以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態の防煙たれ壁は、建物内部の天井、壁又は柱の間に配置され、防煙区画を形成するものである。なお、本明細書において、「面内方向」とは、防煙たれ壁の面内方向であり、上下方向、左右方向、いわゆる見付方向等を含む方向のことを意味する。また、「面外方向」とは、前後方向、厚み方向、いわゆる見込方向等を含む面の外側を向く方向のことを意味する。
図1は、本発明の一実施形態に係る防煙たれ壁101を示す正面図である。図1に示すように、防煙たれ壁101は、左右方向に連設されるガラスパネル11と、天井1に固定される上枠12と、連設されるガラスパネル11間に配置される中間部材13と、防煙たれ壁101の左右両側に配置される緩衝部材15と、ガラスパネル11の落下を防止する落下防止部材40と、を備える。
防煙たれ壁101が備える構成について説明する。図2は、本実施形態の防煙たれ壁101の緩衝部材15及び落下防止部材40を示す拡大正面図である。図3は、本実施形態の防煙たれ壁101の緩衝部材15及び落下防止部材40を示す横断面図である。なお、図3ではワイヤ41の図示を省略している。図4は、本実施形態の防煙たれ壁101の落下防止部材40を示す縦断面図である。
図2に示すように、ガラスパネル11は、横長の板状に形成されており、その上端部が上枠12に固定される。ガラスパネル11は、例えば網入りガラスが通常良く用いられる。
上枠12は、天井1にビスにより固定されている。上枠12は、その断面形状が略U字状に形成されており、内側にガラスパネル11の上端部がコーキング21を介して固定される。図2及び図4に示すように、本実施形態の上枠12は、ガラスパネル11の上端部が差し込まれる上枠本体部120と、上枠本体部120の外側面から水平方向に延出し、天井1に接触する天井接触片121と、を備える。
中間部材13は、その上端部が上枠12又は天井1に固定される縦長の部材であり、連設されるガラスパネル11の間に配置される。中間部材13の下端部には下部カバー22が固定されている。下部カバー22は、中間部材13の下端部から左右方向の両側に延び出ており、中間部材13に差し込まれるガラスパネル11の下端部を下から支持する。なお、中間部材13を介することなく、隣接するガラスパネル11間をシーリングによって接着する構成としてもよい。
また、壁に対向するガラスパネル11の壁2側の下端部には、支持軸14(図1及び図2において図示省略)を介して下部カバー23が配置される。支持軸14は、上下方向に延びる軸状部材であり、その上端部が上枠12又は天井1に固定され、下端部が下部カバー23に固定される。
緩衝部材15は、ガラスパネル11と壁2の間の隙間を塞ぐため、防煙たれ壁101の左右両側にそれぞれ配置される。
本実施形態の緩衝部材15は、防煙シート31と、防煙シート31の一側の端部をガラスパネル11に固定するパネル側固定部材32と、防煙シート31の他側の端部を壁2に固定する壁側固定部材33と、を備える。
防煙シート31は、不燃性(難燃性)及び可撓性を有する部材で構成される面材である。本実施形態では、防煙シート31は、透明又は半透明なガラスクロスに塩ビ又は合成樹脂コーティングしたものが用いられているが、これに限らず、不燃性及び可撓性を有すれば、不透明でもかまわない。
パネル側固定部材32は、防煙シート31をガラスパネル11とともに見込方向で挟み込むことで固定する。本実施形態のパネル側固定部材32は、上下方向に細長の板状の部材である。
壁側固定部材33は、壁2にビスにより固定されており、防煙シート31の左右方向の壁側の端部が固定される。本実施形態の壁側固定部材33は、2つ一組の平面視L字状の部材である。防煙シート31の壁2側の端部は、2つの壁側固定部材33によって見込方向で挟み込まれ固定されている。
このように、防煙シート31は、そのガラスパネル11側の端部がパネル側固定部材32によって固定されるとともに、壁2側の端部が壁側固定部材33によって固定されることにより、ガラスパネル11と壁2の間の隙間を塞いだ状態となる。
次に、落下防止部材40について説明する。本実施形態の落下防止部材40は、1つのガラスパネル11に対して2つ1組で配置されており、ガラスパネル11の両端部に位置している。
落下防止部材40は、正面側及び背面側にそれぞれ配置される2本のワイヤ41と、2本のワイヤ41によって吊り下げられるガラス受け部43と、を備える。
上枠12の正面及び背面にはワイヤ41を固定するための上部固定具42がそれぞれ設けられる。上枠12の正面側に配置される上部固定具42にワイヤ41の上側(一側)の端部が固定されるとともに、上枠12の背面側に配置される上部固定具42に別のワイヤ41の上側(一側)の端部が固定される。
ガラス受け部43は、左右方向視で略U字状の断面形状に形成されており、内側にガラスパネル11の下端部が差し込まれる。ガラス受け部43の正面及び背面にはワイヤ41を固定するための下部固定具44がそれぞれ設けられる。
上述の2本のワイヤ41のうち、正面側に配置されるワイヤ41の下側(他側)の端部が正面側の下部固定具44に固定されるとともに、背面側に配置されるワイヤ41の下側(他側)の端部が背面側の下部固定具44に固定される。本実施形態では、上部固定具42、下部固定具44及びワイヤ41は、いずれもリング状になっており、それぞれの輪を通すことで固定されている。2本のワイヤ41には、常に適当な張力を持たせて吊り込むことが好ましい。
以上説明した本実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
即ち、本実施形態の防煙たれ壁101は、天井1に固定される上枠12と、上枠12を介して天井1に固定されるガラスパネル11と、可撓性を有する防煙シート31によって構成され、ガラスパネル11と壁2(又は柱)の間の隙間を塞ぐ緩衝部材15と、一側の端部が上枠12(又は天井)に接続されるとともに他側の端部がガラスパネル11の下端部の下に配置されるガラス受け部43に接続されるワイヤ41により、上枠12からのガラスパネル11の脱落を防止する落下防止部材40と、を備える。
これにより、ガラスパネル11の面内方向や面外方向の動きをある程度許容する構造の落下防止部材40によって上枠12からのガラスパネル11の脱落を確実に防止できるとともに、壁又は柱の間の隙間を塞ぐ緩衝部材15を構成する防煙シート31の可撓性により、地震等に起因するガラスパネル11の変位を吸収できる。従って、圧迫荷重によるガラスパネル11の破損に起因する破片の落下も防ぐことができる。
また、本実施形態の防煙たれ壁101は、ガラス受け部43は、ガラスパネル11の厚み方向の両側のそれぞれに配置される2本のワイヤによってガラスパネル11の正面側及び背面側(厚み方向)の両側で吊り下げ支持される。
これにより、ワイヤ41の上側の端部を上枠12に固定すればよいので、天井1に取り付ける場合に比べて施工作業を容易に行うことができる。天井1の構造に依存しないので、既設の防煙たれ壁への適用も容易である。
次に、本実施形態と異なる構成について説明する。なお、以下の説明において、既に説明した構成と共通又は同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する場合がある。
まず、本実施形態の緩衝部材15とは異なる構成の緩衝部材の第1変形例、第2変形例、第3変形例について説明する。なお、落下防止部材40の構成は本実施形態と同様である。
図5は、第1変形例の緩衝部材15aを示す図である。図5中の(a)は、第1変形例の緩衝部材15aの拡大正面図であり、図5中の(b)は、第1変形例の緩衝部材15aの横断面図である。
図5中の(a)及び(b)に示すように、第1変形例の緩衝部材15aは、ガラスパネル11側にパネル側防煙シート31aと、壁2側に配置される2枚の挟持側防煙シート31bと、を備える。なお、本実施形態のパネル側防煙シート31a及び2枚の挟持側防煙シート31bは、いずれも上記実施形態の防煙シート31と同じ透明又は半透明な不燃材により構成される。
パネル側防煙シート31aは、ガラスパネル11側の端部(基端部)がパネル側固定部材32を介して固定される一方、壁2側の端部(先端部)については固定されていない。これに対して挟持側防煙シート31bは、壁2側の端部が壁側固定部材33によって固定される。挟持側防煙シート31bは、2枚重ねた状態でパネル側防煙シート31aに対向するように壁2に固定されている。
第1変形例のパネル側防煙シート31aは、壁2側の端部が2枚の挟持側防煙シート31bに厚み方向(見込方向)で挟み込まれた状態で保持されることにより、ガラスパネル11と壁2の間の隙間を塞いでいる。
第1変形例においても、振動発生時にガラスパネル11が面内方向に変位したとしても、パネル側防煙シート31aが2枚のパネル側防煙シート31aの間で水平方向に移動するだけなので、ガラスパネル11に影響を与えることなく、振動による変位を吸収できる。また、振動発生時にガラスパネル11が面外方向に変位したとしても、パネル側防煙シート31a及び2枚の挟持側防煙シート31bは、何れも可撓性を有するシート状に構成されているので、面外方向への振動を壁2に伝達することがない。また、振動後においても、パネル側防煙シート31a及び挟持側防煙シート31bの復元力によって元の位置に戻るのでガラスパネル11と壁2の間に隙間が生じることもない。また、壁2が傾いていたとしても、その傾きを挟持側防煙シート31bがパネル側防煙シート31aを挟み込む量で吸収できるので、取付位置の調整も容易である。第1変形例では挟持側防煙シート31bを壁側に設けたが、挟持側防煙シート31bをパネル側に設けてもよい。
図6は、第2変形例の緩衝部材15bを示す図である。図6中の(a)は、第2変形例の緩衝部材15bの拡大正面図であり、図6中の(b)は、第2変形例の緩衝部材15bの横断面図である。
図6中の(a)及び(b)に示すように、第2変形例の緩衝部材15bは、蛇腹状の防煙シート31cと、防煙シート31cの一側の端部をガラスパネル11に固定するパネル側固定部材32と、防煙シート31cの他側の端部を壁2に固定する壁側固定部材33と、を備える。
第2変形例の緩衝部材15bにおいても、防煙シート31cが蛇腹状になっているので、ガラスパネル11の面内方向の振動を効果的に吸収できる。また、防煙シート31の蛇腹部分は、面外方向にも容易に変形できるので、振動に起因するガラスパネル11の変位も効果的に吸収できるようになっている。
図7は、第3変形例の緩衝部材15cを示す図である。図7中の(a)は、第3変形例の緩衝部材15dの拡大正面図であり、図7中の(b)は、第3変形例の緩衝部材15cの横断面図である。
図7中の(a)及び(b)に示すように、第3変形例の緩衝部材15cは、平面視で略U字状の防煙シート31dと、ガラスパネル11の正面側及び背面側のそれぞれに配置されるパネル側固定部材32aと、を備える。
防煙シート31dは、一枚の不燃シートをU字に曲げて構成されている。防煙シート31dは、ガラスパネル11の壁2側の端部がU字の内側に入り込んだ状態で正面側及び背面側に配置されるパネル側固定部材32aによってガラスパネル11に固定される。防煙シート31dの先端部は、壁2側に固定されておらず、当接することでガラスパネル11と壁2の間の隙間を塞いでいる。この第3変形例の緩衝部材15cにおいても、ガラスパネル11の面内方向及び面外方向の変位を吸収することができる。また、壁2側に防煙シート31dを固定するための部材を配置する必要もないので、緩衝部材15cの設置作業も容易に行うことができる。
次に、本実施形態の落下防止部材40と異なる構成の落下防止部材の第1変形例、第2変形例、第3変形例について説明する。
図8は、第1変形例の落下防止部材40aを示す図である。図8中の(a)は、第1変形例の防煙たれ壁の縦断面図であり、図8中の(b)は、第1変形例の落下防止部材40aの平面図であり、図8中の(c)は、第1変形例の落下防止部材40aのガラス受け部43を示す拡大正面図である。
図8中の(a)〜(c)に示すように、第1変形例の落下防止部材40aは、ブラケット50を介してワイヤ41の上側の端部が上枠12に固定される。ブラケット50は、図8(a)の見付方向で見た断面形状が、天井1から下側に延びた後、上枠12から離れる方向(水平方向)に延出するL字状になっている。ブラケット50は、上枠12における正面及び背面のそれぞれに固定されており、厚み方向においてガラスパネル11から離れる方向に延び出ている。
ワイヤ41の上側の端部は輪411になっており下側の端部も輪412になっている。ブラケット50の先端部にはワイヤ41の輪411の部分を固定するための孔(図示省略)が設けられる。ワイヤ41の下側の端部は、ガラス受け部43に設けられる下部固定具44aに固定される。本実施形態では、ワイヤ41の下側の端部は輪412になっており、輪412に通された止め金具45を介して下部固定具44aに固定される。止め金具45はリング状であってもよいし、いわゆるスプリングフックを用いてもよい。
図8(a)の見付方向で見ると、ガラス受け部43側から上枠12側に進むにつれてワイヤ41がガラスパネル11から離れており、図4に示す実施形態に比べワイヤ41がガラスパネル11に対して角度をつけて接続されている。これによって、面外方向のガラスパネル11の振動も抑制することができる。
図9は、第2変形例の落下防止部材40bを示す図である。図9中の(a)は、第2変形例の防煙たれ壁の縦断面図であり、図9中の(b)は、第2変形例の落下防止部材40bの平面図であり、図9中の(c)は、第2変形例の落下防止部材40bのガラス受け部43bを示す拡大正面図である。
図9中の(a)〜(c)に示すように、落下防止部材40bは、上枠12の天井接触片121に固定されるブラケット50aにワイヤ41の上側の端部が固定される。ブラケット50aは、図9(a)の見付方向で見た断面形状が上枠12から離れる方向(水平方向)に延びた後、下側に屈曲するL字状になっている。ブラケット50は、上枠12の正面側及び背面側の天井接触片121のそれぞれに固定されている。
第2変形例の落下防止部材41bのガラス受け部43aは、本体部431と本体部431から上方に進むにつれてガラスパネル11から離れるように傾斜する傾斜部432と、から構成される。ワイヤ41の下側の端部は傾斜部432に形成された貫通孔433に輪412の部分が通されることで固定される。
第2変形例の落下防止部材40bにおいても、図9(a)の見付方向で見ると、ガラス受け部43a側から上枠12側に進むにつれてワイヤ41がガラスパネル11から離れており、図4に示す実施形態に比べワイヤ41がガラスパネル11に対して角度をつけて接続されている。これによって、面外方向のガラスパネル11の振動も抑制することができる。
図10は、第3変形例の落下防止部材40cを示す図である。図10中の(a)は、第3変形例の防煙たれ壁の縦断面図であり、図10中の(b)は、第3変形例の落下防止部材40cの平面図であり、図10中の(c)は、第3変形例の天井1に固定されるブラケット51の拡大図であり、図10中の(d)は、第3変形例の落下防止部材40cのガラス受け部43bを示す拡大正面図である。
図10中の(a)〜(d)に示すように、第3変形例の落下防止部材40cは、ワイヤ41の上側の端部を固定するブラケット51がネジ52によって天井1を受けている下地材に直接固定されている。また、ガラス受け部43bは、本体部434と、本体部434の端部から水平方向に延び出る水平部435と、からなる。ワイヤ41は、その上側の端部はブラケット51に固定されており、下側の端部が水平部435に固定されている。第3変形例の落下防止部材41cでは、天井1にワイヤ41の上側の端部が固定されるので、図8及び図9に示す変形例に比べ、ガラスパネル11に対するワイヤ41の傾斜角度を大きくすることが可能になっている。
以上説明した第1変形例から第3変形例の落下防止部材40a〜cにおいても、上枠12からのガラスパネル11の脱落を確実に防止することができる。なお、上記実施形態及び変形例の落下防止部材は、いずれもガラスパネル11の下端部の一部を覆う構成であるが、この構成に限定されない。
次に、1つのガラスパネル11に対してガラス受け部43cの数を1つにした第4変形例について説明する。図11は、第4変形例の落下防止部材を示す防煙たれ壁101の拡大正面図である。図11に示すように、第4変形例の落下防止部材40dは、ガラスパネル11の下端部の略全域に設けられている。第4変形例のガラス受け部43cには、ワイヤ41の下側の端部を固定する下部固定具44が正面側及び背面側のそれぞれに2箇所ずつ設けられる。なお、図11のガラス受け部43cの断面形状は上記実施形態と同様であり、ワイヤ41の上端部は天井1に固定されているものとする。この第4変形例においても、緩衝部材15によるガラスパネル11の変位吸収を阻害することなく、上枠12からのガラスパネル11の脱落を確実に防止することができる。
以上説明した防煙たれ壁101の実施形態及び変形例は、それぞれ組み合わせて用いることができる。例えば、緩衝部材の第1変形例と落下防止部材の第3変形例を組み合わせることも可能である。このように、防煙たれ壁101の構成は、事情に応じて適宜変更することができる。そして、各構成においても、上記実施形態で説明したものと同様の効果を奏する。
また、上記実施形態及び変形例では、ガラス受け部43が正面側及び背面側の両方でワイヤ41に支持される例を説明したが、この構成に限定されない。ガラス受け部43の正面側又は背面側のいずれかだけにワイヤ41を固定する片持ち支持としてもよい。例えば、1枚のガラスパネル11において右側では正面側でガラス受け部43に接続されるワイヤ41が配置され、左側には背面側でガラス受け部に接続されるワイヤ41が配置されるようなチドリ配置にしてもよい。また、ワイヤ41に替えて不燃性の紐や棒状の部材を用いてガラス受け部43を支持する構成としてもよい。更に、ガラス受け部43を省略して1本のワイヤを正面側から背面側にわたしてガラスパネル11の落下を防止する構成にすることもできる。この場合、ワイヤにおけるガラスパネル11の下端部に当接する部分がガラス受け部となる。
次に、防煙たれ壁の施工方法について説明する。図12は、第1実施形態の防煙たれ壁の施工方法の流れを示す説明図である。図12では、壁2側のガラスパネル11を緩衝部材15dに交換する流れが段階的に示されている。
図12中の(a)では、ガラスパネル11のみが連設されており、緩衝部材を備えない施行前(従来)の防煙たれ壁が示されている。まず、図12中の(b)に示すように、図12中の(a)の状態から最も壁2側に位置するガラスパネル11を取り外す。図12中の(c)は、取り外したガラスパネル11を示すものである。
図12中の(d)に示すように、ガラスパネル11のサイズに応じた防煙シート31eを用意する。防煙シート31eは、ガラスパネル11よりも左右方向の長さが長く形成されている。この防煙シート31eをガラスパネル11の壁2側の端部と上枠12に固定する。これによって、ガラスパネル11と壁2の間の隙間を塞ぐ緩衝部材15dが設けられた状態となる。防煙シート31eの壁2側の端部(先端部)は、壁2に壁側固定部材33を介して固定する。なお、防煙シート31eは、上記実施形態や緩衝部材の各変形例等で説明したもので同様のものを用いることができる。例えば、第3変形例の緩衝部材15cのように、防煙シート31eの壁側の端部を固定しない構成とすることもできる。図12中の(d)に示すように、緩衝部材15dを取り付けるとともにガラスパネル11の落下を防止する落下防止部材40を取り付ける。
図4を参照しながら落下防止部材40の取付方法について説明する。図4に示すように、ガラスパネル11の下端部にガラス受け部43を掛けてワイヤ41の下端をガラス受け部43に固定するとともに、上枠12にワイヤ41の上端を固定する。ワイヤ41は、ガラスパネル11に沿う又は一定の角度を有するように固定する。図4では、天井に対して角度を有するようにワイヤ41が固定されている。なお、落下防止部材40は、上記実施形態や落下防止部材の各変形例等で説明したものと同様のものを用いることができる。例えば、第3変形例の落下防止部材40cのように、ワイヤ41の上端を天井1に固定してもよい。
第1実施形態では、1枚のガラスパネル11に対して落下防止部材40をガラスパネル11の横幅方向に所定の間隔をあけて複数配置する。ワイヤ41はガラスパネル11の面の前後方向に対して片面、両面、又は交互(チドリ状)にして配置される。第1実施形態では、ガラスパネル11の両面にワイヤ41が存在するようにして全てのガラスパネル11に対して落下防止部材40が配置される。
以上説明したように、第1実施形態では、壁(又は柱)と当接する端部のガラスパネル11を1枚取り外して防煙シート31eに張り替えて左右方向の端部に緩衝部材15dを配置するとともにガラスパネル11に落下防止部材40を配置して防煙たれ壁を構成する。なお、緩衝部材15dは、防煙たれ壁の左右両側に配置される構成に限らず、左右の何れかのみに配置する場合もある。
図13は、第2実施形態の防煙たれ壁の施工方法の流れを示す説明図である。図13では、壁2側のガラスパネル11を緩衝部材15eに交換する流れが段階的に示されている。なお、図13中の(a)〜(c)は、図12中の(a)〜(c)と同様の処理であるので、その詳細な説明は省略する。
図13中の(d)に示すように、ガラスパネル11の壁2側の側部に当たる部分を所定の寸法で切断し、ガラスパネル11の横幅方向を短くする。以下、短くしたものをガラスパネル11aとして説明する。ガラスパネル11aの横幅方向のサイズは、ガラスパネル11の変位量(相間変位量)を考慮して設定されており、所定の方法で切断される。
次に、図13中の(e)に示すように、ガラスパネル11aに防煙シート31fを取り付ける。防煙シート31fは、ガラスパネル11aの切断したガラス部分と同等程度の横幅の防煙シート31fであり、ガラスパネル11aから壁2側に延出するように固定する。図13中の(f)に示すように、防煙シート31fを取り付けたガラスパネル11aを吊り込みなおすとともに、防煙シート31fの先端側の端部を壁(又は柱)に固定して緩衝部材15eを構成する。なお、落下防止部材40の設置方法は、第1実施形態の施工方法と同様である。
図14は、第3実施形態の防煙たれ壁の施工方法の流れを示す説明図である。図14では、壁2側のガラスパネル11を緩衝部材15fに交換する流れが段階的に示されている。なお、図14中の(a)〜(c)は、図12中の(a)〜(c)と同様の処理であるので、その詳細な説明は省略する。
図14中の(d)に示すように、ガラスパネル11を取り外した部分に防煙シート31gを取り付けることによって緩衝部材15fが構成される。防煙シート31gは、その左右両側の端部にシート縦枠311,313がそれぞれ配置され、上端部にシート上枠312が配置される。シート縦枠311はガラスパネル11に固定可能に構成されるとともに、シート縦枠313は壁2(又は柱)に固定可能に構成される。シート上枠312は、上枠12に固定可能に構成される。
このように、第3実施形態の施工方法では、防煙シート31gの上左右の3方が枠によって囲まれており、これらの枠がガラスパネル11を固定していた上枠12や中間部材13等に固定可能に構成されている。なお、落下防止部材40の設置方法は、第1実施形態の施工方法と同様である。
以上説明した第3実施形態の防煙たれ壁101は、緩衝部材15fは、防煙シート31gの三方を囲むシート縦枠311、シート上枠312及びシート縦枠313を更に有し、これらのシート縦枠311,313及びシート上枠312を介して上枠12に固定される。
これにより、ガラスパネル11を取り外した部分にシート縦枠311,313及びシート上枠312を介して緩衝部材15fを迅速かつ容易に取り付けることができ、施工作業をより一層効率化できる。
図15は、第4実施形態の防煙たれ壁の施工方法の流れを示す説明図である。図15では、壁2側のガラスパネル11を緩衝部材15gに交換する流れが段階的に示されている。なお、図15中の(a)〜(c)は、図12中の(a)〜(c)と同様の処理であるので、その詳細な説明は省略する。
図15中の(d)に示すように、ガラスパネル11の壁2側の側部に当たる部分を所定の寸法で切断し、ガラスパネル11の横幅方向を短くする。以下、短くしたものをガラスパネル11aとして説明する。図15中の(e)に示すように、ガラスパネル11aを吊り込み直すとともに、防煙シート31hをガラスパネル11aと壁2の間に固定する。第4実施形態で用いられる防煙シート31hは、ガラスパネル11aの切断したガラス部分と同等程度の横幅である。
防煙シート31hは、その左右両側の端部にシート縦枠311a,313aがそれぞれ配置され、上端部にシート上枠312aが配置される。シート縦枠311aはガラスパネル11a又は中間部材13に固定可能に構成されるとともに、シート縦枠313aは壁2(又は柱)に固定可能に構成される。シート上枠312aは、上枠12に固定可能に構成される。第3実施形態の施工方法と同様に、この構成においても防煙シート31hをガラスパネル11又は中間部材13に接着する手間を省略することができ、緩衝部材15gの設置作業をよりスムーズに行うことができる。なお、落下防止部材40の設置方法は、第1実施形態の施工方法と同様である。
以上説明してきた第1実施形態から第4実施形態の施工方法は、いずれも防煙たれ壁の左右両側の端部に緩衝部材を配置しているが、緩衝部材を中間部にも配置してもよい。次に、中間部に緩衝部材を取り付ける第5実施形態から第7実施形態の施工方法について説明する。
図16は、第5実施形態の防煙たれ壁の施工方法の流れを示す説明図である。図16では、中間部に位置するガラスパネル11を緩衝部材(中間緩衝部材)16に交換する流れが段階的に示されている。
図16中の(a)では、緩衝部材16を設置する前の防煙たれ壁が示されている。まず、図16中の(b)に示すように、図16中の(a)の状態から中間部に位置するガラスパネル11を取り外す。図16中の(c)は、取り外したガラスパネル11を示すものである。図16中の(d)に示すように、ガラスパネル11のサイズに応じた防煙シート31eを用意する。防煙シート31eは、ガラスパネル11への取付け代を確保するため、ガラスパネル11よりも左右方向の長さが長く形成されている。
図16中の(e)に示すように、ガラスパネル11を取り外した部分に防煙シート31eを固定する。防煙シート31eは、両側の端部をガラスパネル11に固定し、上側の端部を上枠12に固定することで、緩衝部材16としてガラスパネル11間の隙間を塞ぐ。防煙シート31eのガラスパネル11への固定方法はパネル側固定部材32(図示省略)を用いる等、適宜の方法を採用することができる。これによって、防煙たれ壁の中間部においても連設されるガラスパネル11の振動の変位を吸収する緩衝部材16が配置されたことになる。緩衝部材16の設置とともに、ガラスパネル11の落下を防止する落下防止部材40を取り付ける。なお、落下防止部材40の設置方法は、第1実施形態と同様である。
以上説明した第5実施形態の防煙たれ壁101は、ガラスパネル11が複数連設されており、可撓性を有する防煙シート31eによって構成され、ガラスパネル11とガラスパネル11の間の隙間を塞ぐ緩衝部材16を更に備える。
これにより、防煙たれ壁101の中間部においてもガラスパネル11の変位を吸収することができ、ガラスパネル11の破損をより確実に防止することができる。
図17は、第6実施形態の防煙たれ壁の施工方法の流れを示す説明図である。図17では、中間部に位置するガラスパネル11を緩衝部材(中間緩衝部材)16aに交換する流れが段階的に示されている。なお、図17中の(a)〜(c)は、図16中の(a)〜(c)と同様の処理であるので、その詳細な説明は省略する。
図17中の(d)に示すように、防煙たれ壁の中間部から取り外したガラスパネル11bの左右両側の側部を切断する。以下、両側部を切断したものをガラスパネル11bとして説明する。このガラスパネル11bの左右両側のそれぞれに防煙シート31gを固定する。防煙シート31gは、ガラスパネル11bより横幅のサイズが短くなっており、ガラスパネル11の変位量(相間変位量)が考慮された長さになっている。
図17中の(e)に示すように、ガラスパネル11を取り外した部分に防煙シート31gを固定したガラスパネル11bを吊り込みなおすとともに防煙シート31gの端部を隣接するガラスパネル11に固定する。防煙シート31gのガラスパネル11への固定は、パネル側固定部材32(図示省略)を介して固定する等、適宜の方法が用いられる。これによって、防煙たれ壁の中間部においても連設されるガラスパネル11の振動の変位を吸収する緩衝部材16aが配置されたことになる。
落下防止部材40は、第1実施形態と同様の方法で設置される。第6実施形態では、緩衝部材16aの一部を構成するガラスパネル11bに対しても落下防止部材40が間隔をあけて2箇所配置される。
図18は、第7実施形態の防煙たれ壁の施工方法の流れを示す説明図である。図18では、中間部に位置するガラスパネル11を緩衝部材(中間緩衝部材)16bに交換する流れが段階的に示されている。なお、図18中の(a)〜(c)は、図16中の(a)〜(c)と同様の処理であるので、その詳細な説明は省略する。
図18中の(d)に示すように、第7実施形態の緩衝部材16bは、中央側防煙シート11cと、中央側防煙シート11cを囲う矩形に枠組みされるパネル縦枠111,113、パネル上枠112、パネル下枠114と、中央側防煙シート11cの左右両側に配置される防煙シート31gと、からなる。
中央側防煙シート11cは、その横幅方向のサイズがガラスパネル11の横幅方向のサイズよりも小さくなるように構成されている。本実施形態の中央側防煙シート11cは、パネル縦枠111,113、パネル上枠112、パネル下枠114の内側を塞ぐように固定されており、上記実施形態の防煙シート31と同様の材料で構成される。
図18中の(e)に示すように、防煙シート31gは、中央側防煙シート11cの両側にそれぞれ固定される。防煙シート31gにより、中央側防煙シート11cがガラスパネル11よりも横幅方向のサイズが小さいために、隣り合うガラスパネル11との間に生じる隙間が塞がれる。防煙シート31gのサイズは、ガラスパネル11の変位量(相間変位量)考慮した所定の寸法で防煙シート31がガラスパネル11側に延出するように固定される。防煙シート31gの先端部は、隣り合うガラスパネル11の端部に固定される。防煙シート31gのガラスパネル11への固定は、パネル側固定部材32(図示省略)を介して固定する等、適宜の方法が用いられる。
以上説明した第1実施形態から第7実施形態の防煙たれ壁101の施工方法は、いずれも、複数連接されるガラスパネル11のうち、壁1(又は柱)に隣接するガラスパネル11を取り外す工程と、可撓性を有する防煙シート31e〜hによって構成され、ガラスパネル11と壁2の間の隙間を塞ぐ緩衝部材15d〜gをガラスパネル11が取り外された部分に設置する工程と、一側の端部が上枠12(又は天井1)に接続されるとともに他側の端部がガラスパネル11の下側に配置されるガラス受け部43に接続されるワイヤ41により、上枠12からのガラスパネル11の脱落を防止する落下防止部材40を取り外されずに残されたガラスパネル11に設置する工程と、含む。
これにより、ガラスパネル11のみで構成されている既設の防煙たれ壁101に対しても、両側又は片側の端部に緩衝部材15を配置することともに落下防止部材40を配置するだけでよいので、短い施工時間でガラスパネル11及びその破片の落下を確実に防止できる構成を実現できる。即ち、地震等による落下対策のため重量の軽い不燃性のシートに既設のガラスパネル11の全てを取り替える場合に比べ、工期の短縮、費用の削減となる。
また、第5実施形態から第7実施形態の防煙たれ壁の施工方法では、複数連接されるガラスパネル11のうち、壁又は柱に隣接していない中間位置のガラスパネル11を取り外す工程と、可撓性を有する防煙シート31e,gによって構成され、ガラスパネル11とガラスパネル11の間の隙間を塞ぐ緩衝部材16、16a,bを中間位置のガラスパネル11が取り外された部分に設置する工程と、を更に含む。
これにより、防煙たれ壁101の中間部においてもガラスパネル11の変位を吸収してガラスパネル11の破損をより確実に防止できる防煙たれ壁の施工をスムーズに行うことができ、工期の短縮、費用の削減を実現できる。
以上、本発明の好ましい実施形態及び変形例について説明したが、本発明は、上述の実施形態や変形例に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。