以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。
<実施の形態1>
(建具の全体概要)
図1〜図6は、本発明の実施の形態1である建具を示したものである。ここで例示する建具は、脱衣室と浴室との間の出入口に設置される浴室用の片引戸であり、枠体10の内部に可動障子20及び固定障子30を備えている。枠体10は、左右の縦枠11,12の互いに対向する見込み面11a,12aの上端部間に上枠13を設けるとともに、左右の縦枠11,12の互いに対向する見込み面11a,12aの下端部間に下枠14を設けることによって矩形状に構成した、いわゆる縦通しと称されるものである。
可動障子20及び固定障子30は、それぞれ透明樹脂やガラス等の透光性を有した矩形状を成すパネル(面材)21,31と、パネル21,31の四周に装着した上框22,32、下框23,33及び左右の縦框24,25、34,35とを備えて構成したものである。可動障子20においても、枠体10と同様の縦通しであり、左右の縦框24,25の互いに対向する見込み面24a,25aの間に上框22及び下框23が取り付けてあり、固定障子30においても、左右の縦框34,35の互いに対向する見込み面34a,35aの間に上框32及び下框33が取り付けてある。
本実施の形態1では、可動障子20及び固定障子30を左右に並設し、可動障子20の召合せとなる縦框(以下、区別する場合に召合せ框24という)を、浴室側から見て固定障子30の右側に配置された召合せとなる縦框(以下、区別する場合に固定障子30の右縦框35という)に対して見込み方向に並設した場合に、枠体10の開口を塞ぐことができるように枠体10、可動障子20及び固定障子30の外形寸法が設定してある。図1に示すように、この建具では、浴室側から見て枠体10の向かって左側に固定障子30が配置してあり、枠体10の向かって右側に構成される枠開口10Aが可動障子20によって開閉されることになる。
上枠13、下枠14、左右の縦枠11,12、上框22,32、下框23,33、左右の縦框24,25、34,35は、樹脂もしくはアルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材であり、それぞれが長手方向の全長にわたってほぼ一様な断面形状を有するように構成してある。上枠13、下枠14及び左右の縦枠11,12は、互いに見込み方向に沿った寸法(以下、見込み寸法という)がほぼ同一であり、可動障子20の上框22、下框23及び左右の縦框24,25は、互いに見込み寸法がほぼ同一である。固定障子30については、下框33及び左右の縦框34,35の見込み寸法が互いにほぼ同一であるが、上框32は下框33に比べて見込み寸法が小さく構成してある。
以下、可動障子20、固定障子30及び枠体10についてそれぞれの構成を詳述し、併せて本発明の特徴部分について説明を行う。なお、本明細書で用いる「見込み方向」とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については、「見込み面」と称する場合がある。また、「見付け方向」とは、上枠13及び下枠14あるいは上框22,32や下框23,33等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠11,12や縦框24,25、34,35等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を「見付け方向」という。見付け方向に沿った面については、「見付け面」と称する場合がある。枠や框の長手とは、それぞれを押し出し成形する場合の押し出し方向に一致した方向である。
(可動障子20の構成について)
図5及び図6に示すように、可動障子20の縦框24,25は、見込み寸法に対して見付け方向に沿った寸法(以下、見付け寸法という)が小さい略矩形の断面を有した中空状を成すように構成してある。本実施の形態1では、見込み寸法の1/2よりわずかに小さい見付け寸法を有するように縦框24,25が構成してある。可動障子20の上框22及び下框23は、図3に示すように、それぞれ見込み方向に対して見付け方向がわずかに大きな縦長略矩形の断面を有した中空状を成している。
これら可動障子20の上框22、下框23及び左右の縦框24,25には、それぞれ見込み方向において浴室側に偏った位置に面材収容部22b,23b,24b,25bが設けてある。面材収容部22b,23b,24b,25bは、框22,23,24,25の内周側となる見込み面22a,23a,24a,25aに開口した横断面が矩形状の凹部であり、パネル21の縁部を収容した状態で挟持することのできる寸法に形成してある。本実施の形態1では、パネル21において浴室に臨む表面に支持ヒレ部22c,23c,24c,25cのみが配置されるようにそれぞれの框22,23,24,25に面材収容部22b,23b,24b,25bが設けてある。図5中の符号26は、パネル21において戸先側となる部位の両面から突出するように設けた可動障子20の取手である。また、符号27は、可動障子20の下面に設けたトラックガイドである。このトラックガイド27は左右の縦框24,25から下框23の長手方向に沿って連続するように設けたものである。
(固定障子30の構成について)
図5及び図6に示すように、固定障子30の縦框34,35は、可動障子20の縦框24,25と同様に見込み寸法に対して見付け寸法が小さい略矩形の断面を有した中空状を成すように構成してある。本実施の形態1では、可動障子20の縦框24,25よりもわずかに大きな見込み寸法を有し、かつ可動障子20の縦框24,25とほぼ同じ見付け寸法を有するように固定障子30の縦框34,35が構成してある。浴室側から見て固定障子30の左側に配置される縦框(以下、区別する場合に固定障子30の左縦框34という)には係合ヒレ部34dが設けてあり、固定障子30の右縦框35には縦框止水材36が設けてある。
係合ヒレ部34dは、図5に示すように、左縦框34において浴室側に位置する外周側の縁部から外周に向けて突出した後、脱衣室側に向けて屈曲した部分である。この係合ヒレ部34dは、左縦框34と一体に成形してある。縦框止水材36は、右縦框35の浴室に臨む見付け面に設けた装着溝35dを介して右縦框35に配設したものである。この縦框止水材36は、可動障子20が枠開口10Aを閉じた場合に召合せ框24の脱衣室に臨む見付け面に当接することにより、互いの間の止水を行うものである。
また、縦框34,35の上端部には、それぞれキャップ部材37が装着してある。キャップ部材37は、縦框34,35の上端開口を閉塞するもので、個々の上端部に遮水ヒレ部37aを有している。遮水ヒレ部37aは、図には明示していないが、縦框34,35の見付け寸法とほぼ同じ幅を有した薄板状部材であり、キャップ部材37の上端から上方に向けて突出している。
固定障子30の下框33は、図4に示すように、略正方形の断面を有した中空状を成している。この下框33には、装着溝33d、収容凹部33e及び突出ヒレ部33fが設けてある。装着溝33dは、下框33の下面において浴室側に偏った位置に形成したもので、断面が略矩形で下框33の下面に開口している。この装着溝33dは、下框33の長手方向に沿った全長に設けてある。収容凹部33eは、下框33の下端において装着溝33dよりも脱衣室側となる部位に、装着溝33dに隣接して設けた凹部であり、下框33の長手方向に沿った全長に設けてある。図4からも明らかなように、この収容凹部33eは、見込み寸法及び高さがそれぞれ装着溝33dよりも大きく構成してあり、内部に係合片33gを有している。係合片33gは、装着溝33dとの境界となる部分から脱衣室側に向けてほぼ水平に突出した平板状部分である。突出ヒレ部33fは、下框33の下面から下方に突出した平板状を成す部分である。本実施の形態1では、下框33において最も浴室側となる部分に突出ヒレ部33fが設けてある。
一方、固定障子30の上框32は、異形の中空状を成すもので、縦框34,35よりも見込み寸法が小さく、かつ下框33よりも見付け寸法がわずかに大きい外形となるように構成してある。この上框32は、浴室側の見付け面が下框33及び縦框34,35の見付け面とほぼ同じ見込み位置となるように左右の縦框34,35の間に取り付けてある。本実施の形態1では、底壁部321、下方見付け壁部322、傾斜壁部323、上方見付け壁部324、上壁部325、湾曲壁部326、見付け支持壁部327を有して固定障子30の上框32が構成してある。
底壁部321は、見込み方向に沿ってほぼ水平に延在した部分であり、下框33の見込み寸法のほぼ3/4となるように構成してある。下方見付け壁部322は、底壁部321において脱衣室側の端部からほぼ鉛直となるように上方に延在した部分である。傾斜壁部323は、下方見付け壁部322の上端から浴室側に向けて漸次上方となるように傾斜延在した部分である。上方見付け壁部324は、傾斜壁部323の上端部からほぼ鉛直となるように上方に延在した部分である。この上方見付け壁部324は、全体の見付け寸法に対してほぼ1/2を占めるように構成してある。下方見付け壁部322及び傾斜壁部323は、それぞれ全体の見付け寸法に対してほぼ1/4ずつの割合となっている。上壁部325は、上方見付け壁部324の上端部から浴室側に向けてほぼ水平に延在する部分である。湾曲壁部326は、上框32の外表面が凹状となるように設けた部分であり、上壁部325の延在端部から浴室側に向けて漸次下方となるように湾曲している。見付け支持壁部327は、湾曲壁部326の延在端部からほぼ鉛直となるように下方に延在した部分である。見付け支持壁部327の下端位置は、底壁部321とほぼ同じである。
これら固定障子30の上框32、下框33及び左右の縦框34,35には、それぞれ見込み方向において浴室側に偏った位置に面材収容部32b,33b,34b,35bが設けてある。面材収容部32b,33b,34b,35bの構成については可動障子20のものと同様である。またパネル31において浴室に臨む表面に支持ヒレ部32c,33c,34c,35cのみが配置されるようにそれぞれの框32,33,34,35に面材収容部32b,33b,34b,35bが設けてある点も可動障子20と同様であるため、詳細説明は省略する。
上框32の上方見付け壁部324において右縦框35に近接する部分には、支持ピン38が設けてある。支持ピン38は、円柱状を成す軸部38aの先端に太径の頭部38bを有するとともに、軸部38aの基端部に雄ネジ38cを有したものである。この支持ピン38は、頭部38bを脱衣室側に向け、かつ軸部38aの軸芯が上框32の延在方向に対して直交するとともに、ほぼ水平となる状態で雄ネジ38cを介して上框32に螺合してある。
(枠体10の構成について)
浴室側から見て枠体10の右側に配置される縦枠(以下、区別する場合に右縦枠12という)は、図5及び図6に示すように、見込み板12b、第1角筒部12c及び第2角筒部12dを有して構成してある。見込み板12bは、見込み方向に沿って延在したほぼ平板状を成す部分である。第1角筒部12cは、見込み板12bの浴室側に位置する端部から外周側に突出したもので、見込み板12bとの間に断面が略矩形の中空部分を構成している。第2角筒部12dは、見込み板12bの脱衣室側に位置する端部から内周側に突出したもので、見込み板12bとの間に断面が略矩形の中空部分を構成している。図からも明らかなように、第1角筒部12cは、見込み寸法及び見付け寸法がそれぞれ第2角筒部12dよりも小さく構成してある。第2角筒部12dにおいて浴室に臨む見付け面には、第1止水材15が設けてある。第1止水材15は、右縦枠12の浴室に臨む見付け面に設けた装着溝12eを介して右縦枠12に設けたものである。この第1止水材15は、可動障子20が枠開口10Aを閉じた場合に浴室側から見て可動障子20の右側に配置される縦框(以下、区別する場合に可動障子20の戸先框25という)の脱衣室に臨む見付け面に当接することにより、互いの間の止水を行うものである。
これに対して浴室側から見て枠体10の左側に配置される縦枠(以下、区別する場合に左縦枠11という)は、見込み板11b及び第1角筒部11cを有する点で右縦枠12と一致し、位置決め角筒部11d及び係合受ヒレ部11eを有する点で右縦枠12と異なる。すなわち、左縦枠11において見込み板11bの脱衣室側に位置する端部には、第2角筒部12dに換えて位置決め角筒部11dが設けてある。位置決め角筒部11dは、見込み板11bにおいて最も脱衣室側に位置する端部から内周側に突出したものである。見込み板11bからの位置決め角筒部11dの突出寸法は、固定障子30の左縦框34において係合ヒレ部34dを含む見付け寸法とほぼ同一である。係合受ヒレ部11eは、見込み板11bにおいて第1角筒部11cと位置決め角筒部11dとの間に位置する部位の内周側から見付け方向に沿って突出した後、浴室側に向けて屈曲したものである。この係合受ヒレ部11eは、左縦框34の脱衣室に臨む見付け面を位置決め角筒部11dの浴室に臨む見付け面に当接させた場合に係合ヒレ部34dの先端部を見込み板11bとの間に挟持する位置に設けてある。
上述した可動障子20は、左右の縦枠11,12に対して、第2角筒部12dの浴室に臨む見付け面から第1角筒部12cの浴室に臨む見付け面までの見込み範囲内に配置してある。左右方向においては、可動障子20が枠開口10Aを閉じた場合に可動障子20の戸先框25が右縦枠12の第2角筒部12dと見込み方向に並設され、脱衣室側から見た場合に戸先框25が第2角筒部12dによって覆い隠されるように可動障子20が配置してある。固定障子30は、左右の縦枠11,12に対して、位置決め角筒部11dの浴室に臨む見付け面から第2角筒部12dの浴室に臨む見付け面までの見込み範囲内に配置してある。可動障子20によって枠開口10Aを閉じた状態においては、脱衣室側から見た場合、可動障子20の召合せ框24が固定障子30の右縦框35によって覆い隠されるとともに、固定障子30の左縦框34が位置決め角筒部11dによって覆い隠されることになる。
枠体10の下枠14は、図3及び図4に示すように、第1水平延在部141、第1垂下延在部142、第2水平延在部143、傾斜延在部144、第2垂下延在部145を有したものである。第1水平延在部141は、下枠14において脱衣室側に位置し、固定障子30が載置される部分であり、見込み方向に沿ってほぼ水平に延在している。第1水平延在部141において固定障子30の下框33よりも脱衣室側に位置する部分には、固定ヒレ部146が設けてある。
第1垂下延在部142は、第1水平延在部141において下框33の突出ヒレ部33fよりもわずかに脱衣室側となる部分から下方に向けてほぼ鉛直に延在した部分である。この第1垂下延在部142には、溝ヒレ部(段部)147が設けてある。溝ヒレ部147は、第1水平延在部141よりもわずかに高さの低い位置から浴室側に向けてほぼ水平に突出した部分であり、突出端部の上面に装着溝147aを有している。この装着溝147aには、右縦枠12の装着溝12eに装着した第1止水材15が一連となるように連続して装着してある。図5及び図6に示すように、この第1止水材15は、下枠14においては固定障子30の右縦框35が設けられる部位よりもわずかに右縦枠12となる部位までの間に装着してある。第1水平延在部141と溝ヒレ部147との段差は、突出ヒレ部33fの突出寸法とほぼ同等であり、第1水平延在部141に固定障子30を載置させた場合に突出ヒレ部33fを第1垂下延在部142の見付け面に当接させることが可能である。
第2水平延在部143は、第1垂下延在部142の下端から浴室側に向けてほぼ水平に延在した部分である。この第2水平延在部143には、可動障子20のトラックガイド27に対応する部位に下枠14の長手方向に沿ってトラック148が設けてある。トラック148は、トラックガイド27を介して可動障子20を下枠14の長手方向に沿って案内するもので、第2水平延在部143の上面から突出した状態で第2水平延在部143に設けたトラック溝143aに装着してある。傾斜延在部144は、第2水平延在部143の延在端部から浴室側に向けて漸次下方に傾斜したものである。第2垂下延在部145は、傾斜延在部144の延在端部から下方に向けてほぼ鉛直に延在した部分である。
枠体10の上枠13は、第1見付けヒレ部131、第1水平ヒレ部132、垂下ヒレ部133、ガイドヒレ部134、サブガイドヒレ部135、第2水平ヒレ部136、第2見付けヒレ部137を有したものである。
第1見付けヒレ部131は、上枠13においてもっとも脱衣室側に位置する部分であり、ほぼ鉛直となるように上方に延在した後、浴室側に向けて屈曲し、さらに鉛直上方に向けて延在している。この第1見付けヒレ部131は、下端の位置が固定障子30における上框32の下端とほぼ等しくなるように構成してある。第1水平ヒレ部132は、第1見付けヒレ部131の上端部から浴室側に向けてほぼ水平となるように延在する部分であり、見込み寸法が固定障子30よりも大きく構成してある。この第1水平ヒレ部132は、下枠14の第1水平延在部141との間に固定障子30を上下に移動することができるだけの寸法を確保した位置となるように縦枠11,12に取り付けてある。
第1水平ヒレ部132には、上框32の湾曲壁部326に対応する部位にポケット部132aが設けてある。ポケット部132aは、上枠13の長手に沿って形成した下方に開口する凹部であり、その内部に換気制御弁16の基端軸部16aを回転可能に収容している。換気制御弁16は、基端軸部16aを中心として回転することにより、上框32の湾曲壁部326上端に当接した状態と湾曲壁部326の上端から離隔した状態とに移動することが可能である。図には明示していないが、換気制御弁16は、固定障子30において左右の縦框34,35の間に設けた上框32の長手寸法とほぼ同じ長さに構成してある。
垂下ヒレ部133は、第1水平ヒレ部132の延在端部から下方に向けてほぼ鉛直となるように延在した部分である。ガイドヒレ部134は、垂下ヒレ部133の下端から浴室側に向けてほぼ水平に延在した後、下方に向けてほぼ鉛直に延在した部分である。サブガイドヒレ部135は、ガイドヒレ部134の水平に延在する部分において垂下ヒレ部133に近接した部分から下方に向けてほぼ鉛直に延在した部分である。これらガイドヒレ部134及びサブガイドヒレ部135には、それぞれの下端に支持条部134a,135aが設けてある。支持条部134a,135aは、互いに対向する位置から互いに対向するように延在したもので、互いの延在端部間にガイド溝138を構成している。ガイド溝138は、下枠14のトラック148に対向した位置に開口する切欠であり、上枠13の長手方向に沿って延在している。第2水平ヒレ部136は、ガイドヒレ部134の下端から浴室側に向けてほぼ水平に延在した部分である。第2見付けヒレ部137は、第2水平ヒレ部136の延在端部から上下方向に向けてほぼ鉛直に延在した部分である。第2見付けヒレ部137の下端は、固定障子30における上框32の下端とほぼ等しい高さに設定してある。
上述の構成を有した枠体10には、上枠13に框受部材40及び支持部材50が設けてあるとともに、下枠14に係合片部材60が設けてある。これら框受部材40、支持部材50及び係合片部材60は、枠体10に対して固定障子30を取り付けるためのものである。
框受部材40は、図8〜図10に示すように、カバープレート部41と当接ブロック部42とを有したもので、上枠13において固定障子30の右縦框35に対応する部位に固定してある。カバープレート部41は、上枠13の第1見付けヒレ部131から垂下ヒレ部133までの間において第1見付けヒレ部131の下端よりも上方となる部位を覆うものである。当接ブロック部42は、カバープレート部41の右縦框35に対向する面において脱衣室側となる部分に設けたもので、浴室に臨む部分に框当接面42aを有している。框当接面42aは、鉛直方向に沿って延在する平面であり、図には明示していないが、左縦枠11に設けた位置決め角筒部11dの浴室に臨む見付け面と同一の見込み位置となるように設けてある。
支持部材50は、上述した固定障子30の支持ピン38とともに上方係合手段を構成するものである。本実施の形態1では、図11に示すように、平板状を成す支持基板部51と、支持基板部51の一側縁から屈曲して延在し、支持ピン38の頭部38bに対向する係合板部52とを有して支持部材50が構成してある。この支持部材50は、図8〜図10に示すように、支持基板部51を介して上枠13の第1水平ヒレ部132に取付ネジSを螺合することにより、係合板部52が下方に向けて突出した状態で上枠13に取り付けてある。支持部材50の係合板部52は、支持基板部51から下方に向けてほぼ直角に屈曲した第1板部521と、第1板部521の下端から脱衣室側に向けて漸次下方に傾斜した第2板部522と、第2板部522の下端からほぼ鉛直に垂下した第3板部523とを有したものである。
この支持部材50の係合板部52には、挿通孔53が形成してある。挿通孔53は、図11に示すように、支持ピン38の頭部38bを挿通可能とする第1の切欠部53aと、軸部38aを挿通可能、かつ頭部38bを挿通不可とする第2の切欠部53bと、第1の切欠部53aから第2の切欠部53bに向けて漸次幅が減少する第3の切欠部53cとを有したものである。この挿通孔53は、第1板部521の上端から第2板部522を経て第3板部523に至るまでの間に上下に連続するように形成してある。具体的には、枠体10の下枠14に固定障子30の下框33を載置させた場合、図11の(b)において一点鎖線で示すように、上框32の支持ピン38が第3板部523に設けた第2の切欠部53bに位置し、第3板部523の表面523aが頭部38bと対向するように支持部材50が構成してある。固定障子30を上方に移動させた場合には、図11の(b)において二点鎖線で示すように、上框32の支持ピン38が第1板部521に設けた第1の切欠部53aに位置されることになり、枠体10に対して固定障子30を見込み方向に沿って移動させることで挿通孔53に対して支持ピン38の頭部38bを挿抜させることが可能となる。
支持ピン38の突出長さ及び支持部材50の取付位置は、支持ピン38の軸部38aが第2の切欠部53bに位置し、かつ頭部38bが第3板部523の表面523aに当接した場合、固定障子30の左縦框34が左縦枠11の位置決め角筒部11dに当接し、かつ右縦框35が框受部材40の当接ブロック部42に当接するように設定してある。
係合片部材60は、上述した固定障子30の係合片33gとともに下方係合手段を構成するもので、第1水平延在部141の上面において固定障子30の下框33によって覆われる位置に設けてある。本実施の形態1では、金属等のように弾性を有した薄板状部材によって成形したもので、図4、図12及び図13に示すように、係合基板部61、上曲げ部62、フック部63及びガイド傾斜部64を一体成形した係合片部材60を例示している。係合基板部61は、下枠14の第1水平延在部141に接合する部分であり、矩形の平板状に構成してある。上曲げ部62は、係合基板部61において浴室側に位置する縁部から上方に向けてほぼ直角に屈曲した部分である。上曲げ部62の上方への突出寸法は、固定障子30の下框33に設けた係合片33gの上面高さとほぼ同一となるように設定してある。フック部63は、上曲げ部62の上端から浴室側に向けてほぼ直角に屈曲した部分である。ガイド傾斜部64は、フック部63の突出端部から脱衣室側に向けて漸次上方となるように傾斜延在した部分である。この係合片部材60は、固定障子30の下框33を下枠14の第1水平延在部141に載置させ、かつ突出ヒレ部33fを第1垂下延在部142の見付け面に当接させた場合に、フック部63が下框33の係合片33gに係合し、係合片33gを介して下框33の上方への移動を阻止するように機能する。
一方、上枠13において框受部材40と右縦枠12との間に位置する部位には、図3に示すように、止水材取付ブロック70及び上枠カバー部材71が取り付けてある。止水材取付ブロック70は、上枠13の第1水平ヒレ部132においてポケット部132aよりも浴室側となる部位から下方に突出したもので、浴室に臨む部分の下端部に装着溝70aを有している。装着溝70aは、浴室側に向けて開口し、上枠13の長手に沿って延在したものである。この装着溝70aには、右縦枠12の装着溝12eに装着した第1止水材15が一連となるように連続して装着してある。この止水材取付ブロック70に装着した第1止水材15は、可動障子20が枠開口10Aを閉じた場合に可動障子20の上框22において脱衣室に臨む見付け面に当接することにより、互いの間の止水を行うものである。上枠カバー部材71は、上枠13の第1見付けヒレ部131から止水材取付ブロック70までの間を覆い隠すものである。
(枠体10に対する固定障子30の取り付け構造について)
上記のように構成した建具では、図12の(a)に示すように、枠体10の上枠13に対して固定障子30の上框32を近づけるように配置すれば、固定障子30の上框32に設けた支持ピン38の頭部38bを支持部材50の挿通孔53において第1の切欠部53aに挿通させることができる。この状態から、図12の(b)に示すように、枠体10に対して固定障子30を下方に移動させ、下框33の突出ヒレ部33fを第1垂下延在部142の見付け面に当接させながら下框33を下枠14の第1水平延在部141に載置させれば、係合片部材60のフック部63が下框33の係合片33gに係合し、固定障子30の上方への移動及び脱衣室側への移動が阻止される。この状態からさらに、図14及び図15に示すように、下枠14の溝ヒレ部147にビード部材80を装着すれば、下框33の突出ヒレ部33fが第1垂下延在部142とビード部材80との間に挟持される。この間、挿通孔53に挿通した支持ピン38は、固定障子30の下方への移動に伴って第2の切欠部53bに移動し、頭部38bが第3板部523の表面523aに当接した状態となる。
上述の状態においては、支持ピン38の頭部38bが支持部材50の表面523aに当接することにより、固定障子30の上框32が支持部材50から離隔する方向の移動、つまり上框32の浴室側への移動が阻止される。また、支持ピン38の頭部38bが支持部材50の第2板部522に当接した際に第2板部522の傾斜作用によって上框32が脱衣室側に移動されるため、左縦框34が左縦枠11の位置決め角筒部11dに当接し、かつ右縦框35が框受部材40の当接ブロック部42に当接することになり、固定障子30の脱衣室側への移動が阻止される。さらに、下框33の突出ヒレ部33fが第1垂下延在部142とビード部材80との間に挟持されているため、下枠14に対する下框33の見込み方向に沿った移動も阻止された状態となる。またさらに、固定障子30の左縦框34に設けた係合ヒレ部34dが左縦枠11の見込み板11bと係合受ヒレ部11eとの間に挟持されるため、左縦枠11に対する左縦框34の離隔方向への移動が阻止される。
このように、上述の建具によれば、枠体10に固定障子30を取り付けるに当たって別途方立枠を設ける必要がなく、当然に方立枠と右縦框35との間にネジを螺合させる必要もない。従って、右縦框35の見付け寸法を小さく設定することが可能となり、枠体10を介した視界を大きく確保することができるようになる。しかも、枠体10に対して固定障子30を上方に配置した後、固定障子30を下方に移動させれば、支持ピン38を支持部材50に係合させることができ、かつ係合片部材60を係合片33gに係合させることが可能であり、固定障子30の枠体10への取付作業を容易化することができる。
さらに、この固定障子30では、上述したように、上框32の見込み寸法が縦框34,35に対して小さく構成してあり、しかも浴室側の見付け面が縦框34,35及び下框33の見付け面とほぼ同じ見込み位置となるように左右の縦框34,35の間に取り付けてある。従って、固定障子30を枠体10に取り付けた状態においては、図4に示すように、上枠13の第1見付けヒレ部131と、上框32の下方見付け壁部322、傾斜壁部323、上方見付け壁部324の間に隙間が確保されることになり、固定障子30を下方に移動した際に構成される第1水平ヒレ部132と上壁部325との間の隙間と連通することによって浴室と脱衣室との間を連通する通気通路ACが構成される。
これにより、後述する可動障子20によって枠開口10Aを閉じた状態においても通気通路ACを通じて浴室と脱衣室との間で通気を行うことが可能となる。しかも、固定障子30の縦框34,35には、それぞれの上端部に遮水ヒレ部37aが設けてあるとともに、これら縦框34,35の間に対応する部位に換気制御弁16が配設してある。従って、浴室側から建具の上部に水が掛かったとしても、これら換気制御弁16及び遮水ヒレ部37aによって脱衣室側への浸入が防止されることになり、通気通路ACを通じて漏水が生じるおそれはない。
(枠体10に対する可動障子20の取り付け構造について)
一方、この建具では、図3に示すように、可動障子20の下面に設けたトラックガイド27を介して可動障子20を下枠14のトラック148に載置させるとともに、可動障子20の上框22にスライド部材90を連結させることにより、枠体10において固定障子30よりも浴室側となる部位に可動障子20が配設される。スライド部材90は、上枠13のガイドヒレ部134とサブガイドヒレ部135との間に長手方向に沿って移動可能に配設したもので、ガイド溝138を介して垂下する連結ロッド91を備えている。従って、上記のようにして取り付けた可動障子20は、トラック148の延在方向に沿って移動することが可能であり、枠体10の枠開口10Aを開閉することができるようになる。
(建具の止水性について)
上記のように方立枠を用いることなく枠体10に固定障子30を取り付けるようにした建具では、上枠13及び右縦枠12から下枠14については第1止水材15を連続して設けることが可能であるものの、固定障子30の右縦框35との間においては第1止水材15を連続して設けることができない。このため、右縦框35との間については、固定障子30を枠体10に取り付けた後に、別途右縦框35に独立して設けた縦框止水材36を下枠14の第1止水材15に連続させて止水性を確保する必要がある。そこで、この建具では、下枠14に予め基準部材100を配設し、この基準部材100を介して第1止水材15と縦框止水材36との間を連続させることにより、止水性確保のための作業を容易化するようにしている。
基準部材100は、図17〜図20に示すように、下枠14の第1水平延在部141に載置される載置基板部101と、載置基板部101において浴室側に位置する端部に設けた補助支持部102と、載置基板部101において脱衣室側に位置する縁部に設けた補助仕切板部103と、載置基板部101において右縦枠12側に位置する縁部に設けた仕切板部104と、載置基板部101の上面に設けた当接台部105と、仕切板部104において右縦枠12に対向する部位に向けて突出した止水カバー部106とを有し、樹脂によってこれらを一体に成形したものである。
載置基板部101は、下面が平坦に構成してあり、面状の基準止水材110を介して下枠14における第1水平延在部141の上面に取り付けてある。本実施の形態1では、載置基板部101を介して下枠14にネジ111を螺合するようにしている。載置基板部101には、導入溝107が設けてある。導入溝107は、固定障子30の下框33に設けた装着溝33dに対応する部位に形成した凹所であり、装着溝33dとほぼ同じ幅を有している。図からも明らかなように、導入溝107は、左縦枠11に対向する部位においては下框33の装着溝33dとほぼ同じ横断面を有しているが、右縦枠12に近接するに従って漸次上方に傾斜している。
補助支持部102は、載置基板部101よりも下方に突出し、下枠14の第1垂下延在部142及び第2水平延在部143にそれぞれ当接するように構成したものである。すなわち、基準部材100を取り付ける部分については、図16に示すように、部分的に溝ヒレ部147が切除してあり、下方に突出する補助支持部102を第1垂下延在部142及び第2水平延在部143に当接させることができる。図17〜図20に示すように、上述した基準止水材110は、載置基板部101の下面から第1垂下延在部142と補助支持部102との間にまで連続して介在している。補助支持部102の浴室に臨む見付け面は、可動障子20の脱衣室に臨む見付け面よりも脱衣室側にあり、可動障子20に干渉することはない。この補助支持部102の見付け面には、装着溝102aを介して補助止水材112が装着してある。補助止水材112は、可動障子20の召合せ框24の脱衣室に臨む見付け面に当接することによって互いの間の止水を行うもので、その先端部が仕切板部104よりも浴室側に突出するように構成してある。
補助仕切板部103及び仕切板部104は、載置基板部101の縁部からそれぞれ上方に向けてほぼ鉛直に延在した平板状部分であり、載置基板部101の脱衣室側に位置する縁部から右縦枠12側に位置する縁部にわたって連続して設けてある。補助仕切板部103は、固定障子30の右縦框35において脱衣室に臨む見付け面に対向し、仕切板部104は、右縦框35において右縦枠12に対向する見込み面に対向するものである。
当接台部105は、載置基板部101から上方に突出した台状を成すもので、下方支持面105a及び基準当接面105bを有している。下方支持面105aは、補助仕切板部103において仕切板部104に近接する部位から浴室側に向けてほぼ水平に延在したものである。基準当接面105bは、下方支持面105aの延在端部から下方に向けてほぼ鉛直に延在したもので、導入溝107よりも脱衣室側となる部位に位置している。これら下方支持面105a及び基準当接面105bは、それぞれの一側縁が仕切板部104に連続するように設けてある。下方支持面105a及び基準当接面105bには、当接部止水材113が設けてある。当接部止水材113は、弾性に富んだ材質によって厚板状に構成したものである。図からも明らかなように、この当接部止水材113は、基準当接面105bに配設した部分の表面が導入溝107の形成位置に達するように構成してある。
止水カバー部106は、下枠14の第1水平延在部141に対応する部位から上方に突出した後、浴室側に向けて湾曲し、さらに浴室側に向けてほぼ水平となるように延在したもので、溝ヒレ部147の上方を覆うように構成してある。この止水カバー部106には、溝ヒレ部147の装着溝147aに装着した第1止水材15の端部が収容され、第1止水材15において上方に突出する止水ヒレ部15aが内表面に圧接された状態にある。第1止水材15の端部を基準部材100に圧接させる作業は、いずれもが下枠14に取り付けられたものであるため、煩雑な作業を要することなく実施可能である。
一方、基準部材100を介して枠体10に取り付ける固定障子30には、図22及び図23に示すように、右縦框35において右縦枠12に対向する見込み面に立上り面351及び内底面352が設けてある。立上り面351及び内底面352は、第2止水材120よりも脱衣室側となる部位に切欠350を設けることによって構成してある。
第2止水材120は、基準部材100に設けた当接部止水材113と同様、弾性に富んだ材質によって厚板状に構成したもので、下框33の装着溝33dから右縦框35の下面にわたる部位に下方に突出するように配設してある。図には明示していないが、この第2止水材120は、下框33の装着溝33dに沿って左縦框34に至るまで連続して配設してある。第2止水材120のもう一方の端部は、上方に折り曲げて左縦框34の見込み面に貼り付けてある。
立上り面351は、右縦框35の下端から第2止水材120の脱衣室側に位置する縁部に沿って上方に延在したものである。立上り面351の上下方向に沿った寸法は、当接台部105の基準当接面105bよりも大きく、仕切板部104よりも小さい長さに設定してある。内底面352は、立上り面351の上端部から脱衣室側に向けてほぼ水平に延在したものである。なお、図中の符号353は、基準部材100に螺合したネジ111との干渉を避けるために右縦框35の下端部に形成した逃げ用切欠である。
上記のように右縦框35に切欠350を形成した固定障子30を、基準部材100が設けられた下枠14に載置させると、第2止水材120が下框33と下枠14との間で圧縮された状態となり、互いの間の止水を行うことができる。また、第2止水材120において右縦框35の下面に配設された部分は、基準部材100の導入溝107に嵌まった状態で圧接され、かつその先端部が基準部材100の当接台部105に設けた当接部止水材113の表面に圧接される。なお、固定障子30の右縦框35に設けた縦框止水材36の下端部は、基準部材100に設けた補助止水材112の上端に当接される。
上記のようにして枠体10に固定障子30を取り付けた建具にあっては、可動障子20によって枠開口10Aを閉じた場合、可動障子20の下框23及び召合せ框24に対しては、下枠14の第1止水材15、基準部材100の補助止水材112、右縦框35の縦框止水材36がそれぞれ当接し、互いの間の止水を行う。上述したように、下枠14の溝ヒレ部147に装着した第1止水材15の端部は、仕切板部104及び止水カバー部106に圧接された状態にある。固定障子30に装着した第2止水材120は、下枠14の上面から当接部止水材113を介して基準部材100の仕切板部104に圧接された状態にある。
従って、基準部材100を介して第1止水材15と第2止水材120とが連続するため、例えば浴室側の水が縦框止水材36と補助止水材112との隙間から脱衣室側に浸入したとしても、第2止水材120及び当接部止水材113によって止水されることになり、その水が脱衣室に至るおそれはない。しかも、基準部材100を設けることにより、固定障子30と枠体10に配設した第1止水材15とが離隔された状態となるため、固定障子30を枠体10に取り付ける際に第1止水材15の端部に固定障子30が乗り上げるような事態が生じることはない。
さらに、基準部材100と右縦框35との間においては、当接部止水材113を介して当接台部105が立上り面351及び内底面352にそれぞれ圧接された状態となる。従って、基準部材100に対して固定障子30の建て付け位置がずれた場合にも、当接部止水材113の範囲内であれば、右縦框35との当接状態が維持されることになり、煩雑な位置決め作業を要することなく止水性を確保することができる。
なお、上述した実施の形態1では、浴室と脱衣室との間の出入口に設けられる浴室用の片引戸を例示しているが、必ずしも浴室と脱衣室との間に設けられるものに限らない。また、可動障子の開閉方向はスライドである必要はなく、例えばドアのようにヒンジを介して開閉するものであっても構わない。さらに、基準部材100に当接台部105を設けるとともに、右縦框35に切欠350を形成し、当接部止水材113を介してこれらの間を当接させるようにしているが、当接台部105は、必ずしも設ける必要はない。なお、基準部材100と下枠14との間に基準止水材110を介在させるようにしているが、例えば、基準部材そのものをゴム等の止水性を有する部材によって成形すれば、必ずしも基準止水材を設ける必要はない。
また、上述した実施の形態1では、基準部材100において補助支持部102の見付け面に装着溝102aを介して補助止水材112を設けるようにしているため、脱衣室側への水の浸入をより確実に抑えることができるが、図25に示す変形例のように、装着溝102a及び補助止水材112を省略した基準部材100′を適用しても構わない。すなわち、固定障子30の右縦框35に設けた縦框止水材36の下端部を単に補助支持部102の上端に当接させるようにした基準部材100′を適用した場合にも、第1止水材15、第2止水材120及び当接部止水材113によって止水されることになり、浴室側の水が脱衣室に至るおそれはない。なお、この変形例において実施の形態1と同様の構成については同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略している。
<実施の形態2>
図26〜図30は、本発明の実施の形態2である建具の要部を示したものである。ここで例示する建具は、実施の形態1で示したものと同様、浴室と脱衣室との間の出入口に設けられる浴室用の片引戸であり、実施の形態1とは、固定障子の下框、係合片部材及び基準部材の構成及びこれらによって実現される固定障子の下枠への取付構造が異なっている。以下、実施の形態1と相違する部分について主に説明し、実施の形態1と同様の構成については同一の符号を付して詳細説明を省略する。
固定障子30の下框33は、図27及び図28に示すように、実施の形態1と同様、略正方形の断面を有した中空状を成し、面材収容部33b、支持ヒレ部33c、装着溝33d、収容凹部33e及び突出ヒレ部33fを有したもので、収容凹部33eに2つの係合片33g1,33g2を有している。浴室側の係合片33g1は、装着溝33dとの境界となる部分から脱衣室側に向けてほぼ水平に突出した平板状部分である。脱衣室側の係合片33g2は、下框33において脱衣室側に位置する見付け壁部331の下端縁部を浴室側に向けて屈曲した後、下方に向けて屈曲させることにより構成してある。2つの係合片33g1,33g2は、互いに上面高さがほぼ同じとなるように構成してある。
また、下框33の中空状に形成した部分の内部上方及び内部下方には、それぞれ長手方向の全長にわたって上方ビスホール33h1及び下方ビスホール33h2が設けてある。これらのビスホール33h1,33h2は、固定障子30の右縦框35を連結する際のネジ332を螺合するためのものである。なお、固定障子30を組み立てた状態においては、右縦框35を介して下方ビスホール33h2にのみネジ332が螺合してある。
係合片部材160は、上述した固定障子30の係合片33g1,33g2とともに下方係合手段を構成するもので、下枠14における第1水平延在部141の上面において固定障子30の下框33によって覆われる位置に設けてある。本実施の形態2では、金属等のように弾性を有した薄板状部材によって成形したもので、矩形の平板状を成す係合基板部161の両側縁部にそれぞれ上曲げ部162、フック部163及びガイド傾斜部164を一体成形した係合片部材160を例示している。係合基板部161は、下枠14の第1水平延在部141に接合する部分である。上曲げ部162は、係合基板部161において浴室側に位置する縁部及び脱衣室側に位置する縁部からそれぞれ上方に向けてほぼ直角に屈曲した部分である。上曲げ部162の上方への突出寸法は、固定障子30の下框33に設けた係合片33g1,33g2の上面高さとほぼ同一となるように設定してある。フック部163は、上曲げ部162の上端から互いに離隔する方向に向けてほぼ直角に屈曲した部分である。ガイド傾斜部164は、フック部163の突出端部から互いに近接する方向に向けて漸次上方となるように傾斜延在した部分である。この係合片部材160は、固定障子30の下框33を下枠14の第1水平延在部141に載置させ、かつ突出ヒレ部33fを第1垂下延在部142の見付け面に当接させた場合に、フック部163が下框33の係合片33g1,33g2に係合し、これら係合片33g1,33g2を介して下框33の上方への移動を阻止するように機能する。
基準部材200は、載置部201、補助載置部202、補助仕切板部203、仕切板部204、当接台部205、止水カバー部206を有し、樹脂によってこれらを一体に成形したものである。
載置部201は、下枠14における第1水平延在部141の上面に取り付けられる部分であり、左縦枠11に対向する縁部にスライドガイド部210を有している。スライドガイド部210は、第1水平延在部141のほぼ中央となる位置において下枠14の長手に沿って延在した部分であり、第1水平延在部141に対向した部分が開口した中空状に構成してある。本実施の形態2では、スライドガイド部210を介して下枠14にネジ111を螺合することによって基準部材200が下枠14に取り付けてある。また載置部201には、スライドガイド部210よりも浴室側となる部位に導入溝207が設けてある。導入溝207は、固定障子30の下框33に設けた装着溝33dに対応する部位に形成した凹所であり、装着溝33dとほぼ同じ幅を有している。図からも明らかなように、導入溝207は、左縦枠11に対向する縁部においては下框33の装着溝33dとほぼ同じ横断面を有しているが、右縦枠12に近接するに従って漸次上方に傾斜するように構成してある。
補助載置部202は、載置部201において浴室側に位置する端部に設けたもので、載置部201よりも下方に突出し、下枠14の第1垂下延在部142及び第2水平延在部143にそれぞれ当接するように構成してある。図には明示していないが、基準部材200を取り付ける部分については、部分的に溝ヒレ部147が切除してあるのは実施の形態1と同様である。補助載置部202の浴室に臨む見付け面は、可動障子20の脱衣室に臨む見付け面よりも脱衣室側にあり、可動障子20に干渉することはない。
補助仕切板部203及び仕切板部204は、載置部201の縁部からそれぞれ上方に向けてほぼ鉛直に延在した部分であり、載置部201の脱衣室側に位置する縁部から右縦枠12側に位置する縁部を経て、補助載置部202の縁部に至る間にわたって連続して設けてある。補助仕切板部203は、固定障子30の右縦框35において脱衣室に臨む見付け面に対向するものである。仕切板部204は、右縦框35において右縦枠12に対向する見込み面に対向するものである。図からも明らかなように、本実施の形態2では、仕切板部204を中空状に構成してある。すなわち、仕切板部204は、互いの間に収容空間204aを確保して並設した外壁部204b及び内壁部204cを有して構成してある。外壁部204b及び内壁部204cの間の収容空間204aは、スライドガイド部210の中空部分と連通している。
当接台部205は、内壁部204cにおいて脱衣室側に偏った部分から左縦枠11に向けて突出したもので、下方支持面205a及び基準当接面205bを有した台状に構成してある。下方支持面205aは、補助仕切板部203から浴室側に向けてほぼ水平に延在した平面であり、補助仕切板部203及び仕切板部204の上端よりも低い位置に設けてある。基準当接面205bは、下方支持面205aにおいて浴室側の縁部から下方に向けてほぼ鉛直に延在した平面であり、導入溝207よりも脱衣室側となる部位に位置している。これら下方支持面205a及び基準当接面205bには、当接部止水材213が設けてある。当接部止水材213は、弾性に富んだ材質によって厚板状に構成したものである。図からも明らかなように、この当接部止水材213は、基準当接面205bに配設した部分の表面が導入溝207の形成位置に達するように構成してある。
止水カバー部206は、仕切板部204において右縦枠12に対向する部位に向けて突出したものである。この止水カバー部206は、下枠14の第1水平延在部141に対応する部位から上方に突出した後、浴室側に向けて湾曲し、さらに浴室側に向けてほぼ水平となるように延在し、溝ヒレ部147の上方を覆うように構成してある。止水カバー部206には、溝ヒレ部147の装着溝147aに装着した第1止水材15の端部が収容されることになる。止水カバー部206に収容された第1止水材15は、上方に突出する止水ヒレ部15aが止水カバー部206の内表面に圧接された状態にある。第1止水材15の端部を基準部材200に圧接させる作業は、いずれもが下枠14に取り付けられたものであるため、煩雑な作業を要することなく実施可能である。
上述の基準部材200には、仕切板部204及びスライドガイド部210の中空部分に連結部材250が配設してある。連結部材250は、スライドガイド部210の中空部分に配設したスライド部251と、スライド部251の一端部から上方に向けて延在し、仕切板部204の中空部分に配設した連結部252とを有したもので、ステンレス等の金属によって一体に成形してある。スライド部251は、スライドガイド部210に螺合したネジ111が挿通される長孔251aを有した平板状を成すもので、長孔251aの範囲内においてスライドガイド部210の長手方向に移動することが可能である。連結部252は、スライド部251からほぼ鉛直の上方に向けて延在した後、左縦枠11に向けて突出するようにクランク状に屈曲し、さらにその上端部が右縦枠12に向けて漸次上方となるように傾斜している。上述した基準部材200の当接台部205には、連結部252のクランク状に突出した部分を外部に突出させることのできる窓孔205cが形成してある。
連結部252には、クランク状に突出した部分において下框33の上方ビスホール33h1に対応する部位にネジ挿通孔252aが設けてある。また、仕切板部204の外壁部204bにおいて連結部252のネジ挿通孔252aに対応する部位には、キャップ260によって着脱可能に塞ぐことのできる開口204dが設けられている。
上記の基準部材200を備える下枠14に対しては、下框33の突出ヒレ部33fを第1垂下延在部142の見付け面に当接させながら下框33を下枠14の第1水平延在部141に載置させると、係合片部材160のフック部163が下框33の係合片33g1,33g2に係合し、下枠14に対する固定障子30の上方及び見込み方向に沿った移動が阻止される。この状態から仕切板部204の開口204d、連結部252のネジ挿通孔252a及び右縦框35のネジ挿通孔354を介して下框33の上方ビスホール33h1に連結ネジ333を螺合させれば、連結部材250を介して固定障子30の下框33が下枠14に連結された状態となる。従って、可動障子20を勢い良く開いた際の衝撃が枠体10を介して固定障子30に伝わったとしても、下枠14に対して固定障子30の下框33が浮き上がる等の事態を招来するおそれがなくなる。
上述したように、本実施の形態2の連結部材250は、図30の(a)及び図30の(b)に示すように、仕切板部204に対してスライドすることが可能である。従って、建て付け誤差等に起因して仕切板部204に対する固定障子30の位置が多少ずれていたとしても、連結ネジ333を螺合していく過程で連結部材250が適宜スライドし、連結部252が右縦框35に確実に当接した状態で連結ネジ333が螺合されることになる。
また、上述の状態においては、第2止水材120が下框33と下枠14との間で圧縮された状態となり、互いの間の止水を行うことができる。また、第2止水材120において右縦框35の下面に配設された部分は、基準部材200の導入溝207に嵌まった状態で圧接され、かつその先端部が基準部材200の当接台部205に設けた当接部止水材213の表面に圧接されることになる。
上記のようにして枠体10に固定障子30を取り付けた建具にあっては、可動障子20によって枠開口10Aを閉じた場合、可動障子20の下框23及び召合せ框24に対しては、下枠14の第1止水材15、右縦框35の縦框止水材36がそれぞれ当接し、互いの間の止水を行う。上述したように、下枠14の溝ヒレ部147に装着した第1止水材15の端部は、仕切板部204及び止水カバー部206に圧接された状態にある。固定障子30に装着した第2止水材120は、下枠14の上面から当接部止水材213を介して基準部材200の仕切板部204に圧接された状態にある。
従って、基準部材200を介して第1止水材15と第2止水材120とが連続するため、例えば浴室側の水が縦框止水材36との隙間から脱衣室側に浸入したとしても、第2止水材120及び当接部止水材213によって止水されることになり、その水が脱衣室に至るおそれはない。しかも、基準部材200を設けることにより、固定障子30と、枠体10に配設した第1止水材15とが離隔された状態となるため、固定障子30を枠体10に取り付ける際に第1止水材15の端部に固定障子30が乗り上げるような事態が生じることはない。
さらに、基準部材200と右縦框35との間においては、当接部止水材213を介して当接台部205が立上り面351及び内底面352にそれぞれ圧接された状態となる。従って、基準部材200に対して固定障子30の建て付け位置がずれた場合にも、当接部止水材213の範囲内であれば、右縦框35との当接状態が維持されることになり、煩雑な位置決め作業を要することなく止水性を確保することができる。
なお、上述した実施の形態2においても浴室と脱衣室との間の出入口に設けられる浴室用の片引戸を例示しているが、必ずしも浴室と脱衣室との間に設けられるものに限らない。可動障子20の開閉方向もスライドである必要はない。基準部材200に当接台部205を設けるとともに、右縦框35に切欠350を形成し、当接部止水材213を介してこれらの間を当接させるようにしているが当接台部205は必ずしも設ける必要はない。
また、上述した実施の形態2では、連結部材250の連結部252として上端部が右縦枠12に向けて漸次上方となるように傾斜している。このため、仕切板部204の窓孔205cから連結部252が突出した状態で固定障子30を枠体10に配置したとしても、右縦框35が傾斜した部分に当接することで連結部252が収容空間204aに退避することになる。従って、右縦框35や連結部材250の両者に損傷を来すおそれはない。しかしながら、本発明では必ずしも連結部の上端部を傾斜させる必要はない。