以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されない。
本実施形態で使用するエポキシ樹脂(A)は、下記一般式(1)で表される。
(式中、Rは各々独立に炭素数1〜3のアルキレン基を表す。nは1〜20の整数を表し、nが異なる混合物であっても良い。)
一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)の式中のnは、1〜20の整数であり、好ましくは1〜15であり、より好ましくは1〜10である。nが上記範囲であることにより、得られる硬化物のめっき密着性が良好となる。
一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)は市販のものを使用しても良く、例えばDow Chemical社製、D.E.R.6508(エポキシ当量400g/eq.)やXZ92566(エポキシ当量913g/eq.)を好適に使用できる。一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)を含有する樹脂硬化物は、めっき密着性が向上する効果がある。
一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)の本実施形態の樹脂組成物における含有量は、所望する特性に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、樹脂組成物中の樹脂固形分を100質量部とした場合、1〜90質量部が好ましい。含有量が1〜90質量部の範囲である場合、耐熱性に優れる樹脂組成物が得られる。ここで、「樹脂組成物中の樹脂固形分」とは、特に断りのない限り、樹脂組成物における、溶剤、及び充填材(C)を除いた成分をいい、樹脂固形分100質量部とは、樹脂組成物における溶剤、及び充填材(C)を除いた成分の合計が100質量部であることをいうものとする。
本実施形態で使用するシアン酸エステル化合物(B)は、シアナト基(シアン酸エステル基)が少なくとも1個置換された芳香族部分を分子内に有する樹脂であれば特に限定されない。
例えば一般式(2)で表されるものが挙げられる。
(式中、Ar1は、各々独立に、置換基を有してもよいフェニレン基、置換基を有してもよいナフチレン基又は置換基を有してもよいビフェニレン基を表す。Raは各々独立に水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜12のアリール基、置換基を有してもよい炭素数1〜4のアルコキシル基、炭素数1〜6のアルキル基と炭素数6〜12のアリール基とが結合した置換基を有してもよいアラルキル基又は炭素数1〜6のアルキル基と炭素数6〜12のアリール基とが結合した置換基を有してもよいアルキルアリール基のいずれか一種から選択される。pはAr1に結合するシアナト基の数を表し、1〜3の整数である。qはAr1に結合するRaの数を表し、Ar1がフェニレン基の時は4−p、ナフチレン基の時は6−p、ビフェニレン基の時は8−pである。tは平均繰り返し数を表し、0〜50の整数であり、tが異なる化合物の混合物であってもよい。Xは、各々独立に、単結合、炭素数1〜50の2価の有機基(水素原子がヘテロ原子に置換されていてもよい)、窒素数1〜10の2価の有機基(−N−R−N−など)、カルボニル基(−CO−)、カルボキシ基(−C(=O)O−)、カルボニルジオキサイド基(−OC(=O)O−)、スルホニル基(−SO2−)、或いは、2価の硫黄原子又は2価の酸素原子のいずれか一種から選択される。)
一般式(2)のRaにおけるアルキル基は、鎖状構造、環状構造(シクロアルキル基等)どちらを有していてもよい。
また、一般式(2)におけるアルキル基及びRaにおけるアリール基中の水素原子は、フッ素、塩素等のハロゲン原子、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシル基、シアノ基等で置換されていてもよい。
前記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、1−エチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
前記アリール基の具体例としては、フェニル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、フェノキシフェニル基、エチルフェニル基、o−,m−又はp−フルオロフェニル基、ジクロロフェニル基、ジシアノフェニル基、トリフルオロフェニル基、メトキシフェニル基、o−,m−又はp−トリル基等が挙げられる。更にアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。
一般式(2)のXにおける2価の有機基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、トリメチルシクロヘキシレン基、ビフェニルイルメチレン基、ジメチルメチレン−フェニレン−ジメチルメチレン基、フルオレンジイル基、フタリドジイル基等が挙げられる。該2価の有機基中の水素原子は、フッ素、塩素等のハロゲン原子、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシル基、シアノ基等で置換されていてもよい。
一般式(2)のXにおける窒素数1〜10の2価の有機基としては、イミノ基、ポリイミド基等が挙げられる。
また、一般式(2)中のXとしては、下記一般式(3)又は下記一般式(4)で表される構造であるものが挙げられる。
(式中、Ar2はフェニレン基、ナフチレン基及びビフェニレン基のいずれか一種から選択される。を表す。Rb、Rc、Rf、Rgは各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、トリフルオロメチル基及びフェノール性ヒドロキシ基が少なくとも1個置換されたアリール基のいずれか一種から選択される。Rd、Reは各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜4のアルコキシル基及びヒドロキシ基のいずれか一種から選択される。uは0〜5の整数を示すが、uが異なる化合物の混合物であってもよい。)
(式中、Ar3はフェニレン基、ナフチレン基又はビフェニレン基のいずれか一種から選択される。Ri、Rjは各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、ベンジル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基及びシアナト基が少なくとも1個置換されたアリール基のいずれか一種から選択される。vは0〜5の整数を示すが、vが異なる化合物の混合物であってもよい。)
さらに、一般式(2)中のXとしては、下記式で表される2価の基が挙げられる。
(式中、zは4〜7の整数を表す。Rkは各々独立に水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
一般式(3)のAr2及び一般式(4)のAr3の具体例としては、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、4,4’−ビフェニレン基、2,4’−ビフェニレン基、2,2’−ビフェニレン基、2,3’−ビフェニレン基、3,3’−ビフェニレン基、3,4’−ビフェニレン基、2,6−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、1,6−ナフチレン基、1,8−ナフチレン基、1,3−ナフチレン基、1,4−ナフチレン基等が挙げられる。
一般式(3)のRb〜Rg及び一般式(4)のRi、Rjにおけるアルキル基及びアリール基は一般式(2)で記載したものと同様である。
一般式(2)で表されるシアナト置換芳香族化合物の具体例としては、シアナトベンゼン、1−シアナト−2−,1−シアナト−3−,又は1−シアナト−4−メチルベンゼン、1−シアナト−2−,1−シアナト−3−,又は1−シアナト−4−メトキシベンゼン、1−シアナト−2,3−,1−シアナト−2,4−,1−シアナト−2,5−,1−シアナト−2,6−,1−シアナト−3,4−又は1−シアナト−3,5−ジメチルベンゼン、シアナトエチルベンゼン、シアナトブチルベンゼン、シアナトオクチルベンゼン、シアナトノニルベンゼン、2−(4−シアナフェニル)−2−フェニルプロパン(4−α−クミルフェノールのシアネート)、1−シアナト−4−シクロヘキシルベンゼン、1−シアナト−4−ビニルベンゼン、1−シアナト−2−又は1−シアナト−3−クロロベンゼン、1−シアナト−2,6−ジクロロベンゼン、1−シアナト−2−メチル−3−クロロベンゼン、シアナトニトロベンゼン、1−シアナト−4−ニトロ−2−エチルベンゼン、1−シアナト−2−メトキシ−4−アリルベンゼン(オイゲノールのシアネート)、メチル(4−シアナトフェニル)スルフィド、1−シアナト−3−トリフルオロメチルベンゼン、4−シアナトビフェニル、1−シアナト−2−又は1−シアナト−4−アセチルベンゼン、4−シアナトベンズアルデヒド、4−シアナト安息香酸メチルエステル、4−シアナト安息香酸フェニルエステル、1−シアナト−4−アセトアミノベンゼン、4−シアナトベンゾフェノン、1−シアナト−2,6−ジ−tert−ブチルベンゼン、1,2−ジシアナトベンゼン、1,3−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナトベンゼン、1,4−ジシアナト−2−tert−ブチルベンゼン、1,4−ジシアナト−2,4−ジメチルベンゼン、1,4−ジシアナト−2,3,4−ジメチルベンゼン、1,3−ジシアナト−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3−ジシアナト−5−メチルベンゼン、1−シアナト又は2−シアナトナフタレン、1−シアナト4−メトキシナフタレン、2−シアナト−6−メチルナフタレン、2−シアナト−7−メトキシナフタレン、2,2"−ジシアナト−1,1"−ビナフチル、1,3−,1,4−,1,5−,1,6−,1,7−,2,3−,2,6−又は2,7−ジシアナトシナフタレン、2,2’−又は4,4’−ジシアナトビフェニル、4,4’−ジシアナトオクタフルオロビフェニル、2,4’−又は4,4’−ジシアナトジフェニルメタン、ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−シアナト−5−ビフェニルイル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)イソブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジメチルプロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−3,3−ジメチルブタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)ヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)ヘプタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)オクタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルペンタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジメチルペンタン、4,4−ビス(4−シアナトフェニル)−3−メチルヘプタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−メチルヘプタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジメチルヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,4−ジメチルヘキサン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2,2,4−トリメチルペンタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−シアナトフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−シアナトフェニル)ビフェニルメタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−シアナト−3−イソプロピルフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−シアナトフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−シアナトフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−シアナトフェニル)−2,2−ジクロロエチレン、1,3−ビス[2−(4−シアナトフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,4−ビス[2−(4−シアナトフェニル)−2−プロピル]ベンゼン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4−[ビス(4−シアナトフェニル)メチル]ビフェニル、4,4−ジシアナトベンゾフェノン、1,3−ビス(4−シアナトフェニル)−2−プロペン−1−オン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルフィド、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、4−シアナト安息香酸−4−シアナトフェニルエステル(4−シアナトフェニル−4−シアナトベンゾエート)、ビス−(4−シアナトフェニル)カーボネート、1,3−ビス(4−シアナトフェニル)アダマンタン、1,3−ビス(4−シアナトフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、3,3−ビス(4−シアナトフェニル)イソベンゾフラン−1(3H)−オン(フェノールフタレインのシアネート)、3,3−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)イソベンゾフラン−1(3H)−オン(o−クレゾールフタレインのシアネート)、9,9’−ビス(4−シアナトフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2−シアナト−5−ビフェニルイル)フルオレン、トリス(4−シアナトフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−シアナトフェニル)エタン、1,1,3−トリス(4−シアナトフェニル)プロパン、α,α,α"−トリス(4−シアナトフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン、1,1,2,2−テトラキス(4−シアナトフェニル)エタン、テトラキス(4−シアナトフェニル)メタン、2,4,6−トリス(N−メチル−4−シアナトアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(N−メチル−4−シアナトアニリノ)−6−(N−メチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ビス(N−4−シアナト−2−メチルフェニル)−4,4’−オキシジフタルイミド、ビス(N−3−シアナト−4−メチルフェニル)−4,4’−オキシジフタルイミド、ビス(N−4−シアナトフェニル)−4,4’−オキシジフタルイミド、ビス(N−4−シアナト−2−メチルフェニル)−4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタルイミド、トリス(3,5−ジメチル−4−シアナトベンジル)イソシアヌレート、2−フェニル−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)フタルイミジン、2−(4−メチルフェニル)−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)フタルイミジン、2−フェニル−3,3−ビス(4−シアナト−3−メチルフェニル)フタルイミジン、1−メチル−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)インドリン−2−オン、2−フェニル−3,3−ビス(4−シアナトフェニル)インドリン−2−オン、フェノールノボラック樹脂やクレゾールノボラック樹脂(公知の方法により、フェノール、アルキル置換フェノール又はハロゲン置換フェノールと、ホルマリンやパラホルムアルデヒドなどのホルムアルデヒド化合物を、酸性溶液中で反応させたもの)、トリスフェノールノボラック樹脂(ヒドロキシベンズアルデヒドとフェノールとを酸性触媒の存在下に反応させたもの)、フルオレンノボラック樹脂(フルオレノン化合物と9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類とを酸性触媒の存在下に反応させたもの)、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂やビフェニルアラルキル樹脂(公知の方法により、Ar2−(CH2Y)2で表されるようなビスハロゲノメチル化合物とフェノール化合物とを酸性触媒若しくは無触媒で反応させたもの、Ar2−(CH2OR)2で表されるようなビス(アルコキシメチル)化合物やAr2−(CH2OH)2で表されるようなビス(ヒドロキシメチル)化合物とフェノール化合物を酸性触媒の存在下に反応させたもの、又は、芳香族アルデヒド化合物、アラルキル化合物、フェノール化合物とを重縮合させたもの)、フェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂(公知の方法により、キシレンホルムアルデヒド樹脂とフェノール化合物を酸性触媒の存在下に反応させたもの)、変性ナフタレンホルムアルデヒド樹脂(公知の方法により、ナフタレンホルムアルデヒド樹脂とヒドロキシ置換芳香族化合物を酸性触媒の存在下に反応させたもの)、フェノール変性ジシクロペンタジエン樹脂、ポリナフチレンエーテル構造を有するフェノール樹脂(公知の方法により、フェノール性ヒドロキシ基を1分子中に2つ以上有する多価ヒドロキシナフタレン化合物を、塩基性触媒の存在下に脱水縮合させたもの)等のフェノール樹脂を上述と同様の方法によりシアネート化したもの等が挙げられるが、特に制限されるものではない。これらのシアン酸エステル化合物は1種又は2種以上混合して用いることができる。
この中でも、フェノールノボラック型シアン酸エステル化合物、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物、ナフチレンエーテル型シアン酸エステル化合物、キシレン樹脂型シアン酸エステル化合物、アダマンタン骨格型シアン酸エステル化合物が好ましく、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物が特に好ましい。
これらのシアン酸エステル化合物を用いた樹脂硬化物は、ガラス転移温度、低熱膨張性、めっき密着性等に優れた特性を有する。
シアン酸エステル化合物(B)の本実施形態の樹脂組成物における含有量は、所望する特性に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、樹脂組成物中の樹脂固形分を100質量部とした場合、1〜90質量部が好ましい。
本実施形態に用いられる充填材(C)としては、公知のものを適宜使用することができ、その種類は特に限定されず、当業界において一般に使用されているものを好適に用いることができる。具体的には、天然シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、アエロジル、中空シリカ等のシリカ類、ホワイトカーボン、チタンホワイト、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、凝集窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム加熱処理品(水酸化アルミニウムを加熱処理し、結晶水の一部を減じたもの)、ベーマイト、水酸化マグネシウム等の金属水和物、酸化モリブデンやモリブデン酸亜鉛等のモリブデン化合物、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、アルミナ、クレー、カオリン、タルク、焼成クレー、焼成カオリン、焼成タルク、マイカ、E−ガラス、A−ガラス、NE−ガラス、C−ガラス、L−ガラス、D−ガラス、S−ガラス、M−ガラスG20、ガラス短繊維(Eガラス、Tガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス等のガラス微粉末類を含む。)、中空ガラス、球状ガラスなど無機系の充填材の他、スチレン型、ブタジエン型、アクリル型などのゴムパウダー、コアシェル型のゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー、シリコーンゴムパウダー、シリコーン複合パウダーなど有機系の充填材などが挙げられる。これらの充填材は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、シリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイト、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムからなる群から選択される1種又は2種以上が好適である。これらの充填材を使用することで、樹脂組成物の熱膨張特性、寸法安定性、難燃性などの特性が向上する。
本実施形態の樹脂組成物における充填材(C)の含有量は、所望する特性に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、樹脂組成物中の樹脂固形分を100質量部とした場合、50〜1600質量部が好ましい。含有量を50〜1600質量部とすることで、樹脂組成物の成形性が良好となる。
ここで充填材(C)を使用するにあたり、シランカップリング剤や湿潤分散剤を併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に使用されているものを好適に用いることができ、その種類は特に限定されない。具体的には、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシランなどのアミノシラン系、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシシラン系、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルートリ(β−メトキシエトキシ)シランなどのビニルシラン系、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩などのカチオニックシラン系、フェニルシラン系などが挙げられる。シランカップリング剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、湿潤分散剤としては、一般に塗料用に使用されているものを好適に用いることができ、その種類は特に限定されない。好ましくは、共重合体ベースの湿潤分散剤が使用され、その具体例としては、ビックケミー・ジャパン(株)製のDisperbyk−110、111、161、180、BYK−W996、BYK−W9010、BYK−W903、BYK−W940などが挙げられる。湿潤分散剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
さらに、本実施形態の樹脂組成物においては、所期の特性が損なわれない範囲において、上記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)以外のエポキシ樹脂(以下、「他のエポキシ樹脂」という。)、マレイミド化合物、フェノール樹脂、オキセタン樹脂、ベンゾオキサジン化合物、重合可能な不飽和基を有する化合物等を含有していてもよい。
これらを併用することで、樹脂組成物を硬化した硬化物の難燃性、低誘電性など所望する特性を向上させることができる。
他のエポキシ樹脂としては、一般式(1)で表されるものでなく、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば、公知のものを適宜使用することができ、その種類は特に限定されない。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエステル、ブタジエンなどの二重結合をエポキシ化した化合物、水酸基含有シリコーン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂のなかでは、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂が難燃性、耐熱性の面で好ましい。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
マレイミド化合物としては、1分子中に1個以上のマレイミド基を有する化合物であれば、一般に公知のものを使用できる。例えば、4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、フェニルメタンマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル)プロパン、3,3−ジメチル−5,5−ジエチル−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4−ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ポリフェニルメタンマレイミド、ノボラック型マレイミド、ビフェニルアラルキル型マレイミド、及びこれらマレイミド化合物のプレポリマー、もしくはマレイミド化合物とアミン化合物のプレポリマー等が挙げられるが、特に制限されるものではない。これらのマレイミド化合物は1種又は2種以上混合して用いることができる。この中でも、ノボラック型マレイミド化合物、ビフェニルアラルキル型マレイミド化合物が特に好ましい。
フェノール樹脂としては、1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有するフェノール樹脂であれば、一般に公知のものを使用できる。例えば、ビスフェノールA型フェノール樹脂、ビスフェノールE型フェノール樹脂、ビスフェノールF型フェノール樹脂、ビスフェノールS型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック型フェノール樹脂、グリシジルエステル型フェノール樹脂、アラルキルノボラック型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、多官能フェノール樹脂、ナフトール樹脂、ナフトールノボラック樹脂、多官能ナフトール樹脂、アントラセン型フェノール樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、ナフトールアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、ポリオール型フェノール樹脂、リン含有フェノール樹脂、水酸基含有シリコーン樹脂類等が挙げられるが、特に制限されるものではない。これらのフェノール樹脂の中では、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、ナフトールアラルキル型フェノール樹脂、リン含有フェノール樹脂、水酸基含有シリコーン樹脂が難燃性の点で好ましい。これらのフェノール樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
オキセタン樹脂としては、一般に公知のものを使用できる。例えば、オキセタン、2−メチルオキセタン、2,2−ジメチルオキセタン、3−メチルオキセタン、3,3−ジメチルオキセタン等のアルキルオキセタン、3−メチル−3−メトキシメチルオキセタン、3,3−ジ(トリフルオロメチル)パーフルオキセタン、2−クロロメチルオキセタン、3,3−ビス(クロロメチル)オキセタン、ビフェニル型オキセタン、OXT−101(東亞合成製商品名)、OXT−121(東亞合成製商品名)等が挙げられるが、特に制限されるものではない。これらのオキセタン樹脂は、1種又は2種以上混合して用いることができる。
ベンゾオキサジン化合物としては、1分子中に2個以上のジヒドロベンゾオキサジン環を有する化合物であれば、一般に公知のものを用いることができる。例えば、ビスフェノールA型ベンゾオキサジンBA−BXZ(小西化学製商品名)ビスフェノールF型ベンゾオキサジンBF−BXZ(小西化学製商品名)、ビスフェノールS型ベンゾオキサジンBS−BXZ(小西化学製商品名)、P−d型ベンゾオキサジン(四国化成工業製商品名)、F−a型ベンゾオキサジン(四国化成工業製商品名)等が挙げられるが、特に制限されるものではない。これらのベンゾオキサジン化合物は、1種又は2種以上混合して用いることができる。
重合可能な不飽和基を有する化合物としては、一般に公知のものを使用できる。例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル等のビニル化合物、メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の1価又は多価アルコールの(メタ)アクリレート類、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート類、ベンゾシクロブテン樹脂、(ビス)マレイミド樹脂等が挙げられるが、特に制限されるものではない。これらの不飽和基を有する化合物は、1種又は2種以上混合して用いることができる。
また、本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて、硬化速度を適宜調節するための硬化促進剤を含有していてもよい。この硬化促進剤としては、シアン酸エステル化合物やエポキシ樹脂等の硬化促進剤として一般に使用されているものを好適に用いることができ、その種類は特に限定されない。その具体例としては、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、アセチルアセトン鉄、オクチル酸ニッケル、オクチル酸マンガン等の有機金属塩類、フェノール、キシレノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、オクチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール化合物、1−ブタノール、2−エチルヘキサノール等のアルコール類、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類及びこれらのイミダゾール類のカルボン酸もしくはその酸無水類の付加体等の誘導体、ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン類、ホスフィン系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、ホスホニウム塩系化合物、ダイホスフィン系化合物等のリン化合物、エポキシ−イミダゾールアダクト系化合物、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシカーボネート等の過酸化物、又はアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。硬化促進剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、硬化促進剤の使用量は、樹脂の硬化度や樹脂組成物の粘度等を考慮して適宜調整でき、特に限定されないが、通常は、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、0.005〜10質量部である。
さらに、本実施形態の樹脂組成物は、所期の特性が損なわれない範囲において、他の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂及びそのオリゴマー、エラストマー類などの種々の高分子化合物、難燃性化合物、各種添加剤等を併用することができる。これらは一般に使用されているものであれば、特に限定されるものではない。例えば、難燃性化合物としては、4,4’−ジブロモビフェニル等の臭素化合物、リン酸エステル、リン酸メラミン、リン含有エポキシ樹脂、メラミンやベンゾグアナミンなどの窒素化合物、オキサジン環含有化合物、シリコーン系化合物等が挙げられる。また、各種添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、流動調整剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤、重合禁止剤等が挙げられる。これらは、所望に応じて1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて、有機溶剤を使用することができる。この場合、本実施形態の樹脂組成物は、上述した各種樹脂成分の少なくとも一部、好ましくは全部が有機溶剤に溶解あるいは相溶した態様(溶液あるいはワニス)として用いることができる。有機溶剤としては、上述した各種樹脂成分の少なくとも一部、好ましくは全部を溶解あるいは相溶可能なものであれば、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されるものではない。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ系溶媒、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステル系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類などの極性溶剤類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等の無極性溶剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本実施形態の樹脂組成物は、常法にしたがって調製することができ、一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)及びシアン酸エステル化合物(B)、上述したその他の任意成分を均一に含有する樹脂組成物が得られる方法であれば、その調製方法は特に限定されない。例えば、一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)及びシアン酸エステル化合物(B)を順次溶剤に配合し、十分に撹拌することで本実施形態の樹脂組成物を容易に調製することができる。
なお、樹脂組成物の調製時に、各成分を均一に溶解或いは分散させるための公知の処理(撹拌、混合、混練処理など)を行うことができる。例えば、充填材(C)の均一分散にあたり、適切な撹拌能力を有する撹拌機を付設した撹拌槽を用いて撹拌分散処理を行うことで、樹脂組成物に対する分散性が高められる。上記の撹拌、混合、混練処理は、例えば、ボールミル、ビーズミルなどの混合を目的とした装置、または、公転・自転型の混合装置などの公知の装置を用いて適宜行うことができる。
本実施形態の樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁層、半導体パッケージ用材料として用いることができる。例えば、本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を基材に含浸又は塗布し乾燥することでプリプレグとすることができる。
また、本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を乾燥することで樹脂シートとすることができる。樹脂シートは、ビルドアップ用フィルム又はドライフィルムソルダーレジストとして使用することができる。
また、本実施形態の樹脂組成物は溶剤を乾燥しただけの未硬化の状態で使用することもできるし、必要に応じて半硬化(Bステージ化)の状態にして使用することもできる。
以下、本実施形態のプリプレグについて詳述する。本実施形態のプリプレグは、上述した本実施形態の樹脂組成物を基材に含浸又は塗布させたものである。プリプレグの製造方法は、本実施形態の樹脂組成物と基材とを組み合わせてプリプレグを製造する方法であれば、特に限定されない。具体的には、本実施形態の樹脂組成物を基材に含浸又は塗布させた後、120〜220℃で2〜15分程度乾燥させる方法等によって半硬化させることで、本実施形態のプリプレグを製造することができる。このとき、基材に対する樹脂組成物の付着量、すなわち半硬化後のプリプレグの総量に対する樹脂組成物量(充填材(C)を含む。)は、20〜99質量%の範囲であることが好ましい。
本実施形態のプリプレグを製造する際に使用する基材としては、各種プリント配線板材料に用いられている公知のものを使用することができる。例えば、Eガラス、Dガラス、Lガラス、Sガラス、Tガラス、Qガラス、UNガラス、NEガラス、球状ガラス等のガラス繊維、クォーツ等のガラス以外の無機繊維、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル等の有機繊維、液晶ポリエステル等の織布が挙げられるが、これらに特に限定されるものではない。基材の形状としては、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等が知られているが、いずれであっても構わない。基材は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、基材の厚みは、特に限定されないが、積層板用途であれば0.01〜0.2mmの範囲が好ましく、特に超開繊処理や目詰め処理を施した織布が、寸法安定性の観点から好適である。さらに、エポキシシラン処理、アミノシラン処理などのシランカップリング剤などで表面処理したガラス織布は吸湿耐熱性の観点から好ましい。また、液晶ポリエステル織布は、電気特性の面から好ましい。
また、本実施形態の金属箔張積層板は、上述したプリプレグを少なくとも1枚以上重ね、その片面もしくは両面に金属箔を配して積層成形したものである。具体的には、前述のプリプレグを一枚あるいは複数枚重ね、その片面もしくは両面に銅やアルミニウムなどの金属箔を配置して、積層成形することにより作製することができる。ここで使用する金属箔は、プリント配線板材料に用いられているものであれば、特に限定されないが、圧延銅箔や電解銅箔等の銅箔が好ましい。また、金属箔の厚みは、特に限定されないが、2〜70μmが好ましく、3〜35μmがより好ましい。成形条件としては、通常のプリント配線板用積層板及び多層板の手法が適用できる。例えば、多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機などを使用し、温度180〜350℃、加熱時間100〜300分、面圧20〜100kg/cm2で積層成形することにより本発明の金属箔張積層板を製造することができる。また、上記のプリプレグと、別途作製した内層用の配線板とを組み合わせて積層成形することにより、多層板とすることもできる。多層板の製造方法としては、例えば、上述したプリプレグ1枚の両面に35μmの銅箔を配置し、上記条件にて積層形成した後、内層回路を形成し、この回路に黒化処理を実施して内層回路板を形成し、その後、この内層回路板と上記のプリプレグとを交互に1枚ずつ配置し、さらに最外層に銅箔を配置して、上記条件にて好ましくは真空下で積層成形することにより、多層板を作製することができる。
そして、本実施形態の金属箔張積層板は、プリント配線板として好適に使用することができる。プリント配線板は、常法にしたがって製造することができ、その製造方法は特に限定されない。以下、プリント配線板の製造方法の一例を示す。まず、上述した銅張積層板等の金属箔張積層板を用意する。次に、金属箔張積層板の表面にエッチング処理を施して内層回路の形成を行い、内層基板を作製する。この内層基板の内層回路表面に、必要に応じて接着強度を高めるための表面処理を行い、次いでその内層回路表面に上述したプリプレグを所要枚数重ね、さらにその外側に外層回路用の金属箔を積層し、加熱加圧して一体成形する。このようにして、内層回路と外層回路用の金属箔との間に、基材及び熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層が形成された多層の積層板が製造される。次いで、この多層の積層板にスルーホールやバイアホール用の穴あけ加工を施した後、この穴の壁面に内層回路と外層回路用の金属箔とを導通させるめっき金属皮膜を形成し、さらに外層回路用の金属箔にエッチング処理を施して外層回路を形成することで、プリント配線板が製造される。
上記の製造例で得られるプリント配線板は、絶縁層と、この絶縁層の表面に形成された導体層とを有し、絶縁層が上述した本実施形態の樹脂組成物を含む構成となる。すなわち、上述した本実施形態のプリプレグ(基材及びこれに含浸又は塗布された本実施形態の樹脂組成物)、上述した本実施形態の金属箔張積層板の樹脂組成物の層(本発明の樹脂組成物からなる層)が、本実施形態の樹脂組成物を含む絶縁層から構成されることになる。
他方、本実施形態の樹脂シートは、上記の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を支持体に塗布し乾燥することで得ることができる。ここで用いる支持体としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体フィルム、並びにこれらのフィルムの表面に離型剤を塗布した離型フィルム、ポリイミドフィルム等の有機系のフィルム基材、銅箔、アルミ箔等の導体箔、ガラス板、SUS板、FRP等の板状の無機系のフィルムが挙げられる。塗布方法としては、例えば、上記の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、バーコーター、ダイコーター、ドクターブレード、ベーカーアプリケーター等で支持体上に塗布することで、支持体と樹脂シートが一体となった積層シートを作製する方法が挙げられる。また、乾燥後に、積層シートから支持体を剥離又はエッチングすることで、単層シート(樹脂シート)とすることもできる。なお、上記の本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、シート状のキャビティを有する金型内に供給し乾燥する等してシート状に成形することで、支持体を用いることなく単層シート(樹脂シート)を得ることもできる。
なお、本実施形態の樹脂シート(単層あるいは積層シート)の作製において、溶剤を除去する際の乾燥条件は、特に限定されないが、低温であると樹脂組成物中に溶剤が残り易く、高温であると樹脂組成物の硬化が進行することから、20℃〜200℃の温度で1〜90分間が好ましい。また、本実施形態の樹脂シート(単層あるいは積層シート)の樹脂層の厚みは、本実施形態の樹脂組成物の溶液の濃度と塗布厚みにより調整することができ、特に限定されないが、一般的には塗布厚みが厚くなると乾燥時に溶剤が残り易くなることから、0.1〜500μmが好ましい。
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(合成例1)シアン酸エステル化合物の合成
1−ナフトールアラルキル樹脂(新日鉄住金化学株式会社製)300g(OH基換算1.28mol)及びトリエチルアミン194.6g(1.92mol)(ヒドロキシ基1molに対して1.5mol)をジクロロメタン1800gに溶解させ、これを溶液1とした。
塩化シアン125.9g(2.05mol)(ヒドロキシ基1molに対して1.6mol)、ジクロロメタン293.8g、36%塩酸194.5g(1.92mol)(ヒドロキシ基1モルに対して1.5モル)、水1205.9gを、撹拌下、液温−2〜−0.5℃に保ちながら、溶液1を30分かけて注下した。溶液1注下終了後、同温度にて30分撹拌した後、トリエチルアミン65g(0.64mol)(ヒドロキシ基1molに対して0.5mol)をジクロロメタン65gに溶解させた溶液(溶液2)を10分かけて注下した。溶液2注下終了後、同温度にて30分撹拌して反応を完結させた。
その後反応液を静置して有機相と水相を分離した。得られた有機相を水1300gで5回洗浄した。水洗5回目の廃水の電気伝導度は5μS/cmであり、水による洗浄により、除けるイオン性化合物は十分に除けられたことを確認した。
水洗後の有機相を減圧下で濃縮し、最終的に90℃で1時間濃縮乾固させて目的とするナフトールアラルキル型のシアン酸エステル化合物(SNCN)(橙色粘性物)を331g得た。得られたSNCNの質量平均分子量Mwは600であった。また、SNCNのIRスペクトルは2250cm−1(シアン酸エステル基)の吸収を示し、且つ、ヒドロキシ基の吸収は示さなかった。
(実施例1)
合成例1により得られたSNCN50質量部、式(5)で表される、エポキシ樹脂(D.E.R.6508(エポキシ当量400g/eq.)、Dow Chemical社製)50質量部、溶融シリカ(SC2050MB、アドマテックス製)100質量部、オクチル酸亜鉛(日本化学産業(株)製)0.10質量部を混合してワニスを得た。このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ0.1mmのEガラス織布に含浸塗工し、150℃で5分間加熱乾燥して、樹脂含有量50質量%のプリプレグを得た。
(nは1〜7となる構造をとる化合物の混合物である。)
得られたプリプレグを2枚重ねて12μm厚の電解銅箔(3EC−M3−VLP、三井金属(株)製)を上下に配置し、圧力30kgf/cm2、温度220℃で120分間の積層成型を行い、絶縁層厚さ0.2mmの金属箔張積層板を得た。得られた金属箔張積層板を用いて、めっき密着性の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1において、式(5)で表されるエポキシ樹脂を50質量部用いる代わりに、式(5)で表される、エポキシ樹脂(XZ92566(エポキシ当量913g/eq.)、Dow Chemical社製)50質量部、オクチル酸亜鉛を0.05質量部用いた以外は、実施例1と同様にして厚さ0.2mmの金属箔張積層板を得た。得られた金属箔張積層板の評価結果を表1に示す。
(nは1〜7となる構造をとる化合物の混合物である。)
(比較例1)
実施例1において、式(5)で表されるエポキシ樹脂を50質量部用いる代わりに、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC−3000−FH(エポキシ当量320g/eq.)、日本化薬(株)製)50質量部、オクチル酸亜鉛を0.11質量部用いた以外は、実施例1と同様にして厚さ0.2mmの金属箔張積層板を得た。得られた金属箔張積層板の評価結果を表1に示す。
(測定方法及び評価方法)
1)めっきピール強度:実施例1、2及び比較例1で得られた絶縁層厚0.2mmの金属箔張積層板の表層銅箔をエッチングにより除去し、無電解銅めっきプロセス(上村工業製の薬液:MCD−PL、MDP−2、MAT−SP、MAB−4−C、MEL−3−APEA ver.2を使用)にて、約0.5μmの無電解銅めっきを施し、130℃で1時間の乾燥を行った。続いて、電解銅めっきをめっき銅の厚みが18μmになるように施し、180℃で1時間の乾燥を行った。こうして、厚さ0.2mmの絶縁層上に厚さ18μmの導体層(めっき銅)が形成されたサンプルを作製し評価した。めっき銅のピール強度は、JIS C6481に準じて3回測定し、平均値を求めた。電解銅めっき後の乾燥で膨れたサンプルに関しては、膨れていない部分を用いて評価を行った。
表1から明らかなように、本発明の樹脂組成物を用いることで、めっき密着性に優れるプリプレグ及びプリント配線板等を実現できることが確認された。