(第1実施形態)
以下、電力変換装置をハイブリッド車に適用した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施形態にかかる電力変換装置の電気的構成を示す。モータジェネレータ10は、駆動輪や内燃機関に機械的に連結されている。モータジェネレータ10は、インバータ装置INVに接続されている。インバータ装置INV(電力変換回路)は、直流電源12の出力電圧を入力電圧とし、直流電力を交流電力に変換するものである。ここで、直流電源12は、端子電圧がたとえば100V以上の高電圧となる高電圧バッテリである。なお、直流電源は、昇降圧コンバータなどであってもよい。
インバータ装置INVは、高電圧側のスイッチング素子SWp1〜SWp3(上アームスイッチ)及び低電圧側のスイッチング素子SWn1〜SWn3(下アームスイッチ)の直列接続体が3つ並列接続されて構成されている。そして、これら各スイッチング素子SWp1〜SWp3、及び、スイッチング素子SWn1〜SWn3の接続点が、モータジェネレータ10の各相にそれぞれ接続されている。
また、上記高電圧側のスイッチング素子SWp1〜SWp3及び低電圧側のスイッチング素子SWn1〜SWn3のそれぞれの入出力端子間(コレクタ及びエミッタ間)には、高電圧側のフリーホイールダイオードFDp1〜3及び低電圧側のフリーホイールダイオードFDn1〜3のカソード及びアノードが接続されている。
コンデンサCAは、上アームスイッチSWp1〜SWp3のコレクタ(高電圧側端子)と、下アームスイッチSWn1〜SWn3のエミッタ(低電圧側端子)とに接続され、その両端子間の電圧を平滑化する平滑コンデンサである。
なお、上記インバータ装置INVを構成する半導体スイッチSW(SWp1〜SWp3,SWn1〜SWn3)は、いずれもパワー半導体であり、より具体的には、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)である。
制御装置40は、マイクロコンピュータであって、インバータ装置INVを操作することで、モータジェネレータ10の制御量を制御するためのデジタル処理手段である。詳しくは、制御装置40は、後述する絶縁手段としての磁気カプラMp1〜Mp3,Mn1〜Mn3を備えるインターフェース42を介して、インバータ装置INVの各スイッチSWに操作信号を出力することで、インバータ装置INVを操作する。
より具体的には、制御装置40はインターフェース42を介して各スイッチSWの制御端子(ゲート)に対して駆動信号を入力する駆動回路Dp1〜Dp3,Dn1〜Dn3に操作信号を出力する。ここで、インターフェース42に絶縁手段を備えるのは、インバータ装置INVや直流電源12を備える高電圧システムと、制御装置40を備える低電圧システムとを絶縁するためである。
スイッチSWp1〜SWp3,SWn1〜SWn3のエミッタはそれぞれ絶縁されており、それぞれ異なる基準電位に接続されている。また、駆動回路Dp1〜Dp3,Dn1〜Dn3は、駆動対象のスイッチSWp1〜SWp3,SWn1〜SWn3のエミッタに接続されている。駆動回路Dp1〜Dp3,Dn1〜Dn3は、駆動対象のスイッチSWp1〜SWp3,SWn1〜SWn3のエミッタの電位を基準電位として、駆動対象のスイッチSWp1〜SWp3,SWn1〜SWn3のゲートに電圧を印加する。
図2に、本実施形態にかかるインバータ装置INVが実装される回路基板50を示す。図示される回路基板50は、インバータ装置INVに接続される高電圧回路領域HVと、低電圧回路領域LVとの双方を有する。ここで、基本的には、図中、右側(上アームスイッチSWp3に対し、上アームスイッチSWp2が設けられている方向と逆の方向)の領域が低電圧回路領域LVであり、中央及び左側(上アームスイッチSWp3に対し、上アームスイッチSWp2が設けられている方向)の領域が高電圧回路領域HVである。ただし、高電圧回路領域HV内には、磁気カプラMp1〜Mp3,Mn1〜Mn3のように、低電圧システムと高電圧システムとの双方を構成する部品も混在している。
また、インバータ装置INVを構成する各スイッチSWの駆動回路Dp1〜Dp3,Dn1〜Dn3の電源回路を構成するフライバックコンバータ用の電解コンデンサ(図示略)は、低電圧システムを構成するものとして、図中右側の低電圧回路領域LVに配置されている。また、駆動回路Dp1〜Dp3,Dn1〜Dn3の電源回路を構成するフライバックコンバータ用のトランス(図示略)の1次巻線側は低電圧システムを構成するものとして低電圧回路領域LVに配置され、2次巻線側は高電圧システムを構成するものとして高電圧回路領域HVに配置されている。
図3に示すように、上記インバータ装置INVを構成する各スイッチSWは、回路基板50の裏面(図2に示された面の裏面)側から回路基板50に差し込まれて接続されている。ここで、各スイッチSWは、他の素子とともに絶縁材料で被覆されてパワーカードPWC(モジュール)を構成している。パワーカードPWCには、フリーホイールダイオードFDや感温ダイオードSDも収納されているが、図3では、フリーホイールダイオードFDの記載を省略している。
パワーカードPWCは、高電圧側のスイッチSWpが収納されたものと、低電圧側のスイッチSWnが収納されたものとで互いに同一構造である。パワーカードPWCは、絶縁材料から外部へ露出した複数の信号端子を有する。具体的には、スイッチSWのゲート端子G、エミッタ検出端子KE、センス端子SE、感温ダイオードSDのアノードAおよびカソードKの各端子が、回路基板50に挿入され接続されている。ここで、エミッタ検出端子KEは、スイッチSWのエミッタEに接続され、エミッタEと同電圧の電極である。コレクタ検出端子KCは、スイッチSWのコレクタに接続され、コレクタと同電圧の電極である。センス端子SEは、スイッチSWを流れる電流と相関を有する微小電流を出力するための端子である。
図2に示すように、スイッチSWは、高電圧システムを構成するものであるため、これら各スイッチSWを他の回路と絶縁すべく、回路基板50には、絶縁領域IAが設けられている。絶縁領域IAは、回路(素子や配線や電源パターン)が配置されない領域である。
図中上の列には、上アームスイッチSWp1〜SWp3を備えるパワーカードPWCの端子が示されており、これらは互いに絶縁領域IAによって隔離されている。そして、絶縁領域IAによって囲まれた領域に上アームスイッチSWp1〜SWp3を駆動する駆動回路Dp1〜Dp3が実装されている。これは、各上アームスイッチSWp1〜SWp3同士のエミッタ検出端子KEの電圧が、対応する下アームスイッチSWn1〜SWn3がオン状態であるかオフ状態であるかに応じて、大きく変動するからである。このため、これらの駆動回路Dp1〜Dp3の動作電圧自体は小さいとはいえ、駆動回路Dp1〜Dp3同士を絶縁する必要が生じる。上記絶縁領域IAの幅は、法規による要請や、絶縁破壊等を回避する観点から定められる。
また、図中下の列には、下アームスイッチSWn1〜SWn3を備えるパワーカードPWCの端子が示されている。これら下アームスイッチSWn1〜SWn3に対応するエミッタ検出端子KEの電圧が近いため、これらの間に絶縁領域IAが設けられていない。駆動回路Dn1〜Dn3の構成部品の動作電圧自体は、必ずしも低電圧回路領域LV内の部品と比較して大きいわけではない。このため、これら下アームスイッチSWn1〜SWn3の駆動回路Dn1〜Dn3同士は、回路基板50上において必ずしも絶縁領域IAを設ける必要がない。
しかしながら、駆動回路Dn1〜Dn3の基準電位(対応するスイッチSWn1〜SWn3のエミッタの電位)は、インバータ装置INVの動作中において、スイッチSWn1〜SWn3のエミッタ間の抵抗成分及び誘導成分により互いに異なるものである。このため、駆動回路Dn1〜Dn3の間において、絶縁領域IAは設けられていないものの、駆動回路Dn1〜Dn3同士は絶縁されている。
駆動回路Dp1〜Dp3,Dn1〜Dn3(以下、駆動回路Dとも記載する)は、対応するスイッチSWのゲート端子G、エミッタ検出端子KEに接続されて、スイッチSWのゲート端子Gに電圧を印加することで、スイッチSWを駆動する。
さらに、本実施形態の駆動回路Dは、対応するスイッチSWのセンス端子SE、並びに、感温ダイオードSDのアノードA及びカソードKに接続される。そして、駆動回路Dは、センス端子SEの電圧値に基づいて、スイッチSWに流れる電流を検出する。また、駆動回路Dは、感温ダイオードSDのアノードAとカソードKとの間の電圧に基づいて、スイッチSWの温度を検出する。また、駆動回路Dは、スイッチSWに流れる電流の検出値、及び、スイッチSWの温度の検出値に基づいて、スイッチSWの異常を判定する。そして、駆動回路Dは、スイッチSWの温度情報及び異常情報を制御装置40に送信する。
図4に本実施形態における駆動回路Da,Dbと、制御装置40との接続を表す概略図を示す。ここで、第1駆動回路Daは、駆動回路Dp1〜Dp3,Dn1〜Dn3の任意のものであり、例えば、駆動回路Dp1である。また、第2駆動回路Dbは、第1駆動回路Da以外の駆動回路Dp1〜Dp3,Dn1〜Dn3の任意のものであり、例えば、駆動回路Dp2である。
駆動回路Da,Dbは、それぞれ、温度情報送信部21(第1送信部)と、異常情報送信部22(第2送信部)とを備えている。ここで、インバータ装置INVに用いるスイッチSWp1〜SWp3,SWn1〜SWn3において、各スイッチSWp1〜SWp3,SWn1〜SWn3の温度は、ほぼ同一であるとみなすことができる。このため、制御装置40は、第1駆動回路Da(第1送信回路)と同一の基準電位に接続されたスイッチSWの温度情報のみを取得する構成としている。このため、第2駆動回路Db(第2送信回路)の温度情報送信部21は、無効化されている。具体的には、駆動回路Dbの温度情報送信部21の出力端子P1は、他の素子と接続されず、フロート状態とされている。
第1駆動回路Daの温度情報送信部21の出力(出力端子P1)と、第1駆動回路Daの異常情報送信部22の出力(出力端子P2)とは、論理和をとられた上で、磁気カプラMaに接続されている。ここで、温度情報送信部21の出力端子P1、及び、異常情報送信部22の出力端子P2は、ともにオープンドレイン出力であるため、接続点P3で結線されるとともに、プルアップ抵抗R1に接続されることで、ワイヤードオアとされている。また、第2駆動回路Dbの異常情報送信部の出力端子P2は、プルアップ抵抗R2に接続された後、磁気カプラMbに接続されている。
ここで、磁気カプラMa,Mbは、絶縁素子の一種である。絶縁素子とは、絶縁素子の受信側と送信側とを絶縁した上で、受信側の素子から受信した信号を送信側の素子に対して送信する素子である。具体的には、磁気カプラMaが第1駆動回路Daから受信した信号を制御装置40に対して送信する場合に、磁気カプラMaが受信側の素子に該当し、制御装置40が送信側の素子に該当する。磁気カプラは、受信側と送信側とを磁気結合させることで、絶縁素子の受信側と送信側とを絶縁した上で、受信側の素子から受信した信号を送信側の素子に対して送信する。例えば、磁気カプラは、受信側と送信側とを磁気結合させる素子として、受信側に設けられた受信コイルと送信側に設けられた送信コイルとを有する。磁気カプラは、受信コイルに電流(信号)を流すことで磁界を変化させ、送信コイルに流れる電流又は電圧を変化させる。これにより、受信側の素子から受信した信号を送信側の素子に対して送信する。また、例えば、磁気カプラは、受信側と送信側とを磁気結合させる素子として、受信側に設けられた受信コイルと送信側に設けられた磁気抵抗効果素子とを有する。磁気カプラは、受信コイルに電流(信号)を流すことで磁界を変化させ、磁気抵抗効果素子の抵抗を変化させて送信側の電流又は電圧を変化させる。これにより、受信側の素子から受信した信号を送信側の素子に対して送信する。
磁気カプラMa,Mb(第1絶縁素子)はオープンドレイン出力の絶縁素子である。磁気カプラMaは、第1駆動回路Daから入力された信号を出力端子P4から出力し、磁気カプラMbは、第2駆動回路Dbから入力された信号を出力端子P5から出力する。磁気カプラMaの出力信号及び磁気カプラMbの出力信号は、論理和がとられた上で、制御装置40に入力される。具体的には、磁気カプラMaの出力端子P4、及び、磁気カプラMbの出力端子P5は、ともに接続点P6に接続されるとともに、プルアップ抵抗R3に接続されることで、ワイヤードオアにより論理和がとられ、制御装置40に入力される。
また、磁気カプラMaの出力信号及び磁気カプラMbの出力信号は、論理和がとられた上で、ハイインピーダンスの素子であるバッファ43に入力される。バッファ43の出力信号は、ローパスフィルタ44を介して制御装置40に入力される。
本実施形態の制御装置40は、インバータ装置INVの出力電圧Voutを検出し、その検出値に基づいて、駆動回路DによるスイッチSWの駆動速度(スイッチング速度)を変化させる。これにより、スイッチSWに過剰な電圧が印加されることを抑制しつつ、スイッチSWにおける電力損失を抑制させることができる。
制御装置40は、駆動回路Da,Dbに対し、磁気カプラMc,Md(第2絶縁素子)を介して、スイッチング速度を指令する速度信号を出力する。駆動回路Da,Dbに対して入力される速度信号は共通のものである。制御装置40から出力される速度信号は、磁気カプラMcの端子P7に入力され、磁気カプラMcの端子P8からオープンドレイン出力で第1駆動回路Daの端子CLKに入力される。また、制御装置40から出力される速度信号は、磁気カプラMdの端子P9に入力され、磁気カプラMcの端子P10からオープンドレイン出力で第2駆動回路Dbの端子CLKに入力される。なお、駆動回路Da,Dbの端子CLKは、プルアップ抵抗R4,R5によってプルアップされている。なお、駆動回路Da,Dbには、速度信号に加えて、制御装置40からスイッチSWのオン・オフを指令する信号が入力される(図示略)。
図4では、説明の便宜上、磁気カプラMa,Mcを別体として記載しているが、磁気カプラMa,Mcは、同一のパッケージに封止されている。磁気カプラMb,Mdも同様に、同一のパッケージに封止されている。なお、図4に示す磁気カプラMa,Mcが封止されたパッケージが、図2に示す磁気カプラMp1〜Mp3,Mn1〜Mn3のうちの一つに相当する。
ここで、本実施形態の駆動回路Dは、温度情報を表す信号、及び、異常情報を表す信号を速度信号に同期して出力する構成としている。さらに、制御装置40と複数の駆動回路Dとの間で、速度信号(クロック信号)に同期して通信を行う構成としている。即ち、駆動回路Dは、速度信号を同期信号として用いる。例えば、SPIプロトコル(Serial Periphelal Interface)を用いた通信を行うことができる(SPIは、登録商標)。
図5に速度信号、温度情報信号、異常情報信号、及び、制御装置40の入力信号の時間変化を表すタイミングチャートを示す。
速度信号として、所定周期ごとに、その所定周期より短いパルスが出力される。図5の時刻T10〜T12が所定周期に相当する。制御装置40は、速度信号の周期の逆数が、スイッチSWのスイッチング速度となるように、速度信号を生成する。なお、制御装置40は、速度信号の周期の逆数の定数倍がスイッチング速度となるように速度信号を生成するものであってもよい。駆動回路Da,Dbは、速度信号に応じたスイッチング速度で、スイッチSWを駆動する。
駆動回路Dの温度情報送信部21は、速度信号に同期して温度情報を表すパルスを送信する。さらに、温度情報送信部21は、速度信号の周期に対するパルスの時比率(Duty)でスイッチSWの温度情報を送信する。具体的には、図5に示すようにスイッチSWの温度に相当する期間(時刻T10〜T11)にわたって、パルスが出力される。また、温度情報送信部21は、速度信号の2周期ごとに1のパルスを出力する。
駆動回路Dの異常情報送信部22は、速度信号に応じて、温度情報を表すパルスが出力されない期間において、異常情報を表す信号の出力を開始する。具体的には、図5に示すように、温度情報を表すパルスが出力されない期間(時刻T12〜T14)において、異常情報送信部22によって、スイッチSWに異常が生じていると判定されると、異常情報を表す信号の出力が開始される(図5の時刻T13)。異常情報送信部22は、スイッチSWに異常が生じていると判定されると、温度情報を表すパルスが出力される期間(時刻T14以降)においても、異常情報を表す信号の出力を継続する。
制御装置40は、温度情報を表す信号が出力されない期間(時刻T12〜T14)において、駆動回路Dから入力される信号に基づいて、スイッチSWに異常が生じているか否かを判断する。具体的には、制御装置40は、ローパスフィルタ44から入力される信号の電圧値に基づいて、速度信号の周期より長い期間にわたって、制御装置40への入力信号がロー(真)とされている場合に、スイッチSWに異常が生じていると判定する。
以下、駆動回路Dの温度情報送信部21によって設定される時比率の説明を行う。感温ダイオードSD(図3)には定電流回路が接続され、一定電流が流れるようになっている。駆動回路Dは、感温ダイオードSDのアノードA−カソードK間電圧、即ち、感温ダイオードSDの順方向降下電圧(アナログ値)を取得する。温度情報送信部21は、感温ダイオードSDの順方向降下電圧をPWM変調してデジタル信号である温度情報信号に変換し、これを制御装置40へ出力する。温度情報信号は、感温ダイオードSDの順方向降下電圧に応じた所定の時比率を有する。感温ダイオードSDの順方向降下電圧は、感温ダイオードSD、つまり、スイッチSWの温度に応じた値であるため、温度情報信号が有する時比率はスイッチSWの温度に応じた値となる。
例えば、温度情報送信部21は、スイッチSWが最低温度A℃(例えば、−50℃)、及び、A℃より低い場合の感温ダイオードSDの順方向降下電圧を0%の時比率の信号に変換する。また、温度情報送信部21は、スイッチSWが最高温度B℃(例えば、200℃)、及び、B℃より高い温度の場合の感温ダイオードSDの順方向降下電圧を100%の時比率の信号に変換する。そして、温度情報送信部21は、スイッチSWの温度TがA℃〜B℃の間である場合の感温ダイオードSDの順方向降下電圧を、(T−A)/(B−A)%の時比率の信号に変換する。なお、スイッチSWの最低温度A℃及び最高温度B℃は、スイッチSWが使用される環境に応じて設定される。また、上述した説明では、スイッチSWの温度Tに応じて時比率を線形的に変化させるものとしたが、これを変更し、非線形的に変化させるものとしてもよい。
図6に第1駆動回路Daに対応するスイッチング素子SWa、及び、第2駆動回路Dbに対応するスイッチング素子SWbが、それぞれ正常又は異常である場合に、回路の各部位における信号の状態を表す真理値表を示す。
スイッチング素子SWaが正常な場合、第1駆動回路Daの端子P1はスイッチング素子SWaの温度に応じた時比率で状態が変化し、第1駆動回路Daの端子P2はハイインピーダンス状態とされる。このため、スイッチング素子SWaが正常な場合、第1駆動回路Daに対応する接続点P3は、スイッチング素子SWaの温度に応じた時比率で状態が変化し、第1磁気カプラMaの出力信号は、スイッチング素子SWaの温度に応じた時比率で状態が変化する。
スイッチング素子SWaが異常な場合、第1駆動回路Daの端子P1はスイッチング素子SWaの温度に応じた時比率で状態が変化し、第1駆動回路Daの端子P2はロー状態とされる。このため、スイッチング素子SWaが異常な場合、第1駆動回路Daに対応する接続点P3は、ロー状態とされ、第1磁気カプラMaの出力信号はロー状態とされる。
スイッチング素子SWbが正常な場合、第2駆動回路Dbの端子P2はハイインピーダンス状態とされる。このため、第2磁気カプラMbの出力信号は、ハイインピーダンス状態とされる。
スイッチング素子SWbが異常な場合、第2駆動回路Dbの端子P2はロー状態とされる。このため、第2磁気カプラMbの出力信号は、ロー状態とされる。
よって、スイッチング素子SWa,SWbがともに正常である場合、制御装置40に入力される信号(接続点P6における信号)は、磁気カプラMaから出力される時比率で状態が変化する信号と、第2磁気カプラMbから出力されるハイインピーダンス状態の信号とが、ワイヤードオアにより論理和をとられるため、時比率で状態が変化する信号となる。
また、スイッチング素子SWaが異常であり、スイッチング素子SWbが正常である場合、制御装置40に入力される信号(接続点P6における信号)は、磁気カプラMaから出力される時比率で状態が変化する信号と、第2磁気カプラMbから出力されるロー状態の信号とが、ワイヤードオアにより論理和をとられるため、ロー状態の信号となる。
また、スイッチング素子SWaが正常であり、スイッチング素子SWbが異常である場合、制御装置40に入力される信号(接続点P6における信号)は、磁気カプラMaから出力されるロー状態の信号と、第2磁気カプラMbから出力されるハイインピーダンス状態の信号とが、ワイヤードオアにより論理和をとられるため、ロー状態の信号となる。
また、スイッチング素子SWa,SWbがともに異常である場合、制御装置40に入力される信号(接続点P6における信号)は、磁気カプラMaから出力されるロー状態の信号と、第2磁気カプラMbから出力されるロー状態の信号とが、ワイヤードオアにより論理和をとられるため、ロー状態の信号となる。
以下、本実施形態の効果を述べる。
電源回路に用いる複数の半導体スイッチング素子において、半導体スイッチング素子のそれぞれの温度は、ほぼ同一であるとみなすことができる。そこで、回路構成を簡略化するために、一つの半導体スイッチング素子の温度情報のみを制御装置40が取得する構成としてもよい。さらに、複数の半導体スイッチング素子の異常情報を制御装置40が取得する構成とする場合に、回路構成の簡略化のために、半導体スイッチング素子の異常情報を表す各信号の論理和をとり、その論理和を制御装置40に入力する構成が考えられる。
このような構成において、上記特許文献1に記載の方法を適用した構成を想定する。特許文献1では、半導体スイッチング素子における異常の発生と異常の終了を短いパルス信号で伝える構成としている。例えば、2つの半導体スイッチング素子において異なるタイミングで異常が生じると、制御装置40に対して短いパルス信号が2回入力されることになる。この場合、1つめの半導体スイッチング素子における異常を表す1回目の短いパルス信号が異常の発生と判定され、2つめの半導体スイッチング素子における異常を表す2回目の短いパルス信号が異常の終了と判定される。このため、2つの半導体スイッチング素子において異常が継続しているにも関わらず、異常が終了したと誤判定することになる。
インバータ装置INVに用いる複数のスイッチSWにおいて、各スイッチSWの温度は、ほぼ同一であるとみなすことができる。また、例えば、インバータ装置INVに用いる複数のスイッチSWのうち、最も温度が高くなるものの検出値を取得し、その検出値が所定値以下になるような制御を行えば、全てのスイッチSWについて、温度の過上昇を抑制できる。
そこで、制御装置40は、第1駆動回路Daと同一の基準電位に接続されたスイッチSWの温度のみを取得する構成としている。さらに、上記構成では、第1駆動回路Daに対応するスイッチSWの温度情報を表す信号と、第1駆動回路Da、及び、第2駆動回路Dbに対応するスイッチSWの異常情報を表す信号とが同一の経路(接続点P6)を介して出力される。複数の信号を同一の経路で出力する構成とすることで、回路構成を簡易化できる。
また、上記構成によれば、スイッチSWがそれぞれ速度信号に応じたスイッチング速度で駆動されることになる。このため、例えば、スイッチSWに過剰な電圧が印加されることを抑制しつつ、スイッチSWにおける電力損失を抑制させることが可能になる。さらに、同期用の信号として速度信号を用いることで、制御装置40と駆動回路Dとの接続に用いる絶縁素子の数を低減できる。即ち、回路構成を簡易化しつつ、異常情報の誤判定を抑制することが可能になる。
さらに、上記構成では、温度情報を表す信号と、異常情報を表す信号とを、速度情報と同期して出力するとともに、温度情報を表す信号が出力されない期間において、異常情報を表す信号の出力を開始する構成とした。これにより、制御装置40は、駆動回路Da,Dbから送信されてきた信号が、温度情報を表す情報なのか、異常情報を表す情報なのかを判断することが可能になる。また、同期用の信号として速度信号を用いることで、制御装置40と駆動回路Da,Dbとの接続に用いる磁気カプラMの数を低減できる。即ち、回路構成を簡易化しつつ、異常情報の誤判定を抑制することが可能になる。
第1駆動回路Daの温度情報送信部21の出力信号と、第1駆動回路Daの異常情報送信部22の出力信号とは、磁気カプラMaよりも第1駆動回路Da側で論理和がとられた上で、磁気カプラMaに出力されている。これにより、第1駆動回路Daと制御装置40との間に用いる磁気カプラMaの数を低減することができる。
磁気カプラMa,Mbは、オープンドレイン出力であって、第1駆動回路Daの出力信号と、第2駆動回路Dbの出力信号とは、磁気カプラMa,Mbよりも制御装置40側で、ワイヤードオアがとられることで論理和がとられた上で、制御装置40に出力されている。オープンドレイン出力の磁気カプラMa,Mbの出力を結線することで、簡易な構成により、論理和(ワイヤードオア)をとることができる。
(第2実施形態)
本実施形態の電気的構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態における駆動回路Da,Dbは、温度情報を表す信号と干渉しないように、異常情報を表す信号を出力する。具体的には、図7に示すように、時刻T20〜T22,時刻T24〜26の期間を、温度情報を表すパルスを出力する期間とし、温度情報を表すパルスが出力されない時刻T22〜T24の期間を、異常情報を表すパルスを出力する期間としている。これにより、温度情報を表す信号と、異常情報を表す信号とを、同一の経路で出力しつつ、制御装置40は、温度情報と異常情報との双方を取得することが可能になる。
(第3実施形態)
第1,2実施形態における駆動回路Dは、温度情報を表す信号、及び、異常情報を表す信号を制御装置40から受信した速度信号に同期して出力する。本実施形態では当該構成に代えて、駆動回路Dのそれぞれがクロック回路DC(内部発振回路)を有する構成とする。クロック回路DCは、振動子(例えば、水晶振動子やセラミック振動子)に対して電圧を印加することで、所定周期で出力されるパルス信号(クロック信号)を出力する回路である。
駆動回路Dは、その駆動回路Dが有する端子CLK(クロック信号入力端子)に対して周期的なパルス信号の入力がない場合、その駆動回路Dが有するクロック回路DCが出力するクロック信号に同期して、温度情報を表す信号、及び、異常情報を表す信号の出力を行う。また、駆動回路Dは、端子CLKに対して周期的なパルス信号の入力がある場合、その周期的なパルス信号に同期して、温度情報を表す信号、及び、異常情報を表す信号の出力を行う。詳しくは、本実施形態の駆動回路Dは、端子CLKに対して周期的なパルス信号の入力がある場合、その周期的なパルス信号の立ち上がりに同期して、温度情報を表す信号、及び、異常情報を表す信号の出力を行う。
つまり、駆動回路Dは、端子CLKに対する周期的なパルス信号の入力の有無によって、クロック回路DCから出力される同期信号に同期して信号を出力する状態(内部発振状態)と、端子CLKに入力される信号に同期して信号を出力する状態(クロック入力状態)とが切り替えられる。また、駆動回路Dの内部発振状態とクロック入力状態との切り替えは、例えば、駆動回路Dが有する所定端子をプルアップ又はプルダウンすることで行われてもよい。
図8に本実施形態における駆動回路Da,Dbと、制御装置40との接続を表す概略図を示す。図4に示す構成と同一の構成について同一の符号を付し、適宜説明を省略する。複数の駆動回路Dのうち一つの第1駆動回路Daは、内部発振状態とされ、第1駆動回路Daとは異なる第2駆動回路Dbは、クロック入力状態とされている。なお、制御システムは、複数の第2駆動回路Dbを備えるが、図8では、その一つ第2駆動回路Dbのみを表し他の第2駆動回路Dbは省略している。
第1駆動回路Daは、第1駆動回路Daが備えるクロック回路DCに同期して、温度情報信号と異常情報信号とを出力する。第1駆動回路Daが正常な場合、異常情報送信部22が出力する異常情報信号はハイインピーダンス状態とされるため、接続点P3の信号は、温度情報送信部21が出力する温度情報信号と同一になる。
第2駆動回路Dbのクロック信号入力端子CLKには、磁気カプラMdを介して、接続点P6の信号が入力される。駆動回路Da,Dbがともに正常な場合、駆動回路Da,Dbから出力される信号はともにハイインピーダンス状態とされるため、接続点P6の信号は、第1駆動回路Daの温度情報送信部21が出力する温度情報信号と同一になる。つまり、駆動回路Da,Dbがともに正常な場合、第2駆動回路Dbのクロック信号入力端子CLKには、第1駆動回路Daの温度情報送信部21が出力する温度情報信号が入力される。第1駆動回路Daの温度情報送信部21からは、クロック回路DCから出力されるクロック信号が2周期経過する毎に温度情報を表すパルス信号が出力される。これにより、第2駆動回路Dbの異常情報送信部22は、第1駆動回路Daの温度情報送信部21が出力する温度情報信号に同期して異常情報を出力する。
より具体的には、第2駆動回路Dbは、第1駆動回路Daの温度情報送信部21が出力する温度情報信号の立ち上がり(図5の時刻T10,T14に相当)に同期する。そして、第2駆動回路Dbは、温度情報信号が立ち上がる周期を前期と後期とに分割し、第2駆動回路Dbの異常情報送信部22は、温度情報を表す信号が出力されない期間である後期において、異常情報を表す信号の出力を開始する。なお、温度情報信号が立ち上がる周期を前期と後期とに分割した場合、前期は、図5の時刻T10〜T12に相当し、後期は、図5のT12〜T14に相当する。その前期及び後期は、クロック回路DCから出力されるクロック信号の1周期分にそれぞれ相当する。
本実施形態の構成では、駆動回路Dのうち一つの第1駆動回路Daが有するクロック回路DCのクロック信号に同期して、第1駆動回路Daとは異なる第2駆動回路Dbに同期用の信号を出力することができる。また、第1駆動回路Daから出力される温度情報信号を他の第2駆動回路Dbに対し同期用の信号として兼用するため、第1駆動回路Daに対応して設ける磁気カプラの数を低減することができる。
また、第2駆動回路Dbの異常情報送信部22から出力される異常情報信号がロー(真)とされると、接続点P6の信号がローとされる。これにより、第2駆動回路Dbの異常情報送信部22から出力される異常情報信号が、第2駆動回路Dbにより同期用の信号として扱われることが懸念される。そこで、本実施形態の異常情報送信部22は、第1実施形態と同様に、スイッチSWに異常が生じていると判定されると、温度情報を表すパルスが出力される期間(時刻T14以降)においても、異常情報を表す信号の出力を継続する。これにより、第2駆動回路Dbの異常情報送信部22から出力される異常情報信号が、第2駆動回路Dbにより同期用の信号として扱われることを抑制できる。
なお、第1駆動回路Daが有するクロック回路DCのクロック信号を、磁気カプラを介して他の第2駆動回路Dbのクロック信号入力端子CLKに出力する構成としてもよい。第1駆動回路Daが有するクロック回路DCのクロック信号を、磁気カプラを介して他の第2駆動回路Dbのクロック信号入力端子CLKに出力する場合、第2実施形態と同様に、駆動回路Da,Dbは、温度情報を表す信号と干渉しないように、異常情報を表す信号を出力する構成とするとよい。また、温度情報信号を出力する駆動回路Dと、クロック信号を出力する駆動回路Dとを異なるものとしてもよい。
(他の実施形態)
・第1実施形態及び第2実施形態の温度情報送信部21は、速度信号の2周期毎に温度情報を表すパルスを出力する構成としたが、これを変更してもよい。温度情報送信部21は、速度信号のn周期毎に温度情報を表すパルスを出力する構成としてもよい(nは任意の自然数)。nを大きく設定することで、異常情報を送信可能な期間が長くなるため、異常情報を表す信号をより迅速に駆動回路Da,Dbから制御装置40に送信することが可能になる。
また、温度情報送信部21は、速度信号の1周期のうち所定の期間に温度情報を表すパルスを出力する構成としてもよい。例えば、速度信号の1周期のうちの所定の期間(例えば、最初のX%の期間、Xは0%より上、かつ、100%未満の任意の値)を、温度情報を送信する期間に設定する構成としてもよい。この構成では、速度信号の1周期のうち、温度情報が送信される所定の期間以外の期間において異常情報を表す信号の出力が開始される。
温度情報送信部21は、時比率以外で温度情報を送信する構成としてもよい。例えば、0,1の2値を表すデジタル信号によって、温度情報を送信する構成としてもよい。
・上記構成は、インバータ装置以外の電力変換装置に適用されるものであってもよい。例えば、DCDCコンバータ装置に適用されるものであってもよい。
・絶縁素子として、磁気カプラに代えて、フォトカプラやトランスなどを用いてもよい。また、磁気カプラに代えて、容量カプラを用いてもよい。容量カプラは、受信側と送信側とを容量結合させることで、絶縁素子の受信側と送信側とを絶縁した上で、受信側の素子から受信した信号を送信側の素子に対して送信する。容量カプラは、受信側と送信側とを容量結合させる素子として、例えば、コンデンサを有する。
・半導体スイッチング素子として、IGBTに代えて、MOS−FETを用いてもよい。
・上記構成では、第1駆動回路Daの温度情報送信部21及び異常情報送信部22の出力信号について、ワイヤードオアによって論理和をとる構成としたが、これを変更し、論理回路によって論理和をとる構成としてもよい。同様に、磁気カプラMa,Mbの出力信号について、ワイヤードオアによって論理和をとる構成としたが、これを変更し、論理回路によって論理和をとる構成としてもよい。
・磁気カプラ、及び、駆動回路の温度情報送信部及び異常情報送信部は、オープンドレイン出力に代えて、オープンコレクタ出力であってもよい。また、トーテムポール出力であってもよい。