以下では、図1及び図2を用いて、まず本発明の一実施形態に係る暖房構造を有する住宅1の概略について説明する。
住宅1は、人(居住者)が居住するための複数階(例えば2階)立ての建築物である。図1においては、住宅1の1階部分のうち、特徴的な部分を模式的に示している。図1に示すように、住宅1は、同一階である1階部分に、高さが異なる2種類の床部を有している。ここで、前記2種類の床部のうち、高さが高い側の床部を「一般床部10」と称し、高さが低い側の床部を「低床部20」と称する。
一般床部10は、一般的な住宅の1階部分の通常の高さを有する床部である。一般床部10の床面は、1階の基準床面(1Fフロアライン)となる。一般床部10の床面は、後述する基礎40の天端44よりも上方に位置する(図2参照)。一般床部10を有する空間は、例えば台所11や、ダイニング12等として使用される。
低床部20は、一般床部10よりも低い高さを有する床部である。低床部20の床面(ダウンフロアライン)は、1階の基準床面よりも低い位置に設けられる。低床部20の床面は、後述する基礎40の天端44よりも低い位置に設けられる(図2参照)。低床部20を有する空間は、例えばリビング21として使用される。
以下では、図1を用いて、低床部20を有する空間、すなわちリビング21の構成について説明する。
なお、図1においては、紙面手前側に屋外と面する壁部が設けられるものとし、説明の便宜上、前記壁部の説明は適宜省略するものとする。
リビング21は、住宅1の1階部分の屋外側に配置される。リビング21は、屋内側において、一般床部10を有する空間(具体的には、台所11及びダイニング12)と隣接している。リビング21には、ソファ22が配置される。リビング21は、前記紙面手前側の壁部の他、低床部20の外縁(周囲)に配置される3つの壁部によって、平面視略矩形状に区画される。前記3つの壁部は、屋外側壁部30と、第一屋内側壁部31と、第二屋内側壁部32と、を含む。
屋外側壁部30は、前記紙面手前側の壁部と同様に、リビング21において屋外と面する壁部である。屋外側壁部30は、上下方向中途部に屋外へ向けて開口された窓部23を有する。なお、屋外側壁部30の構造についての詳細な説明は後述する。
第一屋内側壁部31及び第二屋内側壁部32は、リビング21において台所11及びダイニング12との境界にそれぞれ配置される壁部である。具体的には、第一屋内側壁部31は、リビング21において台所11との境界に配置される。また、第二屋内側壁部32は、リビング21においてダイニング12との境界に配置される。第一屋内側壁部31及び第二屋内側壁部32は、低床部20の床面と、一般床部10の床面と、を接続する。第一屋内側壁部31及び第二屋内側壁部32の高さは、例えば一般成人が足裏を低床部20に付けたままで一般床部10に着座可能な程度に設定される。第一屋内側壁部31の手前には、ソファ22が配置される。
このようなリビング21は、一般床部10を有する空間(台所11や、ダイニング12)と比べて天井高を確保し易く、また台所11やダイニング12と段差を介して連続して配置されるため、開放感があって居住者が集い易い空間とすることができる。
なお、リビング21のうち、屋外側壁部30の窓部23の下方空間(窓下空間)は、日射を得られるため、本来であれば快適な空間であるが、冬季においては所謂コールドドラフトが発生し易い環境下にある。すなわち、冬季においては、リビング21で寛いでいる居住者がコールドドラフトによって不快感を感じる場合がある。そこで、本発明の一実施形態である住宅1においては、居住者がこのような不快感を感じるのを防止するための構造(以下では「暖房構造」と称する)をリビング21に採用している。
以下では、図2から図10を用いて、前記暖房構造について詳細に説明する。
なお、以下では、図中に記した矢印に従って、上下方向、左右方向及び屋内外方向等をそれぞれ定義する。また、説明の便宜上、屋外側壁部30については窓部23よりも下方の構造を図示する。
前記暖房構造は、主として、基礎40と、土間スラブ50と、屋外側壁部30と、低床部20(特に、ヒータパネル234)と、気密シート60と、を具備する。
図2から図5に示す基礎40は、側面視で逆T字状に形成される所謂布基礎である。基礎40は、主として立ち上がり部42と、フーチング部41と、を具備する。立ち上がり部42は、フーチング部41から立ち上るように(立ち上がり状に)形成される。立ち上がり部42の上端面(基礎40の天端44)は、略水平面に形成される。
図2、図4及び図5に示す土間スラブ50は、基礎40のフーチング部41に載置されると共に、住宅1の下方を覆うように水平方向に延出される。図2に示すように、土間スラブ50の上側面は、グランドラインよりも上方に形成される。土間スラブ50の上側面には、後述する低床部20が配置される。図5に示すように、土間スラブ50の下側面(土間スラブ50と地面との間)には、地面の湿気が住宅1に入り込むのを防止するため、防湿シート51が設けられる。土間スラブ50の上側面の外縁には、下方に凹んだ凹部52が形成される。凹部52には、防蟻材が塗布される。なお、図5において防湿シート51は、便宜上黒太破線にて図示している。
図2から図5に示す屋外側壁部30は、上述の如くリビング21において屋外と面する壁部である。屋外側壁部30は、主として、上壁部130と、下壁部230と、を具備する。
図2から図4に示す上壁部130は、基礎40の上部(天端44)から立設される壁部である。上壁部130は、主として、窓部23を有する他、屋内外方向に沿って複数の部材が積層されて形成される。具体的には、上壁部130は、屋外方から屋内方へ向かって、外壁材131と、断熱板材132と、上壁外側断熱パネル133と、上壁中央断熱材134と、上壁内側断熱パネル135と、上壁内装材136と、が順番に配置されて形成される。
外壁材131は、上壁部130において屋外に露出される(最も屋外側に配置される)ものである。
断熱板材132は、外壁材131から離間して屋内方に配置される。断熱板材132は、断熱効果を有するグラスウールボード等からなる。断熱板材132は、外壁材131との間に通気路を確保している。断熱板材132の下端部は、基礎40の天端44より若干上方に配置される。
上壁外側断熱パネル133は、断熱板材132と隣接して、当該断熱板材132の屋内方に配置される。上壁外側断熱パネル133は、枠体としての上壁外側パネルフレーム141と、断熱効果を有するグラスウール等からなる上壁外側断熱材142と、により形成される。上壁外側断熱材142は、上壁外側パネルフレーム141の内側に略隙間なく配置される。上壁外側断熱材142は、下端部が上壁外側パネルフレーム141に支持される。こうして、上壁外側断熱パネル133は、全体として断熱効果を有する。上壁外側断熱パネル133の下端部は、基礎40の天端44より若干上方に配置される。上壁外側断熱パネル133の下端部は、断熱板材132の下端部と略同一の高さに設定される。
上壁中央断熱材134は、上壁外側断熱パネル133と隣接して、当該上壁外側断熱パネル133の屋内方に配置される。こうして、上壁中央断熱材134は、上壁外側断熱パネル133と後述する上壁内側断熱パネル135との間の隙間に介装される。上壁中央断熱材134は、断熱効果を有するグラスウール等からなる。上壁中央断熱材134は、基礎40の天端44に載置されたスペーサ143を介して当該天端44の上方に配置される。上壁中央断熱材134の下端部は、隣接する上壁外側断熱パネル133の下端部より若干上方に配置される。
上壁内側断熱パネル135は、上壁中央断熱材134と隣接して、当該上壁中央断熱材134の屋内方に配置される。上壁内側断熱パネル135は、枠体としての上壁内側パネルフレーム144と、断熱効果を有するグラスウール等からなる上壁内側断熱材145と、により形成される。上壁内側断熱材145は、上壁内側パネルフレーム144の内側に略隙間なく配置される。こうして、上壁内側断熱パネル135は、全体として断熱効果を有する。上壁内側断熱パネル135は、基礎40の天端44に載置された固定部材146・146を介して当該天端44の上方に配置される。上壁内側断熱パネル135の下端部は、隣接する上壁中央断熱材134より若干上方に配置される。
上壁内装材136は、上壁部130において屋内に露出される(最も屋内側に配置される)ものである。上壁内装材136は、上壁内側断熱パネル135と隣接して、当該上壁内側断熱パネル135の屋内方に配置される。上壁内装材136は、基礎40の天端44の上方に配置される。上壁内装材136の下端部は、隣接する上壁内側断熱パネル135の下端部と略同一の高さに設定される。
このように、上壁部130においては、壁体内(外壁材131と上壁内装材136との間)に、断熱材としての効果を有する、断熱板材132、上壁外側断熱パネル133、上壁中央断熱材134及び上壁内側断熱パネル135が敷設される。これらの部材(断熱板材132、上壁外側断熱パネル133、上壁中央断熱材134及び上壁内側断熱パネル135)の上端部は、下方から窓部23の近傍まで延びるように形成される。なお、屋外側壁部30において窓部23が無い部分においては、これらの部材の上端部は、下方から天井の近傍まで延びるように形成される。
図2から図5に示す下壁部230は、基礎40の立ち上がり部42に沿うように設けられる壁部である。下壁部230は、主として、屋内外方向に沿って積層される複数の部材と、カウンタ部236と、配線収容部237と、を具備する。前記複数の部材には、屋外方から屋内方へ向かって順番に配置される、下壁外側断熱板材231と、下壁内側断熱板材232と、下壁断熱パネル233と、ヒータパネル234と、下壁内装材235と、が設けられる。
下壁外側断熱板材231は、断熱効果を有するポリスチレンフォーム等からなる。下壁外側断熱板材231は、基礎40の立ち上がり部42に隣接して、当該立ち上がり部42の屋内方に配置される。下壁外側断熱板材231は、下端部が土間スラブ50の上側面に当接される。下壁外側断熱板材231は、上端部が基礎40の天端44より上方に配置される。下壁外側断熱板材231は、上端部が屋外方へ向けて屈曲される。すなわち、下壁外側断熱板材231は、側面視で略逆L字状に形成される。こうして、下壁外側断熱板材231は、基礎40の立ち上がり部42の屋内側面(より詳細には、当該屋内側面のうち、土間スラブ50の上側面より上方の部分)と、基礎40の天端44の屋内側の一部とを、屋内側から覆うように形成される。下壁外側断熱板材231の上端部は、上壁部130の上壁外側断熱パネル133の下端部と略同一の高さに設定される。
下壁内側断熱板材232は、下壁外側断熱板材231に隣接して、当該下壁外側断熱板材231の屋内方に配置される。下壁内側断熱板材232は、断熱効果を有するグラスウールボード等からなる。下壁内側断熱板材232は、下端部が後述する低床部20に当接される。また、下壁内側断熱板材232の上端部は、隣接する下壁外側断熱板材231の上端部と略同一の高さに設定される。
下壁断熱パネル233は、下壁内側断熱板材232から離間して屋内方に配置される。下壁断熱パネル233は、枠体としての下壁パネルフレーム241と、断熱効果を有するグラスウール等からなる下壁断熱材242と、により形成される。下壁断熱材242は、下壁パネルフレーム241の内側に略隙間なく配置される。こうして、下壁断熱パネル233は、全体として断熱効果を有する。下壁断熱パネル233は、下端部が後述する低床部20に当接される。また、下壁断熱パネル233の上端部は、下壁外側断熱板材231及び下壁内側断熱板材232の上端部より上方に配置される。また、下壁断熱パネル233の上端部は、上壁部130の上壁中央断熱材134の下端部と略同一の高さに設定される。すなわち、下壁断熱パネル233の上端部は、上壁部130の上壁外側断熱パネル133の下端部より上方に配置される。
ヒータパネル234は、下壁断熱パネル233と隣接して、当該下壁断熱パネル233の屋内方に配置される。ヒータパネル234は、発熱可能に構成される。ヒータパネル234は、下端部が後述する低床部20に当接される。ヒータパネル234の上端部及び下端部は、下壁断熱パネル233の上端部及び下端部とそれぞれ略同一の高さに設定される。なお、ヒータパネル234の構成についての詳細な説明は後述する。
下壁内装材235は、下壁部230において屋内に露出される(最も屋内側に配置される)ものである。下壁内装材235は、ヒータパネル234と隣接して、当該下壁断熱パネル233の屋内方に配置される。こうして、下壁内装材235は、屋内外方向において上壁部130の上壁内装材136より屋内方に配置される。下壁内装材235は、下端部が後述する低床部20に当接される。下壁内装材235の上端部及び下端部は、ヒータパネル234の上端部及び下端部とそれぞれ略同一の高さに設定される。
このように、下壁部230においては、壁体内(基礎40の立ち上がり部42と下壁内装材235との間)に、断熱材としての効果を有する、下壁外側断熱板材231、下壁内側断熱板材232及び下壁断熱パネル233が敷設される。これらの部材(下壁外側断熱板材231、下壁内側断熱板材232及び下壁断熱パネル233)は、基礎40の立ち上がり部42の屋内側の面に沿って上下方向に延びるように配置されると共に、上端部が基礎40の天端44より高く位置する。また、これらの部材(下壁外側断熱板材231、下壁内側断熱板材232及び下壁断熱パネル233)の上方には、カウンタ部236が配置される。また、これらの部材(下壁外側断熱板材231、下壁内側断熱板材232及び下壁断熱パネル233)は、屋内外方向において、上壁部130の壁体内に敷設された断熱材としての効果を有する部材(断熱板材132、上壁外側断熱パネル133、上壁中央断熱材134及び上壁内側断熱パネル135)より屋内側に配置される。
カウンタ部236は、下壁部230の天板となるものである。カウンタ部236は、下壁部230の屋外側から屋内側に亘って架設された合板243・243に載置される。なお、合板243・243は、側面視で屋内外方向に延出された板材である。合板243・243の屋内側端部は、下壁断熱パネル233に載置される。また、合板243・243の屋外側端部は、後述する支持部材244に載置される。こうして、カウンタ部236は、合板243・243を介して下壁部230の上端部に配置される。カウンタ部236の上側面は、1階の基準床面と略同一に設定される(図2参照)。
図3及び図4、図6に示す配線収容部237は、配管や配線等が収容可能な部分(空間)である。配線収容部237は、主として、第一収容部246と、第二収容部247と、第三収容部248と、を具備する。
第一収容部246は、合板243・243と下壁内側断熱板材232と下壁断熱パネル233と支持部材244との間に区画された空間である。なお、支持部材244は、下壁断熱パネル233の上端部と高さを合わせ、固定部材146や図示せぬ柱等(すなわち、上壁部130)に取り付けられるものである。支持部材244は、下壁外側断熱板材231の上方で、上壁部130から屋内方へ突出される。支持部材244は、下壁断熱パネル233から屋外方に離間して配置される。
こうして、支持部材244と下壁断熱パネル233との間に隙間が形成されると共に、当該隙間の上方及び下方に合板243・243及び下壁内側断熱板材232がそれぞれ配置されることにより、側面断面視で略矩形状の空間(第一収容部246)が形成される。第一収容部246は、下壁部230の上端部に形成される。第一収容部246は、下壁部230の壁面方向(横方向)に沿って延びるように形成される(図6参照)。
第二収容部247は、下壁内側断熱板材232が壁面方向(横方向)に分断して形成された空間である。換言すれば、第二収容部247は、2枚の下壁内側断熱板材232の壁面方向における端部間と下壁外側断熱板材231と下壁断熱パネル233との間に区画された空間である。第二収容部247は、上下方向(縦方向)に延びるように形成される。
第三収容部248は、下壁断熱パネル233の下壁断熱材242に穿孔された孔である。第三収容部248は、下壁断熱材242の上下中途部において、屋内から屋外方向に貫通するように形成される。なお、第三収容部248の屋内側端部は、後述するヒータパネル234の第二開口部331と対向するように形成される。
こうして、配線収容部237は、第一収容部246、第二収容部247及び第三収容部248により、下壁部230内に配管や配線等を収容(収納)することができる。
なお、配線収容部237の内側に、例えばホース状の部材を収容させた場合には、当該ホース状の部材を用いて下壁部230内で空気の流通を行うこともできる。また、例えば第三収容部248の屋内側端部を、下壁内装材235の図示せぬ開口部と接続した場合には、当該開口部を空調の給気や排気とすることもできる。
このように構成された上壁部130及び下壁部230によって、屋外側壁部30は、基礎40の天端44の近傍において、側面断面視で屋外方向と屋内方向とにズレた段差を有するような形状に形成される。
図2、図4及び図5に示す低床部20は、上述の如く一般床部10よりも低い高さを有する床部である。低床部20は、上下方向に沿って複数の部材が積層されて形成される。具体的には、低床部20は、下方から上方へ向かって、低床断熱材121と、床下地122と、捨貼123と、フロア仕上げ材124と、が順番に配置されて形成される。
低床断熱材121は、低床部20において最も下方に配置されるものである。低床断熱材121は、断熱効果を有するポリスチレンフォーム等からなる。低床断熱材121は、土間スラブ50の上側面に載置される。すなわち、低床断熱材121は、土間スラブ50上に位置し、当該土間スラブ50に直接敷設される。低床断熱材121は、土間スラブ50全体を覆うように配置される。低床断熱材121の屋外側端部は、基礎40の立ち上がり部42(すなわち、下壁部230の下壁外側断熱板材231)の近傍に配置される。低床断熱材121の下端部は、下壁部230の下壁外側断熱板材231の下端部と略同一の高さに設定される。また、低床断熱材121の屋外側端部には、後述する床下地122等を支持する束125が配置される。すなわち、低床断熱材121は、束125を介して下壁外側断熱板材231と連続される。
床下地122は、低床断熱材121の上方に配置される。床下地122は、合板等からなる。床下地122は、束125によって下方から支持される。床下地122の屋外側端部は、下壁部230の下壁外側断熱板材231に当接される。
捨貼123は、床下地122の上方に配置される。捨貼123は、パーチクルボード等からなる。捨貼123は、床下地122によって下方から支持される。捨貼123の屋外側端部は、下壁部230の下壁外側断熱板材231に当接される。また、捨貼123の屋外側端部の上側面には、下壁部230の下壁内側断熱板材232、ヒータパネル234及び下壁断熱パネル233の下端部が当接される。
フロア仕上げ材124は、低床部20において屋内に露出される(最も屋内側に配置されるもの)である。フロア仕上げ材124は、捨貼123の上方に配置される。フロア仕上げ材124は、捨貼123によって下方から支持される。フロア仕上げ材124の屋外側端部は、下壁部230のヒータパネル234に当接される。
図3から図5に示す気密シート60は、合成樹脂や合成ゴム等の適度の弾力性を有する素材からなる。気密シート60は、床部(一般床部10及び低床部20)を除いて、住宅1全体を覆うように配置される。気密シート60は、例えば屋外側壁部30(下壁部230及び上壁部130)においては、当該屋外側壁部30の壁体内で当該壁体に沿って配置される。なお、図面において気密シート60は、便宜上黒太破線にて図示している。
具体的には、気密シート60は、屋外側壁部30のうち下壁部230においては、下壁断熱パネル233とヒータパネル234との間から合板243・243の間に亘って配置される。また、気密シート60は、屋外側壁部30のうち上壁部130においては、上壁内側断熱パネル135と上壁内装材136との間に配置される。このような配置によって、気密シート60は屋外側壁部30の形状(段差を有する形状)にもかかわらず、当該形状に沿った気密ラインを容易に形成することができる。
以下では、図7及び図8を用いて、ヒータパネル234の構成について詳細に説明する。
ヒータパネル234は、上述の如く発熱可能に構成されるものである。ヒータパネル234は、主として、ヒータ310と、第一押さえ板320と、第二押さえ板330と、を具備する。
ヒータ310は、撓み自在なシート状に形成される。ヒータ310は、正面視で左右方向に延出された略矩形状に形成される。ヒータ310は、主として、薄膜状の発熱体311(図面における斜線部分)と、薄膜状の図示せぬ電極と、前記電極に接続される電線312と、を具備する。発熱体311は、前方を向いて配置される。電線312は、屋外側壁部30の下壁部230に形成された配線収容部237に収容され、住宅1内の電源に接続される。こうして、電線312を介して前記電極が通電されると、発熱体311が発熱する(ヒータ310が発熱する)。このようなヒータ310としては、例えばPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータが採用される。
第一押さえ板320は、板状の部材である。第一押さえ板320は、正面視で左右方向に延出された略矩形状に形成される。具体的には、第一押さえ板320は、ヒータ310より若干左右方向に長く形成される。第一押さえ板320は、左部に正面視で矩形状の第一開口部321を具備する。
第二押さえ板330は、板状の部材である。第二押さえ板330は、正面視で左右方向に延出された略矩形状に形成される。具体的には、第二押さえ板330は、第一押さえ板320と略同一の形状及び大きさに形成される。第二押さえ板330は、左部に正面視で矩形状の第二開口部331を具備する。
こうして、ヒータパネル234は、ヒータ310、第一押さえ板320及び第二押さえ板330が互いに組み付けられて形成される。具体的には、ヒータ310の前方及び後方に第一押さえ板320及び第二押さえ板330がそれぞれ配置され、ヒータ310が当該第一押さえ板320及び第二押さえ板330によって前後方向から挟持される。これによって、ヒータパネル234は、ヒータ310の発熱体311が第一押さえ板320と当接するように形成される。また、第一押さえ板320の第一開口部321、ヒータ310の電線312及び第二押さえ板330の第二開口部331は、前後方向に対向する位置に配置される。これによって、ヒータ310の電線312は、第一開口部321及び第二開口部331を介して、ヒータパネル234の前方又は後方に取り出すことができる。
このような構成のヒータパネル234においては、ヒータ310が発熱すると、第一押さえ板320が加熱される。こうして、加熱された第一押さえ板320の表面からは、前方へ向けた輻射熱(遠赤外線)が放出される。
また、下壁部230に設けられたヒータパネル234が発熱すると、当該ヒータパネル234の屋内方に配置された下壁内装材235を介して、リビング21へ向けて輻射熱(遠赤外線)が放出される(図10参照)。
以下では、図9を用いて、ヒータパネル234を下壁部230に設置した場合の、電線312の配線(収容)作業について説明する。
ヒータパネル234は、上述の如く下壁部230において、下壁断熱パネル233の屋内方に配置される。すなわち、ヒータパネル234は、下壁部230に設けられた断熱効果を有する全ての部材(下壁外側断熱板材231、下壁内側断熱板材232及び下壁断熱パネル233)より屋内方に配置される。
なお、本実施形態においては、下壁部230に、3つのヒータパネル234が壁面に沿って互いに隣接するように配置される(図6参照)。また、3つのヒータパネル234の屋内方にはそれぞれ下壁内装材235が配置される。ヒータパネル234は、下壁部230に設置された後、電線312が配線収容部237に収容されて住宅1内の電源に接続される。
具体的には、ヒータパネル234を設置する際、下壁部230のカウンタ部236及び合板243・243は当該下壁部230から取り外される。このように、カウンタ部236が下壁部230から取り外された状態では、下壁部230の上方(すなわち、下壁部230の上端面)が第一収容部246、第二収容部247、第三収容部248を順番に介して、ヒータパネル234の第二押さえ板330の第二開口部331と連通される。すなわち、カウンタ部236が下壁部230から取り外された状態では、配線収容部237が上方へ開放される。このように、本実施形態において、配線収容部237は、上方に開放可能に構成されている。
すなわち、ヒータパネル234の電線312は、第二開口部331から延出されると共に、第三収容部248及び第二収容部247を順番に収容され、下壁部230の上方へと取り出される。下壁部230の上方へ取り出された電線312は、上方から第一収容部246に沿うように配置し、住宅1内の電源側へ向けて延出させることができる。このように、ヒータパネル234の電線312は、配線収容部237に収容され、住宅1内の電源側へ向けて延出された後、当該電源に接続される。
こうして、ヒータパネル234の電線312が住宅1内の電源に接続されると、カウンタ部236及び合板243・243が下壁部230に取り付けられる。すなわち、配線収容部237がカウンタ部236及び合板243・243によって上方から被覆される。これによって、ヒータパネル234を設置した場合の、電線312の配線作業が終了する。
このように、ヒータパネル234を設置した場合の電線312の配線作業においては、カウンタ部236及び合板243・243が下壁部230から取り外されるため、当該下壁部230の上方から電線312を住宅1内の電源に容易に接続することができる。また、下壁部230の上方から電線312を配線収容部237に収容することができるため、電線312の配線(収容)作業を容易に行うことができる。
なお、本実施形態においては、ヒータパネル234を設置する際に、カウンタ部236及び合板243・243が下壁部230から取り外される構成であったが、電線312の配線作業はこの手順に限定するものではない。具体的には、ヒータパネル234を設置した後に、カウンタ部236及び合板243・243が下壁部230に取り付けられる構成であってもよい。このような構成によれば、電線312の配線作業を行う場合に、(一旦取り付けられた)カウンタ部236及び合板243・243を取り外す手間が必要なくなるため、当該電線312の配線作業の効率化を図ることができる。
以下では、屋外側壁部30及び低床部20に設けられた断熱材(断熱効果を有する部材)の配置構成について説明する。
ここで上述の如き、屋外側壁部30のうち上壁部130には、断熱効果を有する部材として、断熱板材132、上壁外側断熱パネル133、上壁中央断熱材134及び上壁内側断熱パネル135が設けられる。また、屋外側壁部30のうち下壁部230には、断熱効果を有する部材として、下壁外側断熱板材231、下壁内側断熱板材232及び下壁断熱パネル233が設けられる。また、低床部20には、断熱効果を有する部材として、低床断熱材121が設けられる。
まず、低床部20において、低床断熱材121は土間スラブ50上に直接敷設される。また、低床断熱材121の屋外側端部は、低床断熱材121は、束125を介して下壁外側断熱板材231と接続される。このように、低床部20から下壁部230にかけての箇所は、断熱材が連続して配置されている。したがって、低床部20から下壁部230にかけての箇所から、住宅1内(特に低床部20の上方のリビング21)が外気温の影響を受けるのを抑制することができる。
また、屋外側壁部30において、下壁部230の下壁断熱パネル233の上端部は、上壁部130の上壁外側断熱パネル133の下端部より上方に配置される。すなわち、屋外側壁部30においては、上下方向において、下壁断熱パネル233と上壁外側断熱パネル133とが連続して配置されている。また、屋外側壁部30において、下壁外側断熱板材231と上壁内側断熱パネル135とが、屋内外方向において、互いに隣り合うように並設されることによって、概ね連続(近接)して配置されている。特に、屋外側壁部30において、下壁部230の下壁外側断熱板材231の上端部は、上壁部130の上壁内側断熱パネル135の下方の固定部材146と当接されている。すなわち、屋外側壁部30においては、屋内外方向において、下壁外側断熱板材231と上壁内側断熱パネル135とが連続して配置されている。
また、屋外側壁部30において、下壁部230の下壁外側断熱板材231は、上端部が基礎40の天端44以上高くに位置する(本実施形態においては、天端44よりも上方に位置する)。すなわち、屋外側壁部30においては、上下方向において、下壁外側断熱板材231と上壁外側断熱パネル133とが、概ね連続(近接)して配置されている。
このように、屋外側壁部30においては、上壁部130と下壁部230とが接続される箇所に段差を有する形状であるが、当該接続される箇所に、上下方向及び屋内外方向に断熱材が略隙間なく配置されている。したがって、当該接続される箇所(段差を有する箇所)から、住宅1内(特に、屋外側壁部30に面するリビング21)が外気温の影響を受けるのを抑制することができる。なお、断熱材の長さ(大きさ)や、種類等は、住宅1が建てられる場所の気候(断熱の必要性)等に応じて適宜設定することができる。
図10に示すように、このような構成のリビング21においては、ヒータパネル234が発熱すると、当該ヒータパネル234の屋内方に配置された下壁内装材235を介して、リビング21へ向けて輻射熱(遠赤外線)が放出される。リビング21へ向けて輻射熱(遠赤外線)が放出されると、リビング21の中心側が暖められると共に、輻射熱の一部が屋外側壁部30の壁面に沿って上昇する。こうして、輻射熱の一部が屋外側壁部30の壁面に沿って上昇すると、コールドドラフトの発生を抑制することができる。
また、屋外側壁部30及び低床部20に設けられた断熱材が、上壁部130と下壁部230とが接続される箇所に略隙間なく配置され、且つ低床部20から下壁部230にかけての箇所に略隙間なく配置されることによって、リビング21が外気温の影響を受けるのを抑制している。このような構成によって、リビング21で寛いでいる居住者が不快感を感じるのを抑制することができる。
なお、図10においては、ヒータパネル234を、屋外側壁部30の下壁部230だけでなく、第二屋内側壁部32に設置している。このような構成によれば、リビング21を一方向(屋外側)からだけでなく、他方向(ダイニング12側)からも暖めることができるため、より効果的にリビング21を暖めることができる。なお、ヒータパネル234の設置場所は、リビング21の間取りに応じて任意に設定することができる。本実施形態においては、第一屋内側壁部31の手前にはソファ22(障害物)が配置されるため、当該第一屋内側壁部31にヒータパネル234は設置していない。
以上のように、本発明の一実施形態に係る住宅1(建築物)の暖房構造は、
一般床部10と、
前記一般床部10と同一階であり前記一般床部10より低く位置する低床部20と、
前記低床部20の周囲に位置する下壁部230の壁面(下壁面)と、
を備え、
前記下壁部230の壁面(下壁面)は、前記一般床部より低く位置し、
前記下壁部230の壁面(下壁面)の少なくとも一部にヒータパネル234(暖房手段)を備えているものである。
このような構成により、下壁部230の壁面の少なくとも一部にヒータパネル234を備えているため、低床部20を有するリビング21を暖めることができる。
また、本発明の一実施形態に係る住宅1(建築物)の暖房構造においては、
前記下壁部230の壁面(下壁面)より高く位置する上壁部130の壁面(上壁面)をさらに具備し、
前記ヒータパネル234(暖房手段)は、前記上壁部130の壁面(上壁面)に設けられた窓部23(外部への開口部)の下方に位置している。
このような構成により、コールドドラフトの発生を効果的に抑制することができる。
また、本発明の一実施形態に係る住宅1(建築物)の暖房構造において、
前記下壁部230の壁面(下壁面)は、前記上壁部130の壁面(上壁面)よりも室内側に位置しているものである。
このような構成により、ヒータパネル234をリビング21の中心に近い位置に配置することができるため、リビング21を効果的に暖めることができる。
また、本発明の一実施形態に係る住宅1(建築物)の暖房構造においては、
前記下壁部230の壁面(下壁面)の内部に、電線312が収容可能な配線収容部237が設けられているものである。
このような構成により、ヒータパネル234の電線312の納まりを向上させることができる。
また、本発明の一実施形態に係る住宅1(建築物)の暖房構造において、
前記配線収容部237は、上方に開放可能に構成され、
上方から前記電線312(配管及び/又は配線)を前記配線収容部237に収容可能であるものである。
このような構成により、電線312の収容(配線)作業を容易に行うことができる。
また、本発明の一実施形態に係る住宅1(建築物)の暖房構造において、
前記配線収容部237には、前記下壁部230の壁面(下壁面)の内部の上端を横方向に沿って延びた第一収容部246(横収容部)が含まれているものである。
このような構成により、ヒータパネル234の電線312の納まりを向上させることができる。
また、本発明の一実施形態に係る住宅1(建築物)の暖房構造において、
前記下壁部230の壁面(下壁面)は、上部にカウンタ部236(天板)を備えているものである。
このような構成により、ヒータパネル234の電線312の配線作業を容易に行うことができる。
なお、本実施形態に係る住宅1は、本発明に係る建築物の一実施形態である。
また、本実施形態に係る屋外側壁部30の壁面は、本発明に係る壁面の一実施形態である。
また、本発明に係るヒータパネル234は、本発明に係る暖房手段の一実施形態である。
また、本実施形態に係る一般床部10は、本発明に係る一般床部の一実施形態である。
また、本実施形態に係る低床部20は、本発明に係る低床部の一実施形態である。
また、本実施形態に係る上壁部130の壁面は、本発明に係る上壁面の一実施形態である。
また、本実施形態に係る下壁部230の壁面は、本発明に係る下壁面の一実施形態である。
また、本実施形態に係る電線312は、本発明に係る配線の一実施形態である。
また、本実施形態に係る配線収容部237は、本発明に係る収容部の一実施形態である。
また、本実施形態に係る第一収容部246は、本発明に係る横収容部の一実施形態である。
また、本実施形態に係るカウンタ部236は、本発明に係る天板の一実施形態である。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、本発明に係る建築物は、住宅1に限定するものでなく、オフィスビルや、病院、学校等であってもよい。
また、本実施形態において、低床部20は、リビング21に設けられるものとしたが、台所11やダイニング12等に設けられてもよい。また、低床部20は、1階に設けられたが、2階等であってもよい。
また、断熱材として用いられる素材は、本実施形態に係るものに限定するものではなく、ロックウールや、グラスウール等の繊維材や、ポリスチレンフォーム等の樹脂材を、適宜に採用することができる。
また、下壁断熱材(下壁外側断熱板材231、下壁内側断熱板材232及び下壁断熱パネル233)は、基礎40の立ち上がり部42の屋内側の面に沿って設けられるものとしたが、基礎40の内部に設けられてもよい。
また、ヒータパネル234は、下壁部230の壁面に沿って当該壁面の全体に亘るように配置されているが、当該壁面の一部だけに配置されるものであってもよい。ただし、ヒータパネル234は、コールドドラフトの発生を効果的に抑制するため、窓部23の下方に配置されることが望ましい。
また、本実施形態において、下壁外側断熱板材231は、上端部が基礎40の天端44より上方に配置されるものであるが、これに限定するものではない。下壁外側断熱板材231は、上端部が基礎40の天端44以上高く位置するものであればよい。
また、本発明に係る下壁断熱材は、3つの断熱材(下壁外側断熱板材231、下壁内側断熱板材232及び下壁断熱パネル233)を有するものとしたが、これに限定するものではない。本発明に係る下壁断熱材は、2つの断熱材(例えば、下壁外側断熱板材231及び下壁断熱パネル233)を有したり、1つの断熱材(例えば、下壁外側断熱板材231)を有したりするものであってもよい。本発明に係る下壁断熱材が有する断熱材の種類や数は、建築物が建てられる場所の気候等に応じて任意に設定することができる。