロキシルアミン塩類として次式に示す3種を用いた。
単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は、一酸化炭素の不均質化反応を利用したHiPco(高圧CO)法によって調製された米国NanoIntegris社製のものを購入した。SWCNTを、Yomogida,Y.ら,Nat.Commun.,2016,7,12056に基づいて、半導体型と金属型とに分離した。次式に示す超分子ポリマーを、Ishihara,S.ら,J.Am.Chem.Soc.,2016,138,8221−8227に基づいて調製した。ここでも、nは直鎖状のC17を表し、mの平均値は、15−20程度であった。電極には、酸化アルミニウム製セラミック基板上に形成されたAuからなる櫛形電極(BVI Technologies製、No.CC1.W1)を用いた。電極間距離は200μmであった。
[実施例1]
実施例1では、ヒドロキシルアミン塩類110としてNHOH・HCl(ヒドロキシルアミン塩酸塩)と、炭素材料130としてSWCNT(ただし、半導体型を95重量%、金属型を5重量%含有する)とを用い、PVDFメンブレンフィルタにヒドロキシルアミン塩類110を担持させた、図1に示すホルムアルデヒド検知センサ100を製造した。
図6は、本発明のホルムアルデヒド検知センサを製造する様子を示す図である。
SWCNT(0.02mg)を、o−ジクロロベンゼン(o−DCB)とトルエンとの混合溶媒0.2mLに懸濁させた。なお、o−DCBとトルエンとは、4:1(体積比)で混合された。懸濁液を、室温下で、30分間超音波処理した。懸濁液(約0.5μL)を櫛形電極上にドロップキャストし、乾燥により溶媒を除去した。SWCNTの網目構造体の電気抵抗値が所定値となるまで、ドロップキャストを繰り返した。電気抵抗値はオームメータによって測定した。このようにして、センサの応答部(図1の150)を製造した(図6(a))。次いで、高さ0.4mmであり、ビニールテープ材料からなるスペーサ(図1の170)を応答部上に配置した(図6(b))。
NHOH・HClを飽和するまでメタノールに添加した(約100mg/mL)。この溶液を、PVDFメンブレンフィルタ(細孔径0.2μm、メルクミリポア製、オムニポアメンブレンフィルタ、JGWP)にドロップキャストした。メタノールを大気中で乾燥させ、反応部(図1の120)を製造した。PVDFメンブレンフィルタに担持されたNHOH・HClは約0.5mgであった。なお、0.5mgという量は、大気中にサブppmオーダで存在するホルムアルデヒド(HCHO)に比べて、極めて過剰であることに留意されたい。NHOH・HClを担持したPVDFメンブレンフィルタをカットし、スペーサを介して応答部を覆った(図6(c))。PVDFメンブレンフィルタが剥がれないようテープで固定した(図6(d))。このようにして得られた実施例1のセンサの側面の様子を図6(e)に示す。
実施例1のセンサを電源および電流計に接続し、ホルムアルデヒドを検知した。詳細には、ガラスチャンバに固定された試験クリップを用いて、センサの櫛形電極をPalmSens製MUX16マルチプレクサ付EmStatポテンショスタットに接続し、ガス検知を行った。0.1Vの定電位を櫛形電極に印加し、センサをガスに晒した際の電流値の変化をPSTrace Softwere(v.4.8)を用いて記録した。
表2に示す測定条件1〜3で、空気(ここでは圧縮空気である)とHCHOとの導入(フロー)を繰り返し、その際の電流値の変化を調べた。本願明細書では、電流値の変化を{(I(t)−I)/I}×100(%)で正規化した値を用いた。ここで、Iは、ベースラインの電流値であり、I(t)はt秒後の電流値である。印加電圧は0.1Vである。本願明細書内では、この正規化した値を実施例/比較例のセンサ間で比較することができる。結果を図7〜図10に示す。
[実施例2]
実施例2では、ヒドロキシルアミン塩類110としてNHOH・HCl(ヒドロキシルアミン塩酸塩)と、炭素材料130としてSWCNT(ただし、半導体型を95重量%、金属型を5重量%含有する)とを用い、ろ紙にヒドロキシルアミン塩類110を担持させた、図1に示すホルムアルデヒド検知センサを製造した。
実施例2は、実施例1においてPVDFメンブレンフィルタに代えてろ紙(Whatman製、定性ろ紙)にNHOH・HClを担持させた以外は、実施例1と同様にしてセンサを製造した。実施例2のセンサを、実施例1と同様の手順で、表2に示す測定条件1で、ホルムアルデヒドを検知した。結果を図7に示す。
[比較例3]
比較例3では、ヒドロキシルアミン塩類110としてNHOH・HCl(ヒドロキシルアミン塩酸塩)と、炭素材料130としてSWCNT(ただし、半導体型を95重量%、金属型を5重量%含有する)とを用いたが、SWCNTとNHOH・HClとを接触させたセンサを製造した。
比較例3では、図6(a)に示される応答部に、直接、NHOH・HClを含有するメタノール溶液をドロップキャストし、乾燥によりメタノールを除去した。このようにして得られた比較例3のセンサを、実施例1と同様の手順で、表2に示す測定条件1で、ホルムアルデヒドを検知した。結果を図7に示す。
[実施例4]
実施例4では、ヒドロキシルアミン塩類110としてo−ベンズヒドロキシルアミン塩酸塩と、炭素材料130としてSWCNT(ただし、半導体型を95重量%、金属型を5重量%含有する)とを用い、PVDFメンブレンフィルタにヒドロキシルアミン塩類110を担持させた、図1に示すホルムアルデヒド検知センサを製造した。
実施例4は、実施例1においてNHOH・HClに代えてo−ベンズヒドロキシルアミン塩酸塩を用いた以外は、実施例1と同様にしてセンサを製造した。o−ベンズヒドロキシルアミン塩酸塩はメタノールに溶解させた(67mg/mL)。PVDFメンブレンフィルタに担持されたo−ベンズヒドロキシルアミン塩酸塩は約0.5mgであった。実施例4のセンサを、実施例1と同様の手順で、表2に示す測定条件1で、ホルムアルデヒドを検知した。結果を図8に示す。
[実施例5]
実施例5では、ヒドロキシルアミン塩類110としてo−4−ニトロベンゼンヒドロキシルアミン塩酸塩と、炭素材料130としてSWCNT(ただし、半導体型を95重量%、金属型を5重量%含有する)とを用い、PVDFメンブレンフィルタにヒドロキシルアミン塩類110を担持させた、図1に示すホルムアルデヒド検知センサを製造した。
実施例5は、実施例1においてNHOH・HClに代えてo−4−ニトロベンゼンヒドロキシルアミン塩酸塩を用いた以外は、実施例1と同様にしてセンサを製造した。o−4−ニトロベンゼンヒドロキシルアミン塩酸塩はメタノールに溶解させた(20mg/mL)。PVDFメンブレンフィルタに担持されたo−4−ニトロベンゼンヒドロキシルアミン塩酸塩は約0.5mgであった。実施例5のセンサを、実施例1と同様の手順で、表2に示す測定条件1で、ホルムアルデヒドを検知した。結果を図8に示す。
[実施例6]
実施例6では、実施例1と同様の手順で、ヒドロキシルアミン塩類110としてNHOH・HClと、炭素材料130としてSWCNT(ただし、半導体型を10重量%、金属型を90重量%含有する)とを用い、PVDFメンブレンフィルタにヒドロキシルアミン塩類110を担持させた、図1に示すホルムアルデヒド検知センサを製造した。実施例6のセンサを、実施例1と同様の手順で、表2に示す測定条件2で、ホルムアルデヒドを検知した。結果を図9に示す。
[実施例7]
実施例7では、実施例1と同様の手順で、ヒドロキシルアミン塩類110としてNHOH・HClと、炭素材料130としてSWCNT(ただし、半導体型を66.7重量%、金属型を33.3重量%含有する)とを用い、PVDFメンブレンフィルタにヒドロキシルアミン塩類110を担持させた、図1に示すホルムアルデヒド検知センサを製造した。実施例7のセンサを、実施例1と同様の手順で、表2に示す測定条件2で、ホルムアルデヒドを検知した。結果を図9に示す。
[実施例8]
実施例8では、ヒドロキシルアミン塩類110としてNHOH・HCl(ヒドロキシルアミン塩酸塩)と、炭素材料130として超分子ポリマーで被覆したSWCNT(ただし、半導体型を95重量%、金属型を5重量%含有する)とを用い、PVDFメンブレンフィルタにヒドロキシルアミン塩類110を担持させた、図1に示すホルムアルデヒド検知センサを製造した。
超分子ポリマーで被覆したSWCNTは、次のようにして調製した。SWCNT(0.02mg)と、アントラセン系リガンド(0.1mg)とを、o−ジクロロベンゼン(o−DCB)とトルエンとの混合溶媒0.2mLに懸濁させた。なお、o−DCBとトルエンとは、4:1(体積比)で混合された。次いで、酢酸銅一水和物が溶解したメタノール溶液(10.6mM、16.4μL)をこれに添加し、上述した超分子ポリマーを形成した。懸濁液を、室温下で、30分間超音波処理した。次いで、懸濁液を遠心分離機(6238×g、10000rpm、15分、Revolutionary Science製Rev Spin 102)にかけた。上澄み液(上部50%)を収集し、超分子ポリマーで被覆したSWCNTを含有する懸濁液を得た。以降の手順は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。
このようにして得られた実施例8のセンサを、実施例1と同様の手順で、表2に示す測定条件3〜14で、ホルムアルデヒドを検知した。結果を図10〜図24に示す。
[参考例9]
参考例9では、ヒドロキシルアミン塩類110を用いない以外は、実施例8と同様の手順でホルムアルデヒド非検知センサを製造した。このようにして得られた参考例9のセンサを、実施例1と同様の手順で、表2に示す測定条件4、13および14で、ホルムアルデヒドを検知した。結果を図11、図23および図24に示す。
[実施例10]
実施例10では、ヒドロキシルアミン塩類110として次式で示すヒドロキシルアミン塩類が修飾したポリスチレン粒子と、炭素材料130として超分子ポリマーで被覆したSWCNT(ただし、半導体型を95重量%、金属型を5重量%含有する)とを用い、図3に示すホルムアルデヒド検知センサ300を製造した。
ヒドロキシルアミン塩類が修飾したポリスチレン粒子は次のようにして調製された。次式で示すヒドロキシルアミン誘導体が修飾したポリスチレン粒子100mg(シグマアルドリッチ製、641014−5G、100〜200メッシュ、修飾量1.0〜1.5mmol/g、1%ジビニルベンゼンで架橋)を、3%塩酸メタノール溶液(20mL)中で、室温、1時間攪拌し、ヒドロキシルアミンを塩酸塩とした。続いて、グラスフィルタで濾過し、大量のメタノールで余分な塩酸を十分に洗浄した後、真空乾燥を1時間行い、ヒドロキシルアミン塩類が修飾した粒子を得た。
ヒドロキシルアミン塩類が修飾した粒子(1mg)を、実施例1と同様の手順で得た応答部上に配置した。このようにして得た実施例10のセンサを、実施例1と同様の手順で、表2に示す測定条件15で、ホルムアルデヒドを検知した。結果を図25に示す。
以上の実施例、比較例および参考例1〜10のセンサおよび測定条件の一覧を、簡単のため、表1および表2にそれぞれまとめて示す。
図7は、実施例1,2及び比較例3によるセンサのホルムアルデヒドに対する応答特性を示す図である。
図7によれば、実施例1のセンサは、ホルムアルデヒドを導入すると、電流値は正の変化を示し、空気をフローすると、電流値はもとに戻る挙動を示した。実施例2のセンサでは、実施例1のセンサと比較して、ホルムアルデヒドを導入した際の電流値の変化量が小さく、空気をフローした際の電流値の戻り具合が若干鈍かったものの、実施例1のセンサと同様に電流値がもとに戻る挙動を示した。
一方、比較例3のセンサは、空気およびホルムアルデヒドをフローした際に、可逆的な応答は見られなかった。
これらから、本発明のホルムアルデヒド検知センサは、少なくともヒドロキシルアミン塩類を含有し、ホルムアルデヒドと反応し、酸を発生させる反応部と、電気抵抗値が変化する炭素材料を担持した電極を備える応答部とを備え、ヒドロキシルアミン塩類と炭素材料とは離間していることにより、再現性良く可逆的に、ホルムアルデヒドを検知できることが示された。
図8は、実施例1、4〜5によるセンサのホルムアルデヒドに対する応答特性を示す図である。
図8によれば、実施例1、4〜5のセンサは、いずれも、ホルムアルデヒドを導入すると、電流値は正の変化を示し、空気をフローすると、電流値はもとに戻る挙動を示した。中でも、実施例1によるセンサが、もっとも電流値の大きな変化を示した。
これらから、反応部のヒドロキシルアミン塩類は、種類に関わらずホルムアルデヒドを検知できることが確認された。ヒドロキシルアミン塩類の中でも、ヒドロキシルアミン塩酸塩がホルムアルデヒドに対する感度および繰り返し特性に優れていることが分かった。
図9は、実施例1、6〜7によるセンサのホルムアルデヒドに対する応答特性を示す図である。
図9によれば、実施例1、6〜7のセンサは、いずれも、ホルムアルデヒドを導入すると、電流値は正の変化を示し、空気をフローすると、電流値はもとに戻る挙動を示した。中でも、実施例1によるセンサが、もっとも電流値の大きな変化を示した。
これらから、ホルムアルデヒドに対する感度の向上の観点から、応答部の炭素材料は、カーボンナノチューブの中でも、少なくとも半導体型を含有していることが好ましく、60重量%以上含有していることが好ましいことが示された。
図10は、実施例1および8によるセンサのホルムアルデヒドに対する応答特性を示す図である。
図10によれば、実施例1および8のセンサは、いずれも、ホルムアルデヒドを導入すると、電流値は正の変化を示し、空気をフローすると、電流値はもとに戻る挙動を示した。中でも、実施例8のセンサが、もっとも電流値の大きな変化を示した。これは、カーボンナノチューブを超分子ポリマーで被覆することにより、カーボンナノチューブがより分散した網目構造体となり、比表面積が増大し、酸との反応が促進したためと考える。
これらから、ホルムアルデヒドに対する感度の向上の観点から、応答部の炭素材料は、超分子ポリマー等の分散媒で被覆されていることが好ましいことが示された。
図11は、実施例8および参考例9によるセンサのホルムアルデヒドに対する応答特性を示す図である。
図11によれば、参考例9のセンサは、ホルムアルデヒドには一切応答せず、ホルムアルデヒド非検知センサとして機能した。一方、実施例8のセンサは、ホルムアルデヒドに応答して電流値が正に増大したが、エアをフローすると、もとの電流値の値まで戻った。このことからも、本発明のセンサは、ホルムアルデヒドの繰り返し検知に有効であり、常にホルムアルデヒドをモニタリングできることが示された。
図12は、実施例8によるセンサのホルムアルデヒドに対する応答特性のホルムアルデヒド濃度依存性を示す図である。
図13は、図12に基づく、実施例8によるセンサのホルムアルデヒド濃度と電流値の増大との相関関係を示す図である。
図14は、図13の一部拡大図を示す。図14では、ホルムアルデヒド濃度が0ppm及び0.05ppmにおける電流値の変化の標準偏差を示した。
図12によれば、実施例8のセンサは、0.05ppm濃度の極めて低濃度のホルムアルデヒドに対しても応答し、電流値の変化を示した。このことから、本発明のセンサが、WHOのホルムアルデヒドに対する基準(0.08ppm)を下回るホルムアルデヒドを検知できることが示された。なお、上述の0.05ppmの濃度は、本実験系では、信頼できる濃度で発生させることのできるホルムアルデヒド濃度の限界値に相当した。尚、ホルムアルデヒド濃度が7ppm以降は、電流値の変化は飽和する傾向を示した。
図14に示される電流値の変化の平均値(濃度0ppm)及び電流値の変化の標準偏差(濃度0ppm,0.05ppm)から、次式に基づいて、本発明のセンサの検出限界(Limit of Detection,LoD)を求めた。
LoD=meanblank+1.645×σblank+1.645σlowest conc.
ここで、meanblankは、ホルムアルデヒドを含まない空気を導入した際の応答の電流値の変化の平均値であり、σblankは、ホルムアルデヒドを含まない空気を導入した際の応答の電流値の変化の標準偏差であり、σlowest conc.は、最低濃度(ここでは、0.05ppm)のホルムアルデヒドを導入した際の応答の電流値の変化の標準偏差である。
センサの電流値変化量の検出限界(LoD)は、0.92%と算出され、この値は、0.016ppmに相当することが分かった。このことから、本発明のセンサを用いれば、理論的には、WHOの基準である0.08ppmを十分に下回る微量のホルムアルデヒドを検知でき、ホルムアルデヒドに対する感度に極めて優れていることが示された。
図15は、実施例8によるセンサの水(420ppm)に対する応答特性を示す図である。
図16は、実施例8によるセンサの水(3200ppm)に対する応答特性を示す図である。
図17は、実施例8によるセンサのメタノール(1200ppm)に対する応答特性を示す図である。
図18は、実施例8によるセンサのエタノール(440ppm)に対する応答特性を示す図である。
図19は、実施例8によるセンサのテトラヒドロフラン(860ppm)に対する応答特性を示す図である。
図20は、実施例8によるセンサのトルエン(720ppm)に対する応答特性を示す図である。
図21は、実施例8によるセンサの各種ガスに対する応答特性の一覧を示す図である。
図15〜図20によれば、本発明のセンサは、各種ガスに対して何らかの応答を示すが、図21を参照すれば、本発明のセンサは、極めて低濃度のホルムアルデヒドであっても、ホルムアルデヒドに対して選択的かつ高感度に応答することがわかる。詳細には、0.19ppm濃度のホルムアルデヒドに対する感度は、0.19ppmの何万〜何十万倍の濃度であるその他のガスに対する感度に比べて同等レベルか、極めて大きい。このことは、ホルムアルデヒドに対する感度が、その他のガスに対する感度の約10〜10倍大きいことを示す。
さらに注目すべきは、ホルムアルデヒド以外のガスは、電子を炭素材料(ここでは、SWCNTの網目構造体)に注入し、膨潤させるので、本発明のセンサは、ホルムアルデヒド以外の上記ガスを検出した場合、ホルムアルデヒドとは逆の応答特性(すなわち、導電率の低減)を示した。このことからも、本発明のセンサは、ホルムアルデヒドのみを選択的かつ高精度に検知できることがわかる。
図22は、実施例8によるセンサの応答特性に及ぼす湿度の影響を示す図である。
図22によれば、実施例8のセンサは、相対湿度に関わらずホルムアルデヒドに対して応答して、電流値の変化を示したが、相対湿度が低い(すなわち、乾燥空気である)ほど、ホルムアルデヒドに対する感度が低下した。しかしながら、通常使用環境下(相対湿度が12.5%〜68%)においては、湿度が本発明のセンサに及ぼす影響は小さく、問題ないといえる。また、相対湿度は、別途用意した湿度計にて簡便に測定可能であり、そのデータをホルムアルデヒドセンサの補正に用いてもよい。
図23は、相対湿度の変化およびホルムアルデヒドへの応答について、実施例8および参考例9のセンサで比較した図である。
図24は、温度変化への応答について、実施例8および参考例9のセンサで比較した図である。
上述したように、本発明のセンサの応答特性は、相対湿度に依存する。しかしながら、図23および図24によれば、ヒドロキシルアミン塩類を含有する反応部を有する実施例8のセンサと、反応部を有しない参考例9のセンサとは、相対湿度および温度に対して、応答強度の違いは見られるものの、同等の応答傾向を示すことが分かった。このことから、本発明のホルムアルデヒド検知センサと、ホルムアルデヒド非検知センサとを同時に用い、それらの応答特性を比較すれば、簡単に正応答(ホルムアルデヒドによる応答)と誤応答(相対湿度や温度による応答)とを正確に区別するホルムアルデヒド検知システムを提供できることが示された。すなわち、実施例8のセンサが応答し、参考例9のセンサが応答していなければ、ホルムアルデヒドを検出していると判断できる。
図25は、実施例10によるセンサのホルムアルデヒドに対する応答特性を示す図である。
実施例10のセンサは、ホルムアルデヒドを導入すると、電流値は正の変化を示した。このことから、本発明のホルムアルデヒド検知センサにおいて、反応部は、ヒドロキシルアミン塩類が粒子等の固形物に直接固定・担持されていてもよいことが示された。
[実施例11]
実施例11では、ホルムアルデヒド検知センサ100として実施例8のセンサと、ホルムアルデヒド非検知センサ510として参考例9のセンサと、検出手段410として実施例8および参考例9のセンサのそれぞれに接続された発光装置(LED)とを備えた、図5に示すホルムアルデヒド検知システム500を製造した。本発明のシステムは、3.0Vのボタン電池に接続された。本発明のシステムにホルムアルデヒドを導入し、その際のLEDの変化を調べた。結果を図26に示す。
図26は、実施例11によるホルムアルデヒド検知システムと、ホルムアルデヒドに対する応答の様子とを示す図である。
実施例8および参考例9のセンサの抵抗は、いずれも、20kΩに設定された。このとき、LED1、2は、見た目に、同様の明るさであった(図26の左上)。ここで、0.9ppm濃度のホルムアルデヒドをシステムに導入したところ、実施例8のセンサの抵抗は、10kΩまで低下したが、参考例9のセンサの抵抗は、変化しなかった。その結果、実施例8のセンサに接続されたLED1は、参考例9のセンサに接続されたLED2よりも、明るくなった(図26の右上)。また、図23および図24を参照して説明したように、実施例8および参考例9のセンサを用いることにより、正応答と誤応答との区別も可能である。このことから、本発明のシステムは、ホルムアルデヒド検知センサを用いることにより、ホルムアルデヒドを選択的かつ高精度に検知できることが示された。
[実施例12]
実施例12では、ホルムアルデヒド非検知センサ510として、単に20kΩの抵抗を用いた以外は、実施例11のシステムと同様であるため説明を省略する。実施例11と同様に、システムにホルムアルデヒドを導入し、その際のLEDの変化を調べた。結果を図27に示す。
図27は、実施例12のシステムのホルムアルデヒドを導入する前のLEDの輝度の様子(A)およびホルムアルデヒドを導入した後のLEDの輝度の様子(B)を示す図である。
図27によれば、図26と同様に、ホルムアルデヒドの導入によって、実施例8のセンサに接続されたLED1は、明るくなり、参考例9のセンサに接続されたLED2は、変化しなかった。このことからも、本発明のシステムは、ホルムアルデヒド検知センサを用いることにより、ホルムアルデヒドを選択的かつ高精度に検知できることが示された。
本発明のホルムアルデヒド検知センサは、室内環境下において、ホルムアルデヒドを選択的に高精度に検出することができる。本発明のホルムアルデヒド検知センサは、常にホルムアルデヒドをモニタリングすることができるので、警報型の検知センサとして機能し得る。このような電気抵抗で検知するホルムアルデヒド検知センサは、各種電子機器、検出装置との組み合わせが容易であり、安価で小型で低電力消費のホルムアルデヒド検知システムを提供できる。例えば、特許文献3に記載のようなRFIDタグなどの無線通信デバイスに搭載すれば、ホルムアルデヒドセンサのIoT化や、スマートフォンなどの汎用電子機器によってホルムアルデヒドを検知できることが想定できる。
100、200、300 ホルムアルデヒド検知センサ
110 ヒドロキシルアミン塩類
120 反応部
130 炭素材料
140 電極
150 応答部
160 基板
170 スペーサ
310 粒子
400、500 ホルムアルデヒド検知システム
410 検出手段
420 電源
510 ホルムアルデヒド非検知センサ

Claims (20)

  1. 少なくともヒドロキシルアミン塩類を含有し、ホルムアルデヒドと反応し、酸を発生させる反応部と、
    前記反応部で発生した酸によって電気抵抗値が変化する炭素材料を担持した電極を備える応答部と
    を備え、
    前記ヒドロキシルアミン塩類と前記炭素材料とは離間している、
    ホルムアルデヒド検知センサ。
  2. 前記ヒドロキシルアミン塩類は、ヒドロキシルアミン(NHOH)のハロゲン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩およびトリフルオロ酢酸塩からなる群から選択される中和塩である、
    請求項1に記載のホルムアルデヒド検知センサ。
  3. 前記ヒドロキシルアミン塩類は、NHOR(Rは、芳香族、環式または非環式の炭化水素化合物、または、それらの誘導体である)のハロゲン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩およびトリフルオロ酢酸塩からなる群から選択される中和塩である、
    請求項1に記載のホルムアルデヒド検知センサ。
  4. 前記炭素材料は、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラフェン、フラーレンおよびそれらの誘導体からなる群から選択される、
    請求項1〜3のいずれかに記載のホルムアルデヒド検知センサ。
  5. 前記カーボンナノチューブは、半導体型カーボンナノチューブを10重量%以上含有する、
    請求項4に記載のホルムアルデヒド検知センサ。
  6. 前記カーボンナノチューブは、半導体型カーボンナノチューブを60重量%以上含有する、
    請求項5に記載のホルムアルデヒド検知センサ。
  7. 前記炭素材料は、π共役系低分子、界面活性剤、ポリマーおよび超分子ポリマーからなる群から選択される分散剤によって被覆されている、
    請求項1〜6のいずれかに記載のホルムアルデヒド検知センサ。
  8. 前記超分子ポリマーは次式で表される、
    請求項7に記載のホルムアルデヒド検知センサ。
    ここで、nは直鎖状のC17を表し、mは、2〜200の自然数であり、Mは、Cu、Ni、PdおよびPtからなる群から選択される2価の遷移金属イオンである。
  9. 前記ヒドロキシルアミン塩類は、多孔質材料に担持されている、
    請求項1〜8のいずれかに記載のホルムアルデヒド検知センサ。
  10. 前記多孔質材料は、紙、疎水性ポリマー、親水性ポリマー、多孔質ガラス、多孔質炭素材料および多孔質酸化物からなる群から選択される、
    請求項9に記載のホルムアルデヒド検知センサ。
  11. 前記反応部と前記応答部との間にスペーサを有する、
    請求項9または10に記載のホルムアルデヒド検知センサ。
  12. 前記ヒドロキシルアミン塩類は、粒子径が0.05μm以上5000μm以下の範囲を有する粒子に修飾されている、
    請求項1〜8のいずれかに記載のホルムアルデヒド検知センサ。
  13. 前記粒子は、ポリスチレン(PS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカプロラクトン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルエチルアセテート、炭素、ガラスおよびシリカからなる群から選択される材料からなる、
    請求項12に記載のホルムアルデヒド検知センサ。
  14. 前記反応部は、塩酸、硝酸、炭酸、過塩素酸およびトリフルオロ酢酸の塩からなる群から選択される揮発性酸の塩をさらに含有する、
    請求項1〜13のいずれかに記載のホルムアルデヒド検知センサ。
  15. ホルムアルデヒド検知センサと検出手段とを備えるホルムアルデヒド検知システムであって、
    前記ホルムアルデヒド検知センサは、請求項1〜14のいずれかに記載のホルムアルデヒド検知センサであり、
    前記検出手段は、前記ホルムアルデヒド検知センサからの電気抵抗値の変化を検出する、
    ホルムアルデヒド検知システム。
  16. 前記ホルムアルデヒド検知センサは、電源に接続されており、
    前記検出手段は、電流計または発光装置である、
    請求項15に記載のホルムアルデヒド検知システム。
  17. 前記発光装置は、発光ダイオードである、
    請求項16に記載のホルムアルデヒド検知システム。
  18. 炭素材料を担持した電極を備えるホルムアルデヒド非検知センサをさらに備え、
    前記ホルムアルデヒド非検知センサは、前記反応部で発生した酸が供給されないように配置されている、
    請求項15〜17のいずれかに記載のホルムアルデヒド検知システム。
  19. 前記検出手段は、前記ホルムアルデヒド検知センサからの電気抵抗値の変化と、前記ホルムアルデヒド非検知センサからのそれとを比較し、ホルムアルデヒドによる応答と前記ホルムアルデヒド以外の応答とを区別する、
    請求項18に記載のホルムアルデヒド検知システム。
  20. 前記ホルムアルデヒド検知センサにおける前記応答部の前記炭素材料にエアをフローし、前記炭素材料に吸着した酸を除去するエアフロー部をさらに備える、
    請求項16〜19のいずれかに記載のホルムアルデヒド検知システム。
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