JP6759120B2 - 波動歯車減速機の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の目的の一つは、負荷トルク性能および生産性を共に向上できる波動歯車減速機の製造方法を提供することにある。
図1は、実施形態1の内燃機関用リンク機構のアクチュエータAを備えた内燃機関の概略図である。基本的な構成は、特開2011-169152号公報の図1に記載されているものと同じであるため、簡単に説明する。
内燃機関のシリンダブロックのシリンダ内を往復運動するピストン1には、ピストンピン2を介してアッパリンク3の上端が回転自在に連結されている。アッパリンク3の下端には、連結ピン6を介してロアリンク5が回転自在に連結されている。ロアリンク5には、クランクピン4aを介してクランクシャフト4が回転自在に連結されている。また、ロアリンク5には、連結ピン8を介して第1制御リンク7の上端部が回転自在に連結されている。第1制御リンク7の下端部は、複数のリンク部材を有する連結機構9と連結されている。連結機構9は、第1制御軸10、第2制御軸(制御軸)11および第2制御リンク12を有する。
図2は実施形態1の内燃機関用リンク機構のアクチュエータAの断面図、図3は実施形態1の波動歯車減速機21の分解等角図である。内燃機関用リンク機構のアクチュエータAは、電動モータ22、波動歯車減速機21、ハウジング20および第2制御軸11を有する。
電動モータ22は、例えばブラシレスモータであり、モータケーシング45、コイル46、ロータ47およびモータ出力軸48を有する。モータケーシング45は、有底円筒状に形成されている。コイル46は、モータケーシング45の内周面に固定されている。ロータ47は、コイル46の内側に回転自在に設けられている。モータ出力軸48は、一端部48aがロータ47の中心に固定されている。
モータ出力軸48は、モータケーシング45の底部に設けられたボールベアリング52により回転可能に支持されている。第2制御軸11は、ハウジング20に回転自在に支持されている。第2制御軸11は、軸部本体23および固定用フランジ24を有する。軸部本体23は、軸方向に延在する。固定用フランジ24は、軸部本体23の一端部に位置し、径方向外側に立ち上がる。第2制御軸11は、鉄系金属材料により軸部本体23および固定用フランジ24が一体形成されている。固定用フランジ24は、外周部の円周方向に複数のボルト挿通孔が等間隔に形成されている。このボルト挿通孔にボルトを挿通し、波動歯車減速機21の可撓性外歯車36のフランジ部36bと結合する。
波動歯車減速機21は、電動モータ22の先端側に取り付けられ、ハウジング20の内部に収容されている。波動歯車減速機21は、ハウジング20の開口溝部20a内に収容されている。開口溝部20a内であって、波動歯車減速機21の重力方向上方には、図外の油圧源等から潤滑油を供給する供給孔20bが開口する。供給孔20bから潤滑油が供給されると、下方の波動歯車減速機21に潤滑油が滴下され、各回転要素間を潤滑する。波動歯車減速機21は、ハウジング20の開口溝部20a内にボルト固定されている。波動歯車減速機21は、剛性内歯車27、可撓性外歯車36および波動発生器37を有する。
剛性内歯車27は、内周に複数の内歯27aを有する剛体円環状部材である。
波動発生器37は、楕円形上に形成され、外周面が可撓性外歯車36の内周面に沿って摺動する。波動生成プラグ371の中央には、モータ出力軸48が圧入により固定されている。波動発生器37は、波動生成プラグ371および深溝玉軸受372を有する。波動生成プラグ371は、楕円形状である。深溝玉軸受372は、波動生成プラグ371の外周および可撓性外歯車36の内周間の相対回転を許容する可撓性の薄肉内外輪を有する。
可撓性外歯車36の歯部は可撓性であるが、フランジ部36bは出力を取り出すために円形状から変形させることはできず、第2制御軸11と直接締結されるため、フランジ部36bを起点として薄肉円筒開口端部に向かって楕円形状へと広がる形となる。すなわち、開口端部付近での変形運動から取り出される可撓性外歯車36の回転運動をフランジ部36bから第2制御軸11へと伝達できる。
また、深溝玉軸受372の外輪と可撓性外歯車36は嵌合されているため、外輪の変形運動に追従して可撓性外歯車36も変形運動を行う。この変形運動が、剛性内歯車27および可撓性外歯車36間における長軸上噛み合い位置を変化させる。これにより、剛性内歯車27上の定点から歯部を拡大して観測した場合、歯同士での軸直交方向への相対運動となる。そして、可撓性外歯車36が剛性内歯車27に対し差分による周方向位置が変化することにより周方向への運動が重ね合わされて、可撓性外歯車36の外歯36aは内歯27aの歯面に沿って内径側へ移動する。
(i) 第1決定工程
第1決定工程では、減速比i、剛性内歯車27および可撓性外歯車36の基準ピッチ円半径ri,reを決める。減速比iは、波動歯車減速機21に要求される減速比とする。剛性内歯車27の基準ピッチ円半径riは、波動歯車減速機21の基準体格となるものであり、例えば、衝撃荷重または疲労荷重(荷重+回転数)に基づいて決定する。可撓性外歯車36の基準ピッチ円半径reは、減速比iおよび剛性内歯車27の基準ピッチ円半径riから、下記の式(1)に示す関係を用いて決定する。
第2決定工程では、内歯27aおよび外歯36aの形状を決める。具体的には、第1決定工程で決めた可撓性外歯車36の基準ピッチ円半径reから、外歯36aの歯形を、任意の歯元たけ、歯末たけ、圧力角、歯圧、歯先円弧および歯底円弧を持つ直線歯形とする。図5は、第2決定工程で決定した外歯36aの模式図であり、外歯36aのピッチ円直径を実際の寸法よりも長くし、基準ピッチ円半径reを直線に近い曲線として図示したものである。図5に示すように、外歯36aは、歯面基本曲線に直線を有する直線歯形となる。
また、内歯27aの歯形を、下記の式(2)および式(3)の関係を満たし、歯先円弧半径を0とした直線歯形とする。
第3決定工程では、第2決定工程で決めた外歯36aの歯形を用いて、剛性内歯車27の基準ピッチ円半径riに対して、可撓性外歯車36の内転サイクロイド運動によって生じる外歯36aの移動包絡線を求める。そして、外歯36aの移動包絡線から内歯27aの歯先曲線を決定する。
まず、剛性内歯車27の基準ピッチ円半径riに対して、可撓性外歯車36の内転サイクロイド運動を実施することで、可撓性外歯車36の外歯36aの移動軌跡を導出する。可撓性外歯車36の内転サイクロイド運動は、減速比i、剛性内歯車27の基準ピッチ円半径riおよび可撓性外歯車36の基準ピッチ円半径reから、下記の式(4)で表される。
このようにして表される各θの位置における外歯36aの移動後の座標を図7に示す。図7は、内歯27aのピッチ円直径を実際の寸法よりも長くし、基準ピッチ円半径riを直線に近い曲線として図示したものである。図7に示すように、可撓性外歯車36は真円無変形状態を前提としており、外歯36aは内歯27aよりも2歯少ないため、外歯36aは1歯飛ばしで内歯27aと噛み合う。
また、波動歯車減速機の歯形を決定する上で、薄肉円筒状部材の変形による薄肉円筒状部材上の歯の移動状態の解明のために、数値解析を用いた方法等で楕円変形後における歯の様子を把握し、変形の時刻歴により薄肉円筒状部材上の歯の移動を確認する手法が主である。これにより任意に定めた歯形に対して従来歯車の設計手法に基づき、歯先の修正を行い、または転位させることで歯先干渉(トロコイド干渉)を回避しているが、数値解析の環境や条件による解析結果の揺らぎ生じやすく、歯形の決まり方が曖昧になり定量的な歯形設計が困難であった。
また、両歯27a,36aは歯面基本曲線に直線を有する直線歯形であり、外歯36aの形状は任意に設計できる。そして、内歯27aの歯先は真円無変形状態の可撓性外歯車36を内転サイクロイド運動させたときに描かれる外歯36aの移動包絡線に沿う形状である。このため、歯形設計の制約が少なく、歯面の曲線の複雑化を抑制できる。さらに、可撓性外歯車36の楕円変形後における歯の様子を把握するための複雑な数値解析を必要としないため、数値解析の環境や条件による解析結果の揺らぎが生じにくく、定量的な歯形設計が容易である。この結果、従来の波動歯車減速機よりも生産性を向上できる。
(1) 直線歯形である複数の外歯36aを有する可撓性外歯車36と、可撓性外歯車36の外周に配置され、直線歯形であって外歯36aよりも歯数の多い内歯27aを有し、軸方向から見たとき内歯27aの歯先が外歯36aの移動包絡線と一致する形状である剛性内歯車27と、可撓性外歯車36を半径方向に撓めて剛性内歯車27に対して部分的に噛み合わせると共に、回転軸まわりに回転することで噛み合わせ部分を周方向に移動させる波動発生器37と、を有する。
よって、両歯27a,36aの歯形を、歯面基本曲線に直線を有する直線歯形とすることにより、歯面の曲線の複雑化を抑制できるため、生産性を向上できる。また、内歯27aの先端を外歯36aの移動包絡線と一致させることにより、歯先干渉を回避しつつ、広域接触噛み合いが可能となるため、負荷トルク性能を向上できる。この結果、負荷トルク性能および生産性を共に向上できる。
(2) 移動包絡線は、撓ませない真円状態の可撓性外歯車36を想定し、真円状態の可撓性外歯車36を、剛性内歯車27との噛み合い基準ピッチ円上で内転サイクロイド運動させた際の外歯36aの軌跡である。
よって、可撓性外歯車36の楕円変形後における歯の様子を把握するための複雑な数値解析が不要であるため、数値解析の環境や条件による解析結果の揺らぎが生じにくく、定量的な歯形設計が容易となる。
よって、減速比iおよび両基準ピッチ円半径ri,reから内歯27aの歯先形状が得られる。
(4) 内歯27aと外歯36aの圧力角αINT,αEXTはほぼ同じ(αINT=αEXT)である。
よって、歯面同士を接触したまま滑りなく噛み合わせることができるため、直線歯形同士による広域接触噛み合いを実現できる。
(5) 直線歯形である複数の内歯27aを有する剛性内歯車27と、直線歯形である複数の外歯36aを有し、剛性内歯車27の内側に配置された可撓性外歯車36と、可撓性外歯車36を半径方向に撓めて剛性内歯車27に対して部分的に噛み合わせると共に、回転軸まわりに回転することで噛み合わせ部分を周方向に移動させる波動発生器37と、を備えた波動歯車減速機21の製造方法において、可撓性外歯車36の基準ピッチ円半径re、剛性内歯車27の基準ピッチ円半径riおよび波動歯車減速機21の減速比iを決める第1決定工程と、両基準ピッチ円半径re,riに基づき外歯36aおよび内歯27aの形状を決める第2決定工程と、外歯36aの移動包絡線によって内歯27aの歯先の形状を決定する第3決定工程と、を有する。
よって、両歯27a,36aの歯形を、歯面基本曲線に直線を有する直線歯形とすることにより、歯面の曲線の複雑化を抑制できるため、生産性を向上できる。また、内歯27aの先端を外歯36aの移動包絡線と一致させることにより、歯先干渉を回避しつつ、広域接触噛み合いが可能となるため、負荷トルク性能を向上できる。この結果、負荷トルク性能および生産性を共に向上できる。
よって、両歯27a,36aの歯形を、歯面基本曲線に直線を有する直線歯形とすることにより、歯面の曲線の複雑化を抑制できるため、生産性を向上できる。また、内歯27aの先端を外歯36aの移動包絡線と一致させることにより、歯先干渉を回避しつつ、広域接触噛み合いが可能となるため、負荷トルク性能を向上できる。この結果、負荷トルク性能および生産性を共に向上できる。
実施形態2は、内歯27aの歯先形状の決定方法が実施形態1と相違する。以下、実施形態1と異なる部分のみを説明する。
実施形態2の第3決定工程では、内歯27aの歯先形状を、式(6)で表される包絡線の曲率の近似円弧とし、下記の式(7)の条件を満たす曲率kを有する円弧歯先とする。
実施形態2は以下の効果を奏する。
(7) 内歯27aの歯先は、移動包絡線の曲率の近似円弧に沿う。
よって、内歯27aの歯先形状をより容易化できるため、生産性を向上できる。
以上、本発明を実施するための実施形態を説明したが、本発明の具体的な構成は実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、本発明の波動歯車減速機は、内燃機関用リンク機構のアクチュエータに限らず、特開2015-1190号公報や特開2011-231700号公報等に記載された内燃機関のバルブタイミング制御装置や、操舵角に対する転舵角を変更可能な可変舵角機構にも適用可能である。
波動歯車減速機は、その一つの態様において、直線歯形である複数の外歯を有する可撓性外歯車と、前記可撓性外歯車の外周に配置され、直線歯形であって前記外歯よりも歯数の多い内歯を有し、軸方向から見たとき前記内歯の歯先が前記外歯の移動包絡線と一致または重なる形状である剛性内歯車と、前記可撓性外歯車を半径方向に撓めて前記剛性内歯車に対して部分的に噛み合わせると共に、回転軸まわりに回転することで噛み合わせ部分を周方向に移動させる波動発生器と、を有する。
より好ましい態様では、上記態様において、前記移動包絡線は、撓ませない真円状態の前記可撓性外歯車を想定し、前記真円状態の可撓性外歯車を、前記剛性内歯車との噛み合い基準ピッチ円上で内転サイクロイド運動させた際の前記外歯の軌跡である。
別の好ましい態様では、上記態様のいずれかにおいて、前記波動歯車減速機の減速比をi、前記可撓性外歯車の基準ピッチ円半径をre、前記剛性内歯車の基準ピッチ円半径をri、回転角をθとし、前記剛性内歯車の軸心に対して軸直角方向にx軸、前記x軸に対して直角方向にy軸を定義したとき、
前記内歯の歯先は、回転角θを変数とする下記の式
さらに別の好ましい態様では、上記態様のいずれかにおいて、前記内歯と前記外歯の圧力角はほぼ同じで。
また、他の観点から、波動歯車減速機の製造方法は、ある態様において、直線歯形である複数の内歯を有する剛性内歯車と、直線歯形である複数の外歯を有し、前記剛性内歯車の内側に配置された可撓性外歯車と、前記可撓性外歯車を半径方向に撓めて前記剛性内歯車に対して部分的に噛み合わせると共に、回転軸まわりに回転することで噛み合わせ部分を周方向に移動させる波動発生器と、を備えた波動歯車減速機の製造方法において、前記可撓性外歯車の基準ピッチ円半径re、前記剛性内歯車の基準ピッチ円半径riおよび前記波動歯車減速機の減速比iを決める第1決定工程と、前記両基準ピッチ円半径re,riに基づき前記外歯および前記内歯の形状を決める第2決定工程と、前記外歯の移動包絡線によって前記内歯の歯先の形状を決定する第3決定工程と、を有する。
好ましくは、上記態様において、前記移動包絡線は、撓ませない真円状態の前記可撓性外歯車を想定し、前記真円状態の可撓性外歯車を、前記剛性内歯車との噛み合い基準ピッチ円上で内転サイクロイド運動させた際の前記外歯の軌跡である。
別の好ましい態様では、上記態様のいずれかにおいて、回転角をθとし、前記剛性内歯車の軸心に対して軸直角方向にx軸、前記x軸に対して直角方向にy軸を定義したとき、前記内歯の歯先は、回転角θを変数とする下記の式
11 第2制御軸(制御軸)
20 ハウジング
21 波動歯車減速機
22 電動モータ
27 剛性内歯車
27a 内歯
36 可撓性外歯車
36a 外歯
37 波動発生器
48 モータ出力軸
Claims (3)
- 直線歯形である複数の内歯を有する剛性内歯車と、
直線歯形である複数の外歯を有し、前記剛性内歯車の内側に配置された可撓性外歯車と、
前記可撓性外歯車を半径方向に撓めて前記剛性内歯車に対して部分的に噛み合わせると共に、回転軸まわりに回転することで噛み合わせ部分を周方向に移動させる波動発生器と、
を備えた波動歯車減速機の製造方法において、
前記可撓性外歯車の基準ピッチ円半径re、前記剛性内歯車の基準ピッチ円半径riおよび前記波動歯車減速機の減速比iを決める第1決定工程と、
前記両基準ピッチ円半径re,riに基づき前記外歯および前記内歯の形状を決める第2決定工程と、
前記外歯の移動包絡線によって前記内歯の歯先の形状を決定する第3決定工程と、
を有する波動歯車減速機の製造方法。 - 請求項1に記載の波動歯車減速機の製造方法において、
前記移動包絡線は、撓ませない真円状態の前記可撓性外歯車を想定し、前記真円状態の可撓性外歯車を、前記剛性内歯車との噛み合い基準ピッチ円上で内転サイクロイド運動させた際の前記外歯の軌跡である波動歯車減速機の製造方法。 - 請求項2に記載の波動歯車減速機の製造方法において、
回転角をθとし、前記剛性内歯車の軸心に対して軸直角方向にx軸、前記x軸に対して直角方向にy軸を定義したとき、
前記内歯の歯先は、回転角θを変数とする下記の式
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