JP6758614B2 - 経鼻的脳機能調整剤及び脳神経疾患を評価するためのデータを提供する方法 - Google Patents

経鼻的脳機能調整剤及び脳神経疾患を評価するためのデータを提供する方法 Download PDF

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Description

本発明は、特定の植物から抽出された抽出物を有効成分として含有する経鼻的脳機能調整剤に関し、また、該経鼻的脳機能調整剤を投与して脳神経疾患を評価するため、又は、脳機能の活動を調整するためのデータを提供する方法に関する。
香料、精油等の植物から抽出された抽出物は、精神症状の対症療法として利用ができることが知られている。
しかしながら、その利用は対症療法に過ぎない場合が多く、その効果についても未知の部分が多く、事前検査等を用いてもその利益が得られるかどうかは不明であった。また、該効果の個人差も強く、誰にでも又は常に効果を奏するものか否かは明確ではなかった。
ただ、我が国では、そういった状況を差し引いても、医療に精油を用いるアロマセラピーについては行なわれている。
特許文献1には、特定の官能基を有する精油成分を含有するβ−セクレターゼ阻害剤を含有する老人性痴呆症の予防又は治療薬が記載されており、かかる精油成分は、クローブ油やティーツリー油に含まれるとしている。
また、特許文献2には、セージ精油を有効成分として含む嗅覚機能改善剤が記載されており、認知症患者に投与すれば有効であるとされている。
このように、精油及び香料は、その香りが、人体に感覚的に受容されることで、様々な作用を有すると考えられている。
しかしながら、その効果については、誰にでも又は常に効果を奏するものか否かは明確ではなく、上記の香り成分が、より効果的に用いられる手法については、検討が十分ではなかった。
また、香り成分の探索、香り成分の有効性の検討、香り成分の効果的な経鼻投与量の決定等についても十分ではなく、更に、脳の如何なる場所の如何なる機能の活性化、亢進抑制化、調整等の評価手法についても十分ではなく、更なる検討が必要であった。
このような状況の下、脳機能の活性化、亢進抑制化、調整等について、有効な評価手法によって裏付けられた経鼻的脳機能調整剤については、殆ど知られておらず、明確な裏付けがある経鼻的脳機能調整剤が望まれていた。
特開2010−254607号公報 特開2013−014537号公報
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、精油、香料等の植物から抽出された抽出物の未知なる作用を検索し、特に脳機能に対する種々の効果を確認し、脳機能を効果的に調整可能な新規な「植物から抽出された抽出物を有効成分として含有する経鼻的脳機能調整剤」を提供することにあり、また、それを用いた脳機能の活動の判定又は調整方法を提供することにある。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の植物からの抽出物が、脳の局所的な調整を、再現性を持って行うことが可能であることを見出して、本発明を完成するに至った。
本発明は、植物から抽出された抽出物を有効成分として含有するものに、医療分野等に極めて有効な顕著な効果が初めて見出され、効果が規定された「経鼻的脳機能調整剤」として新たになされたものである。
すなわち、本発明は、嗅覚を利用して対象となる人の脳の特定の場所に作用して、該脳の特定の場所の活動を賦活又は抑制する経鼻的脳機能調整剤であって、植物から抽出された抽出物を有効成分として含有するものであることを特徴とする経鼻的脳機能調整剤である。
また、本発明は、上記の経鼻的脳機能調整剤を経鼻的に投与し、近赤外分光分析法によって脳の血液量を検知することを特徴とする、脳神経疾患を評価するための、又は、脳機能の活動を調整するためのデータを提供する方法である。
また、本発明は、上記の経鼻的脳機能調整剤を経鼻的に投与し、近赤外分光分析法によって、脳の場所ごとの血液量を検知してマッピングすることを特徴とする脳機能の活動の判定又は調整方法である。
また、本発明は、上記の経鼻的脳機能調整剤の投与量の決定方法であって、近赤外分光分析法によって脳の血液量を検知することによって、脳活動量が有意に変化する量を判定することを特徴とする投与量の決定方法である。
また、本発明は、脳神経疾患を治療するため又は脳機能の活動を調整するためのデータを提供する方法であって、経鼻的脳機能調整剤を経鼻的に投与し、近赤外分光分析法によって、脳の場所ごとの血液量を検知してマッピングすることを特徴とするデータを提供する方法である。
また、本発明は、脳神経疾患を治療するため又は脳機能の活動を調整するためのデータであって、経鼻的脳機能調整剤を経鼻的に投与し、近赤外分光分析法によって、脳の場所ごとの血液量を検知してマッピングすることによって得られたものであることを特徴とする香りによる脳活動変動マップである。
本発明によれば、前記問題点や上記課題を解決し、脳機能の活性化、亢進抑制、調整等について、例えば、脳の活動場所や該活動の程度等を含めた、脳機能の活動の評価手法によって明確に裏付けられた、有効な経鼻的脳機能調整剤を提供できる。
また、脳の活性化場所や程度、亢進抑制化場所や程度等が、明確に判明した有効な経鼻的脳機能調整剤を提供できる。
また、特定の疾患を持った人、特定の脳機能の活動を調整したい人等に、特異的に効果を奏する経鼻的脳機能調整剤を提供できる。
本発明の経鼻的脳機能調整剤は、脳を刺激し、脳の特定の箇所の血流を調整でき、これらは、短期的又は持続的に行われる。
本発明の経鼻的脳機能調整剤は、脳の特定の箇所の、血流量、血液量、「酸素が結合したヘモグロビンの量」、「酸素が結合したヘモグロビンと酸素が結合していないヘモグロビンの量の比率」等を調整できる。
また、主作用が香りによって得られることから、対象者にとって負担や副作用が少ない経鼻的脳機能調整剤を提供できる。
従って、本発明の経鼻的脳機能調整剤は、医薬品としてはもちろん、疾患を有さない人向けの予防薬、化粧品、アロマセラピー用品、芳香剤、介護用品等に用いることができ、また、健常者の更なる脳機能の活動調整等にも有効に用いることができる。
簡便な方法で、脳の局所的な調整を選択的に行うことができる薬剤は、本発明の経鼻的脳機能調整剤以外には存在しない。
また、本発明の経鼻的脳機能調整剤を投与し、特定の手法で脳神経疾患を評価するためのデータを提供したり、脳機能の活動を調整するためのデータを提供したりすることができる。
かかる、手法を用いれば、投与量の決定、投与時期の決定、投与方法の決定等にも有効である。
対象者の脳活動量の向上が可能であることから、本発明の経鼻的脳機能調整剤の利用で、作業量の向上等の認知機能の向上に繋がる。
本発明の経鼻的脳機能調整剤は、認知症等の精神症状を呈する精神科疾患又は全身性疾患を持つ患者、器質性の脳の変性を有する患者、疾患を持たないが罹患リスクを減少させたい人、脳機能の活動を調整したい健常者等に有効に用いることができる。
また、本発明は、脳神経疾患を治療したり、脳機能の活動を調整したりすることができ、本発明のデータを提供する方法を用いれば、投与量の決定、投与時期の決定、投与方法の決定等にも有効である。
脳活動量の向上が可能であることから、本発明の利用で、作業量の向上等の認知機能の向上が可能である。
カモミールからの抽出物を有効成分として含有する経鼻的脳機能調整剤を投与したときの、脳の活動の賦活を示す近赤外分光分析法による図である(白に近づくほど脳の活動が賦活していることを示す)。 (a)頭部右側、(b)頭部左側、(c)頭部正面 グレープフルーツからの抽出物を有効成分として含有する経鼻的脳機能調整剤を投与したときの、脳の活動の賦活を示す近赤外分光分析法による図である(白に近づくほど脳の活動が賦活していることを示す)。 (a)頭部右側、(b)頭部左側、(c)頭部正面 レモングラスからの抽出物を有効成分として含有する経鼻的脳機能調整剤を投与したときの、脳の活動の賦活を示す近赤外分光分析法による図である(白に近づくほど脳の活動が賦活していることを示す)。 (a)頭部右側、(b)頭部左側、(c)頭部正面 パチュリからの抽出物を有効成分として含有する経鼻的脳機能調整剤を投与したときの、脳の活動の賦活を示す近赤外分光分析法による図である(白に近づくほど脳の活動が賦活していることを示す)。 (a)頭部右側、(b)頭部左側、(c)頭部正面 フランキンセンスからの抽出物を有効成分として含有する経鼻的脳機能調整剤を投与したときの、脳の活動の賦活を示す近赤外分光分析法による図である(白に近づくほど脳の活動が賦活していることを示す)。 (a)頭部右側、(b)頭部左側、(c)頭部正面 クラリセージからの抽出物を有効成分として含有する経鼻的脳機能調整剤を投与したときの、脳の活動の賦活を示す近赤外分光分析法による図である(白に近づくほど脳の活動が賦活していることを示す)。 (a)頭部右側、(b)頭部左側、(c)頭部正面 サイプレスからの抽出物を有効成分として含有する経鼻的脳機能調整剤を投与したときの、脳の活動の賦活を示す近赤外分光分析法による図である(白に近づくほど脳の活動が賦活していることを示す)。 (a)頭部右側、(b)頭部左側、(c)頭部正面 サンダルウッドからの抽出物を有効成分として含有する経鼻的脳機能調整剤を投与したときの、脳の活動の賦活を示す近赤外分光分析法による図である(白に近づくほど脳の活動が賦活していることを示す)。 (a)頭部右側、(b)頭部左側、(c)頭部正面 ペッパーからの抽出物を有効成分として含有する経鼻的脳機能調整剤を投与したときの、脳の活動の賦活を示す近赤外分光分析法による図である(白に近づくほど脳の活動が賦活していることを示す)。 (a)頭部右側、(b)頭部左側、(c)頭部正面 ベルガモットからの抽出物を有効成分として含有する経鼻的脳機能調整剤を投与したときの、脳の活動の賦活を示す近赤外分光分析法による図である(白に近づくほど脳の活動が賦活していることを示す)。 (a)頭部右側、(b)頭部左側、(c)頭部正面 ベンゾインからの抽出物を有効成分として含有する経鼻的脳機能調整剤を投与したときの、脳の活動の賦活を示す近赤外分光分析法による図である(白に近づくほど脳の活動が賦活していることを示す)。 (a)頭部右側、(b)頭部左側、(c)頭部正面 マジュラムからの抽出物を有効成分として含有する経鼻的脳機能調整剤を投与したときの、脳の活動の賦活を示す近赤外分光分析法による図である(白に近づくほど脳の活動が賦活していることを示す)。 (a)頭部右側、(b)頭部左側、(c)頭部正面 ミルラからの抽出物を有効成分として含有する経鼻的脳機能調整剤を投与したときの、脳の活動の賦活を示す近赤外分光分析法による図である(白に近づくほど脳の活動が賦活していることを示す)。 (a)頭部右側、(b)頭部左側、(c)頭部正面 撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に外部から熱を加えつつ減圧して抽出する低温真空抽出法により抽出されたレモングラスをアルツハイマー認知症の対象者に投与した結果(認知機能障害の推移)を示すグラフである。
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的形態に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
本発明は、嗅覚を利用して対象となる人の脳に作用する経鼻的脳機能調整剤であって、植物から抽出された抽出物を有効成分として含有するものであることを特徴とする経鼻的脳機能調整剤である。以下、経鼻的脳機能調整剤として有用な成分を含有する植物を、「特定植物」と略記する。
本発明は人の嗅覚を利用しているので、特定植物から抽出された抽出物は「香り」を有する。また、特定植物に属する少なくとも1つの植物であればよく、2つ以上の複数の植物から抽出したものであってもよい。
本発明で用いられる植物は、経鼻的脳機能調整剤として有用な成分を含有していればよい。該植物はハーブ(薬効のある植物や風味や香りの良い植物)であることが好ましい。
また、本発明で用いられる植物は、カモミール、クラリセージ、グレープフルーツ、サイプレス、サンダルウッド、パチュリ、フランキンセンス、ペッパー、ベルガモット、ベンゾイン、レモン、レモングラス、ミルラ、ユーカリ、ヒノキ及びマジュラムよりなる群から選ばれた少なくとも1つの植物であることがより好ましい。
特定植物からの抽出は、該特定植物の何れの組織から抽出してもよく、該植物の葉;茎;花弁等の花冠;萼;果実;種子;樹皮等の樹木;根等から抽出されるが、特定植物に属するそれぞれの植物ごとに、香り成分を多く含む組織から抽出することが好ましい。また、1つの植物における複数の組織から抽出してもよい。
抽出に用いられるものは、十分乾燥したもの、全く乾燥をしないもの(生のままのもの)、中程度に乾燥したもの、の何れでもよい。また、磨り潰したもの、破砕したもの、裁断したもの(切り刻んだもの)、このような物理的処理を加えないもの、の何れでもよい。特定植物に属するそれぞれの植物ごとに、香り成分を効率よく抽出できるように処理してから抽出することが好ましい。
本発明の経鼻的脳機能調整剤は、嗅覚を利用して対象となる人の脳の特定の場所に作用して、該脳の特定の場所の活動を賦活又は抑制する経鼻的脳機能調整剤であって、特定植物から抽出された抽出物を有効成分として含有するものであるが、抽出方法は特に限定はされない。
抽出方法としては、例えば、具体的には、水蒸気蒸留法を用いて抽出して2層に分かれた上層を分離する方法;水に直接浸漬させて加熱蒸発させてその2層に分かれた蒸留成分から上層を分離する直接抽出法;溶媒を用いて抽出する溶媒抽出法;油性成分を加えて圧搾することにより抽出する圧搾法;超臨界流体を用いて抽出する超臨界抽出法;有機溶媒、水、水蒸気等の抽出媒体を使用せず、低温で減圧して直接抽出する直接抽出法;撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に外部から熱を加えつつ減圧して抽出する低温真空抽出法;等が挙げられる。
以下、「撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に外部から熱を加えつつ減圧して抽出する低温真空抽出法」を、単に、「低温真空抽出法」と略記する。
低温真空抽出法では、植物を撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に外部から熱を加えつつ減圧して抽出する工程を有する。
低温真空抽出法においては、植物を撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に抽出を行うことが必須である。このようにしながら、抽出することで、新鮮な破砕面ができたら直ぐに抽出が可能になるので、有効な香気成分の熱分解等による変性を防ぐことができる。
上記破砕・撹拌は、可動刃及び/又は固定刃を備えた抽出装置内で行うことが、上記効果を得るために特に好ましい。
低温真空抽出法で用いられる抽出装置は、例えば、植物を収容し、撹拌羽根で撹拌し、該破砕・撹拌下に外部から熱を加えつつ減圧して抽出する容器を備え、更に該容器から出る蒸気を冷却する冷却槽を備える。
上記撹拌・破砕と同時に、上記容器内に加熱用蒸気を供給することにより、外部から熱を加える。該容器内に加えられた熱は、植物に伝達され、該植物が撹拌羽根によって撹拌されることにより、抽出が促進される。この抽出は、該植物が破砕されて小さくなることによって、更に促進される。
その際、該容器内に送り込む加熱用蒸気の温度や量を調節して、植物の温度を、後記する好ましい範囲にする。
エゼクタ、真空ポンプ等の減圧装置で吸引することにより、上記容器内の気体、すなわち、抽出液の蒸気及び空気は、配管を通じて吸引され、該容器内の植物に含まれている抽出液の蒸気と水の蒸発が始まる。
その際、減圧装置で吸引する量や吸引力を調節して、抽出時の圧力(減圧度)を、後記する好ましい範囲にする。
上記容器内の「植物に含まれている抽出液の蒸気」及び「水蒸気」は、配管を通して吸引され、冷却槽に導入・液化されて、回収液となって回収槽内に溜まる。
回収槽内に、回収液(油層及び水層)が所定量まで貯まったら、該回収液を回収する。該回収液は、要すれば、静置して分液をして、油層(油相、精油)及び/又は水層(水相)を使用し、要すれば濾過をして、本発明の抽出液とすることが好ましい。
低温真空抽出法においては、上記抽出の温度は特に限定されないが、植物が70℃以下の温度を維持するように行うことが好ましく、植物の種類に応じて適宜調整すればよい。より好ましくは、上記抽出を、植物が20℃以上65℃以下の温度を維持するように行うことであり、特に好ましくは、25℃以上60℃以下であり、更に好ましくは、30℃以上55℃以下である。
下限が上記範囲の値であると、抽出時間を短くできるので、香気成分の分解・逸失が抑制され、また、不必要な時間のロスがなく経済的である。また、香気成分を十分に抽出可能である。
低温真空抽出法では、植物を撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に抽出を行うので、新鮮な破砕面ができた時点で早く抽出してしまうことができるが、下限が上記範囲の値であると、香気成分の分解・逸失が抑制される効果がより相乗される。
一方、上限が上記範囲の値であると、有効成分の熱による変性が防止でき、香気成分の分解を抑制しつつ、十分に香気成分を抽出できる。また、不必要な成分を抽出することがない。
低温真空抽出法においては、上記抽出の減圧度は特に限定されないが、101.3kPa(1気圧)に対し、80kPa以上低い圧力を維持しつつ行うことが好ましい。より好ましくは、101.3kPa(1気圧)に対し、85kPa以上低い圧力を維持しつつ行うことであり、特に好ましくは、90kPa以上低い圧力であり、更に好ましくは、95kPa以上低い圧力である。植物の種類に応じて適宜調整すればよい。
圧力が上記値であると(減圧度が上記であると)、低い温度での香気成分の抽出が可能になるので、有効成分の熱による変性が防止でき、香気成分の分解を抑制しつつ、十分に香気成分を抽出できる。また、抽出時間を短くできるので、香気成分の分解・逸失が抑制され、また、不必要な時間のロスがなく経済的である。また、香気成分を十分に抽出可能となる。
低温真空抽出法では、植物を撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に抽出を行うので、新鮮な破砕面ができた時点で早く抽出してしまうことができるが、減圧度が上記値のように低いと、香気成分の分解・逸失が抑制される効果がより相乗される。
低温真空抽出法によると、水性画分から芳香水、油性画分から精油(エッセンシャルオイル(essential oil))が得られる。
本発明においては、抽出後の操作は特に限定はされないが、通常は、同時に回収される不要成分を分離する。分離には、比重の違い等を利用した、デカンテーション、分液処理等が用いられる。本発明においては、抽出物が、「植物由来ではない成分」を含有しない芳香水又は精油として得られるという特長もある。
「低温真空抽出法」としては、有機溶媒、水、水蒸気等の抽出媒体を使用せず、撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に外部から熱を加えつつ減圧して、低温で直接抽出する抽出法が好ましい。
植物から抽出された抽出物は、油溶性でも水溶性でもよい。また、精油(エッセンシャルオイル(essential oil))、樹脂、香料でもよい。
「経鼻的脳機能調整」とは、嗅覚を利用して対象となる人の脳の特定の場所に作用して、その「脳の特定の場所」の活動を賦活又は抑制することをいい、言い換えれば、香りを感知することによって感覚器が刺激され、その刺激が脳の特定の場所に作用して、その場所の活動を賦活若しくは抑制、又は、その場所を活性化若しくは過剰亢進抑制をすることをいう。
脳の特定の場所の活動の賦活や抑制は、例えば、その場所の血流量で検知される。従って、血流量で検知される場合、具体的には、「脳機能調整」とは、例えば、脳の特定の場所に作用して、その場所の血流量を増加させたり、逆に血流量を減少させたり、血流量が多い場所と少ない場所とのバランスをとったりする(例えば、均一化する等)ことをいう。
脳機能調整は、脳活動の量的で相対的な制御であり、脳の不必要な活動亢進の軽減、脳の血流量の減少等に起因する脳活動の低下の緩和又は治療である。
脳の特定の場所の活動の賦活や抑制は、例えば、その場所の「酸素が結合したヘモグロビン量」や、「酸素が結合したヘモグロビン量と酸素が結合していないヘモグロビン量との比率」で検知される。従って、血流量で検知される場合、具体的には、「脳機能調整」とは、脳の特定の場所に作用して、その場所の「酸素が結合したヘモグロビンを含有する血液」の量や比率を増加させたり、逆に該血液量や該血液比率を減少させたり、該血流量が多い場所と少ない場所とのバランスをとったりする(例えば、均一化する等)ことをいう。
脳機能調整は、脳活動の量的で相対的な制御であり、脳の不必要な活動亢進の軽減、脳の「酸素が結合したヘモグロビンを含有する血液」の量(比)の減少等に起因する脳活動の低下の緩和又は治療である。
本発明では、「酸素が結合したヘモグロビン量」又は「酸素が結合したヘモグロビンの、酸素が結合していないヘモグロビンに対する比率」を、単に「血液量」又は「血流量」と略記する場合がある。
前記「特定植物」の中には、アロマセラピーに用いられることが知られているものもあるが、本発明のように、上記で定義したような「経鼻的脳機能調整」が可能であり、嗅覚を利用して対象となる人の脳の特定の場所に作用する経鼻的脳機能調整剤として知られているものはない。
本発明は、植物から抽出された抽出物を有効成分として含有するものに、前記したような、医療等に有効な顕著な効果を新たに見出して、「経鼻的脳機能調整剤」としてなされたものである。
脳機能を調整する「脳の特定の場所」は、前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉、大脳辺縁系又は前頭眼窩野が好ましい。
特に、血液量の増加(活動の賦活)と血液量の減少(活動の抑制)が、画像(パターン)として制御し易い部分が好ましい。
前頭葉は、思考・判断等の精神作用や随意運動を司る等の役割を有する。
連合野は運動野と感覚野の間にあり、記憶・判断・意志等の高等な精神活動に関与し、前頭連合野、頭頂連合野、側頭連合野、視覚前野と辺縁葉に分けられる。前頭連合野は、運動前野より前方の領域で、前頭眼野、前頭前野、眼窩野、前言語野からなる。
上記前頭葉の更なる特定の場所としては、上前頭回、中前頭回、下前頭回、中心前回、前頭極、直回、前部帯状回、一次運動野、前頭前野、若しくは、前頭眼窩野、又は、それらの近傍部が好ましい。
中でも、中心前回、前頭極、前頭前野、若しくは、前頭眼窩野、又は、それらの近傍部が、血液量の増加(活動の賦活)と血液量の減少(活動の抑制)の制御が、より容易である点で特に好ましい。
上記側頭葉の更なる特定の場所としては、上側頭回、中側頭回、下側頭回、紡錘状回、横側頭回、側頭極、一次聴覚皮質、ウェルニッケ野を含む言語野、若しくは、側頭頭頂接合部、又は、それらの近傍部が好ましい。
中でも、上側頭回、中側頭回、下側頭回、横側頭回、若しくは、側頭極、又は、それらの近傍部が、血液量の増加(活動の賦活)と血液量の減少(活動の抑制)の制御が、より容易である点で特に好ましい。
上記頭頂葉の更なる特定の場所としては、中心後回、上頭頂小葉、下頭頂小葉、楔前部、若しくは、中心傍小葉、又は、それらの近傍部が好ましい。
上記後頭葉の更なる特定の場所としては、楔部、舌状回、後頭極、若しくは、一次視覚野、又は、それらの近傍部が好ましい。
前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉、大脳辺縁系又は前頭眼窩野において、本発明の経鼻的脳機能調整剤は、効果的に血流量を調整して脳の機能を調整できる。このような場所は、本発明の経鼻的脳機能調整剤を投与した際、近赤外分光分析法(NIRS)のパターンとして制御し易い。
また、上記した「更なる特定の場所」において、本発明の経鼻的脳機能調整剤は、より効果的に血流量を調整して脳の機能を調整できる。言い換えれば、近赤外分光分析法(NIRS)のパターンとして制御し易い。
また、本発明は、近赤外分光分析法(NIRS:Near-Infrared Spectroscopy、又は、fNIRS:functional Near-Infrared Spectroscopy)によって、脳の場所ごとの血液量を検知することによってなされたので、該「脳の特定の場所」は、NIRSによって血流量が検知し易い場所であることが好ましい。
近赤外分光分析法(NIRS)は、近赤外光光トポグラフィー(「光トポグラフィー」は登録商標)とも呼ばれ、酸素ヘモグロビン(ヘモグロビンに酸素が結合したもの)及びヘモグロビンの濃度変化を脳の場所ごとに検知してマッピングすることができる。
図1〜13は、特定植物からの抽出物を有効成分として含有する経鼻的脳機能調整剤を投与したときの、脳の活動の賦活を示す近赤外分光分析法による図である。図1〜13の何れでも、(a)は左前頭眼窩野、(b)は右側頭部、(c)は左側頭部を示している。
それぞれの抽出物(を有効成分として含有する経鼻的脳機能調整剤)を投与された対象者は、脳の前頭前野、側頭葉、頭頂葉を中心として、それぞれに特徴的で部位的に限定された調整作用を示す。図1〜13中の色の濃淡は、標準値を灰色として、黒に近づくほど脳の活動を抑制していることを示し、また、白に近づくほど脳の活動を賦活していることを示す。
カモミール、クラリセージ、グレープフルーツ、サイプレス、サンダルウッド、パチュリ、フランキンセンス、ペッパー、ベルガモット、ベンゾイン、レモン、レモングラス、ミルラ、ユーカリ及びヒノキからの抽出物は、何れも脳の場所ごとの血液量の有意の増加(活動の賦活)又は血液量の有意の減少(活動の抑制)が検知できた。
図1はカモミール、図2はグレープフルーツ、図3はレモングラス、図4はパチュリ、図5はフランキンセンスから抽出された抽出物を有効成分として含有する経鼻的脳機能調整剤を投与したときの、近赤外分光分析法による脳の活動の賦活を示す図である。
図1〜5では、何れも脳の場所ごとの血液量(活動)の有意の増加(賦活)又は有意の減少(抑制)が検知できている。
図1は、カモミールから抽出された抽出物を投与した場合であるが、左前頭眼窩野、右側頭部及び左側頭部に、血液量(活動)の増加(賦活)が見られた。
図2は、グレープフルーツから抽出された抽出物を投与した場合であるが、前頭眼窩野全体において、強い血液量(活動)の増加(強い賦活)が見られた。
図3は、レモングラスから抽出された抽出物を投与した場合であるが、前頭眼窩野全体において、やや強い血液量(活動)の増加(やや強い賦活)が見られた。
図4は、パチュリから抽出された抽出物を投与した場合であるが、左側頭部において、強い血液量(活動)の減少(強い抑制)が見られ、右側頭部にやや強い血液量(活動)の減少(やや強い抑制)が見られた。
図5は、フランキンセンスから抽出された抽出物を投与した場合であるが、右側頭葉の上側頭回から下側頭回にかけて若干の血液量(活動)の増加(若干の賦活)が見られた。
図6は、クラリセージから抽出された抽出物を投与した場合であるが、図6に示した場所で、強い血液量(活動)の増加(賦活)及び/又は減少(強い抑制)が見られた。
図7は、サイプレスから抽出された抽出物を投与した場合であるが、図7に示した場所で、強い血液量(活動)の増加(賦活)及び/又は減少(強い抑制)が見られた。
図8は、サンダルウッドから抽出された抽出物を投与した場合であるが、図8に示した場所で、強い血液量(活動)の増加(賦活)及び/又は減少(強い抑制)が見られた。
図9は、ペッパーから抽出された抽出物を投与した場合であるが、図9に示した場所で、強い血液量(活動)の増加(賦活)及び/又は減少(強い抑制)が見られた。
図10は、ベルガモットから抽出された抽出物を投与した場合であるが、図10に示した場所で、強い血液量(活動)の増加(賦活)及び/又は減少(強い抑制)が見られた。
図11は、ベンゾインから抽出された抽出物を投与した場合であるが、図11に示した場所で、強い血液量(活動)の増加(賦活)及び/又は減少(強い抑制)が見られた。
図12は、マジュラムから抽出された抽出物を投与した場合であるが、図12に示した場所で、強い血液量(活動)の増加(賦活)及び/又は減少(強い抑制)が見られた。
図13は、ミルラから抽出された抽出物を投与した場合であるが、図13に示した場所で、強い血液量(活動)の増加(賦活)及び/又は減少(強い抑制)が見られた。
一方、上記以外の植物からの抽出物は、実験した範囲内では、何れも脳の血液量の増加(活動の賦活)若しくは血液量の減少(活動の抑制)が検知できなかったか、又は、増加(賦活)幅若しくは減少(抑制)幅が小さかったが、本発明は、実験した範囲を広げれば、上記以外の植物からの抽出物であっても、脳の血液量の増加(活動の賦活)若しくは血液量の減少(活動の抑制)が検知できる可能性がある。
前記した通り、本発明で「特定植物」とは、経鼻的脳機能調整剤として有用な成分を含有する植物を言うので、本発明は、前記した具体的植物からの抽出液には限定されない。
本発明の経鼻的脳機能調整剤は、嗅覚を利用して対象となる人の脳に作用するものであるが、ここで、該対象となる人は、精神症状を呈する精神疾患又は全身性疾患を持つ患者であることが、治療の効果が奏され易いために好ましい。
また、該対象となる人は、器質性の脳の変性を有する患者であることも、治療の効果が奏され易いために好ましい。
また、該対象となる人は、疾患を持たない人であって、疾患の罹患リスクを減少させるために予防的に投与される人であることも好ましい。
また、該対象となる人は、健常者であっても、脳機能の活動を調整するために投与される人であることも好ましい。
すなわち、本発明の経鼻的脳機能調整剤の投与対象は、健康対象であってもよく、疾病にかかっている対象であってもよい。
本発明の「経鼻的脳機能調整剤」や、「脳神経疾患を評価するためのデータを提供する方法」を用いることで、主として、大うつ病やうつ性神経症に代表される精神疾患群の精神症状の緩和、及び、認知症等に代表されるその他器質性の脳神経疾患の脳の活動の調整が行えて、効果的な治療に繋がる。
精神疾患のうち、対象となる疾患としては、うつ病、うつ性神経症等の不安障害や気分障害を来す疾患全般が挙げられる。
更に、認知症には、アルツハイマー病、パーキンソン病、前頭側頭型認知症、ピック病、レビー小体病、ハンチントン病、進行性核上性麻痺等の変性性認知症;クロイツフェルト・ヤコブ病、HIV等の感染症に関連した認知症;等が挙げられる。
更に、これらの治療目的のみならず、予防目的にも用いられ、健常者であっても、脳機能の活動を調整するために用いられる。
従って、本発明は、経鼻的精神疾患予防治療剤でもあり、経鼻的うつ性神経症予防治療剤でもあり、経鼻的器質性脳変性予防治療剤でもあり、経鼻的認知症予防治療剤でもある。
本発明の経鼻的脳機能調整剤を経鼻的に投与すれば、近赤外分光分析法によって脳の血液量を検知することによって、脳神経疾患を評価するためのデータが提供できる。
本発明によれば、経鼻的脳機能調整剤を経鼻的に投与し、近赤外分光分析法によって脳の血液量を検知することによって、前記したような脳神経疾患を治療や予防ができ、また、診断ができる。
また、本発明の経鼻的脳機能調整剤を経鼻的に投与すれば、近赤外分光分析法によって脳の血液量を検知することによって、脳機能の活動を調整するためのデータが提供できる。
本発明によれば、経鼻的脳機能調整剤を経鼻的に投与し、近赤外分光分析法によって脳の血液量を検知することによって、脳機能の活動を調整し、また、診断ができる。
本発明の経鼻的脳機能調整剤を経鼻的に投与すれば、近赤外分光分析法によって、脳の場所ごとの血液量を検知して、前記のようなマッピングする工程を有する脳機能の活動の判定又は調整方法が提供できる。
経鼻的脳機能調整剤を経鼻的に投与することにより、近赤外分光分析法によって、脳の場所ごとの血液量を検知してマッピングする工程を有する脳機能の活動の判定又は調整方法を提供できる。
本発明の経鼻的脳機能調整剤の投与量は、近赤外分光分析法によって脳の血液量を検知することによって、脳活動量が有意に変化する量を判定することによって決定できる。
経鼻的脳機能調整剤の投与量は、近赤外分光分析法によって脳の血液量を検知することによって、脳活動量が有意に変化する量を判定することにより決めることができる。
例えば、近赤外分光分析法(NIRS)の測定画像のシグナル強度を表わす色の濃淡等を観察することによって、投与量を決定できる。
本発明は、脳神経疾患を治療するため又は脳機能の活動を調整するためのデータを提供する方法であって、経鼻的脳機能調整剤を経鼻的に投与し、近赤外分光分析法によって、脳の場所ごとの血液量を検知してマッピングすることを特徴とするデータを提供する方法でもある。
また、脳神経疾患を治療するため又は脳機能の活動を調整するためのデータであって、上記のようにマッピングすることによって得られた「香りによる脳活動変動マップ」でもある。
本発明の「香りによる脳活動変動マップ」は、精神症状を呈する精神科疾患若しくは全身性疾患を持つ患者;器質性の脳の変性を有する患者;脳機能の活動を調整したい若しくは精神疾患を予防したい健常者;等にとって有用である。
「特定植物」の中にはアロマセラピーに用いられるものもある。しかしながら、一般的には、アロマセラピーが脳の活動量の調整を行うことによって効果を得ているとは考えられていない。また、たとえ、アロマセラピーが脳に作用すると考えられていたと仮定したとしても、アロマセラピーの場合は、脳の嗅脳や大脳辺縁系といった部分を、単に刺激すると通常は考えられていたはずであり、しかもその詳細は未知であったのだから、アロマセラピーによって、脳の活動が調整されると考えられていたわけではない。その点から、本発明の経鼻的脳機能調整剤とアロマセラピー用材料とは異なるものである。
本発明は、植物から抽出された抽出物を有効成分として含有するものに、前記したように、脳の特定部位に直接働きかけて、神経精神疾患等を中心とした諸処の疾患の治療・予防を含めた医療に有効な顕著な効果を新たに見出して、「経鼻的脳機能調整剤」としてなされたものである。
本発明の経鼻的脳機能調整剤の対象への投与方法は経鼻的であればよく、公知の何れの方法で行ってもよいが、精油、香料等の「植物から抽出された抽出物」を、エタノール、植物油等の溶媒で適当に希釈し、ディフューザー(芳香拡散器)を用いて霧化させたものを対象に吸入させることが好ましい。
霧化物の吸入は、マスク等を用いて対象への投与漏れを少なくしてもよく、霧化物が部屋全体に行き渡るようにしてもよい。
また、精油、香料等の「植物から抽出された抽出物」、又は、それを希釈したものを、フェルト等に染みこませたものを、対象が嗅ぐようにしてもよい。また、加熱により蒸散させたものを対象が嗅ぐようにしてもよい。また、身につけるものの何れかの原料に含有させてもよい。
投与量や投与時間は、1回に1秒〜3時間が好ましく、10秒〜60分がより好ましく、1分〜10分が特に好ましい。
また、投与頻度は、3時間〜10日に1回が好ましく、6時間〜3日に1回がより好ましく、12時間〜1日に1回が特に好ましい。
なお、本発明の経鼻的脳機能調整剤の対象への投与方法は、上記に限定されないことはいうまでもない。
本発明の経鼻的脳機能調整剤に含まれる、精油、香料等の「植物から抽出された抽出物」は、1種類であってもよく、複数種類であってもよい。
また、本発明の経鼻的脳機能調整剤は、特定植物以外からの抽出物を1種類又は複数種類含んでいてもよい。
更に、本発明の経鼻的脳機能調整剤は、吸入用製剤に通常使用される他の成分も適宜含んでいてもよい。
本発明の経鼻的脳機能調整剤は、医薬品、医薬部外品、気化吸引用剤、外用組成物、調合香料、化粧品、浴剤、繊維等に利用できる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
一般健常者に対し、カモミール(Matricaria recutita)、クラリセージ(Salvia sclarea)、グレープフルーツ(Citrus paradisi)、サイプレス(Cupressus sempervire)、サンダルウッド(Santalum album)、パチュリ(Pogostemon cablin)、フランキンセンス(Boswellia carterii)、ペッパー(Piper nigrum)、ベルガモット(Citrus bergamia)、ベンゾイン(Styrax benzoin)、レモン(Citrus limon)、レモングラス(Cymbopogon citratus)、ミルラ(Commiphora myrrha)、ユーカリ(Eucalyptus)、ヒノキ(Chamaecyparis obtusa)、マジュラム(Origanum majorana)からそれぞれ抽出された抽出物、及び、汗様臭、ニンニク様臭、プロポリス様臭、都市ガス様臭を投与し、脳機能の変化について検討した。
それぞれの植物からの抽出は、水蒸気蒸留、圧搾抽出又は溶媒抽出によって、植物ごとに好ましい方法で行った。
得られた精油を原液とし、エアーコンプレッサーによって揮発した精油又は香料を、芳香曝露用に作成された装置によって、被験者の鼻腔内に30秒流入させることによって対象に投与した。
該装置は、精油等の抽出物を入れたチャンパーに、コンプレッサーから空気を通し、その空気を被験者の装着するガスマスクに流し込めるようにしたものであり、従って、自然蒸散した香りを、空気で被検者に曝露するようになっているものである。
経鼻的脳機能調整剤を、健常者12名(男性9名、女性3名、mean±SD=33.20±15.19歳)を全体の被験者として検討した。
投与後、1秒以内〜15分以内に、近赤外光光トポグラフィー装置(SMARTNIRS:島津製作所社製)を用い、近赤外分光分析法により、頭皮上から非侵襲的にマッピングした。
その結果、カモミール、クラリセージ、グレープフルーツ、サイプレス、サンダルウッド、パチュリ、フランキンセンス、ペッパー、ベルガモット、ベンゾイン、レモン、レモングラス、ミルラ、ユーカリ、マジュラム及びヒノキにおいて、脳のそれぞれ特定の場所において、血液量(活動)の増加(賦活)、及び/又は、血液量(活動)の減少(抑制)が見られた。
一方、評価したそれ以外の植物からの抽出物(アロマセラピー用として知られているものも含む)、及び、汗様臭、ニンニク様臭、プロポリス様臭、都市ガス様臭等のような特に単一の香料の場合は、脳の特定の場所において、血液量(活動)の増加(賦活)、及び/又は、血液量(活動)の減少(抑制)が見られなかったか、又は、見られても極めて少ないものであった。
実験の範囲を広げれば、血液量(活動)の増加(賦活)、及び/又は、血液量(活動)の減少(抑制)が見られる植物の範囲は広がる。
図1〜4、6〜13に、カモミール、グレープフルーツ、レモングラス、パチュリ、クラリセージ、サイプレス、サンダルウッド、ペッパー、ベルガモット、ベンゾイン、マジュラム、ミルラからの抽出物の結果をそれぞれ示す。
また、図5に、本発明における植物であり、血液量の増加や減少が見られたが、著しくは見られなかったフランキンセンスからの抽出物の結果を示す。
このように、効果が高いもの、低いもの、中間的なもの等、本発明の効果の有無のほかに、程度の差も見られた。
本発明の経鼻的脳機能調整剤は、脳の局所的な機能調整作用を持つことが示された。
実施例2
次に、収穫したレモングラスを乾燥機に入れて、空気中で、30〜50℃で24時間乾燥した。
乾燥したレモングラスは、抽出装置に入れて抽出を行った。
抽出条件は以下であった。
(1)レモングラスの温度:30〜40℃
(2)装置内の設定温度:30〜40℃
(3)圧力:101.3kPa(1気圧)に対し、93〜97kPa低い圧力
(4)撹拌羽根(可動刃)の回転数:4rpm(回転/分)
回収槽に溜まった回収液のうち、水層(水相)の液を目的の抽出液とした。
実施例3
低温真空抽出法によって抽出されたレモングラス抽出液と、水蒸気蒸留法によって抽出されたレモングラス抽出液に含まれる成分の違いを、ガスクロマトグラフィー法を用いて比較した。
結果を表1に示す。表1中、「%」は「質量%」、「RT」は「保持時間(Retention Time)」を示す。
水蒸気蒸留法によって抽出されたレモングラス抽出液に含まれる主要の4成分のうちの78%が、アルデヒド型の成分(ネラール及びゲラニアール)であり、12%がアルコール型の成分(ネロール及びゲラニオール)であることがわかった。
一方、低温真空抽出法によって抽出されたレモングラス抽出液に含まれる主要の4成分のうち、アルコール型の成分が39%であり、水蒸気蒸留法によって抽出されたものと比較して、多く含まれていることがわかった。
また、アルコール型の成分の方が、アルデヒド型の成分と比較して、毒性・刺激がなく安全であり、鎮静作用を有すると言われている。
実施例4
低温真空抽出法で抽出されたレモングラス抽出液による知能機能(認知機能)の改善について検討を行った。
介護老人保健施設の食堂の壁面に市販の超音波式加湿器を設置し、該加湿器を用いて、上記レモングラス抽出液を対象者に投与した。介護老人保健施設の施設入居者19名(平均年齢±標準偏差;83.2±8.61歳)を対象者とした。本人からインフォームド・コンセントを得ることが難しい場合は、その保護者に説明の上、保護者から同意を得た。
投与時間は毎日2時間程度であり、16週間行った。上記レモングラス抽出液を投与した結果の検討のために、GBSスケール日本語版(GBSS−J、日本語版老年期認知症評価尺度)を実施し、GBSS−Jの下位項目群についても実施を行った(Homma A,Niina R,Ishii T and Hasegawa K:Alzheimer Dis Assoc Disord 5:40-48,(1991))。
上記対象者19名中、軽度〜中等度のアルツハイマー型認知症と診断された4名(平均年齢±標準誤差;85.53±3.00歳)について、GBSS−J−A(知的機能評価)を実施した結果を、図14に示す。図14のグラフの縦軸は、数字が大きい程、知的機能(認知機能)障害が悪化していることを示している。
その結果、試験開始後16週で、試験開始前と比較して、有意に認知機能障害の改善が見られた。このことから、該レモングラス抽出液には、認知機能障害の進展を抑制する作用があることが示唆された。
本発明の植物から抽出された抽出物を有効成分として含有する経鼻的脳機能調整剤は、脳の局所的な機能の調整に優れているため、医薬品としてはもちろんのこと、アロマセラピー用品、芳香剤、介護用品、化粧品等の分野において広く利用されるものである。

Claims (8)

  1. 対象となる人のアルツハイマー型認知症を治療又は予防するために、
    植物から抽出された抽出物を経鼻的に投与された人の脳の特定の場所ごとの嗅覚による活動の賦活又は抑制に関し、該場所ごとに血流量を近赤外分光分析法によって頭皮上から非侵襲的に検知してマッピングする脳活動変動マップの製造方法であって、
    該植物が、カモミール、クラリセージ、グレープフルーツ、サイプレス、サンダルウッド、パチュリ、フランキンセンス、ペッパー、ベルガモット、ベンゾイン、レモン、レモングラス、ミルラ、ユーカリ、ヒノキ及びマジュラムよりなる群から選ばれた少なくとも1つの植物であり、
    該抽出が、低温真空抽出法による抽出であって、かつ、抽出媒体を使用せず、該植物が65℃以下の温度を維持するように行うものであり、
    該脳の特定の場所が、少なくとも前頭眼窩野を含み、アルツハイマー型認知症を治療又は予防するために、前頭眼窩野の賦活の有無に着目して製造することを特徴とする香りによる脳活動変動マップの製造方法。
  2. 前記抽出を、前記植物が55℃以下の温度を維持するように行う請求項1に記載の香りによる脳活動変動マップの製造方法。
  3. 前記植物が、カモミール、グレープフルーツ、又は、レモングラスである請求項1又は請求項2に記載の香りによる脳活動変動マップの製造方法。
  4. 請求項1ないし請求項の何れかの請求項に記載の香りによる脳活動変動マップの製造方法を使用することを特徴とする、アルツハイマー型認知症治療用の経鼻的脳機能調整剤を見出す方法。
  5. 請求項1ないし請求項の何れかの請求項に記載の香りによる脳活動変動マップの製造方法を使用し、前頭眼窩野が賦活される植物を選択することを特徴とする、アルツハイマー型認知症治療用の経鼻的脳機能調整剤を見出す方法。
  6. 請求項1ないし請求項の何れかの請求項に記載の香りによる脳活動変動マップの製造方法を使用し、前頭眼窩野が賦活される経鼻的投与方法を選択することを特徴とする、アルツハイマー型認知症治療用の経鼻的脳機能調整剤を見出す方法。
  7. 請求項4ないし請求項6の何れかの請求項に記載のアルツハイマー型認知症治療用の経鼻的脳機能調整剤を見出す方法を使用する、経鼻的脳機能調整剤の製造方法であって、
    該経鼻的脳機能調整剤は、植物から抽出された抽出物を有効成分として含有するものであることを特徴とする経鼻的脳機能調整剤の製造方法。
  8. 請求項1ないし請求項の何れかの請求項に記載の香りによる脳活動変動マップの製造方法を使用して製造されたものであることを特徴とする香りによる脳活動変動マップ。

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