JP6757159B2 - 磁気記録媒体用ガラス基板及びその製造方法 - Google Patents

磁気記録媒体用ガラス基板及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、磁気記録媒体用ガラス基板及びその製造方法に関する。
磁気記録媒体は、記録密度の高密度化が求められている。この高記録密度化を実現するための各種磁気記録層の形成は、従来よりもガラス基板温度を高温にして行うことが多く、ガラス基板の変形や熱収縮の問題がより顕著になってきている。そのため、製造時のガラス基板の変形や熱収縮の抑制が課題となっている。
ガラス基板の熱収縮は、一般に、ガラス基板の歪点やTg(ガラス転移点)に代表される低温粘性域での特性温度(以下、低温粘性特性温度と記す)を高くすることで抑制することができる。歪点の高いガラスとしては、例えば、特許文献1に歪点が680℃以上の無アルカリガラスが開示されている。
特開2010-6649号公報
ガラス基板の歪点やTg(ガラス転移点)に代表される低温粘性特性温度を改善するためには、一般的に、ガラス中のSiO2やAl2O3の含有量を多くする必要がある(以下、本明細書では、「低温粘性特性温度」として、「歪点」を代表して記載する。)。磁気記録媒体用ガラス基板には、熱収縮の抑制に加えて、磁気記録媒体用として求められる特性がある。
そこで、本発明は、磁気記録媒体用ガラス基板に求められる特性を実現しつつ、変形や熱収縮を抑制することができる磁気記録媒体用ガラス基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
本実施形態は以下の態様を有する。
[1]
質量%表示で、
SiO2 52〜78%、
Al2O33〜25%、
B2O33〜15%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25%、
Fe2O3 0.001〜0.8%
Sb2O3 0〜0.3%を含有し、
As2O3は実質的に含有せず、
質量比(SiO2+Al2O3)/B2O3は7〜30の範囲であり、かつ、
質量比(SiO2+Al2O3)/ROは6以上である、
磁気記録媒体用ガラス基板。
[2]
質量%表示で、
SiO2 52〜78%、
Al2O33〜25%、
B2O39.7%以下、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25%、
Fe2O3 0.001〜1%を含有し、
質量比(SiO2+Al2O3)/B2O3は7.5以上であり、
質量比CaO/B2O3は1以上であり、
失透温度が1250℃以下であり、
Sb2O3及びAs2O3は実質的に含有しない、ガラスからなり、
昇降温速度が10℃/min、550℃で2時間保持の熱処理が施された後の下記式で示される熱収縮率が75ppm以下である、
磁気記録媒体用ガラス基板。
(式)
熱収縮率(ppm)={熱処理後のガラス基板の収縮量/熱処理前のガラス基板の長さ}×106
[3]
質量%表示で、
SiO2 52〜78%、
Al2O33〜25%、
B2O33〜15%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25%、
R2O(但し、R2OはLi2O、Na2O及びK2Oの合量) 0.01〜0.8%、
Sb2O3 0〜0.3%を含有し、
As2O3は実質的に含有せず、
昇降温速度が10℃/min、550℃で2時間保持の熱処理が施された後の下記式で示される熱収縮率が75ppm以下である、
磁気記録媒体用ガラス基板。
(式)
熱収縮率(ppm)={熱処理後のガラス基板の収縮量/熱処理前のガラス基板の長さ}×106
[4]
質量%表示で、
SiO2 52〜78%、
Al2O33〜25%、
B2O39.7%以下、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25%、
R2O(但し、R2OはLi2O、Na2O及びK2Oの合量) 0.01〜0.8%を含有し、
質量比(SiO2+Al2O3)/B2O3は8以上であり、
質量比CaO/B2O3は1以上であり、
失透温度が1250℃以下であり、
As2O3は実質的に含有しない、ガラスからなり、
昇降温速度が10℃/min、550℃で2時間保持の熱処理が施された後の下記式で示される熱収縮率が75ppm以下である、
磁気記録媒体用ガラス基板。
(式)
熱収縮率(ppm)={熱処理後のガラス基板の収縮量/熱処理前のガラス基板の長さ}×106
[5]
質量比CaO/B2O3は1.1以上であり、
[1]〜[4]のいずれかに記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
[6]
モル%表示で、
SiO2 55〜80%、
Al2O33〜20%、
B2O33〜15%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25%を含有し、
失透温度が1250℃以下であり、
Sb2O3及びAs2O3は実質的に含有しない、ガラスからなり、
昇降温速度が10℃/min、550℃で2時間保持の熱処理が施された後の下記式で示される熱収縮率が75ppm以下である、
磁気記録媒体用ガラス基板。
(式)
熱収縮率(ppm)={熱処理後のガラス基板の収縮量/熱処理前のガラス基板の長さ}×106
[7]
モル%表示で、
SiO2 55〜80%、
Al2O33〜20%、
B2O33〜15%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25%を含有し、
SiO2、Al2O3及びB2O3のモル%で表す含有率が、(SiO2+Al2O3)/B2O3=7.5〜17の関係を満たし、
歪点が665℃以上であり、
失透温度が1250℃以下であり、
昇降温速度が10℃/min、550℃で2時間保持の熱処理が施された後の下記式で示される熱収縮率が75ppm以下である、
磁気記録媒体用ガラス基板。
(式)
熱収縮率(ppm)={熱処理後のガラス基板の収縮量/熱処理前のガラス基板の長さ}×106
[8]
歪点が680℃以上である、
[1]〜[7]のいずれかに記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
[9]
失透温度が1230℃以下である、
[1]〜[8]のいずれかに記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
[10]
歪点が740℃以下である、
[1]〜[9]のいずれかに記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
[11]
密度が2.5g/cm3未満である、
[1]〜[10]のいずれかに記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
[12]
所定の組成に調合したガラス原料を少なくとも直接通電加熱を用いて熔解する熔解工程と、
前記熔解工程にて熔解した熔融ガラスを平板状ガラスに成形する成形工程と、
前記平板状ガラスを徐冷する工程であって、前記平板状ガラスの熱収縮率を低減するように前記平板状ガラスの冷却条件を制御する徐冷工程と、を含む、
[1]〜[11]のいずれかに記載のガラス基板を製造する磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
本発明によれば、磁気記録媒体用ガラス基板に求められる特性を実現しつつ、変形や熱収縮を抑制することができる。
本願明細書において、ガラス基板を構成するガラスの組成は特に断らない限り、質量%で表示し、ガラスを構成する成分の比は質量比で表示する。また、ガラス基板の組成及び物性は、特に断らない限りガラス基板を構成するガラスの組成及び物性を意味し、単にガラスと表記するときは、ガラス基板を構成するガラスを意味する。但し、ガラス基板の熱収縮率は、実施例に記載の所定の条件で形成したガラス基板について、実施例に記載の条件で測定した値を意味する。また、本願明細書において、低温粘性特性温度とは、ガラスが107.6〜1014.5dPa・sの範囲の粘度を示す温度を意味し、低温粘性特性温度には、歪点およびTgが含まれる。従って、低温粘性特性温度を高めるということは、歪点およびTgを高めることも意味し、逆に、歪点及び/又はTgを高めるということは低温粘性特性温度を高めることを意味する。また、熔解性の指標となる熔融温度とは、ガラスが102.5dPa・sの粘度を示す温度であり、熔解性の指標となる温度である。
<第1〜4の態様の磁気記録媒体用ガラス基板>
本発明の磁気記録媒体用ガラス基板(本発明の第1の態様のガラス基板)は、
質量%表示で、
SiO2 52〜78%、
Al2O33〜25%、
B2O33〜15%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25%、
Fe2O3 0.001〜0.8%
Sb2O3 0〜0.3%を含有し、
As2O3は実質的に含有せず、
質量比(SiO2+Al2O3)/B2O3は7〜30の範囲であり、かつ、
質量比(SiO2+Al2O3)/ROは6以上である、
ことを特徴としている。
また、本発明の磁気記録媒体用ガラス基板(本発明の第2の態様のガラス基板)は、
質量%表示で、
SiO2 52〜78%、
Al2O33〜25%、
B2O39.7%以下、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25%、
Fe2O3 0.001〜1%を含有し、
質量比(SiO2+Al2O3)/B2O3は7.5以上であり、
質量比CaO/B2O3は1以上であり、
失透温度が1250℃以下であり、
Sb2O3及びAs2O3は実質的に含有しない、ガラスからなり、
昇降温速度が10℃/min、550℃で2時間保持の熱処理が施された後の下記式で示される熱収縮率が75ppm以下である、
ことを特徴としている。
ただし、(式)熱収縮率(ppm)={熱処理後のガラス基板の収縮量/熱処理前のガラス基板の長さ}×106
また、本発明の磁気記録媒体用ガラス基板(本発明の第3の態様のガラス基板)は、
質量%表示で、
SiO2 52〜78%、
Al2O33〜25%、
B2O33〜15%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25%、
R2O(但し、R2OはLi2O、Na2O及びK2Oの合量) 0.01〜0.8%、
Sb2O3 0〜0.3%を含有し、
As2O3は実質的に含有せず、
昇降温速度が10℃/min、550℃で2時間保持の熱処理が施された後の下記式で示される熱収縮率が75ppm以下である、
ことを特徴としている。
ただし、(式)熱収縮率(ppm)={熱処理後のガラス基板の収縮量/熱処理前のガラス基板の長さ}×106
また、本発明の磁気記録媒体用ガラス基板(本発明の第4の態様のガラス基板)は、
質量%表示で、
SiO2 52〜78%、
Al2O33〜25%、
B2O39.7%以下、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25%、
R2O(但し、R2OはLi2O、Na2O及びK2Oの合量) 0.01〜0.8%を含有し、
質量比(SiO2+Al2O3)/B2O3は8以上であり、
質量比CaO/B2O3は1以上であり、
失透温度が1250℃以下であり、
As2O3は実質的に含有しない、ガラスからなり、
昇降温速度が10℃/min、550℃で2時間保持の熱処理が施された後の下記式で示される熱収縮率が75ppm以下である、
ことを特徴としている。
ただし、(式)熱収縮率(ppm)={熱処理後のガラス基板の収縮量/熱処理前のガラス基板の長さ}×106
以下に、本発明の第1〜5の態様のガラス基板の各ガラス成分を含有する理由及び含有量や組成比の範囲について説明する。
本発明のガラス基板におけるSiO2の含有量は52〜78質量%の範囲である。
SiO2は、ガラスの骨格成分であり、従って、必須成分である。含有量が少なくなると、耐酸性が、耐BHF(バッファードフッ酸)および歪点が低下する傾向がある。また、熱膨張係数が増加する傾向がある。また、SiO2含有量が少なすぎると、ガラス基板の密度が上昇し、低密度化をするのが難しくなる。また、SiO2含有量が少なすぎると、(1)ガラス移転点及び歪点が低下する、(2)化学耐久性が低下する、(2)平均熱膨張係数が大きくなり、熱収縮率を小さくできない、という傾向もある。平均熱膨張係数が大きく(高く)なりすぎると、耐熱衝撃性が低下し、磁気記録層成膜時の生産性が低下する。一方、SiO2含有量が多すぎると、ガラス融液の比抵抗が上昇し、熔融温度が著しく高くなり熔解が困難になる傾向がある。SiO2含有量が多すぎると、耐失透性が低下する傾向もある。また、SiO2含有量が多すぎると、(1)ヤング率が低下する、(2)失透温度が上昇する、という傾向もある。このような観点から、SiO2の含有量は、52〜78質量%の範囲とする。SiO2の含有量は、好ましくは57〜75 質量%、より好ましくは58〜72質量%、さらに好ましくは59〜70質量%、一層好ましくは59〜69質量%、より一層好ましくは61〜69質量%、さらに一層好ましくは61〜68質量%、尚一層好ましくは62〜67質量%の範囲である。他方、SiO2含有量が多すぎると、ガラスのエッチングレートが遅くなる傾向がある。ガラス板をスリミングする場合の速度を示すエッチングレートが十分に速いガラス基板を得るという観点からは、SiO2の含有量は、好ましくは53〜75 質量%、より好ましくは55〜70質量%、さらに好ましくは55〜65質量%、一層好ましくは58〜63質量%の範囲である。尚、SiO2含有量は、上記耐酸性等の特性とエッチングレートの両方を考慮して適宜決定される。
本発明のガラス基板におけるAl2O3の含有量は 3〜25質量%の範囲である。
Al2O3は、分相を抑制し、歪点を高くする必須成分である。含有量が少なすぎると、ガラスが分相しやすくなる。歪点が低下する。また、ヤング率及びエッチングレートも低下する傾向がある。また、含有量が少なすぎると、(1)比弾性率が低下する、(2)ガラス移転点及び歪点が低下する、という傾向もある。Al2O3含有量が多すぎると、比抵抗が上昇する。また、ガラスの失透温度が上昇して、耐失透性が低下するので、成形性が悪化する傾向がある。このような観点から、Al2O3の含有量は3〜25質量%の範囲である。Al2O3の含有量は、好ましくは8〜25質量%、より好ましくは10〜23質量%、さらに好ましくは12〜20質量%、一層好ましくは14〜20質量%、尚一層好ましくは15〜20質量%、さらに尚一層好ましくは15〜19質量%の範囲である他方、エッチングレートが十分に速いガラス基板を得るという観点からは、Al2O3の含有量は、好ましくは8〜25質量%、より好ましくは10〜23質量%、さらに好ましくは14〜23質量%、一層好ましくは17〜22質量%である。尚、Al2O3の含有量は、上記ガラスが分相特性等とエッチングレートの両方を考慮して適宜決定される。
本発明のガラス基板におけるB2O3は、3〜15質量%の範囲である。
B2O3は、ガラスの熔融温度に代表される高温粘性域における温度を低下させ、清澄性を改善する必須成分である。B2O3含有量が少なすぎると、熔解性、耐失透性及び耐BHFが低下する傾向にある。また、B2O3含有量が少なすぎると、比重が増加して低密度化が図りがたくなる。他方、B2O3含有量が多すぎると、比抵抗が上昇する。また、B2O3含有量が多すぎると、ガラス移転点及び歪点が低下し、耐熱性が低下する。また、耐酸性及びヤング率が低下する傾向にある。また、ガラス熔解時のB2O3の揮発により、ガラスの不均質が顕著となり、脈理が発生しやすくなる。このような観点から、B2O3含有量は、3〜15質量%の範囲であり、好ましくは3〜13質量%、より好ましくは3〜11質量%未満、より好ましくは3〜10質量%未満、さらに好ましくは4〜9質量%、一層好ましくは5〜9質量%、尚一層好ましくは7〜9質量%の範囲である。他方、失透温度を十分に低下させるためには、B2O3含有量は、3〜15質量%の範囲であり、好ましくは5〜15質量%、よりましくは6〜13質量%、さらにましくは7〜11質量%未満である。また、B2O3含有量は、9.7質量%以下であってもよい。尚、B2O3含有量は、上記熔解性等と失透温度の両方を考慮して適宜決定される。
本発明のガラス基板におけるMgO、CaO、SrO及びBaOの合量であるROは、3〜25質量%の範囲である。
ROは、比抵抗を低下させ、熔解性を向上させる必須成分である。RO含有量が少なすぎると、比抵抗が上昇し、熔解性が悪化する。RO含有量が多すぎると、歪点及びヤング率が低下する。さらに、密度が上昇する。また、RO含有量が多すぎると、熱膨張係数が増大する傾向もある。このような観点から、ROは、3〜25質量%の範囲であり、好ましくは4〜16質量%、より好ましくは4〜15質量%、さらに好ましくは6〜14質量%、一層好ましくは7〜14質量%、より一層好ましくは7〜12質量%、尚一層好ましくは8〜11質量%の範囲である。
本発明のガラス基板におけるR2O(但し、R2OはLi2O、Na2O及びK2Oの合量) 0.01〜0.8質量%を含有する。
Li2O、Na2O及びK2OであるR2Oは、ガラスの塩基性度を高め、清澄剤の酸化を容易にして、清澄性を発揮させる成分である。また、熔解性向上、比抵抗低下させる成分である。従って、R2Oを含有させると、比抵抗が低下し、清澄性が向上し、熔解性が向上する。しかし、R2O含有量が多すぎると、ガラス基板から溶出して特性を劣化させる。また、熱膨張係数が増大する傾向がある。また、R2O含有量が多すぎると、(1)磁気記録媒体製造時にガラス基板の表面における金属ないし酸化物薄膜の特性が劣化する、(2)化学耐久性が低下する、(3)ガラス移転点及び歪点が低下する、(4)平均熱膨張係数が大きくなり、熱収縮率を小さくできない、という傾向もある。これらの観点から、R2Oの合量であるLi2O+Na2O+K2Oは0.01〜0.8質量%の範囲であり、好ましくは0.01〜0.6質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%、さらに好ましくは0.01〜0.4質量%、一層好ましくは0.01〜0.3質量%の範囲である。上記範囲における下限値0.01質量%は、好ましくは0.05質量%、より好ましくは0.1質量%である。
本発明の第1、3の態様のガラス基板は、環境負荷を低減するという観点から、Sb2O3は0〜0.3質量%であることが好ましく、0〜0.1質量%であることがより好ましい。また、本発明の第2の態様のガラス基板は、環境負荷をより低減するという観点から、Sb2O3は実質的に含有せず、かつAs2O3も実質的に含有しないことがさらに好ましい。本明細書において、「実質的に含有せず」とは、ガラス原料にこれら成分の原料となる物質を用いないことを意味し、他の成分のガラス原料に不純物として含まれる成分の混入を排除するものではない。
本発明の第2、4の態様のガラス基板においてCaO/ROは熔解性と耐失透性の指標の指標となる。CaO/ROは0.65以上であり、好ましくは0.65〜1、さらに好ましくは0.7〜1、一層好ましくは0.85〜1、より一層好ましくは0.9〜1、尚一層好ましくは0.95〜1の範囲である。これらの範囲とすることで、耐失透性と熔解性を両立することができる。さらに、低密度化を図ることができる。また、原料として、複数のアルカリ土類金属を含有させるよりも、CaOのみを含有させた方が歪点を高める効果が高い。アルカリ土類金属酸化物としてCaOのみを原料として含有させた場合、得られるガラスのCaO/ROの値は、例えば0.98〜1程度である。なお、アルカリ土類金属酸化物としてCaOのみを原料として含有させた場合でも、得られるガラスには、他のアルカリ土類金属酸化物が不純物として含まれる場合がある。
本発明の第1、2、4の態様のガラス基板においてB2O3に対するSiO2とAl2O3の合量である(SiO2+Al2O3)の質量比(SiO2+Al2O3)/B2O3は歪点と耐失透性の指標となる。(SiO2+Al2O3)/B2O3は好ましくは7〜30であり、より好ましくは7〜25であり、さらに好ましくは7.5〜20の範囲である。(SiO2+Al2O3)/B2O3が小さいほど歪点は低くなり、7未満では歪点は不十分であり、7以上、好ましくは7.5以上になると歪点を十分に高くすることができる。一方、(SiO2+Al2O3)/B2O3が大きいほど耐失透性が徐々に低下し、30を超えると極端に低下し、好ましくは25以下、より好ましくは23以下、さらに好ましくは20以下であれば十分な耐失透性が得られる。そのため、(SiO2+Al2O3)/B2O3は、好ましくは7〜16の範囲であり、より好ましくは7〜14であり、さらに好ましくは7.5〜12の範囲である。他方、失透温度を十分に低下させることに加えて、エッチングレートが十分に速いガラス基板を得ることも考慮すると、(SiO2+Al2O3)/B2O3は好ましくは7〜30であり、より好ましくは7〜25であり、さらに好ましくは7.5〜20であり、一層好ましくは7.5〜15であり、尚一層好ましくは7.5〜12である。
本発明の第1の態様のガラス基板においてROに対するSiO2とAl2O3の合量である(SiO2+Al2O3)の質量比(SiO2+Al2O3)/ROは比抵抗の指標となる。(SiO2+Al2O3)/ROは6以上である。この範囲にあることで、低温粘性特性温度(Tgや歪点)の向上と比抵抗の低減を両立することができる。また、低温粘性特性温度の向上と熔解性も両立することができる。低温粘性特性温度(Tgや歪点)が低すぎると、磁気記録媒体製造時に熱変形が生じやすく、熱収縮も生じやすくなる。ガラス移転点(Tg)が高いと製造プロセスにおいてガラスの仮想温度が上昇しやすい用途(例えば、板厚0.7mm以下、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.3mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下の磁気記録媒体用ガラス基板)に適している。板厚0.7mm以下、さらには0.5mm以下、さらには0.3mm以下、さらには0.1mm以下の板ガラスの成形では、成形時の引き出し速度が速くなる傾向があるため、ガラスの仮想温度が上昇し、ガラスの熱変形が増大しやすい。この場合、高ガラス転移点ガラスであると、熱変形を抑制することができる。(SiO2+Al2O3)/ROが6未満では、低温粘性特性温度(Tgや歪点)を十分に高くすることができない。(SiO2+Al2O3)/ROは、好ましくは6〜15の範囲であり、より好ましくは6〜13より好ましくは7.5〜12、さらに好ましくは8.1〜10の範囲である。なお、(SiO2+Al2O3)/ROを15以下にすることで、比抵抗が上昇しすぎることを抑制できる。他方、低温粘性特性温度を十分に高くすること等に加えて、エッチングレートが十分に速いガラス基板を得ることも考慮すると、(SiO2+Al2O3)/ROは、好ましくは6〜15であり、より好ましくは7〜15であり、さらに好ましくは7.5〜9.5の範囲である。
本発明のガラス基板は、上記に加えて、以下のガラス組成および/または物性を有することが好ましい。
本発明のガラス基板においてSiO2とAl2O3の合量であるSiO2+Al2O3は少なすぎると、歪点が低下する傾向があり、多すぎると、比抵抗が上昇し、耐失透性が悪化する傾向がある。そのためSiO2+Al2O3は、75質量%以上であることが好ましく、より好ましくは75質量%〜87質量%であり、さらに好ましくは75質量%〜85質量%であり、一層好ましくは78質量%〜83質量%である。歪点をさらに高くするという観点からは、より好ましくは78質量%以上、さらに好ましくは79〜87質量%、一層好ましくは80〜85質量%である。
本発明のガラス基板においてMgOは比抵抗を低下させ、熔解性を向上させる成分である。また、アルカリ土類金属の中では比重を増加させにくい成分であるので、その含有量を相対的に増加させると、低密度化を図りやすくなる。必須ではないが、含有させることで、熔解性を向上し、かつ切粉の発生を抑制できる。また、ヤング率・比弾性率(ヤング率/密度)を向上させることができる。ヤング率が高いと、破壊靭性が向上し、ガラス基板の薄板化が求められる磁気記録媒体用基板ガラスに好適である。ヤング率は、73GPa以上が好ましく、78GPa以上がより好ましく、80GPa以上がさらに好ましい。比弾性率が高いと、ハードディスクドライブの回転時の反りやたわみを低減し、磁気記録媒体の高密度化に対応できる。比弾性率は、30GPa・cm3/g以上が好ましく、31GPa・cm3/g以上がより好ましく、33GPa・cm3/g以上がさらに好ましい。但し、MgOの含有量が多すぎると、ガラスの失透温度が急激に上昇するため、成形性が悪化(耐失透性が低下)する。また、MgOの含有量が多すぎると、耐BHF低下、耐酸性低下の傾向がある。特に、失透温度を低下させたい場合には、MgOは実質的に含有させないことが好ましい。また、MgOの含有量が多すぎると、(1)平均熱膨張係数が大きくなり、熱収縮率を小さくできない、(2)化学耐久性が低下する、という傾向もある。このような観点から、MgO含有量は、好ましくは0〜15質量%、より好ましくは0〜10質量%、さらに好ましくは0〜5質量%、一層好ましくは0〜4質量%、より一層好ましくは0〜3質量%、さらに一層好ましくは0〜2未満、尚一層好ましくは0〜1質量%であり、最も好ましくは実質的に含有しないことである。
本発明のガラス基板においてCaOは、比抵抗を低下させる成分であり、ガラスの失透温度を急激に上げることなくガラスの熔解性を向上させるのにも有効な成分である。また、アルカリ土類金属の中では比重を増加させにくい成分であるので、その含有量を相対的に増加させると、低密度化を図りやすくなる。必須ではないが、含有させることで、ガラス融液の比抵抗低下および熔融温度(高温粘性)低下による熔解性向上及び失透性改善をできるので、CaOは含有させることが好ましい。CaO含有量が多すぎると、歪点が低下する傾向にある。また、熱膨張係数が増加する傾向があ、さらに密度が上昇する傾向がある。また、CaO含有量が多すぎると、比弾性率が低下するという傾向もある。一方、CaO含有量が少なすぎると、(1)ヤング率が低下する、(2)失透温度が上昇する、(3)溶解性が低下する、という傾向もある。このような観点から、CaO含有量は、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは1〜20質量%、さらに好ましくは2〜15質量%、一層好ましくは3.6〜15質量%、より一層好ましくは4〜14質量%、さらに一層好ましくは5〜12質量%、尚一層好ましくは5〜11質量%、さらに尚一層好ましくは5〜10質量%、さらに尚一層好ましくは6超〜10質量%、最も好ましくは6超〜9質量%の範囲である。
本発明のガラス基板においてSrOは、比抵抗を低下させ、熔解性を向上させる成分である。SrOは、必須ではないが、含有させると、耐失透性及び熔解性が向上する。SrO含有量が多すぎると、密度が上昇してしまう。また、SrO含有量が多すぎると、(1)比弾性率が低下する、(2)平均熱膨張係数が大きくなり、熱収縮率を小さくできない、という傾向もある。このような観点から、SrO含有量は、好ましくは0〜15質量%、より好ましくは0〜10質量%、さらに好ましくは0〜3質量%、一層好ましくは0〜2質量%、さらに一層好ましくは0〜1質量%、尚一層好ましくは0〜0.5質量%の範囲である。ガラスの密度を低下させたい場合には、SrOは実質的に含有させないことが好ましい。
本発明のガラス基板においてBaOは、比抵抗を低下させ、熔解性を向上させる成分である。BaOは、必須ではないが、含有させると、耐失透性及び熔解性が向上する。また、熱膨張係数及び密度も増大してしまう。BaO含有量が多すぎると、(1)密度が上昇する、(2)比弾性率が低下する、(3)平均熱膨張係数が大きくなり、熱収縮率を小さくできない、という傾向もある。このような観点から、BaO含有量は、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜1.5 質量%未満、さらに好ましくは0〜1質量%、一層好ましくは0〜0.5質量%未満、尚一層好ましくは0〜0.1質量%未満である。BaOは、環境負荷の問題から、実質的に含有させないことが好ましい。
本発明のガラス基板においてSrOとBaOは、比抵抗を低下させ、熔解性を向上させる成分である。必須ではないが、含有させると、耐失透性及び熔解性は向上する。しかし、含有量が多すぎると、密度が上昇してしまう。SrOとBaOの合量であるSrO+BaOは、密度を低減し、軽量化するという観点から、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜3.4質量%未満、さらに好ましくは0〜3質量%、一層好ましくは0〜2質量%、さらに一層好ましくは0〜1質量%、尚一層好ましくは0〜0.5質量%、さらに尚一層好ましくは0〜0.1質量%未満の範囲である。ガラス基板の密度を低下させたい場合には、SrOとBaOは、実質的に含有させないことが好ましい。
本発明のガラス基板においてLi2O及びNa2Oは、比抵抗低下させ、熔解性を向上させる成分であるが、ガラス基板から溶出して特性を劣化させたり、ガラスの熱膨張係数を大きくして熱処理時に基板を破損したりするおそれのある成分であるため、Li2O及びNa2Oの合量は、好ましくは0〜0.2質量%、より好ましくは0〜0.1質量%、さらに好ましくは0〜0.05質量%、一層好ましくは実質的に含有しない。
本発明のガラス基板においてK2Oは、ガラスの塩基性度を高め、清澄剤の酸化を容易にして、清澄性を発揮させる成分である。また、比抵抗低下させ、熔解性を向上させる成分である。必須ではないが、含有させると、比抵抗は低下し、熔解性は向上する。さらに、清澄性も向上する。
K2O含有量が多すぎると、ガラス基板から溶出して特性を劣化させる傾向がある。また、熱膨張係数も増大する傾向がある。K2O含有量は、好ましくは0.01〜0.8質量%、より好ましくは0.05〜0.7質量%、さらに好ましくは0.05〜0.5質量%、一層好ましくは0.1〜0.5質量%、より一層好ましくは0.1〜0.4質量%、さらに一層好ましくは0.1〜0.3質量%の範囲である。
K2Oは、Li2OやNa2Oと比較して、分子量が大きいため、ガラス基板から溶出しにくい。そのため、R2Oを含有させる場合には、K2Oを含有させることが好ましい。つまり、K2Oは、Li2Oよりも高い比率で含有される(K2O>Li2Oを満たす)ことが好ましい。K2Oは、Na2Oよりも高い比率で含有される(K2O>Na2Oを満たす)ことが好ましい。Li2O及びNa2Oの割合が大きいと、ガラス基板から溶出して特性を劣化させる傾向が強くなる。質量比K2O/R2Oは、好ましくは0.5〜1であり、より好ましくは0.6〜1であり、さらに好ましくは0.7〜1、一層好ましくは0.75〜1、さらに一層好ましくは0.8〜1、より一層好ましくは0.9〜1、より一層好ましくは0.95〜1、より一層好ましくは0.99〜1の範囲である。
本発明のガラス基板においてZrO2およびTiO2は、ガラスの化学的耐久性および耐熱性を向上させる成分である。ZrO2およびTiO2は、必須成分ではないが、含有させることでTgや歪点(低温粘性特性温度)の上昇および耐酸性向上を実現できる。ZrO2を含有させると、(1)ヤング率を向上させる、(2)ガラス移転点及び歪点を向上させる、という傾向もある。しかし、ZrO2量およびTiO2量が多くなりすぎると、失透温度が著しく上昇するため、耐失透性および成形性が低下する場合がある。特に、ZrO2は、冷却過程でZrO2の結晶を析出する場合があり、これがインクルージョンとしてガラスの品質悪化を引き起こすことがある。以上の理由から、本発明のガラス基板では、ZrO2およびTiO2の含有率は、それぞれ、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、0.5質量%未満がさらに好ましく、0.2質量%未満がさらに一層好ましい。さらに好ましくは、本発明のガラス基板が、ZrO2およびTiO2を実質的に含有しないことである。言い換えると、ZrO2およびTiO2の含有率は、それぞれ、0〜5質量%が好ましく、0〜3質量%がより好ましく、0〜2質量%がさらに好ましく、0〜1質量%がさらに好ましく、0〜0.5質量%未満がさらに好ましく、0〜0.2質量%未満がさらに一層好ましい。さらに好ましくは、本発明のガラス基板が、ZrO2およびTiO2を実質的に含有しないことである。
本発明のガラス基板においてZnOは、耐BHF性や熔解性を向上させる成分である。但し、必須ではない。
ZnO含有量が多くなりすぎると、失透温度及び密度が上昇する傾向がある。また、歪点が低下する傾向がある。そのため、ZnO含有量は、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜3質量%、さらに好ましくは0〜2質量%、一層好ましくは0〜1質量%の範囲である。ZnOは実質的に含有しないことが好ましい。
本発明のガラス基板においてROとB2O3の合量であるRO+B2O3は、清澄性の指標となる。RO+B2O3が少なすぎると、ガラスの高温粘性が上昇し、清澄性が低下する。一方、多すぎると、歪点が低下する。RO+B2O3は、好ましくは20質量%未満、より好ましくは5〜20質量%未満、さらに好ましくは10〜20質量%未満、一層好ましくは14〜20質量%未満、より一層好ましくは15〜19質量%の範囲である。他方、失透温度を十分に低下させるためには、RO+B2O3は、好ましくは30質量%未満、より好ましくは10〜30質量%未満、さらに好ましくは14〜30質量%未満、一層好ましくは14〜25質量%未満、より一層好ましくは15〜23質量%の範囲である。尚、RO+B2O3は、清澄性等と失透温度の両方を考慮して適宜決定される。
本発明のガラス基板においてP2O5は、熔融温度(高温粘性)を低下させ、熔解性を向上させる成分である。但し、必須ではない。
P2O5含有量が多すぎると、ガラス熔解時のP2O5の揮発により、ガラスの不均質が顕著となり、脈理が発生しやすくなる。また、耐酸性が著しく悪化する。また、乳白が生じやすくなる。P2O5含有量は、好ましくは0〜3質量%、より好ましくは0〜1質量%、さらに好ましくは0〜0.5質量%の範囲であり、実質的に含有しないことが特に好ましい。
本発明のガラス基板においてB2O3とP2O5の合量であるB2O3+P2O5は、熔解性の指標となる。B2O3+P2O5が少なすぎると、熔解性が低下する傾向がある。多すぎると、ガラス熔解時のB2O3とP2O5の揮発により、ガラスの不均質が顕著となり、脈理が発生しやすくなる。また、歪点が低下する傾向もある。B2O3+P2O5は、好ましくは3〜15質量%、より好ましくは4〜10質量%、さらに好ましくは5〜9質量%、一層好ましくは7〜9質量%の範囲である。他方、失透温度を十分に低下させるためには、B2O3+P2O5は、好ましくは3〜15質量%であり、好ましくは5〜15質量%、よりましくは6〜13質量%、さらにましくは7〜11質量%未満である。尚、B2O3+P2O5は、熔解性等と失透温度の両方を考慮して適宜決定される。
本発明のガラス基板においてCaO/B2O3は熔解性と耐失透性の指標となる。CaO/B2O3は、好ましくは0.6以上であり、より好ましくは0.7〜5、さらに好ましくは0.9〜3、一層好ましくは1.0〜2、より一層好ましくは1.1〜1.5の範囲である。これらの範囲とするで、耐失透性と熔解性を両立することができる。
本発明のガラス基板においてSiO2の含有量からAl2O3の含有量の1/2を引いた差であるSiO2-1/2Al2O3の値を、60質量%以下とすることにより、ガラスのスリミングを行うために十分なエッチングレートを有するガラス基板を得ることができるので好ましい。なお、エッチングレートを高くするために、SiO2-1/2Al2O3の値を小さくしすぎると、失透温度が上昇してしまう傾向がある。また、歪点を十分に高くできない場合もあるため、SiO2-1/2Al2O3の値が40質量%以上であることが好ましい。以上のことから、SiO2-1/2Al2O3の値が40〜60質量%であることが好ましく、45〜60質量%であることがより好ましく、45〜58質量%であることがさらに好ましく、45〜57質量%であることが一層好ましく、45〜55質量%であることがより一層好ましく、49〜54質量%であることがさらに一層好ましい。
また、生産性よくエッチング(スリミング)を行うために、本発明の第1の態様のガラス基板を構成するガラスはエッチングレートが50μm/h以上であることが好ましい。一方、過度にエッチングレートが高いと、製造プロセスでの薬液との反応で不都合が生じる虞があるため、ガラス基板を構成するガラスのエッチングレートは160μm/h以下であることが好ましい。エッチングレートは好ましくは60〜140μm/h 、より好ましくは65〜130μm/h 、より好ましくは70〜120μm/hである。本発明においては、上記エッチングレートは以下の条件で測定したものと定義する。
エッチングレート(μm/h)は、ガラス基板をHFの割合が1mol/kg、HClの割合が5mol/kgの混酸の40℃のエッチング液に1時間浸漬した場合の、単位時間(1時間)当たりのガラス基板の一方の表面の厚み減少量(μm)として表す。
本発明のガラス基板を構成するガラスは清澄剤を含むことができる。清澄剤としては、環境への負荷が小さく、ガラスの清澄性に優れたものであれば特に制限されないが、例えば、、Sn、Fe、Ce、Tb、MoおよびWの金属酸化物の群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。清澄剤としては、SnO2が好適である。清澄剤の添加量は、少なすぎると、泡品質が悪化し、含有量が多くなりすぎると、失透や着色などの原因となる場合がある。清澄剤の添加量は、清澄剤の種類やガラスの組成にもよるが、例えば、0.05〜1質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%、より好ましくは0.1〜0.4質量%の範囲とすることが適当である。
本発明のガラス基板を構成するガラスはFe2O3を含有することもできる。Fe2O3含有量は、0〜1質量%の範囲である。Fe2O3は、清澄剤としての働きを有する以外に、ガラスの比抵抗を低下させる作用もある。高温粘性が高く、難融なガラスにおいては、Fe2O 3を含有させることで、ROによるガラスの比抵抗を低下させる作用に加えて、ガラスの比抵抗を低下させることができる。さらに、Fe2O3はガラスの比抵抗を低下させ、熔解性を向上させる効果に加えて、清澄性を向上させる効果がある。しかし、Fe2O3含有量が多くなりすぎると、ガラスが着色し、透過率が低下し、低粘特性温度も低下する。そこで、Fe2O3含有量は、0〜1質量%の範囲であり、好ましくは0〜0.8質量%、より好ましくは0.001〜0.8質量%、さらに好ましくは0.01〜0.1質量%、一層好ましくは0.02〜0.07質量%の範囲である。Fe2O3を清澄剤として使用する場合はSnO2との併用が好ましい。
本発明のガラス基板を構成するガラスはPbO及びFは実質的に含有しないことが好ましいPbO及びFは環境上の理由から含まないことが好ましい。
本発明のガラス基板を構成するガラスは、清澄剤として金属酸化物を使用することが好ましい。前記金属酸化物の清澄性を高めるためには、ガラスを酸化性にすることが好ましくが、還元性の原料(例えば、アンモニウム塩、塩化物)を使用することで、前記金属酸化物の清澄性は低下する。前記還元性の原料を用いるとガラス中にNH4 +やClが残存するという観点からNH4 +の含有量が4×10−4%未満であることが好ましく、0〜2×10−4%未満であることがよりに好ましく、実質的に含有しないことがさらに好ましい。また、本発明のガラスは、Clの含有量が0.1%未満であることが好ましく、0〜0.1%未満であることがよりに好ましく、0〜0.05%未満であることがさらにに好ましく、0〜0.01%未満であることが一層に好ましく、実質的に含有しないことが尚一層好ましい。なお、上記NH4+及びClは清澄効果を期待して、アンモニウム塩および塩化物(特に塩化アンモニウム)としてガラス原料に用いられることでガラス中に残存する成分であるが、環境上および設備腐食の理由からも、これらの原料の使用は好ましくない。
ガラス基板は、歪点やTgで代表される低温粘性特性温度が低いと、熱処理工程(磁気記録媒体製造時)において熱収縮が大きくなる。本発明のガラス基板を構成するガラスの歪点[℃]は、665℃以上であり、675℃以上が好ましい。また、本発明のガラス基板の歪点[℃]は、好ましくは680℃以上、より好ましくは685℃以上、さらに好ましくは688℃以上、一層好ましくは690℃以上、より一層好ましくは695℃以上、尚一層好ましくは700℃以上である。ガラス基板の歪点は、上記本発明のガラス基板のガラスの組成の説明を参照して、ガラス組成を調整することで、所望の値にすることができる。低温粘性特性という観点からは、本発明のガラスの歪点[℃]の上限はないが、実用上の目安としては例えば、750℃以下であり、好ましくは745℃以下、より好ましくは740℃以下である。但し、この上限に限定される意図ではない。
また、本発明のガラス基板を構成するガラスはTg[℃]が、好ましくは720℃以上、より好ましくは730℃以上、さらに好ましくは740℃以上、さらに好ましくは745℃以上、一層好ましくは750℃以上である。Tgが低くなると、耐熱性が低下する傾向がある。また、磁気記録媒体製造時の熱処理工程において熱収縮が生じやすくなる傾向もある。耐熱性および熱収縮の観点からは、本発明のガラスのTg[℃]の上限はないが、実用上の目安としては例えば、800℃以下であり、好ましくは795℃以下、より好ましくは790℃以下である。但し、この上限に限定される意図ではない。ガラス基板のTgを上記範囲にするには、本発明のガラス基板の組成の範囲において、Tgを高める、例えば、SiO2及びAl2O3等の成分を多めにすることが適当である。
本発明のガラス基板を構成するガラスは密度[g/cm3]が、ガラス基板の軽量化という観点から、好ましくは2.5 g/cm3以下、より好ましくは2.45 g/cm3以下、さらに好ましくは2.42g/cm3以下、一層好ましくは2.4 g/cm3以下である。密度が高くなると、ガラス基板の軽量化が困難となり、磁気記録媒体の軽量化も図れなくなる。
さらに、本発明のガラス基板を構成するガラスの低粘特性温度は、ガラス熔解時における条件によっても変化する。同一組成のガラスであっても、熔解条件の違いにより、ガラス中の含水量が異なり、約1〜10℃の範囲で低粘特性温度が変化することがある。従って、所望の低温粘性特性温度を有するガラス基板を得るには、ガラス組成を調整するとともに、ガラス熔解時におけるガラス中の含水量も調整する必要がある。
本発明のガラス基板を構成するガラス中の含水量の指標であるβ−OH値は、原料の選択により調整することができる。例えば、含水量の高い原料(例えば水酸化物原料)を選択したり、塩化物等のガラス中の水分量を減少させる原料の含有量を調整したりすることで、β−OH値を増させることができる。また、ガラス熔解に用いるガス燃焼加熱(酸素燃焼加熱)と直接通電加熱の比率を調整することでβ−OH値を調整することができる。さらに、炉内雰囲気中の水分量を増加させたり、熔解時に熔融ガラスに対して水蒸気をバブリングしたりすることで、β−OH値を増加させることができる。
なおガラスのβ−OH値[mm-1]はガラスの赤外線吸収スペクトルにおいて次式によって求められる。
β−OH値=(1/X)log 10(T1/T2)
X : ガラス肉厚(mm)
T1 : 参照波長2600nm における透過率(%)
T2 : 水酸基吸収波長2800nm付近における最小透過率(%)
ガラスの水分量の指標であるβ−OH値は、値が小さいほど歪点が高く、熱処理工程(磁気記録媒体製造時)において熱収縮が小さくなる傾向にある。他方、β−OH値が大きいほど、熔融温度(高温粘性)を低下させる傾向にある。
低収縮率と熔解性を両立するために、本発明のガラス基板を構成するガラスのβ−OH値は、0.05〜0.40mm-1とすることが好ましく、0.10〜0.35mm-1がより好ましく、0.10〜0.30mm-1がさらに好ましく、0.10〜0.25mm-1がさらに好ましく、0.10〜0.20mm-1が一層好ましく、0.10〜0.15mm-1がより一層好ましい。
本発明のガラス基板を構成するガラスは失透温度[℃]が、好ましくは1300℃未満、より好ましくは1250℃以下、さらに好ましくは1230℃以下、一層好ましくは1220℃以下、より一層好ましくは1210℃以下である。失透温度が1300℃未満であれば、フロート法でガラス板の成形がしやすくなる。失透温度が1250℃以下であれば、ダウンドロー法でガラス板の成形がしやすくなる。ダウンドロー法を適用することで、ガラス基板の表面品質を向上できる。また、生産コストも低減することができる。失透温度が高すぎると、失透が生じやすく、耐失透性が低下する。また、ダウンドロー法に適用できなくなる。他方、熱収縮率や密度のなどの磁気記録媒体用基板の特性を考慮すると、ガラス基板は失透温度が、好ましくは1050℃〜1300℃未満、より好ましくは1110℃〜1250℃、さらに好ましくは1150℃〜1230℃、一層好ましくは1160℃〜1220℃、より一層好ましくは1170℃〜1210℃である。
本発明のガラス基板は熱膨張係数(100-300℃)[×10-7℃]が、好ましくは38×10-7℃未満、より好ましくは37×10-7℃未満、さらに好ましくは28〜36×10-7℃未満、一層好ましくは30〜35×10-7℃未満、より一層好ましくは31〜34.5×10-7℃、さらに一層好ましくは32〜34×10-7℃の範囲である。熱膨張係数が大きいと、磁気記録媒体製造時の熱処理工程において、熱衝撃や熱収縮量が増大する傾向がある。他方、熱膨張係数が小さいと、他のガラス基板上に形成される金属、有機系接着剤などの周辺材料と熱膨張係数との整合がとりにくくなり、周辺部剤が剥離してしまう場合がある。また、製造工程では、急加熱と急冷が繰り返され、ガラス基板にかかる熱衝撃は大きくなる。さらに、大型のガラス基板は、熱処理工程において、温度差(温度分布)がつきやすく、ガラス基板の破壊確率が高くなる。熱膨張係数を上記範囲とすることで、熱膨張差から生じる熱応力を低減することができ、結果として、熱処理工程において、ガラス基板の破壊確率が低下する。つまり、熱膨張係数を上記範囲とすることは、幅方向2000〜3500mmであり、縦方向が2000〜3500mmであるガラス基板について、ガラス基板の破壊確率が低下させるという観点から、特に有効である。なお、ガラス基板上に形成される金属、有機系接着剤などの周辺材料と熱膨張係数との整合が重視させる観点からは、熱膨張係数(100-300℃)が40[×10-7℃]未満であることが好ましく、28〜40×10-7℃未満であることがより好ましく、30〜39×10-7℃未満であることがさらに好ましく、32〜38×10-7℃未満であることが一層好ましく、34〜38×10-7℃未満であることがより一層好ましい。
本発明のガラス基板は熱収縮率 [ppm]が、好ましくは75ppm以下であり、65ppm以下であることが好ましい。さらに、好ましくは60ppm以下、より好ましくは55ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下、一層好ましくは48ppm以下、より一層好ましくは45ppm以下である。より詳細には、熱収縮率[ppm]は0〜75ppmであることが好ましく、より好ましくは0〜65ppm、さらに好ましくは0〜60ppm、一層好ましくは0〜55ppm、より一層好ましくは0〜50ppm、さらに一層好ましくは0〜45ppmである。熱収縮率(量)が大きくなると、高密度な磁気記録媒体を実現できなくなる。熱収縮率(量)を所定範囲に制御するためには、ガラス基板の歪点を680℃以上にすることが好ましい。熱収縮率(量)は最も好ましくは0ppmであるが、熱収縮率を0ppmにしようとすると、徐冷工程を極めて長くすることや、徐冷工程後に熱収縮低減処理(オフラインアニール)を施すことが求められるが、この場合、生産性が低下し、コストが高騰してしまう。生産性およびコストを鑑みると、熱収縮率は、例えば、3〜75ppmであることが好ましく、より好ましくは5〜75ppm、さらに好ましくは5〜65ppm、一層好ましくは5〜60ppm、より一層好ましくは8〜55ppm、さらに一層好ましくは8〜50ppm、さらに一層好ましくは15〜45ppmである。
尚、熱収縮率は、昇降温速度が10℃/min、550℃で2時間保持の熱処理が施された後の下記式で示される。
熱収縮率(ppm)={熱処理前後のガラスの収縮量/熱処理前のガラスの長さ}×106
本発明のガラス基板の熱収縮率は、熱収縮率の測定対象であるガラス基板を上記熱処理に供した後に測定されるものである。但し、本発明のガラス基板の熱収縮率は、熱収縮率の測定対象であるガラス基板を、実施例における熱収縮測定用試料ガラス基板の調製で示したように、Tgで30分保持した後、Tg-100℃まで100℃/分で冷却し、室温まで放冷する徐冷操作を行った後に前記熱処理を施して得た値である、こともできる。ダウンドロー法等の連続式の方法で製造されたガラス基板については、冷却条件が異なることがあり、上記Tg保持後の冷却処理を施した後に熱収縮率を測定することで、同じ条件における熱収縮率の値を得ることができる。
<第5、6の態様の磁気記録媒体用ガラス基板>
本発明の磁気記録媒体用ガラス基板(本発明の第5の態様のガラス基板)は、
モル%表示で、
SiO2 55〜80%、
Al2O33〜20%、
B2O33〜15%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25%を含有し、
失透温度が1250℃以下であり、
Sb2O3及びAs2O3は実質的に含有しない、ガラスからなり、
昇降温速度が10℃/min、550℃で2時間保持の熱処理が施された後の下記式で示される熱収縮率が75ppm以下である、
ことを特徴としている。
ただし、熱収縮率(ppm)={熱処理後のガラス基板の収縮量/熱処理前のガラス基板の長さ}×106
また、本発明の磁気記録媒体用ガラス基板(本発明の第6の態様のガラス基板)は、
モル%表示で、
SiO2 55〜80%、
Al2O33〜20%、
B2O33〜15%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25%を含有し、
SiO2、Al2O3及びB2O3のモル%で表す含有率が、(SiO2+Al2O3)/B2O3=7.5〜17の関係を満たし、
歪点が665℃以上であり、
失透温度が1250℃以下であり、
昇降温速度が10℃/min、550℃で2時間保持の熱処理が施された後の下記式で示される熱収縮率が75ppm以下である、
ことを特徴としている。
ただし、熱収縮率(ppm)={熱処理後のガラス基板の収縮量/熱処理前のガラス基板の長さ}×106
本実施の形態の磁気記録媒体用ガラス基板は、モル%表示で、SiO2を55〜80%、Al23を3〜20%、B23を3〜15%、RO(MgO、CaO、SrO、BaOの合量)を3〜25%含有し、かつ、失透温度が1250℃以下のガラスから構成されている。本実施の形態の磁気記録媒体用ガラス基板は、75ppm以下、好ましくは60ppm以下の熱収縮率を有する。ガラス基板の熱収縮率は、ガラスのTgおよび歪点を高くすることで抑制できる。さらに、ガラス基板の熱収縮率は、ガラス組成の調整によるTgおよび歪点の上昇だけでなく、ガラス徐冷時の条件を適宜調整することによっても、低減させることができる。単にガラスのTgおよび歪点を高くすることだけに着目してガラス組成の改良を行うと、失透温度が上昇して耐失透性が低下する場合がある。しかし、本実施形態のガラス基板は、ガラス組成の調整とガラス徐冷時の条件の調整とを適宜組み合わせることによって、熱収縮率75ppm以下、好ましくは60ppm以下を実現することが可能である。したがって、75ppm以下、好ましくは60ppm以下の熱収縮率と、1250℃以下の失透温度との両方を備えたガラス基板が実現できる。
このように、本実施形態のガラス基板を構成するガラスは、耐失透性を良好に維持しつつ、磁気記録媒体製造時の熱処理による熱収縮が抑制されて、高密度の優れた特性を有することができる。さらに、失透温度が1250℃以下に抑えられることにより、本実施形態のガラス基板を構成するガラスはダウンドロー法を用いて成形されやすくなるという効果も得られる。さらに、本実施形態のガラス基板を構成するガラスは、As23およびSb23をガラス組成として実質的に含有しないので、環境負荷も低減できる。
また、本実施形態のガラス基板を構成するガラスは、ZnOを任意成分として5%以下で含有することができる。その場合、SiO2およびAl23のモル%で示す含有率が、SiO2+Al23≧70%、より好ましくは、SiO2+Al23≧75%を満たし、かつ、RO、ZnOおよびB23のモル%で示す含有率が、RO+ZnO+B23=7〜30%、より好ましくは7〜25%を満たすことが好ましい。
上述のとおり、熱収縮率は、ガラス組成の調整と、ガラス製造時の条件の調整とによって、低減させることができる。なお、ガラス製造時の条件とは、具体的には、ガラス徐冷時に、TgからTg−100℃までとなる温度領域でガラスを必要かつ十分な低い速度で冷却することである。熱収縮率を75ppm以下、好ましくは65ppm以下、より好ましくは60ppm以下とすることにより、本実施形態のガラス基板が適用される磁気記録媒体に用いられ、さらにその磁気記録媒体が高密度である場合でも、磁気記録層ズレを十分に抑制することができる。磁気記録層ズレをより確実に抑制するために、熱収縮率は55ppm以下が好ましく、50ppm以下がより好ましく、45ppm以下がさらに好ましく、43ppm以下がさらに好ましく、40ppm以下がさらに好ましく、38ppm以下がさらに好ましい。言い換えると、熱収縮率は0〜75ppmであり、好ましくは0〜65ppmであり、より好ましくは0〜60ppmであり、さらに好ましくは0〜55ppmであり、さらに好ましくは0〜50ppmであり、さらに好ましくは0〜45ppmであり、さらに好ましくは0〜43ppmであり、さらに好ましくは0〜40ppmであり、さらに好ましくは0〜38ppmである。なお、熱収縮率を0ppmにしようとすると、徐冷工程を極めて長くすることや、徐冷工程後に熱収縮低減処理(オフラインアニール)を施すことが求められるが、生産性が低下し、コストが高騰してしまう。生産性およびコストを鑑みると、熱収縮率は、例えば3〜75ppmであり、好ましくは5〜75ppmであり、より好ましくは5〜65ppmであり、さらに好ましくは8〜55ppmであり、さらに好ましくは8〜50ppmであり、さらに好ましくは10〜45ppmであり、さらに好ましくは10〜43ppmであり、さらに好ましくは10〜40ppmであり、さらに好ましくは15〜38ppmである。
本実施形態のガラス基板を構成するガラスは、1250℃以下の失透温度を有する。上述のとおり、失透温度を1250℃以下とすることで、本実施形態のガラス基板を構成するガラスはダウンドロー法を用いて成形しやすくなるという効果が得られる。その結果、ガラス基板の表面品位を向上できるとともに、ガラス基板の生産コストを低減することができる。また、失透温度が高すぎると、失透が生じやすく、耐失透性が低下する。したがって、本実施形態のガラス基板を構成するガラスの失透温度は、好ましくは1230℃以下、より好ましくは1220℃以下、より好ましくは1210℃以下、さらに好ましくは1200℃以下とする。他方、高歪点や低密度などの磁気記録媒体用用基板の特性を実現するためには、ガラス基板を構成するガラスの失透温度が、好ましくは1050℃〜1250℃、より好ましくは1110℃〜1250℃、さらに好ましくは1150℃〜1240℃、一層好ましくは1160℃〜1230℃、より一層好ましくは1170℃〜1220℃である。
本実施形態のガラス基板を構成するガラスは、歪点を660℃以上とすることができる。磁気記録媒体製造時の熱収縮をより確実に抑制するために、歪点は665℃以上が好ましく、675℃以上がより好ましく、680℃以上がさらに好ましく、685℃以上がさらに好ましく、690℃以上がさらに好ましく、695℃以上がさらに好ましく、700℃以上がさらに好ましい。
本実施形態のガラス基板を構成するガラスは、液相粘度が104.0dPa・s以上であることが好ましく、104.5dPa・s以上であることがより好ましい。液相粘度を104.0dPa・s以上とすることにより、フロート法で成形しやすくなる。また、液相粘度を104.5dPa・s以上とすることにより、さらに成形性が向上する。したがって、液相粘度をこのような範囲にすることで、本実施形態のガラス基板を構成するガラスは、ダウンドロー法(特にオーバーフローダウンドロー法)を用いて成形しやすくなる。その結果、ガラス基板の表面品位を向上できるとともに、ガラス基板の生産コストを低減することができる。液相粘度は、より好ましくは104.5〜106.0dPa・sであり、より好ましくは104.5〜105.9dPa・sであり、より好ましくは104.6〜105.8dPa・sであり、より好ましくは104.6〜105.7dPa・sであり、より好ましくは104.7〜105.7dPa・sであり、より好ましくは104.8〜105.6dPa・sであり、さらに好ましくは104.9〜105.5dPa・sである。
本実施形態のガラス基板を構成するガラスのその他の物性について、好ましい範囲は以下のとおりである。
本実施形態のガラス基板を構成するガラスは、良好な熔解性を有していることが好ましい。熔解性が悪くなる、すなわち熔融温度が高くなると、熔解槽への負荷が大きくなり、さらに、熔解に要するエネルギーが大きくなるので製造コストが高くなってしまう。また、熔融温度が高いと、ガラス原料の熔解に電気熔解を適用する場合、ガラスではなく、熔解槽を形成する耐熱煉瓦に電流が流れてしまい、熔解槽が破損してしまうことがある。なお、ガラスの熔解性は、粘度が102.5dPa・sの時のガラス温度(熔融温度)によって評価できる。そこで、本実施形態のガラス基板を構成するガラスは、熔融温度が1680℃以下であることが好ましい。熔融温度を1680℃以下とすることで、本実施形態のガラス基板は良好な熔解性を有することができる。しかし、熔融温度が低すぎると、Tgおよび歪点が低くなりやすい。そのため、高Tgおよび高歪点を実現するためには、熔融温度がある程度の高さを有することが好ましい。したがって、熔融温度は、好ましくは1550〜1650℃であり、好ましくは1550〜1645℃であり、より好ましくは1580〜1640℃であり、より好ましくは1590〜1630℃であり、さらに好ましくは1600〜1620℃である。
本実施形態のガラス基板を構成するガラスは、100〜300℃の範囲における平均熱膨張係数が37×10-7-1未満であることが好ましく、28×10-7-1以上36×10-7-1未満であることがより好ましく、30×10-7-1以上35×10-7-1未満であることがさらに好ましく、31×10-7-1以上34.5×10-7-1未満であることがさらに好ましく、32×10-7-1以上34×10-7-1未満であることがさらに好ましい。熱膨張係数が大きすぎると、磁気記録媒体製造時の熱処理工程において、熱衝撃や熱収縮量が増大する。他方、熱膨張係数が小さすぎると、磁気記録媒体製造時にガラス基板上に形成される金属および有機系接着剤などの周辺材料の熱膨張係数との整合がとりにくくなり、周辺部材が剥離してしまう虞がある。また、磁気記録媒体製造工程では、急加熱と急冷とが繰り返され、ガラス基板にかかる熱衝撃は大きくなる。さらに、大型のガラス基板は、熱処理工程において、温度差(温度分布)がつきやすく、ガラス基板の破壊確率が高くなる。熱膨張係数を上記範囲とすることで、熱膨張差から生じる熱応力を低減することができ、結果として、熱処理工程におけるガラス基板の破壊確率が低下する。なお、ガラス基板上に形成される金属、有機系接着剤などの周辺材料と熱膨張係数との整合を重視する観点からは、ガラス基板を構成するガラスの100〜300℃の範囲における平均熱膨張係数が55×10-7-1未満が好ましく、40×10-7-1未満がより好ましく、28×10-7-1以上40×10-7-1未満であることがさらに好ましく、30×10-7-1以上39×10-7-1未満であることが一層好ましく、32×10-7-1以上38×10-7-1未満であることがより一層好ましく、34×10-7-1以上38×10-7-1未満であることがさらに一層好ましい。
Tgが低すぎると、耐熱性が低下し、また、熱処理工程において熱収縮が大きくなる。したがって、本実施形態のガラス基板のTgは、720℃以上が好ましく、740℃以上がより好ましく、745℃以上がさらに好ましく、750℃以上がさらに好ましく、755℃以上がさらに好ましく、760℃以上がさらに好ましい。
密度が高すぎると、ガラス基板の軽量化が困難となり、磁気記録媒体の軽量化が困難になることがある。したがって、本実施形態のガラス基板の密度は、2.6g/cm3以下が好ましく、2.5g/cm3未満がより好ましく、2.45g/cm3以下がさらに好ましく、2.42g/cm3以下が一層好ましく、2.4g/cm3以下がより一層好ましい。特に、磁気記録媒体用ガラス基板は、軽量化も求められているため、2.5g/cm3未満が好適であり、2.45g/cm3以下がさらに好ましく、2.42g/cm3以下が一層好ましく、2.4g/cm3以下がより一層好ましい。
ガラス融液の比抵抗が低すぎると、ガラス原料の熔解に電気熔解を利用する場合、ガラス原料の熔解に必要な電流値が過大になる。したがって、設備上の制約が生じる場合がある。さらに、電極の消耗が多くなるという問題が生じる場合がある。一方、比抵抗が高すぎると、熔解時に、ガラス原料ではなく、熔解槽を形成する耐熱煉瓦に電流が流れてしまい、熔解槽が破損してしまうおそれがある。したがって、本実施形態のガラス基板を構成するガラスの1550℃における比抵抗は、50〜300Ω・cmが好ましく、50〜250Ω・cmがより好ましく、80〜240Ω・cmがさらに好ましく、100〜230Ω・cmがさらに好ましい。
ヤング率および比弾性率(ヤング率/密度)が低すぎると、高速回転時のガラス基板の撓みによって、ガラス基板が破損しやすくなる。特に、幅方向2000mm以上の大型のガラス基板では、撓みによる破損の問題が顕著となる。そこで、本実施形態のガラス基板のヤング率は、70GPa以上が好ましく、73GPa以上がより好ましく、74GPa以上がより好ましく、75GPa以上がより好ましく、78GPa以上がより好ましく、80GPa以上がより好ましい。比弾性率が高いと、ハードディスクドライブの回転時の反りやたわみを低減し、磁気記録媒体の高密度化に対応できる。また、本実施形態のガラス基板の比弾性率は、28GPa以上が好ましく、29GPa以上がより好ましく、30GPa以上がより好ましく、31GPa以上がより好ましく、33GPa・cm3/g以上がより好ましい。
次に、本発明の第5、6の態様のガラス基板のガラス成分について説明する。なお、以下、モル%を単に%と略記する。
(SiO2
SiO2は、骨格成分であり、必須成分である。SiO2量が少なすぎると、耐酸性低下、Tgおよび歪点の低下、熱膨張係数増加および耐バッファードフッ酸(BHF)低下が起こる場合がある。また、低密度化を図ることが困難となる場合もある。また、SiO2含有量が少なすぎると、(1)ガラス移転点及び歪点が低下する、(2)化学耐久性が低下する、(2)平均熱膨張係数が大きくなり、熱収縮率を小さくできない、という傾向もある。平均熱膨張係数が大きく(高く)なりすぎると、耐熱衝撃性が低下し、磁気記録層成膜時の生産性が低下する。一方、SiO2量が多すぎると、熔融温度が著しく高くなり、熔解および成形が困難になる場合がある。また、耐失透性が低下する場合もある。また、SiO2含有量が多すぎると、(1)ヤング率が低下する、(2)失透温度が上昇する、という傾向もある。また、ガラスをスリミングする場合のエッチング速度を十分に速くできない。そこで、SiO2の含有率は、55〜80%が好ましく、60〜78%がより好ましく、62〜78%がさらに好ましく、65〜78%がさらに好ましく、65〜75%がさらに好ましい。なお、より軽量化を図るためにSrO+BaOを3%未満しか含まないガラス基板においては、SiO2の含有率は、67〜73%がさらに好ましく、69〜72%がさらに好ましい。さらに、ガラスをスリミングする場合のエッチング速度を十分に速くするためには、SiO2の含有率は、62〜78%がより好ましく、62〜74%がさらに好ましく、64〜70%がさらに好ましい。他方、SrO+BaOを3%以上含有するガラス基板においては、SiO2の含有率は、65〜73%がさらに好ましく、66〜71%がさらに好ましい。
(Al23
Al23は、分相を抑制し、Tgおよび歪点を上昇させる必須成分である。Al23量が少なすぎると、ガラスが分相しやすくなる。また、Tgおよび歪点の低下による耐熱性の低下や熱収縮率の増大、およびヤング率低下および耐酸性の低下が起こる場合もある。また、ガラスのエッチング速度を十分に速くできない。また、含有量が少なすぎると、(1)比弾性率が低下する、(2)ガラス移転点及び歪点が低下する、という傾向もある。一方、Al23量が多すぎると、ガラスの失透温度が上昇して、耐失透性が低下するので、成形性が悪化する。したがって、Al23の含有率は、3〜20%が好ましく、5〜18%がより好ましく、5〜15%がさらに好ましい。なお、より軽量化を図るためにSrO+BaOを3%未満しか含まないガラス基板においては、Al23の含有率は、7〜13%がさらに好ましく、9〜12%がさらに好ましい。さらに、ガラスをスリミングする場合のエッチング速度を十分に速くするためには、Al23の含有率は、7〜15%がさらに好ましく、9〜14%がさらに好ましく、10〜14%がさらに好ましい。他方、SrO+BaOを3%以上含有するガラス基板においては、Al23の含有率は、8〜15%がさらに好ましく、10〜14%がさらに好ましい。
(B23
23は、熔融温度に代表される高温度域での粘性特性(高温粘性特性)温度を低下させ、熔解性を改善する必須成分である(以下、本明細書では、「高温粘性特性温度」として、「熔融温度」を代表して記載する。)。B23量が少なすぎると、熔解性低下、耐BHF低下、耐失透性低下および熱膨張係数増加が起こる場合がある。また、密度が増加して、低密度化を図ることが困難となる場合もある。一方、B23量が多すぎると、Tgおよび歪点の低下、耐酸性低下およびヤング率低下が起こる場合がある。また、ガラス熔解時のB23の揮発により、ガラスの不均質が顕著となり、脈理が発生しやすくなる。そこで、B23の含有率は、3〜15%が好ましく、3〜13がより好ましく、3〜10%がさらに好ましい。なお、より軽量化を図るためにSrO+BaOを3%未満しか含まないガラス基板においては、B23の含有率は、3%以上9.5%未満がさらに好ましく、3.5%以上9.2%未満がさらに好ましく、4%以上8.9%未満がさらに好ましく、5〜8.5%がさらに好ましく、6〜8%がさらに好ましい。さらに、失透温度の上昇を防止するためには、B23の含有率は、5〜13%がより好ましく、5〜12%がさらに好ましく、6〜10未満%(6%以上10%未満)がさらに好ましい。他方、SrO+BaOを3%以上含有するガラス基板においては、B23の含有率は、3〜9%がさらに好ましく、4〜8%がさらに好ましい。
(MgO)
MgOは、熔解性を向上させる成分である。また、MgOは、アルカリ土類金属の中では密度を増加させにくい成分であるので、その含有率を相対的に増加させると、ガラスの低密度化を図りやすくなる。本実施形態のガラス基板において、MgOは必須ではない。しかし、MgOを含有させることにより、熔解性の向上および切粉発生の抑制を実現できるので、MgOが含まれていてもよい。MgOを含有すると、また、ヤング率・比弾性率(ヤング率/密度)を向上させることができる。ヤング率が高いと、破壊靭性が向上し、ガラス基板の薄板化が求められる磁気記録媒体用基板ガラスに好適である。しかし、MgO量が多すぎると、Tgおよび歪点低下、耐熱性低下、耐酸性低下およびヤング率低下が起こる場合がある。また、失透温度が高くなり、耐失透性が低下するので、ダウンドロー法に適用し難くなる場合がある。また、MgOの含有量が多すぎると、(1)平均熱膨張係数が大きくなり、熱収縮率を小さくできない、(2)化学耐久性が低下する、という傾向もある。したがって、本実施形態のガラス基板では、MgOの含有率は0〜15%が好ましく、0〜10%がより好ましい。なお、より軽量化を図るためにSrO+BaOを3%未満しか含まないガラス基板においては、MgOの含有率は、0〜5%がさらに好ましく、0〜2未満%(0%以上2%未満)がさらに好ましく、0〜1.5%がさらに好ましく、0〜1%がさらに好ましく、0〜0.5%が好ましく、MgOが実質的に含有されないことがさらに好ましい。他方、SrO+BaOを3%以上含有するガラス基板においては、MgOの含有率は、1〜9%がさらに好ましく、2〜8%がさらに好ましい。
(CaO)
CaOは、ガラスの失透温度を急激に上げることなくガラスの熔解性を向上させるのに有効な成分である。また、CaOは、アルカリ土類金属の中では密度を増加させにくい成分であるので、CaO量を相対的に増加させると、ガラスの低密度化を図りやすくなる。CaO量が少なすぎると、高温時の粘性上昇による熔解性低下および耐失透性低下が起こりやすくなる。一方、CaO量が多すぎると、熱膨張係数の増加が起こりやすくなる。また、CaO含有量が多すぎると、比弾性率が低下するという傾向もある。一方、CaO含有量が少なすぎると、(1)ヤング率が低下する、(2)失透温度が上昇する、(3)溶解性が低下する、という傾向もある。これらの理由から、CaOの含有率は、0〜20%が好ましく、0〜18%が好ましい。なお、より軽量化を図るためにSrO+BaOを3%未満しか含まないガラス基板においては、CgOの含有率は、3.6〜16%がより好ましく、4〜16%がさらに好ましく、6〜16%がさらに好ましく、7超〜16%(7%を超えて16%以下)がさらに好ましく、8〜13%がさらに好ましく、9〜12%がさらに好ましい。他方、SrO+BaOを3%以上含有するガラス基板においては、CaOの含有率は、0〜10%がさらに好ましく、0〜5%がさらに好ましく、0〜3%がさらに好ましい。
(SrO)
SrOは、ガラスの失透温度を下げることができる成分である。SrOは、必須成分ではないが、含有させると耐失透性向上および熔解性向上が実現できるので、含まれていてもよい。しかし、SrO量が多すぎると、密度が上昇してしまう。したがって、密度を低下させたい場合には、実質的にSrOを含有させないことが好ましい。また、SrO含有量が多すぎると、(1)比弾性率が低下する、(2)平均熱膨張係数が大きくなり、熱収縮率を小さくできない、という傾向もある。したがって、本実施形態のガラス基板では、SrOの含有率は0〜10%が好ましく、0〜8%がより好ましい。なお、より軽量化を図るためには、SrOの含有率は、3%未満が好ましく、2%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましく、0.5%以下がさらに好ましく、SrOが実質的に含まれないことがさらに好ましい。言い換えると、SrOの含有率は0〜3未満%(0%以上3%未満)が好ましく、0〜2%がより好ましく、0〜1%がさらに好ましく、0〜0.5%がさらに好ましく、SrOが実質的に含まれないことがさらに好ましい。他方、熔解性を向上させたい場合には、SrOの含有率は、1〜8%がさらに好ましく、3〜8%がさらに好ましい。
(BaO)
BaOは、耐失透性および熔解性を向上させる成分である。また、BaOを含有させることにより、熱膨張係数が増大すると共に密度が過度に増加してしまう。BaO含有量が多すぎると、(1)密度が上昇する、(2)比弾性率が低下する、(3)平均熱膨張係数が大きくなり、熱収縮率を小さくできない、という傾向もある。したがって、本実施形態のガラス基板では、BaOの含有率は0〜10%が好ましく、0〜5%がより好ましく、0〜2%がさらに好ましく、0〜1%がさらに好ましい。なお、環境負荷の問題があるため、BaOが実質的に含まれないことがさらに好ましい。
(Li2O、Na2O)
Li2OおよびNa2Oは、熔解性を向上させる成分であるが、ガラスの熱膨張係数を大きくして、磁気記録媒体製造における熱処理時に基板を破損したり、ガラスのTgおよび歪点を大きく低下させて、過度に耐熱性を低下させる成分である。したがって、本実施形態のガラス基板では、Li2OおよびNa2Oの含有率は0〜0.3%が好ましく、0〜0.2%がより好ましく、0〜0.1%がさらに好ましく、Li2OおよびNa2Oが実質的に含有されないことがさらに好ましい。
(K2O)
2Oは、ガラスの塩基性度を高め、清澄性を発揮させる成分である。また、K2Oは、熔解性を向上させ、さらにガラス融液の比抵抗を低下させる成分である。したがって、K2Oは、必須成分ではないが、含有させるとガラス融液の比抵抗低下、熔解性向上および清澄性向上を実現できる。しかし、K2O量が多すぎると、熱膨張係数が増大したり、歪点およびTgが大きく低下して耐熱性が過度に低下する場合がある。そのため、本実施形態のガラス基板では、K2Oの含有率は0〜0.8%が好ましく、0.01〜0.5%がより好ましく、0.1〜0.3%がさらに好ましい。
(ZrO2、TiO2
ZrO2およびTiO2は、ガラスの化学的耐久性およびTgおよび歪点を上昇させる成分である。ZrO2およびTiO2は、必須成分ではないが、含有させることでTgおよび歪点の上昇と、耐酸性向上とを実現できる。ZrO2を含有させると、(1)ヤング率を向上させる、(2)ガラス移転点及び歪点を向上させる、という傾向もある。しかし、ZrO2量およびTiO2量が多くなりすぎると、失透温度が著しく上昇するため、耐失透性および成形性が低下する場合がある。特に、ZrO2は、冷却過程でZrO2の結晶を析出する場合があり、これがインクルージョンとしてガラスの品質悪化を引き起こすことがある。また、TiO2は、ガラスを着色させる成分なので、磁気記録媒体用基板には好ましくない。以上の理由から、本実施形態のガラス基板では、ZrO2およびTiO2の含有率は、それぞれ、0〜5%が好ましく、0〜3%がより好ましく、0〜2%がさらに好ましく、0〜1%がさらに好ましく、0.5%未満がさらに好ましい。さらに好ましくは、本実施形態のガラス基板が、ZrO2およびTiO2を実質的に含有しないことである。
(ZnO)
ZnOは、耐BHF性および熔解性を向上させる成分であるので含まれていてもよいが、必須成分ではない。しかし、ZnO量が多くなりすぎると、失透温度上昇、Tgおよび歪点の低下、および密度上昇が起こる場合がある。そのため、本実施形態のガラス基板では、ZnOの含有率は、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下がさらに好ましい。さらに好ましくは、本実施形態のガラス基板が、ZnOを実質的に含有しないことである。言い換えると、ZnOの含有率は、0〜5%が好ましく、0〜3%がより好ましく、0〜2%がさらに好ましく、0〜1%がさらに好ましい。さらに好ましくは、本実施形態のガラス基板が、ZnOを実質的に含有しないことである。
(P25
25は、熔融温度を低下させ、熔解性を向上させる成分であるので含まれていてもよいが、必須成分ではない。しかし、P25量が多すぎると、ガラス熔解時のP25の揮発によりガラスの不均質が顕著となり、脈理が発生しやすくなる。また、Tgおよび歪点が低下すると共に、耐酸性が著しく悪化したり、乳白が生じやすくなったりする。そのため、本実施形態のガラス基板では、P25の含有率は、3%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましい。さらに好ましくは、本実施形態のガラス基板が、P25を実質的に含有しないことである。言い換えると、P25の含有率は、0〜3%が好ましく、0〜1%がより好ましく、0〜0.5%がさらに好ましい。さらに好ましくは、本実施形態のガラス基板が、P25を実質的に含有しないことである。
(La23
La23は、含まれていてもよい。しかし、La23量が多くなりすぎると、失透温度が上昇するとともに、密度が上昇してしまう。したがって、La23の含有率は、0〜1%が好ましく、0〜0.5%がより好ましく、0〜0.1%がさらに好ましく、さらに好ましくは、本実施形態のガラス基板がLa23を実質的に含有しないことである。
(清澄剤)
清澄剤としては、環境への負荷が小さく、ガラスの清澄性に優れたものであれば特に制限されない。例えば、Sn、Fe、Ce、Tb、MoおよびWの金属酸化物の群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。清澄剤が少なすぎると、泡品質が悪化する。したがって、清澄剤の添加量は、清澄剤の種類やガラスの組成にもよるが、例えば、0.01〜1%、好ましくは0.05〜1%、好ましくは0.05〜0.5%、より好ましくは0.05〜0.3%、さらに好ましくは0.05〜0.2%の範囲とすることが適当である。清澄剤としては、SnO2が好適である。しかし、SnO2は、ガラスの耐失透性を低下させる成分である。そのため、例えば清澄剤としてSnO2が用いられる場合は、SnO2の含有率は0.01〜0.3%が好ましく、0.03〜0.2%がより好ましく、0.05〜0.15%がさらに好ましい。
(Fe23
Fe23は、清澄剤としての働きの他に、ガラス融液の高温域での粘性を低下させ、比抵抗を低下させる働きを行う成分である。Fe23は必須成分ではないが、熔融温度が高く、熔解が困難なガラスにおいては、熔融温度や比抵抗を低下させるために含有させることが好ましい。Fe23量が多くなりすぎると、ガラスが着色して透過率が低下する場合がある。そのため、本実施形態のガラス基板では、Fe23の含有率は0〜0.1%が好ましく、0〜0.08%がより好ましく、0.001〜0.05%がさらに好ましく、0.005〜0.03%がさらに好ましい。ここで、熔融温度が高いガラスにおいては、熔解工程の温度が高くなるので、Fe23の清澄剤としての効果は低下しやすい。そのため、清澄剤としてFe23を単独で用いると清澄性が低下し、ガラス基板の泡品質が悪化する場合があるので、SnO2と併用して用いることが好ましい。
(含有されない成分)
As23およびSb23は、環境への負荷が懸念される成分である。したがって、本実施形態のガラス基板を構成するガラスは、成分として、As23およびSb23を実質的に含有しない。
(含有されないことが好ましい成分)
PbOおよびFは、環境負荷の問題により、実質的に含有されないことが好ましい。
また、本実施形態のガラス基板に含まれる成分の複合パラメータは、以下のとおりである。
本実施形態のガラス基板においてB2O3に対するSiO2とAl2O3の合量である(SiO2+Al2O3)の質量比(SiO2+Al2O3)/B2O3は歪点と耐失透性の指標となる。(SiO2+Al2O3)/B2O3は好ましくは7〜30であり、より好ましくは7〜25であり、さらに好ましくは7.5〜20の範囲である。(SiO2+Al2O3)/B2O3が小さいほど歪点は低くなり、7未満では歪点は不十分であり、7以上、好ましくは7.5以上になると歪点を十分に高くすることができる。一方、(SiO2+Al2O3)/B2O3が大きいほど耐失透性が徐々に低下し、30を超えると極端に低下し、好ましくは25以下、より好ましくは23以下、さらに好ましくは20以下であれば十分な耐失透性が得られる。そのため、(SiO2+Al2O3)/B2O3は、好ましくは7〜16の範囲であり、より好ましくは7〜14であり、さらに好ましくは7.5〜12の範囲である。他方、失透温度を十分に低下させることに加えて、エッチングレートが十分に速いガラス基板を得ることも考慮すると、(SiO2+Al2O3)/B2O3は好ましくは7〜30であり、より好ましくは7〜25であり、さらに好ましくは7.5〜20であり、一層好ましくは7.5〜15であり、尚一層好ましくは7.5〜12である。
((SiO2+2Al23)/(2B23+RO))
MgO+CaO+SrO+BaO=ROと表記した場合、(SiO2+2Al23)/(2B23+RO)が2.5以上であることが好ましく、2.8以上であることがより好ましく、3.0超であることがさらに好ましい。(SiO2+2Al23)/(2B23+RO)をこのような範囲とすることにより、熔解性の向上と、Tgおよび歪点の上昇とを両立できる。あるいは、耐失透性の向上と、Tgおよび歪点の上昇とを両立できる。したがって、本実施形態のガラス基板を構成するガラスは、高いTgおよび歪点と、良好な熔解性あるいは耐失透性とを両立しやすくなる。その効果をより確実に得るために、(SiO2+2Al23)/(2B23+RO)は3.1〜4.3がより好ましく、3.3〜3.65がさらに好ましい。さらに、失透温度の上昇防止と十分なエッチング速度を実現するためには、(SiO2+2Al23)/(2B23+RO)は2.5〜10が好ましく、2.5〜5がより好ましく、2.8〜5がさらに好ましく、3超〜4がさらに好ましく、3.1〜3.5が一層好ましい。
(アルカリ土類金属酸化物(RO:MgO+CaO+SrO+BaO))
ROは、熔解性を向上させる成分である。RO量が少なすぎると、熔解性が悪化する場合がある。しかし、RO量が多すぎると、Tgおよび歪点の低下、密度上昇、ヤング率低下および熱膨張係数の増加が起こる場合がある。したがって、本実施形態のガラス基板を構成するガラスでは、ROの含有率は3〜25%が好ましく、4〜20%がより好ましい。なお、より軽量化を図るためにSrO+BaOを3%未満しか含まないガラスにおいては、ROの含有率は、5%以上14%未満がさらに好ましく、6〜14%がさらに好ましく、8〜13%がさらに好ましく、9〜12%がさらに好ましい。他方、SrO+BaOを3%以上含有するガラス基板においては、ROの含有率は、5%以上18%未満がさらに好ましく、8〜17%がさらに好ましい。
(CaO/RO)
より軽量化を図るためにSrO+BaOを3%未満しか含まないガラスにおいては、CaO/ROは、0.5以上が好ましく、0.7以上がより好ましく、0.85を超えることがさらに好ましく、0.88以上がさらに好ましく、0.90以上がさらに好ましく、0.92以上がさらに好ましく、0.95以上がさらに好ましい。言い換えると、CaO/ROは、0.5〜1が好ましく、0.7〜1がより好ましく、0.85超〜1がさらに好ましく、0.88〜1がさらに好ましく、0.90〜1がさらに好ましく、0.92〜1がさらに好ましく、0.95〜1がさらに好ましい。CaO/ROをこのような範囲とすることで、耐失透性と熔解性とを両立することができる。さらに、低密度化を図ることができる。また、ROが一定場合には、複数のアルカリ土類金属酸化物を含有させるよりもCaOのみを含有させた方が、Tgおよび歪点を上昇させることができる。なお、アルカリ土類金属酸化物としてCaOのみを原料として含有させた場合でも、得られるガラスには、他のアルカリ土類金属酸化物が不純物として含まれる場合がある。アルカリ土類金属酸化物としてCaOのみを原料として含有させた場合、得られるガラスのCaO/ROの値は、例えば0.98〜1程度である。また、CaOは原料が安価であり、入手が容易であるという点でも、好ましい成分である。
(SiO2−(Al23/2))
SiO2−(Al23/2)の値が小さすぎると、エッチング速度は向上するものの、耐失透性が低下する場合がある。一方、この値が大きすぎると、エッチング速度が低下する場合がある。したがって、本実施形態のガラスを構成するガラスは、SiO2−(Al23/2)は69以下が好ましく、60〜68がより好ましく、63〜67がさらに好ましい。なお、磁気記録媒体製造においてガラス基板をスリミングを行うような場合、その生産性を向上させるために、エッチング速度をさらに高めることが求められる。このような場合、さらにエッチング速度を向上させるために、SiO2−(Al23/2)は69以下が好ましく、50〜68がより好ましく、55〜65がさらに好ましく、57〜63が一層好ましく、58〜62がより一層好ましい。
また、生産性よくガラス基板のエッチング(スリミング)を行うために、エッチング速度が50μm/h以上であることが好ましい。一方、過度にエッチング速度が高いと、パネル作製工程での薬液との反応で不都合が生じる虞があるため、ガラス基板を構成するガラスのエッチング速度は160μm/h以下であることが好ましい。エッチング速度は好ましくは60〜140μm/h、より好ましくは70〜120μm/hである。本発明においては、上記エッチング速度は以下の条件で測定したものと定義する。
エッチング速度(μm/h)は、HFの割合が1mol/kg、HClの割合が濃度5mol/kgの混酸である40℃のエッチング液にガラス基板を1時間浸漬した場合の、単位時間(1時間)当たりのガラス基板の一方の表面の厚み減少量(μm)として表す。
(SiO2+2Al23
SiO2+2Al23が少なすぎると、Tgおよび歪点が低下しやすくなる。一方、SiO2+2Al23が多すぎると、耐失透性が悪化しやすくなる。したがって、本実施形態のガラス基板を構成するガラスでは、SiO2+2Al23は80%以上が好ましく、80〜100%がより好ましく、85〜98%がさらに好ましく、89〜97%がさらに好ましく、90〜96%がさらに好ましい。なお、より軽量化を図るためにSrO+BaOを3%未満しか含まないガラスにおいては、SiO2+2Al23は、91〜95%がさらに好ましく、91〜93.5%がさらに好ましい。他方、SrO+BaOを3%以上含有するガラスにおいては、SiO2+2Al23は、91〜96%がより好ましい。
(Al23/SiO2
Al23/SiO2が0.35を超えると、耐失透性が悪化しやすくなる。他方、Al23/SiO2が0.05以下となるとTgおよび歪点を十分に上昇させることができない。したがって、本実施形態では、Al23/SiO2が0.05〜0.35であり、0.07〜0.30であることが好ましく、0.10〜0.25であることがさらに好ましい。
(B23+P25
23+P25が少なすぎると、熔解性が低下しやすくなる。一方、B23+P25が多すぎると、ガラス熔解時のB23+P25の揮発により、ガラスの不均質が顕著となり、脈理が発生しやすくなる。さらに、Tgおよび歪点が低下しやすくなる。したがって、本実施形態のガラス基板を構成するガラスでは、B23+P25は3〜15%が好ましく、3〜10%がより好ましい。なお、より軽量化を図るためにSrO+BaOを3%未満しか含まないガラスにおいては、B23+P25は、3%以上9.5%未満がさらに好ましく、4%以上8.9%未満がさらに好ましく、5〜8.5%がさらに好ましく、6〜8%がさらに好ましい。さらに、耐失透性を向上させるには、5〜13%がより好ましく、5〜12%がさらに好ましいく、6〜10未満%(6%以上10%未満)がさらに好ましい。他方、SrO+BaOを3%以上含有するガラスにおいては、B23+P25は、3〜9%がさらに好ましく、4〜8%がさらに好ましい。
(CaO/B23
なお、より軽量化を図るためにSrO+BaOを3%未満しか含まないガラスにおいては、CaO/B23が小さすぎると、Tgおよび歪点が低下しやすくなる。一方、CaO/B23が大きすぎると、熔解性が悪化しやすくなる。したがって、本実施形態では、CaO/B23は、0.5以上が好ましく、0.7以上がより好ましく、0.9以上がより好ましく、1.2を超えることがさらに好ましく、1.2を超えて5以下がさらに好ましく、1.2を超えて3以下がさらに好ましく、1.3以上2.5以下がさらに好ましく、1.3以上2以下がさらに好ましい。さらに、熔解性を向上させるには、0.5〜5が好ましく、0.9〜3がより好ましく、1を超えて2.5以下がさらに好ましく、1を超えて2以下がさらに好ましく、1.2を超えて2以下がさらに好ましく、1.2を超えて1.5以下がさらに好ましい。
(SrO+BaO)
SrOおよびBaOは、ガラスの失透温度を下げることができる成分である。これらの成分は必須ではないが、含有させると、耐失透性向上および熔解性向上を実現できる。しかし、これらの成分の量が多すぎると、密度が上昇してしまう。したがって、密度を低下させ、軽量化を図りがたくなる。また、熱膨張係数が増加する場合もある。したがって、本実施形態のガラス基板を構成するガラスでは、SrO+BaOは10%以下が好ましい。なお、より軽量化を図るためには、5%以下がより好ましく、3%未満がさらに好ましく、2%未満がさらに好ましい。さらに好ましくは、本実施形態のガラス基板を構成するガラスがSrOおよびBaOを実質的に含有しないことである。言い換えると、SrO+BaOは0〜10%が好ましく、より軽量化を図るためには、0〜5%がより好ましく、0〜3未満%(0%以上3%未満)がさらに好ましく、0〜2未満%(0%以上2%未満)がさらに好ましく、0〜1未満%(0%以上1%未満)がさらに好ましく、0〜0.5未満%(0%以上0.5%未満)が一層好ましい。さらに好ましくは、本実施形態のガラス基板を構成するガラスがSrOおよびBaOを実質的に含有しないことである。
(RO+ZnO+B23
RO+ZnO+B23が少なすぎると、高温域の粘性が高くなり、清澄性およびガラスの熔解性が低下しやすくなる。一方、RO+ZnO+B23が多すぎると、Tgおよび歪点が低下しやすくなる。したがって、本実施形態のガラス基板を構成するガラスでは、RO+ZnO+B23が7〜30%が好ましく、10〜27%がより好ましい。なお、より軽量化を図るためにSrO+BaOを3%未満しか含まないガラスにおいては、RO+ZnO+B23は、12〜22%がさらに好ましく、14〜21%がさらに好ましく、16〜20%がさらに好ましい。さらに、熔解性を向上させるためには、RO+ZnO+B23は、12〜27%がさらに好ましく、14〜25%がさらに好ましく、17〜23%がさらに好ましい。他方、SrO+BaOを3%以上含有するガラスにおいては、RO+ZnO+B23は、13〜27%がより好ましく、15〜25%がさらに好ましい。
(アルカリ金属酸化物(R2O:Li2O+Na2O+K2O))
2Oは、ガラスの塩基性度を高め、清澄剤の酸化を容易にして、清澄性を発揮させる成分である。また、R2Oは、ガラスの熔解性向上および比抵抗低下を実現しやすくする成分であるので、含まれていてもよい。R2Oは必須成分ではないが、含有させると、比抵抗低下、清澄性向上および熔解性向上を実現できる。しかし、R2O量が多すぎると、Tgおよび歪点が過度に低下し、さらに、熱膨張係数が増大する場合もある。したがって、本実施形態のガラス基板を構成するガラスでは、R2Oは0〜0.8%が好ましく、0.01〜0.5%がより好ましく、0.1〜0.3%がさらに好ましい。
(K2O/R2O)
2Oは、Li2OおよびNa2Oと比較して分子量が大きいため、ガラス基板から溶出しにくい。そのため、R2Oを含有させる場合には、K2Oをより高い比率で含有させることが好ましい。K2Oは、Li2Oよりも高い比率で含有される(K2O>Li2Oを満たす)ことが好ましい。K2Oは、Na2Oよりも高い比率で含有される(K2O>Na2Oを満たす)ことが好ましい。K2O/R2Oは、0.5以上が好ましく、0.6以上が好ましく、0.7以上がより好ましく、0.8以上がさらに好ましく、0.95以上がさらに好ましい。言い換えると、K2O/R2Oは、0.5〜1が好ましく、0.6〜1が好ましく、0.7〜1がより好ましく、0.8〜1がさらに好ましく、0.95〜1がさらに好ましい。
本実施形態のガラス基板は、磁気記録媒体用基板である。中でも、高密度が求められる磁気記録媒体用ガラス基板に好適である。
本実施形態のガラス基板の大きさは、適用される磁気記録媒体のサイズに応じて適宜変更可能であるので、特に限定されない。幅方向の長さは、例えば500mm〜3500mmとでき、1000mm〜3500mmが好ましく、2000mm〜3500mmがより好ましい。縦方向の長さは、例えば500mm〜3500mmとでき、1000mm〜3500mmが好ましく、2000mm〜3500mmがより好ましい。より大きいガラス基板を使用するほど、磁気記録媒体の生産性が向上する。
本実施形態のガラス基板の厚さは、適用される磁気記録媒体のサイズに応じて適宜変更可能であるので、特に限定されない。しかし、ガラス基板が薄すぎると、ガラス基板自体の強度が低下する。例えば、磁気記録媒体製造時の破損が生じやすくなる。一方、ガラス基板が厚すぎることは、磁気記録媒体には好ましくない。また、ガラス基板が厚すぎるとガラス基板の重量が重くなるため、磁気記録媒体の軽量化が困難となる。したがって、本実施形態のガラス基板の厚さは、0.1mm〜1.1mmが好ましく、0.1mm〜0.7mmがより好ましく、0.3〜0.7mmがさらに好ましく、0.3〜0.5mmがさらに好ましい。
本実施形態のガラス基板は、ガラス原料を熔融して熔融ガラスを生成する熔解工程と、前記熔融ガラスをガラス板へと成形する成形工程と、前記ガラス板を徐冷する徐冷工程と、を含む方法によって製造できる。なお、前記ガラス板では、熱収縮率が75ppm以下、好ましくは60ppm以下である。また、前記ガラス基板を構成するガラスは、失透温度が1250℃以下であり、かつ、モル%でSiO2:55〜80%、Al23:3〜20%、B23:3〜15%、RO(MgO、CaO、SrO、BaOの合量):3〜25%をガラス組成として含有し、As23およびSb23をガラス組成として実質的に含有しない。
本実施形態のガラス基板は、公知のガラス基板の製造方法を使用して製造できる。成形方法も、公知の方法が使用できるが、フロート法あるいはダウンドロー法を使用することが好ましく、特にオーバーフローダウンドロー法を使用することが好ましい。ダウンドロー法によって成形されたガラス基板は、その主表面が熱間成形された表面であるために、極めて高い平滑性を有している。したがって、成形後のガラス基板表面の研磨工程が不要となるので、製造コストを低減することができ、さらに生産性も向上させることができる。さらに、ダウンドロー法を使用して成形されたガラス基板の両主表面は均一な組成を有しているので、エッチング処理を行った際に、均一にエッチングを行うことができる。加えて、ダウンドロー法を使用して成形することで、マイクロクラックのない表面状態を有するガラス基板を得ることができる。その結果、ガラス基板自体の強度も向上させることができる。
熱収縮率が75ppm以下、好ましくは60ppm以下のガラス基板を製造するために、徐冷時の条件を適宜調整することが望ましい。例えば、ダウンドロー法を使用する場合は、ガラス板の温度を、TgからTg−100℃までの温度範囲内で20〜120秒維持するように、徐冷を行うことが望ましい。言い換えると、ダウンドロー法を使用する場合は、ガラス板が、TgからTg−100℃までの温度範囲を20〜120秒で冷却されるように、徐冷を行うことが望ましい。20秒未満であると、熱収縮量を十分低減することができない場合がある。一方、120秒を超えると、生産性が低下すると共に、ガラス製造装置(徐冷炉)が大型化してしまう。したがって、コストおよび生産性を維持しつつ、熱収縮率を低下させるためには、ガラス板の温度を、TgからTg−100℃までの温度範囲内で20〜120秒維持するように徐冷を行うことが好ましく、30〜120秒維持することがより好ましく、50〜100秒維持することがさらに好ましい。言い換えると、ガラス板が、TgからTg−100℃までの温度範囲内で20〜120秒で冷却されるように徐冷を行うことが好ましく、30〜120秒で冷却されることがより好ましく、50〜100秒で冷却されることがさらに好ましい。あるいは、ガラス板の中央部の平均冷却速度を、TgからTg−100℃の温度範囲内において、50〜300℃/分とするように徐冷を行うことが好ましい。平均冷却速度が、300℃/分を超えると、熱収縮量を十分低減することができない場合がある。一方、50℃/分未満であると、生産性が低下すると共に、ガラス製造装置(徐冷炉)が大型化してしまう。したがって、コストおよび生産性を維持しつつ、熱収縮率を低下させるための平均冷却速度の好ましい範囲は、50〜300℃/分であり、50〜200℃/分がより好ましく、60〜120℃/分がさらに好ましい。他方、徐冷工程後に熱収縮低減処理(オフラインアニール)工程を別途設けることで、熱収縮率を小さくすることもできる。しかし、徐冷工程とは別にオフラインアニール工程を設けると、生産性が低下し、コストが高騰してしまうという問題点がある。そのため、上述したように、徐冷工程においてガラス板の冷却速度を制御するという熱収縮低減処理(オンラインアニール)を施すことによって、熱収縮率を所定範囲内におさめることがより好ましい。
また、ガラスの水分量を示すβ−OH値は、その値が小さいほどTgおよび歪点が高くなる傾向にある。他方、β−OH値が大きいほど、熔融温度を低下させる傾向にある。Tgおよび歪点の上昇と熔解性の向上を両立するために、β−OH値は、0.05〜0.40mm-1とすることが好ましく、0.10〜0.35mm-1がより好ましく、0.10〜0.30mm-1がさらに好ましく、0.10〜0.25mm-1がさらに好ましい。β−OH値は、原料の選択により調整することができる。例えば、含水量の高い原料(例えば水酸化物原料)を選択したり、塩化物等のガラス中の水分量を減少させる原料の含有量を調整することで、β−OH値を増減させることができる。また、ガラス熔解に用いるガス加熱燃焼(酸素燃焼加熱)と電気加熱(直接通電加熱)の比率を調整することでβ―OH値を調整することができる。さらに、炉内雰囲気中の水分量を増加させたり、熔解時に熔融ガラスに対して水蒸気をバブリングすることで、β−OH値を増加させることができる。なお、ガラスのβ−OH値は、ガラスの赤外線吸収スペクトルにおいて次式によって求められる。
β−OH値=(1/X)log10(T1/T2)
X :ガラス肉厚(mm)
T1:参照波長2600nmにおける透過率(%)
T2:水酸基吸収波長2800nm付近における最小透過率(%)
[熔解工程]
熔解工程においては、所定のガラス組成となるように調合したガラス原料を少なくとも直接通電加熱を用いて熔解する。ガラス原料は、公知の材料から適宜選択できる。ガラス融液の1550℃における比抵抗が、50〜300Ω・cmの範囲となるように、ガラス原料の組成、特に、R2OとROの含有量を調整することが好ましい。R2Oの含有量を0.01〜0.8質量%、ROの含有量を3〜20質量%の範囲とすることで、1550℃における比抵抗を上記範囲内とすることができる。また、ガラス基板のβ-OHの値が0.1〜0.4mm-1となるように、熔解工程を調整することが好ましい。また、本発明の第1及び2の態様のガラス基板の製造においては、ROの含有量を3〜20質量%の範囲で調整することでも1550℃における比抵抗を調整でき、本発明の第3の態様のガラス基板の製造においては、ROの含有量を3〜25質量%の範囲で調整することでもガラス融液1550℃における比抵抗を調整できる。
[成形工程]
成形工程では、熔解工程にて熔解した熔融ガラスを平板状ガラスに成形する。平板状ガラスへの成形方法は、例えば、ダウンドロー法、特にオーバーフローダウンドロー法が好適である。その他、フロート法、リドロー法、ロールアウト法などを適用できる。ダウンドロー法を採用することにより、フロート法など他の成形方法を用いた場合に比べ、得られたガラス基板の主表面が熱間成形された表面であるために、極めて高い平滑性を有しており、成形後のガラス基板表面の研磨工程が不要となるために、製造コストを低減することができ、さらに生産性も向上させることができる。さらに、ダウンドロー法を使用して成形したガラス基板の両主表面は均一な組成を有しているために、エッチング処理を行った際に、均一にエッチングを行うことができる。加えて、ダウンドロー法を使用して成形することで、マイクロクラックのない表面状態を有するガラス基板を得ることができるため、ガラス基板自体の強度も向上させることができる
[徐冷工程]
徐冷時の条件を適宜調整することでガラス基板の熱収縮率をコントロールすることができる。ガラス基板の熱収縮率は上述のように、75ppm以下、より好ましくは60ppm以下であることが好ましく、75ppm以下、より好ましくは60ppm以下のガラス基板を製造するためには、例えば、ダウンドロー法を使用する場合は、平板状ガラスの温度を、TgからTg-100℃の温度範囲を20〜120秒で冷却するように、成形を行うことが望ましい。20秒未満であると、熱収縮量を十分低減することができない場合がある。一方、120秒を超えると、生産性が低下すると共に、ガラス製造装置(徐冷炉)が大型化してしまう。あるいは、平板状ガラスの平均の冷却速度を、TgからTg-100℃の温度範囲において、50〜300℃/分とするように徐冷(冷却)を行うことが好ましい。冷却速度が、300℃/分を超えると、熱収縮量を十分低減することができない場合がある。一方、50℃/分未満であると、生産性が低下すると共に、ガラス製造装置(徐冷炉)が大型化してしまう。冷却速度の好ましい範囲は、50〜300℃/分であり、50〜200℃/分がより好ましく、60〜120℃/分がさらに好ましい。他方、徐冷工程後に熱収縮低減処理(オフラインアニール)工程を別途設けることで、熱収縮率を小さくすることもできる。しかし、徐冷工程とは別にオフラインアニール工程を設けると、生産性が低下し、コストが高騰してしまうという問題点がある。そのため、上述したように、徐冷工程において平板状ガラスの冷却速度を制御するという熱収縮低減処理(オンラインアニール)を施すことによって、熱収縮率を所定範囲内におさめることがより好ましい。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1〜25
表1に示すガラス組成になるように、実施例1〜25及び比較例1〜2の試料ガラスを以下の手順に従って作製した。得られた試料ガラスおよび試料ガラス基板について、失透温度、Tg、100〜300℃の範囲における平均熱膨張係数(α)、熱収縮率、密度、歪点、熔解温度(粘度が102.5dPa・sの時のガラス温度、表1中ではT(log(η=2.5)と表示)、液相粘度、1550℃における比抵抗、、エッチング速度を求め、表1に示す。
上記表中、実施例1〜3は、参考例である。
(試料ガラスの作製)
まず、表1に示すガラス組成となるように、通常のガラス原料である、シリカ,アルミナ,酸化ホウ素,炭酸カリウム,塩基性炭酸マグネシウム,炭酸カルシウム,炭酸ストロンチウム,二酸化スズおよび三酸化二鉄を用いて、ガラス原料バッチ(以下バッチと呼ぶ)を調合した。なお、ガラスで400gとなる量で調合した。
前記調合したバッチは、白金ルツボの中で熔融および清澄した。まず、このルツボを1575℃に設定した電気炉で4時間保持してバッチを熔融した。次に、その電気炉を1640℃まで昇温し、2時間保持することでガラス融液の清澄を行なった。その後、ガラス融液を炉外で鉄板上に流し出し、冷却固化してガラス体を得た。このガラス体には引き続いて徐冷操作を施した。徐冷操作は、このガラス体を800℃に設定した別の電気炉の中で2時間保持した後、740℃まで2時間、更に660℃まで2時間で冷却後、その電気炉の電源を切り、室温まで冷却することによって行なった。この徐冷操作を経たガラス体を試料ガラスとした。前記試料ガラスは、徐冷条件に影響されず、かつ/または、基板状では測定できない特性(失透温度、高温粘性(熔融温度)、比抵抗、熱膨張係数、Tgおよび歪点)の測定に用いた。前記試料ガラスは、Cl含有量が0.01%未満であり、かつNH4 +含有量が 2×10−4%未満であった。
また、上記試料ガラスを切断、研削および研磨加工を施して、上下面が鏡面である30mm×40mm×0.7mmの試料ガラス基板を作製した。前記試料ガラス基板は、徐冷条件に影響されない、β−OHの測定に用いた。
さらに、上記試料ガラスを切断、研削および研磨加工を施して、厚み0.7〜4mm、幅5mm、長さ20mmの直方体とし、これをTgで30分保持した後、Tg-100℃まで100℃/分で冷却し、室温まで放冷することで、熱収縮測定用試料ガラス基板とした。
(歪点)
前記試料ガラスを、3mm角、長さ55mmの角柱形状に切断・研削加工して、試験片とした。この試験片に対して、ビーム曲げ測定装置(東京工業株式会社製)を用いて測定を行い、ビーム曲げ法(ASTM C−598)に従い、計算により歪点を求めた。
(熱収縮率)
熱収縮率は、前記熱収縮測定用試料ガラス基板を550℃で2時間の熱処理が施された後のガラス基板の収縮量を用いて、以下の式にて求めた。
熱収縮率(ppm)
={熱処理前後のガラスの収縮量/熱処理前のガラスの長さ}×106
本実施例では、具体的に、以下の方法によって収縮量の測定を行った。
前記熱収縮用試料ガラス基板について、示差熱膨張計(Thermo Plus2 TMA8310)を用い、室温から550℃まで昇温し、2時間保持した後、室温まで冷却し、熱処理前後での試料ガラスの収縮量を測定した。この時の、昇降温速度は10℃/minに設定した。
(1550℃での比抵抗)
前記試料ガラスの熔融時の比抵抗は、HP社製 4192A LF インピーダンス・アナライザーを用いて、四端子法にて測定し、前記測定結果より1550℃での比抵抗値を算出した。
(失透温度の測定方法)
前記試料ガラスを粉砕し、2380μmのふるいを通過し、1000μmのふるい上に留まったガラス粒を得た。このガラス粒をエタノールに浸漬し、超音波洗浄した後、恒温槽で乾燥させた。乾燥させたガラス粒を、幅12mm、長さ200mm、深さ10mmの白金ボート上に、前記ガラス粒25gをほぼ一定の厚さになるように入れた。この白金ボートを、1080〜1320℃(あるいは1140℃〜1380℃)の温度勾配をもった電気炉内に5時間保持し、その後、炉から取り出して、ガラス内部に発生した失透を50倍の光学顕微鏡にて観察した。失透が観察された最高温度を、失透温度とした。
(100〜300℃の範囲における平均熱膨張係数αおよびTgの測定方法)
前記試料ガラスを、φ5mm、長さ20mmの円柱状に加工して、試験片とした。この試験片に対し、示差熱膨張計(Thermo Plus2 TMA8310)を用いて、昇温過程における温度と試験片の伸縮量を測定した。この時の昇温速度は5℃/minとした。前記温度と試験片の伸縮量との測定結果を元に100〜300℃の温度範囲における平均熱膨張係数およびTgを測定した。なお、本願でのTgとは、ガラス体を800℃に設定した別の電気炉の中で2時間保持した後、740℃まで2時間、更に660℃まで2時間で冷却後、その電気炉の電源を切り、室温まで冷却した試料ガラスについて測定した値である。
(密度)
ガラスの密度は、アルキメデス法によって測定した。
(熔融温度)
前記試料ガラスの高温粘性は、白金球引き上げ式自動粘度測定装置を用いて測定した。
前記測定結果より、粘度102.5dPa・sの時の温度を算出し、熔融温度を得た。
(液相粘度)
前記高温粘性の測定結果より、前記失透温度での粘性を算出し、液相粘度を得た。表1には、10ndPa・sで示される液相粘度の指数部分nのみを表示する。
(エッチング速度)
ガラス基板をHFの割合が1mol/kg、HClの割合が5mol/kgの混酸の40℃のエッチング液に1時間浸漬し、ガラス基板の一方の表面の厚み減少量(μm)を測定した。単位時間(1時間)当たりの減少量(μm)としてエッチングレート(μm/h)を求めた。
実施例26
実施例7に示すガラス組成となるよう調合したガラス原料を、耐火煉瓦製の熔解槽と白金合金製の調整槽(清澄槽)を備えた連続熔解装置を用いて、1560〜1640℃で熔解し、1620〜1670℃で清澄し、1440〜1530℃で攪拌した後にオーバーフローダウンドロー法により厚さ0.7mmの薄板状に成形し、TgからTg-100℃の温度範囲内において、100℃/分の平均速度で徐冷を行い、磁気記録媒体用ガラス基板を得た。なお、前記記載の各特性については、得られたガラス基板を用いて測定した。
上記のように得られたガラス基板のβ−OH値は0.20mm-1であった。また、720℃以上のTgと、1680℃以下の熔融温度とを有しており、高Tg(高い低粘特性温度)および良好な熔解性とが実現されていた。さらに、熱収縮率および失透温度も、本発明のガラス基板の条件を満たしていた。なお、上記のように得られたガラス基板は、実施例7よりも、β−OH値が0.09mm-1大きいため、実施例7と比較するとTgは3℃低くなるが、十分に高いTgを実現できている。
実施例27、28
実施例11、13に示すガラス組成となるよう調合したガラス原料を用いて実施例26と同様にガラス基板を作製し、各特性を測定した。
上記のように得られた実施例27の組成のガラス基板の熔解温度は1610℃、β-OH値は0.20mm-1で、Tgは754℃、歪点は697℃、熱収縮率は51ppmであり、他の特性は実施例11と同等であった。また、実施例28の組成のガラス基板の熔解温度は1585℃、β-OH値は0.21mm-1で、Tgは761℃、歪点は710℃、熱収縮率は31ppmであり、他の特性は実施例13と同等であった。上記のように、上記ガラス基板は720℃以上のTgと、1680℃以下の熔融温度とを有しており、高い低粘特性温度および良好な熔解性とが実現されていた。さらに、熱収縮率および失透温度も、本発明のガラス基板の条件を満たしていた。なお、上記のように得られたガラス基板は、実施例11、13よりも、β-OH値が0.1mm-1程度大きいため、実施例7、13と比較するとTgは2〜3℃低くなるが、十分に高いTgを実現できている。
したがって、本実施例で得られたガラス基板は、磁気記録媒体にも用いることが可能な、優れた特性を備えたガラス基板であるといえる。
次に、本発明のガラス基板について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は以下の例によって限定されるものではない。
<第1のガラス基板>
第1のガラス基板について、実施例を挙げて説明する。なお、第1のガラス基板とは、
モル%表示で、
SiO2 55〜80%
Al23 3〜20%
23 3〜15%
RO(MgO、CaO、SrO、BaOの合量) 3〜25%
を含有し、
As23およびSb23を実質的に含有せず、かつ、
失透温度が1250℃以下であるガラスから構成され、
熱収縮率が75ppm以下である、
ガラス基板である。
(実施例1−1〜1−24および比較例1−1〜1−6)
表1−1および1−2に示すガラス組成になるように、実施例1−1〜1−24および比較例1−1〜1−6の試料ガラスを以下の手順に従って作製した。得られた試料ガラスおよび試料ガラス基板について、失透温度、Tg、100〜300℃の範囲における平均熱膨張係数、熱収縮率、密度、歪点、熔融温度(粘度が102.5dPa・sの時のガラス温度)、液相粘度、および、1550℃における比抵抗を測定した。
(試料ガラスの作製)
まず、表1に示すガラス組成となるように、通常のガラス原料である、シリカ、アルミナ、酸化ホウ素、炭酸カリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、二酸化スズおよび三酸化二鉄を用いて、ガラス原料バッチ(以下バッチと呼ぶ)を調合した。なお、ガラスで400gとなる量で調合した。
前記調合したバッチは、白金ルツボの中で熔融および清澄した。まず、このルツボを1575℃に設定した電気炉で4時間保持して、バッチを熔融した。次に、その電気炉を1640℃まで昇温し、2時間保持することでガラス融液の清澄を行なった。その後、ガラス融液を炉外で鉄板上に流し出し、冷却固化してガラス体を得た。このガラス体に対し、引き続いて徐冷操作を施した。徐冷操作は、このガラス体を800℃に設定した別の電気炉の中で2時間保持した後、740℃まで2時間、更に660℃まで2時間で冷却後、その電気炉の電源を切り、室温まで冷却することによって行なった。この徐冷操作を経たガラス体を試料ガラスとした。前記試料ガラスは、徐冷条件に影響されず、かつ/または、基板状では測定できない特性(失透温度、熔融温度、比抵抗、密度、熱膨張係数、Tgおよび歪点)の測定に用いた。
また、上記試料ガラスを切断、研削および研磨加工を施して、上下面が鏡面である30mm×40mm×0.7mmの試料ガラス基板を作製した。前記試料ガラス基板は、徐冷条件に影響されない、β−OHの測定に用いた。
さらに、前記試料ガラス基板に通常のガラス加工技術を用い、幅5mm、長さ20mmの直方体とし、これをTgで30分保持した後、Tg−100℃まで100℃/分で冷却し、室温まで放冷することで、熱収縮測定用試料ガラス基板とした。
(失透温度の測定方法)
前記試料ガラスを粉砕し、2380μmのふるいを通過し、1000μmのふるい上に留まったガラス粒を得た。このガラス粒をエタノールに浸漬し、超音波洗浄した後、恒温槽で乾燥させた。乾燥させたガラス粒を、幅12mm、長さ200mm、深さ10mmの白金ボート上に、前記ガラス粒25gをほぼ一定の厚さになるように入れた。この白金ボートを、実施例1−1〜1−6、1−8〜1−24および比較例1−1、1−3〜1−5については1080〜1320℃、実施例1−7、比較例1−2および1−6については1140〜1380℃の温度勾配をもった電気炉内に5時間保持し、その後、炉から取り出して、ガラス内部に発生した失透を50倍の光学顕微鏡にて観察した。失透が観察された最高温度を、失透温度とした。
(熔融温度)
前記試料ガラスの熔融温度は、白金球引き上げ式自動粘度測定装置を用いて測定した。前記測定結果より、粘度102.5dPa・sの時の温度を算出し、熔融温度を得た。
(液相粘度)
前記熔融温度の測定結果より、前記失透温度での粘性を算出し、液相粘度を得た。
(比抵抗)
前記試料ガラスの熔融時の比抵抗は、HP社製 4192A LF インピーダンス・アナライザーを用いて、四端子法にて測定した。前記測定結果より、1550℃での比抵抗値を算出した。
(100〜300℃の範囲における平均熱膨張係数およびTgの測定方法)
前記試料ガラスを、φ5mm、長さ20mmの円柱状に加工して、試験片とした。この試験片に対し、示差熱膨張計(Thermo Plus2 TMA8310)を用いて、昇温過程における温度と試験片の伸縮量を測定した。この時の昇温速度は5℃/minとした。前記温度と試験片の伸縮量との測定結果を元に100〜300℃の温度範囲における平均熱膨張係数およびTgを測定した。なお、本願でのTgとは、ガラス体を800℃に設定した別の電気炉の中で2時間保持した後、740℃まで2時間、更に660℃まで2時間で冷却後、その電気炉の電源を切り、室温まで冷却した試料ガラスについて測定した値である。
(歪点)
前記試料ガラスを、3mm角、長さ55mmの角柱形状に切断・研削加工して、試験片とした。この試験片に対して、ビーム曲げ測定装置(東京工業株式会社製)を用いて測定を行い、ビーム曲げ法(ASTM C−598)に従い、計算により歪点を求めた。
(密度)
前記試料ガラスを、鏡面研磨して5×30×30mmの板状サンプルを作製した。このサンプルを用いて、アルキメデス法によってガラスの密度を測定した。
(熱収縮率)
熱収縮率は、前記熱収縮測定用試料ガラス基板に対して550℃で2時間の熱処理を施し、熱処理後のガラス基板の収縮量を用いて、以下の式にて求めた。
熱収縮率(ppm)
={熱処理後のガラス基板の収縮量/熱処理前のガラス基板の長さ}×106
本実施例では、具体的に、以下の方法によって収縮量の測定を行った。
前記熱収縮用試料ガラスについて、示差熱膨張計(理学株式会社製サーモフレックスTMA8140型)を用い、室温から550℃まで昇温し、2時間保持した後、室温まで冷却し、熱処理前後での試料ガラスの収縮量を測定した。この時の、昇降温速度は10℃/minに設定した。
(エッチング速度)
ガラス基板をHFの割合が1mol/kg、HClの割合が5mol/kgの混酸の40℃のエッチング液に1時間浸漬し、ガラス基板の一方の表面の厚み減少量(μm)を測定した。単位時間(1時間)当たりの減少量(μm)としてエッチング速度(μm/h)を求めた。
上記表中、実施例1−1、1−6、1−8は、参考例である。
実施例1−1〜1−24で得られたガラス基板は、熱収縮率および失透温度も本発明の第1のガラス基板の条件を満たしていた。したがって、本実施例で得られたガラス基板は、磁気記録媒体用にも用いることが可能な、優れた特性を備えたガラス基板であるといえる。一方、比較例1−1〜1−6で得られたガラスは、熱収縮率または失透温度が本発明の第1のガラス基板の条件を満たしていなかった。さらに比較例2のガラスについては、熔融温度が1680℃を超えており、良好な熔解性も得られなかった。このように、比較例1−1〜1−6で得られたガラス基板は、磁気記録媒体には適していなかった。
(実施例1−25)
実施例1−4に示す組成となるよう調合したガラス原料を、耐火煉瓦製の熔解槽と白金合金製の清澄槽(調整槽)を備えた連続熔解装置を用いて、1560〜1640℃で熔解し、1620〜1670℃で清澄し、1440〜1530℃で攪拌した後にオーバーフローダウンドロー法により厚さ0.7mmの薄板状に成形し、TgからTg−100℃の温度範囲内において、100℃/分の平均速度で冷却を行い、磁気記録媒体用ガラス基板を得た。なお、前記記載の各特性については、得られたガラス基板を用いて測定した。なお、基板状では測定出来ない特性(密度、歪点、膨張係数およびTg)に関しては、前記試料作製方法に準じて、前記ガラス基板を再熔融し、試料ガラスを作製して、特性を測定した。
上記のように得られた実施例1−25のガラス基板の熔融温度は1610℃、β−OH値は0.20mm-1で、Tgは754℃、歪点は697℃、熱収縮率は51ppmであり、他の特性は実施例1−4と同等であった。このように、実施例1−25のガラス基板は、720℃以上のTgと、1680℃以下の熔融温度とを有しており、高いTgおよび歪点と、良好な熔解性とが実現されていた。さらに、熱収縮率および失透温度も、本発明の第1のガラス基板の条件を満たしていた。なお、実施例1−25のガラス基板は、実施例1−4よりもβ−OH値が0.1mm-1程度大きいため、実施例1−4と比較するとTgは2〜3℃低くなるが、十分に高いTgを実現できている。したがって、実施例1−25で得られたガラス基板は、磁気記録媒体用にも用いることが可能な、優れた特性を備えたガラス基板であるといえる。
(実施例1−26)
実施例1−12に示すガラス組成となるよう調合したガラス原料を用いて実施例1−25と同様にしてガラス基板を作製し、各特性を測定した。
上記のように得られた実施例1−26のガラス基板の熔融温度は1585℃、β−OH値は0.21mm-1で、Tgは761℃、歪点は710℃、熱収縮率は31ppmであり、他の特性は実施例1−12と同等であった。このように、実施例1−26のガラス基板は、720℃以上のTgと、1680℃以下の熔融温度とを有しており、高いTgおよび歪点と、良好な熔解性とが実現されていた。さらに、熱収縮率および失透温度も、本発明の第1のガラス基板の条件を満たしていた。なお、実施例1−26のガラス基板は、実施例1−12よりもβ−OH値が0.1mm-1程度大きいため、実施例1−12と比較するとTgは2〜3℃低くなるが、十分に高いTgを実現できている。したがって、実施例1−26で得られたガラス基板は、磁気記録媒体用にも用いることが可能な、優れた特性を備えたガラス基板であるといえる。
<第2のガラス基板>
第2のガラス基板について、実施例を挙げて説明する。なお、第2のガラス基板とは、
モル%表示で、
SiO2 62〜74%
Al23 3〜20%
23 3〜15%
CaO 7超〜16%
La23 0〜1%
BaO 0〜1未満%、
を含有し、
23、P25およびCaOのモル%で示す含有率が、B23+P25=3〜15%、およびCaO/B23>1.2の関係を満たし、
歪点が665℃以上であり、かつ、
失透温度が1250℃以下であるガラスから構成される、
ガラス基板である。
第1のガラス基板の実施例および比較例と同様の方法で、表2に示すガラス組成となるように実施例および比較例の試料ガラスを作製し、各特性を測定した。
上記表中、実施例2−1、2−6は、参考例である。
<第3のガラス基板>
第3のガラス基板について、実施例を挙げて説明する。なお、第3のガラス基板とは、
モル%表示で、
SiO2 65〜74%
Al23 3〜20%
23 3〜8.9未満%
CaO 7超〜16%
La23 0〜1%
を含有し、
BaOを実質的に含有せず、
23、P25およびCaOのモル%で示す含有率が、B23+P25=3〜9.5%、および、CaO/B23>1.2の関係を満たし、かつ、
失透温度が1250℃以下であるガラスから構成される、
ガラス基板である。
第1のガラス基板の実施例および比較例と同様の方法で、表3に示すガラス組成となるように実施例および比較例の試料ガラスを作製し、各特性を測定した。
上記表中、実施例3−1、実施例3−6は、参考例である。
本発明は、磁気記録媒体用ガラス基板の製造分野に利用可能である。

Claims (7)

  1. 質量%表示で、
    SiO2 52〜78%、
    Al2O33〜25%、
    B2O33〜15%、
    RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25%、
    K 2 O 0.01〜0.4%、
    Fe2O30.001〜0.8%、
    Sb2O30〜0.3%を含有し、
    As2O3は実質的に含有せず、
    質量比(SiO2+Al2O3)/B2O3は7〜30の範囲であり、かつ、
    質量比(SiO2+Al2O3)/ROは6以上である、
    磁気記録媒体用ガラス基板。
  2. 質量比CaO/B2O3は1.1以上であ
    請求項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
  3. 歪点が680℃以上である、
    請求項1または2に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
  4. 失透温度が1230℃以下である、
    請求項1〜のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
  5. 歪点が740℃以下である、
    請求項1〜のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
  6. 密度が2.5g/cm3未満である、
    請求項1〜のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
  7. 所定の組成に調合したガラス原料を少なくとも直接通電加熱を用いて熔解する熔解工程と、
    前記熔解工程にて熔解した熔融ガラスを平板状ガラスに成形する成形工程と、
    前記平板状ガラスを徐冷する工程であって、前記平板状ガラスの熱収縮率を低減するように前記平板状ガラスの冷却条件を制御する徐冷工程と、を含む、
    請求項1〜のいずれか1項に記載のガラス基板を製造する磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
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