JP6773816B2 - ポリオレフィン系樹脂発泡シート及び粘着テープ - Google Patents
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Description
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、断熱性を高くしつつ、厚さ方向における柔軟性、及び衝撃吸収性を良好にするポリオレフィン系樹脂発泡シートを提供することである。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(9)を提供する。
(1)内部に複数の気泡を有するポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、
熱伝導率が0.050W/(m・K)以下であるとともに、MD伸び率が400%以下、TD伸び率が200%以下であるポリオレフィン系樹脂発泡シート。
(2)平均気泡間距離が4.0μm以下である、上記(1)に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
(3)架橋体である、上記(1)又は(2)に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
(4)架橋度が30質量%以上60質量%以下である、上記(3)に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
(5)厚さが0.02mm以上0.45mm以下である、上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
(6)見掛け倍率が9.0cm3/g以上24.0cm3/g以下である、上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
(7)独立気泡率が70〜100%である、上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
(8)少なくともポリエチレン系樹脂を含む材料の発泡体である、上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
(9)上記(1)〜(8)のいずれか1項に記載されたポリオレフィン系樹脂発泡シートと、前記ポリオレフィン系樹脂発泡シートの少なくとも一方の面に設けた粘着剤層とを備える粘着テープ。
[ポリオレフィン系樹脂発泡シート]
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡シート(以下、「発泡シート」ともいう)は、内部に多数の気泡を有する発泡体であって、熱伝導率が0.050W/(m・K)以下であるとともに、MD伸び率が400%以下、TD伸び率が200%以下となるものである。
発泡シートにおいて、熱伝導率が0.050W/(m・K)より大きくなると、薄厚の発泡シートを電子機器に使用したときに十分な断熱性能を発揮できなくなる。発泡シートの断熱性をより高くする観点から、発泡シートの熱伝導率は、0.048W/(m・K)以下が好ましい。
また、発泡シートの熱伝導率は、低ければ低いほど断熱性が高くなるが、発泡シートを実用的に製造するためには、0.025W/(m・K)以上とすることが好ましく、0.030W/(m・K)以上とすることがより好ましい。
熱伝導率は、平均気泡間距離を小さくすることで、低くすることが可能であるが、平均気泡間距離のみならず、平均気泡径等を調整することでも低くすることも可能である。
なお、熱伝導率とは、シートの厚さ方向における熱伝導率をいい、具体的には、実施例に記載した方法によって測定される。
発泡シートにおいて、MD伸び率が400%より大きくなったり、TD伸び率が200%より大きくなったりすると、発泡シートの厚さ方向における柔軟性、及び衝撃吸収性が確保しにくくなる。高い柔軟性、及び衝撃吸収性を確保するためには、MD伸び率が380%以下であるとともに、TD伸び率が190%以下であることが好ましく、MD伸び率が360%以下であるとともに、TD伸び率が180%以下であることがより好ましい。
また、厚さ方向における柔軟性、及び衝撃吸収性を確保しつつ、機械強度も高めるために、MD伸び率が160%以上であるとともに、TD伸び率が100%以上であることが好ましく、MD伸び率が180%以上であるとともに、TD伸び率が110%以上であることがより好ましい。
発泡シートの伸び率は、例えば、発泡シートに使用される樹脂、見掛け倍率(発泡倍率)、延伸倍率等を調整することで上記範囲の伸び率とすることが可能である。
なお、本発明において「MD」は、Machine Directionを意味し、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの押出方向等と一致する方向を意味する。また、「TD」は、Transverse Directionを意味し、MDに直交しかつ発泡シートに平行な方向を意味する。更に「ZD」は、Thickness Directionを意味し、MD及びTDのいずれにも垂直な方向である。
また、発泡シートの引張強度は、特に限定されないが、発泡シートの機械強度等を高める観点から、MDにおける引張強度が1.6〜7.0MPaであるとともに、TDにおける引張強度が1.0〜5.0MPaであることが好ましく、MDにおける引張強度が1.8〜5.0MPaであるとともに、TDにおける引張強度が1.2〜4.0MPaであることがより好ましい。
なお、MD,TDにおける伸び率、及び引張強度は、発泡シートを23℃においてMD、TDに伸張させたときの破断時の伸び率及び引張強度をいい、JIS K6767に準拠して測定したものである。
発泡シートは、その平均気泡間距離が4.0μm以下であることが好ましい。平均気泡間距離とは、MD、及びZDに平行な断面においてMDに沿う気泡間距離と、TD及びZDに平行な断面においてTDに沿う気泡間距離の平均値をいう。具体的な測定方法は、実施例に記載されるとおりである。
気泡壁は、気泡内の気体に比べて熱伝導性が高いため、熱を伝導する媒体となりやすい。そのため、平均気泡間距離(すなわち、気泡壁の厚さ)を小さくすることで、気泡壁による熱伝導を最小限に抑え、上記のように発泡シートの厚さ方向における熱伝導率を低くすることが可能になる。さらに、発泡シートは、平均気泡間距離を上記のように小さくすることで、厚さ方向における抵抗が小さくなり、柔軟性を高めやすくなる。柔軟性を高めつつ熱伝導率をより低くするためには、平均気泡間距離は、3.5μm以下であることがより好ましい。
平均気泡間距離は、発泡シートの機械強度、衝撃吸収性等を良好にするために、1.5μm以上が好ましく、2.0μm以上がより好ましい。
なお、平均気泡間距離は、後述する発泡シートの架橋度、発泡シートの見掛け倍率(発泡倍率)、発泡シートを製造する際の延伸倍率等を適宜調整することで、上記範囲内にすることが可能になる。
発泡シートの見掛け倍率(発泡倍率)は、9.0cm3/g以上24.0cm3/g以下であることが好ましく、10.0cm3/g以上20.0cm3/g以下であることがより好ましい。見掛け倍率をこれら下限値以上とすることで、柔軟性、衝撃吸収性を高めつつ、平均気泡間距離を小さくしやすくなる。さらには、MD、TD伸び率も低くしやすくなる。また、これら上限値以下とすることで、発泡シートの機械強度等を良好にしやすくなる。さらに、見掛け倍率をこれら範囲内とすることで、平均気泡径を後述する範囲内にしやすくなる。なお、見掛け倍率は、JIS K7222に準拠して見掛け密度を測定して、その逆数を求めたものである。
発泡シートは、通常、架橋して得られたものであり、架橋体となる。発泡シートの架橋度(ゲル分率)は、30質量%以上60質量%以下が好ましく、30質量%以上45質量%以下がより好ましい。架橋度がこれら下限値以上であると、十分な架橋が形成され、見掛け倍率(発泡倍率)を上記下限値以上とすることと相俟って、平均気泡間距離を小さくしやすくなる。また、架橋度がこれら上限値以下であると、発泡シートの柔軟性、衝撃吸収性を確保しやすくなる。さらに、架橋度を上記範囲内とすることで、MD,TD伸び率を所望の範囲に調整しやすくなる。なお、架橋度は後述する実施例に記載の方法にしたがって測定されるものである。
発泡シートにおけるMD及びTDにおける平均気泡径は、発泡シートの断熱性、柔軟性、及び衝撃吸収性を向上させる観点から、50〜300μmが好ましく、100〜250μmがより好ましい。なお、MD及びTDにおける平均気泡径とは、MDにおける平均気泡径と、TDにおける平均気泡径の平均値を意味し、(MD+TD)/2と表記することもある。
発泡シートの厚さは0.02mm以上0.45mm以下であることが好ましい。発泡シートの厚さが上記下限値以上であると発泡シートの断熱性を維持しつつ、衝撃吸収性が向上しやすくなる。また、発泡シートの厚さが上記上限値以下であると薄型の電子機器の内部に用いることができ、かつ柔軟性を向上させやすくなる。発泡シートの厚さは、断熱性、柔軟性、衝撃吸収性をバランスよく向上させる観点から、0.03mm以上0.40mm以下がより好ましい。
発泡シートは、気泡が独立気泡であることが好ましい。気泡が独立気泡であるとは、全気泡に対する独立気泡の割合(独立気泡率という)が70%以上であることを意味する。気泡が独立気泡であると、衝撃を受けた際に、気泡の変形量を抑えられることで、衝撃に対する発泡シートの変形量も抑えられるため、衝撃吸収性をより高めやすくなる。
独立気泡率は、衝撃吸収性をより向上させるために、70〜100%が好ましく、80〜100%がより好ましく、90〜100%が更に好ましい。
また、独立気泡がこれら範囲であると発泡シート内部の空気の移動が制限され、空気の対流による熱伝導を抑えることができ、断熱性が向上する。
なお、独立気泡率とは、ASTM D2856(1998)に準拠して測定したものをいう。
発泡シートは、通常、少なくともポリオレフィン系樹脂を含む材料(ポリオレフィン系樹脂組成物)の発泡体である。発泡シートを形成するために使用されるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、又はこれらの混合物が挙げられるが、ポリエチレン系樹脂が好ましい。
<ポリエチレン系樹脂>
ポリエチレン系樹脂は、エチレン単独重合体でもよいが、エチレンと必要に応じて少量(例えば、全モノマーの30質量%以下、好ましくは10質量%以下)のα−オレフィンとを共重合することにより得られるポリエチレン系樹脂が好ましい。
ポリエチレン系樹脂を構成するα−オレフィンとして、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、及び1−オクテン等が挙げられる。なかでも、炭素数4〜10のα−オレフィンが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン単位を50質量%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
プロピレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等が挙げられ、これらの中では、炭素数6〜12のα−オレフィンが好ましい。
なお、メタロセン化合物を触媒として用いることにより得られたポリエチレン系樹脂を用いる場合、その含有量は、ポリオレフィン系樹脂全体の40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、100質量%がより更に好ましい。
好適なメタロセン化合物としては、遷移金属をπ電子系の不飽和化合物で挟んだ構造を有するビス(シクロペンタジエニル)金属錯体等の化合物が挙げられる。より具体的には、チタン、ジルコニウム、ニッケル、パラジウム、ハフニウム、及び白金等の四価の遷移金属に、1又は2以上のシクロペンタジエニル環又はその類縁体がリガンド(配位子)として存在する化合物が挙げられる。
このようなメタロセン化合物は、活性点の性質が均一であり各活性点が同じ活性度を備えている。メタロセン化合物を用いて合成した重合体は、分子量、分子量分布、組成、組成分布等の均一性が高くなるため、メタロセン化合物を用いて合成した重合体を含むシートを架橋した場合には、架橋が均一に進行する。均一に架橋されたシートは、均一に延伸しやすくなるため、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの厚さを均一にしやすくなる。
また、環式化合物をオリゴマーとして重合したものをリガンドとして用いてもよい。
更に、π電子系の不飽和化合物以外にも、塩素や臭素等の一価のアニオンリガンド又は二価のアニオンキレートリガンド、炭化水素、アルコキシド、アリールアミド、アリールオキシド、アミド、アリールアミド、ホスフィド、アリールホスフィド等を用いてもよい。
メタロセン化合物は、特定の共触媒(助触媒)と組み合わせることにより、各種オレフィンの重合の際に触媒としての作用を発揮する。具体的な共触媒としては、メチルアルミノキサン(MAO)、ホウ素系化合物等が挙げられる。なお、メタロセン化合物に対する共触媒の使用割合は、10〜100万モル倍が好ましく、50〜5,000モル倍がより好ましい。
チーグラー・ナッタ化合物は、トリエチルアルミニウム−四塩化チタン固体複合物であって、四塩化チタンを有機アルミニウム化合物で還元し、更に各種の電子供与体及び電子受容体で処理して得られた三塩化チタン組成物と、有機アルミニウム化合物と、芳香族カルボン酸エステルとを組み合わせる方法(特開昭56−100806号、特開昭56−120712号、特開昭58−104907号の各公報参照)、及びハロゲン化マグネシウムに四塩化チタンと各種の電子供与体を接触させる担持型触媒の方法(特開昭57−63310号、特開昭63−43915号、特開昭63−83116号の各公報参照)等で製造されたものが好ましい。
なお、ポリオレフィン系樹脂組成物におけるゴム及び樹脂成分は、ポリオレフィン系樹脂が主成分となるものであり、ポリオレフィン系樹脂以外のゴム及び樹脂成分は、ポリオレフィン系樹脂よりも含有量が少なく、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、通常50質量部未満、好ましくは30質量部以下程度である。
発泡シートは、製造方法に制限はなく、一般的な製造方法で製造できるが、通常、ポリオレフィン系樹脂組成物を必要に応じて架橋した後、発泡することにより製造されるものである。
具体的には、発泡シートは、例えば以下の工程(1)〜(3)を有する方法により製造する。
工程(1):ポリオレフィン系樹脂、熱分解型発泡剤、及びその他の添加剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機からシート状に押出すことによってシート状にされたポリオレフィン系樹脂組成物を得る工程
工程(2):シート状にされたポリオレフィン系樹脂組成物を架橋する工程
工程(3):架橋させたシート状のポリオレフィン系樹脂組成物を加熱し、熱分解型発泡剤を発泡させ、好ましくはMD又はTDの何れか一方又は双方に延伸する工程
なお、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの製造方法としては、この方法のほかに、国際公開第2005/007731号に記載された方法により製造することも可能である。
ポリオレフィン系樹脂組成物中における熱分解型発泡剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して1〜23質量部が好ましい。熱分解型発泡剤の含有量が上記範囲内であると、ポリオレフィン系樹脂組成物の発泡性が向上し、所望の発泡倍率を有するポリオレフィン系樹脂発泡シートを得やすくなると共に、伸び率等も所望の範囲に調整しやすくなる。また、上記熱分解型発泡剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して6〜20質量部がより好ましい。このように発泡剤の含有量を比較的多くすると、発泡倍率が高められ、平均気泡間距離が小さくなりやすくなる。
分解温度調整剤は、熱分解型発泡剤の分解温度を低くしたり、分解速度を速めたり調節するものとして配合されるものであり、具体的な化合物としては、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、尿素等が挙げられる。分解温度調整剤は、発泡シートの表面状態等を調整するために、例えばポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.01〜5質量部配合する。
架橋助剤としては、多官能モノマーを使用することができる。架橋助剤をポリオレフィン系樹脂に添加することによって、工程(2)において照射する電離性放射線量を低減して、電離性放射線の照射に伴う樹脂分子の切断、劣化を防止する。
架橋助剤としては具体的には、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート等の1分子中に3個の官能基を持つ化合物や、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、ジビニルベンゼン等の1分子中に2個の官能基を持つ化合物、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、エチルビニルベンゼン、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等が挙げられる。これらの架橋助剤は、単独で又は2以上を組み合わせて使用する。
架橋助剤の添加量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.2〜10質量部が好ましく、0.3〜5質量部がより好ましく、0.5〜5質量部が更に好ましい。該添加量が0.2質量部以上であると発泡シートが所望する架橋度を安定して得ることが可能となり、10質量部以下であると発泡シートの架橋度の制御が容易となる。
また、酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等のフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
なお、ポリオレフィン系樹脂組成物の発泡は、熱分解型発泡剤を用いる例に限定されず、ブタンガス等による物理発泡を用いてもよい。
架橋に使用する有機過酸化物としては、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機過酸化物の添加量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対し、0.01〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。有機過酸化物の添加量が上記範囲内であると、ポリオレフィン系樹脂組成物の架橋が進行しやすく、また、発泡シートに残存する有機過酸化物の分解残渣の量が抑制される。
電離性放射線の照射量は、架橋度が上記した所望の範囲となるように、0.5〜20Mradが好ましく、3〜15Mradがより好ましい。
これらのポリオレフィン系樹脂組成物を架橋する方法は、いずれか一方を使用してもよいし併用してもよいが、均質に架橋を行う観点から、電離性放射線を照射する方法が好ましい。
延伸は、ポリオレフィン系樹脂組成物を発泡させた後に行ってもよいし、ポリオレフィン系樹脂組成物を発泡させつつ行ってもよい。なお、ポリオレフィン系樹脂組成物を発泡させて発泡シートを得た後、発泡シートを延伸する場合には、発泡シートを冷却することなく発泡時の溶融状態を維持したまま続けて発泡シートを延伸したほうがよいが、発泡シートを冷却した後、再度、発泡シートを加熱して溶融又は軟化状態とした上で発泡シートを延伸してもよい。
発泡シートのMD及びTDにおける延伸倍率を上記範囲内とすると、平均気泡間距離を所望の値に設定しやすくなる。また、延伸倍率を上記下限値以上とすると、発泡シートの断熱性、柔軟性及び引張強度が良好になりやすくなる。
一方、上限値以下とすると、発泡シートが延伸中に破断したり、発泡中の発泡シートから発泡ガスが抜けて発泡倍率が低下したりすることが防止され、発泡シートの柔軟性や引張強度が良好になり、品質も均一なものとしやすくなる。
本発明の粘着テープは、上記した発泡シートを基材として用いた粘着テープであり、具体的には、発泡シートと、発泡シートの一方の面又は両面に設けた粘着剤層とを備える。粘着テープの厚さは、通常0.03〜1.00mm、好ましくは0.05〜0.80mmである。
粘着テープを構成する粘着剤層の厚さは、5〜200μmが好ましく、7〜150μmがより好ましく、10〜100μmが更に好ましい。粘着テープを構成する粘着剤層の厚さが5〜200μmであると、粘着テープの厚さを薄くして、粘着テープが使用される電子機器の小型化、及び薄厚化に寄与する。
発泡シートに粘着剤を塗布して、粘着剤層を発泡シート上に積層する方法としては、例えば、発泡シートの少なくとも一方の面にコーター等の塗工機を用いて粘着剤を塗布する方法、発泡シートの少なくとも一方の面にスプレーを用いて粘着剤を噴霧、塗布する方法、発泡シートの一方の面に刷毛を用いて粘着剤を塗布する方法等が挙げられる。
本発明の発泡シート又は粘着テープは、スマートフォン等の携帯型電話機、ビデオカメラ等の電子機器本体内に内装される電子部品に衝撃が加わるのを防止する衝撃吸収材として好適に使用される。また、衝撃吸収材として使用されつつ、電子機器内部に設けられる電源、CPU等の発熱部材と、他の部材又は機器表面とを断熱する断熱材としても使用される。
発泡シート又は粘着テープは、表示装置、特にタッチパネル式の表示装置の背面側に配置されて、表示装置に作用される衝撃を吸収する衝撃吸収材として使用されることがより好ましい。このように配置された発泡シート又は粘着テープは、表示装置のガラス割れ等を防止するとともに、表示装置に発生するプーリングも低減させることも可能である。
本明細書における各物性の測定方法は、次の通りである。
<見掛け倍率>
実施例及び比較例で得られた発泡シートの見掛け密度を、JIS K7222に準拠して測定して、その逆数を見掛け倍率とした。
<架橋度(ゲル分率)>
実施例及び比較例で得られた発泡シートから約50mgの試験片を採取し、試験片の重量A(mg)を精秤する。次に、この試験片を105℃のキシレン30cm3中に浸漬して24時間放置した後、200メッシュの金網で濾過して金網上の不溶解分を採取、真空乾燥し、不溶解分の重量B(mg)を精秤する。得られた値から、下記式によりゲル分率(質量%)を算出する。
ゲル分率(質量%)=100×(B/A)
<独立気泡率>
ASTM D2856(1998)に準拠して測定した。
測定用の発泡体サンプルは50mm四方にカットして液体窒素に1分間浸した後、カミソリ刃でMD及びZDに平行な面に沿って切断した。その後、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス社製、製品名VHX−900)を用いて200倍の拡大写真を撮り、MDにおける長さ2mm分の切断面に存在する全ての気泡についてMD、ZDの気泡径を測定した。その操作を5回繰り返し、全てのMDの気泡径の平均値をMDの平均気泡径とした。
発泡体サンプルをTD及びZDに平行な面に沿って切断したこと以外は上記と同様にして、200倍の拡大写真を撮り、TDにおける長さ2mm分の切断面に存在する全ての気泡についてTDの気泡径を測定し、その操作を5回繰り返した。その後、全てのTDの気泡径の平均値をTDの平均気泡径とした。
ZDの平均気泡径は、計10断面分、全てのZDの気泡径の平均値をZDの平均気泡径とした。
<平均気泡間距離>
また、平均気泡径の測定時と同様にして得た、MD及びZDに沿う平面に沿って切断した切断断面の1000倍拡大写真において、MDに沿って隣接する気泡間の最短距離を3点測定する。同じ操作を5回繰り返し、計15点の平均値をMDにおける気泡間距離とする。同様に、TD及びZDに沿う平面に沿って切断した切断面の1000倍拡大写真において、TDに沿って隣接する気泡間の最短距離を3点測定する。同じ操作を5回繰り返し、計15点の平均値をTDにおける気泡間距離とする。そして、MDにおける気泡間距離と、TDにおける気泡間距離の平均値を平均気泡間距離とした。
発泡体シートから直径40mmの円柱を切り出し、試験片を作製した。ホットディスク法物性測定装置(京都電子工業株式会社製「TPS」)を使用して、この試験片の熱伝導率を測定した。
<伸び率及び引張強度>
発泡体シートをJIS K6251 4.1に規定されるダンベル状1号形にカットした。これを試料として用い、測定温度23℃で、JIS K6767に準拠して、MD及びTDの伸び率、及び引張強度を測定した。
<50%圧縮強度>
50%圧縮強度は、発泡シートをJIS K6767に準拠して測定した。
ポリオレフィン系樹脂としての直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製「カーネルKF370」、密度:0.905g/cm3、融点(DSC法)Tm:97℃)100質量部、熱分解型発泡剤としてのアゾジカルボンアミド10質量部、分解温度調整剤としての酸化亜鉛1.0質量部、及び酸化防止剤としての2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.5質量部を押出機に供給して130℃で溶融混練し、厚さ約0.3mmの長尺シート状のポリオレフィン系樹脂組成物を押出した。
次に、上記長尺シート状のポリオレフィン系樹脂組成物を、その両面に加速電圧500kVの電子線を5.0Mrad照射して架橋した後、熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された発泡炉内に連続的に送り込んで加熱して発泡させると共に、発泡させながらMDの延伸倍率を3.0倍、TDの延伸倍率を2.0倍として延伸させることにより、厚さ0.22mmの発泡シートを得た。得られた発泡シートの評価結果を表1に示す。
熱分解型発泡剤の配合量を14質量部に、MD,TDの延伸倍率を2.5倍、1.5倍と変更した点を除いて実施例1と同様に実施した。
直鎖状低密度ポリエチレンの配合量を30質量部に変更するとともに、ポリオレフィン系樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー株式会社製「ウルトラセン636」、酢酸ビニル含有率19質量%)を70質量部さらに配合した点を除いて実施例2と同様に実施した。
直鎖状低密度ポリエチレンの配合量を30質量部に変更するとともに、ポリオレフィン系樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー株式会社製「ウルトラセン636」、酢酸ビニル含有率19質量%)を70質量部さらに配合した点を除いて実施例1と同様に実施した。
熱分解型発泡剤の配合量を4質量部に、電子線の照射量を4.5Mradに、MD,TDの延伸倍率を2.0倍、1.5倍と変更した点を除いて実施例1と同様に実施した。
熱分解型発泡剤の配合量を4質量部に、電子線の照射量を4.5Mradに、MD,TDの延伸倍率を1.8倍、1.2倍と変更した点を除いて実施例1と同様に実施した。
熱分解型発泡剤の配合量を6質量部に、電子線の照射量を4.5Mradに、MD,TDの延伸倍率を2.0倍、1.5倍と変更した点を除いて実施例1と同様に実施した。
Claims (9)
- 内部に複数の気泡を有するポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、
熱伝導率が0.050W/(m・K)以下であるとともに、MD伸び率が400%以下、TD伸び率が200%以下であり、
厚さが0.02mm以上0.45mm以下であり、
衝撃吸収材又は断熱材として用いられる、ポリオレフィン系樹脂発泡シート。 - 平均気泡間距離が4.0μm以下である、請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
- 架橋体である、請求項1又は2に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
- 架橋度が30質量%以上60質量%以下である、請求項3に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
- 内部に複数の気泡を有するポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、
熱伝導率が0.050W/(m・K)以下であるとともに、MD伸び率が400%以下、TD伸び率が200%以下であり、
厚さが0.02mm以上0.45mm以下であり、
MDにおける引張強度が1.6〜7.0MPaであり、かつ、TDにおける引張強度が1.0〜5.0MPaである、ポリオレフィン系樹脂発泡シート。 - 見掛け倍率が9.0cm3/g以上24.0cm3/g以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
- 独立気泡率が70〜100%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
- 少なくともポリエチレン系樹脂を含む材料の発泡体である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載されたポリオレフィン系樹脂発泡シートと、前記ポリオレフィン系樹脂発泡シートの少なくとも一方の面に設けた粘着剤層とを備える粘着テープ。
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