JP2022100486A - 転がり軸受の支持構造及び内燃機関の可変圧縮比機構のアクチュエータ - Google Patents

転がり軸受の支持構造及び内燃機関の可変圧縮比機構のアクチュエータ Download PDF

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Kishiro Nagai
佳裕 須田
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Abstract

Figure 2022100486000001
【課題】 低温時であってもフリクションの増加を抑制可能な転がり軸受の支持構造を提供する。
【解決手段】 固定部材と異なる線膨張係数の材料からなり、固定部材に設けられた凹部に配置された外輪と、回転軸を軸支する内輪と、内輪と外輪の間に配置された転動体と、を有し、外輪と内輪と転動体との間に温度変化によって径方向の予圧が発生し得るように配置された転がり軸受を支持する固定部材の凹部の内周面を形成する環状部分は、内周面からの径方向距離が長い厚肉部と、内周面からの径方向距離が短い薄肉部と、を有する転がり軸受の支持構造とした。
【選択図】 図7

Description

本発明は、転がり軸受の支持構造及び内燃機関の機械的な圧縮比を可変とする可変圧縮比機構に用いられるアクチュエータに関する。
この種の技術としては、下記の特許文献1に記載の技術が開示されている。特許文献1には、複リンク式ピストン-クランク機構を利用して、ピストンのストローク特性を変化させることにより、内燃機関の圧縮比を変更可能にしている可変圧縮比機構が開示されている。このアクチュエータは、ハウジングに設けられたベアリング収容部に、内輪がウェーブジェネレータに対して固定され、外輪が規制部によって軸方向両側への移動を規制された転がり軸受が収容されている。
特許第6384020号公報
しかしながら、特許文献1に記載の内燃機関用可変圧縮比機構のアクチュエータにおいては、転がり軸受の外輪に対してハウジングの線膨張係数が大きいことにより、低温時に圧入状態となって転がり軸受の内部の隙間が負隙間(与圧状態)となり、フリクションの増加による作動性の悪化を招くおそれがあった。
また、転がり軸受の外輪に対してハウジングの線膨張係数が小さい場合、高温時に圧入状態となって転がり軸受の内部の隙間が負隙間(与圧状態)となり、フリクションの増加による作動性の悪化を招くおそれがあった。
本発明では、固定部材と異なる線膨張係数の材料からなり、固定部材に設けられた凹部に配置された外輪と、回転軸を軸支する内輪と、内輪と外輪の間に配置された転動体と、を有し、外輪と内輪と転動体との間に温度変化によって径方向の予圧が発生し得るように配置された転がり軸受を支持する固定部材の凹部の内周面を形成する環状部分は、内周面からの径方向距離が長い厚肉部と、内周面からの径方向距離が短い薄肉部と、を有する転がり軸受の支持構造とした。
本発明によれば、温度変化が生じたとしても転がり軸受のフリクションの増加を抑制できる。
第1実施形態の内燃機関の可変圧縮比機構の概略を模式的に示す。 第1実施形態の可変圧縮比機構のアクチュエータ及びセンサが一体となったユニットの斜視図である。 図2のユニットの分解斜視図である。 図2のユニットの上面図である。 図4のV-V視断面を示す。 図4のVI-VI視断面を示す。 図5のB-B断面図である。 図7のC-C断面図である。 温度と軸受のラジアル隙間との関係を示す特性図である。 軸受に対する荷重作用方向を示す概略図である。 他の実施形態を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
〔第1実施形態〕
まず、構成を説明する。以下、図面において、参考のため、x軸、y軸及びz軸からなる三次元直交座標系を設定し、適宜表示する。本実施形態の内燃機関は、4ストロークのレシプロエンジンである。図1に示すように、本実施形態の内燃機関の(広義の)可変圧縮比機構は、マルチリンク機構1、第1制御軸2、アクチュエータ3、センサ4、及びコントロールユニット5を有する。
マルチリンク機構1は、狭義の可変圧縮比機構である。マルチリンク機構1は、アッパリンク11、ロアリンク12、及び制御リンク13を有する。アッパリンク11及びロアリンク12は、内燃機関のシリンダブロックのシリンダ内を往復運動するピストン100と、クランクシャフト101とを連結する。アッパリンク11の上端部は、ピストンピン110を介して回転自在にピストン1に連結される。アッパリンク11の下端部は、連結ピン111を介して回転自在にロアリンク12の一端に連結される。ロアリンク12には、クランクピン120を介してクランクシャフト101が回転自在に連結される。制御リンク13の一端は、連結ピン130を介して回転自在にロアリンク12の他端に連結される。制御リンク13の他端は第1制御軸2に回転自在に連結される。
第1制御軸2は、マルチリンク機構1の姿勢を制御する。第1制御軸2は、軸本体部20、第1アーム部21、第2アーム部22、第1偏心軸部23、及び第2偏心軸部24を有する。軸本体部20は、内燃機関の内部でクランクシャフト101の軸線に対して略平行に延び、内燃機関本体に回転自在に支持される。第1アーム部21の一端は軸本体部20に固定され、第1アーム部21の他端には第1偏心軸部23が固定される。第1偏心軸部23には、制御リンク13の他端が回転自在に連結される。第2アーム部22の一端は軸本体部20に固定され、第2アーム部22の他端には第2偏心軸部24が固定される。
アクチュエータ3は、第1制御軸2を駆動する。アクチュエータ3は、ハウジング30(図2参照)、駆動ユニット31、第2制御軸32、及びアクチュエータリンク(連結リンク)33を有する。
ハウジング30は、アルミニウム合金により形成される。図5に示すように、ハウジング30は、制御軸収容孔301、減速機収容室302、アーム収容室303、第1開口部304A、第2開口部304B、及び第3開口部304Cを有する。制御軸収容孔301は、略円筒状であり、z軸方向に延びてハウジング30を貫通する。制御軸収容孔301は、第1軸収容部301A、第2軸収容部301Bを有する。第1軸収容部301Aの径は、第2軸収容部301Bの径より大きい。
減速機収容室302は、制御軸収容孔301と略同じ軸線を有する円筒状であり、z軸方向に延びる。減速機収容室302のz軸負方向側は、第1開口部304Aとしてハウジング30の外部に開口する。減速機収容室302のz軸正方向側には第1隔壁305Aがある。第1隔壁305Aを制御軸収容孔301(第1軸収容部301A)が貫通する。第1隔壁305Aにおける第1軸収容部301Aの周囲(ボス部)を含む部分や、第1隔壁305Aにおけるy軸負方向側の端であって減速機収容室302の内周面に連続する部分は、(第1隔壁305Aの本体部から)z軸負方向に突出した形状の肉厚部である。
アーム収容室303は、第1隔壁305Aを挟んで減速機収容室302のz軸正方向側に隣接する。アーム収容室303は、z軸負方向側を第1隔壁305Aにより画され、z軸正方向側を第2隔壁305Bにより画され、x軸負方向側を第3隔壁305Cにより画され(図6参照)、y軸正方向側を第4隔壁305Dにより画され、y軸負方向側を第5隔壁305Eにより画される。アーム収容室303を画する第1隔壁305Aの面及び第2隔壁305Bの面は、xy平面と略平行である。図6に示すように、アーム収容室303を画する第4隔壁305Dの面及び第5隔壁305Eの面は、xz平面と略平行である。第2隔壁305Bを制御軸収容孔301(第2軸収容部301B)が貫通する。制御軸収容孔301のz軸正方向側は、第2開口部304Bとしてハウジング30の外部に開口する。アーム収容室303のx軸正方向側は、第3開口部304Cとしてハウジング30の外部に開口する。第3開口部304Cは、x軸正方向側から見て、矩形状であり、y軸方向に延びる長辺とz軸方向に延びる短辺を有する。
ハウジング30の第3開口部304Cの周囲は、内燃機関本体の部材(シリンダブロック)にボルトで固定される。図6に示すように、アーム収容室303は、第3開口部304Cを介して、シリンダブロック(クランクケース14)の内部に連通しており、クランクケース14の下部に設けられた油溜まりであるオイルパン15にも連通する。クランクケース14においてアーム収容室303に連続する部分は、アーム収容室303から離れるにつれて徐々にオイルパン15に近づくように傾斜する面140を有する。
図3に示すように、駆動ユニット31は、電動機31A及び減速機31Bを有する。電動機31Aは、ブラシレスモータであり、図5に示すように、第1ケーシング310A、第2ケーシング310B、出力軸311、ロータ312及びコイル313を有する。第1ケーシング310Aは、第2ケーシング310Bにボルトで固定される。第2ケーシング310Bは、ハウジング30の第1開口部304Aの周囲にボルトで固定される。第2ケーシング310Bとハウジング30との間は、シール部材35Bによって封止される。出力軸311は、軸受34A,34Bを介してそれぞれ第1,第2ケーシング310A,310Bに回転可能に支持される。コイル313は第1ケーシング310Aの内周に固定される。ロータ312は、出力軸311に固定され、コイル313の内側に回転自在に設けられる。第2ケーシング310Bと出力軸311との間は、シール部材35Aによって封止される。
図5に示すように、減速機31Bは、ハウジング30の減速機収容室302に収容される。減速機31Bは、波動歯車装置(波動歯車減速機)である。図3に示すように、減速機31Bは、第1サーキュラスプライン314、第2サーキュラスプライン315、フレックススプライン316、及びウェーブジェネレータ(波動発生器)317を有する。第1サーキュラスプライン314は、内周に複数の内歯が形成された円環状の出力軸部材である。第2サーキュラスプライン315は、内周に複数の内歯が形成された円環状の固定軸部材であり、第2スラストプレート318Bを介して電動機31Aの第2ケーシング310Bにボルトで固定される。ウェーブジェネレータ317は、楕円形状の外周面を有する入力軸部材であり、電動機31Aの出力軸311に固定され、出力軸311によって回転駆動される。ウェーブジェネレータ317(減速機31B)の回転軸線319は、出力軸311の回転軸線と略一致する。ウェーブジェネレータ317の軸方向一方側(z軸負方向側)は、ウェーブジェネレータ317の軸方向に延びた筒状部317aの外周との間において、軸受34Cを介して電動機31Aの第2ケーシング310Bに回転自在に支持される。フレックススプライン316は、撓み変形可能な薄肉円筒状であり、外周面に複数の外歯を有する。この外歯の数は、第1サーキュラスプライン314の内歯の数と同じであり、第2サーキュラスプライン315の内歯の数より2つだけ少ない。フレックススプライン316の軸方向一方側(z軸正方向側)は、第1サーキュラスプライン314の内側に配置され、その外歯が第1サーキュラスプライン314の内歯に噛合する。フレックススプライン316の軸方向他方側(z軸負方向側)は、第2サーキュラスプライン315の内側に配置される。ウェーブジェネレータ317の楕円形状の外周面(上記楕円の長軸の延長と重なる2カ所)はフレックススプライン316の内周面の一部に沿って摺動する。撓み変形するフレックススプライン316の外歯の一部(上記2カ所)が第2サーキュラスプライン315の内歯に噛合する。
第2制御軸32は、軸本体部32A及びアーム32Bを有する。図5に示すように、軸本体部32Aは、ハウジング30の制御軸収容孔301に収容される。軸本体部32Aは、その回転軸線320の方向の一端から他端に(z軸正方向に)向かって順に、固定用フランジ321、第1ジャーナル部322、固定部323、第2ジャーナル部324及びロータ設置部326を一体に有する。各部322~326は、上記一端から他端に向かって順に、径が小さくなる。例えば、第1ジャーナル部322よりも固定部323のほうが、径が小さい。第1ジャーナル部322は第1軸収容部301Aに収容され、第2ジャーナル部324は第2軸収容部301Bに収容される。軸本体部32Aは、ジャーナル部322,324を介してハウジング30に回転自在に支持される。固定用フランジ321は、回転軸線320に対し径方向外側に広がる。固定用フランジ321は、第1スラストプレート318Aを介して、減速機31Bの第1サーキュラスプライン314にボルトで固定される。第2制御軸32の回転軸線320は、減速機31B(ウェーブジェネレータ317)の回転軸線319と略一致する。軸本体部32Aの上記一端(z軸負方向端)には、凹部328が開口する。凹部328は、上記一端から他端に(z軸正方向に)向かって径が徐々に小さくなる円錐状であり、その軸線は回転軸線320と略一致する。凹部328は、第1ジャーナル部322の内部まで形成されている。固定用フランジ321は、軸本体部32Aの上記一端における凹部328の開口部の周りに広がる。
図5,6に示すように、アーム32Bは、軸本体部32Aの回転軸線320に対して径方向に延びる。軸本体部32Aは、アーム32Bを介してアクチュエータリンク33に連結される。アーム32B(軸本体部32A)は、アクチュエータリンク33を介してマルチリンク機構1に連係する。具体的には、アーム32Bは、軸本体部32Aとは別体(別部品として分離可能)である。軸本体部32Aにおけるジャーナル部322,324に挟まれる固定部323には、アーム32Bの一端が固定される。上記一端は、円筒状の第1固定用孔327Aが貫通する大径部である。第1固定用孔327Aには固定部323が圧入固定される。アーム32Bの他端は、円筒状の第2固定用孔327Bが貫通する小径部である。上記他端は、軸本体部32Aの回転軸線320に対して径方向向外側に、回転軸線320から離れる(突出する)ように延びる。第2固定用孔327Bには連結ピン330が回転自在に嵌まる。
アクチュエータリンク33は、レバー形状であり、湾曲した湾曲部33Aと、略直線状の直線部33Bを有する。アクチュエータリンク33における湾曲部33Aの側の一端は、連結ピン330を介して、回転自在にアーム32Bの上記他端に連結される。具体的には、アクチュエータリンク33の上記一端は、二股に分岐しており、2つの分岐部331A,331Bを有する。各分岐部331A,331Bを第2固定用孔332が貫通し、これらの第2固定用孔332に連結ピン330の両端が圧入固定される。アクチュエータリンク33における直線部33Bの側の他端は、回転自在に第1制御軸2(第2偏心軸部24)に連結される。アーム32B及びアクチュエータリンク33(湾曲部33A)の一部は、ハウジング30のアーム収容室303に収容される。図2,4,6に示すように、アクチュエータリンク33の残りの一部は、第3開口部304Cを通ってハウジング30の内燃機関のクランクケースの内部に突出する。
第2制御軸32は、駆動ユニット31から伝達される動力により回転することで第1制御軸2を駆動し、可変圧縮比機構(マルチリンク機構1)の姿勢を変化させる。すなわち、減速機31Bは、電動機31Aの出力軸311の回転数を減速して第2制御軸32に伝達する。第2制御軸32には、減速機31Bを介して電動機31Aからトルクが伝達される。このトルクにより、第2制御軸32が回転し、その回転位置が変更される。第2制御軸32の回転位置が変更されると、アクチュエータリンク33を介して第1制御軸2が回転し、制御リンク13の位置が移動する。これにより、ロアリンク12の姿勢が変化し、ピストン100のシリンダ内におけるストローク位置(上死点位置)やストローク量を変化させる。これに伴って機関圧縮比が連続的に変更される(図6参照)。
図3,5に示すように、センサ4は、第2制御軸32の回転角度位置を検出する回転角センサ41、及び電動機31Aの出力軸311の回転角度位置を検出するレゾルバ42を有する。回転角センサ41は、ロータ410及びステータ411を有する。ロータ410は、第2制御軸32の軸本体部32Aにおけるロータ設置部326に固定される。ステータ411は、ハウジング30の(z軸正方向側の)第2開口部304Bの周囲に、シール部材35Cを介してボルトで固定される。ロータ410はステータ411の内側に回転自在に設けられる。ステータ411の一側面をプレート412が覆う。プレート412は、シール部材35Dを介してボルトでステータ411に固定される。
コントロールユニット5は、クランク角センサや機関負荷センサ、水温センサ、スロットルバルブ開度センサなどのセンサ類から入力される情報に基づき現在の内燃機関の運転状態を検出し、点火プラグの点火時期等の制御を行う。また、コントロールユニット5は、電動機31A(のコイル313)、回転角センサ41(のステータ411)、及びレゾルバ42と電気的に接続されている。コントロールユニット5は、回転角センサ41やレゾルバ42から入力される情報に基づき演算処理を行い、電動機31Aへ制御電流を出力する。これにより電動機31Aの正逆回転を制御することで、内燃機関の実圧縮比を低圧縮比と高圧縮比との間で可変制御する。
図7は、実施形態1の内燃機関の可変圧縮比機構のアクチュエータのB-B断面図、図8は、実施形態1の内燃機関の可変圧縮比機構のアクチュエータのC-C断面図である。第2ケーシング310Bの減速機側開口内周には、軸受34Cを収容する凹部51と、第2ケーシング310Bをハウジング30に固定するためのボルト穴52とが形成されている。凹部51は、軸受34Cの外輪341を収容する。凹部51の外周側は、ケーシング部500で覆われている。ケーシング部500には、肉抜き部53が等間隔に6箇所形成されている。隣接する肉抜き部53の間にはボルト穴52が等間隔に6箇所形成されている。尚、肉抜き部53やボルト穴52の数は、6箇所に限定するものではなく、もっと多くても少なくてもよい。
第2ケーシング310Bは、アルミ系の金属材料から形成され、軸受34Cは、鉄系の金属材料から形成されている。よって、線膨張係数は、第2ケーシング310Bが軸受34Cよりも大きい。言い換えると、第2ケーシング310Bは、軸受34Cよりも温度変化に対する変形量が大きい。
肉抜き部53は、軸方向から見て断面略長方形に形成されている。肉抜き部53の内周側であって凹部51の内周面との間には薄肉部511が形成されている。ケーシング部500を軽方向から見たときに肉抜き部53及びボルト穴52が位置しない部分には厚肉部510が形成されている。
ここで、肉抜き部53の作用について説明する。図9(a)は、肉抜き部53がある場合と、無い場合とで、各温度に対して軸受34Cの外輪341と転動体342との軽方向に生じる隙間(以下、ラジアル隙間)の大きさとの関係を表す特性図である。図9(b)は、ラジアル隙間と回転トルク(フリクション)との関係を表す特性図である。図中の●が肉抜き部53を形成した場合を示し、■が肉抜き部無しの場合を示す。
図9(a)に示すように、0℃以上の温度領域では、凹部51の内周面と外輪341の外周面との間には隙間があることから、高温側に温度変化が生じ、線膨張係数の違いから第2ケーシング310Bが軸受34Cより大きく膨張しても、隙間が大きくなるだけであり、軸受34Cに対して特段の力が作用することはない。しかしながら、低温側に温度変化が生じると、第2ケーシング310Bの変形量が軸受34Cの変形量よりも大きいため、凹部51の内周面から外輪341の外周面に圧縮力が作用する。そうすると、温度が低くなるほど強い圧縮力が作用するため、外輪341及び内輪343と転動体342との間の隙間がマイナス値、すなわち与圧状態となり、軸受34Cのフリクションが増大してしまう。
そこで、第1実施形態では、肉抜き部53を形成した。これにより、温度低下に伴って第2ケーシング310Bが変形したとしても、外輪341の外周面に作用する力を逃がすことができ、軸受34Cに対する圧縮力の作用を抑制することができ、軸受34Cのフリクション増大を抑制することができる。
次に、肉抜き部53の詳細について説明する。図7には、軸心から肉抜き部53の内周側の周方向一端側の端部531を通る第1補助線530aと、軸心から肉抜き部53の内周側の周方向他端側の端部532を通る第2補助線530bとを示す。肉抜き部53の外周側の周方向端部の一端側の端部533及び他端側の端部534は、第1補助線530aと第2補助線530bとで周方向に挟まれた領域よりも内側に位置している。言い換えると、厚肉部510の領域を広くすることができ、受けた荷重を広範囲に分散させることが可能となり、強度を確保することができる。また、肉抜き部53の各端部に形成される角度(長方形の内角に相当)が90度以上となり、鋳造する際の鋳型の寿命を向上することができるため、生産性を向上できる。
次に、肉抜き部53を形成する位置について説明する。図10は、第1実施形態の内燃機関用可変圧縮比機構のアクチュエータにエンジン側から作用する力を示す概略図である。図6に示すように、内燃機関の圧縮比を変更する機構であるため、アクセルON時は、燃焼に伴う爆発力によりピストン100から燃焼荷重が作用するとともにマルチリンク機構の慣性力が作用する。しかしながらアクセルON時は、燃焼荷重の影響が大きいため、クランク角の変化に応じて常に正のトルクが作用する。よって、図10のアクセルON時の下方に示すB-B断面概略図に記す矢印方向に作用する。一方、アクセルOFF時は、燃焼荷重が作用しないため、マルチリンク機構の慣性力が支配的となり、慣性力による交番荷重が作用する。よって、図10のアクセルOFF時の下方に示すB-B断面概略図に記す矢印方向(アクセルON時に作用する矢印方向に加え、反対向きの矢印方向)に作用する。
よって、第1実施形態では、これら燃焼荷重や慣性力による交番荷重を受け止める観点から、燃焼荷重方向及び交番荷重方向と重なる位置にボルト穴52を配置した。言い換えると、厚肉部510は、凹部51の内周面のうちの、内燃機関の爆発力により出力軸を介して荷重を受ける範囲(以下、荷重範囲と記載する。)の周方向中央と軽方向に重なる第1位置にあり、薄肉部511は、凹部51の内周面のうちの、荷重範囲の周方向中央と系方向に重ならない第2位置にある。また、厚肉部510は、凹部51の内周面のうちの第1位置と径方向の反対側の第3位置にもあり、薄肉部511は、凹部51の内周面のうちの第2位置と径方向の反対側であって第3位置を除く第4位置にもある。
更に、ボルト穴52内には、鉄系の金属製ボルトが貫通していることから、単にアルミ系の金属材料が存在する場合に比べて高い強度を確保できる。尚、燃焼荷重方向や交番荷重方向は車両諸元により予め決まるため、軸心から見てボルト穴52の端部となる位置に補助線を引いた際、この2本の補助線で挟まれた周方向領域内に燃焼荷重方向や交番荷重方向が位置するように配置している。これにより、燃焼荷重や交番荷重を効果的に受け止めることができる。
以上説明したように、実施形態1にあっては、下記に列挙する作用効果が得られる。
(1)回転軸である出力軸311と、
固定部材である第2ケーシング310Bと、
転がり軸受であって、第2ケーシング310Bと異なる線膨張係数の材料からなり、第2ケーシング310Bに設けられた凹部51に配置された外輪341と、出力軸311を軸支する内輪343と、内輪343と外輪341の間に配置された転動体342と、を有し、外輪341及び内輪343と転動体342との間に温度変化によって径方向の予圧が発生し得るように配置された軸受34Cと、
第2ケーシング310Bの凹部51の内周面を形成する環状部分は、内周面からの径方向距離が長い厚肉部510と、内周面からの径方向距離が短い薄肉部511と、を有する。
よって、温度変化が生じたとしても軸受34Cのフリクションの増加を抑制できる。
(2)回転軸は、回転することによって内燃機関の可変圧縮比機構の姿勢を制御する電動機31A(電動モータ)の出力軸311であり、
固定部材は、アクチュエータの第2ケーシング310B(ハウジング)である。
よって、内燃機関の可変圧縮比機構のアクチュエータの作動時におけるフリクションを抑制できる。
(3)厚肉部510は、凹部51の内周面のうちの、内燃機関の爆発力により出力軸311を介して荷重を受ける範囲の周方向中央と径方向に重なる第1位置にあり、
薄肉部511は、凹部51の内周面のうちの、内燃機関の爆発力により出力軸311を介して荷重を受ける範囲の周方向中央と径方向に重ならない第2位置にある。
よって、内燃機関からの荷重を分散して受けることができる。
(4)厚肉部510は、凹部51の内周面のうちの、第1位置と径方向の反対側の第3位置にもあり、
薄肉部511は、凹部51の内周面のうちの、第2位置と径方向の反対側であって、第3位置を除く第4位置にもある。
よって、温度低下による圧縮荷重を逃がすことに加えて、リンク機構の慣性力による交番荷重が作用しても安定的に荷重を受け止めることができる。
(5)出力軸311と一体に回転するように設けられた波動発生器317と、波動発生器317の回転によって非円形に撓む可撓性外歯車であるフレックススプライン316と、第2ケーシング310Bに固定されてフレックススプライン316と噛み合う第2サーキュラスプライン315の内歯と、を有する波動歯車減速機31Bを更に有し、
軸受34Cは波動発生器317から軸方向に延びた筒状部317aの外周に内輪343が固定され、
筒状部317aの径方向内側に第2ケーシング310Bと出力軸311の間をシールするシール部材35Aが配置されている。
よって、軸受34Cを大径化することが可能となり、安定的に荷重を受けることができる。
(6)凹部51は、第2ケーシング310Bに形成された肉抜き部53であって、
肉抜き部53の外周側の周方向端部533,534は、肉抜き部53の内周側の周方向一端側の端部531を通る径方向補助線530aと肉抜き部53の内周側の周方向他端側の端部532を通る径方向補助線530bとで周方向に挟まれた領域よりも内側に位置する。
よって、厚肉部510の領域を広くすることができ、受けた荷重を広範囲に分散させることができる。
(7)肉抜き部53は、軸方向から見たときの断面形状が略長方形である。
よって、肉抜き部53の各端部に形成される角度(長方形の内角に相当)が90度以上となり、鋳造する際の鋳型の寿命を向上することができるため、生産性を向上できる。
(8)厚肉部510に、第2ケーシング310Bを取り付けるボルト用のボルト穴52を有する。よって、アルミ系の金属材料が存在する場合に比べて高い強度を確保できる。
(9)第2ケーシング310Bの線膨張係数は、軸受34Cの線膨張係数よりも大きい。よって、低温時に軸受34Cに圧縮力が作用しても、荷重を逃がすことでフリクションの増大を抑制できる。
(10)第2ケーシング310Bはアルミ系合金であり、軸受34Cは鉄系合金である。よって、低温時に軸受34Cに圧縮力が作用しても、荷重を逃がすことでフリクションの増大を抑制できる。
以上、第1実施形態では、肉抜き部53の軸方向から見た断面形状が略長方形の場合について説明したが、例えば、図12(a)に示すように、軸方向から見た断面形状が6角形の肉抜き部53aとしてもよいし、図12(b)に示すように、軸方向から見た断面形状が略楕円形状の肉抜き部53bとしてもよい。荷重を分散しつつ、必要な荷重を受けることが可能な形状であれば、特に形状は限定するものではない。
また、適用範囲は可変圧縮比機構のアクチュエータに限られず、例えば電動モータの転がり軸受の支持構造にも適用可能である。
[実施形態から把握しうる技術的思想]
以上説明した実施形態から把握しうる技術的思想(又は技術的解決策。以下同じ。)について、以下に記載する。
(1) 本技術的思想の転がり軸受の支持構造は、その1つの態様において、
回転軸と、
固定部材と、
転がり軸受であって、前記固定部材と異なる線膨張係数の材料からなり、前記固定部材に設けられた凹部に配置された外輪と、前記回転軸を軸支する内輪と、前記内輪と前記外輪の間に配置された転動体と、を有し、前記外輪及び前記内輪と前記転動体との間に温度変化によって径方向の予圧が発生し得るように配置された、前記転がり軸受と、
前記固定部材の前記凹部の前記内周面を形成する環状部分は、前記内周面からの径方向距離が長い厚肉部と、前記内周面からの径方向距離が短い薄肉部と、を有する
(2) より好ましい態様では、前記態様において、前記転がり軸受の支持構造は、内燃機関の可変圧縮比機構のアクチュエータに用いられ、
前記回転軸は、回転することによって前記内燃機関の可変圧縮比機構の姿勢を制御する電動モータの出力軸であり、
前記固定部材は、前記アクチュエータのハウジングである。
(3) 別の好ましい態様では、前記態様のいずれかにおいて、
前記厚肉部は、前記凹部の内周面のうちの、前記内燃機関の爆発力により前記出力軸を介して荷重を受ける範囲の周方向中央と径方向に重なる第1位置にあり、
前記薄肉部は、前記凹部の内周面のうちの、前記内燃機関の爆発力により前記出力軸を介して荷重を受ける範囲の周方向中央と径方向に重ならない第2位置にある。
(4) さらに別の好ましい態様では、前記態様のいずれかにおいて、
前記厚肉部は、前記凹部の内周面のうちの、前記第1位置と径方向の反対側の第3位置にもあり、
前記薄肉部は、前記凹部の内周面のうちの、前記第2位置と径方向の反対側であって、前記第3位置を除く第4位置にもある。
(5) さらに別の好ましい態様では、前記態様のいずれかにおいて、
前記出力軸と一体に回転するように設けられた波動発生器と、前記波動発生器の回転によって非円形に撓む可撓性外歯車と、前記ハウジングに固定されて前記可撓性外歯車と噛み合う内歯と、を有する波動歯車減速機を更に有し、
前記転がり軸受は前記波動発生器から軸方向に延びた筒状部の外周に内輪が固定され、
前記筒状部の径方向内側に前記ハウジングと前記出力軸の間をシールするシール部材が配置されている。
(6) さらに別の好ましい態様では、前記態様のいずれかにおいて、
前記凹部は、前記ハウジングに形成された肉抜き部であって、
前記肉抜き部の外周側の周方向端部は、前記肉抜き部の内周側の周方向一端側の端部を通る径方向補助線と前記肉抜き部の内周側の周方向他端側の端部を通る径方向補助線とで周方向に挟まれた領域よりも内側に位置する。
(7) さらに別の好ましい態様では、前記態様のいずれかにおいて、
前記肉抜き部は、軸方向から見たときの断面形状が略長方形である。
(8) さらに別の好ましい態様では、前記態様のいずれかにおいて、
前記厚肉部に、前記固定部材を取り付けるボルト用のボルト穴を有する。
(9) さらに別の好ましい態様では、前記態様のいずれかにおいて、
前記固定部材の線膨張係数は、前記転がり軸受の線膨張係数よりも大きい。
(10) さらに別の好ましい態様では、前記態様のいずれかにおいて、
前記固定部材はアルミ系合金であり、前記転がり軸受は鉄系合金である。
(11) また、他の観点から、本技術的思想のアクチュエータは、その1つの態様において、
回転する出力軸を有する電動モータと、
前記電動モータの少なくとも一部であるハウジングと、
転がり軸受であって、前記固定部材と異なる線膨張係数の材料からなり、前記ハウジングに設けられた凹部に配置された外輪と、前記出力軸を軸支する内輪と、前記内輪と前記外輪の間に配置された転動体と、を有し、前記外輪と前記凹部の内周面との間に温度変化によって径方向の予圧が発生し得るように配置された、前記転がり軸受と、
前記ハウジングの前記凹部の前記内周面を形成する環状部分は、前記内周面からの径方向距離が長い厚肉部と、前記内周面からの径方向距離が短い薄肉部と、を有する。
3 アクチュエータ
15 オイルパン
30 ハウジング
34C 軸受(転がり軸受)
51 凹部
53 肉抜き部
302 減速機収容室
303 アーム収容室
31A 電動機
31B 減速機
32 第2制御軸
32B アーム
310B 第2ケーシング(固定部材)
510 厚肉部
511 薄肉部

Claims (11)

  1. 回転軸と、
    固定部材と、
    転がり軸受であって、前記固定部材と異なる線膨張係数の材料からなり、前記固定部材に設けられた凹部に配置された外輪と、前記回転軸を軸支する内輪と、前記内輪と前記外輪の間に配置された転動体と、を有し、前記外輪及び前記内輪と前記転動体との間に温度変化によって径方向の予圧が発生し得るように配置された、前記転がり軸受と、
    前記固定部材の前記凹部の前記内周面を形成する環状部分は、前記内周面からの径方向距離が長い厚肉部と、前記内周面からの径方向距離が短い薄肉部と、を有する
    転がり軸受の支持構造。
  2. 請求項1に記載の前記転がり軸受の支持構造は、内燃機関の可変圧縮比機構のアクチュエータに用いられ、
    前記回転軸は、回転することによって前記内燃機関の可変圧縮比機構の姿勢を制御する電動モータの出力軸であり、
    前記固定部材は、前記アクチュエータのハウジングである
    ことを特徴とする内燃機関の可変圧縮比機構のアクチュエータ。
  3. 請求項2に記載の可変圧縮比機構のアクチュエータにおいて、
    前記厚肉部は、前記凹部の内周面のうちの、前記内燃機関の爆発力により前記出力軸を介して荷重を受ける範囲の周方向中央と径方向に重なる第1位置にあり、
    前記薄肉部は、前記凹部の内周面のうちの、前記内燃機関の爆発力により前記出力軸を介して荷重を受ける範囲の周方向中央と径方向に重ならない第2位置にある、
    ことを特徴とする内燃機関の可変圧縮比機構のアクチュエータ。
  4. 請求項3に記載の内燃機関用可変圧縮比機構のアクチュエータにおいて、
    前記厚肉部は、前記凹部の内周面のうちの、前記第1位置と径方向の反対側の第3位置にもあり、
    前記薄肉部は、前記凹部の内周面のうちの、前記第2位置と径方向の反対側であって、前記第3位置を除く第4位置にもある、
    ことを特徴とする内燃機関の可変圧縮比機構のアクチュエータ。
  5. 請求項2に記載の内燃機関用可変圧縮比機構のアクチュエータにおいて、
    前記出力軸と一体に回転するように設けられた波動発生器と、前記波動発生器の回転によって非円形に撓む可撓性外歯車と、前記ハウジングに固定されて前記可撓性外歯車と噛み合う内歯と、を有する波動歯車減速機を更に有し、
    前記転がり軸受は前記波動発生器から軸方向に延びた筒状部の外周に内輪が固定され、
    前記筒状部の径方向内側に前記ハウジングと前記出力軸の間をシールするシール部材が配置されている
    ことを特徴とする内燃機関の可変圧縮比機構のアクチュエータ。
  6. 請求項2に記載の内燃機関用可変圧縮比機構のアクチュエータにおいて、
    前記凹部は、前記ハウジングに形成された肉抜き部であって、
    前記肉抜き部の外周側の周方向端部は、前記肉抜き部の内周側の周方向一端側の端部を通る径方向補助線と前記肉抜き部の内周側の周方向他端側の端部を通る径方向補助線とで周方向に挟まれた領域よりも内側に位置することを特徴とする内燃機関用可変圧縮比機構のアクチュエータ。
  7. 請求項6に記載の内燃機関用可変圧縮比機構のアクチュエータにおいて、
    前記肉抜き部は、軸方向から見たときの断面形状が略長方形であることを特徴とする内燃機関用可変圧縮比機構のアクチュエータ。
  8. 請求項1に記載の転がり軸受の支持構造において、
    前記厚肉部に、前記固定部材を取り付けるボルト用のボルト穴を有することを特徴とする転がり軸受の支持構造。
  9. 請求項1に記載の転がり軸受の支持構造において、
    前記固定部材の線膨張係数は、前記転がり軸受の線膨張係数よりも大きいことを特徴とする転がり軸受の支持構造。
  10. 請求項9に記載の転がり軸受の支持構造において、
    前記固定部材はアルミ系合金であり、前記転がり軸受は鉄系合金であることを特徴とする転がり軸受の支持構造。
  11. 回転する出力軸を有する電動モータと、
    前記電動モータの少なくとも一部であるハウジングと、
    転がり軸受であって、前記固定部材と異なる線膨張係数の材料からなり、前記ハウジングに設けられた凹部に配置された外輪と、前記出力軸を軸支する内輪と、前記内輪と前記外輪の間に配置された転動体と、を有し、前記外輪と前記凹部の内周面との間に温度変化によって径方向の予圧が発生し得るように配置された、前記転がり軸受と、
    前記ハウジングの前記凹部の前記内周面を形成する環状部分は、前記内周面からの径方向距離が長い厚肉部と、前記内周面からの径方向距離が短い薄肉部と、を有する
    アクチュエータ。
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