以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
本実施形態において、通気度は、JIS P8117によって測定される値であり、一定の圧力のもとで100mlの空気が6.45cm2の面積を通過する時間で定義される。通気度は、王研式通気度計もしくはそれに準じた測定機で測定することができる。
図1は、本発明の温熱具の一例を示す模式的な断面図である。温熱具1は、被酸化性金属、炭素成分及び水を備える発熱部10と、発熱部10を収容する袋体30とを有する。温熱具1は、香料組成物により賦香されている。
温熱具1は、被酸化性金属の酸化反応によって発熱して十分な温熱効果を付与するものであり、JIS規格S4100に準拠した測定において、発熱温度38〜70℃の性能を有することができる。温熱具1は、水蒸気の発生を伴う蒸気温熱具であってもよいし、水蒸気の発生を実質的に伴わずに発熱する、いわゆる使い捨てカイロであってもよい。温熱具1は香料組成物により賦香されているため、使用時には、発熱とともに香料組成物により芳香する。
図2は、実施の形態に係る発熱部10を模式的に示した断面図である。発熱部10は、発熱層11と、保水層12とが積層されてなる。発熱層11は、被酸化性金属(図2中(M))、吸水剤(図2中(C))、及び水を含有する。保水層12は、吸水シート102から形成されたものである。
発熱層11は、被酸化性金属、炭素成分及び水を少なくとも含む発熱組成物を備える。
被酸化性金属は、酸化反応熱を発する金属であり、例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム、及びカルシウムから選ばれる1種又は2種以上の粉末や繊維が挙げられる。中でも、取り扱い性、安全性、製造コスト、保存性及び安定性の点から鉄粉が好ましい。鉄粉としては、例えば、還元鉄粉、及びアトマイズ鉄粉から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
被酸化性金属が粉末である場合、酸化反応が効率的に行われるという観点から、その平均粒径が10〜200μmであることが好ましく、平均粒径が20〜150μmであることがより好ましい。なお、被酸化性金属の粒径は、粉体の形態における最大長さをいい、篩による分級、動的光散乱法、レーザー回折法等により測定される。
同様の観点から、被酸化性金属の平均粒径は10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。また、平均粒径は、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。
被酸化性金属の含有量は、坪量で表して、100〜3000g/m2であることが好ましく、200〜1500g/m2であることがより好ましい。これにより、発熱部10の発熱温度を所望の温度に上昇させることができる。
同様の観点から、被酸化性金属の含有量は、坪量で表して、100g/m2以上が好ましく、200g/m2以上であることがより好ましい。また、3,000g/m2以下であることが好ましく、1500g/m2以下であることがより好ましい。
なお、発熱部10中の鉄粉の含有量は、JIS P8128に準じる灰分試験や、熱重量測定器で求めることができる。他に外部磁場を印加すると磁化が生じる性質を利用して振動試料型磁化測定試験等により定量することができる。
吸水剤は、保水能を有し、少なくとも炭素成分を含むものである。炭素成分の他、例えば、繊維材料、吸水性ポリマー、及び吸水性の粉体から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
炭素成分としては、保水能、酸素供給能、及び、触媒能を有するものであり、例えば、活性炭、アセチレンブラック、及び黒鉛から選ばれる1種又は2種以上を用いることができるが、湿潤時酸素を吸着しやすいことや、発熱層11の水分を一定に保てる観点や、保水層12に含まれる水の含有量を容易に保水層12の最大吸水量の10〜45質量%にする観点から、活性炭が好ましく用いられる。より好ましくは、椰子殻炭、木粉炭、及びピート炭から選ばれる1種又は2種以上の微細な粉末状物又は小粒状物が用いられる。中でも、発熱層11の水分を一定に保つことで、保水層12に含まれる水の含有量を、保水層12の最大吸水量の10〜45質量%に維持するため木粉炭がより好ましい。
炭素成分は、被酸化性金属と均一に混合される観点のみならず、保水層12に含まれる水の含有量を、保水層12の最大吸水量の10〜45質量%に維持する観点から、平均粒径が10〜200μmのものを用いることが好ましく、平均粒径が12〜100μmのものを用いることがより好ましい。なお、炭素成分の平均粒径は、粉体の形態における最大長さをいい、動的光散乱法、レーザー回折法等により測定される。炭素成分は粉体状の形態のものを用いることが好ましいが、粉体状以外の形態のものを用いることもでき、例えば、繊維状の形態のものを用いることもできる。
同様の観点から、炭素成分は、平均粒径が10μm以上であることが好ましく、12μm以上であることがより好ましい。また、炭素成分は、平均粒径が200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。
繊維材料としては、親水性繊維、中でもセルロース繊維を用いることがより好ましい。セルロース繊維としては、化学繊維(合成繊維)や天然繊維を用いることができる。
吸水性ポリマーとしては、自重の20倍以上の液体を吸収・保持できる架橋構造を持つ親水性のポリマーが挙げられる。
吸水性の粉体としては、バーミキュライト、おがくず、シリカゲル、及びパルプ粉末から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
吸水剤の含有量は、被酸化性金属100質量部に対して、0.3〜20質量部であることが好ましく、1〜15質量部であることがより好ましく、3〜13質量部であることがさらに好ましい。こうすることで、得られる発熱部10中に、酸化反応を持続させるために必要な水分を蓄積できる。また、発熱部10への酸素供給が十分に得られて高い発熱効率が得られる。また、得られる発熱量に対する発熱部10の熱容量を小さく抑えることができるため、発熱温度上昇が大きくなり、所望の温度上昇が得られる。なお、吸水剤の含有量は、坪量で表して、4〜290g/m2であることが好ましく、7〜160g/m2であることがより好ましい。
なお、吸水剤の含有量は、被酸化性金属100質量部に対して、0.3質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることがさらに好ましい。また、吸水剤の含有量は、被酸化性金属100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、13質量部以下であることがさらに好ましい。
また、吸水剤の含有量は、坪量で表して、4g/m2以上であることが好ましく、7g/m2以上であることがより好ましく、また、290g/m2以下であることが好ましく、160g/m2以下であることがより好ましい。
吸水剤中、炭素成分の含有量が、吸水剤の全質量に対して、90質量%以上であることが発熱層11中の水分を制御する点で好ましく、より好ましくは95質量%以上であり、さらに好ましくは98質量%以上であり、吸水剤が炭素成分のみであることがよりさらに好ましい。
さらに、吸水剤中、吸水性ポリマーの含有量は、吸水剤全量に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましく、発熱層11中に吸水性ポリマーを含まないことが、得られる発熱量に対する発熱体の熱容量を小さく抑えることができるため、発熱温度上昇が大きくなり、所望の温度上昇が得られる点でことさら好ましい。
発熱層11において、吸水剤の含有量に対する水の含有量の質量比(水/吸水剤)が、0.8〜13であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1.5〜10であることがさらに好ましい。こうすることで、保水層12に含まれる水の含有量を、保水層12の最大吸水量の10〜45質量%に維持できより好ましい。さらに、発熱部10の通気性が十分に確保されるため、酸素供給が十分に得られて発熱効率が高い発熱体が得られる。また、得られる発熱量に対する発熱体の熱容量を小さく抑えることができるため、発熱温度上昇が大きくなり、所望の温度上昇が得られる。
なお、吸水剤の含有量に対する水の含有量の質量比(水/吸水剤)は、0.8以上であることが好ましく、1以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましい。また、吸水剤の含有量に対する水の含有量の質量比(水/吸水剤)は、13以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。
本発明の発熱部10は、発熱層11と、保水層12とが積層されてなり、保水層12は吸水シート102から形成されている。
保水層12に含まれる水の含有量は、保水層12の最大吸水量の10〜45質量%であることが好ましく、12〜40質量%であることがより好ましく、13〜30質量%であることが、発熱部10の製造時、発熱組成物が1つの発熱部10に何らかの理由で多量に充填されたり、特定の箇所に多量に偏在したりする場合でも、異常発熱が防止され、良好な発熱特性が安定して得られる点でさらに好ましい。
同様の観点から、保水層12に含まれる水の含有量は、保水層12の最大吸水量の12質量%以上であることが好ましく、13質量%以上であることがより好ましい。
また、保水層12に含まれる水の含有量は、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
なお、最大吸水量は、次のようにして測定することができる。
保水層の最大吸水量(Wmax)は下記のとおり、JIS L1906の記載の測定方法を用いることができる。具体的には、保水層12の質量(W0)を測定し、保水層12を5質量%塩化ナトリウム水溶液に5分間浸漬した後、ピンセットで取り出して、1分間空気中に吊り下げ放置して抱えきれない水分をしたたり落とした後、質量(W1)を測定し、下記の式より最大吸水量(Wmax)を算出する。
Wmax=W1−W0
保水層12は、最大吸水量の10〜45質量%の水を吸収保持できる吸水性があればよく、通気性の有無を問わないが、通気性を有するものが好ましい。
最大吸水量の10〜45質量%の水を吸収した状態での保水層12の通気度は、500秒/100ml以下が好ましく、1〜300秒/100mlがより好ましい。このような通気度とすることで、発熱部10の通気性が十分に確保されるため、酸素供給が十分に得られて高い発熱効率が得られ、被酸化性金属の酸化反応が良好となる上、多量の水蒸気を発生することを可能とし得る。また、300秒/100ml以下であることがより好ましく、過度な温度上昇を防止する観点からは、1秒/100ml以上であることがさらに好ましい。
図2には、成分(a)繊維材料、及び、成分(b)吸水性ポリマーを含むものを保水層12とした例が示されている。
保水層12は、成分(a)を含むシート、例えば、一層の繊維シートから構成されていてもよいし、二層以上が積層されていてもよい。繊維シートとしては、具体的には、後述する繊維材料から製造される紙、不織布、又は紙と不織布の積層したものなどが挙げられる。成分(a)を含むシートとしては、具体的には、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなど吸水性のない素材に繊維材料を積層またはラミネートした紙、不織布などのシート材でもよく、パルプ繊維やレーヨン繊維などの繊維材料に、さらに別の繊維材料を積層または混合した抄紙、不織布などのシート材でもよい。保水層12に成分(a)を含むシートを用いることで、保水層12に含まれる水の含有量を、保水層12の最大吸水量の10〜45質量%にすることが容易にでき、好ましい。
保水層12は、さらに成分(b)を含んでいてもよい。保水層12に成分(b)を含む場合、保水層12の形態は、(i)成分(a)及び成分(b)が均一に混合された状態で1枚シートとしたもの、(ii)成分(a)を含む同一の又は異なるシート間に、成分(b)が配置されたもの(iii)成分(b)を散布してシート状としたものを例示することができる。中でも、発熱層11の含水量のコントロールを容易に行うことができるため保水層12に含まれる水の含有量を保水層12の最大吸水量の10〜45質量%にすることが容易にでき、好ましいものは、(ii)の形態のものである。なお、(ii)の形態の保水層12は、例えば、成分(a)を含むシート上に成分(b)を均一に散布し、その上から200g/m2の量の水を噴霧した後、さらにその上に成分(a)を含む同一の又は異なるシートを積層し、100±0.5℃、5kg/cm2の圧力にてプレス乾燥して含水率が5質量%以下になるまで乾燥して製造することが可能である。
成分(a)としては、親水性繊維及び疎水性繊維のいずれをも用いることができるが、親水性繊維を用いることが好ましく、中でもセルロース繊維を用いることが保水層12への水分移動を促し、保水層12に含まれる水の含有量を、保水層12の最大吸水量の10〜45質量%にすることが容易にでき、より好ましい。セルロース繊維としては、化学繊維(合成繊維)や天然繊維を用いることができる。
セルロース繊維のうち化学繊維としては、例えばレーヨンやアセテートを用いることができる。一方、セルロース繊維のうち天然繊維としては、例えば、各種の植物繊維、木材パルプ繊維、非木材パルプ繊維、木綿繊維、麻繊維、麦藁繊維、ヘンプ繊維、ジュート繊維、カポック繊維、やし繊維、いぐさ繊維から選択される1種又は2種以上を用いることができる。これらのセルロース繊維のうち、木材パルプ繊維を用いることが、保水層12に含まれる水の含有量を、保水層12の最大吸水量の10〜45質量%にすることが容易にでき好ましい。
各種の繊維材料は、その繊維長が0.5〜6mmであることが好ましく、0.8〜4mmであることがより好ましい。なかでも繊維材料は、繊維長が0.5mm以上であることが好ましく、0.8mm以上であることがより好ましい。また、繊維材料は、繊維長が6mm以下であることが好ましく、4mm以下であることがより好ましい。
保水層12には、親水性繊維に加え、必要に応じて疎水性繊維、中でも熱融着性繊維を配合してもよい。熱融着性繊維の配合量は、保水層12における繊維の全量に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
同様の観点から、熱融着性繊維の配合量は、保水層12における繊維の全量に対して0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、熱融着性繊維の配合量は、保水層12における繊維の全量に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
成分(b)として、上述の成分(a)と同様、自重の20倍以上の液体を吸収・保持できる架橋構造を持つ親水性のポリマーを用いることで、保水層12に含まれる水の含有量を、保水層12の最大吸水量の10〜45質量%に維持でき好ましい。
成分(b)の形状としては、球状、塊状、ブドウ房状、繊維状から選択される1種又は2種以上が挙げられる。成分(b)の粒径は、1〜1000μmであることが好ましく、10〜500μmであることがより好ましい。成分(b)の粒径は、1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。また、成分(b)の粒径は、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましい。
なお、成分(b)の粒径は、動的光散乱法、レーザー回折法等により測定される。
成分(b)の具体例としては、例えば、デンプン、架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体から選択される1種又は2種以上が挙げられる。中でも、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体を用いることが、保水層12に含まれる水の含有量を、保水層12の最大吸水量の10〜45質量%に良好に維持でき好ましい。
保水層12に占める成分(b)の割合は、乾燥状態で10〜70質量%であることが好ましく、さらに20〜65質量%であることが、保水層12への速やかな水分移動を促し、保水層12に含まれる水の含有量を、保水層12の最大吸水量の10〜45質量%に良好に維持でき好ましい。
同様の観点から、保水層12に占める成分(b)の割合は、乾燥状態で10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、一方、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましい。
保水層12は、保水層12に含まれる水の含有量を、保水層12の最大吸水量の10〜45質量%に容易に調整できる点から、乾燥状態でその坪量が20〜200g/m2であることが好ましく、35〜150g/m2であることがより好ましく、50〜140g/m2であることがさらに好ましい。保水層12に含まれる成分(b)の坪量は、保水層12に含まれる水の含有量を、保水層12の最大吸水量の10〜45質量%に維持できる点から、乾燥状態で5〜150g/m2であることが好ましく、10〜100g/m2であることがより好ましく、30〜90g/m2であることがさらに好ましい。
保水層12は、乾燥状態でその坪量が20g/m2以上であることが好ましく、35g/m2以上であることがより好ましく、50g/m2以上であることがさらに好ましい。また、保水層12は、乾燥状態でその坪量が200g/m2以下であることが好ましく、150g/m2以下であることがより好ましく、140g/m2以下であることがさらに好ましい。
保水層12に含まれる成分(b)の坪量は、乾燥状態でその坪量が5g/m2以上であることが好ましく、10g/m2以上であることがより好ましく、30g/m2以上であることがさらに好ましい。また、保水層12は、乾燥状態でその坪量が150g/m2以下であることが好ましく、100g/m2以下であることがより好ましく、90g/m2以下であることがさらに好ましい。
保水層12は、図2に示すように発熱層11が保水層12の片面に形成されたものであってもよく、発熱層11が保水層12の両面に形成されたものであってもよい。
また、図3で示すように、保水層12が、第一の吸水シート102aと、第二の吸水シート102bとから形成されていてもよい。この場合、発熱部10は、第一の吸水シート102aと第二の吸水シート102bとの間に発熱層11が挟まれた構造、所謂サンドイッチ構造をとることができる。第一の吸水シート102aと第二の吸水シート102bとは、同一の材料からなるものであってもよいし、異なる材料からなるものであってもよい。例えば、第一の吸水シート102aを二層以上の繊維シートを積層したものや、成分(a)及び成分(b)を含むものとし、第二の吸水シート102bを一層の繊維シートから形成すると、保水層12に含まれる水の含有量を、保水層12の最大吸水量の10〜45質量%に制御することがより容易となり、且つ、被酸化性金属の酸化反応が良好となるため、好ましい。この場合、第二の吸水シート102bは、発熱層11の少なくとも一部を覆うものであればよいが、発熱層11の全面を覆うことが好ましい。
また、保水層12に含まれる水の含有量が10〜45質量%となる状態で、第一の吸水シート102aおよび第二の吸水シート102bは、いずれも、通気度が、500秒/100ml以下であることが好ましい。なお、下限値はたとえば、1秒/100mlである。
発熱部10は、さらに、反応促進剤を含むことができる。反応促進剤は、被酸化性金属の酸化反応を持続させる目的で用いられる。また、反応促進剤を用いることにより、酸化反応に伴い被酸化性金属に形成される酸化被膜を破壊して、酸化反応を促進することができる。反応促進剤には、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属の硫酸塩、及び塩化物から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。中でも、導電性、化学的安定性、生産コストに優れる点から、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、第一塩化鉄、第二塩化鉄等の各種塩化物、及び硫酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。
発熱部10中の反応促進剤の含有量は、十分な発熱量が長時間持続する点から被酸化性金属100質量部に対して2〜15質量部とすることが好ましく、3〜13質量部であることがより好ましい。
同様の観点から、発熱部10中の反応促進剤の含有量は、被酸化性金属100質量部に対して2質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましい。また、発熱部10中の反応促進剤の含有量は、被酸化性金属100質量部に対して15質量部以下であることが好ましく、13質量部以下であることがより好ましい。
発熱部10は、さらに、増粘剤を含むことができる。増粘剤には主として、水分を吸収して稠度を増大させるか、チキソトロピー性を付与する物質を用いることができ、アルギン酸ソーダ等のアルギン酸塩、アラビアゴム、トラガカントゴム、ローカストビーンガム、グアーガム、アラビアガム、カラギーナン、寒天、キサンタンガムなどの多糖類系増粘剤;デキストリン、α化澱粉、加工用澱粉などの澱粉系増粘剤;カルボキシメチルセルロース、酢酸エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体系増粘剤;ステアリン酸塩などの金属石鹸系増粘剤;ベントナイトなどの鉱物系増粘剤等から選ばれた1種又は2種以上の混合物を用いることができる。中でも、良好な塗工性能や保水層12に含まれる水の含有量を、保水層12の最大吸水量の10〜45質量%に維持できる点から、多糖類系増粘剤が好ましく、分子量100万以上5000万以下の多糖類系増粘剤がより好ましく、分子量200万以上4000万以下の多糖類系増粘剤がさらに好ましく、加えて良好な塗工性能や耐塩性を有する観点から、キサンタンガムが好ましい。
発熱部10中の増粘剤の含有量は、被酸化性金属100質量部に対して、0.05〜5質量部であることが好ましく、0.1〜4質量部であることがより好ましい。この範囲とすることで、被酸化性金属や吸水剤等の固形分を安定に分散させることができる。また、チキソトロピー性を付与し、塗工性能をさらに向上させることができる。さらに、保水層12に含まれる水の含有量を、保水層12の最大吸水量の10〜45質量%に容易に維持でき好ましい。
同様の観点から、増粘剤の含有量は、被酸化性金属100質量部に対して、0.05質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましい。また、増粘剤の含有量は、被酸化性金属100質量部に対して5質量部以下であることが好ましく、4質量部以下であることがより好ましい。
発熱部10には、必要に応じて、界面活性剤、薬剤、凝集剤、着色剤、紙力増強剤、増粘剤、pHコントロール剤、嵩高剤等を含むこともできる。
つづいて、発熱部10の製造方法の一例について説明する。
発熱部10は、例えば、被酸化性金属、炭素成分を含む吸水剤、及び水を含む発熱粉体水分散物を吸水シート102(図3の発熱部10を形成する場合は、吸水シート102a)に塗布して作製することができる。発熱粉体水分散物は、前述した成分を全て一度に混合することで調製されてもよいが、予め、増粘剤を水に溶解したものに反応促進剤を溶解して水溶液を準備し、次に被酸化性金属と炭素成分とをプレ混合したものを水溶液と混合してもよい。
反応促進剤は、発熱粉体水分散物中の他の成分と同時に混合してもよいが、発熱粉体水分散物を塗工した後に別途水等に溶解させた反応促進剤を浸透、噴霧又は滴下等により添加してもよいし、反応促進剤の粉末を散布してもよい。
吸水シート102(図3の発熱部10を形成する場合は、吸水シート102a)の少なくとも一方の面に、上述の発熱粉体水分散物が塗布されると、吸水シート102に発熱粉体水分散物中の水の少なくとも一部が吸収され、吸水シート102(図3の発熱部10を形成する場合は、吸水シート102a)上に発熱層11が形成される。すなわち、発熱層11は、吸水シート102(図3の発熱部10を形成する場合は、吸水シート102a、102b)に吸収されなかった残余の成分から構成される。発熱層11は、保水層12上に存在していてもよいし、図2で示すように発熱層11の下部が保水層12に少なくとも一部埋没していてもよい。また、発熱層11は、保水層12の一方の面に設けられてもよいし、両面に設けられていてもよい。図2には、保水層12の片面に発熱層11が設けられている例を示す。
図4は、この製造方法をより具体的に説明する図である。
まず、塗工槽301に、被酸化性金属、炭素成分を含む吸水剤、水を含む発熱粉体水分散物302を用意する。発熱粉体水分散物302は、攪拌器303により攪拌して、被酸化性金属、及び、炭素成分を含む吸水剤等、水に不溶な成分をより均一に分散させてもよい。発熱粉体水分散物302は、前述した成分を全て一度に混合することで調製されてもよいが、予め、増粘剤を水に溶解したものに反応促進剤を溶解して水溶液を準備し、次に被酸化性金属と炭素成分を含む吸水剤とをプレ混合したものを水溶液と混合してもよい。
ついで、ポンプ304により発熱粉体水分散物302をダイヘッド305までくみ上げる。くみ上げた発熱粉体水分散物302は、ダイヘッド305を用いて、加圧して押し出しながら吸水シート102に塗工する。このとき、発熱粉体水分散物302の塗工坪量は、160〜4,800g/m2とすることが好ましく、320〜2,200g/m2とすることがより好ましい。
なお、図4では、ダイコーティングによる塗工を例示したが、塗工方法は、これに限定されず、例えば、ロール塗布、スクリーン印刷、ロールグラビア、ナイフコーディング、カーテンコーター等などを用いることもできる。
発熱粉体水分散物302の塗工後に、発熱部10の発熱層11が形成されていない面から吸引を行ってもよい。こうすることで、保水層12と発熱層11との一体性を増加させることができより好ましい。このとき、吸引する場合の吸引力は、100〜10,000Paであることが好ましく、500〜5,000Paとすることがより好ましい。吸引力は、サクションコンベア内のボックスにマノスターケージを取り付けて測定することができる。
以上の操作により、発熱層11と保水層12とを備える連続長尺物が得られるので、これを任意の大きさに裁断することで、発熱部10が形成される。
なお、上述の方法においては、製造過程での被酸化性金属の酸化を抑制するために、必要に応じて非酸化性雰囲気に保つ手段を用いてもよい。
次に、発熱部10を収容する袋体30について説明する。
袋体30は、少なくも一部が通気性を有するが、少なくともその一部が通気性のシートであることが好ましい。保温、保存中の結露防止、必要な香り強度を長時間持続できること、及び、内部が透けて見えないようにすること等の観点から、坪量が20g/m2以上であることが好ましく、25g/m2以上であることがより好ましく、30g/m2以上であることがさらに好ましい。また、温熱具1の薄型化や軽量化を図り使用時の軽快さを向上させる観点や使用時のベルガモット様の香りの立ち上がりが良好になる観点から坪量が90g/m2以下であることが好ましく、85g/m2以下であることがより好ましく、80g/m2以下であることがさらに好ましい。
このようなシートとしては、例えば、不織布、編み物地、通気性シート(例えば、多孔質シート、通気孔を有するプラスチックフィルム)、不織布と通気性シートとをラミネートした積層シート、又は、編み物地と通気性シートとをラミネートした積層シートを用いることができる。
不織布としては、1種又は2種以上の繊維を用いて、エアスルー法、スパンボンド法、ニードルパンチ法、メルトブローン法、カード法、熱融着法、水流交絡法、溶剤接着法により製造されたものを用いることができる。なかでも、風合いや、弾力性の観点から、伸縮性を有する不織布を用いることが好ましい。伸縮性を有する不織布としては、構成繊維として弾性繊維(例えば、ポリウレタン、ポリエステル)や立体捲縮性繊維を含む不織布が好ましく、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、又は、ニードルパンチ不織布が好ましい。
具体的な不織布の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレンプロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリアミド及びポリアクリルから選択される1種又は2種以上の合成繊維;セルロース、シルク、コットン及びウールから選択される1種又は2種以上を含む天然繊維;あるいはこれらを複合した繊維を用いることができる。
通気性シートとしては、樹脂製の多孔質シートや通気穴を有する樹脂製のシートを用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等を使用することができる。
樹脂製の多孔質シートとしては、具体的には、熱可塑性樹脂及び該樹脂と相溶性のない有機又は無機のフィラーの溶融混練物をフィルム状に成形し、一軸又は二軸延伸して得られたものであり、微細な多孔質構造になっているものや、通気穴を有する樹脂製のシートとしては非通気性シートや難通気性シートに針等で微細穴を設けたものや、あるいは前述の通気性シートにさらに針等で微細穴を設けたものが好ましい。通気性シートの厚みは、5μm以上200μm以下が好ましい。
難通気性シートとしては、実質的に酸素を透過しないものであればよく、例えば、ポリエチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニリデン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスルフォン及びポリアミドから選択される1種又は2種以上を使用することができる。難通気性シートの厚みは、5μm以上200μm以下であることが好ましい。
第1袋体シート30a及び第2袋体シート30bの坪量は、本発明の効果を十分発揮させる点及び保温・使用時の温感・使用感から、肌等の適用部位から遠い側の第2袋体シート30bが適用部位に近い側の第1袋体シート30aと同じか又はそれよりも小さい方が好ましい。
第1袋体シート30a及び第2袋体シート30bの通気性は、本発明の効果を十分発揮させる点及び良好な発熱特性を奏させる観点から、肌に遠い側の第2袋体シート30bが肌に近い側の第1袋体シート30aと同じか又はそれよりも低い方が好ましい。
図1には、第1袋体シート30aと、第2袋体シート30bとの周縁部をシールすることで袋体30を構成する例を示す。第1袋体シート30a及び第2袋体シート30bは同種のものでもよく、あるいは異種のものでもよい。第1袋体シート30a及び第2袋体シート30bのどちらか一方を通気性にしてもよいし、両方を通気性としてもよい。両方を通気性とする場合、どちらか一方をもう片方よりも通気性の低いものとしてもよい。
温熱具1の賦香に用いられる香料組成物は、(A)2,4,4,7−テトラメチル−6−オクテン−3−オン(登録商標:Claritone)、及び(B)リナロールを含有する。
成分(B)の含有量は、ベルガモット様の芳香を効果的に発現させる観点から、被酸化性金属100質量部に対し、0.40質量部以上であり、0.50質量部以上であることが好ましく、0.55質量部以上であることがより好ましく、0.58質量部以上であることがさらに好ましい。一方、成分(B)の含有量は、使用時の香り立ちをよくする観点から、被酸化性金属100質量部に対し、2.0質量部以下であり、1.5質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以下であることがより好ましく、0.7質量部以下であることがさらに好ましい。
また、成分(B)に対する成分(A)の質量割合((A)/(B))(%)は、ベルガモット様の芳香をバランスよく発現する観点から、0.2以上であり、0.5以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましく、1.0以上であることがさらに好ましい。一方、8以下であり、6以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、3.5以下であることがさらに好ましい。また、0.2以上8以下であり、0.5以上6以下であることが好ましく、0.7以上4以下であることがより好ましく、1.0以上3.5以下であることがさらに好ましい。
また、ベルガモット様の香り立ちをよくする観点から、成分(A)の含有量は、香料組成物全体に対して、好ましくは0.16質量%以上であり、より好ましくは0.25質量%以上であり、さらに好ましくは0.35質量%以上であり、一方、好ましくは2.5質量%以下であり、より好ましくは1.6質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以下である。また、0.16〜2.5質量%が好ましく、0.25〜1.6質量%がより好ましく、0.35〜1.0質量%がさらに好ましい。
一方、ベルガモット様の芳香を効果的に発現させる観点から、成分(B)の含有量は、香料組成物全体に対して、10〜40質量%が好ましく、20〜35質量%がより好ましい。
香料組成物は、他の香料をさらに含むことができる。
例えば、1−(5,5−ジメチルシクロヘキセン−1−イル)−4−ペンテン−1−オン(ダイナスコン)、1−(2,6,6−トリメチルシクロヘキセン−1−イル)−2−ブテン−1−オン(ダマスコン)等の構造中にカルボニル基を有する香料、テルペン系炭化水素及び芳香族アルコール、鎖状モノテルペンアルコール類、セスキテルペンアルコール類、モノテルペンアルコール若しくは脂環式アルコールの酢酸エステル類、ジヒドロジャスモン酸メチル、ヨノン、γ−テルピネン、ジプロピレングリコール等の多価アルコール、精油などが挙げられる。
上記構造中にカルボニル基を有する香料の含有量は、ベルガモット様の香りを効果的に発現する観点から、香料組成物全体に対して、0.4〜4質量%であることが好ましく、0.5〜3質量%であることがより好ましく、0.7〜2質量%であることがさらに好ましい。
テルペン系炭化水素としては、ミルセン、ファルネセン、シトラール等の鎖状テルペン系炭化水素;ピネン、リモネン、α−テルピネン、カンフェン、フェランドレン、ターピネン、ターピノレン、p−サイメン、セドレン、カリオフィレン等の環状テルペン系炭化水素を用いることができる。これらは、1種又は2種以上を用いることができるが、少なくともリモネンを含むことが好ましい。
芳香族アルコールとしては、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、パンプルフルール(2−メチル−4−フェニルペンタノール)、ジメチルベンジルカルビノール及びフェニルヘキサノール(3−メチル−5−フェニルペンタノール)から選択される1種又は2種以上を用いることができる。
鎖状モノテルペンアルコール類としては、例えば、ゲラニオール、シトロネロール、ジヒドロリナロール、エチルリナロール、リナロールオキシド、ネロール及びミルセノールから選択される1種又は2種以上を用いることができる。また、これら化合物を含有する精油を用いることもできる。
セスキテルペンアルコール類としては、ファルネソールやネロリドール等の鎖状のセスキテルペンアルコール類、及び、サンタロール、セドロール、ベチベロール(混合体)、パチュリアルコール等の環状のセスキテルペンアルコール類から選択される1種又は2種以上を用いることができる。
酢酸エステル類としては、酢酸リナリル、酢酸テルピニル、酢酸ゲラニル、酢酸シトロネリル、酢酸エチルリナリル、酢酸ラヴァンジュリル、酢酸メンタニル等のモノテルペンアルコールの酢酸エステル類、及び、酢酸o−tert−ブチルシクロヘキシル、酢酸p−tert−ブチルシクロヘキシル等の脂環式アルコールの酢酸エステル類の1種又は2種以上が用いられる。
精油としては、柑橘類の精油が挙げられる。柑橘類の精油は、ミカン科の果皮から得られるものであり、中でもリモネンを主成分とする柑橘類の精油が好ましい。
香料組成物には、上記香料成分に加え、例えば「合成香料 化学と商品知識」(印藤元一著 化学工業日報社)に記載の香料成分を、本発明の効果を妨げない範囲で配合することもできる。
また、温熱具1の賦香に用いられる香料組成物は、本発明の効果を妨げない範囲であれば、溶剤を含むことができる。溶剤としては、ジプロピレングリコール、エチルジグリコール、イソプロピルミリステート、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート及びジエチルフタレートの1種又は2種以上を用いることができる。
香料組成物の使用量は、その種類や温熱具1の具体的な用途等に応じ適切に選定することができる。香料組成物の種類にもよるが、一般的な範囲として、発熱部10の被酸化性金属100質量部に対して、0.005質量部以上であることが好ましく、0.007質量部以上であることがより好ましく、一方、0.06質量部以下であることが好ましく、0.045質量部以下であることがより好ましい。また、0.005〜0.06質量部であることが好ましく、0.007〜0.045質量部であることがより好ましい。
温熱具1を賦香する方法は、香料組成物が液体である場合は、温熱具1に対して香料組成物をスプレー等で直接添加する方法がある。また、シート材料や粉体や油脂の担体等に賦香して、賦香シートや粉末香料やペースト状の賦香物とし、温熱具1に添加する方法もある。香料組成物が固体である場合は、温熱具1に対して香料組成物を適宜添加する方法がある。
香料組成物は、発熱部10と袋体30との間に施されていることが製品管理上、及び効率よく香りを発現する観点から、好ましい。香料組成物を発熱部10と袋体30との間に施す具体的な方法としては、例えば、袋体30の内側面に香料組成物を直接含浸させてもよいし、図1で示すように香料組成物にてシート材料を賦香してなる賦香シート13を間に配置して施してもよいし、粉体や油脂の担体に賦香して得られた粉末香料やペースト状の賦香物をシート状にして間に施してもよい。賦香シート13を用いた場合は、具体的には、袋体30の内側面に隣接して配置することで施してもよいし、賦香シート13を接着剤により袋体30の内側面に接着して施してもよい。
なお、本明細書において「隣接して配置」とは、近くにあるが必ずしも接触していない状態、すなわち接触していてもしていなくてもよい状態を意味する。
賦香シート13は、紙、不織布、織布等の繊維材料を含むシート材料や、多孔質性フィルム等、吸湿・吸油性を有するシート材料を含むことが好ましい。その材質は、例えば、シルク、コットン、ウール、セルロースの中でも木材パルプを主たる原料とする一般的な紙等の天然繊維や、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル等の合成繊維とすることができる。中でも、紙等のセルロースを含有する天然繊維、例えば吸水紙が、保存中の香りの変化を効果的に抑制させることができ、製造直後と同等の良好な香りを呈すると共に、軽量化を図ることが可能な点で好ましい。
袋体30内において、発熱部10は、図1で示すように、収容体20に収容されていてもよい。収容体20は少なくとも一部に通気性を有する。図1で示す例では、具体的には、収容体20は、第1収容体シート20aと第2収容体シート20bとの周縁部を互いに接合して形成された形状を有している。収容体20は、接合した周縁部よりも内側の部分において非接合状態になっており、それによって、発熱部10を収容する単一の空間が形成されている。
本発明では、第2収容体シート20bの通気度を、第1収容体シート20aの通気度よりも大きくすることもできる。これにより、発熱部10中の炭素成分の香料組成物への影響を一層抑制することが可能になる。すなわち、第2収容体シート20bの通気度を第1収容体シート20aの通気度の2倍以上とすることが好ましく、5倍以上とすることがより好ましく、10倍以上とすることがさらに好ましい。
第1収容体シート20aは、空気及び水蒸気の透過が可能なように通気性を有していてもよい。一方、第2収容体シート20bは、第1収容体シート20aよりも難通気性であるか、又は非通気性であってもよい。第2収容体シート20bが難通気性である場合、該第2収容体シート20bの通気度を、5,000秒以上とすることが好ましく、10,000秒以上とすることがより好ましく、20,000秒以上とすることがさらに好ましく、30,000秒以上とすることがことさら好ましい。一方、第1収容体シート20aの通気度は、第2収容体シート20bが非通気性であるか又は難通気性であるかを問わず、1,000秒以上50,000秒以下であることが好ましい。
第1収容体シート20a及び第2収容体シート20bの具体的な材料としては、通気度を支配しかつ粉体の漏れ出しを防止する等の点で、メルトブローン不織布や透湿性フィルムが好適に用いられる。なお、透湿性フィルムとしては、例えば熱可塑性樹脂及び該樹脂と相溶性のない有機又は無機のフィラーの溶融混練物をフィルム状に成形し、一軸又は二軸延伸して得られた微細な多孔質構造を有するものを用いることができる。なお、前述の袋体30に用い得る通気性シートや難通気性シートであってもよい。第1収容体シート20a及び第2収容体シート20bは、1枚のシート材から構成されていてもよいし、複数のシート材の積層体から構成されていてもよい。
発熱部10が、図1で示すように、発熱層11と保水層12とを備える場合、使用時の軽快さを向上させると共に十分な温熱効果を付与する観点から、肌等の適用部位から遠い側、具体的には、第2収容体シート20b側に保水層12を配置させることが好ましい。
香料組成物は、前述のとおり、発熱部10と袋体30との間に施されていると好ましいが、収容体20と袋体30との間に施されているとより好ましい。さらに、香料組成物が収容体20の外側面に施されていると好ましい。香料組成物と発熱部10との間に第2収容体シート20bが介在すると、香料組成物と発熱部10との距離が遠くなるため、炭素成分の影響を物理的に抑制することができる。
香料組成物を収容体20の外側面に施す具体例としては、収容体20の外側面のシートに香料組成物を直接塗布してもよい。なお、収容体20の外側面のシートを賦香シートと同等のものとし、このシートに香料組成物を施してもよい。すなわち、接着剤や熱融着等の方法を用いて第2収容体シート20bの外側面に賦香シートと同等のシートを積層し、収容体20の外側面のシートを賦香シートと同等のものとしてもよい。これにより、シートによる温度阻害をもたらさず十分な温熱効果を付与することができるとともに、賦香が容易であり、香料組成物の香り立ちが極めて高くなり、香りの変化を一層効果的に抑制することも可能となる。賦香シート13を用いた場合は、図示するように収容体20に隣接して配置することが好ましい。
第1収容体シート20aを肌等の適用部位に近い側に位置するものとし第2収容体シート20bを適用部位から遠い側に位置するものとした場合、賦香シート13を適用部位から遠い側に位置する第2収容体シート20b側の外側面に配する、あるいは香料組成物を外側面に施すことにより、使用時の軽快さを向上させると共に十分な温熱効果を適用部位に付与し、同時に良好な香り立ちを達成することが可能である。
温熱具1は、その使用前は、その全体が酸素バリア性を有する包装材(図示せず)で密封されることが好ましい。
次に、温熱具1による効果について説明する。
温熱具1は、(A)2,4,4,7−テトラメチル−6−オクテン−3−オン、及び(B)リナロールを含有する香料組成物にて賦香されており、成分(B)の含有量が、被酸化性金属100質量部に対し、0.40質量部以上2.0質量部以下であり、成分(B)に対する成分(A)の質量割合((A)/(B))(%)が、0.2以上8以下である。すなわち、(B)リナロールに特定の香料成分(A)を組み合わせ、これらの含有量を高度に制御することで温熱具1の使用時において、ベルガモット様の芳香をバランスよく発現できる。香料組成物の芳香を直接嗅いだときにはベルガモット様の芳香が感じられないものであっても、温熱具1に対し上記のような条件で賦香することによって、温熱具1の使用の際に、発熱と共に、ベルガモット様のバランスのよい芳香を感じることができる。
また、温熱具1は被酸化性金属、炭素成分及び水を備える発熱部10と、少なくとも一部に通気性を有し、発熱部10を収容する袋体30と、を有し、発熱特性の観点からも優れている。
次に、温熱具1のより具体的な一例として、蒸気温熱具100について以下に説明する。
図5には、蒸気温熱具100の平面図が示されている。この蒸気温熱具100は、いわゆるアイマスクタイプのものであり、ヒトの目及びその周囲に当接させて、所定温度に加熱された水蒸気(以下、「蒸気温熱」とも言う。)を目及びその周囲に付与するために用いられるものである。この蒸気温熱具100は前述の成分(A)及び成分(B)を所定量で含有する香料組成物によって賦香されている。
蒸気温熱具100は、本体部101と、耳が挿入される孔104が形成された耳掛け部105とを有している。本体部101は、長手方向Xとこれに直交する幅方向Yを有する横長の形状をしている。本体部101は略長円形をしている。耳掛け部105は一対で用いられ、各耳掛け部105は本体部101の長手方向(X方向)の各端部にそれぞれ取り付けられている。蒸気温熱具100は、各耳掛け部105を着用者の耳に掛けて、本体部101を着用者の両目を覆うように装着される。この着用状態下、蒸気温熱具100から発生した蒸気温熱が着用者の目に施され、また香気成分が揮散し、それらによって目の疲れや充血、眼精疲労が緩和され、またリラックス感が得られる。さらに入眠感も誘発される。
図6には、蒸気温熱具100の分解斜視図が示されている。同図においては、耳掛け部105は袋体110上に配置されている。また図7には、蒸気温熱具100のX方向に沿う断面図が示されている。蒸気温熱具100の本体部101は、発熱部121と、該発熱部121を収容する袋体110とを有する。発熱部121は、少なくとも一部に通気性を有する収容体122内に収容されて発熱体120を構成している。発熱部121は図1の発熱部10に対応し、袋体110が図1の袋体30に対応する。
発熱部121は、発熱部10と同じ態様である。すなわち、発熱部121は、被酸化性金属、炭素成分及び水を少なくとも含むが、さらに反応促進剤を含むことが好ましい。発熱部121は一層であっても積層構造であってもよいし、図1で示すような二層構造であってもよい。
蒸気温熱具100の賦香に用いられる香料組成物は、図1の温熱具1で使用しうる香料組成物と同様である。これにより、使用時に蒸気温熱を発生させるとともにベルガモット様の芳香をバランスよく発現できる蒸気温熱具100とすることができる。
蒸気温熱具100では、袋体110は、着用者の肌に近い側に位置する第1袋体シート110aと、着用者の肌から遠い側に位置する第2袋体シート110bとを有している。
第2袋体シート110bは、内部が透けて見えてしまうことを防止する観点や保温の観点から少なくとも一部が坪量20g/m2以上200g/m2以下のシートであることが好ましく、第2袋体シート110bの全部が坪量20g/m2以上200g/m2以下のシートであることがより好ましい。
また、第1袋体シート110aも第2袋体シート110bと同様の理由から少なくとも一部が坪量20g/m2以上200g/m2以下であることが好ましく、第1袋体シート110aの全部が坪量20g/m2以上200g/m2以下のシートであることがより好ましい。
使用時の温感及び使用感を高める観点から、坪量は、肌に遠い側の第2袋体シート110bが肌に近い側の第1袋体シート110aと同じか又はそれよりも小さい方が好ましい。第1袋体シート110a及び第2袋体シート110bの厚み、構成繊維の太さは、適切に選択すればよい。
第1袋体シート110a及び第2袋体シート110bは同形であり、略長円形をしている。そして、第1袋体シート110a及び第2袋体シート110bの外形が本体部101の外形をなしている。第1袋体シート110a及び第2袋体シート110bはそれらを重ね合わせ、それらの周縁部を接合し、かつX方向の中央部をY方向に沿って接合することで(図5の点々部分)、内部に2つの空間を有する袋体110が形成される。第1袋体シート110a及び第2袋体シート110bを接合するためには、例えばホットメルト接着剤を用いることができる。
袋体110には、そのX方向に延びる2つの長辺の中央部の位置において、該長辺からY方向に沿って内方に切れ込んだ略V字形のノッチ部113a,113bが形成されている。ノッチ部113aは、蒸気温熱具100を装着したときに、着用者の眉間又はその近傍に位置する。ノッチ部113bは、蒸気温熱具100を装着したときに、着用者の鼻梁に位置する。したがって、ノッチ部113aよりもノッチ部113bの方が切れ込みの程度が大きくなっている。なお、図5に示すノッチ部113a,113bは、それらの少なくとも一方がスリットであってもよい。
図6、7には、発熱部121が、少なくとも一部に通気性を有する収容体122内に収容されて発熱体120を構成したものが、さらに袋体110に収容された蒸気温熱具100の例を図示する。この例では、具体的には、収容体122は、第1収容体シート122aと第2収容体シート122bとの周縁部を互いに接合して形成された形状を有している。収容体122は、接合した周縁部よりも内側の部分において非接合状態になっており、それによって、発熱部121を収容する単一の空間が形成されている。収容体122が図1の収容体20に対応し、具体的には、第1収容体シート122aが図1の第1収容体シート20aに対応し、第2収容体シート122bが第2収容体シート20bに対応する。
香料組成物は、発熱部121と袋体110との間に施されていると好ましく、袋体110の内側から前記発熱部までの間に施されているとより好ましく、収容体122の外側面に施されているとさらに好ましく、中でも第2収容体シート122bの外側面に施されているとことさら好ましい。香料組成物と発熱部121との間に第2収容体シート122bが介在すると、香料組成物と発熱部121との距離が遠くなるため、炭素成分の影響を物理的に抑制することができる。
香料組成物を袋体110の内側から発熱体120の間に施す他の具体例としては、例えば、粉体や油脂の担体に賦香して得られた粉末香料やペースト状の賦香物をシート状にして間に施してもよいし、図7で示すように香料組成物にてシート材料を賦香してなる賦香シート130を間に配置して施してもよいし、袋体110の内側面に香料組成物を直接塗布してもよい。
香料組成物を収容体122の外側面に施す具体例としては、収容体122の外側面のシートに香料組成物を直接塗布してもよい。なお、収容体122の外側面のシートを賦香シートと同等のものとし、このシートに香料組成物を施してもよい。すなわち、接着剤や熱融着等の方法を用いて第2収容体シート122bの外側面に賦香シートと同等のシートを積層し、収容体122の外側面のシートを賦香シートと同等のものとしてもよい。これにより、シートによる温度阻害をもたらさず十分な温熱効果を付与することができるとともに、賦香が容易であり、香料組成物の香り立ちが極めて高くなり、ベルガモット様の芳香を一層効果的に発現させることが可能となる。賦香シート130は、賦香シート13と同じ態様である。賦香シート130を用いた場合は、具体的には、袋体110の内側面に隣接して配置することで施してもよいし、賦香シート130を接着剤により袋体110の内側面に接着して施してもよい。
第1収容体シート122aを着用者の肌に近い側に位置するものとし第2収容体シート122bを着用者の肌から遠い側に位置するものとした場合、賦香シート130を着用者の肌から遠い側に位置する第2収容体シート122b側の外側面に配する、あるいは香料組成物を外側面に施すことにより、使用時の軽快さを向上させると共に十分な温熱効果を着用者の肌へ付与し、同様に良好な香り立ちを達成することが可能である。
第1収容体シート122a及び第2収容体シート122bの具体的な材料としては、第1収容体シート20a、第2収容体シート20bと同様なものを選択することができる。また、第1収容体シート122a及び第2収容体シート122bの通気度は、第1収容体シート20a、第2収容体シート20bと同様に設定することができる。
図7には、袋体110と発熱体120との固定の状態が示されている。発熱体120は、第2袋体シート110bの内側面と、第2収容体シート122bの外側面とが固定部103a、103bにより接続されることで、発熱体120が袋体110の内部に固定される。固定部103a、103bは、例えば、接着剤やヒートシール等とすることができる。
蒸気温熱具100における耳掛け部105は、その使用前の状態では、図6及び図7に示すように、本体部101における第1袋体シート110a上に配置されている。蒸気温熱具100を使用するときには、図5に示すように、耳掛け部105をX方向の外方へ向けて反転させて、開いた状態にする。使用前の状態、すなわち左右の耳掛け部105が本体部101上に位置している状態においては、左右の耳掛け部105によって形成される輪郭は、本体部101の輪郭とほぼ同じになっている。
本実施形態の蒸気温熱具100は、その使用前は、その全体が酸素バリア性を有する包装材(図示せず)によって包装されて、発熱部121が空気中の酸素と接触しないようになっている。この包装材を構成するフィルムは特に限定されないが、具体的にはアルミニウム等の金属フィルムや、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂フィルム、又はこれらの合成樹脂フィルムにセラミック若しくはアルミニウム等を蒸着したフィルムが挙げられる。また、包装材は、酸素透過係数(ASTM D3985)が、好ましくは10cm3・mm/(m2・day・MPa)以下であり、より好ましくは2cm3・mm/(m2・day・MPa)以下であるものを用いることができる。
図8には、蒸気温熱具100の別の例として、蒸気温熱具200を示す。蒸気温熱具100は、袋体の内側から発熱部までの間に、収容体20の外側面に賦香シート13を配する例を挙げたが、蒸気温熱具200では、袋体110の内側から発熱体220までの間に、収容体の外側に別途配されたシート材料に香料組成物が施された例を示す。具体的には、図8に示す蒸気温熱具200においては、袋体110の内側から発熱体220までの間に、賦香シート230が配されている。なかでも、袋体110における第2袋体シート110bと、発熱体220との間に、賦香シート230が隣接して配置されていると好ましい。賦香シート230には、前述の成分(A)、及び成分(B)を所定量で含有する香料組成物が施されている。
賦香シート230は、第2袋体シート110b及び発熱体220の収容体222と非接着状態になっており、隣接して配置された状態である。あるいは第2袋体シート110bと、位置ずれが起こらない程度に軽度に接着されている。賦香シート230を構成するシート材料としては、収容体222と同形でもよく、あるいは収容体222よりも小さな形状のものでもよい。中でも、発熱部221と同じ形状であると、発熱による香りの揮散が効率的で好ましい。
発熱部221は、発熱部10と同じ態様である。発熱部221は一層であっても積層構造であってもよいし、図1で示すような二層構造であってもよい。
発熱体220は、固定部203により袋体110に固定されている。上記説明した以外は、蒸気温熱具200は蒸気温熱具100と同様であり、蒸気温熱具100と同様な効果を得ることができる。例えば、第1収容体シート222aは第1収容体シート122aに対応し、第2収容体シート222bは第2収容体シート122bに対応する。
なお、蒸気温熱具100及び蒸気温熱具200は、着用者の両目に当接させて使用するアイマスクを例に挙げて説明したが、これに代えて、これを着用者の身体、例えば肩、腰、肘、膝等に当接させて用いてもよい。あるいは衣類に貼り付けて用いてもよい。蒸気温熱具100を着用者の身体に当接させる場合には、耳掛け部105に代えて、粘着剤等の固定手段を設ければよい。すなわち、着用者の身体に当接させて用いる場合には、袋体110における第1袋体シート110aの表面に、粘着剤等の固定手段を設ければよく、着用者の衣類に貼り付けて用いる場合には、袋体110における第2袋体シート110bの表面に、粘着剤等の固定手段を設ければよい。
蒸気温熱具100、200によれば、前述した成分(A)、成分(B)を所定量で含有する香料組成物により賦香されているため、使用時において、ベルガモット様の芳香を発現できる温熱具となる。また、蒸気温熱具100、200は発熱特性の観点からも優れている。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」及び「部」はそれぞれ「質量%」及び「質量部」を意味する。
図5ないし図7に示す構造の蒸気温熱具を以下のようにして作製した。
〔発熱粉体水分散物の調製〕
表1で示す組成比で、材料を用意し、次の手順で調整した。キサンタンガムを水に溶解し、次いでリン酸3カリウム、水酸化カリウムを溶解して水溶液を用意した。一方で、鉄粉、活性炭をプレ混合した粉体を用意し、上記水溶液に、プレ混合粉体を入れ、ディスクタービン型攪拌羽根で150rpm、10分間攪拌してスラリー状の発熱粉体水分散物を得た。
〔発熱部の作製〕
第一の吸水シートとして、木材パルプ製の紙(坪量20g/m2、伊野紙株式会社製)と吸水性ポリマー(球状、平均粒子径300μm、アクアリックCA、株式会社日本触媒製、坪量30g/m2)と木材パルプ製の紙(坪量30g/m2、伊野紙株式会社製)を積層して一体化したポリマーシート(最大吸水量の10〜45質量%の水を吸収した状態での通気度2秒/100ml)を用い、第二の吸水シートとして、木材パルプ製の紙(坪量50g/m2、伊野紙株式会社製)を用いた。
第一の吸水シートとして用いるポリマーシートを用意し、前述のとおりに調製した発熱粉体水分散物を25cm2(5cm×5cm)の第一の吸水シートの表面に厚み略3mm(塗工量1.7g)で塗工し、塗工面上に、食塩(日本薬局方塩化ナトリウム:富田製薬株式会社製)を0.089g散布し、塗工面を第二の吸水シート25cm2(5cm×5cm)で被覆することで、発熱部を作製した。
〔発熱体の作製〕
収容体における第1収容体シートを、炭酸カルシウムを含む多孔質の延伸ポリエチレン透湿性フィルム(JIS P8117による通気度3,500秒)から構成した。第2収容体シートは、ポリエチレン製の非透湿フィルムから構成した。該第2収容体シートの一面に吸水紙(坪量35g/m2)を積層して、上述のシート状発熱部の1枚を間にして、第1収容体シートと第2収容体シートとを、吸水紙が外方を向くように重ね、周縁部においてシートどうしを接合し、矩形の発熱体を得た。そして吸水紙に、以下の表2に示す組成(質量部)の香料組成物を含浸させた。香料組成物の含浸量は、発熱部の固形分量1.18gに対して18mgとした。
〔蒸気温熱具の作製〕
第1袋体シートは、ポリプロピレン不織布(ニードルパンチ法、坪量80g/m2)、第2袋体シートは、ポリエチレンテレフタレート不織布(エアスルー法、坪量30g/m2)を用い、図6に示すように、両袋体シートの間に、前記で得られた発熱体を2個挟み、周縁部及び縦中心線近傍において第1袋体シート、第2袋体シートどうしを接合した。さらに、第1袋体シートの外側面に、図5に示すように不織布製の耳掛け部を取り付け、目的とする蒸気温熱具を得た。以上の各操作は、酸素が存在しない雰囲気下で行った。
得られた蒸気温熱具を用いて、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
〔評価〕
香料を賦香した蒸気温熱具を袋密閉封入して、香料成分の安定化の為、一晩放置した。
袋を開封して蒸気温熱具を装着し、発熱及び水蒸気の発生を開始させ、開封から5分後における香りについて、複数の香りの専門パネラーにより、以下の基準で評価し、平均値を算出し、この小数点第1位を四捨五入したものを結果とした。
1:ベルガモット様の香りの特徴がかなり乏しい
2:ベルガモット様の香りの特徴がない
3:ベルガモット様の香りが必要レベルに達している
4:ベルガモット様の香りが充分にある