JP6770399B2 - 生葉の香味誘発萎凋装置並びにこの装置を用いた生葉の香味誘発萎凋方法 - Google Patents
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このような発酵茶(以下、半発酵茶も含めて発酵茶と称する)は、その製造にあたってまず最初に、生茶葉に含まれる水分を減少させるとともに酸化酵素の活性を促すための萎凋工程を必須とするが、この萎凋工程は、「日干萎凋」、「静置萎凋」、「揺青」といった異なる加工工程要素の全て又は一部が選択的に実施されるものである。
具体的には前記「日干萎凋」は、生茶葉に日光を当てて昇温、萎凋させる工程要素であり、水分減による重量減を伴うものである。
また前記「静置萎凋」は、室内に設けた棚に茶葉を薄く広げて、時間を掛けて萎凋させる工程要素である。
更にまた前記「揺青」は、茶葉に振動を与えながら攪拌したり、両手で持ち上げて揺り落とすことにより、物理的刺激を与えて表面に微細な傷を付与して酸化酵素の活性を促す工程要素である。
そして実際の発酵茶の製造においては、これらの工程要素を一部簡略化、省力化するにせよ、複数段階行うことが良質の発酵茶を得るためには必要である。
このため「日干萎凋」、「静置萎凋」、「揺青」の各工程要素の多くは手作業により行われている。
更にこれら先行技術は、予め「日干萎凋」、「静置萎凋」、「揺青」の各工程要素を所定の順番で行うことを前提としたものであり、工程要素の順序を変えたい場合には各工程要素を担う装置の大幅なレイアウト変更や、移送装置の増設等が必要となってしまうものであるため、実質的に工程要素の順序を変更できるものではなかった。
そしてこれら各請求項記載の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
また加工ドラム内において行われる日干萎凋を、従来、天日を用いて行われていた日干萎凋と同様のものとすることができる。
更にまた一番茶に適した静置萎凋の条件と、二、三番茶に適した静置萎凋の条件とを選択して適用することができる。
更にまた加工ドラムの形態を、日干萎凋に適した状態と、静置萎凋に適した状態とに選択的に変更することができる。
なお以下の説明にあたっては、まず本発明の生葉の香味誘発萎凋装置W(以下、萎凋装置Wと称する。)の構成を説明し、次いでこの装置を用いた生葉の香味誘発萎凋方法について説明する。
また本明細書中において、茶樹から刈り取られたままの状態で未加工の茶葉を生茶葉Aと呼び、萎凋装置Wによって萎凋されている状態の茶葉を加工生葉A1と呼ぶ。
そして前記回転軸12には適宜スプロケットが具えられるとともに、モータMの出力軸に具えられるスプロケットとの間にチェーンが巻回されることにより、ドラム本体10の回転・揺動が可能に構成される。
なお前記ドラム本体10は中空角柱状のものとすることもできる。
なお前記リフタ16は、部分ごとに高さ寸法や傾斜角度が異なるような形態とされ、加工生葉A1が塊にならないような工夫がされている。
また前記側板11にはガラスやアクリル等の透明素材が嵌め込まれた窓11aが複数個所に形成されている。なおこの窓11aを開閉自在とすることにより、通気口として機能させることができる。
前記通気蓋5Aは、その全面に多数の通気孔51が穿孔されることにより通気性が付与されており、把手5aが具えられている。また前記通気孔51を実質的に塞いで通気性を無くすための密閉カバー52が別途用意される。
また前記加温蓋5Bは、一方の面に加温装置3が具えられるものであり、この実施例では一例として九基のパネルヒータ31を配列するようにした。なお加温装置3としてはこの他に、赤外線ランプ32、マイクロ波照射装置、紫外線照射装置等を採用することもでき、更にこれらを組み合わせるようにしてもよい。
なお蓋体5は、開口部15の縁に沿って設けられた枠体15aに対して開口部15を覆うように固定されるものであり、一例としてラッチ15bを用いることにより、着脱を容易に行うことが可能とされる。更に通気蓋5Aを覆うように装着される密閉カバー52も適宜枠体15aに対して同様に固定される。
ここで前記ダクト20は、前記回転軸12を貫通した状態で機枠Fに固定されるとともに、ドラム本体10内においてクランク状に屈曲し、もう一方の回転軸12付近でクランク状に屈曲し、この回転軸12を貫通するように配設される。
またダクト20は、図3の左側面視において左斜め上45°の方向に傾いた状態で設置されており、図7(c)に示すように前記噴出口20aが直近のドラム本体10の内周面に対向するように形成される。
更に機枠F上の適宜の箇所には、各種センサ6からの信号に基づいて、萎凋装置Wの運転を制御するための制御盤7が具えられる。
なお、生葉に含まれる水分を減少させるとともに酸化酵素の活性を促すための萎凋工程は、「日干萎凋」、「静置萎凋」、「揺青」といった異なる加工工程要素が全て又は一部が選択的に実施されるものであり、以下各工程要素毎に説明する。
またここでは生葉として茶葉を用いるが、加工にあたって萎凋工程が行われる他の植物の葉や茎、種子等を適用対象とすることもできる。
はじめに従来手法による日干萎凋は、生茶葉Aに日光を当てて昇温、萎凋させる工程要素であり、水分減による重量減を伴うものである。
そしてこのような日干萎凋を、萎凋装置Wを用いて実現するものであり、以下に示す二通りの手法が採り得る。
まず加工ドラム1を揺動させながら日干萎凋を行う手法について説明する。
この手法においては、蓋体5を用いることなく、加工ドラム1の開口部15を開放した状態とする。
そして図7(a)に示すように、ドラム本体10を回転させて開口部15が最上部に位置する状態とするとともに、開口部15から生茶葉Aを投入する。
この際、開口部15の外側となる開口部15の上方に、加温装置3たる赤外線ランプ32を設けることにより、開口部15において加工ドラム1内の加工生葉A1に加温装置3を作用させる。
そして加工ドラム1を一例として±90°の範囲で揺動させることにより、リフタ16により加工生葉A1を攪拌しながら、葉温センサ62の検出値に基づいて赤外線ランプ32の出力を調整し、加工生葉A1の温度を25〜40℃に保つようにする。同時にロードセル61の検出値がモニタリングされるものであり、加工生葉A1の重量が、生茶葉Aの重量から3〜15%減少するまで上記操作が継続される。なおこのような操作の継続は、予め設定された工程時間にしたがって行ってもよく、更にはオペレータが萎凋香で判断して行うようにすることもできる。
なおこの日干萎凋における加工生葉A1の加熱は、後述する静置萎凋と同様に送風装置2を用いた温風による加熱、あるいはドラム本体10を加熱することによる伝熱加熱によって行うようにしてもよいし、更にはマイクロ波照射装置、紫外線照射装置を用いて行うようにしてもよい。
なお送風装置2を起動してダクト20における噴出口20aから調温調湿された空気を噴出することにより、加工生葉A1の蒸れを防止することができる。
次に加工ドラム1を回転・揺動させながら日干萎凋を行う手法について説明する。
この手法においてはドラム本体10内に生茶葉Aを投入した後、図7(b)に示すように加温蓋5Bを用いて開口部15を塞いだ状態として、開口部15において加工ドラム1内の加工生葉A1に加温装置3を作用させる。
そして加工ドラム1の回転と揺動とを適宜組合わせて、リフタ16により加工生葉A1を攪拌、分散させながら、葉温センサ62の検出値に基づいてパネルヒータ31の出力を調整し、加工生葉A1の温度を25〜40℃に保つようにする。同時にロードセル61の検出値がモニタリングされるものであり、加工生葉A1の重量が、生茶葉Aの重量から3〜15%減少するまで上記操作が継続される。なおリフタ16は、部分ごとに高さ寸法や傾斜角度が異なるような形態とされているため加工生葉A1を掻きならし、塊になるのを防止する。またダク17によって加工生葉A1のすべりが防止される。
また従来処方における静置萎凋は、室内に設けた棚に茶葉を薄く広げて、時間を掛けて萎凋させる工程要素である。
そしてこのような静置萎凋を、萎凋装置Wを用いて実現するものであり、ドラム本体10内に生茶葉Aを投入した後、図7(c)に示すように通気蓋5Aを用いて開口部15を塞いだ状態とする。
次いでドラム本体10を回転させて開口部15の中心が回転方向に対して0〜45°に 位置するようにして、通気蓋5Aの通気孔51上に加工生葉A1が堆積した状態にする。
次いで送風装置2を起動してダクト20における噴出口20aから調温調湿された吹込風を噴出するものであり、温度センサ63、湿度センサ64、葉温センサ62の検出値に基づいてヒータ21及びクーラ22を調整し、加工生葉A1の温度を15〜30℃、ドラム本体10内温度を15〜35℃、ドラム本体10内湿度を40〜90%に保つようにする。
同時にロードセル61の検出値がモニタリングされるものであり、加工生葉A1の重量が、日干萎凋が終了した加工生葉A1の重量から5〜25%減少するまで上記操作が継続される。
なおダクト20における噴出口20aから噴出された空気は、いったんドラム本体10の内周部にぶつかった後、ほどよく分散されて通気孔51上に堆積した加工生葉A1の表面に至り、この加工生葉A1の層を通過して通気孔51から外部に排出されることとなるため、上乾きや青枯れが防止され、均一な萎凋が行われるとともに萎凋が促進される。
なお加工生葉A1の状況に応じて、ダクト20における噴出口20aを通じてドラム本体10内の雰囲気を吸引して、ドラム本体10内の雰囲気の流れを変化させることも可能であり、この場合、通気孔51外側から外気が取り込まれて温度等の環境コントロールを行うこともできる。
また側板11に形成された窓11aを開閉し、通気口として機能させることにより、ダクト20における噴出口20aからドラム本体10内に供給される調温調湿された空気と、排気とのバランスをとることができる。
なお上述のように通気蓋5Aの通気孔51上に加工生葉A1が堆積した状態とし、通気孔51を通じて加工生葉A1が外気に接した状態で行われる静置萎凋は、一番茶を扱う場合に行われるものである。
すなわち一番茶期は4月下旬から五月上旬であり、この時期の国内茶産地における平均気温は概ね20℃以下であり特に夜間の気温は低くなり、また平均湿度は概ね50〜60%であるため、ドラム本体10内温度の設定値を20〜23℃とし、送風装置2による吹込風の温度が24〜27℃となるように制御される。
一方、二、三番茶を扱う場合には、密閉カバー52を用いて通気蓋5Aの通気孔51を塞ぎ、この通気孔51上に堆積した加工生葉A1が、外気と遮断された状態で静置萎凋が行われる。
すなわち二、三番茶期は6月下旬から8月上旬であり、この時期の国内茶産地における平均気温は概ね25℃以上であり、また平均湿度は概ね70%以上であるため、ドラム本体10内温度の設定値を20〜25℃とし、送風装置2による吹込風の温度が18〜20℃となるように制御される。
更にまた従来手法における揺青は、茶葉に振動を与えながら攪拌したり、両手で持ち上げて揺り落とすことにより、物理的刺激を与えて表面に微細な傷を付与して酸化酵素の活性を促す工程要素である。
そしてこのような揺青を、萎凋装置Wを用いて実現するものであり、図7(c)に示した静置萎凋を行う場合の萎凋装置Wの噴出口20aからの空気の供給を停止してドラム本体10を回転させる。この際、ドラム本体10内に位置する加工生葉A1は、ドラム本体10の回転に伴ってリフタ16により攪拌、分散される。なおダク17によって加工生葉A1のすべりが防止される。
そしてドラム本体10の回転速度、回転時間が適宜調整されることにより、揺青の強弱、長短が設定されるものである。
そして上述のように萎凋工程が完了した加工生葉A1は、連続式炒り葉機を用いた炒り葉工程、揉捻機を用いた揉捻工程、再乾機を用いた乾燥工程を経て独自の香味を有する発酵茶とされるものである。
1 加工ドラム
10 ドラム本体
11 側板
11a 窓
12 回転軸
13 ローラ
15 開口部
15a 枠体
15b ラッチ
16 リフタ
17 ダク
2 送風装置
20 ダクト
20a 噴出口
21 ヒータ
22 クーラ
3 加温装置
31 パネルヒータ
32 赤外線ランプ
5 蓋体
5A 通気蓋
5a 把手
5B 加温蓋
51 通気孔
52 密閉カバー
6 センサ
61 ロードセル
62 葉温センサ
63 温度センサ
64 湿度センサ
7 制御盤
A 生茶葉
A1 加工生葉
F 機枠
M モータ
Claims (5)
- 内部に加工生葉を収納でき、且つ一定角度の揺動又は回転の動きができる加工ドラムと、
この加工ドラム内の加工環境を制御する送風装置と、
加工生葉を昇温させる加温装置と、
少なくとも加工ドラム内で加工されている加工生葉の温度、重量、加工ドラム内の温度、湿度を測定する各種のセンサとを具えて成るものであり、
前記加工ドラムは、その周面の一部に軸方向に沿って開口部を具え、
この開口部の閉鎖と開放とを選択できるものであり、
閉鎖するための蓋板として、密閉カバーを付け外し自在とした通気性を有する通気蓋と、内側に加温装置を設けた加温蓋との双方が用意され、
加工目的に応じて、いずれかの蓋体を選択して開口部を閉鎖状態とするか、開放状態とするかを選択可能に構成されていることを特徴とする生葉の香味誘発萎凋装置。
- 前記加工ドラムの開口部の外側となる開口部の上方に、加温装置が設けられていることを特徴とする請求項1記載の生葉の香味誘発萎凋装置。
- 前記加工ドラムを加熱することにより、加工ドラム内に位置する加工生葉を伝熱加熱することができることを特徴とする請求項1または2記載の生葉の香味誘発萎凋装置。
- 前記請求項1記載の生葉の香味誘発萎凋装置を用い、加工ドラム内で加工されている加工生葉を取り出すことなく、回転・揺動を伴う日干萎凋、静置萎凋及び揺青が行われる萎凋工程を実施することを特徴とする生葉の香味誘発萎凋方法。
- 前記請求項2または3記載の生葉の香味誘発萎凋装置を用い、加工ドラム内で加工されている加工生葉を取り出すことなく、揺動を伴う日干萎凋が行われる萎凋工程を実施することを特徴とする生葉の香味誘発萎凋方法。
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