JP6772533B2 - 駆動力断続装置及び差動制限装置 - Google Patents

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Description

本発明は、駆動力断続装置及び差動制限装置に関する。
従来、車両の左右の車輪に差動を許容して駆動力を配分するディファレンシャル装置には、相対回転可能な回転部材間の差動を制限する噛み合いクラッチを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のディファレンシャル装置は、デフケースと、デフケースと一体に回転するピニオンシャフトに軸支された一対のピニオンギヤと、一対のピニオンギヤにギヤ軸を直交させて噛合する一対のサイドギヤと、デフケースに形成された孔部に回転方向に係合して軸方向移動可能に配置された断続部材と、断続部材を軸方向に移動させるアクチュエータとを有している。
断続部材は、一対のサイドギヤのうち一方のサイドギヤに噛み合う噛み合い歯を有し、デフケースと共に回転する。アクチュエータは、電磁石と、電磁石の磁力によって軸方向に移動する可動部材と、断続部材の噛み合い状態を検知するためのポジションスイッチとを有している。電磁石は、電磁コイルと、電磁コイルを囲むように配置されたコアとによって構成されている。可動部材は、軟磁性体からなるプランジャと、電磁石の磁束がデフケースへ漏れることを防止する非磁性体からなるリングとによって構成されている。可動部材は電磁石の内側に配置され、電磁石と断続部材とは、軸方向に並んで配置されている。
電磁コイルに通電されると、プランジャが断続部材側に移動し、リングが断続部材に固定されたプレートを介して断続部材を押圧する。断続部材は、この押圧力を受けて軸方向に移動し、一方のサイドギヤに噛み合う。これにより、デフケースと一方のサイドギヤとの相対回転が規制され、これに伴って一対のサイドギヤ間の差動回転も規制される。
特開2010−84930号公報
特許文献1のディファレンシャル装置は、その図1において符号79で示されるコアの断面形状が電磁コイルを囲むように形成された略四角形状であり、電磁コイルの内周面の一部に対向する部分が不連続に形成されている。プランジャは、この不連続部分に軸方向の端部が対向して配置され、電磁コイルへの通電により発生する磁束の一部を構成する。
このような形状のコアは、単一の部材で形成することが困難であるので、例えば特許文献1の図1に示されているように、電磁コイルの軸方向の一方の側面及び内周面の一部を覆う部材と、電磁コイルの軸方向の他方の側面を覆う部材と、電磁コイルの外周面を覆う部材との3つの部材を溶接等により結合して構成する必要がある。このため、コアの構造及び製造工程が複雑となり、製造コストの上昇を招来してしまう。
そこで、本発明は、相対回転可能な2つの回転部材の連結を断続する断続部材を移動させる移動機構を簡素に構成することができ、以って製造コストを抑制することが可能な駆動力断続装置及び差動制限装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記の目的を達成するため、同一回転軸線上で相対回転可能な第1回転部材と第2回転部材との間の駆動力伝達を断続する駆動力断続装置であって、前記第1回転部材との相対回転が規制されると共に、前記第2回転部材に噛み合う噛み合い歯を有し、前記噛み合い歯が前記第2回転部材に噛み合う連結位置と前記噛み合い歯が前記第2回転部材に噛み合わない非連結位置との間を軸方向に移動可能な断続部材と、前記断続部材を軸方向に移動させる移動機構とを備え、前記移動機構は、通電により磁束を発生させるコイル巻線を含む円環状の電磁石と、前記磁束の磁路の一部を構成する環状のヨークと、前記ヨークと共に前記磁束の磁路を構成して前記断続部材と共に軸方向に移動する軟磁性体からなる移動部材とを有し、前記移動部材は、前記電磁石の内周面及び外周面のうち一方の周面に対向する円筒部、及び前記円筒部の一端部から径方向に延在し、前記電磁石の軸方向の両端面のうち一方の端面を覆う環状覆い部を有し、前記ヨークは、前記電磁石の内周面及び外周面のうち他方の周面に対向する第1ヨーク部と、前記電磁石の軸方向の両端面のうち他方の端面に対向する第2ヨーク部とを有し、前記一方の周面に対向する部分ならびに一方の端面に対向する部分を有しておらず、前記コイル巻線に通電されたとき、前記環状覆い部と前記電磁石の前記一方の端面との間隔が変化するように前記移動部材が移動することにより、前記断続部材が軸方向に移動する、駆動力断続装置を提供する。
また、本発明は、上記の目的を達成するため、共通の回転軸線を中心として相対回転可能に配置された第1回転部材、第2回転部材、及び第3回転部材と、前記第1回転部材との相対回転が規制されると共に、前記第2回転部材に噛み合う噛み合い歯を有し、前記噛み合い歯が前記第2回転部材に噛み合う連結位置と前記噛み合い歯が前記第2回転部材に噛み合わない非連結位置との間を軸方向に移動可能な断続部材と、前記断続部材を軸方向に移動させる移動機構とを備え、前記断続部材によって前記第1回転部材と前記第2回転部材との相対回転が規制されることにより、前記第3回転部材と前記第1回転部材及び前記第2回転部材との相対回転も規制される差動制限装置であって、前記移動機構は、通電により磁束を発生させるコイル巻線を含む円環状の電磁石と、前記磁束の磁路の一部を構成するヨークと、前記ヨークと共に前記磁束の磁路を構成して前記断続部材と共に軸方向に移動する軟磁性体からなる移動部材とを有し、前記移動部材は、前記電磁石の内周面又は外周面に対向する円筒部、及び前記円筒部の一端部から径方向に延在し、前記電磁石の軸方向の両端面のうち一方の端面を覆う環状覆い部とを有し、前記コイル巻線に通電されたとき、前記環状覆い部と前記電磁石の前記一方の端面との間隔が変化するように前記移動部材が移動することにより、前記断続部材が軸方向に移動する、差動制限装置を提供する。
本発明に係る駆動力断続装置及び差動制限装置によれば、相対回転可能な2つの回転部材の連結を断続する断続部材を移動させる移動機構を簡素に構成することができ、製造コストを抑制することが可能となる。
本発明の第1の実施の形態に係る差動制限装置の構成例を示す断面図である。 差動制限装置の分解斜視図である。 差動制限装置のデフケース内部の構造を示す分解斜視図である。 (a)及び(b)は、断続部材を示す斜視図である。 (a)及び(b)は、差動制限装置の一部を拡大して示す断面図である。 (a)〜(c)は、カム機構の動作を、断続部材、第1ケース部材の底部、及び第1サイドギヤの環状壁部の周方向断面で模式的に示す説明図である。 ポジションセンサの構成例を模式的に示す模式図である。 (a)及び(b)は、第2の実施の形態に係る差動制限装置の一部を拡大して示す断面図である。 (a)及び(b)は、第3の実施の形態に係る差動制限装置の一部を拡大して示す断面図である。
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態について、図1乃至図7を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る差動制限装置の構成例を示す断面図である。図2は、差動制限装置の分解斜視図である。図3は、差動制限装置のデフケース内部の構造を示す分解斜視図である。図4(a)及び(b)は、断続部材を示す斜視図である。図5(a)及び(b)は、差動制限装置の一部を拡大して示す断面図である。
この差動制限装置1は、エンジンや電動モータからなる車両の駆動源の駆動力を一対の出力軸に差動を許容して配分するために用いられる。より具体的には、本実施の形態に係る差動制限装置1は、例えば駆動源の駆動力を左右の車輪に配分するディファレンシャル装置として用いられ、入力された駆動力を一対の出力軸としての左右のドライブシャフトに配分する。
差動制限装置1は、支持体としてのデフキャリア100に支持されて回転するデフケース2と、デフケース2に収容された第1サイドギヤ31及び第2サイドギヤ32と、第1ピニオンギヤ41及び第2ピニオンギヤ42を互いに噛み合せてなる複数(本実施の形態では5組)のピニオンギヤ組40と、デフケース2と第1サイドギヤ31との間の駆動力伝達を断続することが可能な断続部材5と、断続部材5をデフケース2に対して軸方向に移動させる移動機構10と、移動機構10の動作状態を示す電気信号を出力するポジションセンサ90とを備える。断続部材5、移動機構10、及びポジションセンサ90は、デフケース2と第1サイドギヤ31との間の駆動力伝達を断続する駆動力断続装置11を構成する。駆動力断続装置11は、コントローラ9によって制御される。
第1サイドギヤ31及び第2サイドギヤ32は筒状であり、第1サイドギヤ31の内周面には一方の出力軸が相対回転不能に連結されるスプライン嵌合部310が形成され、第2サイドギヤ32の内周面には他方の出力軸が相対回転不能に連結されるスプライン嵌合部320が形成されている。
デフケース2は、車体に固定されたデフキャリア100に一対の軸受101,102を介して回転可能に支持されている。デフキャリア100には、図1に示すように、ポジションセンサ90を取り付けるための取付孔100aが設けられている。また、デフキャリア100には、ギヤの潤滑に適した粘度のギヤオイルが封入され、差動制限装置1はこのギヤオイルによる潤滑環境下で使用される。
デフケース2、第1サイドギヤ31、及び第2サイドギヤ32は、共通の回転軸線Oを中心として、互いに相対回転可能に配置されている。以下、回転軸線Oに平行な方向を軸方向という。
デフケース2には、各ピニオンギヤ組40の第1ピニオンギヤ41及び第2ピニオンギヤ42を回転可能に保持する複数の保持孔20が形成されている。第1ピニオンギヤ41及び第2ピニオンギヤ42は、回転軸線Oを中心として公転すると共に、それぞれの中心軸を回転軸として保持孔20内で自転可能である。
第1サイドギヤ31及び第2サイドギヤ32は、共通の外径を有し、外周面には複数の斜歯からなる歯車部311,321がそれぞれ形成されている。第1サイドギヤ31と第2サイドギヤ32との間には、センタワッシャ121が配置されている。また、第1サイドギヤ31の側方には第1サイドワッシャ122が配置され、第2サイドギヤ32の側方には第2サイドワッシャ123が配置されている。
第1ピニオンギヤ41は、長歯車部411と、短歯車部412と、長歯車部411と短歯車部412とを軸方向に連結する連結部413とを一体に有している。同様に、第2ピニオンギヤ42は、長歯車部421と、短歯車部422と、長歯車部421と短歯車部422とを軸方向に連結する連結部423とを一体に有している。
第1ピニオンギヤ41は、長歯車部411が第1サイドギヤ31の歯車部311及び第2ピニオンギヤ42の短歯車部422と噛み合い、短歯車部412が第2ピニオンギヤ42の長歯車部421と噛み合っている。第2ピニオンギヤ42は、長歯車部421が第2サイドギヤ32の歯車部321及び第1ピニオンギヤ41の短歯車部412と噛み合い、短歯車部422が第1ピニオンギヤ41の長歯車部411と噛み合っている。なお、図3では、これら各歯車部の斜歯の図示を省略している。
第1サイドギヤ31及び第2サイドギヤ32が同じ速度で回転する場合、第1ピニオンギヤ41及び第2ピニオンギヤ42は、保持孔20内で自転することなくデフケース2と共に公転する。また、例えば車両の旋回時等において第1サイドギヤ31及び第2サイドギヤ32の回転速度が異なると、第1ピニオンギヤ41及び第2ピニオンギヤ42が保持孔20内で自転しながら公転する。これにより、デフケース2に入力された駆動力が第1サイドギヤ31及び第2サイドギヤ32に差動を許容して配分される。なお、デフケース2が本発明の「第1回転部材」に、第1サイドギヤ31が本発明の「第2回転部材」に、第2サイドギヤ32が本発明の「第3回転部材」に、それぞれ相当する。
断続部材5は、デフケース2と第1サイドギヤ31とを相対回転不能に連結する連結位置、及びデフケース2と第1サイドギヤ31との相対回転を許容する非連結位置との間を軸方向に移動可能である。図5(a)では断続部材5が非連結位置にある状態を示し、図5(b)では断続部材5が連結位置にある状態を示している。
断続部材5が連結位置にあるとき、デフケース2と第1サイドギヤ31との差動が規制されることにより、第1ピニオンギヤ41及び第2ピニオンギヤ42が自転不能となり、デフケース2と第2サイドギヤ32との差動も規制される。断続部材5は、第1サイドギヤ31との間に配置された復帰バネ13によって、非連結位置に向かって付勢されている。
移動機構10は、通電により磁束を発生させる環状の磁束発生部6と、磁束発生部6の通電により発生する回転磁界の磁束の磁路G(図5(b)参照)を構成し、断続部材5と共に軸方向に移動する移動部材としての軟磁性体からなるプランジャ7と、断続部材5とプランジャ7とを連結する連結部材8とを有している。
磁束発生部6は、コイル巻線611、及びコイル巻線611をモールドするモールド樹脂部612を有する円環状の電磁石61と、プランジャ7と共に磁束の磁路Gの一部を構成するヨーク62とを有している。ヨーク62には、電磁石61を抜け止め及び回り止めするストッパリング63が固定されている。電磁石61は、断面矩形状であり、その中心部にコイル巻線611が配置され、外周面61a(モールド樹脂部612の外周面612a)を含む表面はモールド樹脂部612によって形成されている。
電磁石61には、図2に示すように、軸方向の一端面から突出するボス部613が設けられ、このボス部613からコイル巻線611に励磁電流を供給する電線614が導出されている。コントローラ9は、電線614を介して磁束発生部6に励磁電流を供給し、磁路Gに磁束を発生させる。
ヨーク62は、低炭素鋼等の軟磁性金属からなり、電磁石61の内周面61bを内側から覆う円筒状の第1ヨーク部621と、第1ヨーク部621の軸方向の一端部から外方に突出して電磁石61の軸方向端面61cを覆う環状の第2ヨーク部622とを一体に有している。第1ヨーク部621の内径は、第1ヨーク部621の内周面621aに対向する部分のデフケース2の外径よりも僅かに大きく形成されている。
第1ヨーク部621の内周面621aには、圧入ピン141によってデフケース2に固定された非磁性体からなる複数(本実施の形態では3つ)のプレート142が嵌合する環状凹部621bが形成されている。ヨーク62は、環状凹部621bにプレート142が嵌合することで、デフケース2に対して軸方向移動不能に支持されている。環状凹部621bの軸方向幅は、デフケース2が回転する際にヨーク62との間で回転抵抗が発生しないように、プレート142の厚みよりも僅かに大きく形成されている。
ヨーク62の第1ヨーク部621における第2ヨーク部622とは反対側の端部には、ストッパリング63が固定されている。ストッパリング63は、オーステナイト系ステンレス等の非磁性金属からなり、ヨーク62に固定される環状部631と、周方向の2箇所において環状部631から軸方向に突出する一対の突起部632と、突起部632の先端部から鋭角に折り返された折り返し部633とを一体に有している。
ストッパリング63は、一対の突起部632がデフキャリア100に設けられた係止部100bに係止されて回り止めされている。デフキャリア100には、一対の突起部632をそれぞれ係止する2つの係止部100bが設けられ、図1ではこのうち一方の係止部100bを図示している。プランジャ7は、折り返し部633によってストッパリング63から抜け止めされると共に、突起部632が第2貫通孔722を貫通することによってデフキャリア100に対して回り止めされている。これにより、プランジャ7は、ヨーク62に対して軸方向移動可能に支持され、かつヨーク62との相対回転が規制されている。
プランジャ7は、低炭素鋼等の軟磁性金属からなり、磁束発生部6の外周に配置される円筒部71、及び円筒部71の軸方向の一端部から径方向に延在し、電磁石61の軸方向の両端面のうち一方の端面を覆う環状覆い部72を一体に有している。円筒部71は、電磁石61の全体を外周側から覆う円筒状である。環状覆い部72は、円筒部71の軸方向の一端部から内方に突出している。環状覆い部72は、電磁石61の軸方向端面61d(ヨーク62の第2ヨーク部622に対向する軸方向端面61cとは反対側の端面)、ストッパリング63の環状部631、及びヨーク62における第1ヨーク部621の軸方向端面621cと軸方向に対向する。
ヨーク62は、第1ヨーク部621がプランジャ7の円筒部71との間に電磁石61を径方向に挟み、第2ヨーク部622がプランジャ7の環状覆い部72との間に電磁石61を軸方向に挟んでいる。
プランジャ7とヨーク62との間には、環状覆い部72と第1ヨーク部621との間に第1隙間Sが形成されると共に、円筒部71と第2ヨーク部622との間に第2隙間Sが形成される。第1隙間S及び第2隙間Sの一方は、電磁石61の径方向の隙間であり、本実施の形態では、第2隙間Sが電磁石61の径方向の隙間である。第1隙間Sは、電磁石61の軸方向の隙間である。コイル巻線611に通電されたとき、環状覆い部72と電磁石61の一方の端面との間隔が変化して第1隙間Sが小さくなるようにプランジャ7が移動することにより、断続部材5が軸方向に移動する。
プランジャ7は、円筒部71の内周面71aがモールド樹脂部612に接触して軸方向移動可能に電磁石61に支持されている。本実施の形態では、プランジャ7の円筒部71がモールド樹脂部612の外周面612aに摺接して軸方向移動可能に案内される。プランジャ7が軸方向に移動する際には、円筒部71の内周面71aがモールド樹脂部612の外周面612aを摺動する。また、円筒部71の内周面71aは、ヨーク62の第2ヨーク部622の外周側の端面622aに第2隙間Sを介して径方向に対向する。
環状覆い部72には、前述のギヤオイルを流動される複数(図2に示す例では10個)の油孔720、電磁石61のボス部613を挿通させる第1貫通孔721、及びストッパリング63の一対の突起部632をそれぞれ挿通させる2つの第2貫通孔722が形成されている。また、環状覆い部72の内周側の端部には、連結部材8が当接する。
連結部材8は、例えばオーステナイト系ステンレス等の非磁性金属からなる板材をプレス成形してなり、プランジャ7の環状覆い部72に当接するリング状の環状部81と、環状部81から軸方向に延びる3つの延在部82と、延在部82の先端部から内方に突出して断続部材5に固定される固定部83とを一体に有している。連結部材8は、環状部81がプランジャ7の環状覆い部72と摺動してデフケース2と共に回転する。固定部83には、断続部材5との固定のための圧入ピン15を挿通させる挿通孔830が形成されている。
デフケース2は、複数のネジ200によって互いに固定された第1ケース部材21及び第2ケース部材22とを有している。第1ケース部材21は、軸受101によってデフキャリア100に回転可能に支持され、第2ケース部材22は、軸受102によってデフキャリア100に回転可能に支持されている。
第1ケース部材21は、複数のピニオンギヤ組40を回転可能に保持する円筒状の円筒部211と、円筒部211の一端部から内方に延在する底部212と、第2ケース部材22に突き当てられるフランジ部213とを一体に有している。円筒部211と底部212との間の角部には、磁束発生部6が配置される環状凹部210が形成されている。
第1サイドギヤ31及び第2サイドギヤ32は、円筒部211の内側に配置されている。また、第1ケース部材21は、ヨーク62よりも透磁率が低い金属からなり、フランジ部213には図略のリングギヤが固定される。デフケース2は、リングギヤから伝達される駆動力により回転軸線Oを中心として回転する。
第1ケース部材21の底部212には、図2及び図3に示すように、連結部材8の延在部82及び固定部83が挿入される複数の挿通孔212aが形成されている。挿通孔212aは、底部212を軸方向に貫通している。また、挿通孔212aには、後述する断続部材5の突部53が挿入される。断続部材5は、突部53が挿通孔212aに挿入されることで、デフケース2との相対回転が規制される。本実施の形態では、3つの挿通孔212aが、底部212の周方向に沿って等間隔に形成されている。
電磁石61に励磁電流が供給されると、図5(b)に示す磁路Gに磁束が発生し、プランジャ7の環状覆い部72がヨーク62に吸引される。これにより、円筒部71の内周面71aがモールド樹脂部612の外周面612aを摺動し、プランジャ7が軸方向に移動する。このプランジャ7の軸方向移動により、プランジャ7と連結部材8によって連結された断続部材5が非連結位置から連結位置に軸方向に移動する。
断続部材5は、その最外径(最も外側の部分の直径)が、ヨーク62の内径よりも小さく、磁束発生部6の内側に配置されている。また、断続部材5は、図4に示すように、一方の軸方向端面51aに複数の椀状凹部510が形成された円環板状の円板部51と、第1サイドギヤ31と軸方向に対向する円板部51の他方の軸方向端面51bに形成された噛み合い部52と、円板部51の一方の軸方向端面51aから軸方向に突出して形成された台形柱状の突部53とを一体に有している。
円板部51の一方の軸方向端面51aは、第1ケース部材21の底部212と軸方向に対向する。突部53は、第1ケース部材21の底部212に形成された挿通孔212aに一部が挿入されている。噛み合い部52には、軸方向に突出する複数の噛み合い歯521が形成されている。複数の噛み合い歯521は、円板部51の他方の軸方向端面51bの外周側の一部に形成され、噛み合い部52よりも内側の軸方向端面51bは、復帰バネ13が当接して非連結位置への付勢力を受ける平坦な受け面として形成されている。
第1サイドギヤ31には、図1に示すように、歯車部311よりも外周側に突出して設けられた環状壁部312に、断続部材5の複数の噛み合い歯521に噛み合う複数の噛み合い歯313が形成されている。
断続部材5は、連結部材8を介してプランジャ7に押圧されて連結位置に移動することで、噛み合い部52の複数の噛み合い歯521が第1サイドギヤ31の複数の噛み合い歯313に噛み合う。つまり、断続部材5と第1サイドギヤ31とは、断続部材5が第1サイドギヤ31側に移動したとき、複数の噛み合い歯521,313同士の噛み合いによって相対回転不能に連結される。これにより、デフケース2と第1サイドギヤ31及び第2サイドギヤ32との差動が制限される。一方、断続部材5が復帰バネ13の付勢力によって非連結位置に移動すると、噛み合い歯521,313同士の噛み合いが噛み合わなくなり、断続部材5と第1サイドギヤ31とが相対回転可能となる。
第1ケース部材21は、断続部材5の突部53が周方向に係合する被係合部が、挿通孔212aによって形成されている。断続部材5の突部53は、挿通孔212aの内面212b(図2,3参照)に当接して第1ケース部材21からの駆動力を受ける当接面53aを有している。当接面53aは、突部53における周方向の端面である。突部53の当接面53a、及びこの当接面53aが当接する挿通孔212aの内面212bは、回転軸線Oと平行な平坦面である。断続部材5が第1ケース部材21からの駆動力を受けるとき、突部53の当接面53aは、挿通孔212aの内面212bに面接触する。
また、突部53の先端面53bには、圧入ピン15が圧入される圧入孔531が形成されている。断続部材5は、連結部材8の固定部83に形成された挿通孔830を挿通した圧入ピン15が圧入孔531に圧入されることで、連結部材8と一体に軸方向移動するように固定される。なお、圧入ピン15に替えて、連結部材8の固定部83と断続部材5の突部5とをボルトによって締結してもよい。この場合、連結部材8の固定部83には、圧入孔531に替えてねじ穴が形成される。
椀状凹部510の内面510aは、第1ケース部材21との相対回転によって軸方向のカム推力を発生させるカム面として形成されている。換言すれば、断続部材5は、円板部51における第1ケース部材21の底部212との対向面(一方の軸方向端面51a)の一部がカム面として形成されている。
図1に示すように、第1ケース部材21の底部212には、椀状凹部510の内面510aに当接する突起212cが軸方向に突出して設けられている。本実施の形態では、この突起212cが、底部212に固定された球体23によって形成されている。球体23は、その一部が底部212に設けられた軸方向の窪み212dに収容されて、第1ケース部材21に保持されている。ただし、突起212cを、底部212の一部として一体に形成してもよい。
底部212の挿通孔212aは、周方向の幅が断続部材5の突部53の周方向の幅よりも広く、デフケース2と断続部材5とは、挿通孔212aの周方向幅と突部53の周方向幅との差に応じた所定の角度範囲で相対回転可能である。断続部材5には、この所定の角度範囲よりも大きい角度範囲に亘って、椀状凹部510の内面510aが形成されている。これにより、断続部材5がデフケース2に対して相対回転しても、突起212c(球体23)の先端部が常に椀状凹部510に収容されて内面510aと軸方向に向かい合う。
第1ケース部材21の底部212の突起212cと断続部材5の円板部51の椀状凹部510とは、断続部材5を底部212から離間させる軸方向の推力を発生させるカム機構16を構成する。次に、図6を参照して、このカム機構16の動作について説明する。
図6(a)〜(c)は、カム機構16の動作を、断続部材5、第1ケース部材21の底部212、及び第1サイドギヤ31の環状壁部312の周方向断面で模式的に示す説明図である。図6(a)及び(b)では、デフケース2(第1ケース部材21)に対する第1サイドギヤ31の回転方向を矢印Aで示している。
図6(a)に示すように、椀状凹部510の内面510aは、断続部材5の周方向に対して一方に傾斜した第1傾斜面510bと他方に傾斜した第2傾斜面510cとからなる。断続部材5の周方向に対する第1傾斜面510bの傾斜角と第2傾斜面510cの傾斜角とは同じである。
電磁石61に通電されていないとき、断続部材5は、復帰バネ13の付勢力によって第1ケース部材21の底部212側に押し付けられている。この状態を図6(a)に示す。図6(a)に示すように、底部212の突起212cは、椀状凹部510の最奥部に当接し、断続部材5の噛み合い歯521と第1サイドギヤ31の噛み合い歯313とは噛み合わない。電磁石61に通電されると、断続部材5が連結部材8を介してプランジャ7に押圧され、断続部材5が第1サイドギヤ31に噛み合う。図6(b)は、この噛み合いの開始時の状態を示し、図6(c)は、噛み合いが完了した状態を示している。
図6(b)に示すように、電磁石61に通電されて断続部材5が押圧されると、まず断続部材5の噛み合い歯521及び第1サイドギヤ31の噛み合い歯313の先端部同士が噛み合う。この噛み合いにより、断続部材5が第1サイドギヤ31に連れ回りしてデフケース2と相対回転し、底部212の突起212cが椀状凹部510の第1傾斜面510b又は第2傾斜面510cを摺動する。図6(b)では、底部212の突起212cが椀状凹部510の第1傾斜面510bを摺動する場合を示している。この摺動により、底部212の突起212cが当接する部分が徐々に椀状凹部510の浅い部分に移動し、断続部材5がカム推力によって第1サイドギヤ31側に移動する。
デフケース2に対する断続部材5の相対回転は、断続部材5の突部53の当接面53aが、第1ケース部材21における挿通孔212aの内面212bに接触することで規制される。つまり、図6(c)に示すように断続部材5の突部53の当接面53aが挿通孔212aの内面212bに当接すると、デフケース2に対する断続部材5の相対回転が停止し、断続部材5のデフケース2に対する軸方向移動も停止する。
断続部材5の噛み合い歯521と第1サイドギヤ31の噛み合い歯313との噛み合いが完了した状態では、断続部材5の突部53が第1ケース部材21の挿通孔212aに係合してデフケース2と断続部材5との相対回転が規制され、かつ断続部材5の噛み合い歯521と第1サイドギヤ31の噛み合い歯313との噛み合いにより断続部材5と第1サイドギヤ31との相対回転が規制される。これにより、デフケース2と第1サイドギヤ31との相対回転が規制され、デフケース2から断続部材5を介して第1サイドギヤ31に駆動力が伝達される。
また、デフケース2と第1サイドギヤ31との差動が規制されることによって第1ピニオンギヤ41及び第2ピニオンギヤ42が自転不能となり、デフケース2と第2サイドギヤ32との差動も規制され、デフケース2から第1ピニオンギヤ41及び第2ピニオンギヤ42を介して第2サイドギヤ32に駆動力が伝達される。
移動機構10の動作は、ポジションセンサ90によって検出される。ポジションセンサ90は、プランジャ7の環状覆い部72の軸方向位置に応じて電気信号をコントローラ9に出力する。
図7(a)及び(b)は、ポジションセンサ90の構成例を模式的に示す模式図である。本実施の形態では、ポジションセンサ90がプランジャ7の環状覆い部72の軸方向位置を検出する。ポジションセンサ90は、プランジャ7の環状覆い部72に弾性的に接触する接触子91と、接触子91を支持する支持体92と、支持体92に対して接触子91を飛び出させる方向に付勢するバネ93と、支持体92に対する接触子91の変位によってオン・オフ状態が切り替わるスイッチ94とを有している。
接触子91は、回転軸線Oと平行に支持体92に対して進退移動する棒状の部材である。接触子91は、バネ93の付勢力によって、その先端部911がプランジャ7の環状覆い部72の外面(磁束発生部6に対向する面とは反対側の側面)に当接する。接触子91の他端部には、接触子91の移動方向に対して直交する方向に膨出した膨出部912が設けられている。接触子91の移動によって膨出部912がスイッチ94の可動片941を押し込むと、一対の端子942,943が電気的に短絡する。
ポジションセンサ90は、プランジャ7の軸方向移動に伴って断続部材5が連結位置に移動したとき、スイッチ94の一対の端子942,943が電気的に短絡して電気信号がオン状態となり、断続部材5が非連結位置にあるときには、スイッチ94の一対の端子942,943が絶縁されて電気信号がオフ状態となるように、デフキャリア100への取付位置が調節されている。図7(a)は、断続部材5が連結位置にあるときの状態を示し、図7(b)は、断続部材5が非連結位置にあるときの状態を示している。
コントローラ9は、電磁石61に励磁電流を供給しても、ポジションセンサ90の電気信号によって断続部材5が連結位置に移動したことを検知できない場合には、異常信号を出力する。この異常信号は、ランプ表示や警告音によって車両の運転者に認識される。
(第1の実施の形態の作用及び効果)
以上説明した第1の実施の形態によって得られる主な作用及び効果は次のとおりである。
(1)プランジャ7は、円筒部71及び環状覆い部72を有しているので、ヨーク62の第1ヨーク部621及び第2ヨーク部622との間で電磁石61の周囲に発生する環状の磁路Gが構成される。これにより、ヨーク62を含む移動機構10を簡素に構成することができ、製造コストを抑制することが可能となる。
(2)ヨーク62は、円筒状の第1ヨーク部621が電磁石61の内周面61bを内側から覆い、第2ヨーク部622が第1ヨーク部621の軸方向の一端部から外方に突出して電磁石61の軸方向端面61cを覆うので、電磁石61の配置スペースを十分に確保することができる。
(3)プランジャ7とヨーク62との間には、電磁石61の径方向の第2隙間Sが形成され、プランジャ7が軸方向に移動しても、この第2隙間Sの間隔は変わらない。したがって、プランジャ7の軸方向移動に伴う磁路Gにおける磁気抵抗の変化が小さく、プランジャ7が初期位置(非連結位置)にある場合でも、プランジャ7を確実に電磁石61の磁力によって吸引することができる。
(4)プランジャ7とヨーク62との間には、電磁石61の軸方向の第1隙間Sが形成されるので、電磁石61への通電によってプランジャ7が移動する際の吸引力(軸方向の移動力)を高めることができる。また、プランジャ7とヨーク62との間に形成される第1隙間S及び第2隙間Sのうち、一方が電磁石61の軸方向の隙間であり、他方が電磁石61の径方向の隙間であるので、プランジャ7を吸引可能な吸引可能距離と吸引力とを両立することができる。
(5)電磁石61は、コイル巻線611をモールド樹脂部612によってモールドしてなり、プランジャ7は、モールド樹脂部612の外周面612aに接触して電磁石61に支持されるので、プランジャ7が軸方向移動する際の摺動抵抗を抑制しながら、プランジャ7を簡素な構成によって軸方向移動可能に支持することができる。
(6)プランジャ7は、外嵌部71が磁束発生部6の外周に配置されてデフキャリア100に対して回り止めされ、ポジションセンサ90は、プランジャ7の軸方向位置に応じてコントローラ9に電気信号を出力するので、デフケース2が回転しても、ポジションセンサ90の接触子91とプランジャ7とが摺動しない。これにより、プランジャ7とポジションセンサ90の接触子91との間で摩耗や発熱が発生しないので、ポジションセンサ90の信頼性が高まる。
(7)ポジションセンサ90は、プランジャ7の環状覆い部72の軸方向位置を検出するので、プランジャ7の位置を簡素な構成で正確に検出することができる。また、ポジションセンサ90は、バネ93の付勢力によってプランジャ7の環状覆い部72に弾性的に接触する接触子91と、接触子91を支持する支持体92と、支持体92に対する接触子91の変位によってオン・オフ状態が切り替わるスイッチ94とを有して構成されているので、簡素な構成によって正確にプランジャ7の環状覆い部72の位置を検出することができる。
(8)断続部材5は、磁束発生部6の内側に配置されているので、駆動力断続装置11及び差動制限装置1を小型化することができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について、図8を参照して説明する。本実施の形態は、プランジャ7の形状及びその支持構造が第1の実施の形態と異なり、その他については第1の実施の形態と同様であるので、この違いの部分について説明する。図8において、第1の実施の形態と共通する構成要素については、図5等と同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図8は、第2の実施の形態に係る差動制限装置の一部を拡大して示す断面図であり、(a)は断続部材5が非連結位置にある状態を示し、(b)は断続部材5が連結位置にある状態を示している。
本実施の形態に係るプランジャ7は、環状覆い部72が、電磁石61の軸方向端面61cに対向する外周壁部721と、外周壁部721の内周側の端部から軸方向に延在する円筒壁部722と、円筒壁部722の軸方向の端部から内周側に延在する内周壁部723とを有している。内周壁部723は、外周壁部721よりも電磁石61から軸方向に離間している。内周壁部723と第1ヨーク部621の軸方向端面621cとの間には、電磁石61の軸方向の第1隙間Sが形成されている。連結部材8の環状部81は、環状覆い部72の内周壁部723に当接している。
ヨーク62の第1ヨーク部621は、軸方向の一端部がプランジャ7の円筒壁部722の内側に配置されている。この一端部における第1ヨーク部621の外周面には、非磁性体からなる摺動部材64が固定されている。プランジャ7は、円筒壁部722の内周面が摺動部材64の外周面を摺動して軸方向移動可能に案内される。電磁石61に通電されると、図8(b)に示す磁路Gに磁束が発生し、第1隙間Sが小さくなるようにプランジャ7が電磁石61側に向かって軸方向に移動する。これにより、断続部材5の複数の噛み合い歯521が第1サイドギヤ31の環状壁部312に噛み合う。
本実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について、図9を参照して説明する。本実施の形態は、ヨーク62、プランジャ7、及び連結部材8の形状等が第1の実施の形態と異なり、その他については第1の実施の形態と同様であるので、この違いの部分について説明する。図9において、第1の実施の形態と共通する構成要素については、図5等と同一の符号を付して重複した説明を省略する。
第1の実施の形態では、ヨーク62が円筒状の第1ヨーク部621と環状の第2ヨーク部622とを一体に有し、第1ヨーク部621が電磁石61の内周面61bを内側から覆う場合について説明した。本実施の形態では、ヨーク62が第1の実施の形態と同様に円筒状の第1ヨーク部621と環状の第2ヨーク部622とを一体に有しているが、第1ヨーク部621は電磁石61の内周面61bではなく、外周面61aを外側から覆っている。第2のヨーク部622は、デフケース2の円筒部211における軸方向端面211aに対向している。
ストッパリング63の環状部631は、第1ヨーク部621の内周面に固定されている。プランジャ7は、第1の実施の形態と同様に、ストッパリング63によってデフキャリア100に対して回り止めされている。ヨーク62は、第2ヨーク部622とストッパリング63の環状部631との間に電磁石61を保持している。
本実施の形態では、デフケース2の円筒部211と一体に、第1ヨーク部621の一部を外周側から覆う覆い部214が設けられている。また、第1ヨーク部621の外周面には、環状凹部621dが形成されている。この環状凹部621dには、覆い部214の軸方向端面214aにピン171により固定されたプレート172が係合している。電磁石61の軸方向におけるプレート172の厚みは、環状凹部621dの軸方向の幅よりも小さく、プレート172は環状凹部621dに隙間嵌めされている。
第2ヨーク部622がデフケース2の軸方向端面211aに接近する方向へのデフケース2に対するヨーク62の軸方向移動は、図9(a)に示すように、第2ヨーク部622が軸方向端面211aに当接することにより規制されている。また、第2ヨーク部622がデフケース2の軸方向端面211aから離間する方向へのデフケース2に対するヨーク62の軸方向移動は、図9(b)に示すように、環状凹部621dとプレート172との係合によって規制されている。
また、第1の実施の形態では、プランジャ7が円筒状の円筒部71と環状の環状覆い部72とを有し、円筒部71が電磁石61を外周側から覆っている場合について説明した。本実施の形態では、プランジャ7が第1の実施の形態と同様に円筒状の円筒部71と環状の環状覆い部72とを一体に有しているが、円筒部71は電磁石61を外周側からではなく内周側から覆っている。プランジャ7は、円筒部71が電磁石61のモールド樹脂部612の内周面61bに摺接して軸方向移動可能に案内される。環状覆い部72は、円筒部71の一端部(デフケース2の軸方向端面211a側とは反対側の端部)から外方に突出している。
第1ヨーク部621の軸方向端面621eとプランジャ7の環状の環状覆い部72との間には、電磁石61の軸方向の第1隙間Sが形成されている。また、第2ヨーク部622の内周側の端面622bとプランジャ7の円筒部71の外周面71bとの間には、電磁石61の径方向の第2隙間Sが形成されている。コイル巻線611に通電されると、第1隙間Sが小さくなるようにプランジャ7が移動する。
本実施の形態に係る連結部材8は、第1の実施の形態と同様に、リング状の環状部81と、環状部81から軸方向に延びる3つの延在部82(図9には、このうち1つの延在部82を示す)と、延在部82の先端部から内方に突出して断続部材5に固定される固定部83とを一体に有しているが、環状部81はプランジャ7の環状覆い部72ではなく、円筒部71のデフケース2の軸方向端面211a側の端面に当接している。コイル巻線611への通電により発生するプランジャ7の移動力は、連結部材8によって断続部材5に伝達される。
本実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
(付記)
以上、本発明を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、一対のサイドギヤ(第1サイドギヤ31及び第2サイドギヤ32)と一対のピニオンギヤ(第1ピニオンギヤ41及び第2ピニオンギヤ42)のそれぞれの回転軸が平行な平行軸タイプの差動装置に本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、一対のサイドギヤと一対のピニオンギヤとがギヤ軸を直交させて噛み合う構成の差動制限装置に本発明を適用することも可能である。
1…差動制限装置 10…移動機構
100…デフキャリア(支持体) 11…駆動力断続装置
2…デフケース(第1回転部材) 31…第1サイドギヤ(第2回転部材)
32…第2サイドギヤ(第3回転部材) 5…断続部材
521…噛み合い歯 6…磁束発生部
61…電磁石 611…コイル巻線
612…モールド樹脂部 612a…外周面
62…ヨーク 621…第1ヨーク部
622…第2ヨーク部 7…プランジャ(移動部材)
71…円筒部 72…環状覆い部
90…ポジションセンサ 91…接触子
92…支持体 94…スイッチ
…第1隙間 S…第2隙間

Claims (13)

  1. 同一回転軸線上で相対回転可能な第1回転部材と第2回転部材との間の駆動力伝達を断続する駆動力断続装置であって、
    前記第1回転部材との相対回転が規制されると共に、前記第2回転部材に噛み合う噛み合い歯を有し、前記噛み合い歯が前記第2回転部材に噛み合う連結位置と前記噛み合い歯が前記第2回転部材に噛み合わない非連結位置との間を軸方向に移動可能な断続部材と、
    前記断続部材を軸方向に移動させる移動機構とを備え、
    前記移動機構は、通電により磁束を発生させるコイル巻線を含む円環状の電磁石と、前記磁束の磁路の一部を構成するヨークと、前記ヨークと共に前記磁束の磁路を構成して前記断続部材と共に軸方向に移動する軟磁性体からなる移動部材とを有し、
    前記移動部材は、前記電磁石の内周面及び外周面のうち一方の周面に対向する円筒部、及び前記円筒部の一端部から径方向に延在し、前記電磁石の軸方向の両端面のうち一方の端面を覆う環状覆い部を有し、
    前記ヨークは、前記電磁石の内周面及び外周面のうち他方の周面に対向する円筒状の第1ヨーク部と、前記電磁石の軸方向の両端面のうち他方の端面に対向する環状の第2ヨーク部とを有し、前記一方の周面に対向する部分ならびに前記一方の端面に対向する部分を有しておらず、
    前記コイル巻線に通電されたとき、前記環状覆い部と前記電磁石の前記一方の端面との間隔が変化するように前記移動部材が移動することにより、前記断続部材が軸方向に移動する、
    駆動力断続装置。
  2. 前記ヨークは、前記第1回転部材に固定されたプレートが前記第2ヨーク部に形成された環状凹部に嵌合することで、前記第1回転部材に対して軸方向移動不能に支持されている、
    請求項1に記載の駆動力伝達装置。
  3. 前記移動部材の前記環状覆い部と前記ヨークの前記第1ヨーク部との間に第1隙間が形成されると共に、前記移動部材の前記円筒部と前記ヨークの前記第2ヨーク部との間に第2隙間が形成され、
    前記第1隙間及び前記第2隙間の一方は、前記電磁石の径方向の隙間である、
    請求項1又は2に記載の駆動力断続装置。
  4. 前記第1隙間及び前記第2隙間の他方は、前記電磁石の軸方向の隙間である、
    請求項3に記載の駆動力断続装置。
  5. 前記電磁石は、前記コイル巻線をモールドするモールド樹脂部を有し、
    前記移動部材は、前記モールド樹脂部に接触して軸方向移動可能に支持されている、
    請求項1乃至4の何れか1項に記載の駆動力断続装置。
  6. 前記移動部材は、前記円筒部が前記モールド樹脂部の外周面に摺接して軸方向移動可能に案内される、
    請求項5に記載の駆動力断続装置。
  7. 前記移動部材は、前記円筒部が前記モールド樹脂部の内周面に摺接して軸方向移動可能に案内される、
    請求項5に記載の駆動力断続装置。
  8. 前記移動部材は、前記ヨークに対して軸方向移動可能に支持され、かつ前記ヨークとの相対回転が規制されている、
    請求項1乃至4の何れか1項に記載の駆動力断続装置。
  9. 前記移動部材の前記環状覆い部の軸方向位置に応じて電気信号を出力するセンサをさらに備えた、
    請求項1乃至8の何れか1項に記載の駆動力断続装置。
  10. 前記センサは、前記移動部材の前記環状覆い部に弾性的に接触する接触子と、前記接触子を支持する支持体と、前記支持体に対する前記接触子の変位によってオン・オフ状態が切り替わるスイッチとを有する、
    請求項9に記載の駆動力断続装置。
  11. 共通の回転軸線を中心として相対回転可能に配置された第1回転部材、第2回転部材、及び第3回転部材と、
    前記第1回転部材との相対回転が規制されると共に、前記第2回転部材に噛み合う噛み合い歯を有し、前記噛み合い歯が前記第2回転部材に噛み合う連結位置と前記噛み合い歯が前記第2回転部材に噛み合わない非連結位置との間を軸方向に移動可能な断続部材と、
    前記断続部材を軸方向に移動させる移動機構とを備え、
    前記断続部材によって前記第1回転部材と前記第2回転部材との相対回転が規制されることにより、前記第3回転部材と前記第1回転部材及び前記第2回転部材との相対回転も規制される差動制限装置であって、
    前記移動機構は、通電により磁束を発生させるコイル巻線を含む円環状の電磁石と、前記磁束の磁路の一部を構成するヨークと、前記ヨークと共に前記磁束の磁路を構成して前記断続部材と共に軸方向に移動する軟磁性体からなる移動部材とを有し、
    前記移動部材は、前記電磁石の内周面又は外周面に対向する円筒部、及び前記円筒部の一端部から径方向に延在し、前記電磁石の軸方向の両端面のうち一方の端面を覆う環状覆い部とを有し、
    前記コイル巻線に通電されたとき、前記環状覆い部と前記電磁石の前記一方の端面との間隔が変化するように前記移動部材が移動することにより、前記断続部材が軸方向に移動する、
    差動制限装置。
  12. 前記ヨークは、前記移動部材の前記円筒部との間に前記電磁石を径方向に挟む円筒状の第1ヨーク部と、前記移動部材の前記環状覆い部との間に前記電磁石を軸方向に挟む環状の第2ヨーク部とを有し、
    前記第2ヨーク部が前記第1回転部材に対して軸方向に当接することで、前記第1回転部材に対する軸方向一側への移動が規制されている、
    請求項11に記載の差動制限装置。
  13. 前記断続部材の前記噛み合い歯が前記第2回転部材に噛み合わない状態で、前記第1回転部材に入力された駆動力が前記第2回転部材及び前記第3回転部材に差動を許容して配分され、前記断続部材の前記噛み合い歯が前記第2回転部材に噛み合うことにより、前記第1回転部材と前記第2回転部材及び前記第3回転部材との差動が制限され、
    前記ヨークは前記第1回転部材に対して軸方向移動不能に支持され、
    前記移動機構は、前記断続部材を前記第1回転部材に対して軸方向に移動させる、
    請求項11又は12に記載の差動制限装置。
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