JP6766592B2 - 定着装置、画像形成装置及び定着回転部材 - Google Patents

定着装置、画像形成装置及び定着回転部材 Download PDF

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Description

本発明は、定着装置、画像形成装置及び定着回転部材に関する。
特許文献1の定着装置は、接地された芯金及び該芯金に形成された絶縁性離型層を備えた加熱ローラと、軸方向の長さが絶縁性離型層の軸方向の長さよりも長い導電性離型層を備え、導電性離型層が芯金に電気的に接触している加圧ローラとを有する。加熱ローラ及び加圧ローラの表面の電荷は、絶縁性離型層及び芯金を介してアースに移動する。
特開2004−240284号公報
記録媒体及び現像剤との接触時間を増やすために、軸部の外周に弾性層を積層し、さらに弾性層に離型層を積層した定着回転部材がある。離型層には、例えば、フッ素樹脂素材が用いられる。しかし、フッ素樹脂は帯電し易いことから、未定着の現像剤が離型層に静電的に付着し、定着回転部材が1回転した後に記録媒体上に再度、付着する静電オフセットと呼ばれる現象が生じる可能性がある。また、離型層の電荷を軸部を介して接地させようとしても、弾性層があることで、離型層から軸部へ電荷を流し難い。
本発明は、離型層と加圧部材とで第1ニップ部が形成され、軸部材と加圧部材とで第2ニップ部が形成された構成において、軸部材に段差が無い構成に比べて、離型層への現像剤の静電気オフセットを抑制すると共に画質の低下を抑制することを目的とする。
本発明の請求項1に係る定着装置は、軸部と該軸部の軸方向の両端部よりも外側で該軸部の径方向に拡大されている拡径部とを備えた軸部材と、前記軸部の外周に積層されている弾性層と、外周面が前記拡径部の外周面よりも径方向に突出するように該弾性層に積層され該弾性層よりも抵抗が高い離型層と、を有し、前記軸部材において接地された状態で回転しながら加熱源により加熱され、記録媒体上の現像剤と接触する定着回転部材と、導電性を有し前記離型層の外周面と接触して第1ニップ部を形成すると共に前記拡径部の外周面と接触して第2ニップ部を形成する外周部を備え、前記定着回転部材と共に記録媒体を加圧する加圧部材と、を有する。
本発明の請求項2に係る定着装置は、前記拡径部の外周面に対する前記離型層の外周面の径方向の突出高さは、前記定着回転部材の非加圧状態において、10μm以上160μm以下である。
本発明の請求項3に係る画像形成装置は、現像剤像を形成する現像剤像形成手段と、前記現像剤像形成手段で形成された現像剤像を前記記録媒体に定着する請求項1又は請求項2に記載の定着装置と、を有する。
本発明の請求項4に係る定着回転部材は、軸部と該軸部の軸方向の両端部よりも外側で該軸部の径方向に拡大されている拡径部とを備えた軸部材と、前記軸部の外周に積層されている弾性層と、外周面が前記拡径部の外周面よりも径方向に突出するように該弾性層に積層され該弾性層よりも抵抗が高い離型層と、前記軸部材に設けられ接地端子が接触する接触部と、を有し、前記軸部材において接地された状態で回転しながら加熱源により加熱され、記録媒体上の現像剤を定着させる。
請求項1の発明は、離型層と加圧部材とで第1ニップ部が形成され、軸部材と加圧部材とで第2ニップ部が形成された構成において、軸部材に段差が無い構成に比べて、離型層への現像剤の静電気オフセットを抑制すると共に画質の低下を抑制することができる。
請求項2の発明は、拡径部の外周面に対する離型層の外周面の径方向の突出高さが160μmよりも高い構成に比べて、画質の低下を抑制することができる。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の定着装置を有さない構成に比べて、定着後の画像不良を抑制することができる。
請求項4の発明は、軸部材に段差が無い構成に比べて、離型層への現像剤の静電気オフセットを抑制すると共に画質の低下を抑制することができる。
本実施形態に係る画像形成装置を示す構成図である。 本実施形態に係る定着装置の加圧状態の構成図である。 (A)本実施形態に係る定着ロール及び加圧ベルトの縦断面図(図2の3A−3A線断面)である。(B)本実施形態に係る定着ロールの段差部分の拡大断面図である。 (A)本実施形態に係る離型層外周面の突出高さと加圧ベルトの表面電位との関係を示すグラフである。(B)本実施形態に係る離型層外周面の突出高さと加圧ベルトの表面電位との関係を示すグラフである。
本実施形態に係る定着装置、画像形成装置及び定着回転部材の一例について説明する。
〔全体構成〕
図1には、本実施形態の画像形成装置10が示されている。なお、以下の説明では、図1に矢印Yで示す方向を装置高さ方向、矢印Xで示す方向を装置幅方向とする。また、装置高さ方向及び装置幅方向のそれぞれに直交する方向(Zで示す)を装置奥行き方向とする。そして、画像形成装置10を正面視して、装置高さ方向、装置幅方向、装置奥行き方向をY方向、X方向、Z方向と記載する。さらに、X方向、Y方向、Z方向のそれぞれ一方側と他方側を区別する必要がある場合は、画像形成装置10を正面視して、上側をY側、下側を−Y側、右側をX側、左側を−X側、奥側をZ側、前側を−Z側と記載する。
画像形成装置10は、箱状の筐体11を有する。また、画像形成装置10は、一例として、搬送部12と、現像剤像形成手段の一例としての画像形成部14と、制御部16と、定着装置20とを有する。搬送部12は、ロール対13を含んで構成され、搬送経路Aに沿って用紙Pを搬送する。制御部16は、画像形成装置10の各部の動作を制御する。
画像形成部14は、一例として、4つの画像形成ユニット15を有している。また、画像形成部14は、公知の電子写真方式である帯電、露光、現像、転写の各工程を行うことで、搬送部12により搬送される用紙P上にトナーTを用いてトナー像Gを形成する。用紙Pは、記録媒体の一例である。トナーTは、現像剤の一例である。トナー像Gは現像剤像の一例である。定着装置20は、画像形成部14で形成されたトナー像Gを、後述する定着ロール22(図3(A)参照)の回転に伴い加熱及び加圧して用紙Pに定着する。なお、定着装置20の詳細については後述する。
〔要部構成〕
次に、定着装置20について説明する。
図3(A)に示す定着装置20は、定着用回転部材の一例としての定着ロール22と、加圧部材32と、加熱源の一例としてのハロゲンヒータ42とを有する。定着ロール22、加圧部材32及びハロゲンヒータ42は、定着装置20の装置本体となる直方体状の図示しない筐体内に収容されている。
<定着ロール>
定着ロール22は、軸部材の一例としての芯金23と、芯金23に積層されている弾性層27と、弾性層27に積層されている離型層28とを有する構成とされている。また、定着ロール22は、用紙Pの搬送経路Aに対して、トナー像G側(X側)にZ方向を軸方向として、該軸周りに回転可能に配置されている。つまり、定着ロール22は、用紙Pの搬送方向と直交するZ方向を軸方向として回転して、用紙P上のトナー像Gと接触するようになっている。なお、定着ロール22は、芯金23のZ側端部が図示しないモータにより回転駆動される。
(芯金)
図2に示す芯金23は、一例として、Z方向を軸方向として延びているアルミニウム製の円筒体で構成されている。また、芯金23は、詳細は後述するが、接地されている。さらに、芯金23は、Z方向に区分された軸部24と、拡径部25と、接触部26とを備えており、Z方向に沿った中心軸K周りに回転可能に設けられている。
軸部24は、Z方向を軸方向とする円筒状に形成されている。つまり、軸部24は、Z方向に見た外周面24A(図3(A)参照)が円形に形成されている。なお、軸部24の−Z側端部からZ側端部までのZ方向の長さをL1とする。また、軸部24の外径は、Z方向でほぼ同じ大きさである外径d1に揃えられている。軸部24の内径d0は、後述するハロゲンヒータ42が内側に配置される大きさとされている。
拡径部25は、軸部24の軸方向(Z方向)の両端部よりも外側(Z側及び−Z側)で軸部24の径方向に径が拡大されている部位である。具体的には、拡径部25は、Z方向を軸方向とする円筒状に形成されている。つまり、拡径部25は、Z方向に見た外周面25Aが円形に形成されている。拡径部25の外径は、Z方向でほぼ同じ大きさである外径d2(>d1)に揃えられている。言い換えると、芯金23には、軸部24と拡径部25との境界に径方向の高さの差Δd(図3(B)参照)の段差部29が形成されている。なお、Δd=(d2−d1)/2とされている。拡径部25の内径はd0とされている。
芯金23のZ方向の全長をL2とする。また、1つの拡径部25のZ方向の長さをL3とする。ここで、一例として、L3=(L2−L1)/2とされている。−Z側の拡径部25及びZ側の拡径部25は、定着装置20の図示しない筐体に取付けられたベアリング31により、中心軸K周りに回転可能に支持されている。
接触部26は、拡径部25のZ側の端面25Bにより構成されている。言い換えると、本実施形態では、一例として、拡径部25と接触部26とが一体化されている。接触部26には、板バネ状の接地端子44が接触している。接地端子44は、抵抗器46を介して接地されている。つまり、芯金23は、拡径部25から接触部26、接地端子44及び抵抗器46を通って電荷が流れるように接地されている。
(弾性層)
図3(B)に示す弾性層27は、一例として、シリコーンゴム製であり、芯金23の軸部24の外周に積層されている。弾性層27は、拡径部25には形成されていない。また、弾性層27は、Z方向に見たときの断面が円環状に形成されている。さらに、弾性層27の径方向の厚さは、Z方向の各部においてほぼ同じ厚みに揃えられている。弾性層27のZ方向の両端面の一部は、拡径部25の両内側面と接触している。なお、本実施形態では、一例として、弾性層27の径方向の一部が拡径部25の外周面25Aよりも径方向の外側に突出されている。
(離型層)
離型層28は、弾性層27の外周に積層されている。また、離型層28は、弾性層27よりも抵抗(体積抵抗率)が高い材料で構成されており、一例として、PFA(パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)により構成されている。離型層28は、拡径部25には形成されていない。また、離型層28は、Z方向に見たときの断面が円環状に形成されている。さらに、離型層28の径方向の厚みは、Z方向の各部においてほぼ同じ厚みに揃えられている。離型層28のZ方向の両側端面は、一例として、拡径部25の両内側面と接触していない。
離型層28の外周面28Aは、一例として、拡径部25の外周面25Aよりも径方向の外側に突出されている。ここで、外周面25Aに対する離型層28の外周面28Aの径方向の突出高さhは、定着ロール22の非加圧状態において、10〔μm〕以上160〔μm〕以下の範囲内で設定されている。本実施形態では、一例として、h=100〔μm〕とされている。なお、突出高さhの範囲を設定するにあたって実施した評価については、後述する。
<加圧部材>
図3(A)に示す加圧部材32は、一例として、加圧ベルト34と、パッド部材36とを有する。
(加圧ベルト)
図2に示す加圧ベルト34は、一例として、Z方向両端部の外径dBが中央部の外径dAとほぼ等しい形状(フラット形状)のエンドレスベルトとされている。また、加圧ベルト34は、用紙Pの搬送経路A(図3(A)参照)に対して定着ロール22側とは反対側(−X側)にZ方向を軸方向として、該軸周りに回転(周回移動)可能に配置されている。加圧ベルト34は、一例として、定着ロール22とX方向に並んでいる。
加圧ベルト34のZ方向の長さ(幅)をL4とする。長さL4は、軸部24のZ方向の長さL1よりも長くかつ芯金23のZ側端部から−Z側端部までのZ方向の長さL2よりも短い長さで設定されている。つまり、L1<L4<L2となっている。また、加圧ベルト34のZ側端部は、Z側の拡径部25と対向しており、加圧ベルト34の−Z側端部は、−Z側の拡径部25と対向している。さらに、加圧ベルト34は、基層34Aと、基層34Aの外周面に形成された弾性層34Bと、弾性層34Bの外周面に形成された離型層34Cとを有する。
基層34Aは、一例として、厚さ80〔μm〕のポリイミド製とされている。弾性層34Bは、一例として、厚さ450〔μm〕のシリコーンゴム製とされている。離型層34Cは、一例として、カーボンブラックを含有し厚さ30〔μm〕の導電性のフッ素樹脂製とされている。本実施形態では、導電性とは、体積抵抗率が10〔 Ω・cm〕未満であることを意味している。加圧ベルト34の基層34Aの内側には、後述する加圧パッド62が設けられている。
(パッド部材)
パッド部材36は、一例として、PET(ポリエチレンテレフタレート)製であり、Z方向の幅が加圧ベルト34のZ方向の幅とほぼ同じ長さで、Z方向に長い長尺状の部材である。また、図3(A)に示すように、パッド部材36は、X−Y断面がX方向に長い矩形状とされている。パッド部材36の−Y側部分は、定着ロール22に向けて凸となるR形状とされている。さらに、パッド部材36は、加圧ベルト34の内側でZ方向両端部が図示しないホルダに固定されることにより、加圧ベルト34の内側に設けられている。このホルダは、後述するニップ部Nを形成するときに、図示しないバネを含むリトラクト機構部により定着ロール22側に向けて押し付けられるようになっている。
加圧ベルト34は、パッド部材36により加圧された状態において、定着ロール22と離型層34Cの外周面34Dとの接触の摩擦力により、定着ロール22の回転に同期して周回移動するようになっている。また、加圧ベルト34は、定着ロール22と共に用紙Pを挟んで搬送するようになっている。
ここで、定着ロール22の外周面と加圧ベルト34の外周面とが用紙Pを挟むと共に用紙P及びトナー像Gを加圧する部位をニップ部Nと称する。つまり、加圧ベルト34は、定着ロール22と共にニップ部Nを形成しており、ニップ部Nで用紙Pを加圧する。なお、用紙Pが無い場合は、ニップ部Nにおいて、定着ロール22と加圧ベルト34が接触する。加圧ベルト34における定着ロール22と接触する部位を外周部35と称する。本実施形態では、一例として、定着装置20における用紙Pの搬送方向がY方向に沿っており、用紙Pの搬送方向と直交する幅方向がZ方向となっている。
図2に示す外周部35は、既述のように導電性を有しており、用紙Pが無い状態でかつ加圧状態において、離型層28の外周面28Aと接触して第1ニップ部N1を形成すると共に、拡径部25の外周面25Aと接触して第2ニップ部N2を形成している。言い換えると、ニップ部Nは、第1ニップ部N1と、第1ニップ部N1のZ方向の両外側に形成された第2ニップ部N2とで構成されている。第1ニップ部N1は、用紙Pを挟んで加圧する部位である。第2ニップ部N2は、用紙Pが通らない部位であり、拡径部25の外周面が加圧ベルト34の外周面と接触する部位である。
<ハロゲンヒータ>
図3(A)に示すハロゲンヒータ42は、一例として、芯金23の内側にZ方向を軸方向として芯金23とは非接触状態で設けられている。また、ハロゲンヒータ42は、画像形成装置10(図1参照)の図示しない電源からの通電により発熱し、芯金23を加熱することで、定着ロール22全体を加熱するようになっている。ハロゲンヒータ42への通電の有無は、定着ロール22の外周面の温度を検知する図示しない温度センサの検知結果に基づいて行われる。
ここで、定着装置20では、定着ロール22が接地状態でハロゲンヒータ42により加熱されると共に図示しないモータにより回転されることで、加圧ベルト34が従動(周回移動)し、用紙P上のトナー像G(図1参照)を加熱及び加圧して用紙Pに定着させる。
〔作用〕
次に、本実施形態の作用について説明する。
図2に示す定着装置20では、定着ロール22が加圧部材32により加圧されたときに、弾性層27が径方向に圧縮される。このため、離型層28の外周面28A(図3(B)参照)の径方向の高さと、拡径部25の外周面25A(図3(B)参照)の径方向の高さとが揃うようになる。つまり、ニップ部Nに用紙Pが無くかつ加圧状態において、離型層28の外周面28Aと、加圧ベルト34の外周部35の外周面34Dとが接触して第1ニップ部N1を形成する。さらに、定着ロール22の拡径部25の外周面25Aと、加圧ベルト34の外周部35の外周面34Dとが接触して第2ニップ部N2を形成する。
ここで、定着ロール22及び加圧ベルト34が回転して、第1ニップ部N1において、外周面28Aと外周面34Dとの接触による摩擦で離型層28に図示しない電荷が生じたとする。この場合に、離型層28の電荷は、離型層28内をZ方向に移動することはできないため、加圧ベルト34の導電性を有する外周部35に流れる。さらに、外周部35に流れた電荷は、外周部35のZ側及び−Z側の少なくとも一方に流れる。
続いて、外周部35のZ側、−Z側に流れた電荷は、第2ニップ部N2において、導電性を有する拡径部25に流れ、接触部26から既述の経路で流れる。このように、定着ロール22の離型層28に生じた電荷が、接地により減少するので、拡径部25が接地されていない構成に比べて、離型層28での電荷の残留が抑制され、離型層28へのトナーT(図1参照)の静電気オフセットが抑制される。
さらに、定着装置20では、軸部24と拡径部25との境界に段差部29が形成されているため、段差部29の高さを変えることで、軸部24の外周に積層する弾性層27の径方向の厚みを自由に設定可能となる。これにより、段差部29及び弾性層27が無い構成に比べて、用紙Pの搬送方向における第1ニップ部N1の周方向の幅を広げられ、トナー像Gに加える熱量が確保されるので、定着後のトナー像Gの画質の低下が抑制される。
また、定着装置20では、拡径部25の外周面25Aに対する離型層28の外周面28Aの径方向の突出高さhが、10〔μm〕以上160〔μm〕以下の範囲内で設定されている。これにより、突出高さhが160〔μm〕よりも高い構成に比べて、第2ニップ部N2における接触面積が大きくなり、離型層28に電荷が残留し難くなるので、静電気オフセットに起因する画質の低下が抑制される。
画像形成装置10では、定着装置20における静電気オフセット及び画質の低下が抑制されることにより、定着装置20を有さない構成に比べて、用紙Pへの定着後のトナー像Gの画像不良(一例として画像ムラ)が抑制される。
〔各種評価〕
次に、本実施形態の定着ロール22と比較例の定着ロールとを用いた各種評価について説明する。
<各定着ロールの作製>
以下の方法により、本実施形態の定着ロール22と比較例の定着ロールとを作製した。
(芯金の段差部の形成)
厚み1〔mm〕、外径φ29〔mm〕、軸方向長さ350〔mm〕のアルミニウム製(モリタ興産製A−5052)の芯金の軸方向中央部に、切削加工機(Roland社製SRM−20)を用いて、350〔mm〕全周に亘って切削加工を施し、段差部を形成した。
(弾性層の形成)
段差部が形成された芯金を弾性層塗布工程用の金型に挿入し、金型の軸方向を略水平方向に保ちながら芯金を周方向に回転させる回転台に設置した。そして、芯金を回転させた状態で、ノズルを軸方向に移動させながら、ノズルから外径の小さい軸部の外周に向けて塗布液を吐出させた。このように、塗布方式としてフローコート法を用いた。塗布液としては、溶媒ヘプタン中にシリコーンゴムを50〔質量%〕含む液状シリコーンゴム塗布液を用いた。軸部に塗布した液状シリコーンゴム塗布液を、ノズル移動に伴って、平板状SUS(ステンレス鋼)板でならした後、回転乾燥炉内にて乾燥させた。続いて、加熱炉内において加硫を行った。軸部の外周に積層された弾性層の膜厚は、300〔μm〕であった。
(離型層の形成)
弾性層まで形成した管状体の外径よりも2〔%〕小径である厚み30〔μm〕のPFAチューブを準備して、このPFAチューブを、内径がこの管状体の外径よりも0.8〔%〕大径である外型の内周に配置した。そして、このPFAチューブの内側に、弾性層まで形成した管状体を挿入した状態で、このPFAチューブを外型から外して、弾性層の外周に被覆した(積層させた)。さらに、室温(25〔℃〕)で24時間放置した後で加熱し、厚み30〔μm〕の離型層を形成した。
異なる段差高さ〔μm〕を設定することにより、本実施形態の3種類(実施例1、2、3)の定着ロール22と、比較例の6種類(比較例1、2、3、4、5、6)の定着ロールとを準備した。実施例1、2、3の定着ロール22及び比較例1、2、3、4、5、6の定着ロールの段差高さ〔μm〕及び突出高さ〔μm〕は、表1に示すように設定した。本実施形態、比較例共に、弾性層の厚みは300〔μm〕、離型層の厚みは30〔μm〕となっている。
実施例1の突出高さは90〔μm〕である。実施例2の突出高さは10〔μm〕である。実施例3の突出高さは160〔μm〕である。比較例1は、段差が無く突出高さが330〔μm〕である。比較例2は、段差及び離型層が無く突出高さが300〔μm〕である。比較例3は、段差及び弾性層が無く突出高さが30〔μm〕である。比較例4は、突出高さが90〔μm〕で、拡径部の外周面が離型層で被覆されている。比較例5は、突出高さが90〔μm〕で、加圧ベルトの離型層の軸方向長さと、定着ロールの離型層の軸方向長さとが同じとされている。比較例6は、突出高さが90〔μm〕で、芯金(拡径部)が接地されていない。ここで、実施例1、2、3の定着ロール22と、比較例1、2、3、4、5、6の定着ロールとについて、静電気オフセット評価、画質評価を行った結果を表1に示す。
静電気オフセット評価、画質評価のいずれにおいても、画像形成装置として富士ゼロックス株式会社DocuprintCP400を用いた。該画像形成装置の定着装置に実施例1、2、3の定着ロール22又は比較例1、2、3、4、5、6の定着ロールを順次、交換して搭載した状態で、各評価を行った。
<静電気オフセット評価>
富士ゼロックスオフィスサプライ社製P紙(A4サイズ)に黒色トナーを用いたベタ画像を形成して定着を行った。そして、定着後の定着ロールの外周面を目視確認して、トナーの残留が顕著な場合をNG、トナーの残留が見られない又はトナーの残留が僅かである場合をOKと判定した。
<画質評価>
画質評価は、静電気オフセット評価において排出されたP紙のベタ画像を目視で確認して、画像ムラの発生度合でランク分けした。目視レベルで画像ムラが見られないものをAランク、かすかに画像ムラが見られるものをBランク、明確に画像ムラが見られるものをCランク、顕著に画像ムラが見られるものをDランクと判定した。なお、Aランク又はBランクが実使用レベルでOKであり、Cランク、Dランクについては実使用レベルでNGである。
表1に示すように、静電気オフセット評価、画質評価のいずれにおいても、本実施形態の定着ロール22の方が比較例の各定着ロールよりも評価が高いことが確認された。なお、比較例3では、第2ニップ部N2が形成されることになるため、静電気オフセット評価がOKとなっているが、弾性層が無い影響により画質評価がNGのため、比較例3は実使用レベルにない。
<表面電位測定結果>
図4(A)には、離型層28の外周面28Aの非加圧状態における突出高さh(図3(B)参照)と、加圧ベルト34(図2参照)の表面電位との関係を示すグラフが示されている。また、図4(B)には、図4(A)の突出高さhについて、150〔μm〕から190〔μm〕までを10〔μm〕間隔で設定した場合の加圧ベルト34の表面電位が示されている。なお、図4(A)、(B)では、各プロットを既述の画質評価のランクで区別して示している。表面電位〔V〕の測定については、トレック・ジャパン社製の表面電位計(Model344)を用いて測定した。
図4(A)に示すように、突出高さhが長くなるほど、加圧ベルト34(図2参照)の表面電位が負側に大きくなっている。これは、離型層34C(図2参照)が、負側に帯電し易いフッ素樹脂で構成されており、突出高さhが長くなるほど、拡径部25(図2参照)と加圧ベルト34との間隔が広がり接地され難くなって、加圧ベルト34の負極性の残留電荷が多くなるためと考えられる。
図4(B)に示すように、非加圧状態における突出高さhが150、160〔μm〕の場合は、画質のランクがAランクとなった。一方、非加圧状態における突出高さhが170〔μm〕以上(190〔μm〕まで)の場合は、画質のランクがBランクとなった。この結果から、非加圧状態における突出高さhは、160〔μm〕以下で設定することが好ましい。なお、非加圧状態における突出高さhの下限については、ニップ形成時に弾性層27(厚み300〔μm〕)が10〔μm〕程度収縮することから、10〔μm〕で設定するとよい。
本発明は、上記の実施形態に限定されない。
定着ロール22は、拡径部25の外周面25Aが加圧ベルト34の外周面34Dと接触する構成に限らず、外周面25Aに導電性の被覆層が形成され、この被覆層が外周面34Dと接触してもよい。また、拡径部25は、Z方向の両端部に形成されるものに限らず、Z方向の一端部のみに形成されていてもよい。さらに、拡径部25をベアリング31により回転可能に支持する構成に限らず、拡径部25からZ方向の外側に延びる軸を形成して、この軸を他のベアリングなどの軸受部材により回転可能に支持させてもよい。段差部29の壁は、径方向に直立した形状の壁に限らず、径方向と交差する斜め方向に沿ったテーパ状の壁とされていてもよい。
弾性層27は、Z方向の中央部から両端部に向けて、徐々に厚みが大きくなる形状とされていてもよい。又は、軸部24が、Z方向の中央部から両端部に向けて、徐々に厚みが大きくなる形状とされていてもよい。
加圧ベルト34の外周面34Dの表面電位は、負極性に帯電するものに限らず、正極性に帯電するものであってもよい。また、加圧ベルト34の内側にハロゲンヒータ等の加熱源を設けてもよい。
突出高さhは、静電気オフセット評価がOKでかつ画質評価がOKとなる条件であれば、10〔μm〕よりも小さく又は160〔μm〕よりも大きくてもよい。
接触部26は、端面25Bのように拡径部25に一体に設けられたものに限らず、拡径部25とは別体とされ、拡径部25に設けられた導電性の部材であってもよい。また、芯金23を支持する軸受部材を導電性として、接地端子44を軸受部材に接触させてもよい。
10 画像形成装置
14 画像形成部(現像剤像形成手段の一例)
20 定着装置
22 定着ロール(定着回転部材の一例)
23 芯金(軸部材の一例)
24 軸部
25 拡径部
26 接触部
27 弾性層
28 離型層
32 加圧部材
35 外周部
42 ハロゲンヒータ(加熱源の一例)
44 接地端子
N1 第1ニップ部
N2 第2ニップ部

Claims (4)

  1. 軸部と該軸部の軸方向の両端部よりも外側で該軸部の径方向に拡大されている拡径部とを備えた軸部材と、前記軸部の外周に積層されている弾性層と、外周面が前記拡径部の外周面よりも径方向に突出するように該弾性層に積層され該弾性層よりも抵抗が高い離型層と、を有し、前記軸部材において接地された状態で回転しながら加熱源により加熱され、記録媒体上の現像剤と接触する定着回転部材と、
    導電性を有し前記離型層の外周面と接触して第1ニップ部を形成すると共に前記拡径部の外周面と接触して第2ニップ部を形成する外周部を備え、前記定着回転部材と共に記録媒体を加圧する加圧部材と、
    を有する定着装置。
  2. 前記拡径部の外周面に対する前記離型層の外周面の径方向の突出高さは、前記定着回転部材の非加圧状態において、10μm以上160μm以下である請求項1に記載の定着装置。
  3. 現像剤像を形成する現像剤像形成手段と、
    前記現像剤像形成手段で形成された現像剤像を前記記録媒体に定着する請求項1又は請求項2に記載の定着装置と、
    を有する画像形成装置。
  4. 軸部と該軸部の軸方向の両端部よりも外側で該軸部の径方向に拡大されている拡径部とを備えた軸部材と、前記軸部の外周に積層されている弾性層と、外周面が前記拡径部の外周面よりも径方向に突出するように該弾性層に積層され該弾性層よりも抵抗が高い離型層と、前記軸部材に設けられ接地端子が接触する接触部と、を有し、前記軸部材において接地された状態で回転しながら加熱源により加熱され、記録媒体上の現像剤を定着させる定着回転部材。
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