本発明の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、本発明の一例であるワーク移載システム10の概略説明図である。図2は、ワーク移載装置20の概略説明図である。図3は、ワーク供給装置40の概略説明図である。図4は、ワーク収容部材60の斜視図である。ワーク移載システム10は、システム制御部12と、ワーク移載装置20と、ワーク供給装置40と、搬送装置52と、移動装置54と、ワーク収容部材60とを備えている。システム制御部12は、システム全体を制御するものであり、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されている。このシステム制御部12は、ワーク移載装置20,ワーク供給装置40,搬送装置52及び移動装置54と電気的に接続されており、これらの装置へ信号を出力し、これらの装置から信号を入力する。なお、ワーク移載システム10における、左右方向(X軸)、前後方向(Y軸)及び上下方向(Z軸)は、図1,図4に示した通りとして以下説明する。
ワーク移載システム10は、ワーク収容部材60に収容された作業対象のワーク37をその後の作業に用いられる作業用載置部36へ移動、載置させる装置として構成されている(図1参照)。ワーク移載システム10は、例えば、不定姿勢でワーク収容部材60の採取用載置部63に載置されたワーク37を、後工程で作業者が作業しやすいように、所定の姿勢で整列させた状態で作業用載置部36へ載置させるものとしてもよい。ここで、「不定姿勢」とは、ワーク37の位置、方向などが統一されていない状態をいうものとする。ワーク37は、特に限定されないが、例えば、機械部品、電気部品、電子部品、化学部品などが挙げられ、例えば、ボルト、ナット、ワッシャ、ねじ、釘及びリベットなどのうち1以上の締結部材としてもよい。このワーク37は、少なくとも一部(所定位置38)が磁性体により形成されているものとしてもよい。このワーク37は、磁性体により形成された所定位置38が、ワーク移載装置20やワーク供給装置40が備える電磁石により引き付けられて、移動する。作業用載置部36は、ワーク37を配列載置する部材である。この作業用載置部36は、磁力を帯びており、磁性体であるワーク37を磁力で固定するパレットとして構成されている。この作業用載置部36は、ワーク37の種別に応じて定められた位置にそのワーク37が配設固定される。作業者は、ワーク移載システム10によりワーク37が配設固定された作業用載置部36を用い、配設固定された位置に基づいてワーク37を特定しながらワーク37の組付けなどを行う。ワーク移載システム10は、例えば、ワーク37としてのボルトを作業用載置部36に配列させる工程や、ワーク37としてのワッシャを配列されたボルトに組付ける工程などを実行するものとしてもよい。ここでは、ワーク37が全体を磁性体とするボルトであり、所定位置38がネジ軸の先端部であり、ボルトの頭部を下方にして所定間隔で作業用載置部36に配列させる場合を具体例として説明する。
ワーク移載装置20は、1以上のワーク37が載置されたワーク収容部材60から採取用載置部63へワーク37を移動載置する装置である。図2に示すように、ワーク移載装置20は、移動機構21と、採取部22と、撮像部25と、移載制御部31とを備えている。移動機構21は、採取部22及び撮像部25を前後左右及び上下に移動させる機構であり、複数のアーム28と複数の駆動部29とを備えた多軸ロボットアームとして構成されている。駆動部29は、内部に図示しない歯車機構とモータとを備えている。移動機構21は、複数の駆動部29の各駆動軸が回転することで図2に示す矢印方向に旋回や上下動が可能となっている。
採取部22は、ワーク37の所定位置38を引き付けて採取する部材であり、移動機構21の先端に駆動部29により回動可能に装着されている。採取部22は、引付部23と、挟持部24と、2枚のプレート70と、固定部材71と、挟持ピン72とを備えている。引付部23、挟持部24及び固定部材71は、2枚のプレート70の間に配設されている。プレート70は、移動機構21の先端に配設された板状部材である。このプレート70には、挟持ピン72を導くガイドとしての溝部73が形成されている。引付部23は、電磁石と電磁石に接続された軸部材とを有し、軸部材の先端に磁性体のワーク37を引き付けて採取するものである。この引付部23は、プレート70の下方に固定されている。引付部23は、供給される電力に応じて、複数段階(例えば3段階)の磁力(引付力)を生じるよう構成されている。挟持部24は、引付部23が引き付けたあとの姿勢でワーク37を挟み込んで支持する部材である。この採取部22では、2つの挟持部24によりワーク37を挟持するが、3以上の挟持部によりワーク37を挟持するものとしてもよい。挟持部24は、固定部材71の両端に回動可能に軸支されている。また、挟持部24のプレート70側の面には、挟持ピン72が固定されている。この挟持ピン72は、プレート70に形成された溝部73に挿入されている。固定部材71は、上下動可能にプレート70に配設されており、エアシリンダにより上下動する。固定部材71は、初期位置がプレート70の上方であり、ワーク37を挟持する際に下方に移動する。挟持部24は、固定部材71が初期位置にあるときは(図2の吹出しの左図)、プレート70の内部に収納されている。また、挟持部24は、固定部材71が下方に移動すると、溝部73により挟持ピン72が所定の軌道に導かれながらプレート70から露出する。挟持部24は、固定部材71が最下部に位置すると(挟持位置)、その先端が当接しワーク37を挟持する(図2の吹出しの右図)。
撮像部25は、画像を撮像するユニットであり、プレート70の先端側に固定されている。撮像部25は、照明部26と、撮像素子27とを備えている。照明部26は、撮像素子27の外周側に円状に配設された照明であり、下方にある撮像対象に対して光を照射する。照明部26は、撮像対象である採取用載置部63の全体に光を照射するよう撮像部25に配設されている。撮像素子27は、受光により電荷を発生させ発生した電荷を出力する素子である。撮像素子27は、CMOSイメージセンサとしてもよい。撮像部25は、撮像素子27から出力された電荷に基づいて画像データを生成し、生成した画像データを移載制御部31へ出力する。
移載制御部31は、ワーク移載装置20の全体を制御するものであり、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されている。この移載制御部31は、移動機構21,採取部22,及び撮像部25へ信号を出力する。また、移載制御部31は、撮像部25からの信号を入力する。なお、移動機構21の各駆動部29には図示しない位置センサが装備されており、移載制御部31は、それらの位置センサからの位置情報を入力しつつ、各駆動部29のモータを制御して採取部22及び撮像部25を移動させる。
ワーク供給装置40は、ワーク移載装置20がワーク37を採取可能となるよう、複数のワーク37をワーク収容部材60の採取用載置部63へ供給する装置である。図3に示すように、ワーク供給装置40は、移動機構41と、採取部42と、供給制御部51とを備えている。移動機構41は、採取部42を前後左右及び上下に移動させる機構であり、移動機構21と同様に複数のアーム48及び複数の駆動部49を備えた多軸ロボットアームとして構成されている。移動機構41は、複数の駆動部49の各駆動軸が回転することで図3に示す矢印方向に旋回や上下動が可能となっている。
採取部42は、多数のワーク37を引き付けて採取する部材であり、移動機構41の先端に駆動部49により回動可能に装着されている。採取部42は、引付部43と、支持軸44とを備えている。引付部43は、支持軸44の下端に固定された比較的強力な電磁石であり、複数のワーク37を一度にできるだけ多く引き付けて採取するものである。支持軸44は、上下方向に自由に移動可能な状態で移動機構41の先端に支持されている(図3の吹出図)。
供給制御部51は、ワーク供給装置40の全体を制御する。この供給制御部51は、移動機構41及び採取部42へ信号を出力する。なお、供給制御部51は、移載制御部31と同様に、移動機構41の各駆動部49に装備された図示しない位置センサからの位置情報を入力しつつ、各駆動部49のモータを制御して採取部42を移動させる。
搬送装置52は、作業用載置部36の搬入、搬送、ワーク37の移載位置での固定、搬出を行う装置である。搬送装置52は、図1の前後に間隔を開けて設けられ左右方向に架け渡された1対のコンベアベルトを有している。作業用載置部36は、このコンベアベルトにより搬送される。
移動装置54は、図1に示すように、1以上のワーク収容部材60を載せる収容台56と、収容台56を退避位置(図1の点線参照)と処理位置(図1の実線参照)との間で移動させるレール57と、収容台56を移動させる図示しない駆動部とを備えている。作業者は、収容台56を退避位置に移動させたのち、ワーク収容部材60へ新たなワーク37を追加する。
ワーク収容部材60は、図4に示すように、上方が開放された箱体であり、底面の一部が傾斜している。ワーク収容部材60の底面と開口との間には、採取用載置部63が水平に支持されている。採取用載置部63は、矩形板状体であり、ワーク収容部材60の底面のうち傾斜している部分を覆っている。ワーク収容部材60のうち採取用載置部63よりも下方の空間は、多数のワーク37を貯蔵可能な貯蔵部62となっている。ワーク収容箱60は、複数個(ここでは6個)が1つの収容台56に載せられている。
次に、こうして構成された本実施形態のワーク移載システム10の動作、特に、作業用載置部36へワーク37を配列固定させる処理について説明する。図5は、ワーク移載システム10のシステム制御部12,移載制御部31,及び供給制御部51により実行されるワーク処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。また、図6は、ワーク37を載置、貯蔵したワーク収容部材60の平面図である。図7は、ワーク移載装置20が実行するワーク処理の説明図であり、図7(a)が採取用載置部63上を撮像する図、図7(b)がワーク37を採取する図、図7(c)が挟持部24でワーク37を固定した図である。また、図7(d)が引付部23にワーク37を引き付けた図、図7(e)が挟持部24を移動する図、図7(f)が挟持部24でワーク37を固定した図、図7(g)が作業用載置部36へワーク37を配列載置する図である。図8は、ワーク移動載置処理における第1動作〜第3動作の説明図であり、図8(a)が第1動作におけるワーク37の引き付け前(採取前)の図、図8(b)が第1動作において引付部23がワーク37を引き付けた図、図8(c)が第1動作におけるワーク37の上昇後の図である。また、図8(d)が第2動作においてワーク37を高さH1で一旦停止させた状態の図、図8(e)が第2動作において採取用載置部63からワーク37を離した後の図、図8(f)が第3動作において挟持部24でワーク37を挟持した図である。図9は、ワーク移動載置処理における引付部23の移動速度の変化を示すグラフである。なお、図9における縦軸(引付部23の移動速度)は、速度の絶対値(スカラー量)である。なお、ここでは、説明の便宜のため詳細は省略するが、ワーク収容部材60が複数あり、複数の種別のワーク37を作業用載置部36上へ配列載置する場合は、以下説明するステップS100〜200の処理をワーク収容部材60ごとに行うものとすればよい。
ワーク処理ルーチンは、システム制御部12に記憶され、作業者による開始指示により実行される。このルーチンを開始すると、システム制御部12は、搬送装置52により作業用載置部36を搬入、搬送させ、作業用載置部36を移載位置で固定させる(ステップS100)。次に、システム制御部12は、ワーク供給処理をワーク供給装置40に実行させる(ステップS110)。ワーク供給装置40の供給制御部51は、ワーク供給処理において、例えば、採取部42の引付部43を貯蔵部62へ移動させて多数のワーク37を引付部43に採取させる。次に、供給制御部51は、引付部43を採取用載置部63の中央上方へ移動させ、電磁石を消磁させて採取用載置部63上にワーク37を撒く処理を実行する。ワーク供給処理において、ワーク供給装置40は、例えば予め定められた軌道で採取部42を移動させる。
ステップS110のあと、システム制御部12は、採取用載置部63を撮像部25に撮像させ(ステップS120)、載置されているワーク37のうち採取可能なものを認識すると共に、ワーク37の所定位置38を認識する(ステップS130)。ワーク移載装置20の移載制御部31は、撮像部25を採取用載置部63の中央上方に移動させ、撮像処理を行う(図7(a)参照)。撮像した画像は、システム制御部12へ送られ、ワーク37の認識処理がなされる。ワーク37の認識処理は、例えば、二値化処理やパターンマッチング処理などにより、撮像画像中の採取用載置部63の領域とそれ以外の領域(ワーク37の領域)とを区別し、予め用意されたワーク37の基準形状データに適合するワーク領域を識別することにより行う。基準形状データは、例えば、ワーク37を複数の角度から見たときの形状を含むものとしてもよい。採取可能なワーク37は、より確実にワーク37を採取する観点から、例えば、複雑に重なり合っていないものや、採取用載置部63の縁部に載置されていないものなどとすることができる。所定位置38の認識処理は、採取可能なワーク37を認識したのち、採取可能なワーク37の先端部分を認識することで行う(図6参照)。
次に、システム制御部12は、採取可能なワークがあるか否かをステップS130の結果に基づいて判定する(ステップS150)。採取可能なワーク37があるときには、システム制御部12は、採取するワーク37を設定する(ステップS160)。採取するワーク37の設定は、採取していないワーク37を任意の順、例えば画像の左から右に向かう順、画像の上から下に向かう順などにすることができる。次に、システム制御部12は、ワーク37を採取し移動させて作業用載置部36に載置するワーク移動載置処理をワーク移載装置20に実行させる。ワーク移動載置処理を実行するためのプログラムは、移載制御部31に記憶されている。
ワーク移動載置処理が実行されると、移載制御部31は、まず、採取用載置部63に載置された採取対象のワーク37を引き付けて上昇させる第1動作を行うよう採取部22を制御する(ステップS171)。第1動作では、移載制御部31は、まず、ステップS130で認識された採取対象のワーク37の所定位置38の位置へ引付部23を移動させる(図8(a))。続いて、移載制御部31は、採取対象のワーク37を引付部23の先端面(下端面)に引き付けさせる(図7(b),図8(b))。この間、引付部23は加速し、所定の第1速度V1で移動し、その後減速して引付部23がワーク37に接触する高さで速度が値0となり停止する(図9の時刻t0〜t1)。なお、移載制御部31は、時刻t0〜t1において、引付部23を少なくとも下降させればよく、引付部23を前後左右にも移動させてもよい。また、移載制御部31は、設定された引付力でワーク37を引き付けるよう引付部23を制御する。ワーク37を引き付ける引付力は、例えばワーク37の種別に応じて予め定めておくことができ、ワーク37を1つだけ引き付ける値に設定されてもよい。これにより、ワーク移載装置20は、重なり合ったワーク37からでも1つのワーク37を引き付けて採取することができる。また、図示は省略するが、引付部23の先端面は円形状の平面とする。次に、移載制御部31は、引付部23を加速させ引付部23を第1高さH1まで上昇させる(図8(c),図9の時刻t1〜t2)。なお、第1高さH1は、ワーク37が採取用載置部63から離れない高さとして、例えばワーク37の種別に応じて予め定められている。また、第1高さH1は、後述する第2高さH2未満の高さとして定められている。図9では、第1高さH1まで上昇させる間は引付部23は加速中としたが、加速後に一定速度で第1高さH1まで上昇してもよい。なお、移載制御部31は、時刻t1〜t2の間は引付部23を前後左右には移動させず上昇のみ行わせるものとしたが、引付部23を前後左右にも移動させてもよい。図9に示すように、引付部23が第1高さH1まで上昇した時の速度を、減速前速度Vaと称する。第1動作を行うことにより、採取対象のワーク37は、所定位置38を上側にしてワーク37の長手方向が上下方向から傾斜した状態、且つ採取用載置部63に少なくとも一部が接触している状態(図8(c))になる。
続いて、移載制御部31は、ワーク37を減速させて一旦停止し、減速前の速度未満の速度でワークを38上昇させて採取用載置部63から離す第2動作を行うよう引付部23を制御する(ステップS172)。第2動作では、移載制御部31は、まず、ワーク37の上昇速度を減速前速度Vaから減速させて第2高さH2で引付部23を一旦停止させる(図8(d),図9の時刻t2〜t3)。第2高さH2は、例えばワーク37の長さL未満の高さとして定めておけばよく、長さLから所定のマージンを差し引いた値としてもよい。また、本実施形態では、ワーク37の長さLはボルトの軸方向長さとしたが、所望の姿勢でワーク37が引付部23に引き付けられたときのワーク37の上下方向の長さを長さLとしてもよい。また、上述した第1高さH1は、引付部23が減速前速度Vaから減速して停止したときに引付部23が第2高さH2になるような高さとして、予め定められている。次に、移載制御部31は、引付部23を第3高さH3まで上昇させて停止させる(図8(e))。この間、引付部23は第2高さH2で停止した状態(図9の時刻t3)から加速した後に所定の第2速度V2で上昇し、その後減速して第3高さH3で停止する(図9の時刻t3〜t5)。第3高さH3は、ワーク37の長さLを超える長さとして設定されており、引付部23が第2高さH2から第3高さH3まで上昇する間に、ワーク37は採取用載置部63から離れる。本実施形態では、引付部23の加速中すなわち図9の時刻t3〜t4間にワーク37が採取用載置部63から離れるものとした。また、第2速度V2は、減速前速度Vaよりも小さい速度として予め定められている。そのため、第2動作中、特にワーク37が採取用載置部63から離れるまでの間は、ワーク37が減速前速度Va以上になることがない。このように、第2動作では、ワーク37が採取用載置部63から離れる際に比較的低速でワーク37を上昇させるため、ワーク37の揺れを低減できる。例えば、第1動作で引付部23がワーク37に接触して(時刻t1)から、引付部23を上昇させて減速前速度Va又は第1速度V1を超える比較的高速でワーク37が上昇する際にワーク37が採取用載置部63から離れると、ワーク37が揺れる場合があるが、そのような場合と比較してワーク37の揺れを低減できる。また、例えば図9の時刻t1からワーク37が採取用載置部63から離れるまで引付部23を低速で上昇させるなど、第1動作と第2動作とを共に低速で行うと、ワーク37の移載に要する時間が長くなる。これに対し、ワーク37を第1動作で第1高さH1まで上昇させてから第2動作で減速させるため、ワーク37の移載に要する時間が長くなるのを抑制できる。以上により、ワーク37の移載に要する時間が長くなるのを抑制しつつワーク37の採取時の揺れを低減できる。なお、移載制御部31は、第2動作(時刻t2〜t5)の間は引付部23を前後左右には移動させず上昇のみ行わせるものとしたが、引付部23を前後左右にも移動させてもよい。
なお、ワーク37の揺れの低減効果は、第2動作において引付部23が採取用載置部63から離れる時の引付部23の上昇速度、ワーク37が離れるまでに引付部23を上昇させる距離(例えば長さLと第2高さH2との差)、などによって変化する。そのため、これらを経験的に定めておくことで、ワーク37の揺れをより低減することができる。例えば、第2高さH2は、ワーク37の長さLの70%以上90%以下としてもよい。また、ワーク37すなわちボルトのネジ軸の長さをL1、ボルトの頭部の長さをL2としたときに(図8(c)参照)、第2高さH2をL1+0.5L2前後(例えばL1+0.5L2の90%〜110%)としてもよい。また、移載制御部31は、例えば第2動作において第1動作よりも引付部23の引付力を強くしてもよい。例えば、ワーク37が採取用載置部63から離れるタイミングの直前,同時又は直後において、引付部23の引付力を強くしてもよい。引付部23の引付力を強くすることで、ワーク37の揺れをより低減することができる。
次に、移載制御部31は、挟持部24によりワーク37を挟持して作業用載置部63へ移動載置する第3動作を行うよう採取部22を制御して(ステップS173)、ワーク移動載置処理を終了する。第3動作では、移載制御部31は、まず、引付部23の先端面にワーク37がぶら下がった状態(図8(e),図7(d))から、固定部材71を下方に移動させ(図7(e))、挟持部24によりワーク37を挟持させる(図8(f),図7(c),(f))。なお、第3動作において挟持部24がワーク37を挟持するまでの間、移載制御部31は、引付部23が第3高さH3まで上昇した状態で引付部23を停止させておく(図9の時刻t5〜t6)。挟持部24にワーク37を挟持させると、移載制御部31は、採取部22を前後左右上下のうち少なくとも1以上の方向に移動させて作業用載置部36上へ移動させ、電磁石を消磁させ、挟持部24を開放し、ワーク37を載置するべき位置に配列載置させる(図7(g))。この間、引付部23は加速し、所定の第3速度V3で移動し、その後減速して引付部23に保持されたワーク37が作業用載置部36に接触する高さで速度が値0となり停止する(図9の時刻t6〜t7)。なお、第3速度V3は、第2速度V2と同じとしてもよいが、第2速度V2より高速であることが好ましく、減速前速度Vaより高速であることがより好ましい。第3速度V3は、第1速度V1と同じとしてもよいし、第3速度V1を超える速度としてもよい。本実施形態では、V2<Va<V1<V3とした。
このように、ワーク移動載置処理では、第1動作で1つのワーク37を引付部23の先端面に引き付けた後、第2動作において減速して減速前速度Va未満の速度でワーク37を上昇させることで、ワーク37が採取用載置部63から離れる際のワーク37の揺れを低減するのである。
以上のように移載制御部31がステップS171〜S173を含むワーク移動載置処理を行うと、システム制御部12は、現在の作業用載置部36へのワーク37の移載が完了したか否かを作業の進行状況に基づいて判定し(ステップS180)、作業用載置部36への移載が完了していないときには、ステップS150以降の処理を実行させる。一方、ステップS150で、採取可能なワークが採取用載置部63上にないときには、システム制御部12は、ワーク回収処理をワーク供給装置40に実行させ(ステップS190)、ステップS110以降の処理を実行させる。ワーク供給装置40の供給制御部51は、ワーク回収処理において、例えば、採取部42の引付部43を移動させ、採取用載置部63上に残っているワーク37を引付部43に採取させる。次に、供給制御部51は、引付部43を貯蔵部62の上方へ移動させ、電磁石を消磁させてワーク37を貯蔵部62に落下させる一方、ステップS180で作業用載置部36への移載が完了したときには、システム制御部12は、搬送装置52により作業用載置部36を排出させ、新たな作業用載置部36を搬送、固定させ(ステップS200)、ステップS150以降の処理を実行させる。このようにして、ワーク移載システム10では、ワーク移載装置20、ワーク供給装置40により、ワーク37を作業用載置部36へ配列載置することができる。なお、ワーク移載システム10の下流にて、作業用載置部36上に配列されたボルトにワッシャを組み付けるワーク移載システムが存在してもよい。作業者は、作業用載置部36に配列載置されたワーク37を用いて、製品の生産を行うものとする。
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の採取用載置部63が採取用載置部に相当し、作業用載置部36が作業用載置部に相当し、採取部22が採取部に相当し、移載制御部31が移載制御部に相当する。また、撮像部25が撮像部に相当し、引付部23が引付部に相当し、挟持部24が挟持部に相当し、ワーク供給装置40がワーク供給装置に相当する。
以上説明した本実施形態のワーク移載装置20では、採取部22が、採取用載置部63に載置されたワーク37を引き付けてワーク37を採取用載置部63から離れない第1高さH1まで上昇させる第1動作を行った後に、ワーク37を減速させ減速前速度Va未満の速度でワーク37を上昇させて採取用載置部63から離す第2動作を行う。こうすることで、ワーク移載装置20は、ワーク37の移載に要する時間が長くなるのを抑制しつつワーク37の採取時の揺れを低減できる。ここで、採取時にワーク37が揺れる場合、ワーク37を揺れたまま移動させると、そのワーク37が落下したり他の部材に衝突したりする場合がある。また、ワーク37が揺れている間に挟持部24でワーク37を挟持しようとすると、2つの挟持部24の一方が先にワーク37に当たりワーク37が落下してしまう場合や、ワーク37を所望の姿勢で保持できない場合がある。一方、ワーク37の揺れが収まるのを待ってからワーク37を移動させると、ワーク37の移載に要する時間が長くなってしまう場合がある。ワーク移載装置20は、採取時のワーク37の揺れを低減することで、これらの不具合の発生を低減することができる。
また、移載制御部31は、第3動作において第2動作中の速度を超える第3速度V3でワーク37を移動させるよう採取部22を制御する。より具体的には、減速前速度Vaを超える第3速度V3でワーク37を移動させるよう採取部22を制御する。これにより、第3動作では比較的高速にワーク37を移動させるため、ワーク37の移載に要する時間が長くなるのをより抑制できる。
また、移載制御部31は、第2動作においてワーク37を一旦停止させてから、ワーク37を上昇させて採取用載置部63から離すよう採取部22を制御する。これにより、第2動作においてワーク37の揺れをより低減できる。
また、ワーク37は、少なくとも所定位置38が磁性体により形成されており、採取部22は、磁力によりワーク37の所定位置38を引き付けて採取する。そのため、ワーク移載装置20は磁力を用いてより簡便にワークを採取することができる。また、作業用載置部36は磁力を有するパレットであるため、ワーク移載装置20は作業用載置部36の磁力を用いて簡便にワーク37を固定配置することができる。
また、移載制御部31は、第1動作において1つのワーク37を引き付ける引付力に採取部22を制御する。これにより、例えば、サイズや重量の異なる複数のワーク37が存在する場合に、それぞれのワーク37にあった引付力を用いることにより、それぞれのワーク37の1つ1つを確実に採取することができる。
また、ワーク移載装置20は、画像を撮像する撮像部25を備えている。そして、移載制御部31は、第1動作において、撮像部25により撮像された採取用載置部63の撮像画像に基づいて認識したワーク37の所定位置38へ採取部22を移動させる。このワーク移載装置20では、採取用載置部63の撮像画像に基づいて採取可能なワーク37やそのワーク37の所定位置38を認識するため、より確実にワーク37の1つ1つを移動載置することができる。
また、採取部22は、ワーク37を引き付ける引付部23と、引付部23がワーク37を引き付けたあとの姿勢でワーク37を挟み込んで支持する挟持部24と、を有している。そして、移載制御部31は、第2動作後に挟持部24がワーク37を挟み込んで支持するよう採取部22を制御する。これにより、第2動作後に、挟持部24によりワーク37を確実に保持及び移動できる。
また、ワーク移載システム10は、ワーク移載装置20と、複数のワーク37を採取用載置部63へ供給するワーク供給装置40と、を備えている。したがって、ワーク移載システム10は、ワーク供給装置40によりワーク37を供給することができるため移動載置の作業をより継続して行うことができる。また、ワーク供給装置40は、引付部43により磁力を用いて複数のワーク37を容易に供給することができる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、移載制御部31は、第2動作においてワーク37を一旦停止させてから、ワーク37を上昇させて採取用載置部63から離すよう採取部22を制御したが、これに限られない。移載制御部31は、第2動作において、ワーク37を減速させ減速前速度Va未満の速度でワーク37を上昇させて採取用載置部63から離すよう採取部22を制御すればよい。例えば、移載制御部31は、ワーク37を減速させるものの停止(速度0)まではさせなくてもよい。なお、第2動作においてワーク37を第2高さH2で一旦停止させない場合、第1高さH1をワーク37の長さLの70%以上90%以下としてもよいし、第1高さH1をL1+0.5L2前後(例えばL1+0.5L2の90%〜110%)としてもよい。
上述した実施形態では、移載制御部31は、引付部23を一旦停止させた後の加速中にワーク37が採取用載置部63から離れるよう採取部22を制御したが、これに限られない。例えば、移載制御部31は、減速中や一定速度(例えば第2速度V2)での移動中にワーク37が採取用載置部63から離れるよう採取部22を制御してもよい。なお、減速中にワーク37が採取用載置部63から離れる場合、移載制御部31は、ワーク37が採取用載置部63から離れた後の加速等(例えば図9の時刻t3〜t5)を行わずに、次の第3動作を行ってもよい。
上述した実施形態では、挟持部24がワーク37を挟持するまでの間、移載制御部31は、引付部23が第3高さH3まで上昇した状態で引付部23を停止させておいたが、特にこれに限られない。例えば、移載制御部31は、引付部23の移動中(例えば上昇中)に挟持部24にワーク37を挟持させてもよい。この場合、第2動作中の引付部23の上昇と第3動作中の引付部23の上昇とが連続した動作であってもよく、そのような場合には第3高さH3が明確に定まらなかったり、第2動作と第3動作との境界が明確に定まらなかったりしてもよい。なお、第3動作において引付部23の移動速度を減速前速度Va以上になるまで加速させる場合には、引付部23の移動速度が減速前速度Vaになったタイミングを第2動作と第3動作との境界とし、この時の引付部23の高さを第3高さH3とする。
上述した実施形態では、採取対象のワーク37の所定位置38の位置へ引付部23を移動させる動作(図8(a),図9の時刻t0〜t1)も含めて第1動作として説明したが、この動作は第1動作には含まれなくてもよい。移載制御部31は、第1動作において、採取用載置部63に載置されたワーク37を引き付けてワーク37を採取用載置部63から離れない高さまで上昇させる動作(図9の時刻t1〜t2)を少なくとも採取部22に行わせればよい。
上述した実施形態では、採取部22は軸部材であり引付部23の先端面は円形状の平面としたが、これに限られない。例えば、引付部23の先端面は外縁から中央側に向かって傾斜して凹んでいる形状であってもよい。図10は、この場合の変形例の引付部23の断面図である。図10の引付部23では、引付部23の軸部材の先端面(下端面)23aは、外縁から中央側に向かって傾斜して凹んでいる。先端面23aは円錐面(円錐の側面)の形状をしており、先端面23aの凹みによって形成される引付部23の軸部材の下端の空間は円錐形状をしている。円錐の頂点である先端面23aの凹みの中心23bは、引付部23の中心軸上に位置している。先端面23aは、中心23bを通り且つ引付部23の軸方向(上下方向)に沿った断面視で、引付部23の外縁と中心23bとを結ぶ2本の直線の形状をしている。この2本の直線のなす角θは、採取する可能性のあるワーク37の種類,形状,及び大きさに応じて適宜定めればよいが、例えば90°〜150°としてもよい。なす角は110°以上としてもよいし、130°以下としてもよいし、120°としてもよい。なお、図10では先端面23aは円錐面の形状をしているが、他の形状でもよい。例えば先端面23aの傾斜は直線状としたが、曲線状であってもよい。あるいは、先端面23aが円錐台の表面(側面及び上面)の形状をしていてもよい。
上述した実施形態では、引付部23とワーク37(ボルト)との大小関係について特に言及しなかったが、引付部23によりワーク37を採取できればよく、例えば引付部23の先端面の直径よりもボルトのネジ軸の直径が大きくてもよいし、小さくてもよい。また、ワーク37はボルトに限られない。また、引付部23に採取されるワーク37は、長さが引付部23の先端面の直径の50%超過としてもよい。
上述した実施形態では、所定位置38はボルトのネジ軸の先端部としたが、所定位置38はワーク37の長手方向の端部であればよく、例えばボルトの頭部の先端部を所定位置38としてもよい。また、所定位置38はワーク37の長手方向の端部でなくてもよい。
上述した実施形態では、第1動作では、移載制御部31は1つのワーク37を引き付ける引付力でワーク37を引き付けるよう採取部22を制御したが、特にこれに限定されない。例えば、採取用載置部63上に単独で載置されているワーク37を採取可能なワーク37と識別するものとすれば、2以上のワーク37を引き付ける引付力であっても、1つのワーク37のみを採取することができる。
上述した実施形態では、ワーク37が磁性体で形成されており、採取部22,42が磁力により引き付けてワーク37を採取するものとして説明したが、採取部22,42がワークを引き付けて採取するものであれば、特にこれに限定されない。例えば、採取部は、電気により粘着性を制御することができるER(Electro−rheological)ゲルを用いてワーク37を引き付けるものとしてもよい。ERゲルは、例えば、ER粒子を含むシリコーンゲルとしてもよい。この装置においても、採取部に採取されたワーク37の位置のばらつきを低減することができる。なお、作業用載置部36もERゲルを用いてワーク37を固定するものとしてもよい。
上述した実施形態では、ワーク移載装置20の移動機構21は複数のアーム28を備えた多軸アームロボット装置として説明したが、特にこれに限定されない。例えば、移動機構は、採取部22が配設された採取ヘッドを前後左右方向に移動させるXYロボットであってもよい。
上述した実施形態では、採取部22は、引付部23と挟持部24とを備えたものとしたが、引き付けてワーク37を採取するものとすれば、特にこれに限定されず、挟持部24を省略してもよい。
上述した実施形態では、ワーク37は、ワーク収容部材60に配設された採取用載置部63に載置されるものとしたが、採取用載置部に載置されればよく、ワーク収容部材60ではないものに載置されてもよい。
上述した実施形態では、システム制御部12,移載制御部31及び供給制御部51が協働してワーク処理ルーチンを実行するものとしたが、特にこれに限定されない。例えば、ワーク処理ルーチンの全てをシステム制御部12が実行してもよいし、移載制御部31と供給制御部51とが分担してワーク処理ルーチンを実行してもよい。
上述した実施形態では、ワーク移載システム10は、ワーク移載装置20とワーク供給装置40とを1つずつ備えたものとしたが、特にこれに限定されず、それぞれの装置を1以上備えるものとしてもよい。
上述した実施形態では、ワーク移載装置20とワーク供給装置40とを備えたワーク移載システム10として説明したが、ワーク移載装置20のみとしてもよい。