JP6758916B2 - エレクトロクロミック素子及びその駆動方法、並びに光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置及び窓材 - Google Patents

エレクトロクロミック素子及びその駆動方法、並びに光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置及び窓材 Download PDF

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Description

本発明は、エレクトロクロミック素子及びその駆動方法、更には、エレクトロクロミック素子を用いた光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置、窓材に関する。
電気化学的な酸化還元反応により、物質の光学吸収の性質(吸収波長、吸光度)が変化するエレクトロクロミック(以降、「EC」と略する場合がある)材料を利用したEC素子は、表示装置、可変反射率ミラー、可変透過窓等に応用されている。このようなEC素子において、時間の経過に伴う光学特性の変化抑制は、最も大きな課題の一つである。特に、アノード性EC材料とカソード性EC材料とを用いた相補型と呼ばれるEC素子においては、電荷インバランスによる消色不良が問題となる。尚、電荷バランス/インバランスの概念については、後述する。
特許文献1には、EC材料が電解質に溶解した相補型EC素子において、非EC性の、アノード性EC材料よりも酸化され易い材料及びカソード性EC材料よりも還元され易い材料(これらを以降「レドックスバッファー」と呼ぶ。)を用いることを開示している。特許文献1のEC素子においては、着色体であるアノード性EC材料の酸化体、カソード性EC材料の還元体よりも、それぞれレドックスバッファーの酸化体または還元体が安定である。そのため、消色動作時に、電荷のインバランスが発生した場合においても、レドックスバッファーの電荷量でカバーできる範囲においては、EC材料の着色体が残存するより、それぞれ対応するレドックスバッファーの酸化体または還元体が生成する。そして、このレドックスバッファーは非EC性であるために、これらの酸化体または還元体が生成しても、その酸化還元反応は光の透過率に影響を及ぼさない。言い換えれば、このレドックスバッファーは、EC素子の電荷インバランスが消色不良に直結しないように、非変動色の電荷バランス領域を付与している。
米国特許第6188505号明細書
しかし、特許文献1では、レドックスバッファーが、アノード性EC材料よりも酸化されやすい、またはカソード性EC材料よりも還元されやすいため、EC材料よりも電位的に反応しやすい。そのため、通常のEC素子の着色動作において、EC材料に先んじて(少なくとも同等以上に)反応する。その結果、レドックスバッファーを用いない場合と比較して、着色に寄与しない無駄な電流が流れ、消費電力が増大する、応答速度が低下するといった課題があった。
また、特許文献1の様にレドックスバッファーを用いても、表示電極間における電荷のインバランスが解消されるわけではない。即ち、EC材料の着色体を減少させる(=代わりに着消色しないレドックスバッファーの酸化/還元体が生成する)だけで、表示電極間における電荷バランスに影響を与えるわけではない。相補型のEC素子で電荷インバランスが発生すると、アノード性EC材料/カソード性EC材料の着色体の比は変化することになる。具体的には、電荷インバランスによって残存している材料の反対極性の材料の着色の比が、電荷インバランスによって残存している材料の着色の比より小さくなることが起こる。例として挙げると、カソード性のEC材料の着色体が残存している電荷インバランスの状態からEC素子を着色した場合では、電荷インバランスが発生していない状態と比較して、アノード材料に起因する着色の比が、カソード材料に起因する着色の比より小さくなる。その結果、設計時に想定していた吸収スペクトルから、実際の吸収スペクトルが変化することになり、EC素子の吸収色の変色として現れるために好ましくない。特許文献1では、電荷インバランスにより消色動作時に、残存するアノード材料の酸化体、またはカソード材料の還元体の電荷をレドックスバッファーが引き受けることにより、アノード、カソードのうちの一方の極性の着色が残存することを抑制する。しかし、表示電極間における電荷のインバランス自体を修正しているわけではないため、このアノード性EC材料/カソード性EC材料の着色体の比のシフトは修正されない。別の表現を用いると、表示電極間における電荷インバランスを生じても消色動作時に色が見えることを抑制するだけで、着色動作時には電荷インバランスによりアノード材料、カソード材料の比が、当初とは変化した着色状態が出現してしまうことになる。
そこで、本発明は、消費電力の増大、応答速度の低下を伴わずに、電荷インバランスによる消色不良を解消することができ、かつ着色動作時のスペクトルの再現性に優れたEC素子を提供することを目的とする。
本発明のエレクトロクロミック素子は、少なくとも一方が透明な第一の電極及び第二の電極と、第三の電極とを有し、前記第一の電極と前記第二の電極との間に、電解質と、アノード性の有機エレクトロクロミック材料と、カソード性の有機エレクトロクロミック材料とを有するエレクトロクロミック素子であって、
前記第一の電極と前記第三の電極との間と、前記第二の電極と前記第三の電極との間の少なくとも一方には、前記電解質が配され、
前記第三の電極の実効面積は、前記第一の電極の実効面積および前記第二の電極の実効面積よりも大きく、下記(1)乃至(6)のいずれかであることを特徴とする。
(1)前記第三の電極は、前記第一の電極または前記第二の電極の少なくとも一方を透過する光の光路外に配置されている。
(2)前記第三の電極が、前記第一の電極または前記第二の電極の周囲の少なくとも一部に配置されている。
(3)前記第三の電極が、ナノメートルスケールの微細構造をもった多孔質電極である。
(4)前記アノード性の有機エレクトロクロミック材料と前記カソード性の有機エレクトロクロミック材料の少なくとも一方が、前記第一の電極または前記第二の電極に固定化されている。
(5)前記第三の電極と、前記第一の電極または前記第二の電極との間に、物質輸送を低減する構造体を有する。
(6)エレクトロクロミック素子の電荷バランス状態を検知する手段をさらに備えた。
本発明によれば、時間の経過に伴う光学特性の変化を抑制した、特に消色時の光透過特性変化耐性に優れた有機EC素子を提供することができる。また、本発明によれば、消費電力の増大、応答速度の低下を伴わずに、電荷インバランスによる消色不良を解消することができ、かつ着色動作時のスペクトルの再現性にも優れる。
本発明のEC素子の断面模式図である。 本発明のEC素子の上面模式図である。 電荷バランス/インバランスの概念を説明する図である。 電圧制御ステップの概要を示す図である。 本発明のEC素子の駆動回路の一例を示す概略図である。 EC素子の吸収スペクトルを示す図である。 本発明の撮像装置の一例を示す図である。 本発明の窓材の一例を示す図である。 実施例1のEC素子を示す模式図である。 実施例2のEC素子を示す模式図である。 実施例3のEC素子を示す模式図である。
1.電荷バランス/インバランス
電荷バランス/インバランスの概念について、相補型有機EC素子の場合を例にとり、図3を用いて説明する。図3において、1は第一の電極、2は第二の電極であり、図3では第一の電極1がアノード、第二の電極2がカソードである。また、Aはアノード性EC材料の還元状態(消色状態)、Cはカソード性EC材料の酸化状態(消色状態)、A+はアノード性EC材料の酸化状態(着色状態)、C-はカソード性EC材料の還元状態(着色状態)である。
図3(a)には着色過程を示す。アノード(第一の電極1)/カソード(第二の電極2)間に着色電圧を印加すると、第一の電極1ではアノード性EC材料の酸化反応、第二の電極2ではカソード性EC材料の還元反応が進行する。そして、アノード性EC材料は酸化状態(着色状態)A+、カソード性EC材料は還元状態(着色状態)C-となり、ECセルは着色状態となる。図3(b)には、この反対の消色過程を示す。ECセルを消色する場合には、第一の電極1/第二の電極2間に消色電圧(例えば第一の電極1、第二の電極2間を短絡する0V)を印加することで、図3(a)に示す反応と逆の反応が進行し、アノード性EC材料は還元状態A、カソード性EC材料は酸化状態Cとなり、EC素子は消色状態に戻ることになる。この図3(a)(b)に示される反応が繰り返されている場合には、EC素子の電荷バランスは正常で、素子は正常に着消色を繰り返すことになる。
一方、EC素子を駆動していくと、この正常な着色/消色の工程以外の工程が一部で行われることで電荷バランスが崩れる場合がある。この原因はいくつかあるが、ここではアノード性EC材料の酸化体A+の劣化を例にして、図3(c)を用いて説明する。正常な着色工程を経て着色したアノード性EC材料の酸化体A+が劣化して第一の電極1において反応できなくなった場合、第二の電極2においても、カソード性EC材料の還元体C-がその電子の受け手を失うことになり、反応できなくなってしまう。本明細書では、このような現象を電荷バランスが崩れること:電荷インバランスと呼ぶ。その結果、このEC素子は、カソード性EC材料は正常であるにもかかわらず、カソード性EC材料の着色体C-が残存する消色不良を呈することとなる。
電荷インバランスが生じる原因としては、当該酸化還元反応を構成した基質の不可逆的な電子移動反応(特に電極反応)が挙げられる。具体的には、不純物(EC材料由来、環境不純物(酸素、水等)、シール剤由来)やラジカル同士の化学反応などが挙げられる。例としては、不純物として侵入してきた酸素の不可逆的な還元反応によりアノード材料の着色体が残存すること、シール剤含有成分の不可逆的な酸化反応によりカソード材料の着色体が残存することが挙げられる。
2.EC素子
図1に、本発明のEC素子の断面の模式図を示す。図1において、1が第一の電極、2が第二の電極、3が第三の電極、7,8が基板である。4は、第一の電極1、第二の電極2、第三の電極3に接する電解質であり、シール材5によって外部と隔離されて保持されていることが好ましい。6は隔壁であり、第一の電極1および第二の電極2と第三の電極3の間の物質輸送を抑制するために必要に応じて設けられる。
(1)基板7,8/電極1,2,3
<第一の電極1、第二の電極2>
第一の電極1、第二の電極2のうちの少なくとも一方の電極は、透明電極である。ここで、「透明」とは光を透過することを意味し、光の透過率が50%以上100%以下であることが好ましい。少なくとも一方の電極が透明電極であることによって、EC素子の外部より効率的に光を取り込み、EC分子と相互作用させて、EC分子の光学的特性を出射光に反映させることができるからである。また、「光」とは、EC素子の対象とする波長領域における光のことである。例えば、EC素子を可視光領域の撮像装置のフィルタとして使用するのであれば、可視光領域の光、赤外線領域の撮像装置のフィルタとして使用するのであれば、赤外線領域の光である。
透明電極としては、ガラスもしくは高分子化合物等の透明な基板7,8に透明導電性酸化物や、分散されたカーボンナノチューブ等の導電層が形成されたものや、透明な基板7,8上に部分的に金属線が配置された透明電極、またこれらの組み合わせを用いることができる。
透明導電性酸化物の例としては、スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、ニオビウムドープ酸化チタン(TNO)等が挙げられる。これらのうちでも、FTOは、耐熱性(多孔質電極を形成する際の焼成工程への対応の観点から)、耐還元性と導電性の観点から好ましく、ITOは、導電性、透明性の観点から好ましく用いられる。また、透明導電性酸化物の層は、膜厚10nm〜10000nmであることが好ましい。特に、透明導電性酸化物の層が、膜厚10nm〜10000nmのFTOまたはITOの層であると、高透過性と化学的安定性を両立することが可能となり、好ましい。なお、透明導電性酸化物の層は、透明導電性酸化物のサブレイヤーが積み重なった構成をなしていても良い。これにより、高導電性と高透明性を実現しやすくなる。
金属線としては、とくに限定されるものではないが、Ag,Au,Pt,Ti等、電気化学的に安定な金属の線が好ましく用いられる。また、金属線の配置パターンとしては、グリッド状のものが好ましく用いられる。この電極は代表的には平面電極であるが、必要に応じて湾曲したものも使用することができる。
第一の電極1、第二の電極2のうち他方の電極は、EC素子の用途に応じて好ましいものが選択される。例えば、EC素子を透過型EC素子とする場合には、他方の電極も前述の透明電極であることが好ましい。一方、EC素子を反射型EC素子とする場合には、他方の電極には、入射光を反射する電極を用いてもよい。一方で、電極間に反射または散乱層を形成することで、他方の電極の光学特性の自由度を向上させることができる。例えば、電極間に反射層、散乱層を導入した場合には、その後方の電極は、不透明や、光を吸収するものでも出射光に影響を与えることなく用いることができる。
本発明のEC素子が、いずれの形態の素子であっても、第一の電極1、第二の電極2材料には、EC素子の動作環境において安定に存在し、外部からの電圧の印加に応じて速やかに酸化還元反応を進行させることのできる材料が好ましく用いられる。
第一の電極1と第二の電極2の配置については、EC素子の電極配置として一般的に知られている配置を用いることができる。代表的な例としては、図1に示す様に、基板7,8上に形成された第一の電極1と第二の電極2が対向するように設けた配置を挙げることができる。第一の電極1と第二の電極2の電極間距離は、1μm以上500μm以下であることが好ましい。電極間距離が大きい場合には、EC素子として有効に機能させるために十分な量のEC材料を配置することができる点で有利である。一方、電極間距離が小さい場合には、速い応答速度を達成することができる点で有利である。
EC素子に対する光の導入方法は、用途によって自由に選択することができるが、代表的な例を以下に記述する。前述の様に第一の電極1と第二の電極2が対向した透過型EC素子であれば、入射光は、第一の電極1または第二の電極2を透過して入射され、EC材料が着色状態であれば、その光はEC材料に少なくとも一部を吸収され、他方の電極を透過して出射される。第一の電極1と第二の電極2が対向した反射型EC素子であれば、第一の電極1または第二の電極2を透過して入射された光は、EC材料が着色状態であれば、少なくとも一部が吸収され、反射体、散乱体等で折り返されて入射時に透過した電極を透過して出射される。この時の反射体、散乱体等は、第一の電極1と第二の電極2の間に配置されることが多いが、光が入射する際に透過する電極と反対の電極の外側に配置されている構成も選択されうる。
<第三の電極3>
「1.電荷バランス/インバランス」の項で説明したように、本発明のようなカソード性のEC材料とアノード性のEC材料を同時に使用するEC素子では、電荷インバランス状態が発生したときに、それがアノード性、カソード性いずれの電荷インバランスであっても消色不良として感知される可能性がある。このような場合、第一の電極1、第二の電極2間の電圧を、着色時と反対方向の極性の電圧とし、この消色不良(消え残り)を抑制しようとしても、反対極性のEC材料が着色するだけで有効な抑制策とはならない。ここで「反対極性のEC材料」とは、アノード性EC材料の消え残りであれば、カソード性EC材料のことであり、カソード性EC材料の消え残りであれば、アノード性EC材料のことである。そこで、本発明では、素子中に第三の電極3を導入し、この第三の電極3と第一の電極1かつ/または第二の電極2との間の電圧を制御することにより表示電極間(第一の電極1と第二の電極2の間)の電荷バランスの調整を取ることとした。
第三の電極3は、電解質4を介して第一の電極1と第二の電極2の少なくとも一方と電気的に接続可能である。本発明の第三の電極3は、第一の電極1かつ/または第二の電極2との間で電圧を制御することにより電荷バランスを調整するものである。その実現のためには、電解質4を介して第一の電極1と第二の電極2の少なくとも一方と電気的に接続している必要があるためである。図1の例では、第一の電極1、第二の電極2及び第三の電極3は、同一の電解質4に接している。尚、図1の例では、第三の電極3は、基板7,8上に形成さているがいずれか一方の基板のみに、形成してもよい。
第三の電極3としては、第一の電極1かつ/または第二の電極2との間に電圧を印加した際に、第一の電極1または第二の電極2上で反応するEC材料の反対極性のEC材料が第三の電極3において反応する以外の方法で電流を流すことのできる電極が好ましい。具体的には、容量性の電流や、イオンの挿入/放出等に基づく電流を流すことのできる電極が好ましい。発明者らによる検討の結果、第三の電極3として、第一の電極1および第二の電極2よりも大きな実効面積を有している電極を用いることでより有効に電荷バランスの調整を図ることができるとの結論に達した。本発明における「実効面積」とは、電極の投影面積に多孔度(ラフネスファクター)を掛け合わせた値を意味する。実効面積は、窒素ガス吸着法(BET法)による測定や、色素吸着法等により評価することができる。
この大きな実効面積を実現するためには、特に、第三の電極3が多孔質構造を有する多孔質電極であることが好ましい。この「多孔質構造」とは、投影面積に対する実効面積の比率(ラフネスファクター)が10倍以上、好ましくは100倍以上の構造である。容量性の電荷によって電荷バランスの調整を図る場合には、電極で蓄えられる電荷量は、実効面積(投影面積が同じであれば、ラフネスファクター)に比例する。そのため、調整可能な電荷バランス量、第三の電極3によって消色可能な、消色不良分子の分子数も実効面積に比例する。また、イオンの挿入/放出等に基づく電荷によって電荷バランスの調整を図る場合には、イオンの実用的な挿入深さの観点から、電極の体積に対する表面積の比率が大きい方が多くの電荷量を得ることができる。
多孔質構造は、大きな実効面積を小さな投影面積で実現することと、作製上の観点より、ナノメートルスケールの微細構造をもつことが好ましい。多孔質構造の形状および製法に制限は無く、貫通孔を有するナノ粒子膜やナノロッド、ナノワイヤ、ナノチューブ等のナノ構造体等を用いることができる。なかでも体積当たりの比表面積が大きく、作製が容易な粒子膜が好適に使用される。粒子サイズとしては、平均粒径300nm以下、好ましくは50nm以下の粒子が用いられる。第三の電極3の厚さは、100nm以上、好ましくは1μm以上が望ましい。
多孔質電極の製造方法としては、例えば、第一の電極1または第二の電極2を形成する導電性基板の一部に、エッチング等により、電気的に独立した領域を形成し、その電気的に独立した領域に多孔質電極を形成する方法が挙げられる。もちろん、多孔質電極を形成した後に、その領域をエッチング等により電気的に独立した領域としてもよい。
EC素子は、一般に広く普及している吸光デバイスの液晶素子と比較して、最大透過率が高いことが一つの大きな特長である。この高い透過率を活かすためには、EC素子に入射された光の出射までの光路に、着色時のEC材料の吸収以外の透過率を低減させる要素ができるだけないことが望ましい。第三の電極3をこの光路中に配置した場合には、この電極も透過率を低減させる要素となりうる。特に第三の電極3に、バルクとしての(可視光の)透過率の低い材料を用いた場合、大きく透過率を低減させる可能性がある。また、バルクとしての透過率の高い材料を用いた場合でも、電解質4との間の屈折率差が大きい場合には、散乱等により透過率を低減させることになる。これらのことから、本発明においては、第三の電極3は、第一の電極1または第二の電極2の少なくとも一方を透過する光の光路外に配置することが好ましい。この場合の「光路外」とは、上記の観点より光吸収素子としてのEC素子を用いる用途にとって、必要な光の光路外という意味である。例えば、EC素子を撮像装置の透過型フィルタとして用いる場合、EC素子を透過する全ての光のうち、受光素子(例えばCMOSセンサ)の全領域のなかで、必要な撮像に用いられる領域に到達する光についての光路がここでいう光路である。反対に、同ケースで、EC素子を透過する光であっても、受光素子の必要な撮像に用いられる領域以外に到達する光についての光路は、ここでいう光路外に含まれる。第三の電極3を光路外に配置することにより、光を散乱する電極や、透明でない電極も使用できるため、材料の選択性が高くなる。また、イオンの挿入、放出によって、第三の電極3が着消色する場合にも問題なく使用できるようになる。
また、消色不良を抑制するために、残存するEC材料の着色体を第一の電極1かつ/または第二電極2上で減少させる場合、その反応は同電極上で均一に行えることが望ましい。この観点から、第三の電極3は、例えば図2に示す様に、第一の電極1かつ/または第二の電極2の周囲の少なくとも一部に配置することが好ましい。図2は、本発明のEC素子の上面図であり、第一の電極1、第二の電極2は重なって見えている。第三の電極3は、図2(a)の様に第一の電極1、第二の電極2の四方を囲む様に配置しても、図2(b)の様に第一の電極1、第二の電極2の三方を囲む様に配置しても、図2(c)の様に第一の電極1、第二の電極2の二方を囲む様に配置してもよい。
第三の電極3としては、スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、ニオビウムドープ酸化チタン(TNO)、酸化チタン等の金属酸化物、炭素材料、白金、チタン等の金属やこれらの組み合わせからなる膜を使用することができる。また第三の電極3としては、イオンの挿入/放出に伴う電流を流すことができる材料が好ましく用いられる。この材料としては、先述の金属酸化物の多孔質膜に加えて酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化ニオブ、酸化バナジウム等が好ましく用いられる。
(2)隔壁6(物質輸送の低減)
第三の電極3は、EC素子に消色不良が生じた際に、第一の電極1かつ/または第二の電極2上において、消色時にも着色体として残存しているEC材料を電気化学的に消色反応させるための電荷の保留場所として機能するということができる。このため、着色時等に正常に着色しているEC材料は、第三の電極3に到達しない方が望ましい。EC材料が第一の電極1、第二の電極2上に固定化されている場合には考慮する必要はないが、EC材料が電解質4中に溶解している等、自由に拡散可能な場合には、第三の電極3に到達することによって、着色体が消色体に転換されることが起こる可能性がある。これを抑制するためには、着色が行われる第一の電極1かつ/または第二の電極2と第三の電極3間の物質輸送を低減することが効果的である。具体的には、距離をとる、物質輸送を低減する構造体を配置することが挙げられる。前者としては、具体的には、第一の電極1かつ/または第二の電極2と第三の電極3間の距離を、第一の電極1と第二の電極2との間の距離よりも大きくすることが挙げられる。また、後者としては、第一の電極1かつ/または第二の電極2と第三の電極3の間に、開口部をもつ隔壁6、好ましくは多孔構造を有する隔壁6を形成する方法が挙げられる。この隔壁6が開口部を持つ必要があるのは、第三の電極3を有効に機能させるには、第一の電極1かつ/または第二の電極2と第三の電極3間の電解質4による電気的な接続を確保する必要があるためである。逆に、第一の電極1かつ/または第二の電極2と第三の電極3間の電解質4による電気的な接続が、有効な電荷バランスに必要な程度確保されている限りにおいて、第一の電極1かつ/または第二の電極2と第三の電極3間の物質輸送は低減されていることが好ましい。
(3)シール材5
基板7,8は、第一の電極1、第二の電極2の電極面を対向させた配置でシール材5によって接合されていることが好ましい。シール材5としては、そのシール後の特性が電解質4に対して安定で侵されることがなく、電気化学的に安定でEC素子の動作時に電気化学反応を起こすことがなく、気体および液体を透過しにくく、EC材料の酸化還元反応を阻害しない材料であることが好ましい。例えばガラスフリット等の無機材料、エポキシ系、アクリル系樹脂等の有機材料、金属等を用いることができる。そのシール後の特性が電解質4に対して不安定な場合には、溶出したシール材で電極が汚染される等の懸念がある。また、シール材5の成分が電気化学的に不安定である場合には、電極反応により電荷バランスを生じる原因となる可能性がある。また、気体および液体(特に酸素と水分)を透過しやすい場合には、それらの電極反応により電荷バランスを生じる原因となる可能性があるので注意が必要である。なお、シール材5は、スペーサー材料を含有するなどして第一の電極1と第二の電極2の間の距離を保持する機能を有していても良い。シール材5が電極間距離を規定する機能を有していない場合には、別途スペーサーを配置して電極間距離を保持しても良い。スペーサーの素材としては、シリカビーズ、ガラスファイバーのような無機材料や、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリジビニルベンゼン、フッ素ゴム、エポキシ樹脂等の有機材料を用いることができる。このスペーサーにより、EC素子の電極間距離を規定、保持することが可能である。
(4)電解質4
本発明のEC素子は、第一の電極1と第二の電極2との間に、電解質と、アノード性の有機EC材料と、カソード性の有機EC材料とを有する。アノード性の有機EC材料と、カソード性の有機EC材料は、電解質に溶解していてもよいし、第一の電極1、第二の電極2に固定化されていてもよい。
アノード性の有機EC材料、カソード性の有機EC材料が電解質に溶解している場合には、以下の二点で、電極に固定化する場合と比較して有利である。
(A)固定化する電極の表面積という制限要因がないために、電解質中に存在させることのできるEC材料の量が多い点。
(B)固定化を行う場合には、固定するEC材料、固定化担体となる電極の双方に構造的な工夫、製造上の工程が必要になることが多いが、これらがない点。
また、アノード性の有機EC材料、カソード性の有機EC材料が電極に固定されている場合には、EC材料が電極に拘束されているために、以下の点で溶解している場合と比較して有利である。
(C)隔壁6等の構造を作製する必要がない点。
(D)EC材料が電極に到達するまでの物質輸送による応答速度の低下がない点。
本発明において、電解質4には、電解質自体、電解質を溶媒に溶解させた電解液双方の概念を含む。電解質しては、塩化合物を溶媒に溶解させたものや塩化合物自体が溶媒を兼ねるイオン性液体などを使用することができる。
電解質4を構成する溶媒としては、EC分子をはじめとする溶質の溶解性、蒸気圧、粘性、電位窓等を考慮して、用途に応じて選択されるが、極性を有する溶媒であることが好ましい。具体的には、例えばメタノール、エタノール、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、プロピオンニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジオキソラン等の有機極性溶媒や水が挙げられる。なかでも環状エステル化合物、ニトリル化合物が好ましく用いられ、その中でもプロピレンカーボネートが最も好ましく用いられる。
さらに、上記溶媒に、さらにポリマーやゲル化剤を含有させ、粘稠性が高いものやゲル状としたものとしてもよい。このようなポリマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ナフィオン(商品名)、糖類化合物等を挙げることができる。このポリマーやゲル化剤には、その特性を向上させるために官能基を付与することが好ましく行われる。官能基としては、具体的には、シアノ基、水酸基、エステル、エーテル、アミド、アミノ基、カルボン酸基、スルホン酸基等を挙げることができる。
電解質4に用いられる塩化合物としては、イオン解離性の塩であり、かつ溶媒に対して良好な溶解性、固体電解質においては高い相溶性を示すもので、EC素子の動作電位において安定な物質あれば特に限定されない。各種陽イオン、陰イオンから好適なものを組み合わせて使用することができる。陽イオンの例としては、各種のアルカリ金属、アルカリ土類金属イオン等の金属イオン、4級アンモニウムイオン等の有機イオンが挙げられる。具体的には、例えばLi,Na,K,Ca,Ba,テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等の各イオンを挙げることができる。陰イオンの例としては、各種のフッ素化合物の陰イオン、ハロゲン化物イオン等が挙げられる。具体的には、例えばClO4 -、SCN-、BF4 -、AsF6 -、CF3SO3 -、CF3SO2NSO2CF3 -、PF6 -、I-、Br-、Cl-等が挙げられる。また、塩化合物のEC材料を使用することで、EC材料の溶液と電解質溶液を兼ねることも可能である。塩化合物のEC材料の例としては、例えばビオロゲン誘導体塩等を挙げることができる。
陽イオンのうち、サイズの小さい陽イオン、特にリチウムイオン、水素イオンは、各種酸化物や、炭素材料に対し、挿入/放出されることにより、電流を流すことができる。本発明の第三の電極3において電流を流す場合には、容量性の電流に加えて、このイオンの挿入/放出に起因する電流も併せて用いることができる。
EC材料としては、低分子有機化合物、高分子有機化合物の双方を挙げることができるが、いずれの材料としても、外部から電気的な刺激を与えることによって着色するタイプの材料である。ここで「低分子」とは、分子量で2000以下、好ましくは1000以下である。高分子有機化合物としては、ピリジニウム塩を含む高分子化合物が挙げられ、その具体例としては、ビオロゲン系の高分子化合物が挙げられる。本発明で好ましく用いられるEC材料は、低分子有機化合物であり、電極における酸化反応又は還元反応により、消色体から着色体に変化する分子である。
本発明のEC素子に使用されるEC材料は、アノード性のEC材料と、カソード性のEC材料の双方である。アノード性のEC材料と、カソード性のEC材料は、それぞれ複数種類有していても良い。ここで、「アノード性のEC材料」とは、材料から電子が取り去られる酸化反応によって着色する材料のことであり、「カソード性のEC材料」とは、これとは逆に、材料に電子が与えられる還元反応によって着色する材料のことを指す。
アノード性EC材料の例としては、例えばチオフェン誘導体、芳香環を有するアミン類、ピロール誘導体、チアジン誘導体、トリアリルメタン誘導体、ビスフェニルメタン誘導体、キサンテン誘導体、フルオラン誘導体、スピロピラン誘導体等が挙げられる。これらの中でも、低分子チオフェン誘導体(例えばモノチオフェン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、チエノアセン誘導体等)、低分子の芳香環を有するアミン類(例えばジヒドロフェナジン誘導体、トリアリルアミン誘導体等)であることが好ましい。これらの材料を用いることにより、所望の吸収波長プロファイルを持つEC素子を提供しやすいからである。これらの分子は、中性状態で紫外領域に吸収ピークを有し、可視光領域には吸収を有さず、可視光領域の透過率が高い消色状態を取る。そして、酸化反応によりこれらの分子がラジカルカチオンとなり、可視光領域に吸収がシフトすることで着色状態となる。これらの分子は、そのπ共役長を拡大縮小させること、また置換基を変更してπ共役系に変化を加えることで、その吸収波長、酸化還元反応が進行する電位を設計することができる。
カソード性EC材料の例としては、ビオロゲン誘導体等のピリジン系化合物、キノン化合物等が挙げられる。これらの分子も、そのπ共役長を拡大縮小させること、また置換基を変更してπ共役系に変化を加えることで、その吸収波長、酸化還元反応が進行する電位を設計することができる。
EC材料は、第一の電極1、第二の電極2に固定化されていることが好ましい。その理由は、本発明のEC素子では、電荷のインバランスを調整する場合に、電極間の電荷の授受があればよく、EC材料が拡散して第三の電極3に到達する必要がないためである。また、EC材料が第三の電極3に到達することによって、正常に着色している着色体が消色体に転換される可能性が低いためである。固定化の例としては、例えばEC材料の分子中にある官能基を介して電極材料に結合している場合、EC材料を静電相互作用などを利用して包括的に保持している場合、EC材料が物理的に電極に吸着している場合等が挙げられる。中でも、EC素子の速い応答を実現する観点から、低分子有機化合物が、官能基を通して多孔質電極に化学結合している系、高分子有機化合物が電極上に形成されている系が好ましい。前者の具体的な例としては、酸基(例えばリン酸基、カルボン酸基)等の官能基を通して、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ等の酸化物微粒子電極上に低分子EC材料が固定化された系を挙げることができる。後者の例としては、ビオロゲンポリマーを透明電極上に重合形成した系が挙げられる。ビオロゲンポリマーの透明電極上への重合形成方法としては、電解重合を挙げることができる。
電解質(EC材料を溶解している場合にはEC材料を含む)は、例えば、第一の電極1、第二の電極2またはシール材5の一部に開口部を形成して接合した後に、真空注入法、大気注入法、メニスカス法等によって、開口部を通して注入、封止することができる。また注入口を持たない滴下貼り合わせ法も好ましく用いられる。
(5)電荷バランス状態を検知する手段
本発明のように、アノード性のEC材料と、カソード性のEC材料の双方を用いた場合には、電荷インバランスによる色残りも、アノード性のEC材料の着色が残る場合とカソード性のEC材料の着色が残る場合とがある。これを有効に消色するには、電荷インバランスの極性に応じた電圧を第三の電極3と第一の電極1かつ/または第二の電極2に印加する必要がある。この際に逆極性の電圧を印加すると、電荷インバランスが拡大し、色残りしている材料の着色体が増大し、消色不良が悪化することになるために、電荷バランスの極性検知は重要である。また、極性は適合していても、電荷インバランスの程度を越えた電荷量を投入した場合には、逆極性の電荷インバランスを発生させる可能性がある。そのため、この検知された電荷バランス状態(極性と程度)に基づく電圧と電荷量の制御は重要である。本発明のEC素子は、EC素子の電荷バランス状態を検知する手段を有することが好ましい。EC素子の電荷バランス状態を検知する手段としては、例えば、EC材料の光吸収を利用して検知する手段、電極電位を測定して検知する手段等を挙げることができる。
EC材料の光吸収を利用して検知する手段としては、例えば、EC素子中に含まれているアノード性EC材料、カソード性EC材料、それぞれに特徴的な吸収波長における光の吸収量を比較する手段等が挙げられる。より具体的には、例えば、以下のような例が挙げられる。
アノード性EC材料、カソード性EC材料それぞれに特徴的な吸収波長の光源と、この光源からEC素子に入射されて出射した光を検知する受光素子の組み合わせ。
アノード性EC材料、カソード性EC材料それぞれに特徴的な吸収波長を含む光源と、それぞれの材料に特徴的な光を分離検知可能な受光素子の組み合わせ。
そして、各吸収波長における吸光度の初期消色状態からの変化量を求め、この変化量に差がある場合、電荷バランスは、変化量が大きい方のEC材料が、吸光度の変化量に比例する程度で色残りしていると判断することができる。光源/受光素子としては、検出に必要な光強度、感度があり、EC素子の用途としての特性に悪影響を及ぼさないものであれば、制限なく使用することができる。光源の例としてはLED等、受光素子の例としてはフォトダイオード等を挙げることができる。
電極電位を測定して検知する手段としては、例えば、参照電極等を用いて、第一の電極1かつ/または第二の電極2の電位を測定する手段等が挙げられる。以下に具体例を挙げて説明する。EC素子の透過率を最大化させる動作、例えば第一の電極1と第二の電極2を短絡させる動作を行ってなお電荷インバランスによってアノード性のEC材料の着色が残る場合、すなわち、アノード性EC材料の一部が酸化状態の場合を考える。尚、カソード性EC材料の着色が残る場合も、極性が逆になるだけで同様の考え方を用いることができる。ここでは、両方の場合を代表してアノード性の色残りについて記述する。この時、EC素子中のカソード性EC材料は、ほぼ還元状態(消色状態)であるために、第一の電極1かつ/または第二の電極2の電位は、アノード性EC材料の酸化体/還元体の比によって規定されると考えられる。EC材料として用いられる材料は、一般的に高い可逆性を持つ酸化還元特性を示す。高い可逆性を示さないと、その応答性、耐久性の低下、消費電力の増大につながるためである。そのため、この電位は、ネルンストの式に従い、アノード性EC材料の標準電極電位から、その酸化体/還元体の濃度比(正確には活量比)の自然対数に比例して、わずかにずれた値を示すことになる。このことを利用して、電荷バランスの状態を検知することができる。例えば、アノード性、カソード性のEC材料が電解質中に溶解して自由に動くことができる系では、第一の電極1かつ/または第二の電極2の電位が、アノード性EC材料またはカソード性EC材料のいずれの酸化還元電位に近いかによって、判断することができる。例えば、電極電位が、カソード性EC材料の酸化還元電位に近ければ、電荷バランスは、カソード性EC材料が色残りする方向であると判断することができ、その差の大小が電荷インバランスの程度を反映している。また、アノード性、カソード性のEC材料が第一の電極1、第二の電極2それぞれに固定化されている場合、固定化された電極の電位が、対応する固定化材料の酸化還元電位からどちらの方向にどの程度ずれているかから、電荷インバランスの極性と程度を判断することができる。以下に例を記述する。カソード性のEC材料を固定化した電極の電位が、カソード性EC材料がほぼ酸化体であると考えられる(酸化還元電位に比して十分に正な)電位にある。それと同時に、アノード性のEC材料を固定化した電極の電位がアノード性EC材料の酸化体/還元体が共存していると考えられる程度に酸化還元電位に近い場合を想定する。この場合、電荷バランスは、アノード性EC材料が色残りする方向で、その程度が電荷インバランスの程度であると判断することができる。
電荷バランス状態を検知する手段は、EC素子に付帯させてもよい。EC素子に付帯させることによって、EC素子を交換した場合等においても、そのEC素子に特有の特性についても確実に反映させた動作を実現できる。一方で、必要に応じてEC素子以外の部分に持たせてもよい。例えば、EC素子が窓に使用される場合であれば、窓枠等に付帯させてもよいし、カメラに使用される場合であれば、カメラ本体等に付帯させてもよい。このことは、体積制限の緩和や、回路の共通利用可能性が向上させる点で好ましい。
3.EC素子の駆動方法
本発明のEC素子の駆動方法は、EC素子の検知された電荷バランス状態に基づき、第一の電極1と第二の電極2の少なくとも一方と第三の電極3との間の電圧を制御するステップを有する。図4に電圧制御ステップの概要を示す。
まず、第一のステップ21として、第一の電極1と第二の電極2の間に消色電圧を印加することで消色状態としたEC素子について、電荷バランス状態を検知する手段または目視により、EC素子の電荷バランス状態を検知する。これにより、消色不良の有無を判断し、消色不良無しと判断された場合は、電圧制御ステップを終了する。
第一のステップ21で消色不良有りと判断された場合、第二のステップ22として、第一のステップ21で検知された電荷バランス状態に基づいて、第一の電極1と第二の電極2の少なくとも一方と第三の電極3との間の印加電圧を選択する。この印加電圧の選択、特に極性の選択を誤った場合、「(5)電荷バランス状態を検知する手段」の項に記載したように、消色不良が悪化することになるために、この電圧の選択は重要である。図5を用いて、第一の電極1と第二の電極2の少なくとも一方と第三の電極3との間に電圧を印加する方法について説明する。図5は、本発明のEC素子の駆動回路の一例を示す概略図である。図5の駆動回路は、可変電圧源24と、可変電圧源24と各電極1,2,3の間のスイッチ25,26,27を有する。通常駆動時は、スイッチ25,27をオン状態、スイッチ26をオフ状態にして、第一の電極1と第二の電極2の間に電圧を印加する。第二のステップ22においては、以下のいずれかを選択する。
a)スイッチ25,26をオン状態、スイッチ27をオフ状態にして、第一の電極1と第三の電極3の間に電圧を印加する。
b)スイッチ26,27をオン状態、スイッチ25をオフ状態にして、第二の電極2と第三の電極3の間に電圧を印加する。
c)スイッチ25,26,27をオン状態にして、第一の電極1と第二の電極2と第三の電極3の間に電圧を印加する。
第三のステップ23として、第二のステップ22で選択された電圧が印加されることで、崩れた電荷バランスがリバランスされて、色残りが低減される。この第三のステップ23で電圧を印加し投入される電荷量の制御は重要である。この電荷量は電荷インバランスの補正量を意味する。ここで第二のステップ22で選択された電圧の極性が(印加当初は)適合していたとしても、電荷インバランスの程度を越えた電荷量を投入した場合には、逆極性の電荷インバランスを発生させる可能性がある。そのため、この電荷量を電荷リバランスに適切な量とすることが重要である。このために、このEC素子の駆動機構には、投入電荷量を測定する仕組みが好ましく導入される。具体的には、可変電圧源24に投入電荷量を測定する仕組みを付帯させることが好ましく行われる。
また、この投入電荷量の調整を行うために、一度の投入電荷量を小さな量とし、投入後の電荷バランスの状態を再び検知することで、追加の電圧印加を判断する方法も好ましく用いられる。この第三のステップ23の後、再び第一のステップ21、また必要に応じてそれに続く第二、第三のステップ22,23を行うこと、またそれらを繰り返すことにより、電荷バランスが整えられ、色残りが抑制され、着色時の色表示の不具合が改善される。第一のステップ21から第三のステップ23の一連のステップを行う前の電荷バランス状態と、終了後の電荷バランス状態の変化を比較することで、次のステップの印加電圧、印加時間、投入電荷量をフィードバック的に制御することも好ましく行われる。
以下、第二のステップ22での印加電圧の選択方法について説明する。本発明の駆動方法は、EC素子に消色不良が生じた際に、第一の電極1かつ/または第二の電極2上において、着色体として残存しているEC材料を電気化学的に消色反応させる。そして、このための反対電荷を第三の電極3で補償する。そのため、電圧の印加対象としては、第一の電極1かつ/または第二の電極2と第三の電極3との間である。アノード性、カソード性のEC材料が第一の電極1、第二の電極2に固定化されている場合には、少なくとも電荷インバランスによって、着色体が残存しているEC材料が固定化されている方の電極と、第三の電極3との間に電圧を印加する。アノード性、カソード性のEC材料が電解質中に溶解している等、自由に拡散することができ、第一、第二の電極1,2に固定化されていない場合には、少なくとも第一の電極1、第二の電極2のいずれかと、第三の電極3との間に電圧を印加する。この場合、第一の電極1かつ第二の電極2と第三の電極3との間に電圧を印加することは、残存する着色体の反応する電極面積を増大させることにより、時間当たりの反応量を増大させられるため、消色不良を短時間で解消できることにつながり好ましい。
印加する電圧の具体的な値は、使用するEC材料、電極材料によって異なるが、基本的な考え方を以下に説明する。まず電圧の極性については、電荷インバランスによって、アノード性EC材料の着色体が残存している場合には、第三の電極3が正、第一の電極1かつ/または第二の電極2が負となる極性の電圧を印加する。逆に、電荷インバランスによって、カソード性EC材料の着色体が残存している場合には、第三の電極3が負、第一の電極1かつ/または第二の電極2が正となる極性の電圧を印加する。
電圧の絶対値は、残存している着色体を消色するのに必要な電荷量に依存する。簡単には、残存色が濃いほど大きな値を必要とする。容量性の電流を利用して、この電荷量を確保する場合、電荷量は、静電容量と印加電圧との積となるために、残存している着色体の分子数に比例して増大する。
Q=CV=nFN
(Q:電荷量、C:静電容量、V:印加電圧、n:残存している着色体一分子の消色に必要な電子数、F:ファラデー定数、N:残存している着色体の分子数(モル数))
第三の電極3における、イオンの挿入/放出による電荷を利用する場合は、まず電極へのイオンの挿入、放出の開始される電位を実現するのに必要な電圧を超える必要がある。その値を超えた後は、消色させたい着色体の分子数に応じて増大させることになる。この電位は、用いる電極、挿入するイオンによって異なり、電圧は、さらに対となる第一の電極1かつ/または第二の電極2で反応する材料によって影響を受ける。電位の例としては、多孔質酸化チタン電極とリチウムイオンの組み合わせの場合、Ag/Ag+(アセトニトリル、NO3-)電極に対しておよそ−0.4Vより負の電位を印加することにより、多孔質酸化チタン電極へのリチウムイオンの挿入を実現することができる。その他の要素としては、電圧の絶対値が高すぎるとEC材料、電解質の劣化反応を引き起こす可能性があるため、これら素子の構成要素に、素子の使用上、光学特性等に悪影響の出ない範囲で設定することが重要である。代表的な例としては、0<V<5V程度の範囲を挙げることができる。
電圧印加時間は、電極表面で電気二重層が形成されてファラデー電流が流れ始める時間より長い時間で、電荷バランスが正常点を超えて、反対極性のEC材料の着色体の残存色が発生するより短い時間が好ましい。具体的には、EC素子の応答速度に大きく依存するが例としては、1ms以上10s以下を挙げることができる。短い時間電圧を印加し、その結果に基づいて次の印加時間を選択することも好ましく行われる。
4.効果
本発明では、第三の電極3を用いることで、EC素子の電荷インバランスによる消色不良を解消することができる。代表的な例としては、EC素子の透過率を最大化させる動作をした際にも残存するEC材料の着色体を、消色体に変換することで、透過率を向上させることができる。この電荷インバランスによる消色不良に対する対策としては、特許文献1に示される様にレドックスバッファーを用いる方法もある。しかし、「発明が解決しようとする課題」の項で述べた通り、レドックスバッファーを用いる方法では、表示電極間における電荷のインバランスが解消されるわけではない。そのため、このEC素子の着色時のスペクトルにおける、アノード性EC材料の着色体の寄与分とカソード性EC材料の着色体の寄与分との比を修正することができない。
一方、本発明の第三の電極を用いる手法は、第一の電極1かつ/または第二の電極2と第三の電極3間に電圧をかけ、残存するEC材料の着色体を消色させる電気化学反応を行うことで、崩れた表示電極間における電荷バランスをリバランスするものである。別の言い方をすると、EC素子全体としては、電荷バランスは変化しないが、表示電極間における電荷インバランスは、第三の電極3が引き取るということになる。この場合、着色させる時には第三の電極3を使わず第一の電極1、第二の電極2だけで駆動する為、電荷インバランスにより着色時のスペクトルにおけるアノード材の寄与分と、カソード材の寄与分との比が変化した状態が再現することはない。そのため、本発明の第三の電極を用いる手法を用いることでEC素子の着色時のスペクトルを修正することができる。
以下、図面を参照しながら説明する。図6は、EC素子の吸収スペクトルを示す図である。尚、図6(a)は、本発明に該当しないEC素子の吸収スペクトルを示す図であり、図6(b)は、本発明のEC素子の吸収スペクトルを示す図である。また、図6(a)及び(b)は、アノード性のEC材料及びカソード性のEC材料を用いた時のEC素子の吸収スペクトル(縦軸:吸光度、横軸:波長)の計算例を示している。上記EC素子において、アノード性のEC材料は455nm及び500nmに、カソード性のEC材料は605nmに、それぞれ特徴的な吸収ピークを有している。上記EC素子において、電荷のバランスが正常な場合、上記EC素子の吸収スペクトルは、図6(a)中のスペクトルaとなる。ここで、上記EC素子の電荷のバランスがカソード性のEC材料の着色体が残存する方向に傾いた場合の吸収スペクトルは、図6(a)及び(b)中のスペクトルbとなる。このときのEC素子の着色時の吸収スペクトルは、図6(a)及び(b)中のスペクトルcとなり、電荷のバランスが正常な状態のスペクトルaより、アノード性のEC材料の吸収(455nm、500nm)が低下することになる。この電荷のバランスの変化によるスペクトルの変化はレドックスバッファーを使用しても解消できない。本発明においては、この状態において、第三の電極を利用する。具体的には、この第三の電極と、第一の電極及び/又は第二の電極との間に、第三の電極が負となるように電位差を印加する。その結果、第三の電極において、負電荷が蓄積されるとともに、第一の電極及び/又は第二の電極において、着色状態で残存しているカソード材料が酸化され消色体である酸化体に再生される。(または、アノード材が酸化体となり、この酸化体のアノード材と着色状態(還元状態)で残存しているカソード材が反応してカソード材の消色状態(酸化状態)となる。)このようにして、本発明の手法では、崩れた電荷のバランスをリバランスできるために、図6(b)中のスペクトルdのように、電荷のバランスが正常な状態のスペクトルを保持することができる。尚、図6(b)中のスペクトルdは、図6(a)中のスペクトルaとよく一致しているので、本発明のEC素子では正常な状態のスペクトルを保持されることが図6で示されている。また、EC素子の消色動作時にアノード性のEC材料が着色体として残存する場合についても、印加する電圧の極性を反転させることで、同様の効果が得られる。
このように、本発明の手法によれば、特許文献1の様にレドックスバッファーを用いても解決できない課題を解決することができる。即ち、通常のEC素子の着色動作における消費電力の増大、応答速度の低下や、アノード性のEC材料の着色体とカソード性のEC材料の着色体との比の変化、といった課題を解決することができる。
5.EC素子の用途等
本発明のEC素子は、光学フィルタ、撮像装置、レンズユニット、窓材等の構成部材として用いることができる。
(1)光学フィルタ
本発明の光学フィルタは、本発明のEC素子を有する。本発明の光学フィルタは、EC素子を駆動する駆動手段を有することが好ましく、更に周辺装置を含んでいても良い。また、本発明の光学フィルタは、EC素子に接続されているトランジスタを有してよい。トランジスタは、EC素子に直接接続されていても、他の素子を介して間接的に接続されていてもよい。トランジスタとしては、例えば、TFT素子やMIM素子等が挙げられる。
光学フィルタは、カメラの如き撮像装置に用いられてもよく、撮像装置に用いられる場合、撮像装置本体に設けられても、レンズユニットに設けられてもよい。以下、光学フィルタとして、減光(Neutral Density,ND)フィルタを構成した場合について説明する。
減光フィルタは黒色吸収であり、可視光域で均等な光吸収が必要である。有機EC材料を用いた黒色吸収の実現には、可視光域で異なる吸収域を持つ複数の材料を混合し、可視光域での吸収を平坦なものとすればよい。有機EC材料を混合した場合の吸収スペクトルは、各材料の吸収スペクトルの和で表現されるため、適切な波長域を持つ複数材料の選択と、その濃度の調整から黒色吸収を実現することが可能である。
本発明の減光(ND)フィルタの駆動例を以下に示す。一般的に減光(ND)フィルタは光量を1/2n(nは整数)とする。1/2では透過率が100%から50%になり、1/4では100%から25%になる。また、透過率を1/2にした場合、−LOG(透過率)=(吸光度)の関係から吸光度の変化量は0.3となり、1/4では0.6となる。たとえば1/2〜1/64までの減光を行うには、吸光度の変化量を0.3刻みで0〜1.8まで制御できれば良い。
電解質が溶液状である場合、ゆらぎに起因する着色量の変動分を含んでいる。正確な制御のためには光量を計測する外部モニターを光学フィルタの一部として付属させても良い。
(2)撮像装置及びレンズユニット
本発明の撮像装置は、本発明の光学フィルタと、光学フィルタを通過した光を受光する受光素子とを有する。
また、本発明のレンズユニットは、上述した本発明の光学フィルタと、複数のレンズを有する光学系とを有する。光学フィルタは、光学フィルタを通過した光が光学系を通過するように配置されていてもよいし、光学系を通過した光が光学フィルタを通過するように配置されていてもよい。
図7は、本発明の光学フィルタを用いた撮像装置を示す模式図であり、図7(a)は、本発明の光学フィルタを用いたレンズユニットを有する撮像装置、図7(b)は、本発明の光学フィルタを有する撮像装置である。図7に示す様に、レンズユニット102はマウント部材(不図示)を介して撮像装置103に着脱可能に接続されている。
レンズユニット102は、複数のレンズあるいはレンズ群を有するユニットである。例えば、図7(a)において、レンズユニット102は、絞りより後でフォーカシングを行うリアフォーカス式のズームレンズを表している。被写体側(紙面向かって左側)より順に正の屈折力の第1のレンズ群104、負の屈折力の第2のレンズ群105、正の屈折力の第3のレンズ群106、正の屈折力の第4のレンズ群107の4つのレンズ群を有する。第2のレンズ群105と第3のレンズ群106の間隔を変化させて変倍を行い、第4のレンズ群107の一部のレンズ群を移動させてフォーカスを行う。レンズユニット102は、例えば、第2のレンズ群105と第3のレンズ群106の間に開口絞り108を有し、また、第3のレンズ群106と第4のレンズ群107の間に光学フィルタ101を有する。レンズユニット102を通過する光は、各レンズ群104乃至107、開口絞り108および光学フィルタ101を通過するよう配置されており、開口絞り108および光学フィルタ101を用いて光量の調整を行うことができる。
また、レンズユニット102内の構成は適宜変更可能である。例えば、光学フィルタ101は開口絞り108の前(被写体側)あるいは後(撮像装置103側)に配置でき、また、第1のレンズ群104よりも前に配置しても良く、第4のレンズ群107よりも後に配置しても良い。光の収束する位置に配置すれば、光学フィルタ101の面積を小さくできるなどの利点がある。また、レンズユニット102の形態も適宜選択可能であり、リアフォーカス式の他、絞りより前でフォーカシングを行うインナーフォーカス式であっても良く、その他の方式であっても構わない。また、ズームレンズ以外にも魚眼レンズやマクロレンズなどの特殊レンズも適宜選択可能である。
撮像装置が有するガラスブロック109は、ローパスフィルタやフェースプレートや色フィルタ等のガラスブロックである。また、受光素子110は、レンズユニット102を通過した光を受光するセンサ部であって、CCDやCMOS等の撮像素子が使用できる。また、フォトダイオードのような光センサであっても良く、光の強度あるいは波長の情報を取得し出力するものを適宜利用可能である。
図7(a)のように、光学フィルタ101がレンズユニット102に組み込まれている場合、駆動手段はレンズユニット102内に配置されても良く、レンズユニット102外に配置されても良い。レンズユニット102外に配置される場合は、配線を通してレンズユニット102内外のEC素子と駆動手段を接続し、駆動制御する。
図7(b)に示す様に、撮像装置103自体が本発明の光学フィルタ101を有していても良い。光学フィルタ101は撮像装置103内部の適当な箇所に配置され、受光素子110は光学フィルタ101を通過した光を受光するよう配置されていれば良い。図7(b)においては、例えば光学フィルタ101は受光素子110の直前に配置されている。撮像装置103自体が光学フィルタ101を内蔵する場合、接続されるレンズユニット102自体が光学フィルタ101を持たなくても良いため、既存のレンズユニットを用いた調光可能な撮像装置を構成することが可能となる。
このような撮像装置は、光量調整と受光素子の組合せを有する製品に適用可能である。例えばカメラ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、デジタルビデオカメラに使用可能であり、また、携帯電話やスマートフォン、PC、タブレットなど撮像装置を内蔵する製品にも適用できる。
本発明の光学フィルタを調光部材として用いることで、調光量を一つのフィルタで適宜可変させることが可能となり、部材点数の削減や省スペース化といった利点がある。
(3)窓材
本発明の窓材は、本発明のEC素子を有する。本発明の窓材は、EC素子を駆動する駆動手段を有することが好ましい。図8は、本発明の窓材を示す図であり、図8(a)は斜視図、図8(b)は図8(a)のX−X’断面図である。
図8の窓材111は調光窓であり、EC素子114(第三の電極3は不図示)と、それを挟持する透明板113と、全体を囲繞して一体化するフレーム112とから成る。駆動手段はフレーム112内に一体化されていても良く、フレーム112外に配置され配線を通してEC素子114と接続されていても良い。
透明板113は光透過率が高い材料であれば特に限定されず、窓としての利用を考慮すればガラス素材であることが好ましい。図8において、EC素子114は透明板113と独立した構成部材であるが、例えば、EC素子114の基板7、8を透明板113と見なしても構わない。
フレーム112は材質を問わないが、EC素子114の少なくとも一部を被覆し、一体化された形態を有するもの全般をフレームとして見なして構わない。
係る調光窓は、例えば日中の太陽光の室内への入射量を調整する用途に適用できる。太陽の光量の他、熱量の調整にも適用できるため、室内の明るさや温度の制御に使用することが可能である。また、シャッターとして、室外から室内への眺望を遮断する用途にも適用可能である。このような調光窓は、建造物用のガラス窓の他に、自動車や電車、飛行機、船など乗り物の窓、時計や携帯電話の表示面のフィルタにも適用可能である。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明していくが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<合成例1(化合物1の合成)>
アノード性のEC材料である化合物1の合成例を以下に説明する。
Figure 0006758916
50mlの反応容器で、XX−1(2,5−ジブロモエチレンジオキシチオフェン):500mg(1.67mmol)、2−イソプロポキシ−6−メトキシフェニルボロン酸:1.05g(5.0mmol)を、トルエン/テトラヒドロフラン(10ml/5ml)混合溶媒中で混合し、窒素で溶存酸素を除去した。
次にPd(OAc)2:19mg(0.083mmol)、2−ジシクロヘキシルフォスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(S−Phos):89mg(0.22mmol)およびりん酸三カリウム:1.92g(8.35mmol)を窒素雰囲気下添加し、110℃にて加熱還流し7時間反応を行った。
反応溶液を室温まで冷却後、減圧濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(移動相:ヘキサン/酢酸エチル=4/3)により分離精製し、白色固体粉末の1を得た(420mg、収率54%)。
MALDI−MS測定により、この化合物のM+である470を確認した。またNMRスペクトルの測定結果を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3)σ(ppm):7.21(t,2H),6.63(d,2H),6.60(d,2H),4.41(m,2H),4.20(s,4H),3.81(s,6H),1.25(s,6H),1.24(s,6H).
<合成例2(化合物2の合成)>
カソード性のEC材料である化合物2は、Cinnsealach等の文献(Solar Energy Materials and Solar Cells 57巻 (1999年) 107−125項に基づいて合成した。
Figure 0006758916
<合成例3(化合物3の合成)>
アノード性のEC材料である化合物3は、Cummins等の文献(Journal of Physical Chemistry B 104巻 (2000年) 11449−11459項に基づいて合成した。
Figure 0006758916
<実施例1>
1.素子の作製
図9に示す素子を作製した。図9(a)はEC素子の概略上面図、図9(b)はEC素子の概略断面図である。
[電極、基板の準備]
フッ素ドープ酸化スズ(FTO)膜付き透明導電性ガラス(TEC15、日本板硝子)を二枚用意した。二枚の透明導電性ガラスのFTO膜の一部をダイヤモンド工具で除去し、中央に第一の電極1または第二の電極2、両端に第一の電極1または第二の電極2とは電気的に独立した第三の電極形成領域3’を形成した。
[第三の電極3の作成]
アンチモンドープ酸化スズ(ATO)ナノ粒子(石原産業社製)12g,濃硝酸2mL,水200mLを混合し、80℃で8時間攪拌後、真空乾燥を1日行った。このナノ粒子のケーキ4gに、水20mL、ポリエチレングリコール1.2g、ヒドロキシプロピルセルロース0.4gを加え15日間撹拌を行ってスラリーを調製した。このスラリーを第三の電極形成領域3’に塗布し、500℃、30分の条件で焼成し、第三の電極3としてのATOナノ粒子膜を得た。ナノ粒子膜の比表面積は450cm2/cm2であった。
[基板の接着]
第三の電極3を形成した二枚の透明導電性ガラスに、シール材5として、100μmのスペーサービーズを混合したUV硬化性の接着剤(TB3035B、スリーボンド社製)を、電極取り出し部位9、注入口10を残した外周に塗布した。また、隔壁6として、ビーズを含まない同接着剤を、40μm高となるよう、第一の電極1または第二の電極2と第三の電極3の間に塗布した。その後、二枚の透明導電性ガラスを、第一の電極1と第二の電極2、第三の電極3同士が対向する様に重ね合わせ、UVを照射して接着剤を硬化させた。
[溶液の注入]
電解質溶液として、0.1Mテトラブチルアンモニウム過塩素酸塩のプロピレンカーボネート溶液を使用した。この溶液に、アノード性のEC材料として5,10−ジメチル−5,10−ジヒドロフェナジン20mM、カソード性のEC材料としてエチルビオロゲンの過塩素酸塩20mMを溶解させた。この溶液を注入口10から注入し、前述のUV硬化性接着剤で封止11してEC素子を作製した。第一の電極1、第二の電極2の投影(≒実効)面積はそれぞれ3.6cm2、第三の電極3の投影面積は4.2cm2、実効面積は、1.8×103cm2であった。
[電荷バランス状態検知手段の設置]
EC素子の領域12上面に接して、発光波長460nmのLEDと、同595nmのLEDを設置した。それぞれの波長は、アノード性のEC材料、カソード性のEC材料の吸収波長に対応する。また、領域12下面に接してフォトダイオードを設置し、それぞれの波長における吸光度比を検出する手段とした。
2.EC素子の耐久駆動
EC素子の第一の電極1と第二の電極2の間に1.0Vの電圧を印加して着色状態とし、一週間経過した後、第一の電極1と第二の電極2を短絡し、消色させた。この時の460nm/595nmの吸光度の初期消色状態からの変化量は、それぞれ+0.05/±0.00であり、455nmに吸収ピークを持つアノード性EC材料の着色体が残存する消色不良が発生していることが確認された。
3.消色不良の低減
EC素子の第一の電極1と第二の電極2を短絡させた状態で、第一の電極1と第三の電極3間に電圧を印加する。印加時間は20msとし、以下のシーケンスを用いて動作させる。
(i)印加電圧は0.1V(第三の電極3が正、第一の電極1が負)から開始、電圧印加前と200ms後の吸光度の比較から、印加によって変化がない、または460nmの吸光度が増大する時に0.1V刻みで電圧を増大。
(ii)460nmの吸光度の初期消色状態からの変化量が0.005以下で電圧印加終了。
(iii)595nmの吸光度の初期消色状態からの変化量が0.005以上で電圧印加終了。
その結果、駆動開始より約3分で上記の(ii)によって電圧の印加が終了し、アノード性EC材料の着色体が残存する消色不良が、1/10以下に低減されることが確認される。また処理後のEC素子の目視より、消色不良は均一に低減されてほとんど見えなくなっていることが確認される。
<実施例2>
1.素子の作製
図10に示す素子を作製した。図10(a)はEC素子の概略上面図、図10(b)はEC素子の概略断面図である。
[電極、基板の準備]
実施例1と同じ透明導電性ガラスを二枚用意した。一方の透明導電性ガラスのFTO膜の一部をダイヤモンド工具で除去し、中央に第一の電極1、両端に第一の電極1とは電気的に独立した第三の電極形成領域3’を形成した。また、他方の透明導電性ガラスのFTO膜の一部をダイヤモンド工具で除去し、中央に第二の電極形成領域2’、両端に第二の電極形成領域2’とは電気的に独立した第三の電極3を形成した。
[第二の電極2の作成]
酸化チタンナノペースト(Nanoxide−HT、ソーラロニクス製)を第二の電極形成領域2’に塗布し、500℃、30分の条件で焼成した。焼成後の電極を、カソード性のEC材料である化合物2の5mM水溶液に一晩浸漬し、水洗、乾燥して、カソード性のEC材料を固定化した第二の電極2を形成した。ナノ粒子膜の比表面積は300cm2/cm2であった。
[第三の電極3の作成]
平均粒径21nmの酸化スズナノ粒子スラリー(CIKナノテック社製)と、平均粒径34nmの酸化亜鉛ナノ粒子スラリー(CIKナノテック社製)を酸化スズ:酸化亜鉛の体積比が2:1になるように混合した。さらに膜表面の平坦性向上、剥離防止のために無機系バインダーを少量添加して、ナノ粒子混合スラリーを得た。混合スラリーを第三の電極形成領域3’に塗布し、500℃、30分の条件で焼成した後、希塩酸により酸化亜鉛のみをエッチングし、第三の電極3としてのナノ粒子膜を得た。ナノ粒子膜の比表面積は650cm2/cm2であった。
[基板の接着]
第二の電極2を形成した透明導電性ガラスに、シール材5として、実施例1と同じビーズを含まないUV硬化性接着剤を、電極取り出し部位9、注入口10を残した外周に塗布した。その上部に、他方の透明導電性ガラスを、第一の電極1と第二の電極2、第三の電極3同士が対向する様に重ね合わせ、UVを照射して接着剤を硬化させた。
[溶液の注入、電荷バランス状態検知手段の設置]
電解質溶液として、0.1M過塩素酸リチウムのプロピレンカーボネート溶液を使用した。この溶液に、アノード性のEC材料として化合物1を10mM溶解させた。この溶液を注入口10から注入し、前述のUV硬化性接着剤で封止11してEC素子を作製した。次いで、実施例1と同様にして、電荷バランス状態検知手段を設置した。第一の電極1の投影(≒実効)面積は3.6cm2、第二の電極2の投影面積は3.6cm2、実効面積は1.1×103cm2、第三の電極3の投影面積は4.2cm2、実効面積は、2.7×103cm2であった。
2.EC素子の耐久駆動
EC素子の第一の電極1と第二の電極2の間に1.68Vを5秒、0Vを20秒の矩形波を印加するサイクル試験を24時間行った後、第一の電極1と第二の電極2を短絡し、消色させた。この時の460nm/595nmの吸光度の初期消色状態からの変化量は、それぞれ+0.002/+0.07であり、605nmに吸収ピークを持つカソード性EC材料の着色体が残存する消色不良が発生していることが確認された。
3.消色不良の低減
EC素子の第一の電極1と第二の電極2の短絡を解除し、第二の電極2と第三の電極3間に電圧を印加する。印加時間は100msとし、以下のシーケンスを用いて動作させる。
(i)印加電圧は0.1V(第三の電極3が負、第二の電極2が正)から開始、電圧印加前と200ms後の吸光度の比較から、印加によって変化がない、または595nmの吸光度が増大する時に0.1V刻みで電圧を増大。
(ii)595nmの吸光度の初期消色状態からの変化量が0.005以下で電圧印加終了。
(iii)460nmの吸光度の初期消色状態からの変化量が0.005以上で電圧印加終了。
その結果、駆動開始より約3分で上記の(ii)によって電圧の印加が終了し、カソード性EC材料の着色体が残存する消色不良が、1/12以下に低減されることが確認される。また処理後のEC素子の目視より、消色不良は均一に低減されてほとんど見えなくなっていることが確認される。
<実施例3>
1.素子の作製
図11に示す素子を作製した。図11(a)はEC素子の概略上面図、図11(b)は
EC素子の概略断面図である。
[電極、基板の準備]
実施例1と同じ透明導電性ガラスを二枚用意した。一方の透明導電性ガラスのFTO膜の一部をダイヤモンド工具で除去し、中央に第一の電極形成領域1’、両端に第一の電極1とは電気的に独立した第三の電極形成領域3’を形成した。また、他方の透明導電性ガラスのFTO膜の一部をダイヤモンド工具で除去し、中央に第二の電極形成領域2’、両端に第二の電極形成領域2’とは電気的に独立した第三の電極3を形成した。
[第一の電極1、第三の電極3の作成]
酸化チタンナノペースト(Nanoxide−HT、ソーラロニクス製)を第一の電極形成領域1’および第三の電極の形成領域3’に塗布し、500℃、30分の条件で焼成して多孔質酸化チタンからなる第三の電極3を形成した。焼成後の第一の電極1の領域に、カソード性のEC材料である化合物2の5mM水溶液を塗布して一晩静置、水洗、乾燥して、カソード性のEC材料を固定化した第一の電極1を形成した。ナノ粒子膜の比表面積は300cm2/cm2であった。
[第二の電極2の作成]
平均粒径21nmの酸化スズナノ粒子スラリー(CIKナノテック社製)と、平均粒径34nmの酸化亜鉛ナノ粒子スラリー(CIKナノテック社製)を酸化スズ:酸化亜鉛の体積比が2:1になるように混合した。さらに膜表面の平坦性向上、剥離防止のために無機系バインダーを少量添加して、ナノ粒子混合スラリーを得た。混合スラリーを第二の電極形成領域2’に塗布し、500℃、30分の条件で焼成した後、希塩酸により酸化亜鉛のみをエッチングした。この電極を、アノード性のEC材料である化合物3の20mMクロロホルム溶液に一晩浸漬し、洗浄することで第二の電極2を形成する。ナノ粒子膜の比表面積は300cm2/cm2であった。
[基板の接着]
第二の電極2を形成した透明導電性ガラスに、シール材5として、実施例1と同じビーズを含まないUV硬化性接着剤を、電極取り出し部位9、注入口10を残した外周に塗布した。その上部に、他方の透明導電性ガラスを、第一の電極1と第二の電極2、第三の電極3同士が対向する様に重ね合わせ、UVを照射して接着剤を硬化させた。
[溶液の注入、電荷バランス状態検知手段の設置]
電解質溶液として、0.1M過塩素酸リチウムのプロピレンカーボネート溶液を使用した。この溶液を注入口10から注入し、前述のUV硬化性接着剤で封止11してEC素子を作製した。次いで、実施例1と同様の手法を用いて、発光波長520nmのLEDと、同595nmのLEDからなる電荷バランス状態検知手段を設置した。第一の電極1の投影面積は3.6cm2、実効面積は1.1×103cm2、第二の電極2の投影面積は3.6cm2、実効面積は1.1×103cm2、第三の電極3の投影面積は4.2cm2、実効面積は、1.3×103cm2であった。
2.EC素子の耐久駆動
EC素子の第一の電極1と第二の電極2の間に1.2Vを15秒、0Vを15秒の矩形波を印加するサイクル試験を3日間行った後、第一の電極1と第二の電極2を短絡し、消色させた。この時の520nm/595nmの吸光度の初期消色状態からの変化量は、それぞれ+0.002/+0.052であり、605nmに吸収ピークを持つカソード性EC材料の着色体が残存する消色不良が発生していることが確認された。
3.消色不良の低減
EC素子の第一の電極1と第二の電極2の短絡を解除し、第一の電極1と第三の電極3間に電圧を印加する。印加時間は100msとし、以下のシーケンスを用いて動作させる。
(i)印加電圧は0.1V(第三の電極3が負、第二の電極2が正)から開始、電圧印加前と200ms後の吸光度の比較から、印加によって変化がない、または595nmの吸光度が増大する時に0.1V刻みで電圧を増大。
(ii)595nmの吸光度の初期消色状態からの変化量が0.005以下で電圧印加終了。
(iii)520nmの吸光度の初期消色状態からの変化量が0.005以上で電圧印加終了。
その結果、駆動開始より約5分で上記の(ii)によって電圧の印加が終了し、カソード性EC材料の着色体が残存する消色不良が、1/10以下に低減されることが確認される。また処理後のEC素子の目視より、消色不良は均一に低減されてほとんど見えなくなっていることが確認される。
これらの実施例より、以下の効果が確認された。
(1)第一の電極および第二の電極より大きな実効面積を有しており、ナノメートルスケールの微細構造をもった多孔質金属酸化物の第三の電極を用いることにより、EC素子の電荷インバランスにより残存した着色体を効果的に低減することができること。
(2)第三の電極を、第一の電極、または第二の電極を囲むように配置することによって消色不良が均一に低減されること。
(3)EC材料が電極に固定化された素子においても、第三の電極を用いることにより、EC素子の電荷インバランスにより残存した着色体を効果的に低減することができること。
(4)第三の電極と、第一の電極、第二の電極との間に、物質輸送を低減する構造体を配置したEC素子で第三の電極を用いることにより、EC素子の電荷インバランスにより残存した着色体を効果的に低減することができること。
(5)EC素子の検知された電荷バランス状態に基づき、第三の電極と第一の電極または第二の電極との間の電位差を制御することでEC素子の電荷インバランスにより残存した着色体を効果的に低減することができること。
(6)EC素子の検知された電荷バランス状態に基づき、第三の電極と第一の電極または、第二の電極との間に印加する電圧を制御する駆動方法を用いることで、EC素子の電荷インバランスにより残存した着色体を効果的に低減することができること。
(7)EC素子の検知された電荷バランス状態に基づき、第三の電極と第一の電極または第二の電極との間の電位差を制御することでEC素子の電荷インバランスにより残存した着色体を効果的に低減することができること。
(8)電圧制御ステップに基づいた電圧の印加後、さらに検知されたEC素子の電荷バランス状態に基づき、追加の電圧印加の実施を判断することでEC素子の電荷インバランスにより残存した着色体を効果的に低減することができること。
1:第一の電極、2:第二の電極、3:第三の電極、4:電解質、5:シール材、6:隔壁、7,8:基板

Claims (14)

  1. 少なくとも一方が透明な第一の電極及び第二の電極と、第三の電極とを有し、前記第一の電極と前記第二の電極との間に、電解質と、アノード性の有機エレクトロクロミック材料と、カソード性の有機エレクトロクロミック材料とを有するエレクトロクロミック素子であって、
    前記第一の電極と前記第三の電極との間と、前記第二の電極と前記第三の電極との間の少なくとも一方には、前記電解質が配され、
    前記第三の電極の実効面積は、前記第一の電極の実効面積および前記第二の電極の実効面積よりも大きく、
    前記第三の電極は、前記第一の電極または前記第二の電極の少なくとも一方を透過する光の光路外に配置されていることを特徴とするエレクトロクロミック素子。
  2. 少なくとも一方が透明な第一の電極及び第二の電極と、第三の電極とを有し、前記第一の電極と前記第二の電極との間に、電解質と、アノード性の有機エレクトロクロミック材料と、カソード性の有機エレクトロクロミック材料とを有するエレクトロクロミック素子であって、
    前記第一の電極と前記第三の電極との間と、前記第二の電極と前記第三の電極との間の少なくとも一方には、前記電解質が配され、
    前記第三の電極の実効面積は、前記第一の電極の実効面積および前記第二の電極の実効面積よりも大きく、
    前記第三の電極が、前記第一の電極または前記第二の電極の周囲の少なくとも一部に配置されていることを特徴とするエレクトロクロミック素子。
  3. 少なくとも一方が透明な第一の電極及び第二の電極と、第三の電極とを有し、前記第一の電極と前記第二の電極との間に、電解質と、アノード性の有機エレクトロクロミック材料と、カソード性の有機エレクトロクロミック材料とを有するエレクトロクロミック素子であって、
    前記第一の電極と前記第三の電極との間と、前記第二の電極と前記第三の電極との間の少なくとも一方には、前記電解質が配され、
    前記第三の電極の実効面積は、前記第一の電極の実効面積および前記第二の電極の実効面積よりも大きく、
    前記第三の電極が、ナノメートルスケールの微細構造をもった多孔質電極であることを特徴とするエレクトロクロミック素子。
  4. 少なくとも一方が透明な第一の電極及び第二の電極と、第三の電極とを有し、前記第一の電極と前記第二の電極との間に、電解質と、アノード性の有機エレクトロクロミック材料と、カソード性の有機エレクトロクロミック材料とを有するエレクトロクロミック素子であって、
    前記第一の電極と前記第三の電極との間と、前記第二の電極と前記第三の電極との間の少なくとも一方には、前記電解質が配され、
    前記第三の電極の実効面積は、前記第一の電極の実効面積および前記第二の電極の実効面積よりも大きく、
    前記アノード性の有機エレクトロクロミック材料と前記カソード性の有機エレクトロクロミック材料の少なくとも一方が、前記第一の電極または前記第二の電極に固定化されていることを特徴とするエレクトロクロミック素子。
  5. 少なくとも一方が透明な第一の電極及び第二の電極と、第三の電極とを有し、前記第一の電極と前記第二の電極との間に、電解質と、アノード性の有機エレクトロクロミック材料と、カソード性の有機エレクトロクロミック材料とを有するエレクトロクロミック素子であって、
    前記第一の電極と前記第三の電極との間と、前記第二の電極と前記第三の電極との間の少なくとも一方には、前記電解質が配され、
    前記第三の電極の実効面積は、前記第一の電極の実効面積および前記第二の電極の実効面積よりも大きく、
    前記第三の電極と、前記第一の電極または前記第二の電極との間に、物質輸送を低減する構造体を有することを特徴とするエレクトロクロミック素子。
  6. 少なくとも一方が透明な第一の電極及び第二の電極と、第三の電極とを有し、前記第一の電極と前記第二の電極との間に、電解質と、アノード性の有機エレクトロクロミック材料と、カソード性の有機エレクトロクロミック材料とを有するエレクトロクロミック素子であって、
    前記第一の電極と前記第三の電極との間と、前記第二の電極と前記第三の電極との間の少なくとも一方には、前記電解質が配され、
    前記第三の電極の実効面積は、前記第一の電極の実効面積および前記第二の電極の実効面積よりも大きく、
    エレクトロクロミック素子の電荷バランス状態を検知する手段をさらに備えたことを特徴とするエレクトロクロミック素子。
  7. 前記電荷バランス状態を検知する手段が、前記有機エレクトロクロミック材料の光吸収を利用して電荷バランス状態を検知する手段であることを特徴とする請求項に記載のエレクトロクロミック素子。
  8. 前記第三の電極が、金属酸化物からなることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子。
  9. 前記第三の電極は、前記電解質を介して、前記第一の電極または前記第二の電極と電気的に接続可能であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子。
  10. 少なくとも一方が透明な第一の電極及び第二の電極と、第三の電極とを有し、前記第一の電極と前記第二の電極との間に、電解質と、アノード性の有機エレクトロクロミック材料と、カソード性の有機エレクトロクロミック材料とを有するエレクトロクロミック素子の駆動方法であって、検知されたエレクトロクロミック素子の電荷バランス状態に基づき、前記第一の電極と前記第二の電極の少なくとも一方と前記第三の電極との間に印加する電圧を制御する電圧制御ステップを有し、
    前記電圧制御ステップが、消色状態のエレクトロクロミック素子の電荷バランス状態を検知する第一のステップと、前記第一のステップで検知された電荷バランス状態に基づいて前記印加する電圧を選択する第二のステップと、前記第二のステップで選択された電圧を印加する第三のステップとを有し、前記第一のステップ、前記第二のステップ及び前記第三のステップを繰り返すことを特徴とするエレクトロクロミック素子の駆動方法。
  11. 請求項1乃至のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子を有することを特徴とする光学フィルタ。
  12. 請求項11に記載の光学フィルタと、前記光学フィルタを通過した光を受光する受光素子とを有することを特徴とする撮像装置。
  13. 請求項11に記載の光学フィルタと、複数のレンズを有する光学系とを有することを特徴とするレンズユニット。
  14. 請求項1乃至のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子を有することを特徴とする窓材。
JP2016104873A 2015-06-03 2016-05-26 エレクトロクロミック素子及びその駆動方法、並びに光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置及び窓材 Active JP6758916B2 (ja)

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