JP6757159B2 - 磁気記録媒体用ガラス基板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
質量%表示で、
SiO2 52〜78%、
Al2O33〜25%、
B2O33〜15%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25%、
Fe2O3 0.001〜0.8%
Sb2O3 0〜0.3%を含有し、
As2O3は実質的に含有せず、
質量比(SiO2+Al2O3)/B2O3は7〜30の範囲であり、かつ、
質量比(SiO2+Al2O3)/ROは6以上である、
磁気記録媒体用ガラス基板。
質量%表示で、
SiO2 52〜78%、
Al2O33〜25%、
B2O39.7%以下、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25%、
Fe2O3 0.001〜1%を含有し、
質量比(SiO2+Al2O3)/B2O3は7.5以上であり、
質量比CaO/B2O3は1以上であり、
失透温度が1250℃以下であり、
Sb2O3及びAs2O3は実質的に含有しない、ガラスからなり、
昇降温速度が10℃/min、550℃で2時間保持の熱処理が施された後の下記式で示される熱収縮率が75ppm以下である、
磁気記録媒体用ガラス基板。
(式)
熱収縮率(ppm)={熱処理後のガラス基板の収縮量/熱処理前のガラス基板の長さ}×106
質量%表示で、
SiO2 52〜78%、
Al2O33〜25%、
B2O33〜15%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25%、
R2O(但し、R2OはLi2O、Na2O及びK2Oの合量) 0.01〜0.8%、
Sb2O3 0〜0.3%を含有し、
As2O3は実質的に含有せず、
昇降温速度が10℃/min、550℃で2時間保持の熱処理が施された後の下記式で示される熱収縮率が75ppm以下である、
磁気記録媒体用ガラス基板。
(式)
熱収縮率(ppm)={熱処理後のガラス基板の収縮量/熱処理前のガラス基板の長さ}×106
質量%表示で、
SiO2 52〜78%、
Al2O33〜25%、
B2O39.7%以下、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25%、
R2O(但し、R2OはLi2O、Na2O及びK2Oの合量) 0.01〜0.8%を含有し、
質量比(SiO2+Al2O3)/B2O3は8以上であり、
質量比CaO/B2O3は1以上であり、
失透温度が1250℃以下であり、
As2O3は実質的に含有しない、ガラスからなり、
昇降温速度が10℃/min、550℃で2時間保持の熱処理が施された後の下記式で示される熱収縮率が75ppm以下である、
磁気記録媒体用ガラス基板。
(式)
熱収縮率(ppm)={熱処理後のガラス基板の収縮量/熱処理前のガラス基板の長さ}×106
質量比CaO/B2O3は1.1以上であり、
[1]〜[4]のいずれかに記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
モル%表示で、
SiO2 55〜80%、
Al2O33〜20%、
B2O33〜15%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25%を含有し、
失透温度が1250℃以下であり、
Sb2O3及びAs2O3は実質的に含有しない、ガラスからなり、
昇降温速度が10℃/min、550℃で2時間保持の熱処理が施された後の下記式で示される熱収縮率が75ppm以下である、
磁気記録媒体用ガラス基板。
(式)
熱収縮率(ppm)={熱処理後のガラス基板の収縮量/熱処理前のガラス基板の長さ}×106
モル%表示で、
SiO2 55〜80%、
Al2O33〜20%、
B2O33〜15%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25%を含有し、
SiO2、Al2O3及びB2O3のモル%で表す含有率が、(SiO2+Al2O3)/B2O3=7.5〜17の関係を満たし、
歪点が665℃以上であり、
失透温度が1250℃以下であり、
昇降温速度が10℃/min、550℃で2時間保持の熱処理が施された後の下記式で示される熱収縮率が75ppm以下である、
磁気記録媒体用ガラス基板。
(式)
熱収縮率(ppm)={熱処理後のガラス基板の収縮量/熱処理前のガラス基板の長さ}×106
歪点が680℃以上である、
[1]〜[7]のいずれかに記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
失透温度が1230℃以下である、
[1]〜[8]のいずれかに記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
歪点が740℃以下である、
[1]〜[9]のいずれかに記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
密度が2.5g/cm3未満である、
[1]〜[10]のいずれかに記載の磁気記録媒体用ガラス基板。
所定の組成に調合したガラス原料を少なくとも直接通電加熱を用いて熔解する熔解工程と、
前記熔解工程にて熔解した熔融ガラスを平板状ガラスに成形する成形工程と、
前記平板状ガラスを徐冷する工程であって、前記平板状ガラスの熱収縮率を低減するように前記平板状ガラスの冷却条件を制御する徐冷工程と、を含む、
[1]〜[11]のいずれかに記載のガラス基板を製造する磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
本発明の磁気記録媒体用ガラス基板(本発明の第1の態様のガラス基板)は、
質量%表示で、
SiO2 52〜78%、
Al2O33〜25%、
B2O33〜15%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25%、
Fe2O3 0.001〜0.8%
Sb2O3 0〜0.3%を含有し、
As2O3は実質的に含有せず、
質量比(SiO2+Al2O3)/B2O3は7〜30の範囲であり、かつ、
質量比(SiO2+Al2O3)/ROは6以上である、
ことを特徴としている。
また、本発明の磁気記録媒体用ガラス基板(本発明の第2の態様のガラス基板)は、
質量%表示で、
SiO2 52〜78%、
Al2O33〜25%、
B2O39.7%以下、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25%、
Fe2O3 0.001〜1%を含有し、
質量比(SiO2+Al2O3)/B2O3は7.5以上であり、
質量比CaO/B2O3は1以上であり、
失透温度が1250℃以下であり、
Sb2O3及びAs2O3は実質的に含有しない、ガラスからなり、
昇降温速度が10℃/min、550℃で2時間保持の熱処理が施された後の下記式で示される熱収縮率が75ppm以下である、
ことを特徴としている。
ただし、(式)熱収縮率(ppm)={熱処理後のガラス基板の収縮量/熱処理前のガラス基板の長さ}×106
また、本発明の磁気記録媒体用ガラス基板(本発明の第3の態様のガラス基板)は、
質量%表示で、
SiO2 52〜78%、
Al2O33〜25%、
B2O33〜15%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25%、
R2O(但し、R2OはLi2O、Na2O及びK2Oの合量) 0.01〜0.8%、
Sb2O3 0〜0.3%を含有し、
As2O3は実質的に含有せず、
昇降温速度が10℃/min、550℃で2時間保持の熱処理が施された後の下記式で示される熱収縮率が75ppm以下である、
ことを特徴としている。
ただし、(式)熱収縮率(ppm)={熱処理後のガラス基板の収縮量/熱処理前のガラス基板の長さ}×106
また、本発明の磁気記録媒体用ガラス基板(本発明の第4の態様のガラス基板)は、
質量%表示で、
SiO2 52〜78%、
Al2O33〜25%、
B2O39.7%以下、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25%、
R2O(但し、R2OはLi2O、Na2O及びK2Oの合量) 0.01〜0.8%を含有し、
質量比(SiO2+Al2O3)/B2O3は8以上であり、
質量比CaO/B2O3は1以上であり、
失透温度が1250℃以下であり、
As2O3は実質的に含有しない、ガラスからなり、
昇降温速度が10℃/min、550℃で2時間保持の熱処理が施された後の下記式で示される熱収縮率が75ppm以下である、
ことを特徴としている。
ただし、(式)熱収縮率(ppm)={熱処理後のガラス基板の収縮量/熱処理前のガラス基板の長さ}×106
SiO2は、ガラスの骨格成分であり、従って、必須成分である。含有量が少なくなると、耐酸性が、耐BHF(バッファードフッ酸)および歪点が低下する傾向がある。また、熱膨張係数が増加する傾向がある。また、SiO2含有量が少なすぎると、ガラス基板の密度が上昇し、低密度化をするのが難しくなる。また、SiO2含有量が少なすぎると、(1)ガラス移転点及び歪点が低下する、(2)化学耐久性が低下する、(2)平均熱膨張係数が大きくなり、熱収縮率を小さくできない、という傾向もある。平均熱膨張係数が大きく(高く)なりすぎると、耐熱衝撃性が低下し、磁気記録層成膜時の生産性が低下する。一方、SiO2含有量が多すぎると、ガラス融液の比抵抗が上昇し、熔融温度が著しく高くなり熔解が困難になる傾向がある。SiO2含有量が多すぎると、耐失透性が低下する傾向もある。また、SiO2含有量が多すぎると、(1)ヤング率が低下する、(2)失透温度が上昇する、という傾向もある。このような観点から、SiO2の含有量は、52〜78質量%の範囲とする。SiO2の含有量は、好ましくは57〜75 質量%、より好ましくは58〜72質量%、さらに好ましくは59〜70質量%、一層好ましくは59〜69質量%、より一層好ましくは61〜69質量%、さらに一層好ましくは61〜68質量%、尚一層好ましくは62〜67質量%の範囲である。他方、SiO2含有量が多すぎると、ガラスのエッチングレートが遅くなる傾向がある。ガラス板をスリミングする場合の速度を示すエッチングレートが十分に速いガラス基板を得るという観点からは、SiO2の含有量は、好ましくは53〜75 質量%、より好ましくは55〜70質量%、さらに好ましくは55〜65質量%、一層好ましくは58〜63質量%の範囲である。尚、SiO2含有量は、上記耐酸性等の特性とエッチングレートの両方を考慮して適宜決定される。
Al2O3は、分相を抑制し、歪点を高くする必須成分である。含有量が少なすぎると、ガラスが分相しやすくなる。歪点が低下する。また、ヤング率及びエッチングレートも低下する傾向がある。また、含有量が少なすぎると、(1)比弾性率が低下する、(2)ガラス移転点及び歪点が低下する、という傾向もある。Al2O3含有量が多すぎると、比抵抗が上昇する。また、ガラスの失透温度が上昇して、耐失透性が低下するので、成形性が悪化する傾向がある。このような観点から、Al2O3の含有量は3〜25質量%の範囲である。Al2O3の含有量は、好ましくは8〜25質量%、より好ましくは10〜23質量%、さらに好ましくは12〜20質量%、一層好ましくは14〜20質量%、尚一層好ましくは15〜20質量%、さらに尚一層好ましくは15〜19質量%の範囲である他方、エッチングレートが十分に速いガラス基板を得るという観点からは、Al2O3の含有量は、好ましくは8〜25質量%、より好ましくは10〜23質量%、さらに好ましくは14〜23質量%、一層好ましくは17〜22質量%である。尚、Al2O3の含有量は、上記ガラスが分相特性等とエッチングレートの両方を考慮して適宜決定される。
B2O3は、ガラスの熔融温度に代表される高温粘性域における温度を低下させ、清澄性を改善する必須成分である。B2O3含有量が少なすぎると、熔解性、耐失透性及び耐BHFが低下する傾向にある。また、B2O3含有量が少なすぎると、比重が増加して低密度化が図りがたくなる。他方、B2O3含有量が多すぎると、比抵抗が上昇する。また、B2O3含有量が多すぎると、ガラス移転点及び歪点が低下し、耐熱性が低下する。また、耐酸性及びヤング率が低下する傾向にある。また、ガラス熔解時のB2O3の揮発により、ガラスの不均質が顕著となり、脈理が発生しやすくなる。このような観点から、B2O3含有量は、3〜15質量%の範囲であり、好ましくは3〜13質量%、より好ましくは3〜11質量%未満、より好ましくは3〜10質量%未満、さらに好ましくは4〜9質量%、一層好ましくは5〜9質量%、尚一層好ましくは7〜9質量%の範囲である。他方、失透温度を十分に低下させるためには、B2O3含有量は、3〜15質量%の範囲であり、好ましくは5〜15質量%、よりましくは6〜13質量%、さらにましくは7〜11質量%未満である。また、B2O3含有量は、9.7質量%以下であってもよい。尚、B2O3含有量は、上記熔解性等と失透温度の両方を考慮して適宜決定される。
ROは、比抵抗を低下させ、熔解性を向上させる必須成分である。RO含有量が少なすぎると、比抵抗が上昇し、熔解性が悪化する。RO含有量が多すぎると、歪点及びヤング率が低下する。さらに、密度が上昇する。また、RO含有量が多すぎると、熱膨張係数が増大する傾向もある。このような観点から、ROは、3〜25質量%の範囲であり、好ましくは4〜16質量%、より好ましくは4〜15質量%、さらに好ましくは6〜14質量%、一層好ましくは7〜14質量%、より一層好ましくは7〜12質量%、尚一層好ましくは8〜11質量%の範囲である。
Li2O、Na2O及びK2OであるR2Oは、ガラスの塩基性度を高め、清澄剤の酸化を容易にして、清澄性を発揮させる成分である。また、熔解性向上、比抵抗低下させる成分である。従って、R2Oを含有させると、比抵抗が低下し、清澄性が向上し、熔解性が向上する。しかし、R2O含有量が多すぎると、ガラス基板から溶出して特性を劣化させる。また、熱膨張係数が増大する傾向がある。また、R2O含有量が多すぎると、(1)磁気記録媒体製造時にガラス基板の表面における金属ないし酸化物薄膜の特性が劣化する、(2)化学耐久性が低下する、(3)ガラス移転点及び歪点が低下する、(4)平均熱膨張係数が大きくなり、熱収縮率を小さくできない、という傾向もある。これらの観点から、R2Oの合量であるLi2O+Na2O+K2Oは0.01〜0.8質量%の範囲であり、好ましくは0.01〜0.6質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%、さらに好ましくは0.01〜0.4質量%、一層好ましくは0.01〜0.3質量%の範囲である。上記範囲における下限値0.01質量%は、好ましくは0.05質量%、より好ましくは0.1質量%である。
K2O含有量が多すぎると、ガラス基板から溶出して特性を劣化させる傾向がある。また、熱膨張係数も増大する傾向がある。K2O含有量は、好ましくは0.01〜0.8質量%、より好ましくは0.05〜0.7質量%、さらに好ましくは0.05〜0.5質量%、一層好ましくは0.1〜0.5質量%、より一層好ましくは0.1〜0.4質量%、さらに一層好ましくは0.1〜0.3質量%の範囲である。
ZnO含有量が多くなりすぎると、失透温度及び密度が上昇する傾向がある。また、歪点が低下する傾向がある。そのため、ZnO含有量は、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜3質量%、さらに好ましくは0〜2質量%、一層好ましくは0〜1質量%の範囲である。ZnOは実質的に含有しないことが好ましい。
P2O5含有量が多すぎると、ガラス熔解時のP2O5の揮発により、ガラスの不均質が顕著となり、脈理が発生しやすくなる。また、耐酸性が著しく悪化する。また、乳白が生じやすくなる。P2O5含有量は、好ましくは0〜3質量%、より好ましくは0〜1質量%、さらに好ましくは0〜0.5質量%の範囲であり、実質的に含有しないことが特に好ましい。
エッチングレート(μm/h)は、ガラス基板をHFの割合が1mol/kg、HClの割合が5mol/kgの混酸の40℃のエッチング液に1時間浸漬した場合の、単位時間(1時間)当たりのガラス基板の一方の表面の厚み減少量(μm)として表す。
β−OH値=(1/X)log 10(T1/T2)
X : ガラス肉厚(mm)
T1 : 参照波長2600nm における透過率(%)
T2 : 水酸基吸収波長2800nm付近における最小透過率(%)
低収縮率と熔解性を両立するために、本発明のガラス基板を構成するガラスのβ−OH値は、0.05〜0.40mm-1とすることが好ましく、0.10〜0.35mm-1がより好ましく、0.10〜0.30mm-1がさらに好ましく、0.10〜0.25mm-1がさらに好ましく、0.10〜0.20mm-1が一層好ましく、0.10〜0.15mm-1がより一層好ましい。
熱収縮率(ppm)={熱処理前後のガラスの収縮量/熱処理前のガラスの長さ}×106
本発明の磁気記録媒体用ガラス基板(本発明の第5の態様のガラス基板)は、
モル%表示で、
SiO2 55〜80%、
Al2O33〜20%、
B2O33〜15%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25%を含有し、
失透温度が1250℃以下であり、
Sb2O3及びAs2O3は実質的に含有しない、ガラスからなり、
昇降温速度が10℃/min、550℃で2時間保持の熱処理が施された後の下記式で示される熱収縮率が75ppm以下である、
ことを特徴としている。
ただし、熱収縮率(ppm)={熱処理後のガラス基板の収縮量/熱処理前のガラス基板の長さ}×106
モル%表示で、
SiO2 55〜80%、
Al2O33〜20%、
B2O33〜15%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25%を含有し、
SiO2、Al2O3及びB2O3のモル%で表す含有率が、(SiO2+Al2O3)/B2O3=7.5〜17の関係を満たし、
歪点が665℃以上であり、
失透温度が1250℃以下であり、
昇降温速度が10℃/min、550℃で2時間保持の熱処理が施された後の下記式で示される熱収縮率が75ppm以下である、
ことを特徴としている。
ただし、熱収縮率(ppm)={熱処理後のガラス基板の収縮量/熱処理前のガラス基板の長さ}×106
SiO2は、骨格成分であり、必須成分である。SiO2量が少なすぎると、耐酸性低下、Tgおよび歪点の低下、熱膨張係数増加および耐バッファードフッ酸(BHF)低下が起こる場合がある。また、低密度化を図ることが困難となる場合もある。また、SiO2含有量が少なすぎると、(1)ガラス移転点及び歪点が低下する、(2)化学耐久性が低下する、(2)平均熱膨張係数が大きくなり、熱収縮率を小さくできない、という傾向もある。平均熱膨張係数が大きく(高く)なりすぎると、耐熱衝撃性が低下し、磁気記録層成膜時の生産性が低下する。一方、SiO2量が多すぎると、熔融温度が著しく高くなり、熔解および成形が困難になる場合がある。また、耐失透性が低下する場合もある。また、SiO2含有量が多すぎると、(1)ヤング率が低下する、(2)失透温度が上昇する、という傾向もある。また、ガラスをスリミングする場合のエッチング速度を十分に速くできない。そこで、SiO2の含有率は、55〜80%が好ましく、60〜78%がより好ましく、62〜78%がさらに好ましく、65〜78%がさらに好ましく、65〜75%がさらに好ましい。なお、より軽量化を図るためにSrO+BaOを3%未満しか含まないガラス基板においては、SiO2の含有率は、67〜73%がさらに好ましく、69〜72%がさらに好ましい。さらに、ガラスをスリミングする場合のエッチング速度を十分に速くするためには、SiO2の含有率は、62〜78%がより好ましく、62〜74%がさらに好ましく、64〜70%がさらに好ましい。他方、SrO+BaOを3%以上含有するガラス基板においては、SiO2の含有率は、65〜73%がさらに好ましく、66〜71%がさらに好ましい。
Al2O3は、分相を抑制し、Tgおよび歪点を上昇させる必須成分である。Al2O3量が少なすぎると、ガラスが分相しやすくなる。また、Tgおよび歪点の低下による耐熱性の低下や熱収縮率の増大、およびヤング率低下および耐酸性の低下が起こる場合もある。また、ガラスのエッチング速度を十分に速くできない。また、含有量が少なすぎると、(1)比弾性率が低下する、(2)ガラス移転点及び歪点が低下する、という傾向もある。一方、Al2O3量が多すぎると、ガラスの失透温度が上昇して、耐失透性が低下するので、成形性が悪化する。したがって、Al2O3の含有率は、3〜20%が好ましく、5〜18%がより好ましく、5〜15%がさらに好ましい。なお、より軽量化を図るためにSrO+BaOを3%未満しか含まないガラス基板においては、Al2O3の含有率は、7〜13%がさらに好ましく、9〜12%がさらに好ましい。さらに、ガラスをスリミングする場合のエッチング速度を十分に速くするためには、Al2O3の含有率は、7〜15%がさらに好ましく、9〜14%がさらに好ましく、10〜14%がさらに好ましい。他方、SrO+BaOを3%以上含有するガラス基板においては、Al2O3の含有率は、8〜15%がさらに好ましく、10〜14%がさらに好ましい。
B2O3は、熔融温度に代表される高温度域での粘性特性(高温粘性特性)温度を低下させ、熔解性を改善する必須成分である(以下、本明細書では、「高温粘性特性温度」として、「熔融温度」を代表して記載する。)。B2O3量が少なすぎると、熔解性低下、耐BHF低下、耐失透性低下および熱膨張係数増加が起こる場合がある。また、密度が増加して、低密度化を図ることが困難となる場合もある。一方、B2O3量が多すぎると、Tgおよび歪点の低下、耐酸性低下およびヤング率低下が起こる場合がある。また、ガラス熔解時のB2O3の揮発により、ガラスの不均質が顕著となり、脈理が発生しやすくなる。そこで、B2O3の含有率は、3〜15%が好ましく、3〜13がより好ましく、3〜10%がさらに好ましい。なお、より軽量化を図るためにSrO+BaOを3%未満しか含まないガラス基板においては、B2O3の含有率は、3%以上9.5%未満がさらに好ましく、3.5%以上9.2%未満がさらに好ましく、4%以上8.9%未満がさらに好ましく、5〜8.5%がさらに好ましく、6〜8%がさらに好ましい。さらに、失透温度の上昇を防止するためには、B2O3の含有率は、5〜13%がより好ましく、5〜12%がさらに好ましく、6〜10未満%(6%以上10%未満)がさらに好ましい。他方、SrO+BaOを3%以上含有するガラス基板においては、B2O3の含有率は、3〜9%がさらに好ましく、4〜8%がさらに好ましい。
MgOは、熔解性を向上させる成分である。また、MgOは、アルカリ土類金属の中では密度を増加させにくい成分であるので、その含有率を相対的に増加させると、ガラスの低密度化を図りやすくなる。本実施形態のガラス基板において、MgOは必須ではない。しかし、MgOを含有させることにより、熔解性の向上および切粉発生の抑制を実現できるので、MgOが含まれていてもよい。MgOを含有すると、また、ヤング率・比弾性率(ヤング率/密度)を向上させることができる。ヤング率が高いと、破壊靭性が向上し、ガラス基板の薄板化が求められる磁気記録媒体用基板ガラスに好適である。しかし、MgO量が多すぎると、Tgおよび歪点低下、耐熱性低下、耐酸性低下およびヤング率低下が起こる場合がある。また、失透温度が高くなり、耐失透性が低下するので、ダウンドロー法に適用し難くなる場合がある。また、MgOの含有量が多すぎると、(1)平均熱膨張係数が大きくなり、熱収縮率を小さくできない、(2)化学耐久性が低下する、という傾向もある。したがって、本実施形態のガラス基板では、MgOの含有率は0〜15%が好ましく、0〜10%がより好ましい。なお、より軽量化を図るためにSrO+BaOを3%未満しか含まないガラス基板においては、MgOの含有率は、0〜5%がさらに好ましく、0〜2未満%(0%以上2%未満)がさらに好ましく、0〜1.5%がさらに好ましく、0〜1%がさらに好ましく、0〜0.5%が好ましく、MgOが実質的に含有されないことがさらに好ましい。他方、SrO+BaOを3%以上含有するガラス基板においては、MgOの含有率は、1〜9%がさらに好ましく、2〜8%がさらに好ましい。
CaOは、ガラスの失透温度を急激に上げることなくガラスの熔解性を向上させるのに有効な成分である。また、CaOは、アルカリ土類金属の中では密度を増加させにくい成分であるので、CaO量を相対的に増加させると、ガラスの低密度化を図りやすくなる。CaO量が少なすぎると、高温時の粘性上昇による熔解性低下および耐失透性低下が起こりやすくなる。一方、CaO量が多すぎると、熱膨張係数の増加が起こりやすくなる。また、CaO含有量が多すぎると、比弾性率が低下するという傾向もある。一方、CaO含有量が少なすぎると、(1)ヤング率が低下する、(2)失透温度が上昇する、(3)溶解性が低下する、という傾向もある。これらの理由から、CaOの含有率は、0〜20%が好ましく、0〜18%が好ましい。なお、より軽量化を図るためにSrO+BaOを3%未満しか含まないガラス基板においては、CgOの含有率は、3.6〜16%がより好ましく、4〜16%がさらに好ましく、6〜16%がさらに好ましく、7超〜16%(7%を超えて16%以下)がさらに好ましく、8〜13%がさらに好ましく、9〜12%がさらに好ましい。他方、SrO+BaOを3%以上含有するガラス基板においては、CaOの含有率は、0〜10%がさらに好ましく、0〜5%がさらに好ましく、0〜3%がさらに好ましい。
SrOは、ガラスの失透温度を下げることができる成分である。SrOは、必須成分ではないが、含有させると耐失透性向上および熔解性向上が実現できるので、含まれていてもよい。しかし、SrO量が多すぎると、密度が上昇してしまう。したがって、密度を低下させたい場合には、実質的にSrOを含有させないことが好ましい。また、SrO含有量が多すぎると、(1)比弾性率が低下する、(2)平均熱膨張係数が大きくなり、熱収縮率を小さくできない、という傾向もある。したがって、本実施形態のガラス基板では、SrOの含有率は0〜10%が好ましく、0〜8%がより好ましい。なお、より軽量化を図るためには、SrOの含有率は、3%未満が好ましく、2%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましく、0.5%以下がさらに好ましく、SrOが実質的に含まれないことがさらに好ましい。言い換えると、SrOの含有率は0〜3未満%(0%以上3%未満)が好ましく、0〜2%がより好ましく、0〜1%がさらに好ましく、0〜0.5%がさらに好ましく、SrOが実質的に含まれないことがさらに好ましい。他方、熔解性を向上させたい場合には、SrOの含有率は、1〜8%がさらに好ましく、3〜8%がさらに好ましい。
BaOは、耐失透性および熔解性を向上させる成分である。また、BaOを含有させることにより、熱膨張係数が増大すると共に密度が過度に増加してしまう。BaO含有量が多すぎると、(1)密度が上昇する、(2)比弾性率が低下する、(3)平均熱膨張係数が大きくなり、熱収縮率を小さくできない、という傾向もある。したがって、本実施形態のガラス基板では、BaOの含有率は0〜10%が好ましく、0〜5%がより好ましく、0〜2%がさらに好ましく、0〜1%がさらに好ましい。なお、環境負荷の問題があるため、BaOが実質的に含まれないことがさらに好ましい。
Li2OおよびNa2Oは、熔解性を向上させる成分であるが、ガラスの熱膨張係数を大きくして、磁気記録媒体製造における熱処理時に基板を破損したり、ガラスのTgおよび歪点を大きく低下させて、過度に耐熱性を低下させる成分である。したがって、本実施形態のガラス基板では、Li2OおよびNa2Oの含有率は0〜0.3%が好ましく、0〜0.2%がより好ましく、0〜0.1%がさらに好ましく、Li2OおよびNa2Oが実質的に含有されないことがさらに好ましい。
K2Oは、ガラスの塩基性度を高め、清澄性を発揮させる成分である。また、K2Oは、熔解性を向上させ、さらにガラス融液の比抵抗を低下させる成分である。したがって、K2Oは、必須成分ではないが、含有させるとガラス融液の比抵抗低下、熔解性向上および清澄性向上を実現できる。しかし、K2O量が多すぎると、熱膨張係数が増大したり、歪点およびTgが大きく低下して耐熱性が過度に低下する場合がある。そのため、本実施形態のガラス基板では、K2Oの含有率は0〜0.8%が好ましく、0.01〜0.5%がより好ましく、0.1〜0.3%がさらに好ましい。
ZrO2およびTiO2は、ガラスの化学的耐久性およびTgおよび歪点を上昇させる成分である。ZrO2およびTiO2は、必須成分ではないが、含有させることでTgおよび歪点の上昇と、耐酸性向上とを実現できる。ZrO2を含有させると、(1)ヤング率を向上させる、(2)ガラス移転点及び歪点を向上させる、という傾向もある。しかし、ZrO2量およびTiO2量が多くなりすぎると、失透温度が著しく上昇するため、耐失透性および成形性が低下する場合がある。特に、ZrO2は、冷却過程でZrO2の結晶を析出する場合があり、これがインクルージョンとしてガラスの品質悪化を引き起こすことがある。また、TiO2は、ガラスを着色させる成分なので、磁気記録媒体用基板には好ましくない。以上の理由から、本実施形態のガラス基板では、ZrO2およびTiO2の含有率は、それぞれ、0〜5%が好ましく、0〜3%がより好ましく、0〜2%がさらに好ましく、0〜1%がさらに好ましく、0.5%未満がさらに好ましい。さらに好ましくは、本実施形態のガラス基板が、ZrO2およびTiO2を実質的に含有しないことである。
ZnOは、耐BHF性および熔解性を向上させる成分であるので含まれていてもよいが、必須成分ではない。しかし、ZnO量が多くなりすぎると、失透温度上昇、Tgおよび歪点の低下、および密度上昇が起こる場合がある。そのため、本実施形態のガラス基板では、ZnOの含有率は、5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下がさらに好ましい。さらに好ましくは、本実施形態のガラス基板が、ZnOを実質的に含有しないことである。言い換えると、ZnOの含有率は、0〜5%が好ましく、0〜3%がより好ましく、0〜2%がさらに好ましく、0〜1%がさらに好ましい。さらに好ましくは、本実施形態のガラス基板が、ZnOを実質的に含有しないことである。
P2O5は、熔融温度を低下させ、熔解性を向上させる成分であるので含まれていてもよいが、必須成分ではない。しかし、P2O5量が多すぎると、ガラス熔解時のP2O5の揮発によりガラスの不均質が顕著となり、脈理が発生しやすくなる。また、Tgおよび歪点が低下すると共に、耐酸性が著しく悪化したり、乳白が生じやすくなったりする。そのため、本実施形態のガラス基板では、P2O5の含有率は、3%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましい。さらに好ましくは、本実施形態のガラス基板が、P2O5を実質的に含有しないことである。言い換えると、P2O5の含有率は、0〜3%が好ましく、0〜1%がより好ましく、0〜0.5%がさらに好ましい。さらに好ましくは、本実施形態のガラス基板が、P2O5を実質的に含有しないことである。
La2O3は、含まれていてもよい。しかし、La2O3量が多くなりすぎると、失透温度が上昇するとともに、密度が上昇してしまう。したがって、La2O3の含有率は、0〜1%が好ましく、0〜0.5%がより好ましく、0〜0.1%がさらに好ましく、さらに好ましくは、本実施形態のガラス基板がLa2O3を実質的に含有しないことである。
清澄剤としては、環境への負荷が小さく、ガラスの清澄性に優れたものであれば特に制限されない。例えば、Sn、Fe、Ce、Tb、MoおよびWの金属酸化物の群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。清澄剤が少なすぎると、泡品質が悪化する。したがって、清澄剤の添加量は、清澄剤の種類やガラスの組成にもよるが、例えば、0.01〜1%、好ましくは0.05〜1%、好ましくは0.05〜0.5%、より好ましくは0.05〜0.3%、さらに好ましくは0.05〜0.2%の範囲とすることが適当である。清澄剤としては、SnO2が好適である。しかし、SnO2は、ガラスの耐失透性を低下させる成分である。そのため、例えば清澄剤としてSnO2が用いられる場合は、SnO2の含有率は0.01〜0.3%が好ましく、0.03〜0.2%がより好ましく、0.05〜0.15%がさらに好ましい。
Fe2O3は、清澄剤としての働きの他に、ガラス融液の高温域での粘性を低下させ、比抵抗を低下させる働きを行う成分である。Fe2O3は必須成分ではないが、熔融温度が高く、熔解が困難なガラスにおいては、熔融温度や比抵抗を低下させるために含有させることが好ましい。Fe2O3量が多くなりすぎると、ガラスが着色して透過率が低下する場合がある。そのため、本実施形態のガラス基板では、Fe2O3の含有率は0〜0.1%が好ましく、0〜0.08%がより好ましく、0.001〜0.05%がさらに好ましく、0.005〜0.03%がさらに好ましい。ここで、熔融温度が高いガラスにおいては、熔解工程の温度が高くなるので、Fe2O3の清澄剤としての効果は低下しやすい。そのため、清澄剤としてFe2O3を単独で用いると清澄性が低下し、ガラス基板の泡品質が悪化する場合があるので、SnO2と併用して用いることが好ましい。
As2O3およびSb2O3は、環境への負荷が懸念される成分である。したがって、本実施形態のガラス基板を構成するガラスは、成分として、As2O3およびSb2O3を実質的に含有しない。
PbOおよびFは、環境負荷の問題により、実質的に含有されないことが好ましい。
MgO+CaO+SrO+BaO=ROと表記した場合、(SiO2+2Al2O3)/(2B2O3+RO)が2.5以上であることが好ましく、2.8以上であることがより好ましく、3.0超であることがさらに好ましい。(SiO2+2Al2O3)/(2B2O3+RO)をこのような範囲とすることにより、熔解性の向上と、Tgおよび歪点の上昇とを両立できる。あるいは、耐失透性の向上と、Tgおよび歪点の上昇とを両立できる。したがって、本実施形態のガラス基板を構成するガラスは、高いTgおよび歪点と、良好な熔解性あるいは耐失透性とを両立しやすくなる。その効果をより確実に得るために、(SiO2+2Al2O3)/(2B2O3+RO)は3.1〜4.3がより好ましく、3.3〜3.65がさらに好ましい。さらに、失透温度の上昇防止と十分なエッチング速度を実現するためには、(SiO2+2Al2O3)/(2B2O3+RO)は2.5〜10が好ましく、2.5〜5がより好ましく、2.8〜5がさらに好ましく、3超〜4がさらに好ましく、3.1〜3.5が一層好ましい。
ROは、熔解性を向上させる成分である。RO量が少なすぎると、熔解性が悪化する場合がある。しかし、RO量が多すぎると、Tgおよび歪点の低下、密度上昇、ヤング率低下および熱膨張係数の増加が起こる場合がある。したがって、本実施形態のガラス基板を構成するガラスでは、ROの含有率は3〜25%が好ましく、4〜20%がより好ましい。なお、より軽量化を図るためにSrO+BaOを3%未満しか含まないガラスにおいては、ROの含有率は、5%以上14%未満がさらに好ましく、6〜14%がさらに好ましく、8〜13%がさらに好ましく、9〜12%がさらに好ましい。他方、SrO+BaOを3%以上含有するガラス基板においては、ROの含有率は、5%以上18%未満がさらに好ましく、8〜17%がさらに好ましい。
より軽量化を図るためにSrO+BaOを3%未満しか含まないガラスにおいては、CaO/ROは、0.5以上が好ましく、0.7以上がより好ましく、0.85を超えることがさらに好ましく、0.88以上がさらに好ましく、0.90以上がさらに好ましく、0.92以上がさらに好ましく、0.95以上がさらに好ましい。言い換えると、CaO/ROは、0.5〜1が好ましく、0.7〜1がより好ましく、0.85超〜1がさらに好ましく、0.88〜1がさらに好ましく、0.90〜1がさらに好ましく、0.92〜1がさらに好ましく、0.95〜1がさらに好ましい。CaO/ROをこのような範囲とすることで、耐失透性と熔解性とを両立することができる。さらに、低密度化を図ることができる。また、ROが一定場合には、複数のアルカリ土類金属酸化物を含有させるよりもCaOのみを含有させた方が、Tgおよび歪点を上昇させることができる。なお、アルカリ土類金属酸化物としてCaOのみを原料として含有させた場合でも、得られるガラスには、他のアルカリ土類金属酸化物が不純物として含まれる場合がある。アルカリ土類金属酸化物としてCaOのみを原料として含有させた場合、得られるガラスのCaO/ROの値は、例えば0.98〜1程度である。また、CaOは原料が安価であり、入手が容易であるという点でも、好ましい成分である。
SiO2−(Al2O3/2)の値が小さすぎると、エッチング速度は向上するものの、耐失透性が低下する場合がある。一方、この値が大きすぎると、エッチング速度が低下する場合がある。したがって、本実施形態のガラスを構成するガラスは、SiO2−(Al2O3/2)は69以下が好ましく、60〜68がより好ましく、63〜67がさらに好ましい。なお、磁気記録媒体製造においてガラス基板をスリミングを行うような場合、その生産性を向上させるために、エッチング速度をさらに高めることが求められる。このような場合、さらにエッチング速度を向上させるために、SiO2−(Al2O3/2)は69以下が好ましく、50〜68がより好ましく、55〜65がさらに好ましく、57〜63が一層好ましく、58〜62がより一層好ましい。
SiO2+2Al2O3が少なすぎると、Tgおよび歪点が低下しやすくなる。一方、SiO2+2Al2O3が多すぎると、耐失透性が悪化しやすくなる。したがって、本実施形態のガラス基板を構成するガラスでは、SiO2+2Al2O3は80%以上が好ましく、80〜100%がより好ましく、85〜98%がさらに好ましく、89〜97%がさらに好ましく、90〜96%がさらに好ましい。なお、より軽量化を図るためにSrO+BaOを3%未満しか含まないガラスにおいては、SiO2+2Al2O3は、91〜95%がさらに好ましく、91〜93.5%がさらに好ましい。他方、SrO+BaOを3%以上含有するガラスにおいては、SiO2+2Al2O3は、91〜96%がより好ましい。
Al2O3/SiO2が0.35を超えると、耐失透性が悪化しやすくなる。他方、Al2O3/SiO2が0.05以下となるとTgおよび歪点を十分に上昇させることができない。したがって、本実施形態では、Al2O3/SiO2が0.05〜0.35であり、0.07〜0.30であることが好ましく、0.10〜0.25であることがさらに好ましい。
B2O3+P2O5が少なすぎると、熔解性が低下しやすくなる。一方、B2O3+P2O5が多すぎると、ガラス熔解時のB2O3+P2O5の揮発により、ガラスの不均質が顕著となり、脈理が発生しやすくなる。さらに、Tgおよび歪点が低下しやすくなる。したがって、本実施形態のガラス基板を構成するガラスでは、B2O3+P2O5は3〜15%が好ましく、3〜10%がより好ましい。なお、より軽量化を図るためにSrO+BaOを3%未満しか含まないガラスにおいては、B2O3+P2O5は、3%以上9.5%未満がさらに好ましく、4%以上8.9%未満がさらに好ましく、5〜8.5%がさらに好ましく、6〜8%がさらに好ましい。さらに、耐失透性を向上させるには、5〜13%がより好ましく、5〜12%がさらに好ましいく、6〜10未満%(6%以上10%未満)がさらに好ましい。他方、SrO+BaOを3%以上含有するガラスにおいては、B2O3+P2O5は、3〜9%がさらに好ましく、4〜8%がさらに好ましい。
なお、より軽量化を図るためにSrO+BaOを3%未満しか含まないガラスにおいては、CaO/B2O3が小さすぎると、Tgおよび歪点が低下しやすくなる。一方、CaO/B2O3が大きすぎると、熔解性が悪化しやすくなる。したがって、本実施形態では、CaO/B2O3は、0.5以上が好ましく、0.7以上がより好ましく、0.9以上がより好ましく、1.2を超えることがさらに好ましく、1.2を超えて5以下がさらに好ましく、1.2を超えて3以下がさらに好ましく、1.3以上2.5以下がさらに好ましく、1.3以上2以下がさらに好ましい。さらに、熔解性を向上させるには、0.5〜5が好ましく、0.9〜3がより好ましく、1を超えて2.5以下がさらに好ましく、1を超えて2以下がさらに好ましく、1.2を超えて2以下がさらに好ましく、1.2を超えて1.5以下がさらに好ましい。
SrOおよびBaOは、ガラスの失透温度を下げることができる成分である。これらの成分は必須ではないが、含有させると、耐失透性向上および熔解性向上を実現できる。しかし、これらの成分の量が多すぎると、密度が上昇してしまう。したがって、密度を低下させ、軽量化を図りがたくなる。また、熱膨張係数が増加する場合もある。したがって、本実施形態のガラス基板を構成するガラスでは、SrO+BaOは10%以下が好ましい。なお、より軽量化を図るためには、5%以下がより好ましく、3%未満がさらに好ましく、2%未満がさらに好ましい。さらに好ましくは、本実施形態のガラス基板を構成するガラスがSrOおよびBaOを実質的に含有しないことである。言い換えると、SrO+BaOは0〜10%が好ましく、より軽量化を図るためには、0〜5%がより好ましく、0〜3未満%(0%以上3%未満)がさらに好ましく、0〜2未満%(0%以上2%未満)がさらに好ましく、0〜1未満%(0%以上1%未満)がさらに好ましく、0〜0.5未満%(0%以上0.5%未満)が一層好ましい。さらに好ましくは、本実施形態のガラス基板を構成するガラスがSrOおよびBaOを実質的に含有しないことである。
RO+ZnO+B2O3が少なすぎると、高温域の粘性が高くなり、清澄性およびガラスの熔解性が低下しやすくなる。一方、RO+ZnO+B2O3が多すぎると、Tgおよび歪点が低下しやすくなる。したがって、本実施形態のガラス基板を構成するガラスでは、RO+ZnO+B2O3が7〜30%が好ましく、10〜27%がより好ましい。なお、より軽量化を図るためにSrO+BaOを3%未満しか含まないガラスにおいては、RO+ZnO+B2O3は、12〜22%がさらに好ましく、14〜21%がさらに好ましく、16〜20%がさらに好ましい。さらに、熔解性を向上させるためには、RO+ZnO+B2O3は、12〜27%がさらに好ましく、14〜25%がさらに好ましく、17〜23%がさらに好ましい。他方、SrO+BaOを3%以上含有するガラスにおいては、RO+ZnO+B2O3は、13〜27%がより好ましく、15〜25%がさらに好ましい。
R2Oは、ガラスの塩基性度を高め、清澄剤の酸化を容易にして、清澄性を発揮させる成分である。また、R2Oは、ガラスの熔解性向上および比抵抗低下を実現しやすくする成分であるので、含まれていてもよい。R2Oは必須成分ではないが、含有させると、比抵抗低下、清澄性向上および熔解性向上を実現できる。しかし、R2O量が多すぎると、Tgおよび歪点が過度に低下し、さらに、熱膨張係数が増大する場合もある。したがって、本実施形態のガラス基板を構成するガラスでは、R2Oは0〜0.8%が好ましく、0.01〜0.5%がより好ましく、0.1〜0.3%がさらに好ましい。
K2Oは、Li2OおよびNa2Oと比較して分子量が大きいため、ガラス基板から溶出しにくい。そのため、R2Oを含有させる場合には、K2Oをより高い比率で含有させることが好ましい。K2Oは、Li2Oよりも高い比率で含有される(K2O>Li2Oを満たす)ことが好ましい。K2Oは、Na2Oよりも高い比率で含有される(K2O>Na2Oを満たす)ことが好ましい。K2O/R2Oは、0.5以上が好ましく、0.6以上が好ましく、0.7以上がより好ましく、0.8以上がさらに好ましく、0.95以上がさらに好ましい。言い換えると、K2O/R2Oは、0.5〜1が好ましく、0.6〜1が好ましく、0.7〜1がより好ましく、0.8〜1がさらに好ましく、0.95〜1がさらに好ましい。
β−OH値=(1/X)log10(T1/T2)
X :ガラス肉厚(mm)
T1:参照波長2600nmにおける透過率(%)
T2:水酸基吸収波長2800nm付近における最小透過率(%)
熔解工程においては、所定のガラス組成となるように調合したガラス原料を少なくとも直接通電加熱を用いて熔解する。ガラス原料は、公知の材料から適宜選択できる。ガラス融液の1550℃における比抵抗が、50〜300Ω・cmの範囲となるように、ガラス原料の組成、特に、R2OとROの含有量を調整することが好ましい。R2Oの含有量を0.01〜0.8質量%、ROの含有量を3〜20質量%の範囲とすることで、1550℃における比抵抗を上記範囲内とすることができる。また、ガラス基板のβ-OHの値が0.1〜0.4mm-1となるように、熔解工程を調整することが好ましい。また、本発明の第1及び2の態様のガラス基板の製造においては、ROの含有量を3〜20質量%の範囲で調整することでも1550℃における比抵抗を調整でき、本発明の第3の態様のガラス基板の製造においては、ROの含有量を3〜25質量%の範囲で調整することでもガラス融液1550℃における比抵抗を調整できる。
成形工程では、熔解工程にて熔解した熔融ガラスを平板状ガラスに成形する。平板状ガラスへの成形方法は、例えば、ダウンドロー法、特にオーバーフローダウンドロー法が好適である。その他、フロート法、リドロー法、ロールアウト法などを適用できる。ダウンドロー法を採用することにより、フロート法など他の成形方法を用いた場合に比べ、得られたガラス基板の主表面が熱間成形された表面であるために、極めて高い平滑性を有しており、成形後のガラス基板表面の研磨工程が不要となるために、製造コストを低減することができ、さらに生産性も向上させることができる。さらに、ダウンドロー法を使用して成形したガラス基板の両主表面は均一な組成を有しているために、エッチング処理を行った際に、均一にエッチングを行うことができる。加えて、ダウンドロー法を使用して成形することで、マイクロクラックのない表面状態を有するガラス基板を得ることができるため、ガラス基板自体の強度も向上させることができる
徐冷時の条件を適宜調整することでガラス基板の熱収縮率をコントロールすることができる。ガラス基板の熱収縮率は上述のように、75ppm以下、より好ましくは60ppm以下であることが好ましく、75ppm以下、より好ましくは60ppm以下のガラス基板を製造するためには、例えば、ダウンドロー法を使用する場合は、平板状ガラスの温度を、TgからTg-100℃の温度範囲を20〜120秒で冷却するように、成形を行うことが望ましい。20秒未満であると、熱収縮量を十分低減することができない場合がある。一方、120秒を超えると、生産性が低下すると共に、ガラス製造装置(徐冷炉)が大型化してしまう。あるいは、平板状ガラスの平均の冷却速度を、TgからTg-100℃の温度範囲において、50〜300℃/分とするように徐冷(冷却)を行うことが好ましい。冷却速度が、300℃/分を超えると、熱収縮量を十分低減することができない場合がある。一方、50℃/分未満であると、生産性が低下すると共に、ガラス製造装置(徐冷炉)が大型化してしまう。冷却速度の好ましい範囲は、50〜300℃/分であり、50〜200℃/分がより好ましく、60〜120℃/分がさらに好ましい。他方、徐冷工程後に熱収縮低減処理(オフラインアニール)工程を別途設けることで、熱収縮率を小さくすることもできる。しかし、徐冷工程とは別にオフラインアニール工程を設けると、生産性が低下し、コストが高騰してしまうという問題点がある。そのため、上述したように、徐冷工程において平板状ガラスの冷却速度を制御するという熱収縮低減処理(オンラインアニール)を施すことによって、熱収縮率を所定範囲内におさめることがより好ましい。
表1に示すガラス組成になるように、実施例1〜25及び比較例1〜2の試料ガラスを以下の手順に従って作製した。得られた試料ガラスおよび試料ガラス基板について、失透温度、Tg、100〜300℃の範囲における平均熱膨張係数(α)、熱収縮率、密度、歪点、熔解温度(粘度が102.5dPa・sの時のガラス温度、表1中ではT(log(η=2.5)と表示)、液相粘度、1550℃における比抵抗、、エッチング速度を求め、表1に示す。
まず、表1に示すガラス組成となるように、通常のガラス原料である、シリカ,アルミナ,酸化ホウ素,炭酸カリウム,塩基性炭酸マグネシウム,炭酸カルシウム,炭酸ストロンチウム,二酸化スズおよび三酸化二鉄を用いて、ガラス原料バッチ(以下バッチと呼ぶ)を調合した。なお、ガラスで400gとなる量で調合した。
前記試料ガラスを、3mm角、長さ55mmの角柱形状に切断・研削加工して、試験片とした。この試験片に対して、ビーム曲げ測定装置(東京工業株式会社製)を用いて測定を行い、ビーム曲げ法(ASTM C−598)に従い、計算により歪点を求めた。
熱収縮率は、前記熱収縮測定用試料ガラス基板を550℃で2時間の熱処理が施された後のガラス基板の収縮量を用いて、以下の式にて求めた。
熱収縮率(ppm)
={熱処理前後のガラスの収縮量/熱処理前のガラスの長さ}×106
本実施例では、具体的に、以下の方法によって収縮量の測定を行った。
前記試料ガラスの熔融時の比抵抗は、HP社製 4192A LF インピーダンス・アナライザーを用いて、四端子法にて測定し、前記測定結果より1550℃での比抵抗値を算出した。
前記試料ガラスを粉砕し、2380μmのふるいを通過し、1000μmのふるい上に留まったガラス粒を得た。このガラス粒をエタノールに浸漬し、超音波洗浄した後、恒温槽で乾燥させた。乾燥させたガラス粒を、幅12mm、長さ200mm、深さ10mmの白金ボート上に、前記ガラス粒25gをほぼ一定の厚さになるように入れた。この白金ボートを、1080〜1320℃(あるいは1140℃〜1380℃)の温度勾配をもった電気炉内に5時間保持し、その後、炉から取り出して、ガラス内部に発生した失透を50倍の光学顕微鏡にて観察した。失透が観察された最高温度を、失透温度とした。
前記試料ガラスを、φ5mm、長さ20mmの円柱状に加工して、試験片とした。この試験片に対し、示差熱膨張計(Thermo Plus2 TMA8310)を用いて、昇温過程における温度と試験片の伸縮量を測定した。この時の昇温速度は5℃/minとした。前記温度と試験片の伸縮量との測定結果を元に100〜300℃の温度範囲における平均熱膨張係数およびTgを測定した。なお、本願でのTgとは、ガラス体を800℃に設定した別の電気炉の中で2時間保持した後、740℃まで2時間、更に660℃まで2時間で冷却後、その電気炉の電源を切り、室温まで冷却した試料ガラスについて測定した値である。
ガラスの密度は、アルキメデス法によって測定した。
前記試料ガラスの高温粘性は、白金球引き上げ式自動粘度測定装置を用いて測定した。
前記測定結果より、粘度102.5dPa・sの時の温度を算出し、熔融温度を得た。
前記高温粘性の測定結果より、前記失透温度での粘性を算出し、液相粘度を得た。表1には、10ndPa・sで示される液相粘度の指数部分nのみを表示する。
ガラス基板をHFの割合が1mol/kg、HClの割合が5mol/kgの混酸の40℃のエッチング液に1時間浸漬し、ガラス基板の一方の表面の厚み減少量(μm)を測定した。単位時間(1時間)当たりの減少量(μm)としてエッチングレート(μm/h)を求めた。
実施例7に示すガラス組成となるよう調合したガラス原料を、耐火煉瓦製の熔解槽と白金合金製の調整槽(清澄槽)を備えた連続熔解装置を用いて、1560〜1640℃で熔解し、1620〜1670℃で清澄し、1440〜1530℃で攪拌した後にオーバーフローダウンドロー法により厚さ0.7mmの薄板状に成形し、TgからTg-100℃の温度範囲内において、100℃/分の平均速度で徐冷を行い、磁気記録媒体用ガラス基板を得た。なお、前記記載の各特性については、得られたガラス基板を用いて測定した。
実施例11、13に示すガラス組成となるよう調合したガラス原料を用いて実施例26と同様にガラス基板を作製し、各特性を測定した。
上記のように得られた実施例27の組成のガラス基板の熔解温度は1610℃、β-OH値は0.20mm-1で、Tgは754℃、歪点は697℃、熱収縮率は51ppmであり、他の特性は実施例11と同等であった。また、実施例28の組成のガラス基板の熔解温度は1585℃、β-OH値は0.21mm-1で、Tgは761℃、歪点は710℃、熱収縮率は31ppmであり、他の特性は実施例13と同等であった。上記のように、上記ガラス基板は720℃以上のTgと、1680℃以下の熔融温度とを有しており、高い低粘特性温度および良好な熔解性とが実現されていた。さらに、熱収縮率および失透温度も、本発明のガラス基板の条件を満たしていた。なお、上記のように得られたガラス基板は、実施例11、13よりも、β-OH値が0.1mm-1程度大きいため、実施例7、13と比較するとTgは2〜3℃低くなるが、十分に高いTgを実現できている。
したがって、本実施例で得られたガラス基板は、磁気記録媒体にも用いることが可能な、優れた特性を備えたガラス基板であるといえる。
第1のガラス基板について、実施例を挙げて説明する。なお、第1のガラス基板とは、
モル%表示で、
SiO2 55〜80%
Al2O3 3〜20%
B2O3 3〜15%
RO(MgO、CaO、SrO、BaOの合量) 3〜25%
を含有し、
As2O3およびSb2O3を実質的に含有せず、かつ、
失透温度が1250℃以下であるガラスから構成され、
熱収縮率が75ppm以下である、
ガラス基板である。
表1−1および1−2に示すガラス組成になるように、実施例1−1〜1−24および比較例1−1〜1−6の試料ガラスを以下の手順に従って作製した。得られた試料ガラスおよび試料ガラス基板について、失透温度、Tg、100〜300℃の範囲における平均熱膨張係数、熱収縮率、密度、歪点、熔融温度(粘度が102.5dPa・sの時のガラス温度)、液相粘度、および、1550℃における比抵抗を測定した。
まず、表1に示すガラス組成となるように、通常のガラス原料である、シリカ、アルミナ、酸化ホウ素、炭酸カリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、二酸化スズおよび三酸化二鉄を用いて、ガラス原料バッチ(以下バッチと呼ぶ)を調合した。なお、ガラスで400gとなる量で調合した。
前記試料ガラスを粉砕し、2380μmのふるいを通過し、1000μmのふるい上に留まったガラス粒を得た。このガラス粒をエタノールに浸漬し、超音波洗浄した後、恒温槽で乾燥させた。乾燥させたガラス粒を、幅12mm、長さ200mm、深さ10mmの白金ボート上に、前記ガラス粒25gをほぼ一定の厚さになるように入れた。この白金ボートを、実施例1−1〜1−6、1−8〜1−24および比較例1−1、1−3〜1−5については1080〜1320℃、実施例1−7、比較例1−2および1−6については1140〜1380℃の温度勾配をもった電気炉内に5時間保持し、その後、炉から取り出して、ガラス内部に発生した失透を50倍の光学顕微鏡にて観察した。失透が観察された最高温度を、失透温度とした。
前記試料ガラスの熔融温度は、白金球引き上げ式自動粘度測定装置を用いて測定した。前記測定結果より、粘度102.5dPa・sの時の温度を算出し、熔融温度を得た。
前記熔融温度の測定結果より、前記失透温度での粘性を算出し、液相粘度を得た。
前記試料ガラスの熔融時の比抵抗は、HP社製 4192A LF インピーダンス・アナライザーを用いて、四端子法にて測定した。前記測定結果より、1550℃での比抵抗値を算出した。
前記試料ガラスを、φ5mm、長さ20mmの円柱状に加工して、試験片とした。この試験片に対し、示差熱膨張計(Thermo Plus2 TMA8310)を用いて、昇温過程における温度と試験片の伸縮量を測定した。この時の昇温速度は5℃/minとした。前記温度と試験片の伸縮量との測定結果を元に100〜300℃の温度範囲における平均熱膨張係数およびTgを測定した。なお、本願でのTgとは、ガラス体を800℃に設定した別の電気炉の中で2時間保持した後、740℃まで2時間、更に660℃まで2時間で冷却後、その電気炉の電源を切り、室温まで冷却した試料ガラスについて測定した値である。
前記試料ガラスを、3mm角、長さ55mmの角柱形状に切断・研削加工して、試験片とした。この試験片に対して、ビーム曲げ測定装置(東京工業株式会社製)を用いて測定を行い、ビーム曲げ法(ASTM C−598)に従い、計算により歪点を求めた。
前記試料ガラスを、鏡面研磨して5×30×30mmの板状サンプルを作製した。このサンプルを用いて、アルキメデス法によってガラスの密度を測定した。
熱収縮率は、前記熱収縮測定用試料ガラス基板に対して550℃で2時間の熱処理を施し、熱処理後のガラス基板の収縮量を用いて、以下の式にて求めた。
熱収縮率(ppm)
={熱処理後のガラス基板の収縮量/熱処理前のガラス基板の長さ}×106
ガラス基板をHFの割合が1mol/kg、HClの割合が5mol/kgの混酸の40℃のエッチング液に1時間浸漬し、ガラス基板の一方の表面の厚み減少量(μm)を測定した。単位時間(1時間)当たりの減少量(μm)としてエッチング速度(μm/h)を求めた。
実施例1−4に示す組成となるよう調合したガラス原料を、耐火煉瓦製の熔解槽と白金合金製の清澄槽(調整槽)を備えた連続熔解装置を用いて、1560〜1640℃で熔解し、1620〜1670℃で清澄し、1440〜1530℃で攪拌した後にオーバーフローダウンドロー法により厚さ0.7mmの薄板状に成形し、TgからTg−100℃の温度範囲内において、100℃/分の平均速度で冷却を行い、磁気記録媒体用ガラス基板を得た。なお、前記記載の各特性については、得られたガラス基板を用いて測定した。なお、基板状では測定出来ない特性(密度、歪点、膨張係数およびTg)に関しては、前記試料作製方法に準じて、前記ガラス基板を再熔融し、試料ガラスを作製して、特性を測定した。
実施例1−12に示すガラス組成となるよう調合したガラス原料を用いて実施例1−25と同様にしてガラス基板を作製し、各特性を測定した。
第2のガラス基板について、実施例を挙げて説明する。なお、第2のガラス基板とは、
モル%表示で、
SiO2 62〜74%
Al2O3 3〜20%
B2O3 3〜15%
CaO 7超〜16%
La2O3 0〜1%
BaO 0〜1未満%、
を含有し、
B2O3、P2O5およびCaOのモル%で示す含有率が、B2O3+P2O5=3〜15%、およびCaO/B2O3>1.2の関係を満たし、
歪点が665℃以上であり、かつ、
失透温度が1250℃以下であるガラスから構成される、
ガラス基板である。
第3のガラス基板について、実施例を挙げて説明する。なお、第3のガラス基板とは、
モル%表示で、
SiO2 65〜74%
Al2O3 3〜20%
B2O3 3〜8.9未満%
CaO 7超〜16%
La2O3 0〜1%
を含有し、
BaOを実質的に含有せず、
B2O3、P2O5およびCaOのモル%で示す含有率が、B2O3+P2O5=3〜9.5%、および、CaO/B2O3>1.2の関係を満たし、かつ、
失透温度が1250℃以下であるガラスから構成される、
ガラス基板である。
Claims (7)
- 質量%表示で、
SiO2 52〜78%、
Al2O33〜25%、
B2O33〜15%、
RO(但し、ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 3〜25%、
K 2 O 0.01〜0.4%、
Fe2O30.001〜0.8%、
Sb2O30〜0.3%を含有し、
As2O3は実質的に含有せず、
質量比(SiO2+Al2O3)/B2O3は7〜30の範囲であり、かつ、
質量比(SiO2+Al2O3)/ROは6以上である、
磁気記録媒体用ガラス基板。 - 質量比CaO/B2O3は1.1以上である、
請求項1に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。 - 歪点が680℃以上である、
請求項1または2に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。 - 失透温度が1230℃以下である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。 - 歪点が740℃以下である、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。 - 密度が2.5g/cm3未満である、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の磁気記録媒体用ガラス基板。 - 所定の組成に調合したガラス原料を少なくとも直接通電加熱を用いて熔解する熔解工程と、
前記熔解工程にて熔解した熔融ガラスを平板状ガラスに成形する成形工程と、
前記平板状ガラスを徐冷する工程であって、前記平板状ガラスの熱収縮率を低減するように前記平板状ガラスの冷却条件を制御する徐冷工程と、を含む、
請求項1〜6のいずれか1項に記載のガラス基板を製造する磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法。
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