以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。ここでは、まず、本発明の各実施形態において利用される斜面崩壊予兆検知の原理について説明し、その後、実施の形態について説明する。
<<斜面崩壊予兆検知の原理>>
斜面の安定は、斜面方向に働くせん断応力と、そのせん断応力による滑落を阻止するせん断強さとの関係によって評価することができる。このせん断応力は、土砂に加わる重力と斜面勾配角度とによって表現することができる。せん断強さは、土壌がもつ粘着力と、垂直応力に基づく抵抗力とに分類できる。以下では、土壌は、単に「土」とも表記される。土のかたまりは、「土塊」と表記される。上述の垂直応力は、土塊に作用する重力と斜面勾配角度とによって決まる。抵抗力は、垂直応力と有効摩擦係数とによって決まる。土塊は、土の粒子(以下、「土粒子」とも表記される)と、粒子間の隙間に介在する間隙空気及び間隙水とを含む。土塊の重量を支える抗力として、土粒子による垂直抗力、間隙空気圧、及び、間隙水圧が作用する。ただし、これらの力のうち、せん断強さに寄与するのは土粒子による垂直抗力のみである。そのため、せん断強さを算出する際、間隙水圧と間隙空気圧とを重力から差し引くことによって得られる、見かけの垂直応力を用いなければならない。含水比が大きくなると、この見かけの垂直応力は小さくなる。さらに、有効摩擦係数及び粘着力の値も、土壌の含水比の上昇とともに減少することがわかっている。この垂直応力に乗じて評価される有効摩擦係数及び粘着力は、斜面が滑落するときにせん断応力とせん断強さが釣り合うように設定される係数である。上述の抵抗力は、有効摩擦係数と上述の見かけの垂直応力との積に応じて定まる。このため、土壌の含水比が増加すると、せん断応力が大きくなり、せん断強さが小さくなるため、斜面崩壊が起こる。
以上から、含水比の増加に基づいて、斜面崩壊を予知できることがわかる。以下で説明する本発明の実施形態において採用される方法では、含水比の代わりに、振動の減衰率または土中水分量が検知される。また、事前に、異なる複数の土質の土壌に対し、含水比に応じて変化する、せん断強さ及びせん断応力に影響するパラメータが計測される。事前に行われた計測の結果は、土壌のモデルの、振動の減衰率または土中水分量に関する分布として、データベースに保存される。そして、本発明の実施形態に係る土質判定システムは、事前に行われた計測の結果と、測定対象の計測の結果とに基づいて、計測対象の斜面の土の土質を推定し、安全監視に用いるモデルを選定する。
[第1の実施形態]
[第1の実施形態の構成]
次に、本発明の第1の実施形態の土質判定システム100について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の土質判定システム100の構成を表すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る土質判定システム100は、振動計測部101と、水分量計測部102と、振動特徴量算出部103と、モデル記憶部104と、土質判定部105と、振動データ受信部106と、水分量受信部107と、出力部108とを含む。図1に示す例では、土質判定システム100は、土質判定装置110を含む。そして、土質判定装置110が、振動特徴量算出部103と、モデル記憶部104と、土質判定部105と、振動データ受信部106と、水分量受信部107と、出力部108とを含む。そして、土質判定装置110は、振動計測部101と、水分量計測部102と接続されている。
土質判定システム100は、さらに、加振部111と、加水部112とを含んでいてもよい。その場合、土質判定装置110は、さらに、測定制御部109を含んでいてもよい。そして、土質判定装置110は、さらに、加振部111と、加水部112と接続されていてもよい。
振動計測部101は、測定対象である土の振動を検知(すなわちセンシング)する。振動計測部101は、検知した振動を表す振動データを、例えば信号として振動データ受信部106に出力する。振動データは、例えば、振動を表す時系列データである。言い換えると、振動データは、測定対象である土の、あらかじめ定められた時間毎に計測された、位置、速度、加速度、又は、圧力等のデータである。振動データは、他の時系列データであってもよい。振動計測部101は、例えば、測定対象である土の振動を検知(すなわちセンシング)し、検知した振動を表す振動データを信号として出力する振動センサである。振動センサとして、振動を検出する、既存のさまざまなセンサが適用可能である。本発明の各実施形態では、土の種類を「土種」と表記する。測定対象である土を、「対象土」又は「推定対象土」と表記する。また、対象土の種類を、「対象土種」又は「推定対象土種」と表記する。
振動データ受信部106は、振動を表す振動データを振動計測部101から受信する。振動データ受信部106は、受信した振動データを、振動特徴量算出部103に送信する。振動データ受信部106は、振動計測部101が出力した、振動データを表す信号を、振動特徴量算出部103が認識できる振動データに変換すればよい。そして、振動データ受信部106は、変換することによって得られる振動データを、振動特徴量算出部103に送信すればよい。
水分量計測部102は、対象土の水分量を計測する。水分量計測部102は、計測した水分量を表すデータを、信号として、例えば水分量受信部107に出力する。水分量は、例えば、土に含まれる水分の重量の割合などである。水分量は、他の値であってもよい。水分量計測部102は、例えば、対象土の水分量を計測し、計測した水分量を表すデータを信号として出力するセンサである。そのようなセンサは、水分計とも表記される。水分量計測部102として、土の中の水分量を計測する、既存のさまざまなセンサが適用可能である。
水分量受信部107は、水分量を水分量計測部102から受信する。水分量受信部107は、受信した水分量を、土質判定部105に送信する。水分量受信部107は、水分量計測部102が出力した、水分量を表す信号を、土質判定部105が認識できる形式の、水分量を表すデータに変換すればよい。そして、水分量受信部107は、変換することによって得られる水分量のデータを、土質判定部105に送信すればよい。
振動特徴量算出部103は、振動計測部101が検知した振動の時系列データを、例えば振動データ受信部106を介して受信する。振動特徴量算出部103は、受信した振動の時系列データをもとに、対象土の振動の特徴を表す特徴量を算出する。
振動特徴量は、例えば、減衰率である。振動特徴量算出部103が振動の時系列データから減衰率を算出する方法として、既存の様々な方法を適用することができる。振動特徴量算出部103は、例えば、振動の時系列データのピークとピークとの差をもとに減衰率を算出してもよい。また、振動特徴量算出部103は、振動の時系列データを周波数領域に変換してもよい。そして、振動特徴量算出部103は、ピークの周波数と、パワーと、ピークのパワーに対する半値幅とを算出し、算出されたこれらの値をもとに減衰率を算出してもよい。
加振部111は、例えば作業者の操作によって、対象土に振動を加えることができる装置である。
加水部112は、例えば作業者の操作によって、対象土にあらかじめ定められている量の水分を加えることができる装置である。
作業者は、加振部111によって対象土に振動を加えながら、振動計測部101によって対象土の振動を測定する振動計測を行う。さらに、作業者は、水分量計測部102によって対象土の水分量を測定する水分計測を行う。次に、作業者は、加水部112を使用して、対象土に、例えばあらかじめ定められている量の、水分を加える加水を行うことによって、対象土が含む水分を増加させる。作業者は、含まれている水分が増加した対象土について、振動計測と水分計測とを行う。作業者は、対象土に含まれている水分量が閾値を越えるまで、加水と、振動計測及び水分計測とを繰り返す。
上述のように、土質判定装置110は、測定制御部109を含んでいてもよい。その場合、測定制御部109は、加振部111に、対象土に振動を加える指示と、振動を加えるのを停止する指示とを行ってもよい。その場合、加振部111は、測定制御部109からの指示に従って、対象土に振動を加えるように実装されていてもよい。加振部111は、あらかじめ定められている振動パターンの振動を、一定時間与えるように実装されていてもよい。加振部111は、測定制御部109からの指示に従って、振動を加えるのを停止するように実装されていてもよい。測定制御部109は、対象土に振動を加える指示の送信の通知を、振動データ受信部106又は振動特徴量算出部103に行ってもよい。測定制御部109は、対象土に振動を加えるのを停止する指示の送信の通知を、振動データ受信部106又は振動特徴量算出部103に行ってもよい。振動データ受信部106は、測定制御部109による指示に従って振動が加えられている間に、振動データを受信してもよい。振動データ受信部106は、測定制御部109による指示に従って振動が加えられている間に受信した振動データをもとに、振動特徴量を算出してもよい。
測定制御部109は、加水部112に、対象土に加水を行う指示を行ってもよい。その場合、加水部112は、測定制御部109からの指示に従って、例えば一定量の水分を対象土に加えるように実装されていてもよい。測定制御部109は、対象土への加水の指示を送信したことを、水分量受信部107に通知してもよい。水分量受信部107は、対象土への加水の指示が行われた後、例えば所定時間が経過してから、水分量計測部102から水分量を受信してもよい。
振動計測部101は、土塊に含まれる水分量が同じ状態で、土塊の振動を複数回測定してもよい。振動データ受信部106は、水分量が同じ状態で、複数セットの振動データを受信してもよい。振動特徴量算出部103は、水分量が同じ状態で計測された、複数セットの振動データのそれぞれから、振動特徴量を算出してもよい。振動特徴量算出部103は、算出した振動特徴量に対して、平均値の算出、中央値の算出、又は、その他の統計値の算出などの、代表値を算出する統計処理を行ってもよい。
水分量計測部102は、土塊に含まれる水分量が同じ状態で、水分量を複数回測定してもよい。水分量受信部107は、土塊に含まれる水分量が同じである状態で測定された複数の水分量を受信してもよい。土質判定部105は、土塊に含まれる水分量が同じである状態で測定された複数の水分量に、例えば上述の統計処理を行ってもよい。
以下の説明では、例えば、土の種類(すなわち土種)と、計測時の条件との組み合わせを、「モデル」又は「モデル土種」と表記する。計測時の条件は、例えば、土の密度であってもよい。モデル土種の特徴を表すデータを、「モデルデータ」と表記する。土の性質を「土質」と表記する。「土質モデル」は、土質を特定するデータを表す。土質モデルは、斜面安定解析式に必要なパラメータ(例えば、粘着力、内部摩擦角、土塊重量、および、間隙水圧など)を例えば振動特徴量等に基づきモデル化した関数式又はその関数式を特定する、例えば係数等のパラメータによって表される。振動特徴量等に基づくモデル化は、例えば、パラメータをその振動特徴量等を変数とする関係式として表した場合の、その関係式を特定することを指す。モデルデータは、土質モデルと、水分量と振動特徴量との組み合わせの分布とを含む。水分量と振動特徴量との組み合わせの分布は、土の振動の計測結果に基づいて計算された振動特徴量と、その振動が計測された土の水分量の計測結果との組み合わせの分布である。
本発明の各実施形態の説明では、モデルは、土の種類と土の密度との組み合わせである。振動特徴量は、減衰率である。水分量と振動特徴量との組み合わせの分布は、減衰率−水分量分布である。
モデル記憶部104は、土種と密度との組み合わせ毎の(すなわちモデル毎の)、その密度におけるその土種の土の特徴を表すデータ(すなわちモデルデータ)を、例えばデータベースの形で記憶する。モデル記憶部104は、モデルデータとして、例えば、斜面安定解析式に必要なパラメータを振動特徴量に基づきモデル化した関数式と、土中水分に対する振動特徴量の分布とを記憶する。上述の関数式の形は、あらかじめ定められていてもよい。そして、モデル記憶部104は、土質モデルとして、関数式そのものではなく、関数式を特定する、係数などのパラメータを記憶していてもよい。本実施形態では、振動特徴量は、上述のように、例えば減衰率である。振動特徴量が減衰率である場合、土中水分に対する振動特徴量の分布は、「減衰率−水分量分布」とも表記される。
土質判定部105は、対象土に加えられた水分量が異なる複数の状態で測定された振動データを使用して計算された減衰率と測定された対象土の水分量とをもとに、対象土の減衰率と水分量との関係(減衰率−水分量分布)を導出する。土質判定部105は、対象土の減衰率−水分量分布と、モデル記憶部104が記憶する、モデルの減衰率−水分量分布との類似性に基づいて、少なくとも1つのモデルを選択する。
具体的には、土質判定部105は、例えば、対象土の減衰率−水分量分布と、モデル記憶部104が記憶する、それぞれのモデルの減衰率−水分量分布との類似の程度を表す類似度(以下、類似度を「スコア」とも表記することもある)を計算する。土質判定部105は、モデルの減衰率−水分量分布の、対象土の減衰率−水分量分布に対する距離を、そのモデルの減衰率−水分量分布の類似度として算出してもよい。その距離は、例えば、同じ水分量における減衰率の差の2乗の和の平方根であってもよい。距離は、他の定義に基づく距離であってもよい。類似度は、対象土とモデルとの類似度の値が大きいほど、対象土とモデルとの類似性が高い、すなわち、対象土とモデルとが、よりよく類似することを表す、例えば距離の逆数などの値であってもよい。その場合、距離がゼロである場合の類似度として、十分大きい値が定義されていてもよい。土質判定部105は、減衰率−水分量分布に基づき、減衰率−水分量分布を表す回帰式を計算してもよい。土質判定部105は、対象土の回帰式のパラメータと、モデル土種の土質モデルの関数式のパラメータとに基づいて、類似度を算出してもよい。土質判定部105は、分布間の類似の程度を算出する他の方法によって、類似度を算出してもよい。
そして、土質判定部105は、計算した類似度をもとに、対象土の減衰率−水分量分布に最も近い減衰率−水分量分布を持つモデル土種を選択してもよい。
土質判定部105は、選択したモデル土種の土質モデルのパラメータに基づいて、対象土の監視用モデルのパラメータを決定する。例えば、1つの土種を選択した場合、土質判定部105は、選択したモデル土種の土質モデルのパラメータを、対象土の監視用モデルのパラメータに決定する。土質モデルのパラメータは、前述の関数式のパラメータである。
土質判定部105は、計算した類似度をもとに、対象土の減衰率−水分量分布に近い方から1つ以上の減衰率−水分量分布を選択し、選択された減衰率−水分量分布を持つ、1つ以上のモデルを選択してもよい。1つ以上のモデルを選択する方法は、例えば以下の通りである。以下の説明では、対象土とモデルとの類似度の値が大きいほど、対象土とモデルとの類似性が高い、すなわち、対象土とモデルとが、よりよく類似することを表す。土質判定部105は、例えば、計算した類似度が大きい方から所定数の減衰率−水分量分布を持つモデルを選択してもよい。土質判定部105は、例えば、計算した類似度が所定値以上である減衰率−水分量分布を持つモデルを選択してもよい。土質判定部105は、例えば、計算した類似度が大きい方から所定数の減衰率−水分量分布を持つモデルの中で、計算した類似度が所定値以上である減衰率−水分量分布を持つモデルを選択してもよい。土質判定部105は、以上の方法以外の方法によって、1つ以上のモデルを選択してもよい。
複数のモデルを選択した場合、土質判定部105は、モデル毎のスコアに基づく重みを決めればよい。土質判定部105は、モデルのスコアが大きいほど(すなわち、モデルの減衰率−水分量分布が対象土の減衰率−水分量分布に近いほど)、重みが大きくなるように決定すればよい。土質判定部105は、選択されたモデルの、決定された重みが掛けられたパラメータの和を、対象土の監視用モデルのパラメータに決定してもよい。土質判定部105は、前述の監視用モデルのパラメータに加えて、対象土の密度を決定してもよい。土質判定部105は、例えば、選択されたモデルの密度に、そのモデルについて決定された重みを掛け、重みが掛けられた密度を足すことによって、対象土の密度を決定してもよい。
出力部108は、土質判定部105によって決定された、対象土の監視用パラメータを、例えば、表示装置(図示されない)又は監視装置(図示されない)等に出力する。
[第1の実施形態の動作]
次に、本実施形態の土質判定システム100の動作について、図面を参照して詳細に説明する。
図2は、本実施形態の土質判定システム100の動作の例を表すフローチャートである。
図2に示す動作が開始されると、加振部111は対象土に振動を加える。加振部111は、さまざまな周波数の振動を含むようあらかじめ定められた振動パターンに従った振動を、対象土に加えればよい。そして、振動計測部101が、振動が加えられている対象土の振動を検知(すなわちセンシング)する。振動データ受信部106は、振動計測部101によって検知された振動を表す時系列データを、振動計測部101から取得する(ステップS101)。
次に、振動特徴量算出部103は、振動計測部101から受信した、対象土の振動を表す時系列データ(すなわち振動データ)から、振動特徴量を算出する(ステップS102)。ステップS101において、振動計測部101は、含まれている水分量が同じである対象土の振動の測定を、複数回実施してもよい。振動データ受信部106は、測定によって得られた振動データを、測定毎に別の振動データとして、取得してもよい。振動特徴量算出部103は、測定毎の振動データから、測定毎の振動特徴量を算出してもよい。含まれている水分量が同じである対象土を測定した結果に基づいて複数の振動特徴量を算出した場合、上述のように、振動特徴量算出部103は、複数の振動特徴量から導出された統計値を、その水分量における対象土の振動特徴量として算出してもよい。上述のように、統計値は、例えば、平均値、中央値、又は、中間値などである。
また、水分量計測部102が、対象土が含む水分量を計測する。そして、水分量受信部107が、計測された水分量(すなわち、水分量の計測結果)を、水分量計測部102から取得する(ステップS103)。水分量受信部107は、受信した水分量の計測結果を、土質判定部105に送信する。ステップS103において、水分量計測部102は、含まれている水分量が同じ状態における対象土の水分量の計測を、2回以上実施してもよい。水分量受信部107は、2回以上の計測によって得られる水分量の複数の計測結果を取得してもよい。その場合、水分量受信部107は、取得した水分量の複数の計測結果を、土質判定部105に送信する。そして、土質判定部105は、受信した水分量の複数の計測結果の統計値(例えば、平均、中間値、又は、中央値など)を、水分量の測定値の代表値として算出してもよい。
そして、例えば加水部112が一定量の水を対象土に加えることによって、対象土に含まれる水分の水分量を増量する(S104)。対象土が含む水分量が規定水分量以下である場合(ステップS105においてNO)、土質判定システム100は、ステップS101からステップS104までの動作を繰り返す。すなわち、再度、振動データ受信部106が振動データを取得(S101)し、振動特徴量算出部103が振動特徴量を算出し(S102)、水分量受信部107が水分量データを取得(S103)する。そして、加水部112が、一定量の水を対象土に加える。土質判定システム100は、このステップS101からステップS104までのサイクルを、水分量が規定量を越えるまで繰り返す。ステップS105における判定に使用される水分量は、ステップS103において取得した、水分量計測部102によって計測された水分量であればよい。土質判定システム100は、ステップS101からステップS105までの動作を繰り返すことによって、対象土の減衰率−水分量分布を生成する。
水分量が規定水分量を超えた場合(ステップS105においてYES)、土質判定部105は、比較対象モデルを、モデル記憶部104に減衰率−水分量分布が格納されている、比較対象モデルとして選択されていないモデルから選択する(ステップS106)。比較対象モデルは、比較対象となるモデル、すなわち、対象土と比較されるモデルである。そして、土質判定部105は、対象土と比較対象モデルとの、水分量に対する減衰率の分布(すなわち減衰率−水分量分布)を比較する(ステップS107)。ステップS107において、土質判定部105は、比較対象モデルと対象土との、減衰率−水分量分布の類似度を算出する。モデル記憶部104に減衰率−水分量分布が格納されている全てのモデルについて、ステップS107における減衰率−水分量分布の比較が完了していない場合(ステップS108においてNO)、土質判定部105は、ステップS106及びステップS107の動作を繰り返す。このように、土質判定部105は、比較対象モデルの選択(ステップS106)と、減衰率−水分量分布の比較(ステップS107)とを、モデル記憶部104に格納されているモデル全てに対して実施する。モデル記憶部104に格納されている全てのモデルについて、ステップS107における比較が完了した場合(ステップS108においてYES)、土質判定部105は、対象土の土質を判定する(ステップS109)。ステップS109において、土質判定部105は、例えば、ステップS107において算出した類似度が上位になったモデルの土質モデルを監視用モデルとして判定する。具体的には、土質判定部105は、例えば、類似度に基づく類似性が最も高いモデルを、対象土を表すモデルとして判定してもよい。土質判定部105は、類似度に基づく類似性が最も高いモデルの密度を、対象土の密度として判定してもよい。
土質判定部105は、上述のように、類似度が上位である複数のモデルのスコアに基づいて、対象土を表すモデルを生成してもよい。その場合、上述のように、土質判定部105は、類似度の高さに基づいて、複数のモデルを選択する。土質判定部105は、類似度が高い方から所定個数のモデルを選択してもよい。土質判定部105は、類似度が所定の基準より高いモデルを選択してもよい。土質判定部105は、類似度が高い方から所定個数のモデルのうち、類似度が所定の基準より高いモデルを選択してもよい。土質判定部105は、それらの複数のモデルのスコア(すなわち類似度)に従って比率(すなわち重み)を決め、モデルを表すパラメータにそのモデルの比率を掛ける。複数のモデルを選択することは、対象土に混合されている土の土種を推定することに相当する。比率(すなわち重み)を決定することは、選択されたモデルの土の混合比を決定することに相当する。土質判定部105は、それらの複数のモデルの、比率が掛けられたパラメータを、パラメータの種類毎に足し合わせることによって、対象土を表す土質モデルを生成する。この場合、土質判定部105は、さらに、決められた比率に比例する体積の、それらの複数のモデルが混合された土の密度を、対象土の密度として算出してもよい。
出力部108は、例えば、決定された土質モデル(例えば土質モデルを表す関数式またはその関数式のパラメータ)と、密度とを、ディスプレイなどの出力装置(図示されない)に出力してもよい。
以上で説明した本実施形態には、あらかじめ測定対象の土の性質を求めておくことなく、斜面の安全率の算出を行うことができる。その理由は、土質判定部105が、測定対象の土の振動特徴量−密度分布に基づいて、振動特徴量−密度分布と性質が既知であるモデル土種とを比較し、その結果に基づいて、測定対象の土の性質を判定するからである。斜面の安全率を算出するのに使用する性質を判定することにより、測定対象の土による斜面の安全率の算出が可能である。
[第2の実施形態]
[第2の実施形態の構成]
図3は、本実施形態の土質判定システム100Aの構成を表す図である。本実施形態の土質判定システム100Aは、以下で説明する相違を除き、第1の実施形態の土質判定システム100と同じである。以下では、第1の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
本実施形態の土質判定システム100Aは、土質判定装置110の代わりに土質判定装置110Aを含む。本実施形態では、振動特徴量算出部103は、モデル記憶部104に接続され、モデル記憶部104に格納されているモデルデータ等を読み出すことができてもよい。
本実施形態のモデル記憶部104は、土種、密度、及び、周波数フィルタ(例えばバンドパスフィルタ)の通過周波数帯の組み合わせ毎にモデルデータを記憶する。モデルデータは、斜面安定解析式に必要なパラメータを振動特徴量でモデル化した関数式と、土中水分に対する振動特徴量の分布(すなわち振動特徴量−水分量分布)に加え、共振周波数の情報も含む。モデルデータは、関数式そのものではなく、関数式を特定する、係数などのパラメータを含んでいてもよい。
本実施形態では、モデルは、土の種類と土の密度との組み合わせである。本実施形態のモデルデータは、土質モデルと、異なる複数の通過周波数帯についての、水分量と振動特徴量との組み合わせの分布とを含む。振動特徴量は、減衰率である。水分量と振動特徴量との組み合わせの分布は、減衰率−水分量分布である。複数の通過周波数帯の組み合わせは、異なる複数の土質モデルについて同じであってもよい。複数の通過周波数帯の組み合わせは、複数の土種モデルについて必ずしも同一でなくてもよい。異なる複数の通過周波数帯は、あらかじめ決められていればよい。
通過周波数帯は、後述する、例えばバンドパスフィルタなどによる周波数フィルタリングにおいて、信号の減衰が小さい周波数の範囲を表す。通過周波数帯は、下限周波数及び上限周波数の少なくとも一方によって表されていてもよい。下限周波数は、例えば、信号の減衰が小さい周波数の範囲の下限値を示す周波数である。上限周波数は、例えば、信号の減衰が小さい周波数の範囲の上限値を示す周波数である。下限周波数及び上限周波数は、例えば、周波数フィルタリングの特性(周波数と通過率との関係を表す曲線)における、変曲点の周波数であってもよい。下限周波数及び上限周波数は、それぞれ、他の定義に基づく、信号の減衰が小さい周波数の範囲の下限値及び上限値であってもよい。通過周波数帯は、下限周波数及び周波数幅によって表されていてもよい。周波数幅は、上限周波数と下限周波数との差を表す。通過周波数帯は、上限周波数と周波数幅によって表されていてもよい。通過周波数帯は、中心周波数と周波数幅によって表されていてもよい。通過周波数帯は、他の通過周波数帯との重なりを含んでいてもよい。
振動特徴量算出部103は、振動データ受信部106が振動計測部101から取得した、計測された振動データに対して、特定の周波数帯(上述の通過周波数帯)の振動を通過させ、その周波数帯以外の周波数の振動を減衰させる周波数フィルタリングを行う。具体的には、振動特徴量算出部103は、計測された振動データに対して、モデルと通過周波数帯との組み合わせ毎に、その通過周波数帯の振動を通過させ、その通過周波数帯以外の周波数の振動を減衰させる周波数フィルタリングを行えばよい。さらに具体的には、振動特徴量算出部103は、1つのモデルを選択し、選択したモデルの通過周波数帯を表すデータをモデル記憶部104から読み出せばよい。そして、振動特徴量算出部103は、その通過周波数帯の振動を通過させ、その通過周波数帯以外の周波数の振動を減衰させる周波数フィルタリングの処理を、計測された振動データに実施すればよい。振動特徴量算出部103は、モデル記憶部104がモデルデータを記憶するモデルの各々について、モデルと通過周波数帯との組み合わせの全てが選択されるまで、周波数フィルタリングの処理を繰り返せばよい。振動特徴量算出部103は、さらに、計測された振動データによって周波数フィルタリングを行うことによって生成された振動データを使用して、振動特徴量を算出する。
土質判定部105は、通過周波数帯毎に、対象土の水分量−振動特徴量分布を生成する。そして、土質判定部105は、通過周波数帯毎に、対象土の水分量−振動特徴量分布と、モデルの水分量−振動特徴量分布とを比較する。具体的には、土質判定部105は、対象土の水分量−振動特徴量分布が導出された振動データと、周波数フィルタリングの通過周波数帯が同じである、モデル記憶部104に格納されているモデルの水分量−振動特徴量分布の選択を行う。土質判定部105は、対象土の水分量−振動特徴量分布と、選択した水分量−振動特徴量分布との類似度の計算を行う。土質判定部105は、対象土の水分量−振動特徴量分布が導出された振動データに対して行われた周波数フィルタリングの通過周波数帯の各々について、上述の選択と類似度の計算とを繰り返す。
土質判定部105は、複数の通過周波数帯の各々について算出された類似度の和を、対象土とモデル土種との類似度として算出してもよい。類似度の和は、重み付きの和であってもよい。具体的には、その場合の類似度の和は、通過周波数帯における類似度と、その通過周波数帯の幅に応じた重みとの積を、複数の通過周波数帯の全てについて足すことによって得られる値であってもよい。類似度の和の算出方法は以上に限られない。
土質判定部105は、モデル土種と通過周波数帯との組み合わせについての類似度の、最小値、最大値、中間値、中央値、又は、平均値等の統計値を、そのモデル土種の類似度としてもよい。
[第2の実施形態の動作]
次に、本発明の第2の実施形態の土質判定システム100Aの動作について、図面を参照して詳細に説明する。以下では、第1の実施形態の土質判定システム100と同じ動作の詳細な説明は適宜省略する。
図4は、本実施形態の土質判定システム100Aの動作の例を表すフローチャートである。まず、振動計測部101から、対象土の振動を計測する。そして、振動データ受信部106が、振動計測部101から、対象土の振動を計測した結果を表す信号を受信する。振動データ受信部106は、受信した、振動の計測の結果を表す信号を、振動特徴量算出部103が扱える形式の振動データ(すなわち計測された振動を表す時系列データ)に変換する。振動データ受信部106は、その振動データを、振動特徴量算出部103に送信する。振動特徴量算出部103は、振動データ受信部106から、振動の測定結果を表す時系列データである振動データを取得する(ステップS101)。
次に、振動特徴量算出部103は、上述の複数の通過周波数帯のうち、選択されていない通過周波数帯を選択する(ステップS201)。振動特徴量算出部103は、振動計測部101により検知(センシング)され、ステップS101において取得した振動データに、選択した通過周波数帯による周波数フィルタリングを実施する(ステップS202)。周波数でフィルタリングされたデータに対し振動特徴量算出部103は、周波数フィルタリングの結果の振動データ(すなわち、周波数フィルタリングにより通過周波数帯以外の周波数の信号が減衰した振動データ)に基づいて、振動特徴量を算出する(ステップS102)。上述の複数の通過周波数帯に選択されていない通過周波数帯が存在する場合(ステップS203においてNO)、土質判定システム100Aは、ステップS201以降の動作を繰り返す。なお、モデル土種毎に通過周波数帯の組み合わせが異なる場合、振動特徴量算出部103は、全てのモデル土種についての異なる通過周波数帯全てについて、ステップS201、ステップS202、及び、ステップS102の動作を繰り返せばよい。以下の説明において、全てのモデル土種についての異なる通過周波数帯の数は、フィルタパターン数とも表記される。
全ての通過周波数帯が選択された場合(ステップS203においてYES)、水分量受信部107は水分量データを取得する(ステップS103)。そして、例えば測定制御部109の制御によって、加水部112が対象土の水分量を増量する(ステップS104)。ステップS103及びステップS104の動作は、それぞれ、第1の実施形態におけるステップS103及びステップS104の動作と同じである。水分量が規定水分量以下である場合(ステップS105においてNO)、土質判定システム100Aは、ステップS101からステップS105間での動作を繰り返す。土質判定システム100Aは、水分量が規定の水分量に到達するまで、同様の操作を繰り返す。以上により、選択された通過周波数帯の各々における、対象土の水分量−振動特徴量分布が得られる。
水分量が規定水分量を超えた場合(ステップS105においてYES)、モデル記憶部104にモデルデータが格納されている、まだ選択されていないモデル土種から、対象土と比較されるモデル土種を選択する(ステップS106)。土質判定部105は、対象土とモデル土種の水分量に対する減衰率の分布を比較する(ステップS107)。土質判定部105は、ステップS107において、選択された通過周波数帯の各々について、対象土の水分量−振動特徴量分布と、選択された比較対象モデルの水分量−振動特徴量分布とを比較すればよい。
モデルデータがモデル記憶部104に格納されている土質モデルに、水分量−振動特徴量分布の比較が完了していない土質モデルが存在する場合(ステップS108においてNO)、土質判定システム100Aの土質判定部105は、ステップS106及びステップS107の動作を繰り返す。土質判定部105は、ステップS106及びステップS107の動作を、モデルデータがモデル記憶部104に格納されている全ての土質モデルが選択されるまで繰り返せばよい。
モデルデータがモデル記憶部104に格納されている全ての土質モデルについての、水分量−振動特徴量分布の比較が完了した場合(ステップS108においてYES)、土質判定部105は、土質を判定する(ステップS109)。すなわち、土質判定部105は、ステップS107における比較において類似度が上位になった土質モデルを監視用モデルとして判定する。第1の実施形態と同様に、土質判定部105は、類似度が最上位の土質モデルを監視用モデルとして採用してもよい。土質判定部105は、類似度が高い方から所定数の土質モデルを選択してもよい。土質判定部105は、選択した複数の土質モデルのスコア(類似度)に従って土質モデルの比率(すなわち重み)を決めてもよい。土質判定部105は、選択したモデルの土質に重みを掛け、重みが掛けられた土質モデルを足すことによって生成された土質モデルを、監視用モデルとして用いてもよい。具体的には、土質判定部105は、モデル土種の土質モデルを表す関数式のパラメータに、モデル土種毎に定められた重みをかけ、重みがかけられたパラメータを足すことによって、監視用モデルのパラメータを算出してもよい。
本実施形態には、第1の実施形態と同じ効果がある。その理由は、第1の実施形態の効果が生じる理由と同じである。
本実施形態には、さらに、土質の判定の制度を向上させることができるという効果がある。その理由は、振動特徴量算出部103が、異なる複数の通過周波数帯によって周波数フィルタリング処理を行うからである。そして、土質判定部105は、通過周波数帯ごとに生成された、水分量−振動特徴量分布を比較することによって、対象土の土質モデルを判定するからである。
[第3の実施形態]
[第3の実施形態の構成]
次に、本発明の第3の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図5は本実施形態の土壌崩壊危険度変化検知システム300の構成の例を表すブロック図である。土壌崩壊危険度変化検知システム300は、第1及び第2のいずれかの実施形態に係る土質判定システムの機能を含む。上述のいずれかの実施形態に係る土質判定システムは、例えば、後述される、データベース311、土質判定モジュール314及び実斜面計測装置320に相当する。言い換えると、データベース311、土質判定モジュール314及び実斜面計測装置320が、第1又は第2の実施形態に係る土質判定システムとして動作する。以下の説明において、土壌崩壊危険度変化検知システム300を、「検知システム300」と略記する。
図5を参照すると、検知システム300は、三軸圧縮試験装置317と、プランター318と、検知装置319と、ディスプレイ316と、実斜面計測装置320とを含む。検知装置319は、三軸圧縮試験装置317、プランター318、ディスプレイ316、及び、実斜面計測装置320と、通信可能に接続されている。検知装置319は、さらに、第1の試験条件及び第2の試験条件を検知装置319に入力する、例えば端末装置(図示されない)と、通信可能に接続されている。
三軸圧縮試験装置317は、応力センサ301と、応力センサ302とを含む。
プランター318は、水分計303と、振動センサ304と、間隙水圧計305とを含む。
検知装置319は、粘着力−内部摩擦角算出モジュール306と、粘着力−内部摩擦角モデル化モジュール307と、含水比対応化モジュール308とを含む。検知装置319は、さらに、振動特徴量算出モジュール309と、重量−間隙水圧モデル化モジュール310とを含む。検知装置319は、さらに、データベース311と、土質判定モジュール314と、斜面安全率算出判定モジュール315とを含む。検知装置319は、1つの装置によって実現されていてもよい。検知装置319は、検知装置319が含むモジュール及びデータベース311の少なくともいずれかを含む、複数の装置によって実現されていてもよい。
実斜面計測装置320は、振動センサ312と、水分計313とを含む。振動センサ312及び水分計313は、ともに、斜面の一地点において、例えば深さ10cm(centimeters)の位置に埋設される。
検知システム300が含む各装置は、概略、以下のように動作する。
三軸圧縮試験装置317は、粘着力、及び内部摩擦角を算出するための試験を実施する。
プランター318は、土塊重量、及び体積含水率をモデル化するためのデータを取得する。
検知装置319は、三軸圧縮試験装置317及びプランター318を使った試験を通して得られたデータから、修正フェレニウス法による斜面安定解析式に用いられる粘着力、内部摩擦角、土塊重量、及び間隙水圧をモデル化する。検知装置319は、さらに、データベース311に、土種及び密度毎に、モデルデータを格納する。検知装置319は、さらに、実斜面のデータから実斜面の土種及び密度を判定し、判定の結果に基づいて、データベース311から適切なモデルを決定する。検知装置319は、さらに、選択したモデルに基づいて、実斜面データを元に斜面の安全率を算出する。検知装置319は、さらに、算出された安全率に基づいて状態変化を推定し、推定された状態変化に応じて、ディスプレイ316に表示する表示内容を変更する。
ディスプレイ316は、推定された状態変化に応じた表示内容を表示する。
以下では、検知システム300が含む各装置の各要素について、さらに詳しく説明する。
応力センサ301及び応力センサ302は、三軸圧縮試験装置317にセットされ圧縮される土塊の、せん断時の応力を計測する。
水分計303は、プランター318にセットされ、加水及び加振が行われる、土種、密度、及び含水比が設定されている土塊の、水分量を測定する。
振動センサ304は、プランター318にセットされる上述の土塊の、振動を計測する。
間隙水圧計305は、プランター318にセットされる上述の土塊の、間隙水圧を計測する。
プランター318は、さらに、図示されない重量計によって、上述の土塊の重量を測定する。
粘着力−内部摩擦角算出モジュール306は、土種、締固め度、及び含水比の各々をさまざまに変化させるように設定された第1の試験条件に基づいて実施された、三軸圧縮試験によるデータを元に、粘着力及び内部摩擦角を算出する。
振動特徴量算出モジュール309は、同様に土種、締固め度、及び含水比をさまざまに変化させるように設定された第2の試験条件に基づいてプランター318を使って実施された、加水加振試験によるデータを元に、振動特徴量を算出する。
含水比対応化モジュール308は、含水比、水分量、及び振動特徴量を、関連付ける。
粘着力−内部摩擦角モデル化モジュール307は、含水比をキーとして使用して、水分量及び振動特徴量によって、粘着力及び内部摩擦角をモデル化する。粘着力−内部摩擦角モデル化モジュール307は、例えば、粘着力及び内部摩擦角のそれぞれと、水分量及び振動特徴量との関係を表す関係式を特定する。
重量−間隙水圧モデル化モジュール310は、減衰率によって、重量及び間隙水圧をモデル化する。重量−間隙水圧モデル化モジュール310は、例えば、重量及び間隙水圧のそれぞれと、減衰率との関係を表す関係式を特定する。
データベース311には、粘着力、内部摩擦角、重量、及び間隙水圧のモデル関数と、含水比に対する振動特徴量の分布データが、土種及び密度毎に格納される。データベース311は、例えば、モデル記憶部104として動作する記憶装置である。データベース311は、モデル関数及び分布データをデータベースの形で記憶し、モデル関数及び分布データの入力及び出力を行う情報処理装置であってもよい。
土質判定モジュール314は、実斜面において計測された振動データ及び水分量に基づいて、実斜面の安全監視に用いるモデルをデータベース311から選択する。
斜面安全率算出判定モジュール315は、判定された土種及び密度に条件が一致するモデルを用いて斜面の安全率を算出し、算出された安全率によって安全度を判定する。
振動センサ312は、斜面の振動を計測する。
水分計313は、斜面の水分量を計測する。
[第3の実施形態の動作]
次に、本実施形態の検知システム300の動作について、図面を参照して詳細に説明する。
図6は、本実施形態の検知システム300の動作の例を表すフローチャートである。図6に示す動作の開始時において、最初にモデル化が実施される土種と密度との組み合わせが選択されていればよい。
検知システム300は、まず試験条件(図5に示す例では第1の試験条件)に基づき、三軸圧縮試験装置317による三軸圧縮試験を実施する(ステップS301)。具体的には、検知システム300は、第1の試験条件として設定されている、土種類及び密度(すなわちモデル土種)を選択する。検知システム300は、そのモデル土種の土によって構成されている土塊を用いて、複数の含水比パターンにおいて、三軸圧縮試験装置317によって三軸圧縮試験を実施する。三軸圧縮試験装置317は、三軸圧縮試験の結果として得られる粘着力及び内部摩擦角等を、検知装置319に送信する。三軸圧縮試験については、後で詳細に説明する。
検知システム300は、さらに、土種及び密度が指定されている試験条件(図5に示す例では第2の試験条件)に従って、プランター318による加水加振試験を実施する(ステップS302)。加水加振試験によって得られる、土塊重量、間隙水圧及び振動データ等を、例えば試験が行われた含水比毎に、検知装置319に送信する。加水加振試験については、後で詳細に説明する。
次に、検知システム300は、三軸圧縮試験及び加水加振試験から得られた粘着力、内部摩擦角、土塊重量、間隙水圧を、減衰率及び水分量でモデル化する。すなわち、検知システム300は、粘着力、内部摩擦角、土塊重量、間隙水圧のそれぞれと、減衰率及び水分量との関係を表す関係式(例えば、所定の形の関係式のパラメータ)を特定する。
具体的には、検知装置319の粘着力−内部摩擦角モデル化モジュール307は、実施された三軸圧縮試験によって得られた粘着力及び内部摩擦角を、含水比の関数としてモデル化する(ステップS303)。後述されるように、粘着力及び内部摩擦角は、三軸圧縮試験において、検知装置319の粘着力−内部摩擦角算出モジュールによって算出される。
検知装置319の重量−間隙水圧モデル化モジュール310は、実施された加水加振試験によって得られた土塊重量及び間隙水圧を、土塊重量及び間隙水圧が得られるのと同時に取得された振動データの振動特徴量によってモデル化する(ステップS304)。重量−間隙水圧モデル化モジュール310は、振動特徴量によってモデル化された土塊重量及び間隙水圧のモデルを、データベース311に格納する。
検知装置319の粘着力−内部摩擦角モデル化モジュール307は、さらに、粘着力及び内部摩擦角モデルを、振動特徴量によるモデルに変換する(ステップS305)。具体的には、粘着力−内部摩擦角モデル化モジュール307は、含水比をキーとして、粘着力及び内部摩擦角を、各含水比における振動特徴量と関連付けることによって、粘着力及び内部摩擦角を振動特徴量によってモデル化する。粘着力−内部摩擦角モデル化モジュール307は、粘着力及び内部摩擦角の振動特徴量によるモデル化によって、例えば、上述の関係式又はその関係式を特定できるパラメータを土質モデルとして導出する。
検知装置319(検知装置319の粘着力−内部摩擦角モデル化モジュール307)は、ステップS305までに得られたモデルのデータ(モデルデータ)を、データベース311に格納する(ステップS306)。検知装置319は、得られたモデルデータを、モデル記憶部104に格納されているデータベース311に追加すればよい。
土種と密度との組み合わせに、モデル化が実施されていない組み合わせが含まれる場合(ステップS307においてNO)、検知システム300は、モデル化が実施されていない、土種と密度との組み合わせを選択する。そして検知システム300は、選択した土種と密度との組み合わせについて、ステップS301からの動作を繰り返す。
土種と密度との組み合わせの全てについて、モデル化が実施された場合(ステップS307においてYES)、検知システム300は、試験によってモデルの生成を終了し、斜面の監視を開始する。
検知装置319の土質判定モジュール314は、監視対象斜面において振動センサ312及び水分計313のデータを取得する(ステップS308)。土質判定モジュール314は、得られたデータに基づいて、監視用モデルを決定する(ステップS309)。斜面安全率算出判定モジュール315は、ステップS309において決定されたモデルを用いて斜面安全率を算出し、算出した斜面安全率を監視することによって、斜面の安全性を監視する(ステップS310)。ステップS308からステップS310までの動作については、後で詳細に説明する。
図7は、本実施形態の検知システム300の動作の他の例を表すフローチャートである。図7に示すフローチャートを図6に示すフローチャートと比較すると、図7に示す例では、ステップS301の動作の次にステップS303の動作が行われる。そして、ステップS303の動作の後に、ステップS302の動作が行われる。ステップS302の動作の後に、ステップS304以降の動作が行われる。図7に示す動作は、以上の相違を除き、図6に示す動作と同じである。
次に、本実施形態の検知システム300の、三軸圧縮試験の動作について、図面を参照して詳細に説明する。
図8は、実施形態の検知システム300の、三軸圧縮試験の動作の例を表すフローチャートである。図8のフローチャートには、三軸圧縮試験において、三軸圧縮試験装置317の操作を行う作業者の動作も含まれる。
まず、作業者は、試験条件に従って含水比が調整されている土塊である、含水比調整土塊を作成する(ステップS501)。そして、作業者は、作成した土塊を三軸圧縮試験装置317にセットする(ステップS502)。
例えば作業者による指示に従って、三軸圧縮試験装置317は、セットされた土塊を圧縮する(ステップS503)。三軸圧縮試験装置317は、セットされた土塊の、せん断時の応力を計測する(ステップS504)。試験回数が、粘着力及び内部摩擦角の算出に必要な試験回数である必要回数より少ない場合(ステップS505においてNO)、三軸圧縮試験装置317は、ステップS502からステップS504までの動作を繰り返す。試験回数は、ステップS502からステップS504までの動作によって表される試験が行われた回数である。試験回数が必要回数以上である場合(ステップS505においてYES)、検知装置319は、試験を繰り返すことによって得られたデータを使用して、粘着力及び内部摩擦角を算出する(ステップS506)。図8の説明において、1回のステップS506の動作によって算出される粘着力及び内部摩擦角を、サンプルと表記する。生成されたサンプル数が、モデル化に必要なサンプル数より少ない場合(ステップS507においてNO)、作業者及び三軸圧縮試験装置317は、ステップS501からステップS506までの動作を繰り返す。モデル化に必要なサンプル数以上の数のサンプルが生成された場合(ステップS507においてYES)、三軸圧縮試験の動作は終了する。
次に、本実施形態の検知システム300の、加水加振試験の処理の動作について、図面を参照して詳細に説明する。
図9は、本実施形態の検知システム300の、加水加振試験の処理の動作の例を表すフローチャートである。
図9に示す加水加振試験の処理が開始される際、例えば、検知システム300を操作する作業者によって、プランター318に土塊がセットされている。以下の説明では、ステップS602からステップS607までの動作が、試験である。試験回数は、ステップS602からステップS607までの動作の回数を指す。
まず、プランター318の水分計303は、セットされている土塊に含まれる水分の量である土中水分量を計測する(ステップS602)。水分計303は、計測した土中水分量を、検知装置319に送信する。1回目の水分量の計測では、セットされている土塊に加水は行われない。言い換えると、1回目の試験では、セットされている土塊に加水は行われない。
次に、間隙水圧計305が、土塊の間隙水圧を計測する(ステップS603)。間隙水圧計305は、計測した間隙水圧を、検知装置319に送信する。
次に、例えば、作業者が、プランター318に取り付けられている、土塊に振動を与える振動発生装置(図示されない)によって、土塊に振動を加える、加振を行う(ステップS604)。振動発生装置は、検知装置319又は端末装置(図示されない)による制御に従って、土塊に加振を行ってもよい。
振動センサ304は、加振が行われている土塊の振動を計測する(ステップS605)。振動センサ304は、振動の計測によって得られる振動データを、検知装置319に送信する。
検知装置319の振動特徴量算出モジュール309は、振動センサ304が土塊の振動を計測することによって得られる振動データを、振動センサ304から取得する(ステップS606)。
次に、検知装置319の振動特徴量算出モジュール309は、得られた振動データを使用して、振動特徴量を算出する(ステップS607)。振動特徴量算出モジュール309は、振動特徴量として、例えば、共振周波数又は減衰率等を算出する。
計測回数が、指定回数より少ない場合(ステップS608においてNO)、上述の作業者が、所定量の水を土塊に加える操作である加水を行う(S609)。計測回数は、ステップS602からステップS607までの動作によって表される試験が行われた回数である。指定回数は、ステップS602からステップS607までの動作によって表される試験が行われる回数として指定されている回数である。プランター318に、指定された量の水を土塊に加える加水装置が取り付けられていてもよい。そして、その加水装置が加水を行ってもよい。土塊に加えられる水の量は、試験条件(図5の例は第2の試験条件)によって指定される含水比に従って定まる。検知装置319の例えば含水比対応化モジュール308が、第2の試験条件に基づいて、土塊に加える水の量を算出し、算出した水の量を、例えば画像や音声によって、上述の作業者に通知してもよい。上述の作業者が、試験条件によって応じた水の量を計算してもよい。検知装置319の例えば含水比対応化モジュール308は、加水装置に、土塊に1回に加える水の量を指示してもよい。
土塊に加水した後、検知システム300の動作は、ステップS602の動作に戻る。そして、検知システム300は、次の回の試験を行う。検知システム300は、ステップS602からステップS607までの動作(すなわち試験)を繰り返す。
試験回数が指定回数以上である場合(ステップS608においてYES)、検知システム300は、図9に示す動作を終了する。
以上で説明した、図7、図8、及び図9の動作によって、検知システム300は、土種及び密度毎に、粘着力、内部摩擦角、土塊重量、及び間隙水圧の振動特徴量によるモデルと、加水時の水分変化に対する振動特徴量の分布を導出する。前述のように、検知システム300は、導出したこれらのモデル及び分布を、データベース311に格納する。
次に、本実施形態の検知システム300の、監視時の動作について、図6を参照して詳細に説明する。
実斜面計測装置320は、監視対象である斜面(以下、監視対象斜面と表記)に設置されている、振動センサ312及び水分計313によって、監視対象斜面の振動及び水分量のデータを計測する(S308)。実斜面計測装置320は、計測によって得られたデータを、検知装置319に送信する。
検知装置319の土質判定モジュール314は、実斜面計測装置320から上述のデータを受信する。土質判定モジュール314は、受信したデータに基づいて、監視対象斜面の土の性質を表す土質モデルである、監視用モデルを決定する(S309)。土質判定モジュール314は、監視用モデルを決定する方法は、第1の実施形態の土質判定装置110が監視用モデルを決定する方法と同じでよい。言い換えると、土質判定モジュール314は、第1の実施形態の振動特徴量算出部103及び土質判定部105として動作してもよい。土質判定モジュール314は、第2の実施形態の振動特徴量算出部103及び土質判定部105として動作してもよい。
検知装置319の斜面安全率算出判定モジュール315は、決定した監視用モデルを用いて、監視対象斜面の安全率(斜面安全率とも表記)を算出する。斜面安全率算出判定モジュール315は、ディスプレイ316に、算出した安全率を表す表示を行う(S310)。例えば、作業者は、ディスプレイ316に表示される、斜面安全率を表す表示を監視することによって、監視対象斜面の監視を行う(S310)。作業者は、ディスプレイ316に表示される表示を、監視対象斜面の監視に利用する。斜面安全率算出判定モジュール315は、算出した安全率を監視することによって、算出した安全率が、所定の基準より危険であるか否かを判定してもよい。算出した安全率が所定の基準より危険であることを示す場合、斜面安全率算出判定モジュール315は、ディスプレイ316に、危険を示す表示を行ってもよい。斜面安全率算出判定モジュール315は、スピーカ(図示されない)によって危険を表す音声を出力してもよい。
検知システム300が、第2の実施形態の土質判定装置110Aとして動作する場合、振動特徴量算出モジュール309は、例えばステップS606において、振動データに対して、複数の通過周波数帯の各々についての周波数フィルタリングを行う。振動特徴量算出モジュール309は、周波数フィルタリングの結果から、振動特徴量を抽出する。すなわち、振動特徴量算出モジュール309は、通過周波数帯毎に、振動特徴量を抽出する。粘着力−内部摩擦角算出モジュールは、通過周波数帯毎に、モデルを算出し、算出したモデルをデータベース311に格納する。重量−間隙水圧モデル化モジュールは、通過周波数帯毎に、モデルを算出し、算出したモデルをデータベースに格納する。従って、データベース311には、土種、密度、及び、フィルタリング領域(すなわち通過周波数帯)の組み合わせごとに、粘着力、内部摩擦角、重量、及び間隙水圧のモデル関数と、水分量の変化に対する振動特徴量算出の分布と、共振周波数とが格納される。
斜面安全率算出判定モジュール315は、土質判定モジュール314で導出された比率に従って、土種の土質モデルの係数を設定し、設定された係数に従って、推定土種の土質モデルを生成し、生成した土質モデルを監視に用いる。斜面安全率算出判定モジュール315は、振動センサによる計測の結果である時系列データを振動特徴量に変換する。そして、斜面安全率算出判定モジュール315は、振動特徴量によってモデル化された粘着力、内部摩擦角、土塊重量、間隙水圧、及び、それらを用いて算出された安全率を、監視対象斜面の状態として、ディスプレイ316に逐次表示する。
[第4の実施形態]
[第4の実施形態の構成]
次に、本発明の第4の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図10は、本実施形態に係る土質判定装置110Aの構成の例を表す図である。
図10に示すように、本実施形態に係る土質判定装置110Aは、振動計測部101と、水分量計測部102と、振動特徴量算出部103と、モデル記憶部104と、土質判定部105とを含む。振動計測部101及び水分量計測部102は、振動特徴量算出部103と、モデル記憶部104と、土質判定部105とを含む土質判定装置110Aに、通信可能に接続されていればよい。土質判定装置110Aは、さらに、振動データ受信部106と、水分量受信部107と、出力部108とを含む。土質判定装置110Aは、さらに、測定制御部109を含んでいてもよい。
本実施形態のモデル記憶部104は、第2の実施形態のモデル記憶部104と同様に、土種、密度、及び周波数特徴量を算出する際の通過周波数帯毎にデータを記憶している。モデル記憶部104は、それぞれの斜面安定解析式に必要なパラメータを減衰率によってモデル化した関数式と、土中水分に対する減衰率の分布に加え、共振周波数も記憶している。
本実施形態の土質判定装置110Aは、以下の相違を除いて、第2の実施形態の土質判定装置110Aと同じである。本実施形態の土質判定装置110Aは、土質判定部105による、減衰率−水分量分布を比較する動作が、第2の実施形態の土質判定装置110Aの土質判定部105による、減衰率−水分量分布を比較する動作と異なる。
[第4の実施の動作]
次に、第4の実施形態の土質判定装置110Aの動作について、図面を参照して詳細に説明する。
図11は、第4の実施形態の土質判定装置110Aの動作の全体を表す図である。図11に示す動作は、ステップS106の次のステップS407の動作を除いて、図4に示す、第2の実施形態の土質判定装置110Aの動作と同じである。以下、本実施形態の土質判定装置110Aの動作と第2の実施形態の土質判定装置110Aの動作との相違を中心に説明する。
振動データ受信部106は、振動計測部101により検知(センシング)された時系列データを取得する(ステップS101)。振動データ受信部106は、振動計測部101から、計測された振動を表す振動データを受信すればよい。
振動特徴量算出部103は、例えばあらかじめ定められている複数の通過周波数帯から、未選択の通過周波数帯を選択する(ステップS201)。振動特徴量算出部103は、得られた振動データに対して、選択された通過周波数帯の信号を通過させる周波数フィルタリングを実施する(ステップS202)。振動特徴量算出部103は、周波数フィルタリングが行われた振動データから振動特徴量を算出する(ステップS102)。
未選択の通過周波数帯が存在する場合(ステップS203においてNO)、土質判定装置110Aの動作はステップS201に戻る。そして、通過周波数帯の変更(ステップS201)、周波数フィルタリングの実施(ステップS202)、及び、振動特徴量の算出(ステップS102)を、所定回数(例えば、前述の複数の周波数帯の全てが選択されるまで)繰り返す。本実施形態でも、振動特徴量は、減衰率である。モデル記憶部104に格納されているモデル(例えば前述の関数式)及び減衰率−水分量分布も、同じ複数の周波数帯のそれぞれについて導出されていればよい。
次に、水分量受信部107は、水分量計測部102が計測した水分量を表す水分量データを取得する(ステップS103)。水分量受信部107は、水分量計測部102から水分量データを受信すればよい。土質判定部105は、算出された通過周波数帯毎の振動特徴量(本実施形態では減衰率)と、取得した水分量データをもとに、通過周波数帯毎の振動特徴量−水分量分布(本実施形態では減衰率−水分量分布)を更新する。土質判定部105は、例えば、通過周波数帯毎に、減衰率−水分量分布のデータに、取得した水分量データが示す水分量における、算出された減衰率の値を加えればよい。
そして、例えば土質判定装置110Aのオペレータは、所定量の水分を対象土に加えることによって、水分量を増量する(ステップS104)。水分量が規定の水分量に達していない場合(ステップS105においてNO)、土質判定装置110Aの動作は、ステップS101に戻る。そして、土質判定装置110Aは、水分量が規定の水分量に到達するまで(ステップS105においてYES)、同様の操作を繰り返す。ステップS105における判定に使用される水分量は、例えば、得られた水分量データが指す水分量であってもよい。ステップS105における判定に使用される水分量は、例えば、ステップS104において加えた水分量の和であってもよい。以上により、測定の対象である土の、通過周波数帯毎の減衰率−水分量分布が得られる。
土質判定装置110Aは、ステップS101からステップS203までの動作を、同じ水分量において複数回繰り返してもよい。振動特徴量算出部103は、同じ水分量において算出された複数の振動特徴量の統計値(例えば、平均値、中央値、又は、中間値など)を算出してもよい。土質判定部105は、振動特徴量(上述のように、本実施形態では減衰率)を使用して、減衰率−水分量分布を生成してもよい。土質判定部105は、同じ水分量において得られた複数の振動特徴量をもとに、同じ通過周波数帯について複数の減衰率−水分量分布を生成してもよい。
水分量が規定水分量を超えた場合(ステップS105においてYES)、土質判定部105は、比較対象モデルを選択する(ステップS106)。モデル記憶部104に格納されているモデルから、測定の対象である土と比較されるモデルである、比較対象モデルを選択する(ステップS106)。
上述のように本実施形態では、モデル記憶部104に格納されているモデル及び分布が導出された振動データに適用された周波数フィルタリングにおける通過周波数帯の組み合わせは、ステップS202における通過周波数帯の組み合わせと同じである。その場合、土質判定部105は、モデル記憶部104に格納されている全てのモデルから未選択のモデルを1つ選択してもよい。
モデル記憶部104に格納されているモデル及び分布に、導出に使用された振動データに適用された周波数フィルタリングにおける通過周波数帯の組み合わせが異なるモデル及び分布が混在することもある。その場合、土質判定部105は、ステップS202における通過周波数帯の組み合わせと同じ組み合わせが振動データに適用される周波数フィルタリングにおいて使用されたモデルから、1つの未選択のモデルを比較対象モデルとして選択する。
次に、土質判定部105は、測定の対象である土と選択されたモデルとの間で、減衰率−水分量分布(水分量に対する減衰率の分布)を比較する比較処理を行う(ステップS407)。モデル記憶部104に格納されている、選択の対象である少なくともいずれかモデルについて比較が完了していない場合(ステップS108においてNO)、土質判定装置110Aの動作は、ステップS106に戻る。そして、土質判定部105は、ステップS106における比較対象モデル選択とステップS407における減衰率−水分量分布の比較とを繰り返す。
このように、土質判定部105は、比較対象モデルの選択(ステップS106)と、減衰率−水分量分布の比較(ステップS407)とを、モデル記憶部104に格納されている、比較対象として選択されうる全てのモデルに対して実施する。土質判定部105は、ステップS407の結果として、測定の対象である土と、比較対象である各モデルとの間の類似度を算出する。
比較対象として選択されうる全てのモデルについての減衰率−水分量分布の比較が完了した場合(ステップS108においてYES)、土質判定部105は、土質を判定する(ステップS109)。すなわち、第1及び第2の実施形態と同様に、土質判定部105は、算出された類似度が上位であるモデルを監視用モデルとして判定する。土質判定部105は、類似度が最上位の土質モデルを採用してもよい。土質判定部105は、類似度が上位である複数のモデルの重みを、スコアをもとに決め、重みが決められたモデルの土質モデルを表すパラメータに重みを掛け、重みが掛けられたパラメータをパラメータの種類毎に足すことによって、監視用モデルを生成してもよい。
次に、本実施形態の土質判定装置110Aの、ステップS407における減衰率−水分量分布の比較処理の動作について、図面を用いて詳細に説明する。
図12は、本実施形態の土質判定装置110Aの、減衰率−水分量分布の比較処理の動作の例を表すフローチャートである。図12に示す動作の開始時において、計測されたデータと比較される比較対象モデルが選択(図11に示すステップS106)されている。
まず、図11に示すステップS105までの動作において、計測されたデータをもとに生成された減衰率−水分量分布から、未選択の減衰率−水分量分布を1つ選択する(ステップS701)。図11に示すステップS101からステップS105までの動作によって、計測されたデータをもとに生成された減衰率−水分量分布を、計測データの減衰率−水分量分布とも表記する。前述のように、計測データのそれぞれの減衰率−水分量分布は、いずれかの通過周波数帯の周波数フィルタリングが実施された振動データに基づいて生成されている。以下の説明では、減衰率−水分量分布が生成された振動データに実施された周波数フィルタリングにおいて使用された通過周波数帯を、減衰率−水分量分布の通過周波数帯と表記する。ステップS701における「未選択の、計測データの減衰率−水分量分布」は、図11に示すステップS106において選択された比較対象モデルについての図12に示す動作において、未選択である計測データの減衰率−水分量分布を示す。
土質判定部105は、比較対象モデルの減衰率−水分量分布の中から、通過周波数帯が、計測データの選択された減衰率−水分量分布の通過周波数帯と同じである、減衰率−水分量分布を選択する(ステップS702)。
土質判定部105は、選択された2つの減衰率−水分量分布の間の距離を算出する(ステップS703)。選択された2つの水分量−減衰率分布の一方は、ステップS701において選択された、計測データの減衰率−水分量分布である。選択された2つの減衰率−水分量分布の他方は、ステップS702において選択された、比較対象モデルの減衰率−水分量分布である。土質判定部105は、2つの減衰率−水分量分布の間の距離として、例えば、同じ水分量における減衰率の差の絶対値の平均を計算してもよい。土質判定部105は、2つの減衰率−水分量分布の間の距離として、例えば、同じ水分量における減衰率の差の2乗の平均の平方根を計算してもよい。土質判定部105は、2つの減衰率−水分量分布の間の距離として、他の種類の距離を算出してもよい。
土質判定部105は、算出した距離を、比較対象モデルに関連付けられる総距離に加算する(ステップS704)。なお、比較対象モデルに関連付けられる総距離は、図12に示す動作の開始時に、0に設定されていればよい。
土質判定部105は、ステップS701において選択された計測データの減衰率−水分量分布を、次のステップS701における選択の対象から除外する(ステップS705)。計測データの減衰率−水分量分布に、選択されていない減衰率−水分量分布、すなわち、選択の対象から除外されていない減衰率−水分量分布が存在する場合(ステップS706においてNO)、土質判定装置110Aの動作は、ステップS701に戻る。そして、土質判定装置110Aは、ステップS701からの動作を再び行う。
計測データの減衰率−水分量分布の全てが選択された場合、すなわち、選択の対象から除外されていない減衰率−水分量分布が存在しない場合(ステップS706においてYES)、土質判定部105は、算出された総距離を、比較対象モデルに関連付ける。そして、土質判定部105は、比較対象モデルに関連付けられた総距離を、その比較対象モデルの類似度として記憶する(ステップS707)。この場合、比較対象モデルの類似度(すなわち総距離)が小さいほど、その比較対象モデルの減衰率−水分量分布が計測データの減衰率−水分量分布によく類似する。以上で、図12に示す動作は終了する。土質判定部105は、比較対象モデルに関連付けられた総距離を記憶する際、総距離が短い順にソートしてもよい。土質判定部105は、比較対象モデルに関連付けられた総距離を記憶する際、総距離に、小ささの順位を付与してもよい。土質判定部105は、比較対象モデルに関連付けられた総距離を、その比較対象モデルの類似度として、例えばモデル記憶部104に格納してもよい。
図13は、記憶される類似度の例を模式的に示す図である。図13に示す例では、類似度は総距離である。そして、総距離は、小さい順にソートされ、順位が付与されている。
図11に示すステップS109の動作について、図13に示す例を使用して更に詳細に説明する。上述のように、土質判定部105は、例えば、類似度が最もよく類似していることを表すモデルの土の性質を現す土質モデルを、監視用モデルとして選択してもよい。その場合、図13に示す例では、土質判定部105は、総距離が最も小さいモデルAの土質モデルを、監視用モデルとして選択する。
測定対象の土が複数の種類の土が混ざっている土である場合、いずれか1つのモデルによって測定対象である土を表すことができるとは限らない。土質判定部105は、上述のように、類似度が示す類似性が高い方から複数のモデルを選択し、選択されたモデルに基づいて、監視用モデルを生成してもよい。具体的には、土質判定部105は、選択されたモデルの類似度に基づいて、選択されたモデル毎に重みを付与すればよい。土質判定部105は、付与される重みの和が1になるように、重みを決定すればよい。土質判定部105は、選択されたモデル毎に、土質モデルを表す関数式のパラメータに、付与された重みを掛ければよい。土質判定部105は、重みが掛けられたパラメータを、パラメータの種類毎に足すことによって、監視用モデルを表す関数式のパラメータを生成すればよい(すなわち、監視用モデルを生成すればよい)。
例えば、図13に示す例において、類似性が高い3つのモデルを使用して監視用モデルを生成する場合、土質判定部105は、総距離が小さい方から3つのモデル(モデルA、B及びC)を選択する。そして、土質判定部105は、例えば、選択されたモデルの各々に、得られた総距離の逆数に比例する重みを付与してもよい。土質判定部105は、クラスAの重みとして、例えば、クラスAの総距離の逆数を、クラスA、B及びCのそれぞれの総距離の逆数の和によって割った値を付与する。同様に、土質判定部105は、クラスBの重みとして、例えば、クラスBの総距離の逆数を、クラスA、B及びCのそれぞれの総距離の逆数の和によって割った値を付与する。土質判定部105は、クラスCの重みとして、例えば、クラスCの総距離の逆数を、クラスA、B及びCのそれぞれの総距離の逆数の和によって割った値を付与する。図13に示す例では、クラスAの総距離は0.1であり、クラスBの総距離は0.2であり、クラスCの総距離は0.3である。従って、モデルAに付与される重みは、6/11(=(1/0.1)/(1/0.1+1/0.2+1/0.3))である。モデルBに付与される重みは、3/11(=(1/0.2)/(1/0.1+1/0.2+1/0.3))である。モデルCに付与される重みは、2/11(=(1/0.3)/(1/0.1+1/0.2+1/0.3))である。
土質判定部105は、類似度(図13に示す例では総距離)の大きさに基づいて、最も類似する1つのモデルを監視用モデルとして選択するか、類似する複数のモデルに基づいて、監視用モデルを生成するかを決定してもよい。例えば、最も類似することを表す類似度が、閾値(第1の閾値)が示す基準(第1の基準)より、類似の程度が高いことを表す場合、土質判定部105は、最も類似するモデルを監視用モデルとして選択してもよい。例えば、最も類似することを表す類似度が、第1の閾値が示す第1の基準より、類似の程度が高くないことを表す場合、土質判定部105は、上述のように、類似度が示す類似性が高い複数のモデルをもとに、監視用モデルを生成してもよい。
類似度が示す類似性が高い複数のモデルをもとに監視用モデルを生成する場合、監視用モデルに使用されるモデルの数は定められていてもよい。類似度が示す類似性が高い複数のモデルをもとに監視用モデルを生成する場合、土質判定部105が、類似度と閾値(第2の閾値)とを比較することによって、類似度が示す類似性が所定の基準(第2の基準)より高い複数のモデルを選択してもよい。
以上で説明した本実施形態には、第1の実施形態と同じ効果がある。その理由は、第1の実施形態の効果が生じる理由と同じである。
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図14は、本実施形態の土質判定装置110Bの構成の例を表すブロック図である。
図14を参照すると、本実施形態の土質判定装置110Bは、振動特徴量算出部103と、土質判定部105と、を含む。土質判定装置110Bは、加水を繰り返しながら振動が加えられた対象土の振動を表す振動データに基づいて、振動特徴量を算出する。土質判定部105は、前記対象土の、水分特徴量分布と、前記水分特徴量分布が得られている土の種類である土種と前記対象土との間の前記水分特徴量分布の類似の程度と、前記土種の性質とに基づいて、前記対象土の性質を判定する。水分特徴量分布は、前記振動データが取得された際測定された水分量と前記振動特徴量との関係を表す。
以上で説明した本実施形態には、第1の実施形態と同じ効果がある。その理由は、第1の実施形態の効果が生じる理由と同じである。
[他の実施形態]
上述の実施形態の土質判定装置110、110A及び110B、及び、検知装置319は、それぞれ、例えば、回路によって実現することができる。その回路は、1つの回路として実装されていてもよい。その回路は、複数の回路として実装されていてもよい。回路は、1つの装置に含まれるように実装されていてもよい。回路は、複数の装置によって実装されていてもよい。
回路は、例えば、プロセッサ及びメモリである。その場合、プロセッサが、メモリにロードされたプログラムを実行する。そのプログラムは、そのプロセッサとメモリとを含むコンピュータを土質判定装置110、110A又は110B、又は、検知装置319として動作させるプログラムである。そして、プロセッサ及びメモリを含むコンピュータは、土質判定装置110、110A、及び、110Bとして動作する。
回路は、例えば、専用のハードウェアであってもよい。その場合、その専用のハードウェアは、土質判定装置110、110A又は110B、又は、検知装置319の各コンポーネントの機能を備える回路を含んでいればよい。
回路は、例えば、上述のコンピュータと、上述の専用のハードウェアとの組合せであってもよい。
図15は、本発明の各実施形態に係る土質判定装置及び検知装置を実現することができる、コンピュータ1000のハードウェア構成の一例を表す図である。図15を参照すると、コンピュータ1000は、プロセッサ1001と、メモリ1002と、記憶装置1003と、I/O(Input/Output)インタフェース1004とを含む。また、コンピュータ1000は、記録媒体1005にアクセスすることができる。メモリ1002と記憶装置1003は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクなどの記憶装置である。記録媒体1005は、例えば、RAM、ハードディスクなどの記憶装置、ROM(Read Only Memory)、可搬記録媒体である。記憶装置1003が記録媒体1005であってもよい。プロセッサ1001は、メモリ1002と、記憶装置1003に対して、データやプログラムの読み出しと書き込みを行うことができる。プロセッサ1001は、I/Oインタフェース1004を介して、例えば、振動計測部101及び水分量計測部102等にアクセスすることができる。プロセッサ1001は、記録媒体1005にアクセスすることができる。記録媒体1005には、コンピュータ1000を、土質判定装置110、110A、又は、110Bとして動作させるプログラムが格納されている。
プロセッサ1001は、記録媒体1005に格納されている、コンピュータ1000を、土質判定装置110、110A、又は、110Bとして動作させるプログラムを、メモリ1002にロードする。そして、プロセッサ1001が、メモリ1002にロードされたプログラムを実行することにより、コンピュータ1000は、土質判定装置110、110A、又は、110Bとして動作する。
以下の第1グループに含まれる各要素は、例えば、それらの機能を実現できる専用のプログラムがロードされたメモリ1002と、そのプログラムを実行するプロセッサ1001とにより実現することができる。上述の第1グループは、振動特徴量算出部103、土質判定部105、振動データ受信部106、水分量受信部107、出力部108、測定制御部109を含む。上述の第1グループは、更に、粘着力−内部摩擦角算出モジュール306、粘着力−内部摩擦角モデル化モジュール307、含水比対応化モジュール308、振動特徴量算出モジュール309、重量−間隙水圧モデル化モジュール310、土質判定モジュール314、及び、斜面安全率算出判定モジュール315を含む。
また、モデル記憶部104及びデータベース311は、コンピュータ1000が含むメモリ1002やハードディスク装置等の記憶装置1003により実現することができる。
上述の第1グループに含まれる各要素、モデル記憶部104及びデータベース311は、それらの機能を実現する専用の回路によって実現することもできる。
図16は、専用の回路を使用して実装された、第1の実施形態の土質判定装置110の構成の例を表すブロック図である。第2及び第4の実施形態の土質判定装置110Aも、図16に示す土質判定装置110と同様に実装することができる。
図16を参照すると、土質判定装置110は、振動特徴量算出回路2103と、モデル記憶回路2104と、土質判定回路2105と、振動データ受信回路2106と、水分量受信回路2107と、出力回路2108とを含む。土質判定装置110は、測定制御回路2109を更に含んでいてもよい。振動特徴量算出回路2103は、振動特徴量算出部103として動作する。モデル記憶回路2104は、モデル記憶部104として動作する。モデル記憶部104は、例えばハードディスク装置又はSSD(Solid State Disk)等の記憶装置によって実装されていてもよい。土質判定回路2105は、土質判定部105として動作する。振動データ受信回路2106は、振動データ受信部106として動作する。水分量受信回路2107は、水分量受信部107として動作する。出力回路2108は、出力部108として動作する。測定制御回路2109は、測定制御部109として動作する。
図17は、専用の回路を使用して実装された、第3の実施形態の検知装置319の構成の例を表すブロック図である。
図17を参照すると、検知装置319は、粘着力−内部摩擦角算出回路2306と、粘着力−内部摩擦角モデル化回路2307と、含水比対応化回路2308と、振動特徴量算出回路2309と、重量−間隙水圧モデル化回路2310とを含む。検知装置319は、さらに、データベース装置2311と、土質判定回路2314と、斜面安全率算出判定回路2315とを含む。
粘着力−内部摩擦角算出回路2306は、粘着力−内部摩擦角算出モジュール306として動作する。粘着力−内部摩擦角モデル化回路2307は、粘着力−内部摩擦角モデル化モジュール307として動作する。含水比対応化回路2308は、含水比対応化モジュール308として動作する。振動特徴量算出回路2309は、振動特徴量算出モジュール309として動作する。重量−間隙水圧モデル化回路2310は、重量−間隙水圧モデル化モジュール310として動作する。データベース装置2311は、データベース311として動作する。土質判定回路2314は、土質判定モジュール314として動作する。斜面安全率算出判定回路2315は、斜面安全率算出判定モジュール315として動作する。
図18は、専用の回路を使用して実装された、第5の実施形態の土質判定装置110Bの構成の例を表すブロック図である。
図18を参照すると、土質判定装置110Bは、振動特徴量算出回路2103と、土質判定回路2105とを含む。振動特徴量算出回路2103は、振動特徴量算出部103として動作する。土質判定回路2105は、土質判定部105として動作する。
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
この出願は、2015年9月30日に出願された日本出願特願2015−193107を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。