JP6773381B2 - 誘電体セラミックス粒子の製造方法および誘電体セラミックス - Google Patents

誘電体セラミックス粒子の製造方法および誘電体セラミックス Download PDF

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本発明は、誘電体セラミックス粒子の製造方法および誘電体セラミックスに関する。
スマートフォン、タブレット等の普及に伴い、これらに使用される電子部品の小型高性
能化が進められており、積層コンデンサとして使用されるMLCC(Multi Layer Cerami
c Capacitor:積層セラミックコンデンサ)も当然のように、小型大容量化が求められて
いる。
現在、MLCCの小型大容量化のために、誘電体層を薄膜化し、積層数の増加を図るの
が主流である。そのためには、誘電体材料として使用しているチタン酸バリウム(BaT
iO:BT)等の誘電体セラミックスを微粒子化(小粒径化)することができる技術が
求められている。
しかしながら、チタン酸バリウムは、粒径が小さくなるにつれて、比誘電率が小さくな
ることが知られており(サイズ効果)、チタン酸バリウムを使用している限り、今後のM
LCCのさらなる小型大容量化には困難な状況が訪れつつある。したがって、チタン酸バ
リウム以上の比誘電率を発現する新しい材料の開発が行われている。
そのような材料の一種として、互いに種類の異なる複合酸化物によってコア粒子および
シェル相がそれぞれ形成された、コア−シェル構造体の形態をとる誘電体セラミックス粒
子が知られている。そして、このようなコア−シェル構造を有する誘電体セラミックス粒
子は、比誘電率だけでなく、DCバイアス特性等の他の物性に関する向上効果もまた発現
することが期待される。
コア−シェル構造を有する誘電体セラミックス粒子の一例として、チタン酸バリウムを
コア粒子とし、当該コア粒子をチタン酸ストロンチウム(SrTiO:ST)によって
被覆してシェル相を形成することにより、BT/STの複合ナノ粒子(コア−シェル構造
体)を作製する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
このようなコア−シェル構造体の製造方法について、特許文献1には、チタン酸バリウ
ム粒子をコア粒子として、水酸化ストロンチウムおよびチタンジイソプロポキシドジアセ
チルアセトナート(Ti(PrO)(AcAc):TPA)をシェル相形成用の原
料として用いた方法が開示されている。上記方法では、チタン酸バリウム粒子、水酸化ス
トロンチウムおよびTPAを用いてソルボサーマル合成処理を行うことにより、コア−シ
ェル構造体を作製することができる。
特開2010−208923号公報
特許文献1の技術によれば、チタン酸バリウム/チタン酸ストロンチウムの複合ナノ粒
子を製造することができる。しかしながら、原料として用いるTPAは、キレート錯体で
あり、高価な化合物であるため、工業化の観点からは、より安価な原料を用いることがで
きる技術が求められている。
したがって、本発明の目的は、より安価な原料を用いて、コア−シェル構造を有する誘
電体セラミックス粒子を製造する方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は
、上記方法により得られた誘電体セラミックス粒子を含む誘電体セラミックスを提供する
ことにある。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、コア粒子およ
びシェル相を有する誘電体セラミックス粒子の製造方法において、コア粒子とシェル相の
原料化合物とを、特定の角速度以上で回転する機構を有する機械的回転体によって乾式混
合することにより、安価な原料で上記誘電体セラミックス粒子の製造が可能となることを
見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
1.25℃でペロブスカイト構造を有する第一の複合酸化物を主成分とするコア粒子と
、前記コア粒子の表面上に形成され、前記第一の複合酸化物とは異なる第二の複合酸化物
を主成分とするシェル相と、を有する誘電体セラミックス粒子の製造方法であって、
前記コア粒子と前記第二の複合酸化物の原料化合物とを乾式混合して前記第二の複合酸
化物の原料化合物を前記コア粒子に被覆させて原料混合物を得る工程と、
前記原料混合物に水熱合成処理またはソルボサーマル合成処理を行う工程と、を含み、
前記乾式混合は、6×10rad/s以上の角速度で回転する機構を有する機械的回
転体によって行われる、誘電体セラミックス粒子の製造方法;
2.前記乾式混合は、メカノフュージョン装置で行われる、上記1.に記載の誘電体セ
ラミックス粒子の製造方法;
3.前記第二の複合酸化物の原料化合物は、酸化ジルコニウム、酸化チタンおよび酸化
ニオブからなる群から選択される少なくとも一種を含む、上記1.または2.に記載の誘
電体セラミックス粒子の製造方法;
4.前記第二の複合酸化物は、ジルコン酸バリウム、チタン酸バリウム、チタン酸スト
ロンチウム、チタン酸カルシウム、ニオブ酸カリウムまたは、ニオブ酸ナトリウムである
、上記1.〜3.のいずれかに記載の誘電体セラミックス粒子の製造方法;
5.前記第一の複合酸化物は、チタン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸スト
ロンチウム、チタン酸カルシウム、ニオブ酸カリウムまたは、ニオブ酸ナトリウムである
、上記1.〜4.のいずれかに記載の誘電体セラミックス粒子の製造方法;
6.上記1.〜5.のいずれかに記載の方法により製造される誘電体セラミックス粒子
を含む、誘電体セラミックス。
本発明によれば、より安価な原料を用いて、コア−シェル構造を有する誘電体セラミッ
クス粒子を製造する方法が提供される。さらに、本発明によれば、上記方法により得られ
た誘電体セラミックス粒子を含む誘電体セラミックスが提供される。
実施例1に係る誘電体セラミックス粒子のSTEM像である。 図1Aと同一視野で測定したBaのマッピングデータである。 図1Aと同一視野で測定したTiのマッピングデータである。 図1Aと同一視野で測定したZrのマッピングデータである。 図1Aと同一視野で測定したBa+Ti+Zrのマッピングデータである。 実施例1に係る混合工程前のコア粒子のSEM像である。 実施例1に係る誘電体セラミックス粒子(1)のSEM像である。 実施例2に係る混合工程前のコア粒子のSEM像である。 実施例2に係る誘電体セラミックス粒子(2)のSEM像である。 実施例3に係る混合工程前のコア粒子のSEM像である。 実施例3に係る誘電体セラミックス粒子(3)のSEM像である。 実施例4に係る混合工程前のコア粒子のSEM像である。 実施例4に係る誘電体セラミックス粒子(4)のSEM像である。 実施例5に係る混合工程前のコア粒子のSEM像である。 実施例5に係る誘電体セラミックス粒子(5)のSEM像である。 実施例6に係る混合工程前のコア粒子のSEM像である。 実施例6に係る誘電体セラミックス粒子(6)のSEM像である。 実施例7に係る混合工程前のコア粒子のSEM像である。 実施例7に係る誘電体セラミックス粒子(7)のSEM像である。 実施例8に係る混合工程前のコア粒子のSEM像である。 実施例8に係る誘電体セラミックス粒子(8)のSEM像である。 実施例9に係る混合工程前のコア粒子のSEM像である。 実施例9に係る誘電体セラミックス粒子(9)のSEM像である。 実施例10に係る混合工程前のコア粒子のSEM像である。 実施例10に係る誘電体セラミックス粒子(10)のSEM像である。 実施例11に係る混合工程前のコア粒子のSEM像である。 実施例11に係る誘電体セラミックス粒子(11)のSEM像である。 比較例1に係る比較誘電体セラミックス粒子(1)のSEM像である。 比較例2に係る比較誘電体セラミックス粒子(2)のSEM像である。 実施例1および2に係る誘電体セラミックス粒子(1)および(2)のXRDスペクトルである。 実施例3および4に係る誘電体セラミックス粒子(3)および(4)のXRDスペクトルである。 実施例5および6に係る誘電体セラミックス粒子(5)および(6)のXRDスペクトルである。 実施例7および8に係る誘電体セラミックス粒子(7)および(8)のXRDスペクトルである。 実施例9および10に係る誘電体セラミックス粒子(9)および(10)のXRDスペクトルである。 実施例11に係る誘電体セラミックス粒子(11)のXRDスペクトルである。 比較例1および2に係る比較誘電体セラミックス粒子(1)および(2)のXRDスペクトルである。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の第一の形態は、25℃でペロブスカイト構造を有する第一の複合酸化物を主成
分とするコア粒子と、前記コア粒子の表面上に形成され、前記第一の複合酸化物とは異な
る第二の複合酸化物を主成分とするシェル相と、を有する誘電体セラミックス粒子の製造
方法であって、
前記コア粒子と前記第二の複合酸化物の原料化合物とを乾式混合して前記第二の複合酸
化物の原料化合物を前記コア粒子に被覆させて原料混合物を得る工程と、
前記原料混合物に水熱合成処理またはソルボサーマル合成処理を行う工程と、を含み、
前記乾式混合は、6×10rad/s以上の角速度で回転する機構を有する機械的回
転体によって行われる、誘電体セラミックス粒子の製造方法である。
本発明者らは、特許文献1に開示されたようなコア−シェル構造体について検討する過
程で、製造方法に着目し、より安価に製造することができる方法について検討を行った。
その際、特開2013−129560号公報に開示された、主成分となるチタン酸バリウ
ムと、副成分となる金属酸化物とを混合して焼成する方法に着目した。しかしながら、上
記文献に開示された技術によって得られる焼結体は、固溶体となってしまい、目的とする
コア−シェル構造体は得られなかった。
次に、本発明者らは、上記文献の材料を用いて、乳鉢および乳棒を用いた一般的な混合
方法で混合した後、水熱合成処理またはソルボサーマル合成処理を行うことについて検討
したが、この方法を以ってしても、コア粒子に対するシェル相の被覆が不十分であり、目
的とするコア−シェル構造体を得ることはできなかった。
そこで本発明者らは、鋭意検討を重ね、驚くべきことに、特定の角速度で回転する機構
を有する機械的回転体を用いてコア粒子とシェル相の原料化合物とを混合し、この混合物
を用いて水熱合成処理またはソルボサーマル合成処理をすることにより、目的とするコア
−シェル構造を有する誘電体セラミックス粒子が得られることを見出した。
上記のように、本発明の誘電体セラミックス粒子の製造方法では、コア粒子とシェル相
の原料化合物とを乾式混合する際、特定の角速度以上で回転する機構を有する機械的回転
体によって行われる。このような機構を有する機械的回転体は、コア粒子およびシェル相
の原料化合物に、剪断応力や遠心力等の大きな機械的エネルギーを加えることができる。
そして、コア粒子およびシェル相の原料化合物にこの機械的なエネルギーが加わる際、摩
擦や圧縮といった作用が加わり、これら原料の構造や結合状態が変化して活性化し、他の
物質と相互作用しやすくなる(メカノケミカル的相互作用)。したがって、この相互作用
により、コア粒子の表面にシェル相の原料化合物を略均一に付着させることができる。そ
の結果、コア粒子表面がシェル相の原料化合物により十分に被覆される。このとき、シェ
ル相の原料化合物としては、TPA等の高価なキレート錯体を用いる必要はなく、金属酸
化物等の比較的安価な化合物を適用可能である。また、粉体の状態で処理できるため、ペ
レット成形等の工程も省略することができ、製造工程が簡素化され、さらにスケールアッ
プしやすいという利点も有する。
そして、このようにコア粒子上にシェル相の原料化合物が被覆した状態で水熱合成処理
またはソルボサーマル合成処理を行うことにより、上記のコア−シェル構造を有する誘電
体セラミックス粒子の製造が可能となる。なお、本発明は、上記メカニズムに何ら制限さ
れるものではない。
以下、本発明の誘電体セラミックス粒子の構成要素、および本発明を実施するための形
態・態様について詳細に説明する。なお、以下の説明において示す「〜」は、その前後に
記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用する。また、特記しない限り
、操作および物性等の測定は室温(25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
さらに、本明細書中、「粒径」は、電子顕微鏡により撮像し、無作為に、50個の粒子
を抽出して該粒子径を測定し、これを平均したものである。また、粒子の形状が球形でな
い場合には、長径を測定して算出したものと定義する。
≪誘電体セラミックス粒子(誘電体セラミックス)の製造方法≫
本発明の誘電体セラミックス粒子の製造方法は、(1)コア粒子と、シェル相を形成す
るための原料化合物とを混合する工程(混合工程)および(2)水熱合成処理またはソル
ボサーマル合成処理を行う工程(合成工程)に大別される。また、これら以外に、必要に
応じて(3)洗浄・乾燥工程を行ってもよい。以下、各工程について詳細に説明する。
(1)混合工程
本工程では、25℃でペロブスカイト構造を有する第一の複合酸化物を主成分とするコ
ア粒子と、上記第一の複合酸化物とは異なる第二の複合酸化物を主成分とするシェル相を
形成するための原料化合物とを乾式混合し、当該原料化合物をコア粒子に被覆させ、原料
混合物を得る。
なお、本明細書中、「第一の複合酸化物を主成分とする」とは、コア粒子の全量に対し
て、第一の複合酸化物が90質量%以上含まれることを意味する。また、「第二の複合酸
化物を主成分とする」とは、シェル相の全量に対して、第二の複合酸化物が90質量%以
上含まれることを意味する。したがって製造上含まれてしまう不純成分がコア粒子中また
はシェル相中に微量含まれていても良い。なお、コア粒子が第一の複合酸化物を90質量
%以上含むこと、および、シェル相が第二の複合酸化物を90質量%以上含むことは、蛍
光X線による分析により確認される。
本工程において、コア粒子と、シェル相を形成するための第二の複合酸化物の原料化合
物(本明細書中、単に「原料化合物」または「シェル相の原料化合物」とも称することが
ある)との混合は、特定の角速度以上で回転する機構を有する機械的回転体を用いて行わ
れる。ここで、特定の角速度以上で回転する機構を有する機械的回転体を用いることによ
り、コア粒子およびシェル相の原料化合物(本明細書中、これらを単に「原料混合物」と
も称することがある)に対して適当な剪断応力を与えることができる。その結果、上記メ
カノケミカル的相互作用により、コア粒子の表面に、上記原料化合物をほぼ均一に被覆さ
せることができる。
本発明において、上記特定の角速度以上とは、6×10rad/s以上である。当該
値以上の角速度で回転する機構を有する機械的回転体を用いることにより、コア粒子およ
びシェル相の原料化合物を均一に混合することができると共に、シェル相の原料化合物の
偏在を抑制しつつ、コア粒子上にシェル相の原料化合物を被覆させることができる。した
がって、構造的に欠陥の少ない誘電体セラミックス粒子を得ることができる。一方、上記
値未満であると、コア粒子上にシェル相の原料化合物を十分に被覆することができず、コ
ア−シェル構造を有する誘電体セラミックス粒子を得ることが難しい。
なお、本工程において、「被覆」とは、コア粒子の表面全体がシェル相の原料化合物で
被覆されていると好ましいが、表面の一部が露出していてもよい。詳細には、コア粒子表
面の50面積%以上をシェル相の原料化合物が占めていれば、コア粒子がシェル相の原料
化合物によって「被覆されている」ことを示す。なお、具体的な被覆率の測定方法は、実
施例に記載の方法による。
好ましい実施形態において、コア粒子の表面の50面積%以上がシェル相の原料化合物
で被覆されていると好ましく、より好ましくは60面積%以上、さらに好ましくは70面
積%以上、特に好ましくは80面積%以上、最も好ましくは90面積%以上がシェル相の
原料化合物で被覆されていると好ましい。
このように、コア粒子表面をシェル相の原料化合物によって十分に被覆するという観点
から、上記角速度は、6.2×10rad/s以上であると好ましく、1.0×10
rad/s以上であるとより好ましく、1.5×10rad/s以上であると特に好ま
しい。
一方、上記角速度の上限は特に制限されないが、機械的な限界値を考慮すると、3.2
×10rad/s以下である。
本工程では、コア粒子と、シェル相の原料化合物とを乾式混合する。このように乾式混
合することで、上記のような機械的回転体を用いた際、原料混合物に対して剪断応力が十
分に加わり、メカノケミカル的な相互作用により、シェル相の原料化合物の被覆を促進す
る。また、溶媒を添加・除去する必要がないため、工業的にも有利である。
本工程において、混合時間は特に制限されないが、1〜10分間であると好ましい。混
合および被覆を十分に行うという観点から、混合時間は、2〜8分間であると好ましく、
3〜6分間であるとより好ましい。
上記条件に基づく混合を行うために用いられる機械的回転体(すなわち、混合装置)と
しては、例えば、ハイブリダイゼーション装置、メカノフュージョン装置、シータコンポ
ーザおよびメカノミル等が挙げられるが、特に制限されない。
機械的回転体の具体例としては、ハイブリダイザーNHS−1(株式会社奈良機械製作
所製)等のハイブリダイゼーション装置;メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロ
ン株式会社製)、ノビルタ(登録商標)(ホソカワミクロン株式会社製)等のメカノフュ
ージョン装置;シータコンポーザ(徳寿工作所社製);メカノミル(岡田精工株式会社製
);ヘンシェルミキサー(例えば、日本コークス工業株式会社製);マルチパーパスミキ
サー(例えば、日本コークス工業株式会社製);コンポジ(日本コークス工業株式会社製
)等が挙げられる。
上述したように、近年の傾向として、誘電体セラミックス粒子の微粒子化(小粒径化)
が求められているため、コア粒子の粒径は小さいものであると好ましい。したがって、こ
のような目的から、粒径が1μm以下であるコア粒子を被覆するためには、上記混合装置
の中でも、メカノフュージョンシステムまたはノビルタ(登録商標)(共にホソカワミク
ロン株式会社)を用いると好適である。よって、本工程における乾式混合は、メカノフュ
ージョンシステムまたはノビルタ(登録商標)等のメカノフュージョン装置によって行わ
れると特に好ましい。
ここで、メカノフュージョン装置について概説する。メカノフュージョン装置は、回転
容器と、当該回転容器内で回転するインナーピース(プレスヘッド)を備えている。ここ
で、インナーピースの回転容器の内壁に近接する側の面は、回転容器の内壁と異なる曲率
半径を有している。したがって、回転容器内に投入されたコア粒子およびシェル相の原料
化合物(すなわち、原料混合物)は、遠心力によりその回転容器の内壁に押しつけられて
固定された状態となり、上記曲率半径の異なるインナーピースとの間において剪断応力を
受ける。その結果、コア粒子表面にシェル相の原料化合物が被覆される。
メカノフュージョン装置を用いることにより、粒径が100nm〜1μmであるコア粒
子に対して、シェル相の原料化合物を十分に被覆させることができ、さらに、上記インナ
ーピースと、回転容器の内壁との間隔を調節することにより、粒径のさらに小さいコア粒
子に対しても、シェル相の原料化合物を被覆することが可能となる。具体的には、上記イ
ンナーピースと、回転容器の内壁との間隔は、0mmを超えて3mm以下であると好まし
い。
本工程における雰囲気は特に制限されず、大気中、または窒素ガスやアルゴンガス等の
不活性ガス雰囲気下で行うこともできる。また、混合時の温度も特に制限されないが、コ
ア粒子およびシェル相の原料がコア−シェル構造体の作製に不適となるほどの改質を生じ
ない温度で行うことが好ましい。したがって、5〜40℃程度で行うことが好ましい。
なお、コア粒子上にシェル相が偏析することを防ぐために、機械的回転体による混合の
前に、コア粒子およびシェル相の原料化合物について、乳鉢と乳棒とを用いて予備混合を
行ってもよい。
以下、本工程において用いられるコア粒子およびシェル相の原料化合物について説明す
る。
(コア粒子)
誘電体セラミックス粒子の原料としてのコア粒子は、25℃でペロブスカイト構造を有
する第一の複合酸化物を主成分とする粒子であれば、特に制限されない。
「第一の複合酸化物を主成分とする」の用語の定義は上述の通りであって、製造上含ま
れてしまう不純成分がコア粒子中に微量含まれていても良い。不純成分としては、第一の
複合酸化物を構成する元素以外の元素、すなわち、カリウム、ナトリウム、アルミニウム
、カルシウム、ニオブ、鉄、鉛などの金属由来成分、ガラス成分および炭化水素系の有機
成分、表面吸着水などが挙げられる。
コア粒子は、コア粒子の全量に対して、第一の複合酸化物を93質量%以上含んでいる
と好ましく、95質量%以上含んでいるとより好ましく、98質量%以上含んでいると特
に好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、実質的には100質量%である。第
一の複合酸化物の含有量が多いほど、シェル相を構成する第二の複合酸化物と相互作用し
やすくなり、比誘電率やDCバイアス特性といった、各種物性値の向上に寄与するため、
好ましい。
ここで、25℃でペロブスカイト構造を有する第一の複合酸化物としては、チタン酸バ
リウム(BaTiO)、ジルコン酸バリウム(BaZrO)、チタン酸ストロンチウ
ム(SrTiO)、チタン酸カルシウム(CaTiO)、ニオブ酸カリウム(KNb
)およびニオブ酸ナトリウム(NaNbO)等が挙げられる。上記第一の複合酸化
物を主成分とするコア粒子としては、市販品を用いてもよいし、適宜合成してもよい。
中でも、高い比誘電率を有する誘電体セラミックス粒子を得るという観点からは、チタ
ン酸バリウムを用いると好ましい。また、DCバイアス特性に優れる誘電体セラミックス
粒子を得るという観点からは、チタン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ストロ
ンチウム、チタン酸カルシウム、またはニオブ酸カリウムを用いると好ましい。
上記第一の複合酸化物を主成分とする粒子は、一種を単独で使用しても良く、二種以上
を混合して使用しても良い。
コア粒子の粒径(平均粒径)は、特に制限されず、コア粒子を構成する第一の複合酸化
物の種類にも依存するが、近年の誘電体セラミックス粒子の小粒径化の傾向から、1μm
以下であると好ましい。一方、サイズ効果(小粒径化に伴い、比誘電率の低下を伴うこと
)や凝集を抑制するという観点から、コア粒子の粒径は、50nm以上であると好ましい
また、良好なコア−シェル構造を形成するという観点から、コア粒子の粒径は、500
nm以下であると好ましい。さらに、サイズ効果の影響を抑制しつつ、誘電体セラミック
ス粒子の小粒径化を図るという実用的な観点から、コア粒子の粒径は、80〜450nm
であるとより好ましく、100〜400nmであると特に好ましい。
(シェル相の原料化合物)
本工程において、シェル相の原料化合物は、第二の複合酸化物を主成分とするシェル相
を形成するために、コア粒子と混合して用いられる。ここで、第二の複合酸化物は、上記
第一の複合酸化物とは異なる組成を有し、第一の複合酸化物の物性を考慮して適宜選択さ
れる。
ここで、シェル相を構成する第二の複合酸化物は、第一の複合酸化物に対して組成が異
なるものであれば特に制限されないが、第一の複合酸化物と同様、25℃でペロブスカイ
ト構造を有するものであると好ましい。加えて、第二の複合酸化物は、第一の複合酸化物
との相互作用により、第一の複合酸化物の物性(比誘電率、DCバイアス特性等)を向上
させることができるものであるとより好ましい。具体的には、第一の複合酸化物および第
二の複合酸化物は、同軸方向の格子定数が、互いに異なる組み合わせであると好ましい。
このように、第一の複合酸化物および第二の複合酸化物において、同軸方向の格子定数が
異なる組み合わせのものを用いることにより、コア粒子−シェル相界面において、コア粒
子に含まれる第一の複合酸化物の単位格子を歪ませることができる。その結果、誘電率や
DCバイアス特性を向上させることができる。
したがって、第二の複合酸化物は、上記条件を満たすものであると好ましく、第一の複
合酸化物との関係を考慮して、ジルコン酸バリウム(BaZrO)、チタン酸バリウム
(BaTiO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸カルシウム(C
aTiO)、ニオブ酸カリウム(KNbO)、およびニオブ酸ナトリウム(NaNb
)から選択されると好ましい。
上記第二の複合酸化物によって構成されるシェル相を形成するため、シェル相の原料化
合物は、上記第二の複合酸化物に含まれる元素を含む化合物であると好ましい。ここで、
「第二の複合酸化物に含まれる元素」とは、第二の複合酸化物である、ペロブスカイト構
造(ABO型)を有する複合酸化物に含まれる元素、すなわち、AサイトおよびBサイ
トのいずれかを占める元素を指す(本明細書中、第二の複合酸化物のBサイトを占める元
素を含む原料化合物を「第一の原料化合物」と、同じくAサイトを占める元素を含む原料
化合物を「第二の原料化合物」と称することがある。なお、Aサイトを占める元素および
Bサイトを占める元素の両方を含む原料化合物は、「第一の原料化合物」に含むものとす
る)。
本工程において添加されるシェル相の原料化合物としては、第二の複合酸化物に含まれ
る元素の酸化物または炭酸塩であるとより好ましい。かような化合物をシェル相の原料化
合物として用いることにより、例えば、特許文献1に開示されたTPAのような、高価な
キレート錯体を用いることなく、比較的安価な方法によってコア−シェル構造体を得るこ
とができる。
なお、本工程では、上記第一の原料化合物および第二の原料化合物の両方を添加する必
要はない。したがって、本工程では、第一の原料化合物および第二の原料化合物のいずれ
か一方を添加すればよい。すなわち、本工程では、コア粒子とシェル相の原料化合物の少
なくとも一種とを混合すればよい。
ここで、本工程において添加されるシェル相の原料化合物は、第一の原料化合物である
と好ましい。さらに、第一の原料化合物の中でも、第二の複合酸化物のペロブスカイト構
造(ABO型)において、Bサイトを占める元素(金属)の酸化物または炭酸塩である
とより好ましい。このとき、Aサイトを占める元素を含む原料化合物(第二の原料化合物
)は、以下で詳説する(2)合成工程において添加されると好ましい。なお、第二の原料
化合物に関する説明は、以下の(2)合成工程の節で詳説する。
上記第二の複合酸化物に含まれる元素を考慮すると、本工程で添加される第一の原料化
合物は、ジルコニウム、チタンおよびニオブからなる群から選択されるいずれか一種の金
属の酸化物または炭酸塩であると好ましい。これらの原料化合物は比較的安価であるため
、工業的に有利である。加えて、上記原料化合物に由来する第二の複合酸化物は、コア粒
子を構成する第一の複合酸化物との相互作用により、比誘電率やDCバイアス特性等の各
種物性を向上させやすいという利点もある。
なお、炭酸塩を用いる場合は、(2)合成工程において、シェル相を形成する反応を促
進するため、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ源(OH源)となりうる
ものをさらに添加すると好ましい。
上記第一の原料化合物の中でも、乾式混合を行う際の原料化合物の取り扱いの容易性や
、後処理工程の簡便さを考慮すると、本工程で添加されるシェル相の原料化合物は、金属
の酸化物であると好ましい。
したがって、シェル相の原料化合物(第一の原料化合物)は、酸化ジルコニウム(Zr
)、酸化チタン(TiO)および酸化ニオブ(Nb)からなる群から選択さ
れる少なくとも一種を含むと好ましい。なお、上記第一の原料化合物は、シェル相を構成
する第二の複合酸化物の組成によっては、一種を単独で使用しても良く、二種以上を混合
して使用しても良い。
本工程において添加されるシェル相の原料化合物(第一の原料化合物)の量は特に制限
されず、目的とする誘電体セラミックス粒子中のコア粒子およびシェル相の含有比率によ
って適宜変更されうる。
ここで、シェル相を構成する第二の複合酸化物の含有量比率(モル比)は、第一の複合
酸化物を主成分とするコア粒子表面上をシェル相が被覆することができる限りにおいて、
特に制限はないが、以下で詳説するように、シェル相を構成する第二の複合酸化物が、コ
ア粒子を構成する第一の複合酸化物に対して、等モル量であるか、または少ないモル比で
含有されていると好ましい。したがって、本工程において添加されるシェル相の原料化合
物(好ましくは、第一の原料化合物)と、コア粒子に含まれる第一の複合酸化物とのモル
比は0.1〜1:1(シェル相の原料化合物:第一の複合化合物)の割合であると好まし
く、0.25〜0.5:1の割合であるとより好ましい。なお、シェル相の原料化合物を
二種類以上用いる場合は、すべての原料化合物に含まれるBサイト元素(第二の複合酸化
物のBサイトを占める元素)の和が、第一の複合酸化物に対して上記範囲内であると好ま
しい。
一方、シェル相の原料化合物の形状は、特に制限されず、粉末状、球状、棒状、針状、
板状、柱状、不定形状、燐片状、紡錘状など任意の構造をとりうる。なかでも、原料化合
物の入手容易性やコア粒子を被覆しやすいという観点からは、球状または不定形状である
と好ましい。シェル相の原料化合物が球状であるとき、その粒径は、特に制限されないが
、コア粒子の粒径よりも小さいものが好ましい。より具体的には、球状であるシェル相の
原料化合物の粒径は、コア粒子の粒径に対し、1.0〜40%であると好ましい。
(2)合成工程
本工程では、上記の工程において得られた原料混合物に対して水熱合成処理またはソル
ボサーマル合成処理を施すことにより、コア粒子の表面上にシェル相を形成する。
水熱合成処理およびソルボサーマル合成処理とは、中〜高程度の圧力(通常、0.10
〜1,000MPa)と中〜高程度の温度(通常100℃〜1000℃)の下で行われる
反応を用いた処理であり、使用する溶媒によってそれぞれ区別される。「水熱合成処理」
とは、水(純水、イオン交換水、超純水等)のみを溶媒として使用する場合であり、その
他の有機溶媒を溶媒として含まない形態である。一方、「ソルボサーマル合成処理」とは
、有機溶媒を使用する形態であるが、有機溶媒を含んでいれば、水を含む形態であっても
「ソルボサーマル合成処理」と称する。
本工程において、上記(1)混合工程において調製された原料混合物に対し、シェル相
を形成するための原料化合物をさらに添加してもよい。上記(1)混合工程において、シ
ェル相の原料化合物として、第一の原料化合物(第二の複合酸化物のBサイトを占める元
素を含む原料化合物)のみを添加する形態を好ましい形態として説明したが、この場合に
おいて、第二の原料化合物(第二の複合酸化物のAサイトを占める元素を含む原料化合物
)を本工程において添加すると好ましい。
第二の原料化合物としては、シェル相を構成する第二の複合酸化物の組成に依存するが
、第二の複合酸化物のペロブスカイト構造(ABO型)において、Aサイトを占める元
素の水酸化物、炭酸塩、酢酸塩またはアルコキシド化合物であると好ましい。
上記第二の原料化合物を添加することにより、シェル相を形成するために必要な元素を
さらに添加し、補うことができる。
上記(1)混合工程の節において説明した第二の複合酸化物に含まれる元素を考慮する
と、第二の原料化合物は、バリウム、カリウム、ナトリウム、ストロンチウム、カルシウ
ムからなる群から選択されるいずれか一種の元素の水酸化物、炭酸塩、酢酸塩またはアル
コキシド化合物であると好ましい。これらの原料化合物は比較的安価であるため、工業的
に有利である。加えて、上記第一の原料化合物および上記第二の原料化合物に由来する第
二の複合酸化物は、コア粒子を構成する第一の複合酸化物との相互作用により、比誘電率
やDCバイアス特性等の各種物性を向上させやすいという利点もある。
なお、炭酸塩を用いる場合は、シェル相を形成する反応を促進するため、水酸化ナトリ
ウム、水酸化カリウム等のアルカリ源(OH源)となりうるものをさらに添加すると好
ましい。
上記第二の原料化合物の中でも、原料化合物の取り扱いの容易性や、原料化合物が比較
的安価であるという観点から、第二の原料化合物としては、上記元素の水酸化物または炭
酸塩であると好ましく、水酸化物であると特に好ましい。
したがって、シェル相の原料化合物(第二の原料化合物)は、水酸化バリウム八水和物
(Ba(OH)・8HO)等の水酸化バリウム、水酸化ナトリウム(NaOH)、水
酸化カリウム(KOH)、水酸化ストロンチウム(Sr(OH))、水酸化カルシウム
(Ca(OH))からなる群から選択されると好ましい。なお、上記第二の原料化合物
は、シェル相を構成する第二の複合酸化物の組成によっては、一種を単独で使用しても良
く、二種以上を混合して使用しても良い。
第二の原料化合物の添加量は特に制限されず、目的とする誘電体セラミックス粒子中の
シェル相の組成によって適宜変更されうる。一例として、第一の原料化合物と、第二の原
料化合物とのモル比は1:1.0〜2.0(第一の原料化合物:第二の原料化合物)の割
合であると好ましい。かような比率とすることにより、第一の原料化合物が残存すること
なく目的の第二の複合酸化物に変換され、また、不純物となりうる未反応物の生成を抑制
することができる。
本工程において用いる溶媒としては、シェル相を構成する材料に応じて、水(純水、イ
オン交換水、超純水等)、有機溶媒を適宜選択することができる。すなわち、本工程では
、シェル相を構成する材料に応じて、水熱合成処理およびソルボサーマル合成処理を適宜
選択すればよい。
本工程において用いることができる溶媒としては、特に制限されないが、以下のものが
例示される。
上述の通り、水熱合成処理において用いられる溶媒は、水(純水、イオン交換水、超純
水等)である。
また、ソルボサーマル合成処理において用いられる溶媒は、特に制限されず、種々の有
機溶媒を用いることができるが、例えば、メタノール、エタノール、ベンジルアルコール
、メトキシエタノール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール等
のグリコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキ
サノン等のケトン類;酢酸ブチル、酢酸エチル、カルビトールアセテート、ブチルカルビ
トールアセテート等のエステル類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルエーテ
ル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン
等のアミン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類等が挙げられる。なお、上記
溶媒は、一種を単独で用いても良く、二種以上を組み合わせて使用してもよい。また、上
記有機溶媒に水を混合した混合溶媒としてもよい。
本工程において用いる溶媒は、容器の腐食などの観点から、非酸性の(すなわち、中性
または塩基性の)混合液(反応混合液)とすると好ましい。
上記溶媒の中でも、強い極性溶媒である水、アルコール類およびこれらの混合溶媒は、
特に好適な溶媒として用いられる。このように、極性が高い溶媒を用いることにより、反
応性が高くなり、より低い温度でシェル相化合物を合成できる。混合溶媒を用いる場合、
水:アルコールを1:9〜9:1の混合比(体積比)で混合すると好ましい。さらに、安
価という点に加え、より極性が高い溶媒であるという点では、溶媒として水を用いる(す
なわち、水熱合成処理を行う)と特に好ましい。
水熱合成反応時およびソルボサーマル反応時の温度は特に限定されないが、120℃〜
400℃であると好ましく、150℃〜300℃であるとより好ましい。
また、水熱合成反応またはソルボサーマル反応を行う時間についても特に限定されない
が、好ましくは1〜72時間、より好ましくは5〜50時間、さらに好ましくは10〜3
0時間である。
水熱合成反応またはソルボサーマル反応を行う際の圧力は、特に限定されないが、0.
10〜4.0MPa程度で行うと好ましい。このような圧力下での反応は、オートクレー
ブ等の耐圧容器中で行うことができる。
(3)洗浄・乾燥工程
上記(1)混合工程および(2)合成工程によりコア−シェル構造を有する誘電体セラ
ミックス粒子を形成した後、必要に応じて洗浄・乾燥工程を行ってもよい。本工程は、主
として、上記(2)合成工程により生じた不純物や未反応物を除去するために行われる。
したがって、洗浄溶媒は、これらを溶解させることができると共に、生成した誘電体セラ
ミックス粒子に影響しない溶媒が用いられる。たとえば、酢酸水溶液、水等を用いて洗浄
すると好ましい。この時の洗浄溶媒の温度は、不純物や未反応物の除去を効率よく行い、
かつ、精製した誘電体セラミックス粒子の物性を損なうことを抑制するため、10〜80
℃であると好ましい。
また、乾燥条件も特に制限されないが、100〜150℃で乾燥させると好ましい。こ
の時用いられる乾燥装置は、特に制限されず、例えば、オーブン、熱風乾燥機などの通常
用いられる装置を用いることができる。これらの乾燥装置は、複数を組み合わせて使用し
てもよい。
上記乾燥時の雰囲気は特に制限されず、大気中、または窒素ガスやアルゴンガス等の不
活性ガス雰囲気下で行うこともできる。
≪誘電体セラミックス粒子≫
本発明の製造方法により得られる誘電体セラミックス粒子は、25℃でペロブスカイト
構造を有する第一の複合酸化物を主成分とするコア粒子と、当該コア粒子の表面上に形成
され、上記第一の複合酸化物とは異なる第二の複合酸化物を主成分とするシェル相と、を
有する。すなわち、本発明の製造方法により得られる誘電体セラミックス粒子は、コア粒
子と、当該コア粒子の表面を被覆するシェル相と、を有するコア−シェル構造体である。
ここで、コア−シェル構造体であることは、STEM−EDS分析やSEM観察により確
認することができる。特に、STEM−EDS分析により、元素分布を測定することによ
り、より明確に確認することができる。
コア粒子は、その表面の全体がシェル相で被覆されていると好ましいが、表面の一部が
露出していてもよい。詳細には、コア粒子の表面の50面積%以上をシェル相が占めてい
れば、コア粒子がシェル相によって「被覆されている」ことを示す。なお、具体的な被覆
率の測定方法は、実施例に記載の方法による。
好ましい実施形態において、コア粒子の表面の50面積%以上がシェル相で被覆されて
いると好ましく、より好ましくは60面積%以上、さらに好ましくは70面積%以上、特
に好ましくは80面積%以上、最も好ましくは90面積%以上がシェル相で被覆されてい
ると好ましい。
また、誘電体セラミックス粒子の粒径(コア粒子上にシェル相が形成された状態の粒径
)は、特に制限されないが、50nm〜1μmであると好ましく、80〜450nmであ
るとより好ましく、100〜400nmであると特に好ましい。
(コア粒子)
誘電体セラミックス粒子に含まれるコア粒子は、上記≪誘電体セラミックス粒子(誘電
体セラミックス)の製造方法≫中の(1)混合工程の節において説明したとおりであるた
め、詳細な説明は省略する。
(シェル相)
シェル相は、第二の複合酸化物を主成分とし、上記コア粒子の表面を被覆するように形
成されている。
「第二の複合酸化物を主成分とする」の用語の定義は上述の通りであって、製造上含ま
れてしまう不純成分がシェル相中に微量含まれていても良い。不純成分としては、第二の
複合酸化物を構成する元素以外の元素、すなわち、カリウム、ナトリウム、アルミニウム
、カルシウム、ニオブ、鉄、鉛などの金属由来成分、ガラス成分および炭化水素系の有機
成分、表面吸着水などが挙げられる。
シェル相は、シェル相の全量に対して、第二の複合酸化物を93質量%以上含んでいる
と好ましく、95質量%以上含んでいるとより好ましく、98質量%以上含んでいると特
に好ましい。一方、その上限は特に制限されないが、実質的には100質量%である。第
二の複合酸化物の含有量が多いほど、コア粒子を構成する第一の複合酸化物と相互作用し
やすくなり、各種物性値の向上に寄与するため、好ましい。
上述したように、シェル相を構成する第二の複合酸化物は、25℃における結晶構造が
、ペロブスカイト型であるものであると好ましい。コア粒子を構成する第一の複合酸化物
がペロブスカイト構造をとるため、同じ結晶構造を有するコア粒子およびシェル相を形成
することにより、第一の複合酸化物と第二の複合酸化物とが界面において相互作用しやす
くなり、得られる誘電体セラミックス粒子の各種物性を向上させやすくなる。
ここで、シェル相を構成する第二の複合酸化物の含有量比率(モル比)は、第一の複合
酸化物を主成分とするコア粒子を被覆することができる限りにおいて、特に制限はないが
、シェル相を構成する第二の複合酸化物が、コア粒子を構成する第一の複合酸化物に対し
て、等モル量であるか、または少ないモル比で含有されていると好ましい。すなわち、コ
ア粒子を構成する第一の複合酸化物(M)に対する、シェル相を構成する第二の複合酸
化物(M)の含有モル比(M/M)は、1以下であると好ましい。より好ましくは
0.75以下、特に好ましくは0.5以下である。
シェル相を構成する第二の複合酸化物は、第一の複合酸化物と相互作用することにより
、比誘電率やDCバイアス特性等の各種物性を改善することができる。しかしながら、そ
の一方で、複合酸化物自体は比誘電率等の各種物性値が比較的低いものがあるため、第二
の複合酸化物量を多くしてしまうと、誘電体セラミックス粒子全体としての物性が低下す
る可能性がある。したがって、第一の複合酸化物の含有量に対する第二の複合酸化物の含
有量を少なくして上記範囲とすることにより、誘電体セラミックス粒子全体としての物性
値の低下を抑制することができる。
一方、コア粒子を構成する第一の複合酸化物に対する、シェル相を構成する第二の複合
酸化物の含有モル比(M/M)の下限は特に制限されないが、シェル相の被覆による
各種物性の向上効果を十分に得るため、M/Mは、0.005以上であると好ましく
、0.1以上であるとより好ましく、0.2以上であると特に好ましい。
なお、シェル相を構成する第二の複合酸化物として、複合酸化物を二種類以上用いる場
合は、すべての複合酸化物の和が、第一の複合酸化物に対して上記範囲内であると好まし
い。
(コア粒子およびシェル相の組み合わせ)
本発明に係る製造方法によって得られる誘電体セラミックス粒子を構成するコア粒子(
第一の複合酸化物)およびシェル相(第二の複合酸化物)の組み合わせは、第一の複合酸
化物と第二の複合酸化物とが互いに組成の異なるものであれば、特に制限されない。本発
明の製造方法によれば、互いに組成の異なる複合酸化物を含むコア−シェル構造体を安価
かつ簡便に得ることができる。
得られる誘電体セラミックス粒子の物性を考慮すると、誘電体セラミックス粒子が示す
各種物性(比誘電率、DCバイアス特性等)のうち、少なくとも一種について、コア粒子
単独のものよりも向上するようなコア粒子(第一の複合酸化物)およびシェル相(第二の
複合酸化物)の組み合わせであると好ましい。具体的には、第一の複合酸化物および第二
の複合酸化物は、同軸方向の格子定数が、互いに異なる組み合わせであると好ましい。
このような組み合わせとして、例えば、以下の表1のような組み合わせが挙げられるが
、これらに限定されるものではない。なお、表1では、好ましい組み合わせのコア−シェ
ル構造体を製造するために用いられる原料化合物(コア粒子およびシェル相の原料化合物
)も併せて示す。
≪誘電体セラミックス≫
本発明の第二の形態は、上記方法により製造される誘電体セラミックス粒子を含む、誘
電体セラミックスを提供する。
誘電体セラミックスは、上記方法により製造される誘電体セラミックス粒子を含むもの
であれば、その形態は限定されるものではないが、上記方法により製造される誘電体セラ
ミックス粒子の集合体であると好ましく、たとえば、球状物、板状物、ペレット、シート
状、またはこれらの混合物の形態をとることができる。上記集合体の製造方法は、特に制
限されず、公知のものを用いることができる。例えば、本発明の方法により得られた誘電
体セラミックス粒子を、適当なバインダーを用いてプレス成型することにより集合体を製
造することができる。
このとき使用可能なバインダーの例としては、PVA(ポリビニルアルコール)、PV
B(ポリビニルブチラール)、アクリル系樹脂が挙げられる。添加するバインダーの量は
、特に制限されず、誘電体セラミックス粒子の質量に対して、0.01質量%〜20質量
%であると好ましく、成型体の密度を向上させるという観点から、0.5質量%〜15質
量%であるとより好ましい。
上記バインダーを用いて成型した後は、脱バインダー処理を行う。当該脱バインダー処
理は、成型体を300〜800℃に加熱することにより行われると好ましく、より好まし
くは、400〜600℃である。
上記のように、本発明に係る製造方法によれば、粉体の形態である誘電体セラミックス
粒子を製造することができるため、種々の集合体に幅広く適用可能であり、加工性に優れ
る誘電体セラミックス粒子を得ることができる。
≪誘電体セラミックスの用途≫
上記誘電体セラミックスの用途は、特に制限されないが、比誘電率(ε)やDCバイア
ス特性に優れるものを製造可能であるため、パワーデバイス基板用コンデンサや、電源基
板用コンデンサ等に好適に用いることができる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術
的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
≪誘電体セラミックスの製造≫
[実施例1]
(混合工程)
コア粒子の原料としての粒径100nmのチタン酸バリウム(BT:BaTiO
名T−BTO−100RK:戸田工業株式会社)と、シェル相の原料としての粒径約10
nm(コア粒子の粒径に対して10%の大きさ)の酸化ジルコニウム(ZrO 品名U
EP−100:第一稀元素化学工業株式会社)とをモル比でZrO:BT=0.25:
1.00となるように計量し、乳鉢と乳棒とを使用して25℃で5分間混合し、混合粉末
を得た。この混合粉末を、メカノフュージョン装置(ホソカワミクロン株式会社製 製品
名 ノビルタ NOB−MINI、インナーピースと回転容器の内壁との間隔 1mm、
以下同じ。)を使用して、3000rpm(1.88×10rad/s)、25℃の条
件で3分間、乾式混合処理を行った。
(合成工程:水熱合成処理工程)
乾式混合処理(混合工程)後の粉末24.5gを100mLのオートクレーブ容器(三
愛科学株式会社製:HU−100)に入れ、9.4gの水酸化バリウム8水和物(Ba(
OH)・8HO:キシダ化学株式会社)を添加し(混合粉末中のZrOに対してモ
ル比で1.2倍量)、40mLの純水を添加した後、乾燥オーブン器にて230℃×18
時間の条件で水熱合成処理を行った。
(後処理工程)
水熱反応(合成工程:水熱合成処理工程)後、溶液と粉末とを分離するため、ろ過し、
原料に含まれるバリウムイオンと、大気中の二酸化炭素との反応により生じる炭酸バリウ
ムを除去するため、約80℃の温水で湯洗した。その後、粉末を100℃に設定した乾燥
機にて、大気雰囲気下、一昼夜乾燥した。乾燥粉末を乳鉢と乳棒とで粗砕し、誘電体セラ
ミックス粒子(1)を得た。
[実施例2]
混合工程において使用したチタン酸バリウム粒子を、粒径150nmのチタン酸バリウ
ム(BT:BaTiO 品名T−BTO−155RK:戸田工業株式会社)に変更した
こと以外は、実施例1と同様にして誘電体セラミックス粒子(2)を得た。なお、このと
き、コア粒子の粒径に対する酸化ジルコニウム粒子の大きさは6.7%である。
[実施例3]
混合工程において使用したチタン酸バリウム粒子を、粒径200nmのチタン酸バリウ
ム(BT:BaTiO 品名T−BTO−200:戸田工業株式会社)に変更したこと
以外は、実施例1と同様にして誘電体セラミックス粒子(3)を得た。なお、このとき、
コア粒子の粒径に対する酸化ジルコニウム粒子の大きさは5%である。
[実施例4]
混合工程において使用したチタン酸バリウムを、粒径300nmのチタン酸バリウム(
BT:BaTiO 品名T−BTO−300:戸田工業株式会社)に変更したこと以外
は、実施例1と同様にして誘電体セラミックス粒子(4)を得た。なお、このとき、コア
粒子の粒径に対する酸化ジルコニウム粒子の大きさは3.3%である。
[実施例5]
合成工程において、水熱合成処理に代わり、エタノールを用いたソルボサーマル合成処
理とした(純水の代わりにエタノールと純水との混合溶媒を溶媒として用いた)こと以外
は、実施例3と同様にして誘電体セラミックス粒子(5)を得た。なお、ソルボサーマル
合成処理において、純水4mLおよびエタノール36mLを混合した混合溶媒を用い、加
熱温度および加熱時間は実施例1と同様とした。
[実施例6]
ソルボサーマル合成処理において、混合溶媒の混合比率を以下のように変更したこと以
外は、実施例5と同様にして誘電体セラミックス粒子(6)を得た。混合溶媒は、純水2
0mLおよびエタノール20mLを混合して用いた。
[実施例7]
メカノフュージョン装置(ホソカワミクロン株式会社製 NOB−MIN)を使用しタ
混合を、2000rpm(1.26×10rad/s)の条件で3分間、乾式混合処理
を行ったこと以外は、実施例3と同様にして誘電体セラミックス粒子(7)を得た。
[実施例8]
メカノフュージョン装置(ホソカワミクロン株式会社製 NOB−MIN)を使用しタ
混合を、1000rpm(6.28×10rad/s)の条件で3分間、乾式混合処理
を行ったこと以外は、実施例3と同様にして誘電体セラミックス粒子(8)を得た。
[実施例9]
混合工程において使用したチタン酸バリウム粒子を、粒径300nmのチタン酸ストロ
ンチウム(ST:SrTiO 品名ST−03:堺化学工業株式会社)に変更したこと
以外は、実施例1と同様にして誘電体セラミックス粒子(9)を得た。なお、このとき、
コア粒子の粒径に対する酸化ジルコニウム粒子の大きさは3.3%である。
[実施例10]
(混合工程)
コア粒子の原料としての粒径300nmのジルコン酸バリウム(BZ:BaZrO
品名BZ−03:堺化学工業株式会社)と、シェル相の原料としての粒径約70nm(コ
ア粒子の粒径に対して23%の大きさ)の酸化チタン(TiO 品名PT−401M:
石原産業株式会社)とをモル比でTiO:BZ=0.25:1.00となるように計量
し、乳鉢と乳棒とを使用して25℃で5分間混合し、混合粉末を得た。この混合粉末を、
メカノフュージョン装置(ホソカワミクロン株式会社製 NOB−MIN)を使用して、
3000rpm(1.88×10rad/s)、25℃の条件で3分間、乾式混合処理
を行った。
(合成工程:水熱合成処理工程)
乾式混合処理(混合工程)後の粉末27.7gを100mLのオートクレーブ容器(三
愛科学株式会社製:HU−100)に入れ、5.7gの水酸化バリウム8水和物(Ba(
OH)・8HO:キシダ化学株式会社)を添加し(混合粉末中のTiOに対してモ
ル比で1.2倍量)、40mLの純水を添加した後、乾燥オーブン器にて180℃×18
時間の条件で水熱合成処理を行った。
(後処理工程)
実施例1と同様に後処理工程を行い、誘電体セラミックス粒子(10)を得た。
[実施例11]
(混合工程)
コア粒子の原料としての粒径300nmのチタン酸ストロンチウム(ST:SrTiO
品名ST−03:堺化学工業株式会社)と、シェル相の原料としての粒径約70nm
の酸化チタン(コア粒子の粒径に対して23%の大きさ)(TiO 品名PT−401
M:石原産業株式会社)とをモル比でTiO:ST=0.25:1.00となるように
計量し、乳鉢と乳棒とを使用して25℃で5分間混合し、混合粉末を得た。この混合粉末
を、メカノフュージョン装置(ホソカワミクロン株式会社製 NOB−MIN)を使用し
て、3000rpm(1.88×10rad/s)、25℃の条件で3分間、乾式混合
処理を行った。
(合成工程:水熱合成処理工程)
乾式混合処理(混合工程)後の粉末16.3gを100mLのオートクレーブ容器(三
愛科学株式会社製:HU−100)に入れ、7.6gの水酸化バリウム8水和物(Ba(
OH)・8HO:キシダ化学株式会社)を添加し(混合粉末中のTiOに対してモ
ル比で1.2倍量)、40mLの純水を添加した後、乾燥オーブン器にて180℃×18
時間の条件で水熱合成処理を行った。
(後処理工程)
実施例1と同様に後処理工程を行い、誘電体セラミックス粒子(11)を得た。
[比較例1]
混合工程において、メカノフュージョン装置による混合を行わなかった以外は、実施例
3と同様にして比較誘電体セラミックス粒子(1)を得た。
[比較例2]
混合工程において、メカノフュージョン装置による混合を行わなかった以外は、実施例
4と同様にして比較誘電体セラミックス粒子(2)を得た。
上記実施例および比較例の処方等を下記の表2に示す。なお、表中の「−」は、シェル
相が形成しなかったことを示す。
≪評価≫
上記実施例および比較例で得られた誘電体セラミックスについて、以下の通り、評価し
た。
[STEM−EDS分析]
上記実施例で得られた誘電体セラミックス粒子について、FE−STEM−EDS分析
を行った。なお、測定は、日本電子株式会社 JM2800を用いて行った。一例として
、実施例1による誘電体セラミックス粒子(1)に関し、得られたSTEM像を図1Aに
示す。なお、図1B〜1Eには、図1Aと同一視野で測定したBa、Ti、Zr、および
Ba+Ti+Zrのマッピングデータをそれぞれ示す。
その結果、誘電体セラミックス粒子(1)において、チタン酸バリウム粒子(コア粒子
)の表面に、ジルコン酸バリウムからなるシェル相が均一に形成されている(コーティン
グされている)ことが確認された。
また、他の実施例による誘電体セラミックス粒子においても、上記のようなコア−シェ
ル構造が、同様に形成されていることをSTEM−EDS分析により確認した。
[SEM観察]
上記実施例および比較例において原料として用いたコア粒子を構成する粒子(チタン酸
バリウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム)について、SEM分析を行っ
た。また、上記実施例および比較例で得られた誘電体セラミックス粒子(1)〜(11)
および比較誘電体セラミックス粒子(1)〜(2)について、SEM分析を行った。なお
、測定は、日本電子株式会社 JSM−7800Fを用いて行った。得られたSEM像を
図2A〜図14に示す。図中、「反応前」とは、乾式混合処理前、「反応後」とは、水熱
合成処理後またはソルボサーマル合成処理後を示す。
その結果、実施例に係る誘電体セラミックス粒子(1)〜(11)では、コア粒子の表
面上に均一にシェル相が形成していることが確認された。SEM像中、実施例で得られた
誘電体セラミックス粒子(1)〜(11)は、非常に微細な粒子(シェル相を構成する複
合酸化物粒子)がコア粒子上に均一に分布しており、シェル相によってコア粒子の表面が
ほぼ完全に被覆されている様子が示されている。一方で、比較誘電体セラミックス粒子(
1)〜(2)では、コア粒子(チタン酸バリウム粒子)の表面上にジルコン酸バリウム粒
子が偏析(偏在)しており、コア−シェル構造は確認されなかった。これは、比較例の条
件による乾式混合処理では、シェル相の原料となる酸化ジルコニウムが、十分にコア粒子
を被覆することができなかったため、ろ過、水洗処理にてBaZrO(ジルコン酸バリ
ウム)が抜け落ちたものと考えられる。
[XRD測定]
上記実施例および比較例で得られた誘電体セラミックス粒子(1)〜(11)および比
較誘電体セラミックス粒子(1)〜(2)について、XRD測定を行った。測定は、X線
回折装置(PANalytical、RAYONS Xを用いて行い、線源はCu−Kα、電圧45kV、電
流40mAとした。得られた結果から、2θが20〜80°の領域に観測されたピークに
ついて、図15〜図21に示す。
その結果、実施例で得られた誘電体セラミックス粒子(1)〜(11)において、コア
粒子(チタン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム)だけでなく、
シェル相(ジルコン酸バリウム、チタン酸バリウム)の形成を示すピークが観測された。
比較例で得られた比較誘電体セラミックス粒子(1)〜(2)については、実施例と比較
して、BaZrO(ジルコン酸バリウム)ピークが極めて小さくなっていたことから、
上述した通り、シェル相によって十分にコア粒子を被覆することができなかったため、ろ
過、水洗処理にてBaZrO(ジルコン酸バリウム)が抜け落ちたものと考えられる。
[被覆率の測定]
被覆率は、以下のようにして算出した。まず、誘電体セラミックス粒子のSEM写真を
拡大し、視野内の粒子について、シェル相によって被覆されている粒子と被覆されていな
い粒子とを数え、割合を算出した。次いで、被覆されている粒子に関しては、SEM像か
ら面積を計算し、その被覆率を算出した。このとき、SEMの拡大倍率は、コア粒子の大
きさ(粒径)に依存して適宜決定すればよい(なお、参考までに、実施例1および2は7
万倍、実施例3〜8は5万倍、実施例9〜11は3万倍、比較例1および2は5万倍とし
た)。結果を表2に示す。なお、シェル相によるコア粒子の被覆率は、コア粒子と、シェ
ル相を構成する第二の複合酸化物の原料化合物とを混合したときの上記原料化合物による
被覆率と略同一の値を示す。よって、誘電体セラミックス粒子におけるシェル相による被
覆率を測定することにより、上記原料化合物によるコア粒子の被覆率を算出することがで
きる。

Claims (3)

  1. 25℃でペロブスカイト構造を有する第一の複合酸化物を主成分とするコア粒子と、
    前記コア粒子の表面上にコーティングされ、前記第一の複合酸化物とは異なる第二の複合酸化物を主成分とするシェル相と、
    を有する誘電体セラミックス粒子の集合体からなり、
    誘電体セラミックス粒子の粒径は80〜450nmである、誘電体セラミックス。
  2. 前記第二の複合酸化物は、ジルコン酸バリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、ニオブ酸カリウムまたはニオブ酸ナトリウムである、請求項1に記載の誘電体セラミックス。
  3. 前記第一の複合酸化物は、チタン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、ニオブ酸カリウムまたはニオブ酸ナトリウムである、請求項1または2に記載の誘電体セラミックス。
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