JP6760175B2 - 加飾パネル - Google Patents

Description

本発明は、加飾パネルに関する。

従来から、車両用内装部品においては、その製品に高級感を付与する等の目的で、いわゆる漆黒調と呼ばれる光沢のある黒色の意匠を施すことが行われている。

成形品の表面に漆黒調の意匠を施す手段としては、黒色顔料を含んだ黒色インクを用いて成形品の表面に塗装を行い、黒色インクを乾燥させて黒色インク層を形成し、さらに光沢を付与するために、黒色インク層上にクリアー塗装を行う方法がある。また、塗装法の代替として、透明フィルム表面に黒色の塗膜が形成された黒色装飾用フィルムを用い、透明フィルム側を表にして成形品に一体化する方法も行われている。

一般に、漆黒調を代表する漆材料は、観る人に対して高級感を与える。漆材料が与える高級感の主要因は、視覚的に感じる「深み感」にあるといわれている。この「深み感」に着目してなされた技術として、例えば特許文献１がある。特許文献１には、基材上に、微粒子とバインダー樹脂を含む微粒子含有薄膜層と、無色又は有色の透明な薄膜層であるクリアコート層とを積層してなる薄膜構造が開示されている。特許文献１に開示された薄膜構造では、微粒子含有薄膜層において屈折率の異なる微粒子とバインダー樹脂とを含有させることで、薄膜構造内で光が複雑に屈折し、これにより「深み感」を与えるものとしている。

しかしながら、特許文献１の薄膜構造はある程度の「深み感」をもち、観る人に高級感を与えるものであるものの、依然として漆のような深い漆黒調を表現するに至っていなかった。

特開２０１０−３６１３８号公報

本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、漆のような深い漆黒調を表現することができる加飾パネルを提供することにある。

本発明者らは、上記目的を達成するために、更なる「深み感」をもつ漆黒調を表現できる加飾パネルについて鋭意検討を重ねた。この結果、本発明者等は、黒色層上に設けられる複数の透明層からなる積層体を、最も外側から基材側に向かって順に各透明層の屈折率が大きくなるように構成することで、更なる深い「深み感」をもつ漆黒調を表現できることを知見した。

すなわち、本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、本発明の加飾パネルは、基材と、基材上に設けられた黒色層と、黒色層上に設けられ、屈折率の異なる複数の透明層が積層してなる積層体と、を備え、積層体における各透明層の屈折率が基材に向かって順に大きくなることを特徴とする。

本発明の構成によれば、本発明の加飾パネルを観る人に対して、漆のような深い「深み感」をもつ漆黒調を効果的に表現することができる。

実施例１（試験例１）の加飾パネルの断面を模式的に表す説明図である。 実施例２（試験例２）の加飾パネルの断面を模式的に表す説明図である。 比較例１（試験例３）の加飾パネルの断面を模式的に表す説明図である。 比較例２（試験例４）の加飾パネルの断面を模式的に表す説明図である。 実施形態の加飾パネルを説明するための説明図を表す。

以下、本発明の加飾パネルの好適な実施形態について説明する。

なお、発明の実施形態は本発明が実施される特に有用な形態として記載されるものであり、本発明がこれに限定されるものではない。また、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事項は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。

当該実施形態における加飾パネルは、基材と、基材に設けられた黒色層と、黒色層に設けられた積層体と、を有する。

基材は、インストルメントパネル等の車両内装品に用いられる成形品である。基材の材質は、例えば、メチルメタクリレート（共）重合体、ポリカーボネート、スチレン（共）重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体等の合成高分子、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート等の半合成高分子、ポリエチレンテレフタラート、ポリ乳酸等のポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリウレタン、それら高分子の複合物（ポリメチルメタクリレートとポリ乳酸の複合物、ポリメチルメタクリレートとポリ塩化ビニルの複合物等）等が挙げられる。また、基材の材質は金属であってもよい。

基材の表面上には黒色層が設けられている。当該実施形態の加飾パネルでは、積層体の最も基材側に黒色層が配置された積層体と、基材とが一体的に成形されることにより、黒色層が基材の表面上に設けられている。黒色層は、積層体の表面に黒色色素を有するインク（以下、黒色インクと称する）を塗工して形成され得る。黒色インクは、市販のものを用いることができ、積層体の表面に適切な方法で形成し得る。このような方法としては、例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷法などの印刷法が挙げられる。

また、黒色層は、目視で黒として認識されるものであればよく、例えば、ＪＩＳ Ｚ ８７２９に規定のＬ＊ａ＊ｂ＊表色系で規定されるＬ＊値が小さい方が望ましい。具体的には、Ｌ＊値がＳＣＩモードで２７以下であることが望ましい。

積層体は、複数の透明層が積層されてなる。ここで透明層の「透明」とは、全光線透過率が８０％以上であることを意味し、８５％以上であることが好ましく、更には９０％以上であることが好ましい。全光線透過率は、ＪＩＳ Ｋ７３６１に準拠して測定される。

本発明者らは、基材の表面上に配置された黒色層上に、複数の透明層からなる積層体を配置することによって、加飾パネルがいかに深い「深み感」をもつ漆黒調を表現できるか鋭意検討するなかで、積層体を構成する各透明層の屈折率に着目した。そして、本発明者らは、この積層体において、各透明層の屈折率が基材に向けて順に大きくなるように各透明層を積層することで、この積層体を配置した加飾パネルがさらなる深い「深み感」をもつ漆黒調を表現できることを見い出した。

この理由は、図５に表すような原理によるものと推測される。図５に示すように、積層体１００は黒色層９０の上に配置されており、３層の透明層８０、７０、６０が基材側からこの順に配置されている。各透明層の屈折率は、屈折率α＜屈折率β＜屈折率γの関係となっている。なお、透明層６０の上は空気層５０である。

また、図５に示す実線矢印は、積層体１００に入射した入射光を示し、破線矢印は、入射した光が各透明層の境界で反射した反射光を示す。具体的には、入射光４０ａは、空気層５０から透明層６０に入射する光である。入射光４０ｂは、透明層６０を透過し透明層７０に入射する光である。入射光４０ｃは、透明層７０を透過し透明層８０に入射する光である。入射光４０ｄは、透明層８０を透過し黒色層９０に到達する光である。反射光４１ａは、入射光４０ａが透明層６０の表面において反射される光である。反射光４１ｂは、入射光４０ｂが透明層６０と透明層７０との境界で反射され、透明層６０を透過して空気層５０に到達した光である。反射光４１ｃは、入射光４０ｃが透明層７０と透明層８０との境界で反射され、透明層７０及び透明層６０を透過して空気層５０に到達した光である。反射光４１ｄは、入射光４０ｄが黒色層９０の表面で反射され、透明層８０、７０及び６０を透過して空気層５０に到達した光である。

図５に示すように、黒色層９０の上に配置された複数の透明層６０、７０、８０からなる積層体１００において、積層体１００に入射した入射光４０ａの光量は、透明層６０、７０、８０と透過するほど、入射光４０ａの光量＞入射光４０ｂの光量＞入射光４０ｃの光量＞入射光４０ｄの光量、のように減衰する。また、各透明層６０、７０、８０のそれぞれの境界で反射された反射光４１ａ、４１ｂ、４１ｃ、４１ｄの光量は、透明層を通過するほど減衰するため、反射光４１ａの光量＞反射光４１ｂの光量＞反射光４１ｃの光量＞反射光４１ｄの光量、のように減衰する。すなわち、黒色層９０に到達して反射し、観察者の目に到達し得る反射光４１ｄの光量はもっとも小さくなる。

また、各透明層の屈折率において、最も外側の透明層の屈折率αから基材に向かって順に大きくなるように、すなわち屈折率α＜屈折率β＜屈折率γの関係とすることにより、各透明層を通過する入射光の進行方向は徐々に鉛直方向に近づいていく。よって、透明層８０を透過する入射光４０ｄは、黒色層９０に、小さい入射角、例えば０度〜１０度程度で入射する。

入射光４０ｄの入射角が小さければ、入射光４０ｄが黒色層９０を反射する反射角も小さくなる。つまり、この反射光の進行方向も鉛直方向に近づく。入射光４０ｄの反射光の進行方向が鉛直方向に近づけば、この反射光は各透明層の界面に入射する入射角を小さくできるため、全反射を起こしにくくなる。これにより、黒色層９０に到達した光が反射し、その反射光４１ｄが空気層５０に到達できる。すなわち、観察者は黒色層９０の黒色を、認識することができる。

このように、図５に示すような黒色層９０の上に積層体１００を設けたものでは、黒色層９０に到達して反射された反射光４１ｄと、各透明層の界面で反射されて段階的に減衰した反射光４１ａ、４１ｂ、４１ｃ、及びその他観察者の目に到達し得るあらゆる反射光とが相俟って、観察者の目に到達する。このとき、反射光４１ｄの光量が最も減衰されている。したがって、この積層体１００に起因する光の減衰作用によって、図５に示すような黒色層９０の上に積層体１００を配置したものは、観察者に対して、深い「深み感」をもつ漆黒調を表現できるものと推測される。

透明層は、透明な樹脂材料からなる樹脂フィルム層を含む。樹脂フィルム層の樹脂材料は、例えば、トリアセチルセルロース等のセルロースエステル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、エチレンノルボルネン共重合体等の環状炭化水素系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ（メタ）アクリルイミド系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂；ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリマー型ウレタンアクリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、などが挙げられる。

樹脂フィルム層の厚さは特に制限されず、所望により任意の厚さにすることができる。例えば、２０μｍ以上５００μｍ以下が望ましい。

また、透明層は、透明インクを塗工してなるクリアコート層を含む。透明インクは、樹脂成分と溶剤（水や有機溶媒）とを含むものであり、具体的には、蒸発乾燥型インク、紫外線硬化型インク、２液硬化型インク等が挙げられる。

蒸発乾燥型インクに含まれる樹脂成分は熱可塑性樹脂であり、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル−スチレン系共重合体、アクリル−ウレタン系共重合体、アクリル−エポキシ系共重合体、ポリウレタンアクリレート、ポリエポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂等が挙げられる。樹脂成分としては、これらの１種を単独で使用してもよいし、２種以上を併用してもよい。

溶剤は，例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−２−メトキシエチル、酢酸−２−エトキシエチル等のエステル系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶剤、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、水などが挙げられる。溶剤としては、これら１種を単独で使用してもよいし、２種以上を併用してもよい。

紫外線硬化型インクは、紫外線硬化型の樹脂と光重合開始剤と溶剤とを含有するインクである。紫外線硬化型樹脂としては、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等が挙げられる。光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン等が挙げられる。溶剤は、蒸発乾燥型インクに含まれるものと同様のものを使用することができる。

２液硬化型インクは、熱硬化性樹脂と架橋剤と溶剤とを含有するインクである。熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。架橋剤としては、ポリイソシアネート、エポキシ樹脂等が挙げられる。溶剤は、蒸発乾燥型インクに含まれるものと同様のものを使用することができる。

クリアコート層の厚さは特に制限されず、所望により任意の厚さにすることができる。例えば、クリアコート層が蒸発乾燥型インクからなるものであれば、その厚さは１μｍ以上１０μｍ以下であることが望ましい。また、クリアコート層が紫外線硬化型インクからなるものであれば、その厚さは１μｍ以上５０μｍ以下であることが望ましい。また、クリアコート層が２液硬化型インクからなるものであれば、その厚さは１μｍ以上３０μｍ以下であることが望ましい。

当該実施形態における積層体は、互いに異なる材質の２層の樹脂フィルム層と１層のクリアコート層からなる。しかしながら積層体は、複数の樹脂フィルム層からなるもの、複数のクリアコート層からなるもの、又は樹脂フィルム層とクリアコート層との組合せ、のいずれとすることも可能である。例えば、積層体の構成として、基材側に１又は複数のクリアコート層を有し、クリアコート層上に１又は複数の樹脂フィルム層を積層したものとすることができる。また、複数のクリアコート層を積層したものとすることや、複数の樹脂フィルム層を積層したものとすることもできる。また、樹脂フィルム層同士の間にクリアコート層を介在させたものとすることもできる。なお、樹脂フィルム層及びクリアコート層が複数積層されている場合には、それぞれの材質は異なっていることが望ましい。

積層体を構成する各透明層の屈折率は、互いに異なっている。ここで、各透明層の屈折率が異なるとは、各透明層の屈折率の差が０．０１以上あることを意味する。また、各透明層の屈折率は、最も外側の透明層から基材に向かって順に大きくなっている。各透明層の屈折率は、１．１以上２．０以下の範囲内であることが望ましく、１．２以上１．７以下であることがより好ましい。また、隣り合う透明層同士の屈折率の差は、０．０１以上０．５以下の範囲内であることが望ましく、０．０３以上０．２以下の範囲内であることがより好ましい。

積層体を構成する透明層のうち、最も基材側に配置された透明層を透過する光が基材上に設けられた黒色層に入射する入射角は、０度以上２０度以下であることが望ましく、０度以上１０度以下であることがより好ましい。このような入射角となるように各透明層を積層して積層体とすることにより、加飾パネルは、より深い「深み感」をもつ漆黒調を観察者に対して表現することができる。

加飾パネルは、公知の方法によって製造され得る。当該実施形態の加飾パネルは、まず、２種以上の樹脂フィルム層からなる樹脂フィルム体を押出成型法によって一体的に成形し、そして、この樹脂フィルム体の表面に、クリアコート層、黒色層、接着層をこの順に積層するようにスクリーン印刷して、フィルム体を成形する。その後、このフィルム体を賦形し、賦形されたフィルム体をインサートした成形型に、基材の樹脂材料を注入するインサート成形法により、当該実施形態の加飾パネルは製造される。

また、他の方法としては、各樹脂フィルム層同士を接着剤によって接合することもできる。各樹脂フィルム層同士を接着するときには、クリアコート層を接着剤として用いてもよい。この場合には、一方の樹脂フィルムの表面に、上記した透明インクを塗工し、この透明インクの上に他方の樹脂フィルムを積層することで、樹脂フィルム層＋クリアコート層＋樹脂フィルム層を有する積層体を形成することができる。いずれの場合においても、基材に設けられた黒色層上の積層体は、最も外側から基材側（黒色層側）に向かって順に各透明層の屈折率が大きくなるように構成される。

黒色層と基材との間には、カラーインク層を設けてもよい。例えば、カラーインク層は、全光線透過率が５０％以上８０％以下程度の有色透明樹脂からなることが望ましい。樹脂材料は上記した樹脂フィルム層と同様のものを用いることができる。

以下、実施形態の加飾パネルにおいて、深い「深み感」をもつ漆黒調の評価を、ＪＩＳ Ｚ ８７２９に規定のＬ＊ａ＊ｂ＊表色系で規定されるＬ＊値を用いて行った。各試験例のＬ＊値は、コニカミノルタ社製分光測色計ＣＭ−７００ｄにより３回測定し、その平均値を出した。Ｌ＊値が小さいもの程、深い「深み感」をもつ漆黒調を表現できる加飾パネルであるといえる。なお、以下の試験例１及び試験例２、試験例５及び６は実施例に相当し、試験例３及び４、試験例７及び８は比較例に相当する。

（試験例１）
試験例１の加飾パネル１は、図１に示すように、３層の透明層３ｂ、３ａ、３ｃからなる積層体３を有する。試験例１の加飾パネル１は、次のようにして形成された。まず、ポリカーボネート（ＰＣ）とアクリル樹脂（ＰＭＭＡ）の２層の透明層からなる樹脂フィルム体を、押出成型法により形成した。その後、この樹脂フィルム体のＰＣ表面上に、クリアコート層となる紫外線硬化型（ＵＶ硬化型）の透明インクと、黒色インクと、接着剤と、をこの順でスクリーン印刷法により塗工し積層させ、フィルム体を形成した。次に、このフィルム体を所定の形状に賦形し、賦形されたフィルム体を、ＰＭＭＡが型面側になるように成形型内に配置した。そして、この成形型内に基材の樹脂材料であるＰＣを充填し、すなわちインサート成形法によって基材とフィルム体とを一体的に成形した。こうして、試験例１の加飾パネル１が形成された。
図１に示すように、形成された試験例１の加飾パネル１では、外側から積層体３、黒色層２１、接着剤層（図示略）が、この順で基材２の上に積層されている。そして、積層体３では、外側から基材２側に向かって、樹脂フィルム層である透明層３ｂ（ＰＭＭＡ）、透明層３ａ（ＰＣ）、クリアコート層である透明層３ｃ（ＵＶ硬化型）が、この順で積層されている。
試験例１における積層体３の各層の厚さは、透明層３ｂ（ＰＭＭＡ）が６０μｍであり、透明層３ａ（ＰＣ）が２４０μｍであり、透明層３ｃ（ＵＶ硬化型）が８μｍであった。また、積層体３の各層の屈折率は、透明層３ｂ（ＰＭＭＡ）が１．４９であり、透明層３ａ（ＰＣ）が１．５８であり、透明層３ｃ（ＵＶ硬化型）が１．６６であった。試験例１の加飾パネル１では、各透明層３ｂ、３ａ、３ｃの屈折率は、最も外側から基材側に向けて順に大きくなっていた。

（試験例２）
試験例２の加飾パネル１は、図２に示すように、３層の透明層からなる積層体３を有する。試験例２の加飾パネル１は、試験例１の加飾パネル１におけるクリアコート層の材料を、ＵＶ硬化型の透明インクから蒸発乾燥型の透明インクに変更した点で異なり、その他の構成及び成形方法は試験例１と同様である。すなわち、試験例２の加飾パネル１における積層体３では、外側から基材２側に向かって、樹脂フィルム層である透明層３ｂ（ＰＭＭＡ）、透明層３ａ（ＰＣ）、クリアコート層である透明層３ｄ（蒸発乾燥型）が、この順で積層されている。
試験例２における積層体３の各層の厚さは、透明層３ｂ（ＰＭＭＡ）が６０μｍであり、透明層３ａ（ＰＣ）が２４０μｍであり、透明層３ｄ（蒸発乾燥型）が６μｍであった。また、積層体３の各層の屈折率は、透明層３ｂ（ＰＭＭＡ）が１．４９であり、透明層３ａ（ＰＣ）が１．５８であり、透明層３ｄ（蒸発乾燥型）が１．６８であった。試験例２の加飾パネル１では、各透明層３ｂ、３ａ、３ｄの屈折率は、最も外側から基材側に向けて順に大きくなっていた。

（試験例３）
試験例３の加飾パネル１０は、図３に示すように、３層の透明層からなる積層体３０を有する。試験例３の加飾パネル１０は、試験例１における積層体３のうち、樹脂フィルム層の透明層３ｂ、３ａの配置（ＰＭＭＡとＰＣとの配置）が逆である点で異なり、その他の構成及び成形方法については試験例１と同様である。すなわち、試験例３における積層体３０は、基材２側のクリアコート層である透明層３ｃ（ＵＶ硬化型）の上に透明層３ｂ（ＰＭＭＡ）が配置され、積層体３０の最も外側に透明層３ａ（ＰＣ）が配置されている。
試験例３における積層体３０では、各層の屈折率は、最も外側から基材側に向けて順に大きくなるような構成を採っていない。

（試験例４）
試験例４の加飾パネル１０は、図４に示すように、３層の透明層からなる積層体３０を有する。試験例４の加飾パネル１０は、試験例２における積層体３のうち、樹脂フィルム層の透明層３ｂ、３ａの配置（ＰＭＭＡとＰＣとの配置）が逆である点で異なり、その他の構成及び成形方法については試験例２と同様である。すなわち、試験例４における積層体３０は、基材２側のクリアコート層である透明層３ｄ（蒸発乾燥型）の上に透明層３ｂ（ＰＭＭＡ）が配置され、積層体３０の最も外側に透明層３ａ（ＰＣ）が配置されている。
試験例４における積層体３０では、各層の屈折率は、最も外側から基材側に向けて順に大きくなるような構成を採っていない。

（試験例５）
試験例５の加飾パネルは、試験例１の加飾パネル１の積層体３において、クリアコート層である透明層３ｃ（ＵＶ硬化型）の厚さを２０μｍとした点で異なり、その他の構成及び成形方法については試験例１と同じである。

（試験例６）
試験例６の加飾パネルは、試験例２の加飾パネル１の積層体３において、クリアコート層である透明層３ｄ（蒸発乾燥型）の厚さを３μｍとした点で異なり、その他の構成及び成形方法については試験例２と同じである。

（試験例７）
試験例７の加飾パネルは、試験例３の加飾パネル１０において、クリアコート層である透明層３ｃ（ＵＶ硬化型）の厚さを２０μｍとした点で異なり、その他の構成及び成形方法については試験例３と同じである。

（試験例８）
試験例８の加飾パネルは、試験例４の加飾パネル１０において、クリアコート層である透明層３ｄ（蒸発乾燥型）の厚さを３μｍとした点で異なり、その他の構成及び成形方法については試験例４と同じである。

以上の試験例におけるＬ＊値の評価を、以下に示す表１及び表２にて表す。

表１に示すように、試験例１及び２のＬ＊値は２６以下となっているのに対して、試験例３及び４のＬ＊値は２８以上となっている。試験例１及び２の加飾パネル１における積層体３では、各透明層の屈折率が、外側から基材側に向かって順に大きくなっている。一方で、試験例３及び４の加飾パネル１０における積層体３０では、各透明層の屈折率は、外側から基材側に向かって順に大きくなるような構成を採っていない。このことから、試験例１及び２の加飾パネル１における積層体３のように、各透明層の屈折率が外側から基材側に向かって順に大きくなる構成を採ることで、黒色層を有する加飾パネルは、観る人に対して深い「深み感」をもつ漆黒調を表現できるといえる。

また表１に示すように、ＵＶ硬化型のクリアコート層を有する試験例１と蒸発乾燥型のクリアコート層を有する試験例２とを比較すると、試験例２の方がＬ＊値の値が小さい。このことにより、クリアコート層として蒸発乾燥型のものを用いる試験例２の方が、より深い「深み感」をもつ漆黒調を表現することに有利であるといえる。

表２は、クリアコート層である透明層の厚さのみを変えたときのＬ＊値を評価したものである。試験例５では、試験例１よりも、積層体におけるクリアコート層（ＵＶ硬化型）の厚さを厚くした。試験例６では、試験例２よりも、積層体におけるクリアコート層（蒸発乾燥型）の厚さを薄くした。試験例７では、試験例３よりも、積層体におけるクリアコート層（ＵＶ硬化型）の厚さを厚くした。試験例８では、試験例４よりも、積層体におけるクリアコート層（蒸発乾燥型）の厚さを薄くした。表２に示すように、いずれの対比においても、透明層の厚さの変化においてＬ＊値の値に著しい変化は見られなかった。このことより、透明層であるクリアコート層における厚さの変化は、Ｌ＊値に影響を与えないことがわかる。

本発明の加飾パネル１は、以下のように表現できる。
＜１＞ 基材２と、基材２上に設けられた黒色層２１と、黒色層２１上に設けられ、屈折率の異なる複数の透明層（３ａ、３ｂ、３ｃ、３ｄ）が積層してなる積層体３と、を備え、積層体３における各透明層（３ａ、３ｂ、３ｃ、３ｄ）の屈折率は、基材２に向かって順に大きくなる加飾パネル１。
＜２＞ 透明層（３ａ、３ｂ、３ｃ、３ｄ）の屈折率は、１．２以上１．７以下の範囲内である＜１＞に記載の加飾パネル１。
＜３＞ 隣り合う透明層（３ａ、３ｂ、３ｃ、３ｄ）同士の屈折率の差が、０．０１以上０．５以下の範囲内である＜１＞又は＜２＞に記載の加飾パネル１。
＜４＞ 積層体３は、透明インクを塗工してなるクリアコート層（３ｃ、３ｄ）を含む＜１＞〜＜３＞の何れか一つに記載の加飾パネル１。
＜５＞ 積層体３は、透明層としてフィルム層（３ａ、３ｂ）とクリアコート層（３ｃ、３ｄ）とを含み、クリアコート層（３ｃ、３ｄ）は、黒色層２１とフィルム層（３ａ、３ｂ）とを接着する＜１＞〜＜３＞の何れか１つに記載の加飾パネル１。
＜６＞ クリアコート層（３ｃ、３ｄ）は、ＵＶ硬化型及び／又は蒸発乾燥型である＜４＞又は＜５＞に記載の加飾パネル１。

１：加飾パネル ２：基材 ２１：黒色層 ３：積層体 ３ａ、３ｂ：樹脂フィルム層（透明層）
３ｃ、３ｄ：クリアコート層（透明層）

Claims (4)

1. 基材と、
   前記基材上に設けられた黒色層と、
   前記黒色層上に設けられ、屈折率の異なる複数の透明層が積層してなる積層体と、を備え、
   前記積層体における各前記透明層の屈折率は、前記基材に向かって順に大きくなり、
   前記積層体は、前記透明層としてフィルム層とクリアコート層とを含み、
   前記クリアコート層は、前記黒色層と前記フィルム層とを接着する加飾パネル。
2. 前記透明層の屈折率は、１．２以上１．７以下の範囲内である請求項１に記載の加飾パネル。
3. 隣り合う前記透明層同士の屈折率の差が、０．０１以上０．５以下の範囲内である請求項１又は２に記載の加飾パネル。
4. 前記クリアコート層は、ＵＶ硬化型及び／又は蒸発乾燥型である請求項１〜３の何れか一項に記載の加飾パネル。

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