図1は、第1実施例の動作補助装置の動作補助スーツ10の正面図である。また、図2は、第1実施例の動作補助装置の動作補助スーツ10の背面図である。なお、図2では下肢ベルト18および膝保持具20を取り外した状態を示す。動作補助スーツ10は、動作補助装置の一つの態様である。
動作補助スーツ10は、使用者に装着され、使用者の動作を補助する。とくに、動作補助スーツ10は介護作業における被介護者を移乗させる動作を補助する。被介護者を移乗させる動作とは、例えば介護者が被介護者をベッドから車いすに移す動作である。ここで新たな図面を参照して、移乗動作について説明する。
図3は、介護者による移乗動作について説明する図である。図3(a)に示すように、例えば、介護者は、座っている被介護者に対して両脇に両手を差し込んで、両手で被介護者の上半身を抱える。次に、図3(b)に示すように、介護者は、被介護者を持ち上げ、車いすまで移動させ、被介護者を下ろす。
介護現場では、介護者は、例えば朝昼晩に食堂へ移動させる場合、トイレや風呂場に移動させる場合など、被介護者の移動に応じて移乗動作を1日に何度も行う。そこで、動作補助スーツ10を介護者に装着して、介護者が被介護者を持ち上げる動きを補助し、介護者の腰部の負担を軽減する。
介護者の作業は被介護者の移乗に限られないため、他の介護作業に動作補助スーツ10が干渉しないよう、小型化および軽量化されることが好ましい。例えば、補助スーツが大型であると、風呂場での作業が困難になり、一日に何度も動作補助スーツ10を脱着することになる。そこで、第1実施例の動作補助スーツ10はシンプルな構成で動きやすくなるように、小型化および軽量化を実現している。また、動作補助スーツ10を小型化および軽量化することで安価にできる。
図1および図2に戻る。動作補助スーツ10は、上着12、第1ベルト14、第2ベルト16、下肢ベルト18、膝保持具20、人工筋肉部22、エアタンク24、コネクタ24a、ホルダー26、ケース28、第1接続路30、ベース32、第2接続路34、第1連結部36、第2連結部38、第3連結部40、スイッチ部55およびスイッチ56を備える。
上着12は、使用者の上半身に装着される衣服である。上着12は、使用者にとって装着しやすい前開きであり、装着時にチャックやボタンなどで閉じられる。第1ベルト14および第2ベルト16は、部分的に上着12に縫い付けることで上着12に一体に結合され、背面側から正面側に亘って配設される。なお、変形例では、上着12の肩部の内面にスポンジ状の肩パッドを配置してよい。
第1ベルト14は、背面側上部に位置する第1連結部36に連結される。第1ベルト14は、背面側の第1連結部36から上着12の肩部を通って正面側に延在するベルト肩部42と、胸の位置で周状に延在するベルト胸囲部44と、連結またはその連結を解除可能な第1留め具46とを有する。ベルト肩部42は、少なくとも第1連結部36の近傍の位置で上着12に縫い付けられ、ベルト胸囲部44は背面側で上着12に縫い付けられる。また、変形例では、ベルト肩部42の縫い付けてない個所に、ベルト肩部42を衣服側に抑えるガード部を設けてよい。ガード部は帯状の布材であり、幅方向に配置した状態で両端を衣服に縫い付けられる。衣服とガード部の隙間にベルト肩部42を挿通させることで、ベルト肩部42の幅方向の位置ずれを抑えることができる。
ベルト肩部42およびベルト胸囲部44は正面側で連結される。第1留め具46は、ベルト胸囲部44の正面側中央に設けられ、上着12を装着する前に連結を解除され、上着12を装着した後は連結される。
第2ベルト16は、腰周りの位置に周状に配置され、背面側で第2連結部38に連結する。第2ベルト16は、少なくとも第2連結部38の近傍の位置で上着12に縫い付けられる。なお、第2ベルト16は、第1ベルト14と離間して設けられる態様を示すが、上下に延在するベルトにより第1ベルト14と連結してもよい。
第2ベルト16は、正面側中央に第2留め具48を有する。第2留め具48は、上着12を装着する前に連結を解除され、上着12を装着する際に連結される。第1留め具46および第2留め具48は、例えば、樹脂製のバックルであって、バックルに形成された弾性爪の係止により連結されてよい。
図1および図2には、ベルト肩部42およびベルト胸囲部44や第2ベルト16が上着12の表側に配置されている態様を示すが、部分的に上着12の裏側に配置して第1ベルト14および第2ベルト16を目立たなくしてよい。第1ベルト14および第2ベルト16は、上着12に設けられた孔を貫通して設けられ、上着12の表側に露出する部分と、上着12の裏側で上着12に覆われる部分を有してよい。ベルト胸囲部44は、全て上着12の裏側に配置されてよい。
例えば、上着12の側部に孔を設け、正面側の第1ベルト14を上着12の裏側に配置させることで、正面側から見ると通常の上着を着てるように見え、動作補助スーツ10の装着をわかりづらくし、意匠性を向上できる。これにより、ロボットのように見える大型の補助スーツと比べて、動作補助スーツ10の装着による被介護者に与える威圧感を抑えることができる。また、認知症の患者は目に付く物を把む可能性があり、上着12の正面側のベルトを覆うことで、被介護者に正面側の第1ベルト14や第2ベルト16を引っ張られる可能性を低減できる。
人工筋肉部22は、図2に示すように、長手状に形成され、上着12の背面側に上下方向に沿って配置される。人工筋肉部22は、一対設けられ、略V字状に配置される。人工筋肉部22は、空気圧を利用したものであり、内部に空気が流入する管と、その管を覆う網状のカバーで覆われている。人工筋肉部22は、空気の供給により縮んで第1連結部36および第2連結部38を介して第1ベルト14および第2ベルト16を引く。人工筋肉部22は、収縮状態から空気の排気により元の長さに戻る。
人工筋肉部22の上端部は、第1連結部36に連結され、下端部はベース32を介して第2連結部38に連結される。人工筋肉部22を設けることで、アクチュエータを持たない補助スーツより補助力を高めることができる。空気圧式の人工筋肉部22を用いることで、動作補助スーツ10のアクチュエータを軽量で安価にできる。
人工筋肉部22が縮む際に発生する収縮力は、上方側の第1ベルト14と、下方側の第2ベルト16および下肢ベルト18に入力される。これにより、使用者の背面側から使用者の肩を引っ張る力を発生させ、使用者の持ち上げ動作を補助する。
第1連結部36は、上着12の背面側に設けられ、人工筋肉部22の上端部とベルトとを連結し、または連結を解除する。第1連結部36は、第1ベルト14のベルト肩部42の長さを調節する機能を有する。第2連結部38は、上着12の背面側に一対設けられ、人工筋肉部22の下端部をベース32を介して上着12側の第2ベルト16に連結し、または連結を解除する。第2連結部38は、第2ベルト16の長さを調節する機能を有する。第1連結部36および第2連結部38は、例えば、樹脂製のバックルであって、バックルに形成された弾性爪の係止により連結されてよい。
ベース32は、金属製または樹脂製の平板であり、ベース32の上端部32aが平板から壁状に立設して形成される。上端部32aには人工筋肉部22の下端部が固定される。ベース32の両端が第2連結部38にそれぞれ連結される。ベース32および人工筋肉部22は、第1ベルト14および第2ベルト16のように上着12に縫い付けられていないため、第1連結部36および第2連結部38の連結を解除すれば上着12から取り外せる。
ホルダー26は、第2ベルト16にスライド可能に連結され、エアタンク24を保持する。ホルダー26は、ベース32の両側に一対設けられる。エアタンク24は、第1接続路30および第2接続路34等を介して人工筋肉部22に接続され、人工筋肉部22に供給する圧縮空気を貯める。エアタンク24は、ホルダー26に保持され、ホルダー26から着脱自在である。エアタンク24は、貯めた圧縮空気が使い切られると、取り外されてコンプレッサーにより圧縮空気を注入され、ホルダー26に再度取り付けられる。エアタンク24を動作補助スーツ10に取り付けることで、エアタンク24の代わりに人工筋肉部22を大型のコンプレッサーに接続する場合と比べて、使用者の可動範囲が制限されることなく、使用者が動きやすくなる。
ホルダー26をスライド可能にすることで、使用時にはエアタンク24を背面側にスライドさせて、作業の妨げにならないようにし、交換時にはエアタンク24を使用者の側方にスライドさせて、使用者がエアタンク24を見える位置に移動させ、エアタンク24をコネクタ24aにより第1接続路30から取り外し、ホルダー26から容易に取り外すことができる。
エアタンク24は、コネクタ24aにより管状の第1接続路30および第2接続路34(これらを区別しない場合「接続路」という)により人工筋肉部22に接続される。第1接続路30は、一対のエアタンク24からの管を1つに連通する。第1接続路30は、エアタンク24から脱着可能である。また、第2接続路34は1つの管を2つに分岐して、一対の人工筋肉部22にそれぞれ接続する。なお、第1実施例のエアタンク24は、複数設けられる態様を示すが、この態様に限られず、エアタンク24は1つであってよい。
第1接続路30および第2接続路34の間には、不図示のレギュレータおよびバルブが設けられる。レギュレータおよびバルブは、ケース28に収容される。ケース28は第2接続路34を介してベース32に支持される。また、ケース28には、バルブの開閉を制御する処理部および電源部が設けられる。レギュレータ、バルブおよび処理部から構成される制御部の詳細は後述する。
スイッチ56は、スイッチ部55に接続するように配線される。スイッチ部55は、第2ベルト16に支持され、スイッチ56からの信号を受け取る受信手段として機能する。スイッチ部55は、ケース28内の処理部に接続され、使用者のスイッチ56への入力を受け取ると、処理部に指示信号を送る。スイッチ部55は、例えば、カラビナにより第2ベルト16に掛けるように取り付けられ、第2ベルト16から取り外し可能である。スイッチ部55は、上着12の側部、すなわち使用者の脇の下方の位置に設けられ、エアタンク24およびホルダー26のスライドを大きく妨げない位置に設けられる。スイッチ部55は、スイッチ56とは別の電源スイッチを有してよく、この電源スイッチをオンすると処理部およびスイッチ部55が駆動し、電源スイッチをオフすると処理部およびスイッチ部55の駆動が終了する。図2に示すスイッチ56とスイッチ部55の間は、有線であるが、変形例では無線であってよい。なお、スイッチ部55は第2ベルト16に支持される態様を示したが、この態様に限られず、上着12に支持されてよく、第2ベルト16のガイドに支持させてよい。また、スイッチ部55はケース28に収容されてもよい。
このように、上着12の背面側に人工筋肉部22などのアクチュエータを取り付けることで、装着時の動きやすさを向上できる。また、上着12および各ベルトは軽量で柔軟性があり、空気圧式の人工筋肉部22も軽量であるため、動作補助スーツ10を着たままで他の作業をしやすく、1日中装着したまま作業ができる。また、上着12および人工筋肉部22を自由に配色できるため、使用者が好みの柄を選ぶことができる。図2に示す動作補助スーツ10は、下肢ベルト18の構成を省略されるが、下肢ベルト18について新たな図面を参照して説明する。
図4は、下肢ベルト18および膝保持具20について説明するための図である。図4はケース28、エアタンク24、ホルダー26およびスイッチ部55を省略した動作補助スーツ10の背面図を示す。
下肢ベルト18および膝保持具20は、人工筋肉部22が縮む際に、人工筋肉部22の下端部から収縮力を受ける。下肢ベルト18はベース32を介して人工筋肉部22の下端部に連結され、人工筋肉部22の下端部と膝保持具20とを繋ぐ。膝保持具20は、可撓性を有する布材料やゴム材料により筒状に形成され、下肢ベルト18の下端に結合し、使用者の膝に巻き付いて取り付けられる。人工筋肉部22が縮む際に、人工筋肉部22の下端部から受ける収縮力は、下肢ベルト18および膝保持具20を介して使用者の膝に受け止められる。
下肢ベルト18の上端部は第3連結部40に連結される。第3連結部40は、上着12の背面側に設けられ、人工筋肉部22の下端部をベース32を介して下肢ベルト18に連結し、または連結を解除する。第3連結部40は、下肢ベルト18の長さを調節する機能を有する。第3連結部40は、例えば、樹脂製のバックルであって、バックルに形成された弾性爪の係止により連結されてよい。
下肢ベルト18は、ゴム部材50、規制部材51、環状部52および帯状部54を有する。ゴム部材50と規制部材51は下肢ベルト18に2重に設けられる。ゴム部材50および規制部材51は、上端が第3連結部40に結合し、下端が環状部52に結合する。
ゴム部材50は、伸縮性を有し、使用者の動きを許容する。規制部材51は、ゴム部材50より伸縮性が低く、ゴム部材50の自由長より長い。規制部材51は、ほとんど伸縮性を有しない材料で形成される。規制部材51は、ゴム部材50の過剰な伸びを抑える。これにより、ゴム部材50の伸縮で使用者の動きを許容しつつも、規制部材51がゴム部材50の伸びを規制することで、人工筋肉部22の収縮力を膝保持具20から膝に伝達できる。
帯状部54は、1本であり、環状部52に挿通され、両端が一対の膝保持具20に結合される。帯状部54は、環状部52に挿通されるものの、環状部52に固定されていないため、使用者の動きに応じて環状部52内をスライドする。これにより、環状部52を起点として帯状部54から膝保持具20までの左右の長さが変わることができ、使用者の両足を動きやすくできる。
人工筋肉部22の収縮力は、使用者の肩を引っ張るように作用するが、その反作用の力が第2ベルト16および膝保持具20から使用者に入力される。膝保持具20および第2ベルト16とで使用者への入力を分けることで、例えば第2ベルト16にのみ入力または膝保持具20にのみ入力される場合と比べて、使用者に入力される負荷を分散できる。
図5は、エアタンク24から人工筋肉部22への供給経路について説明するための図である。エアタンク24および人工筋肉部22の間の供給経路には、レギュレータ72およびバルブ62が設けられる。
レギュレータ72は、エアタンク24から供給される空気を設定された圧力に調整する。レギュレータ72に設定する圧力は、使用者が変更可能である。使用者は、レギュレータ72に設定する圧力を変更することで、人工筋肉部22の収縮力を変更することができる。
バルブ62は、エアタンク24に連通する第1ポート74と、人工筋肉部22に連通する第2ポート76と、外部に通じる排気用の第3ポート78とを有する。第1ポート74および第3ポート78は、処理部の制御に応じて開閉する電磁弁であり、第2ポート76は常に開口している。第1ポート74は、通電により開き、通電を終了すると閉じる常閉弁であり、第3ポート78は、通電により閉じ、通電を終了すると開く常開弁である。
第1ポート74が開状態となり、第3ポート78が閉状態となれば、人工筋肉部22に圧縮された空気が供給される。供給された人工筋肉部22の空気は、第1ポート74を閉状態にし、第3ポート78を開状態にして、外部に排気される。
第2ポート76は、使用者により開口面積を変更可能であってよい。例えば、第2ポート76に開口に対して、開口の軸方向に交差する方向に移動可能な仕切り壁を設けることで開口面積を変更可能にする。第2ポート76の開口面積を変更することで、人工筋肉部22に空気が供給される速度を変更でき、被介護者をゆっくり持ち上げられるようにするなど、人工筋肉部22の収縮速度を調整できる。また、第3ポート78も、開口の軸方向に交差する方向に移動可能な仕切り壁を設けることで、使用者により開口面積を変更可能であってよい。第3ポート78の開口面積を変更することで、例えば持ち上げた被介護者をゆっくり下ろせるように、人工筋肉部22の排気速度を調整できる。
図6は、処理部60の機能構成について説明するための図である。処理部60は、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現される。なお、処理部60は不図示の電源部に接続される。
処理部60は、スイッチ56からの指示信号の入力を受け、バルブ62を開閉してエアタンク24からの空気の供給を制御する。処理部60およびバルブ62は、エアタンク24からの空気の供給および人工筋肉部22の排気を制御する制御部として機能する。
処理部60は、受付部66、駆動部68および交換判定部70を有する。受付部66は、スイッチ部55を介してスイッチ56からの指示信号を受け付ける。受付部66は、スイッチ56からの指示信号に応じて供給フラグをオンまたはオフに切り替える。受付部66は、スイッチ56が押されていれば、供給フラグをオンにし、スイッチ56が押されていなければ、例えば使用者がスイッチ56から指を離せば供給フラグをオフにする。これにより、使用者が押している間だけ人工筋肉部22が収縮し、使用者がスイッチ56から指を離せば人工筋肉部22が排気されて元の長さに戻る。
なお、変形例ではスイッチ56が押される毎に、受付部66は供給フラグを切り替えてよい。つまり、スイッチ56が押された場合に、受付部66は供給フラグをオフからオンに切り替え、次にスイッチ56が長く押された場合に、受付部66は供給フラグをオンからオフに切り替える。受付部66は、所定時間以上連続した指示信号を受け取ることで、スイッチ56が長く押されたことを検出し、供給フラグをオンからオフに切り替える。この変形例では、スイッチ56が押されれば人工筋肉部22が最大限収縮する。
駆動部68は、供給フラグがオンである場合、エアタンク24と人工筋肉部22を連通するバルブ62の第1ポート74を開き、人工筋肉部22に空気を供給させ、人工筋肉部22を収縮させる。供給フラグがオンであれば、人工筋肉部22が収縮した状態に維持される。
駆動部68は、供給フラグがオフに切り替わると、人工筋肉部22から排気させるようバルブ62の第1ポート74を閉じて、第3ポート78を開放する。人工筋肉部22からの排気により、人工筋肉部22が元の長さに戻る。
交換判定部70は、駆動部68の制御情報にもとづいてエアタンク24の空気を交換すべきか判定する。例えば、交換判定部70は、エアタンク24から人工筋肉部22へ空気を供給される毎に判定用数値をインクリメントし、判定用数値が所定値に達すると交換フラグをオフからオンにする。交換フラグがオンになると、交換判定部70は、表示部64に指示信号を送信する。エアタンク24が取り外されると交換判定部70は、交換フラグをオフにし、判定用数値をゼロにリセットする。
表示部64は、エアタンク24の空気の交換を促すために設けられ、交換判定部70がエアタンク24の空気の残量が非常に少なくなったことを判定すると、交換判定部70の指示信号により点灯するランプである。表示部64は、スイッチ部55に設けられてよい。
なお、変形例では交換判定部70は、エアタンク24の残量を駆動部68の制御情報にもとづいて算出してよく、表示部64は、エアタンク24の空気の残量を示すディスプレイであってよい。いずれにしても、交換判定部70および表示部64により、使用者にエアタンク24を交換が必要であることを示唆できる。
ところで、第1実施例の動作補助スーツ10は、人工筋肉部22などのアクチュエータが上着12に連結されている。これにより、使用者は上着12を着ることで容易に装着できるものの、作業で汚れた上着12を洗えなくなる。そこで第1実施例の動作補助スーツ10は、人工筋肉部22などのアクチュエータを脱着可能にしている。
図7は、人工筋肉部22などのアクチュエータを取り外した動作補助スーツ10の背面図である。図2の動作補助スーツ10と比べて説明する。図2に示す動作補助スーツ10は、すでに第3連結部40の連結を解除して下肢ベルト18を取り外した状態にある。
使用者は上着12を脱いだあと、第1連結部36および第2連結部38の連結を解除することで、人工筋肉部22、ベース32およびケース28を取り外すことができる。さらに使用者はホルダー26およびスイッチ部55を取り外して、図7に示すように、上着12と第1ベルト14と第2ベルト16とにして、洗濯を可能な状態にできる。このように、第1連結部36および第2連結部38の連結を解除することで人工筋肉部22を上着12から容易に取り外すことができる。
図8は、スイッチ56の一例を説明するための図である。スイッチ56は、有線により処理部60に電気的に接続される。スイッチ56は、使用者に押されたことを感知するプッシュ式であり、使用者に押されると指示信号を処理部60に送信する。
スイッチ56は、手に取り付けるための装着具80により、使用者の人差し指に配置される。装着具80は、親指および人差し指の部分が分かれた手袋である。装着具80の裏側にはスイッチ56の配線がなされ、スイッチ56は人差し指の側部に、親指と対向する位置に配置される。使用者は、親指と人差し指を接近させてスイッチ56をオンできる。
図3に示したように移乗動作では被介護者を両手で抱えた状態でスイッチ56を押すことになり、両手の動きは制限され、手指は見えない状態にある。使用者の手指にスイッチ56を装着し、親指と人差し指の接近だけでスイッチ56を操作できるため、スイッチ56の操作が移乗作業を妨げることを抑えられる。また、被介護者を抱えた状態で、被介護者が不意にスイッチ56を押すことを防ぐことができる。
第1変形例のスイッチ56は、指先に挿入するサックに設けられてよく、人差し指にサックを挿入してスイッチ56を取り付けてよい。また、第2変形例のスイッチ56は、手首に設けられ、手首から親指に紐を掛けるように構成する。この第2変形例では使用者が親指にかけられた紐を引っ張ることでスイッチ56がオンになる。また、
第3変形例のスイッチ56は、犬笛などの高周波発生具と受信機であってよい。使用者が犬笛を吹くと、所定の周波数の音波が発生され、その音波を受信器で検知するとオンとなる。第3変形例によれば、配線することなく、両手を自由に使うことができる。また、高齢者が聞き取りにくい周波数帯を利用して音波による不快感を抑えることができる。
第4変形例のスイッチ56は、咽喉受信機により、所定の母音を検知することでオンとなるように構成してよい。また、第5変形例のスイッチ56は、使用者の頭部に取り付けて、使用者の特定の脳波や筋電位を検知することでオンとなるように構成してよい。
図9は、変形例の空気の供給経路について説明するための図である。この変形例は、図5に示す供給経路と比べて、複数のレギュレータおよびバルブを用いることで人工筋肉部22に供給する空気の圧力を調整可能にする。
エアタンク24および人工筋肉部22の間の供給経路には、第1レギュレータ82、第2レギュレータ84、第1バルブ86、第2バルブ88および第3バルブ90が設けられる。
第1レギュレータ82は、エアタンク24から送出される空気を第1圧力にし、第2レギュレータ84は、エアタンク24から送出される空気を、第1圧力より高圧の第2圧力にする。
第1バルブ86は、第1レギュレータ82および第3バルブ90を連通し、または連通を解除する。第2バルブ88は、第2レギュレータ84および第3バルブ90を連通し、または連通を解除する。第3バルブ90は、第1バルブ86および第2バルブ88と人工筋肉部22とを連通し、または連通を解除する。第1バルブ86、第2バルブ88および第3バルブ90は、処理部60の制御に応じて開閉する電磁弁である。
第3バルブ90は、第1バルブ86および第2バルブ88に連通する第1ポート74と、人工筋肉部22に連通する第2ポート76と、外部に通じる排気用の第3ポート78とを有する。
第1レギュレータ82の圧力と第2レギュレータ84の圧力が異なるため、処理部60が第1レギュレータ82と人工筋肉部22を連通する状態と、第2レギュレータ84と人工筋肉部22を連通する状態とに各バルブを制御することで、人工筋肉部22に供給する空気の圧力を調整することができる。人工筋肉部22の圧力を調整する制御について説明する。
処理部60は、1回目のスイッチ56のオンを検出すると、第1レギュレータ82から人工筋肉部22に空気を供給し、2回目のスイッチ56のオンを検出すると、第2レギュレータ84から人工筋肉部22に空気を供給する。次に、処理部60は、3回目のスイッチ56のオンを検出すると、人工筋肉部22から排気し、駆動を終了する。
動作補助スーツ10が駆動する前は、第1バルブ86および第2バルブ88は、閉じている。1回目のスイッチ56のオンを検出した場合、第1バルブ86と第3バルブ90の第1ポート74が通電されて開き、第3ポート78が通電されて閉じる。なお、第2ポート76は開いたままであり、第2バルブ88は閉じられたままである。これにより、第1レギュレータ82と人工筋肉部22とが連通されて、第1レギュレータ82の第1圧力の空気が人工筋肉部22に供給される。
次に、2回目のスイッチ56のオンを検出した場合、第1バルブ86の通電を終了して閉じ、第2バルブ88の通電を開始して開き、第1ポート74および第3ポート78の通電は維持する。これにより、第2レギュレータ84と人工筋肉部22とが連通されて、第2レギュレータ84の第2圧力の空気が人工筋肉部22に供給される。
次に、3回目のスイッチ56のオンを検出した場合、第2バルブ88および第1ポート74の通電を終了、つまり各バルブ全ての通電を終了する。これにより、第1ポート74が閉じて第3ポート78が開き、人工筋肉部22から排気される。
このように、人工筋肉部22を段階的に収縮するように構成でき、例えば1回目のスイッチオンに応じた人工筋肉部22の収縮により使用者を中腰姿勢に維持し、2回目のスイッチオンに応じて人工筋肉部22の収縮により使用者を直立姿勢になるように補助することができる。
処理部60は、駆動してない状態から連続的にスイッチ56が押されたこと、例えばダブルクリックを検出した場合、第1レギュレータ82からの供給をすることなく、第2レギュレータ84から人工筋肉部22に供給してよい。処理部60は、所定の時間内に2回のスイッチ56のオンを検出した場合に、連続的にスイッチ56が押されたと判定し、第1レギュレータ82の供給をスキップする。このように、使用者は状況に応じて人工筋肉部22の収縮度合いを変えることができ、動作補助スーツ10の利便性が向上できる。
また、処理部60は、1回目のスイッチ56が押されている状態から、スイッチ56が長押しされると、人工筋肉部22から排気して駆動を終了してよい。これにより、エアタンク24の空気を節約できる。
なお、第1レギュレータ82から空気を供給するためのスイッチ56の第1操作、第2レギュレータ84から空気を供給するためのスイッチ56の第2操作、および人工筋肉部22から排気するためのスイッチ56の第3操作は、それぞれ異なってよい。例えば、第1操作は、ワンクリックであり、第2操作は、ダブルクリックであり、第3操作は、長押しであってよく、処理部60はそれらの操作を検出すると、対応した制御を実行する。
図10は、別の変形例の人工筋肉部22への空気の供給経路について説明するための図である。変形例の空気の供給経路では、図5に示す空気の供給経路と比べて、回生用エアタンク104が追加されている点が異なる。回生用エアタンク104は、人工筋肉部22から排出された空気を再利用するために用いられ、エアタンク24の空気の消費を抑えることができる。これにより、満タンのエアタンク24での人工筋肉部22の作動回数を増やし、エアタンク24を取り外して充填する作業を減らすことができる。
バルブ102は、処理部60により各ポートの開閉が制御される。バルブ102は、人工筋肉部22に接続する第1ポート106と、エアタンク24側のレギュレータ72に接続する第2ポート108と、回生用エアタンク104に接続する第3ポート110と、外気に解放する第4ポート112を有する。なお、この例ではバルブ102が1個で構成する態様を示すが、複数個のバルブで構成されてよい。バルブ102の各ポートは、通常は閉状態である常閉弁である。
回生用エアタンク104は、バルブ102に接続されて人工筋肉部22から排出される空気を貯め、動作補助スーツ10の使用者に装着される。回生用エアタンク104は、例えば、使用者の腰周りに巻回して装着される帯状の腰部サポーターに内蔵されてよい。具体的には、回生用エアタンク104は、腰部サポーターにゴム製の配管として内蔵され、正面側や背面側に配管を折り返すように配設される。これにより、使用者の体幹を安定させて、使用者の腰の負担を軽減できる。
制御部が実行する人工筋肉部22の収縮制御について説明する。処理部60は、バルブ102の各ポートの開閉を予め設定された時間で制御する。スイッチ56がオンされて人工筋肉部22を収縮する際、処理部60は、第1ポート106および第3ポート110を開状態にし、回生用エアタンク104から空気を人工筋肉部22に供給させ、第3ポート110を閉状態にして回生用エアタンク104からの供給を止め、第2ポート108を開状態にしてエアタンク24から供給させ、第1ポート106および第2ポート108を閉状態にして供給を終える。これにより、エアタンク24だけでなく、回生用エアタンク104から人工筋肉部22に空気を供給でき、エアタンク24に貯めた空気の消費を抑えることができる。
次に、スイッチ56がオンされて人工筋肉部22から空気を排出する際、処理部60は、第1ポート106および第3ポート110を開状態にし、人工筋肉部22の空気を回生用エアタンク104に送らせる。次に、処理部60は、第3ポート110を閉状態にし、第4ポート112を開状態にして、回生用エアタンク104に入りきらない人工筋肉部22の空気を排出する。これにより、人工筋肉部22の空気を回生用エアタンク104で回収できる。この回生用エアタンク104で回収された空気は、充填されているエアタンク24の空気の空気圧より低い。なお、エアタンク24にコンプレッサーで空気を充填する際に、人工筋肉部22にも空気を充填することで、人工筋肉部22の排気制御で回生用エアタンク104に空気を充填させてよい。また、エアタンク24にコンプレッサーで空気を充填する際に、回生用エアタンク104に空気を充填してもよい。この場合、エアタンク24にはコンプレッサーから1メガパスカルの空気が充填され、回生用エアタンク104にはコンプレッサーからレギュレータを介して0.5メガパスカルの空気が充填される。
図11は、さらに別の変形例の人工筋肉部22への空気の供給経路について説明するための図である。図11に示す変形例の空気の供給経路では、図5に示す空気の供給経路と比べて、予備エアタンク116およびコンプレッサー118が設けられている点で異なる。予備エアタンク116およびコンプレッサー118は、使用者に装着されるもので、予備エアタンク116は、使用者の腰周りに巻回して装着される腰部サポーターに内蔵されてよい。予備エアタンク116およびコンプレッサー118を設けることで、エアタンク24に貯めた空気の消費を抑え、エアタンク24を取り外して空気を充填する作業を減らすことができる。
コンプレッサー118が使用者に装着可能な小型であるため、予備エアタンク116へ貯める空気の空気圧は、エアタンク24に充填される空気の空気圧より低い。例えば、エアタンク24に充填される空気の空気圧は1メガパスカル程度であり、コンプレッサー118によって充填される空気の空気圧は0.3から0.5メガパスカル程度である。予備エアタンク116は、ゴム製であるため、金属製のエアタンク24と比べて、軽量であり、可撓性を有する。
処理部60は、人工筋肉部22を収縮させる際、エアタンク24より先に予備エアタンク116から人工筋肉部22に空気を供給するよう、バルブ114の開閉を制御する。これにより、予備エアタンク116の空気を人工筋肉部22に利用でき、エアタンク24の空気の消費を抑えることができる。
図12は、第2実施例の動作補助装置210について説明するための図である。図12(a)は正面側の動作補助装置210を示し、図12(b)は背面側の動作補助装置210を示す。また、図12(a)および(b)では、破線で使用者の外形を示す。第1実施例の動作補助スーツ10は衣服にベルトが縫い付けられて構成されるのに対し、動作補助装置210は、衣服に縫い付けられていない安全ベルト212を用いる点で異なる。
安全ベルト212は、使用者の衣服の上に装着され、高所作業では命綱を固定するものである。動作補助装置210では、安全ベルト212に人工筋肉部224が脱着可能に設けられる。なお、動作補助装置210は、命綱を固定する安全ベルト212に人工筋肉部224を設ける態様に限られず、安全ベルト212以外にも使用者の衣服の上に装着されるベルトであれば、そのベルトに人工筋肉部224を設けて構成してよい。なお、図12(b)では、安全ベルト212の命綱を固定する構成を省いて示すが、ベルトが交差する個所に命綱が連結される。
安全ベルト212は、ベルト肩部214、ベルト胸部216、ベルト腰部218、ベルト腿部220およびベルト臀部222を有する。一対のベルト肩部214は、使用者の背面側のベルト腰部218から両方の肩部を通って正面側のベルト腰部218に延び、ベルト胸部216およびベルト腰部218に結合する。一対のベルト肩部214の背面側は、X字状に交差している。
ベルト胸部216は、正面側の胸の位置で、正面側の一対のベルト肩部214に結合される。ベルト胸部216には、連結またはその連結を解除可能な留め具216aが中央に設けられる。ベルト腰部218は、腰周りの位置に周状に配置され、ベルト肩部214の両端が連結される。ベルト腰部218には、連結またはその連結を解除可能な留め具218aが正面側の中央に設けられる。一対のベルト臀部222は、ベルト腰部218とベルト腿部220を連結する。ベルト腿部220は、使用者の腿部に巻回される。
人工筋肉部224は、図12(b)に示すように、安全ベルト212の背面側に上下方向に沿って配置され、一対設けられて略V字状に配置される。人工筋肉部224は、大気圧以上の空気、例えば0.1メガパスカルから0.2メガパスカル程度の空気が充填される。これにより、人工筋肉部224を縮め過ぎずに人工筋肉部224の可撓性を確保できる。
人工筋肉部224を略V字状に配置することで、命綱を連結するためのベルト肩部214が交差する個所を避けることができる。また、一対の人工筋肉部224の下端部224bを連結するベース228を小型化できる。人工筋肉部224の上端部224aは、環状部材221と巻回部材223によりベルト肩部214に連結され、下端部224bは、ベース228および一対の巻回部材229により一対のベルト臀部222に連結される。
巻回部材223および巻回部材229は、帯状であり、両端部を結合または結合解除できる。環状部材221は、三角形状であり、下端側の一辺に板部を有する。環状部材221の板部の孔に上端部224aが固定される。巻回部材223は、環状部材221内を通って、ベルト肩部214に巻回して、両端部を結合することで、上端部224aと安全ベルト212とを連結する。巻回部材223および環状部材221は、人工筋肉部224の上端部224aと安全ベルト212とを連結し、または連結を解除する第1連結部として機能する。
人工筋肉部224の下端部224bは、ベース228に固定され、ベース228は、巻回部材229を介してベルト臀部222に連結し、または連結を解除する。巻回部材229は、ベース228の孔に挿通され、ベルト臀部222に連結される。なお、ベース228は、ベルト腰部218に連結されてよく、ベルト肩部214に連結されてよい。いずれにしても、ベース228および巻回部材229は、安全ベルト212と人工筋肉部の下端部とに連結し、または連結を解除する第2連結部として機能する。
下肢ベルト226は、膝保持具227をベース228に接続する。膝保持具227は、使用者の膝に巻き付けて取り付けられる。下肢ベルト226は、図4に示す下肢ベルト18と同様に、ゴム部材50、環状部52および帯状部54を含んで構成される。なお、変形例では、下肢ベルト226および膝保持具227を用いず、安全ベルト212に人工筋肉部224を連結するだけの構成であってもよい。また、膝保持具227の代わりに使用者の足裏、つまり土踏まずに下肢ベルト226を引っ掛けてもよい。
人工筋肉部224は、大気圧より空気圧が高い空気を貯めており、所定値以上の張力を持つように設定される。使用者が前屈した際に、人工筋肉部224はベルト肩部214に張力を発生するとともに、下肢ベルト226は人工筋肉部224を引っ張る。これにより、前屈した使用者に肩部を持ち上げるような力が付与され、使用者が小さな力で前屈姿勢を維持することができる。これにより、前屈姿勢を維持したまま行う作業の負担を軽減できる。
使用者が前屈姿勢をあまり行わない場面では、使用者が巻回部材223および巻回部材229と、安全ベルト212との連結を解除し、膝保持具227を外すことで、人工筋肉部224等を安全ベルト212から取り外すことができる。このように、使用状況に応じて人工筋肉部224を容易に脱着できる。また、エアタンク24や制御部を取り付けない動作補助装置210の態様では、動作補助装置210を小型かつ軽量にして、高所や狭所での動きやすさを確保できる。また、エアタンク24を充填する作業が不要になり、使用者が高所での作業を継続することが可能となる。
なお、変形例では図12(a)に示すように第2のベルト胸部215を正面側でベルト胸部216の上側に設けてよい。第2のベルト胸部215は、一対のベルト肩部214を幅方向に連結する。一般的な安全ベルト212は、使用者の動きやすさのため、使用者に緩く装着されるが、第2のベルト胸部215を設けることで、ベルト肩部214の使用者への密着度を向上でき、人工筋肉部224による引っ張る力を使用者に効率的に伝えることができる。
また、変形例では、図12に示す第2実施例の動作補助装置210に、第1実施例に示したエアタンク24および制御部を設けてよい。エアタンク24は、人工筋肉部224に接続され、人工筋肉部224に供給する空気を貯める。制御部は、処理部60、レギュレータ72、バルブ62により構成され、人工筋肉部224およびエアタンク24を接続する接続路に設けられ、エアタンク24からの空気の供給および人工筋肉部224の排気を制御する。制御部は、腰巻きバッグに収容されて使用者に装着され、エアタンク24はホルダー26によりベルト腰部218に取り付けられる。制御部の取り付け手段は、腰巻きバッグに限らず、所定のケースに収容してベース228に結合してもよい。いずれにしても、制御部は、保持部により保持された状態で使用者に取り付けられる。また、小型のコンプレッサーを使用者に保持させ、制御部によりコンプレッサーから人工筋肉部224への空気の給排を制御してもよい。
この変形例では、制御部は、人工筋肉部224から空気を排出させる際に、所定の空気圧以上、例えば0.1メガパスカルから0.2メガパスカルの空気が残るようにバルブ62を制御し、バルブ62を閉状態にすることができる。制御部は、人工筋肉部224に大気圧以上の空気を残してよく、大気圧より高い空気を残すように制御してよい。この人工筋肉部224に空気を残した状態で、制御部およびエアタンク24を取り外すと、人工筋肉部224に所定の張力を持たせることができる。これにより、荷物の持ち上げ作業をする場合には、制御部およびエアタンク24を取り付けて、人工筋肉部224を伸縮できるようにし、主に前屈姿勢を維持する作業をする場合には、制御部およびエアタンク24を取り外して動作補助装置210を小型かつ軽量にできる。また、制御部は、スイッチ56の操作の種類に応じて人工筋肉部224の空気の排出度合いを変えてよい。具体的には、制御部は、スイッチ56がワンクリックされた場合には人工筋肉部224が自然長に戻るまで排気させ、スイッチ56がダブルクリックされた場合には人工筋肉部224の空気が大気圧より高くなるよう残す制御をしてよい。
また、変形例では、人工筋肉部224に空気を供給する小型のコンプレッサーと、人工筋肉部224への空気の給排を制御する制御部を設けてもよい。使用者に装着される小型のコンプレッサーは、人工筋肉部224を大きく縮めるほどの空気を送るものではないが、人工筋肉部224に所定の張力を持たせることは可能である。また、動作補助装置210に傾斜センサを取り付けて、傾斜センサの検出結果から使用者の大きな前屈姿勢を検出した場合に、制御部は、人工筋肉部224の空気を排出させ、使用者が直立したことを検出すると、制御部は、コンプレッサーから人工筋肉部224に空気を注入するように制御してよい。これにより、使用者が地面の荷物を持ち上げる場合などに、屈みやすくなる。
図13は、第2実施例の動作補助装置210の変形例であって、動作補助装置210に設けられる長さ調整機構230について説明するための図である。長さ調整機構230は、第1のベース228と第2のベース232の間に設けられ、第1のベース228と第2のベース232との上下方向の間隔、すなわち人工筋肉部224の下端部224bと第2のベース232の間隔を変更できる。
第1のベース228は、人工筋肉部224の下端部224bと、長さ調整機構230のシャフト上端部239が固定される。第1のベース228は、蝶番であって、中央にヒンジ部234を有する。第1のベース228の上側部分228aに下端部224bが固定され、下側部分228bにシャフト上端部239が固定される。第1のベース228を蝶番にすることで、使用者の前屈に応じて上側部分228aと下側部分228bが相対回転して、使用者が動きやすくなる。
第2のベース232は一対の連結ベルト236により、安全ベルト212のベルト臀部222に取り外し可能に連結され、連結部として機能する。第2のベース232には、長さ調整機構230の本体237が固定される。
長さ調整機構230は、本体237、操作部238、シャフト上端部239、シャフト240およびシャフト下端部242を有する。本体237は、円筒形状であり、シャフト240が挿通されて、シャフト240の上方への摺動をロックまたはロック解除する機能を有する。なお、シャフト240の下方への摺動は本体237にロックされない。一対の操作部238は、本体237の両端部から径方向外向きに張り出しており、使用者が把持可能であり、使用者の把持により本体237のシャフト240へのロックを解除する。また、使用者の把持以外にも、操作部238を上下させる機構を加えてその機構を使用者が操作することで、本体237のロックが解除されるように構成してもよい。いずれにしても、使用者の操作により本体237のロックを解除でき、人工筋肉部224の下端部224bと第2のベース232の長さを調整できる。
シャフト240は、本体237の軸方向長さの2倍程度の長さを有する。シャフト240のシャフト上端部239およびシャフト下端部242には、本体237の孔縁に引っ掛かるストッパが設けられている。
使用者が一対の操作部238を互いに接近するように把持した状態では、シャフト240へのロックが解除されて、シャフト240が本体237に対してスライドする。図13(a)では、第1のベース228および第2のベース232が最も接近した状態を示し、図13(b)では、第1のベース228および第2のベース232が最も離れた状態を示す。使用者が一対の操作部238の操作をやめると、本体237がシャフト240をロックし、シャフト240の上方への摺動を止める。これにより、本体237がシャフト240に対して任意の位置でロックするため、第1のベース228および第2のベース232の間隔を調整できる。
使用者は、動作補助装置210を装着していると前屈すれば人工筋肉部224等により引っ張られる。長さ調整機構230を設けることで、使用者の作業に応じて、第1のベース228および第2のベース232の間隔を調整して、使用者の前屈動作に適度な反力を付与できる。長さ調整機構230により第1のベース228および第2のベース232の間隔を長くすることで、使用者が地面の荷物を持ち上げる場合などに、屈みやすくできる。
本発明は上述の各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
実施例では、動作補助スーツ10を介護での移乗動作の補助に用いる態様を示したが、この態様に限られない。例えば、動作補助スーツ10は、引っ越し作業での荷物の運搬動作の補助に用いられてよく、その他の運搬動作の補助に用いられてよい。
また、実施例の人工筋肉部22,224は、一対設けられる態様を示したが、この態様に限られず、1つ設けられてよい。人工筋肉部22,224を1つ設ける場合は、人工筋肉部22,224の上端部に連結する第1連結部36は一つとなり、第1連結部36から第1ベルト14が二股に分かれて両肩に向かって延在する。また、実施例では、並列した人工筋肉部224を上下に2対設け、人工筋肉部224を4本用いる態様であってよい。これにより、人工筋肉部224の上下方向の中間部分で屈曲可能にでき、使用者が動きやすくなるように構成でき、さらに、一対の上部の人工筋肉部224による背中の引張力だけでなく、一対の下部の人工筋肉部224による腰回りの引張力が働くように構成できる。
また、実施例のエアタンク24は、ホルダー26により第2ベルト16に取り付けられる態様を示したがこの態様に限られない。例えば、別の使用者への装着具を用いてエアタンク24を使用者に取り付けてよく、例えば、肩掛けバッグや腰掛けバッグにエアタンク24を入れて使用者に取り付けてよい。
また、実施例では、エアタンク24を動作補助スーツ10および動作補助装置210に取り付けてエアタンク24から人工筋肉部22,224に空気を供給する態様を示したが、この態様に限られない。例えば、第1接続路30は、使用者の近くに配置されるコンプレッサーに接続され、コンプレッサーから人工筋肉部22,224に空気が供給されてよい。これにより、動作補助スーツ10および動作補助装置210を軽量化できる。
また、実施例では、ケース28に電源部を内蔵する態様を示したが、この態様に限られない。例えば、処理部60を使用者の周りに設けられる外部電源に接続してもよい。これにより、動作補助スーツ10を軽量化できる。
また、実施例では、動作補助スーツ10の下肢部分が膝保持具20を用いて使用者の膝に取り付ける態様を示したが、この態様に限られない。例えば、膝保持具20の代わりに、使用者の腿足や股に取り付けられる保持具を用いてよい。また、動作補助スーツ10は、下肢ベルト18および膝保持具20の下肢部分を有しなくともよい。
また、実施例では、第2ベルト16に第2連結部38を設ける態様を示したが、この態様に限られない。例えば第2連結部38を上着12に結合すれば、第2ベルト16は無くともよい。いずれにしても第2連結部38は上着12に設けられる。第2ベルト16を除く場合、人工筋肉部22の下端部の荷重は下肢ベルト18および膝保持具20で受け止める。また、上着12を下半身用の服に連結することで人工筋肉部22の下端部の荷重を下半身用の服で受け止めてよい。また、下肢ベルト18および膝保持具20は、下半身の服と別体であるが、変形例では下肢ベルト18を下半身の服に縫い付けて下半身の服と一体にしてもよい。
また、実施例では、第3連結部40を1つである態様を示したが、この態様に限られない。第3連結部40は、左右の膝保持具20に応じて2つ設けられてよい。
また、実施例では、人工筋肉部22およびエアタンク24の供給経路にレギュレータ72およびバルブ62を設ける態様を示したが、この態様に限られない。例えば、バルブ62の第1ポート74を開度が調整可能な電磁弁にすることで、レギュレータ72を不要にすることも可能である。