JP6759669B2 - シラノール縮合触媒組成物およびシラン架橋ポリエチレン - Google Patents

シラノール縮合触媒組成物およびシラン架橋ポリエチレン Download PDF

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Description

本発明は、シラノール縮合触媒組成物に関する。また、本発明は、このシラノール縮合触媒組成物を用いて得られるシラン架橋ポリエチレン及び成形体に関する。
シラン架橋ポリエチレンは電線、ケーブル等の被覆材、パイプ、ホース、チューブ等の用途において広く用いられている。このようなシラン架橋ポリエチレンは、ポリエチレンに有機シラン化合物をラジカル発生剤の存在下にグラフト重合させ、得られたグラフト重合体をシラノール縮合触媒の存在下で水分を作用させることにより得られるものである。このようなシラノール縮合触媒存在下での水分との反応は「シラン水架橋」と呼ばれ、押出機等の成形加工機中において、ラジカル発生剤をグラフト開始剤としてポリエチレンに作用させ、これによってアルコキシシラン化合物をポリエチレンにグラフト共重合させた後、成形加工機により成形された成形体に、水分を作用させることによって架橋反応を起こさせるものである。架橋反応は、成形体中に予め混入するか、あるいは成形体表面より浸透させたシラノール縮合触媒の作用によるアルコキシシランの加水分解と縮合反応により生ずるものである。
シラン架橋ポリエチレンを得る際に用いるシラノール縮合触媒として、従来、有機スズ化合物が広く用いられてきた。しかしながら、有機スズ化合物は環境ホルモンの懸念により、近年、それに代わるシラノール縮合触媒が求められている。
一方、有機スズ化合物に代わるシラノール縮合触媒として、特許文献1には、トリオレイルホスファイト等の亜リン酸エステル化合物を用いることが記載されている。
特開2012−197404号公報
本発明者の詳細な検討により、上記特許文献2に開示されているような亜リン酸エステル化合物は環境負荷の懸念が低い点でシラノール縮合触媒として有用である一方で、次のような問題点があることがわかった。
ポリエチレンはその製造工程において、塩素等のポリエチレン製造用触媒の残渣を失活ない分解除去するために、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩やハイドロタルサイト類化合物等が中和剤として用いられ、ポリエチレン中に含まれている場合がある。本発明者は上記特許文献1に開示されているような亜リン酸エステル化合物は、ポリエチレン中にこれらの中和剤が含まれる場合、シラノール縮合反応の触媒能が失活してしまうという問題があることを見出した。
本発明は以上のような従来技術の問題点を鑑みてなされたものである。即ち、本発明の課題は、脂肪酸金属塩やハイドロタルサイト類化合物等の中和剤の存在下でも触媒性能が失活しにくく、環境負荷の懸念の低いシラノール縮合触媒組成物、並びにこれを用いて得られるシラン架橋ポリエチレン及び成形体を提供することにある。
本発明者は、特定のシラノール縮合触媒とポリエチレンとを含むシラノール縮合触媒組成物であれば、上記課題を解決し得ることを見出した。即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
[1] ポリエチレンと、下記式(1)で表されるシラノール縮合触媒とを含み、かつ該シラノール縮合触媒の含有量がポリエチレン100重量部に対して0.01〜15重量部であることを特徴とするシラノール縮合触媒組成物。
Figure 0006759669
(式(1)中、nは1又は2の整数を表し、Rは置換基を有していてもよい炭素数5〜30の炭化水素基を表す。)
[2] 中和剤を含み、かつその含有量がポリエチレン100重量部に対して0.001〜10重量部である、[1]に記載のシラノール縮合触媒組成物。
[3] 前記中和剤が脂肪酸金属塩及び/又はハイドロタルサイト類化合物である、[2]に記載のシラノール縮合触媒組成物。
[4] シラン変性ポリエチレンを含み、シラン変性ポリエチレン100重量部に対して前記ポリエチレンと前記シラノール縮合触媒を合計0.1〜30重量部含む、[1]乃至[3]のいずれかに記載のシラノール縮合触媒組成物。
[5] [4]に記載のシラノール縮合触媒組成物を架橋反応させてなるシラン架橋ポリエチレン。
[6] [5]に記載のシラン架橋ポリエチレンを成形してなる成形体。
本発明によれば、脂肪酸金属塩やハイドロタルサイト類化合物等の中和剤の存在下でも触媒性能が失活しにくく、環境負荷の懸念の低いシラノール縮合触媒組成物が提供される。また、このシラノール縮合触媒組成物を用いて、高品質のシラン架橋ポリエチレン及び成形体が提供される。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。なお、本発明において、「〜」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
〔シラノール縮合触媒組成物〕
本発明のシラノール縮合触媒組成物は、ポリエチレンと、下記式(1)で表されるシラノール縮合触媒とを含み、かつ該シラノール縮合触媒の含有量がポリエチレン100重量部に対して0.01〜15重量部であることを特徴とする。
Figure 0006759669
(式(1)中、nは1又は2の整数を表し、Rは置換基を有していてもよい炭素数5〜30の炭化水素基を表す。)
本発明のシラノール縮合触媒組成物は、脂肪酸金属塩やハイドロタルサイト類化合物等の中和剤の存在下でも触媒性能が失活しにくいという効果を奏する。本発明のシラノール縮合触媒組成物がこのような効果を奏する理由は定かではないが、式(1)で表されるシラノール縮合触媒が適度な電離度を有するためであると考えられる。具体的にはシラノール縮合触媒の性能は水素イオンの電離のしやすさに依存し、電離しやすい触媒ほど触媒性能に優れるが、同時に脂肪酸金属塩やハイドロタルサイト類化合物等の中和剤とも反応性が高くなるが、式(1)で表されるシラノール縮合触媒は触媒性能が良好でありながらも中和剤との反応性が低い範囲の電離度を有するものと推定される。
なお、ポリエチレンと式(1)で表されるシラノール縮合触媒とを含む本発明のシラノール縮合触媒組成物は、通常シラノール縮合触媒マスターバッチとして用いられる。また、本発明のシラノール縮合触媒組成物は、更に後述のシラン変性ポリエチレンを含んでいてもよいものであるが、本発明のシラノール縮合触媒組成物がシラン変性ポリエチレンを含む場合、シラン変性ポリエチレンと、ポリエチレンと、式(1)で表されるシラノール縮合触媒とを溶融混練してなるものに限定されず、ポリエチレンと式(1)で表されるシラノール縮合触媒とを含むシラノール縮合触媒マスターバッチと、シラン変性ポリエチレンの原料となるポリエチレン、後述の不飽和シラン化合物及びラジカル発生剤とを溶融混練し、グラフト変性によるシラン変性ポリエチレンの製造と、ポリエチレン及び式(1)で表されるシラノール縮合触媒との溶融混練とを同時に行って製造されるシラノール縮合触媒組成物も本発明のシラノール縮合触媒組成物に包含される。
[ポリエチレン]
本発明のシラノール縮合触媒組成物に用いるポリエチレンは、エチレン単位を50重量%以上含有するものであればその種類は特に制限されない。ただし、このポリエチレンは後述するシラン変性ポリエチレンは含まれず、これとは区別して用いるものとする。
ポリエチレンの種類としては、具体的には、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のエチレン単独重合体;エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ペンテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・ブテン共重合体等のエチレン・α−オレフィン共重合体等、いずれも用いることができる。また、これらのうちの1種を用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いるポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は特に制限されないが、通常0.1g/10分以上であり、好ましくは0.5g/10分以上であり、より好ましくは1g/10分以上であり、一方、通常50g/10分以下であり、好ましくは40g/10分以下であり、より好ましくは30g/10分以下であり、更に好ましくは20g/10分以下であり、特に好ましいのは10g/10分以下である。ポリエチレンのMFRが上記範囲であると、シラン架橋ポリエチレンの成形性の観点から好ましい。なお、本発明において、ポリエチレンのMFRはISO 1133に基づき、温度190℃、荷重21.2Nで測定される値である。
本発明に用いるポリエチレンの密度(JIS K6760)は、通常0.850〜0.970g/cmである。また、ポリエチレンの密度は好ましくは0.855〜0.965g/cmである。
ポリエチレンは市販されているものを用いることができる。例えば、日本ポリエチレン社製、商品名ノバテック(登録商標)HD HJ360、HJ490、HY540、LD400、旭化成ケミカルズ社製クレオレックス(登録商標)K4125、K4750等が挙げられる。
[シラノール縮合触媒]
本発明のシラノール縮合触媒組成物は、下記式(1)で表されるシラノール縮合触媒を含む。本発明のシラノール縮合触媒組成物において、下記式(1)で表されるシラノール縮合触媒がシラン架橋ポリエチレンを得る際のシラノール縮合反応における触媒成分として作用する。
Figure 0006759669
(式(1)中、nは1又は2の整数を表し、Rは置換基を有していてもよい炭素数5〜30の炭化水素基を表す。)
式(1)において、Rは置換基を有していてもよい炭素数5〜30の炭化水素基である。式(1)において、Rの炭素数は、好ましくは6以上であり、より好ましくは10以上であり、更に好ましくは14以上であり、特に好ましいのは18以上であり、最も好ましいのは20以上である。一方、好ましくは28以下であり、より好ましくは26以下である。また、Rは好ましくはアルキル基又はアリール基であり、より好ましくはアルキル基である。
なお、ここでRの炭素数とは、Rが置換基を有する場合、その置換基の炭素数も含めた合計の炭素数をさす。
式(1)のRにおいて、炭素数5〜30のアルキル基としては、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−シクロヘキシル基、tert−シクロヘキシル基、ネオシクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、ネオヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、ネオオクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、ネオノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基、ネオデシル基、n−ウンデシル基、イソウンデシル基、sec−ウンデシル基、tert−ウンデシル基、ネオウンデシル基、n−ドデシル基、イソドデシル基、sec−ドデシル基、tert−ドデシル基、ネオドデシル基、n−トリデシル基、イソトリデシル基、sec−トリデシル基、tert−トリデシル基、ネオトリデシル基、n−テトラデシル基、イソテトラデシル基、sec−テトラデシル基、tert−テトラデシル基、ネオテトラデシル基、n−ペンタデシル基、イソペンタデシル基、sec−ペンタデシル基、tert−ペンタデシル基、ネオペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、sec−ヘキサデシル基、tert−ヘキサデシル基、ネオヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、イソヘプタデシル基、sec−ヘプタデシル基、tert−ヘプタデシル基、ネオヘプタデシル基、n−オクタデシル基、イソオクタデシル基、sec−オクタデシル基、tert−オクタデシル基、ネオオクタデシル基、n−ノナデシル基、イソノナデシル基、sec−ノナデシル基、tert−ノナデシル基、ネオノナデシル基、n−イコシル基、イソイコシル基、sec−イコシル基、tert−イコシル基、ネオイコシル基、n−ヘンイコシル基、イソヘンイコシル基、sec−ヘンイコシル基、tert−ヘンイコシル基、ネオヘンイコシル基、n−ドコシル基、イソドコシル基、sec−ドコシル基、tert−ドコシル基、ネオドコシル基、n−トリコシル基、イソトリコシル基、sec−トリコシル基、tert−トリコシル基、ネオトリコシル基、n−テトラコシル基、イソテトラコシル基、sec−テトラコシル基、tert−テトラコシル基、ネオテトラコシル基、n−ペンタコシル基、イソペンタコシル基、sec−ペンタコシル基、tert−ペンタコシル基、ネオペンタコシル基、n−ヘキサコシル基、イソヘキサコシル基、sec−ヘキサコシル基、tert−ヘキサコシル基、ネオヘキサコシル基、n−ヘプタコシル基、イソヘプタコシル基、sec−ヘプタコシル基、tert−ヘプタコシル基、ネオヘプタコシル基、n−オクタコシル基、イソオクタコシル基、sec−オクタコシル基、tert−オクタコシル基、ネオオクタコシル基、n−ノナコシル基、イソノナコシル基、sec−ノナコシル基、tert−ノナコシル基、ネオノナコシル基、n−トリアコンチル基、イソトリアコンチル基、sec−トリアコンチル基、tert−トリアコンチル基、ネオトリアコンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロヘプタデシル基、シクロオクタデシル基、シクロノナデシル基、シクロイコシル基等が挙げられる。これらの中でもオクチル基、ノニル基、デシル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、へプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、テトラコシル基、ペンタコシシル基、ヘキサコシル基等が好ましく、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、へプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、テトラコシル基、ペンタコシシル基、ヘキサコシル基等が更に好ましく、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、テトラコシル基、ペンタコシシル基、ヘキサコシル基が特に好ましい。
アルキル基の置換基としては、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、アリール基、メタクリロイル基等が挙げられる。
アルキル基の置換基としての炭素数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチロキシ基、1−メチル−n−ブトキシ基、2−メチル−n−ブトキシ基、3−メチル−n−ブトキシ基、1,1−ジメチル−n−プロポキシ基、1,2−ジメチル−n−プロポキシ基、2,2−ジメチル−n−プロポキシ基、1−エチル−n−プロポキシ基、n−ヘキシロキシ基、1−メチル−n−ペンチロキシ基、2−メチル−n−ペンチロキシ基、3−メチル−n−ペンチロキシ基、4−メチル−n−ペンチロキシ基、1,1−ジメチル−n−ブトキシ基、1,2−ジメチル−n−ブトキシ基、1,3−ジメチル−n−ブトキシ基、2,2−ジメチル−n−ブトキシ基、2,3−ジメチル−n−ブトキシ基、3,3−ジメチル−n−ブトキシ基、1−エチル−n−ブトキシ基、2−エチル−n−ブトキシ基、1,1,2−トリメチル−n−プロポキシ基、1,2,2−トリメチル−n−プロポキシ基、1−エチル−1−メチル−n−プロポキシ基及び1−エチル−2−メチル−n−プロポキシ基等が挙げられる。
アルキル基の置換基としてのアリール基としてはフェニル基が挙げられ、アリール基で置換されたアルキル基としては、ベンジル基、メチルベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、フェニルノニル基、フェニルデシル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、ナフチルメチル基、ジフェニルエチル基、フェニルメチルエチル基、フェニルトリメチル基、フェニルメチルプロピル基、フェニルジメチル基、フェニルジメチルエチル基(いずれもすべての置換異性体および分岐異性体を含む)等が挙げられる。
メタクリロイル基で置換されたアルキル基としては、メタクリロイルメチル基、メタクリロイルエチル基、メタクリロイルブチル基、メタクリロイルプロピル基等が挙げられる。
のアリール基としては、炭素数1〜10の炭化水素基で置換されていてもよいフェニル基が挙げられ、例えばフェニル基、ノニルフェニル基、クレジル基、2,4−ジ-t−ブチルフェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基等が挙げられ、なかでもフェニル基、ノニルフェニル基、クレジル基、2,4−ジ-t−ブチルフェニル基等が好ましい。
また、式(1)で表されるシラノール縮合触媒は塩となっていてもよく、この場合、塩としてはナトリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩等の金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらの中で、アルミニウム塩、カルシウム塩が好ましく、アンモニウム塩がより好ましい。
また、塩としては、式(1)で表されるシラノール縮合触媒の有機アルカリ塩であってもよい。その有機アリカリとしては、例えば、アミン類、トリアジン類、水酸化第4級アンモニウム等が挙げられる。
具体的には、アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、トリメタノールアミン、エチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルジアミノメタン、N,N'−ジメチルエチレンジアミン、N,N'−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノへプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、ピペラジン、trans−2,5−ジメチルピペラジン、1,4−ビス(2−アミノエチル)ピペラジン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン等が挙げられる。
トリアジン類としては、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、アクリルグアナミン、2,4−ジアミノ−6−ノニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ハイドロキシ−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4,6−ジハイドロキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−エトキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−プロポキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−イソプロポキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
水酸化第4級アンモニウムとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチル(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、トリエチル(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
本発明のシラノール縮合触媒組成物は、式(1)で表されるシラノール縮合触媒の1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
本発明のシラノール縮合触媒組成物における式(1)で表されるシラノール縮合触媒の含有量は、後述する使用条件においてシラノール縮合触媒としての機能を発現し得る含有量であり、ポリエチレン100重量部に対して0.01〜15重量部である。式(1)で表されるシラノール縮合触媒の含有量は、ポリエチレン100重量部に対し、好ましくは0.1重量部以上であり、より好ましくは0.5重量部以上であり、一方、好ましくは10重量部以下であり、より好ましくは8重量部以下である。式(1)で表されるシラノール縮合触媒の含有量を上記範囲とすることが、シラノール縮合反応において、触媒の失活を抑制して、良好に反応を進行させるために好ましい。
[中和剤]
本発明において、前記式(1)で表されるシラノール縮合触媒は、中和剤の存在下において、触媒性能が低下し難いという効果を奏するため、中和剤を含むシラノール縮合触媒組成物として好適に用いることができる。中和剤は通常、ポリエチレンの製造工程において含まれるものであるが、前述のポリエチレンに含まれるものであってもよく、このような場合に該当する例として、後述するシラン架橋ポリエチレンに含まれる成分として含有される場合が挙げられる。
中和剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸バリウム等のステアリン酸金属塩;ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸マグネシウム等のラウリン酸金属塩;リシノール酸カルシウム、リシノール酸ナトリウム、リシノール酸バリウム、リシノール酸亜鉛、リシノール酸マグネシウム等のリシノール酸金属塩;オクチル酸カルシム、オクチル酸ナトリウム、オクチル酸亜鉛、オクチル酸マグネシウム等の等のオクチル酸金属塩等の脂肪酸金属塩やハイドロタルサイト類化合物等が挙げられる。これらの中でも、中和剤として好ましいのはステアリン酸金属塩、ハイドロタルサイト類化合物である。本発明のシラノール縮合触媒組成物は、これらの中和剤の1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含んでいてもよい。
なお、「ハイドロタルサイト」とは、化学式MgAl(OH)16CO・4HOで表される天然鉱物の呼称であるが、最近では、上記天然鉱物と基本的に近似した構造を有する下記式(2)で表される複水酸化物の総称としても、一般に使用されている。本発明においてはそれらも含めて「ハイドロタルサイト類化合物」と称する。
〔M2+ 1−x3+ (OH)〕(Ax/n・mHO) (2)
式(2)中、M2+は、Mg、Fe、Zn、Ca、Cu、Co、Cd、Hg等の2価の金属イオンを表し、好ましくはMg、Zn又はCaであり、より好ましくはMgである。また、M3+は、Al、Ce、Fe、Mn、In、Cr等の3価の金属イオンを表し、好ましくはAl、Ceであり、より好ましくはAlである。xは0〜0.5の数であり、またmは0より大きい実数で、脱水の程度により変わるが、一般に0〜4の整数である。AはCl、Br、I、NO 、ClO 、SO 2−、CO 2−、SiO 2−、Si 2−、HPO 2−、HBO 2−、PO 3−、Fe(CN) 3−、Fe(CN) 4−、CHCOO、C(OH)COO、(OCOCOO) 、(OCOCCOO) 等が挙げられる。Aとしては、特にCO 2−、SiO 2−、Si 2−が好ましい。また、Aは種類の異なるものが2種以上含まれるものであってもよい。なお、nはAの価数である。
本発明のシラノール縮合触媒組成物が中和剤を含む場合、その含有量は前述のポリエチレン100重量部に対して0.001〜10重量部であることが好ましく、0.01〜8重量部であることがより好ましく、0.02〜1重量部であることが更に好ましい。中和剤の用途において、通常、上記下限以上用いられるが、その含有量が多過ぎると、式(1)で表されるシラノール縮合触媒が失活するおそれがある。
[シラン変性ポリエチレン]
本発明のシラノール縮合触媒組成物において、シラン変性ポリエチレンを配合し、後に詳述するように架橋反応を進行させることによりシラン架橋ポリエチレンを得ることができる。
本発明に用いることのできるシラン変性ポリエチレンは、ポリエチレンに不飽和シラン化合物を反応させて得られたものであれば、特に制限されない。ここで用いることのできるポリエチレンとしては前述の本発明に用いるポリエチレンとして挙げたものをいずれも用いることができる。また、シラン変性ポリエチレンに用いることのできる不飽和シラン化合物は特に制限されないが、下記式(3)で表される化合物が好ましい。
Si(R (3)
上記式(3)において、Rはエチレン性不飽和炭化水素基であり、Rは互いに独立して炭素数1〜10の炭化水素基又は炭素数1〜10のアルコキシ基であり、Rのうちの少なくとも1つは炭素数1〜10のアルコキシ基である。
式(3)において、Rは好ましくは炭素数2〜10のエチレン性不飽和炭化水素基であり、より好ましくは炭素数2〜6のエチレン性不飽和炭化水素基である。具体的には、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基が挙げられる。
式(3)において、Rは好ましくは炭素数1〜6の炭化水素基又は炭素数1〜6のアルコキシ基であり、より好ましくは炭素数1〜4の炭化水素基又は炭素数1〜4のアルコキシ基である。また、Rのうちの少なくとも1つは、好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基である。
の炭素数1〜10の炭化水素基はアルキル基、脂肪族基、脂環族基、芳香族基のいずれであってもよいが、アルキル基であることが望ましい。また、Rの炭素数1〜10のアルコキシ基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、直鎖状又は分岐状であることが好ましい。Rが炭化水素基の場合、具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、シクロヘキシル基等に代表されるアルキル基、又はフェニル基等に代表されるアリール基等が挙げられる。Rがアルコキシ基の場合、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、β−メトキシエトキシ基が挙げられる。
不飽和シラン化合物が前記式(3)で表される場合、3つのRのうち少なくとも1つはアルコキシ基であるが、2つのRがアルコキシ基であることが好ましく、全てのRがアルコキシ基であることがより好ましい。
不飽和シラン化合物としては、式(3)で表されるものの中でもビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、プロペニルトリメトキシシラン等に代表されるビニルトリアルコキシシランが望ましい。これはビニル基によってポリエチレンへの変性を可能とし、アルコキシ基によって後述の架橋反応が進行するからである。即ち、不飽和シラン化合物により変性ポリエチレンにグラフト変性されて導入されたアルコキシ基が、シラノール縮合触媒の存在下、水と反応して加水分解してシラノール基を生成させ、シラノール基同士が脱水縮合することにより、変性ポリエチレン同士が結合して架橋反応が起こる。
なお、これらの不飽和シラン化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明で用いるシラン変性ポリエチレンは、不飽和シラン化合物の変性量(グラフト変性によりシラン変性ポリエチレンに導入された不飽和シラン化合物量)が、0.1〜5重量%であることが好ましい。変性量が上記下限値以上であることが耐熱性の観点から好ましい。また、変性量が上記上限値以下であると成形性の観点から好ましい。これらをより良好なものとする観点から、不飽和シラン化合物の変性量は、より好ましくは0.2重量%以上であり、更に好ましくは0.3重量%以上であり、一方、より好ましくは5.0重量%以下であり、更に好ましくは3.0重量%以下である。
不飽和シラン化合物の変性量は、変性前のエチレンに対するグラフト変性により導入された不飽和シラン化合物の重量割合であり、ゲル分率により確認することができる。ゲル分率はキシレン沸点抽出後の不溶部の重量割合であり、サンプルをシラノール縮合触媒とドライブレンド後、通常のポリオレフィン樹脂を成形する条件で射出または押出し、80℃の温水で24時間架橋処理を行い、サンプルをキシレンにてソックスレー抽出を行い、キシレン乾燥後の重量を測定することにより確認することができる。
なお、シラン変性ポリエチレンは、本発明の効果を損なわない範囲で不飽和シラン化合物以外の化合物を併用してグラフト変性したものであってもよい。不飽和シラン化合物以外の化合物としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和カルボン酸、及び、これらの酸無水物等が例示される。
シラン変性ポリエチレンは、ポリエチレンに上記の不飽和シラン化合物をグラフト変性することにより製造することができる。グラフト変性の方法には特に制限は無く、公知の手法に従って行うことができ、例えば、溶液変性、溶融変性、電子線や電離放射線の照射による固相変性、超臨界流体中での変性等が好適に用いられる。これらの中でも設備やコスト競争力に優れた溶融変性が好ましく、連続生産性に優れた押出機を用いた溶融混練変性が更に好ましい。溶融混練変性に用いられる装置としては、例えば単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー等が挙げられる。これらの中でも連続生産性に優れた単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機が好ましい。
一般に、ポリエチレンへの不飽和シラン化合物のグラフト変性は、ポリエチレンの炭素−水素結合を開裂させて炭素ラジカルを発生させ、これへ不飽和官能基が付加する、といったグラフト反応によって行われる。炭素ラジカルの発生源としては、上述した電子線や電離放射線の他、高温度とする方法や、有機、無機過酸化物等のラジカル発生剤を用いることで行うこともできる。コストや操作性の観点で有機過酸化物を用いることが好ましい。
シラン変性ポリエチレンを製造する際に用いるラジカル発生剤には限定は無いが、例えば、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル及びケトンパーオキサイド群に含まれる有機過酸化物、並びにアゾ化合物等が挙げられる。
具体的には、例えば、ハイドロパーオキサイド群にはキュメンハイドロパーオキサイド、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド等が含まれ、ジアルキルパーオキサイド群にはジクミルパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキシン−3等が含まれ、ジアシルパーオキサイド群にはラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等が含まれる。パーオキシエステル群にはターシャリーパーオキシアセテート、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエイト、ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等が含まれ、ケトンパーオキサイド群にはシクロヘキサノンパーオキサイド等が含まれる。アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、メチルアゾイソブチレート等が挙げられる。
これらのラジカル発生剤は1種類を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
一般的に用いられる溶融押出変性の操作としては、ポリエチレン、不飽和シラン化合物、及び有機過酸化物を配合、ブレンドして混練機や押出機に投入し、加熱溶融混練しながら押出しを行い、先端ダイスから出てくる溶融樹脂を水槽等で冷却してシラン変性ポリエチレンを得るものである。
ポリエチレンと不飽和シラン化合物との配合の比率としては特に制限はないが、好ましい配合の範囲としては、ポリエチレン100重量部に対し、不飽和シラン化合物が0.5〜10重量部である。ポリエチレンに対して不飽和シラン化合物が少なすぎると、目的とする効果を奏するために必要な所定の変性量が得られない場合があり、また多すぎると未反応の不飽和シラン化合物が多量に残留し、性能に悪影響を及ぼす可能性を生じる。
不飽和シラン化合物と有機過酸化物との配合の比率としては特に制限はないが、好ましい配合の範囲としては、不飽和シラン化合物100重量部に対し、有機過酸化物が0.01〜3重量部である。不飽和シラン化合物に対して有機過酸化物の量が上記下限値以上であると、十分な量のラジカルが発生して必要な所定の変性量が得られ易く、また、上記上限値以下であるとポリエチレンの劣化を抑えやすくなる傾向にある。
また、溶融押出変性条件としては、例えば単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機においては150〜300℃程度の温度で押出すことが好ましい。
本発明のシラノール縮合触媒組成物がシラン変性ポリエチレンを含有する場合、シラン変性ポリエチレン100重量部に対して、前記ポリエチレンと前記シラノール縮合触媒とを合計で0.1〜30重量部含有することが好ましく、合計0.5〜20重量部含有することがより好ましく、1〜10重量部含有することが更に好ましい。本発明のシラノール縮合触媒組成物において、シラン変性ポリエチレンと、ポリエチレン及びシラノール縮合触媒とを上記の配合量で用いることがシラノール縮合反応の失活を抑え、架橋反応を良好に進行させる観点から好ましい。
[その他の成分]
本発明のシラノール縮合触媒組成物には、以上に挙げた成分以外に本発明の効果を著しく損なわない範囲内で、各種目的に応じて以下の添加剤やポリエチレン以外の樹脂(以下、「その他の樹脂」と称する。)等の任意成分を配合することができる。
添加剤としては、酸化防止剤、滑剤、着色剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防雲剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、難燃剤、分散剤、帯電防止剤、導電性付与剤、金属不活性剤、分子量調整剤、防菌剤、蛍光増白剤等を挙げることができる。これらの成分は目的に応じて、1種のみで用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤を用いる場合には通常、ポリエチレン及びシラン変性ポリエチレンの合計100重量部に対して0.01〜3重量部の範囲で用いられる。
滑剤としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、シリコーンオイル等が挙げられる。滑剤を用いる場合には通常、ポリエチレン及びシラン変性ポリエチレンの合計100重量部に対して0.01〜3重量部の範囲で用いられる。
本発明のシラノール縮合触媒組成物が含有し得るその他の樹脂としては、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂(ただし、ポリエチレン又はシラン変性ポリエチレンに該当するものを除く。)、各種エラストマー(ただし、ポリエチレン又はシラン変性ポリエチレンに該当するものを除く。)等が挙げられる。上記で挙げたその他の樹脂は1種のみを含有しても2種以上を含有してもよい。その他の樹脂は、ポリエチレン又はシラン変性ポリエチレン100重量部に対し、通常50重量部以下で用いられる。
〔シラン架橋ポリエチレン〕
本発明のシラノール縮合触媒組成物において、前述のシラン変性ポリエチレンを配合して架橋反応させることによりシラン架橋ポリエチレンを得ることができる。この架橋反応は通常、シラン変性ポリエチレンを含むシラノール縮合触媒組成物を押出成形、射出成形、プレス成形等の各種成形方法により成形した後、水雰囲気中に曝すことにより、シラノール基間の架橋反応を進行させることにより実施することができる。水雰囲気中に曝す方法は、各種の条件を採用することができ、水分を含む空気中に放置する方法、水蒸気を含む空気を送風する方法、水浴中に浸漬する方法、温水を霧状に散水させる方法等が挙げられる。
この架橋反応においては、シラン変性ポリエチレンにおける加水分解可能なアルコキシ基が本発明のシラノール縮合触媒組成物中の前記シラノール縮合触媒の存在下、水と反応して加水分解することによりシラノール基が生成し、更にシラノール基同士が脱水縮合することにより、架橋反応が進行し、シラン変性ポリエチレン同士が結合してシラン架橋ポリエチレンを生成する。
架橋反応の進行速度は水雰囲気中に曝す条件によって決まるが、通常20〜130℃の温度範囲、かつ10分〜1週間の範囲で曝せばよい。特に好ましい条件は、60〜110℃の温度範囲、1時間〜160時間の範囲である。水分を含む空気を使用する場合、相対湿度は1〜100%の範囲から選択される。
シラン架橋ポリエチレンが長期間に亘って優れた特性を発揮するために、シラン架橋ポリエチレンのゲル分率(架橋度)は、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることが更に好ましく、50%以上であることが特に好ましい。ゲル分率は、変性ポリエチレンの不飽和シラン化合物のグラフト率(変性量)、シラノール縮合触媒であるシラノール縮合触媒の種類と配合量、架橋させる際の条件(温度、時間)等を変えることにより、調整することができる。このゲル分率の上限は特に制限されないが、通常100%(完全架橋)以下、好ましくは90%以下である。ここで、ゲル分率は、ソックスレー抽出器を用いて沸騰キシレンにて10時間抽出を行ったときの不溶物を抽出前の重量に対する百分率として表したものであり、具体的には、後掲の実施例の項に記載される方法により測定される。
〔成形体〕
本発明のシラノール縮合触媒組成物及びそれを用いて得られるシラン架橋ポリエチレンは前述の通り、押出成形、射出成形、プレス成形等の各種成形方法により成形体とすることができる。この成形体は電線・ケーブル被覆材、パイプ、ホース、チューブ、各種容器、シーリング材、フィルム、シート等の各種形状、態様で好適に用いることができる。
以下、実施例を用いて本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味を持つものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
[実施例1−1及び比較例1−1、1−2]
<原料>
以下の原料を用いた。
(シラノール縮合触媒)
・シラノール縮合触媒−1(城北化学工業社製 JP‐524R(テトラコシルアシッドホスフェート、式(1)おいて、nが1又は2の混合物であり、Rが−C2449であるもの))
・シラノール縮合触媒−2(比較例用)(城北化学工業社製 DBP(ジブチルホスフェート、式(1)において、nが2、Rが−Cであるもの))
・シラノール縮合触媒−3(比較例用)(城北化学工業社製 JPE‐208(ビス(2−エチルヘキシル)ハイドロゲンホスファイト、下記式(4)で表される化合物)
Figure 0006759669
(ポリエチレン)
・ポリエチレン−1:日本ポリエチレン社製「LD400」
(その他の成分)
・酸化防止剤−1:BASF社製 RA1010
・酸化防止剤−2:BASF社製 MD1024
・酸化防止剤−3:住友化学社製 スミライザー(登録商標)WXRC
・滑剤−1:デュポン社製 バイトン(登録商標)フリーフローSCPL100
<シラノール縮合触媒マスターバッチの製造>
上記の各原料を表−1に示す配合割合で、内容量1.0Lの加圧ニーダーへ挿入し、加圧ニーダーの設定温度120℃で混練し、せん断発熱による自己発熱で樹脂温度が150℃になった時点で混練を終了した。得られた混合物をロールによりシート化した後、ペレタイザーでペレット化してシラノール縮合触媒マスターバッチを製造した。
Figure 0006759669
[実施例2−1及び比較例2−1、2−2]
<原料>
以下の各原料を用いた。
・シラン変性ポリエチレン(三菱化学社製、リンクロン(登録商標)XCF800N)
・シラノール縮合触媒マスターバッチ(実施例1−1、比較例1−1及び比較例1−2のそれぞれにおいて製造したもの)
・ステアリン酸カルシウム(日東化成工業社製)
・ハイドロタルサイト類化合物DHT−4A(登録商標)(協和化学工業社製、Mg4.3Al(OH)12.6CO・mHO)
<シラノール縮合触媒組成物及びシラン架橋ポリエチレンの製造及び評価>
上記原料を用い、表−2に示す配合割合で混合したものを20mmφ押出機で温度210℃にて押出し、厚み1mmの押出しシートを作成した。得られた押出しシートを80℃の温水に所定時間浸漬することにより架橋処理を行い、シラン架橋ポリエチレンを得た。得られたシラン架橋ポリエチレンの押出しシートを用いてゲル分率の測定を行った。これらの結果を表−2に示す。
表−2中のゲル分率は、シラン架橋ポリエチレンのシート(厚さ1mm)を144℃の沸騰キシレン中で10時間ソックスレー抽出を行い、次いで、溶解しなかった樹脂を乾燥後に重量を測定し、ソックスレー抽出前のサンプル重量に対する割合(%)として算出した。中和剤を含む場合と含まない場合とでゲル分率の値の差が小さいものが好ましい。
Figure 0006759669
<評価結果>
表−2のゲル分率の値から明らかなとおり、実施例2−1と比較例2−1、2−2、2−3のそれぞれにおいて、ステアリン酸カルシウム、またはハイドロタルサイト類化合物を配合していない場合には、ゲル分率の値は同等であり、いずれのシラン架橋ポリエチレンもシラノール縮合反応が同程度の触媒活性で進行して得られたものであることがわかる。一方、ステアリン酸カルシウムまたはハイドロタルサイト類化合物を配合した場合について比較すると、実施例2−1、2−2と比べて比較例2−1〜2−3ではいずれもゲル分率の値が大きく低下しており、シラノール縮合反応の進行が不十分であることがわかる。即ち、シラノール縮合触媒組成物にステアリン酸カルシウムまたはハイドロタルサイト類化合物を配合した場合、比較例2−1、2−2、2−3では触媒活性が大きく低下するのに対し、実施例2−1,2−2では触媒活性の低下が低いことがわかる。

Claims (6)

  1. ポリエチレンと、下記式(1)で表されるシラノール縮合触媒と、中和剤とを含み、かつ該シラノール縮合触媒の含有量がポリエチレン100重量部に対して0.01〜15重量部で、該中和剤の含有量がポリエチレン100重量部に対して0.001〜10重量部であることを特徴とするシラノール縮合触媒組成物。
    Figure 0006759669
    (式(1)中、nは1又は2の整数を表し、Rは置換基を有していてもよい炭素数5〜30の炭化水素基を表す。)
  2. 前記中和剤が脂肪酸金属塩及び/又はハイドロタルサイト類化合物である、請求項1に記載のシラノール縮合触媒組成物。
  3. シラン変性ポリエチレンを含み、シラン変性ポリエチレン100重量部に対して前記ポリエチレンと前記シラノール縮合触媒を合計0.1〜30重量部含む、請求項1又は2に記載のシラノール縮合触媒組成物。
  4. 請求項3に記載のシラノール縮合触媒組成物中の前記シラン変性ポリエチレンを前記シラノール縮合触媒で架橋反応させてなるシラン架橋ポリエチレンであって、前記ポリエチレンと前記中和剤と前記シラノール縮合触媒とを含むシラン架橋ポリエチレン。
  5. 以下の方法で測定される前記シラン架橋ポリエチレンのゲル分率が65%以上である、請求項4に記載のシラン架橋ポリエチレン。
    <ゲル分率の測定方法>
    架橋処理で得られたシラン架橋ポリエチレンのシート(厚さ1mm)を144℃の沸騰キシレン中で10時間ソックスレー抽出を行い、次いで、溶解しなかった樹脂を乾燥後に重量を測定し、ソックスレー抽出前のサンプル重量に対する割合(%)として算出する。
  6. 請求項4又は5に記載のシラン架橋ポリエチレンを成形してなる成形体。
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