JP6756653B2 - パラメータ同定装置、駆動システム、パラメータ同定方法及びプログラム - Google Patents

パラメータ同定装置、駆動システム、パラメータ同定方法及びプログラム Download PDF

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Description

本発明は、パラメータ同定装置、駆動システム、パラメータ同定方法及びプログラムに関する。
モータを用いて負荷を駆動させる駆動システムの設計において、制御性能を向上させるためにはフィードバック制御では限界があり、指令信号に対する応答特性が高いフィードフォワード制御を行う必要がある。また、フィードフォワード制御を実現するためには、制御側が、制御対象(即ち、モータ及び負荷を有する機械系)を模したモデルの逆モデルを持つ必要があるが、このフィードフォワード制御用のモデルと実際の制御対象の特性との間に誤差があると、制御性能の向上は図れない。
そのため、制御性能の高いフィードフォワード制御を実現するためには、制御対象を正確に模したモデルを得る必要がある。
特許文献1では、2慣性系モデル(2質点系モデル)の逆モデル特性に基づいてフィードフォワード制御を行う方法が開示されている。2慣性系モデルとは、例えば、モータと、負荷と、当該モータ及び負荷を連結する連結部材(ボールねじ、歯車等)とを有する機械系を模してなるモデルである。このような2慣性系モデルを構築することで、負荷とモータとを有する機械系の特性をより正確に模すことができる。
特開2002−023852号公報
従来の2慣性系モデルは、慣性(イナーシャ)、粘性といった線形要素のみであり、モータ側の摩擦、負荷側の摩擦、連結部材に生じるガタ等の非線形要素は含んでいない場合が多い。非線形要素に対しては別途、経験的な調整で対応しているのが現状である。
このような非線形要素を含まない2慣性系モデルは、モータと負荷とを有する機械系を正確に模しているとは言えない。したがって、制御対象を正確に模したモデルを得ることができず、そのため、制御性能の高い駆動システムを実現することができない。
本発明の目的は、上記課題に鑑みてなされたものであって、モータ及び負荷を有する機械系を精度よく模したモデルを得ることができるパラメータ同定装置、駆動システム、パラメータ同定方法及びプログラムを提供することにある。
本発明の第1の態様によれば、モータと負荷とが連結部材にて連結されてなる機械系を模した2慣性系モデルのモデルパラメータを同定するパラメータ同定装置は、前記モータに対するトルク指令と、前記モータの角度及び角速度の実測値と、前記負荷の角度及び角速度の実測値と、を取得するデータ取得部と、取得された前記トルク指令と、前記モータの角度及び角速度の実測値と、前記負荷の角度及び角速度の実測値と、に基づいて複数の位相面図を生成する位相面図生成部と、生成された複数の前記位相面図に基づいて、前記モータの慣性、粘性、摩擦、前記負荷の慣性、粘性、摩擦、前記連結部材の剛性、及び、前記連結部材の不感帯幅を示すモデルパラメータを同定するパラメータ同定部と、を備える。前記パラメータ同定部は、前記負荷の小振幅動作時に取得された前記位相面と、前記負荷の大振幅動作時に取得された前記位相面との両方に基づいて、前記モデルパラメータを同定する。
また、本発明の第2の態様によれば、前記パラメータ同定部は、前記負荷の小振幅動作時に取得された前記位相面に基づいて、少なくとも、前記モータの摩擦、前記負荷の摩擦を示すモデルパラメータを同定し、前記負荷の大振幅動作時に取得された前記位相面に基づいて、少なくとも、前記モータの慣性、粘性、前記負荷の慣性、粘性を示すモデルパラメータを同定する。
また、本発明の第3の態様によれば、前記位相面図生成部は、少なくとも、前記負荷の角度と前記トルク指令との関係を示す位相面図と、前記モータ又は前記負荷の角速度と前記トルク指令との関係を示す位相面図と、前記負荷の角度と前記連結部材のねじれ角度との関係を示す位相面図と、前記モータ又は前記負荷の角速度と前記連結部材のねじれ角度との関係を示す位相面図と、を生成する。
また、本発明の第4の態様によれば、前記位相面図生成部は、更に、前記トルク指令と前記連結部材のねじれ角度との関係を示す位相面図を生成する。
また、本発明の第5の態様によれば、駆動システムは、上述のパラメータ同定装置と、前記機械系と、前記負荷の目標とする角度に対する現在の角度の偏差に基づいて、前記トルク指令を算出するフィードバック制御部と、前記パラメータ同定装置によって同定された前記モデルパラメータに基づいて、前記トルク指令を算出するフィードフォワード制御部と、を備える。
また、本発明の第6の態様によれば、パラメータ同定方法は、モータと負荷とが連結部材にて連結されてなる機械系を模した2慣性系モデルのモデルパラメータを同定する方法であって、前記モータに対するトルク指令と、前記モータの角度及び角速度の実測値と、前記負荷の角度及び角速度の実測値と、を取得するデータ取得ステップと、取得された前記トルク指令と、前記モータの角度及び角速度の実測値と、前記負荷の角度及び角速度の実測値と、に基づいて複数の位相面図を生成する位相面図生成ステップと、生成された複数の前記位相面図に基づいて、前記モータの慣性、粘性、摩擦、前記負荷の慣性、粘性、摩擦、前記連結部材の剛性、及び、前記連結部材の不感帯幅を示すモデルパラメータを同定するパラメータ同定ステップと、を有し、前記パラメータ同定ステップは、前記負荷の小振幅動作時に取得された前記位相面と、前記負荷の大振幅動作時に取得された前記位相面との両方に基づいて、前記モデルパラメータを同定するステップを含む。
また、本発明の第7の態様によれば、プログラムは、モータと負荷とが連結部材にて連結されてなる機械系を模した2慣性系モデルのモデルパラメータを同定するパラメータ同定装置のコンピュータを、前記モータに対するトルク指令と、前記モータの角度及び角速度の実測値と、前記負荷の角度及び角速度の実測値と、を取得するデータ取得部、取得された前記トルク指令と、前記モータの角度及び角速度の実測値と、前記負荷の角度及び角速度の実測値と、に基づいて複数の位相面図を生成する位相面図生成部、生成された複数の前記位相面図に基づいて、前記モータの慣性、粘性、摩擦、前記負荷の慣性、粘性、摩擦、前記連結部材の剛性、及び、前記連結部材の不感帯幅を示すモデルパラメータを同定するパラメータ同定部、として機能させ前記パラメータ同定部は、前記負荷の小振幅動作時に取得された前記位相面と、前記負荷の大振幅動作時に取得された前記位相面との両方に基づいて、前記モデルパラメータを同定する。
上述のパラメータ同定装置、駆動システム、パラメータ同定方法及びプログラムによれば、モータ及び負荷を有する機械系を精度よく模したモデルを得ることができる。
第1の実施形態に係る駆動システムの全体構成を示す図である。 第1の実施形態に係る機械系の伝達特性を示すブロック線図である。 第1の実施形態に係る機械系のモータ側及び負荷側の摩擦特性を説明する図である。 第1の実施形態に係る機械系の連結部材における不感帯の特性を説明する図である。 第1の実施形態に係る駆動システムの機能構成を示す図である。 第1の実施形態に係るパラメータ同定装置の機能構成を示す図である。 第1の実施形態に係るパラメータ同定装置の処理フローを示す図である。 第1の実施形態に係るパラメータ同定装置の処理を説明するための第1図である。 第1の実施形態に係るパラメータ同定装置の処理を説明するための第2図である。 第1の実施形態に係るパラメータ同定装置の処理を説明するための第3図である。 第1の実施形態に係るパラメータ同定装置の処理を説明するための第4図である。 第1の実施形態に係るパラメータ同定装置の処理を説明するための第5図である。 第1の実施形態に係るパラメータ同定装置の処理を説明するための第6図である。 第1の実施形態に係るパラメータ同定装置の処理を説明するための第7図である。 第1の実施形態に係るパラメータ同定装置の処理を説明するための第8図である。 第1の実施形態に係るパラメータ同定装置の処理を説明するための第9図である。 第1の実施形態に係るパラメータ同定装置の処理を説明するための第10図である。
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態に係る駆動システムについて、図1〜図17を参照しながら詳細に説明する。
(全体構成)
図1は、第1の実施形態に係る駆動システムの全体構成を示す図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係る駆動システム9は、制御装置1と、当該制御装置1によって制御される機械系2とを備えている。
機械系2は、モータ20と、負荷21と、モータ20及び負荷21を機械的に連結する連結部材22と、を有してなる。機械系2は、モータ20が回転駆動することで負荷21が所望の位置(角度)に運ばれる駆動機構であって、例えば、工作機械などである。モータ20は、内部に回転角度、回転速度を検出可能な回転検出器(エンコーダ)を有し、精密な位置決めを実現可能なサーボモータである。また、連結部材22は、例えば、ギア、ボールねじ、ボールベアリング等の部材である。
図1に示すように、制御装置1は、図示しない上位装置から負荷21の目標角度を示す負荷角度指令θREFを受け付ける。制御装置1は、受け付けた負荷角度指令θREFに応じてモータ20に発生すべきトルクτを演算し、当該トルクτを示すトルク指令τをモータ20に出力する。モータ20は、受け付けたトルク指令τに示されるトルクτで回転駆動し、当該トルクτが連結部材22を通じて、モータ20側から負荷21側へと伝達する。その結果、負荷21に伝達されたトルクτ’に応じて当該負荷21が回転駆動する。このようにして、制御装置1により、負荷21の回転角度(以下、単に「角度」とも記載する。)が所望の目標角度θREF(負荷角度指令θREF)に一致するような制御がなされる。
なお、本実施形態においては、説明の簡略化のため、モータ20は、制御装置1からトルク指令τを受け付けた場合に、当該トルク指令τどおりのトルクτを出力することができるものとして説明する。
第1の実施形態に係る制御装置1は、いわゆるフルクローズドシステムであって、モータ20の角速度ωと、負荷21の角度θとの実測値(検出値)に基づいてフィードバック制御を行う。
ここで、上述した通り、機械系2を構成するモータ20及び負荷21には、それぞれ、図示しない回転検出器(エンコーダ)が設置されている。制御装置1は、当該回転検出器を通じて、モータ20の角度θ、負荷21の角度θを検出する。また、制御装置1は、取得したモータ20の角度θの検出値を内部で時間微分することで、モータ20の角速度ωを検出可能とする。また、制御装置1は、取得した負荷21の角度θの検出値を内部で時間微分することで、負荷21の角速度ωを検出可能とする。
なお、以下の説明において、モータ20の角速度の検出値を「モータ角速度ω」とも記載し、モータ20の角度の検出値を「モータ角度θ」とも記載する。また、負荷21の角速度の検出値を「負荷角速度ω」とも記載し、負荷21の角度の検出値を「負荷角度θ」とも記載する。
また、制御装置1は、更に、機械系2を2慣性系と見なして模した2慣性系モデル(後述)を予め有しており、当該2慣性系モデルを用いてフィードフォワード制御を行う。
なお、機械系2における負荷21が、回転系ではなく直動系の場合、負荷21に対する制御対象パラメータは、厳密には「角度」、「角速度」ではなく、「位置」、「速度」となる。しかし、この場合、制御装置1は、2慣性系として、モータ20の「角度」、「角速度」と同じ次元で取り扱うために、負荷の「位置」、「速度」を、モータ軸換算値としての「角度」、「角速度」に逐次変換して各種制御を行う。
機械系2を2慣性系と見なした場合において、機械系2固有の特性を表すパラメータ群は、モータ20側の特性を示すパラメータ、負荷21側の特性を示すパラメータ、及び、モータ20と負荷21とを機械的に連結して動力を伝達する連結部材22の特性を示すパラメータに大別される。具体的には、モータ20側の特性を示すパラメータとして、モータ慣性モーメントJ、モータ粘性係数D、モータ摩擦トルクτfM(モータの摩擦)がある。また、負荷21側の特性を示すパラメータとして、負荷慣性モーメントJ、負荷粘性係数D、負荷摩擦トルクτfL(負荷の摩擦)がある。更に、連結部材22の特性を示すパラメータとして、ねじれ剛性係数K、ねじれ粘性係数D、不感帯幅BLがある。
(機械系の伝達特性)
図2は、第1の実施形態に係る機械系の伝達特性を示すブロック線図である。
本実施形態に係る機械系2(図1参照)をモータ20、負荷21及び連結部材22からなる2慣性系の機械と見なすことで、当該機械系2における入力と出力との関係を、図2に示すような伝達関数を用いたブロック線図で表すことができる。
図2に示すように、モータ20は、制御装置1(図1)から受け付けたトルク指令τに基づいて自身が発生させたトルクτを入力とし、モータ角度θを出力とする。モータ20が発生させたトルクτは、モータ20に生じる摩擦であるモータ摩擦トルクτfM、及び、連結部材22を通じて負荷21に伝達するトルクτ’が差し引かれた後、伝達要素1/(Js+D)を通じてモータ角速度ωに変換され、更に伝達要素1/s(積分要素)を通じてモータ角度θに変換される。
ここで、モータ摩擦トルクτfMは、モータ20の速度反転時(モータ角速度ωの符号反転時)に符号のみが反転するクーロン摩擦成分だけでなく、モータ20の速度反転後の変位θ(モータ角速度ωのゼロからの積分値)に依存して非線形に変化する非線形摩擦成分を含んでいる。モータ摩擦トルクτfM[θ]は、この非線形摩擦成分をモデル化して規定し、モータ角速度ωを入力変数とするモータ摩擦特性関数Gを通じて得られる。モータ摩擦特性関数Gの詳細については後述する。
同様に、負荷21は、モータ20から連結部材22を通じて伝達されたトルクτ’(=(K+Ds)(θ−θ−BKLS))を入力とし、負荷角度θを出力とする。負荷21に入力されたトルクτ’は、負荷21に生じる摩擦である負荷摩擦トルクτfLが差し引かれた後、伝達要素1/(Js+D)を通じて負荷角速度ωに変換され、更に伝達要素1/sを通じて負荷角度θに変換される。
ここで、負荷摩擦トルクτfLも同様に、負荷21の速度反転後の変位θ(負荷角速度ωのゼロからの積分値)に依存して非線形に変化する非線形摩擦成分を含んでいる。負荷摩擦トルクτfL[θ]は、この非線形摩擦成分をモデル化して規定し、負荷角速度ωを入力変数とする負荷摩擦特性関数Gを通じて得られる。負荷摩擦特性関数Gの詳細については後述する。
また、図2に示すように、連結部材22は、モータ角度θと負荷角度θとの偏差(以下、「ねじれ角度(θ−θ)」とも記載する。)を入力とし、ねじれ角度(θ−θ)に応じたトルクτ’を出力とする伝達系である。入力されたねじれ角度(θ−θ)は、不感帯(以下、「ガタ」とも記載する。)における非線形性を表す不感帯特性関数Fと、伝達要素K及び伝達要素Dsと、を通じて、モータ20及び負荷21に印加されるトルクτ’に変換される。
ここで、不感帯特性関数Fとは、不感帯幅BLで規定される非線形関数である。不感帯特性関数Fは、連結部材22のねじれ角度(θ−θ)を入力変数とし、当該ねじれ角度(θ−θ)からガタの変位(以下、「ガタ変位BKLS」とも記載する。)を差し引いた角度を出力する。この不感帯特性関数Fは、連結部材22のねじれ角度(θ−θ)のうちガタ変位BKLS分は、モータ20から負荷21へのトルクの伝達に寄与しないことを表している。不感帯特性関数Fの詳細については後述する。
また、ねじれ剛性係数Kとは、連結部材22のねじれ方向についての剛性の度合いを示すパラメータであって、連結部材22のばね定数に相当する。即ち、ねじれ剛性係数Kは、負荷21に印加されるトルクτ’のうち、連結部材22のねじれ角度(θ−θ)に比例する成分を与える。
また、ねじれ粘性係数Dとは、連結部材22のねばりの度合いを示すパラメータであって、負荷21に印加されるトルクτ’のうち、連結部材22におけるモータ角速度ωと負荷角速度ωとの偏差(以下、「ねじれ角速度(ω−ω)」とも記載する。)に比例する成分を与える。
以上の通り、制御装置1が制御対象とする機械系2は、複数のパラメータ群及び非線形関数によって、2慣性系モデルとして特徴づけられる。
ここで、モデルパラメータ群とは、上述したモータ慣性モーメントJ、モータ粘性係数D、負荷慣性モーメントJ、負荷粘性係数D、ねじれ剛性係数K、ねじれ粘性係数D、及び、不感帯幅BLである。
また、非線形関数とは、モータ角速度ωの積分値(変位θ)に応じたモータ摩擦トルクτfM[θ]を与えるモータ摩擦特性関数G、負荷角速度ωの積分値(変位θ)に応じた負荷摩擦トルクτfL[θ]を与える負荷摩擦特性関数G、及び、ねじれ角度(θ−θ)を入力とし、当該ねじれ角度(θ−θ)からガタ変位BKLS[θ−θ](後述)を差し引いた角度を出力する不感帯特性関数Fである。
また、機械系2への入力であるトルクτは、トルク指令τから制御装置1自身が観測可能なパラメータである。機械系2からの出力(検出値)であるモータ角度θ及び負荷角度θは、上述の回転検出器を通じて、制御装置1が観測可能なパラメータである。
(摩擦特性)
図3は、第1の実施形態に係る機械系のモータ側及び負荷側の摩擦特性を説明する図である。
図3(a)は、モータ摩擦トルクτfM[θ]及び負荷摩擦トルクτfL[θ]の各々に生じる非線形摩擦特性を示すグラフである。
良く知られているクーロン摩擦は、物体の速度(モータ角速度ω、負荷角速度ω)の方向(正、負の符号)に依存してその方向(正、負の符号)のみが変化し、その量は、速度(ω)、変位(θ)に対しては変動しないものとして知られている。しかしながら、モータ20、負荷21において、例えば、ボールベアリング等の転がり要素が含まれる場合には、通常のクーロン摩擦とは特性が異なる“転がり摩擦”を考慮する必要がある。
ここで、転がり摩擦には、速度反転直後において転がり要素の一部が有効に転動しない“微動領域”と、全ての転がり要素が有効に転動する“粗動領域”とに分けて考慮される。
少なくとも一部の転がり要素において転動が有効に生じていない“微動領域”においては、速度反転後の変位(モータ角速度ω、負荷角速度ωのゼロからの積分値)の度合いに応じて見かけのばね定数が動的に変化する非線形ばね特性を有しており、図3(a)に示すようなヒステリシスカーブを描く。
また、全ての転がり要素が有効に転動する“粗動領域”においては、クーロン摩擦による挙動が支配的となり、速度に対する静的特性を示す。即ち、図3(a)に示すように、モータ20の摩擦(モータ摩擦トルクτfM[θ])は、速度反転後の変位θが所定以上となった時点で、モータクーロン摩擦トルクτfMcで飽和する。また、負荷21の摩擦(負荷摩擦トルクτfL[θ])は、速度反転後の変位θが所定以上となった時点で、負荷クーロン摩擦トルクτfLcで飽和する。ここで、モータクーロン摩擦トルクτfMc及び負荷クーロン摩擦トルクτfLcは、モータ摩擦特性関数G及び負荷摩擦特性関数Gを規定するパラメータである。
本実施形態においては、モータ摩擦特性関数G及び負荷摩擦特性関数Gは、図3(a)に示す非線形摩擦特性を折れ線近似してなるGMS(Generalized Maxwell Slip)モデルに基づいて規定される。ここで、GMSモデルとは、N個の特性の異なるブロック(転がり要素)とばねとが並列に接続されている状態を模したものである。図3(b)に示すグラフ(折れ線)を構成する複数の直線の各々が、N個のブロックのうちのいくつまでが転がりきっている(有効に転動している)状態か、を表現している。
図3(b)に示すように、モータ摩擦特性関数Gは、変位0〜θ、θ〜θ、θ〜θ、θ〜θの各々において採用すべき直線の傾きK、K、K、K、及び、オフセット(変位0における切片)τfM1(=−τfMc)、τfM2、τfM3、τfM4、τfM5(=τfMc)によって規定される。
なお、横軸の変位θは、モータ角速度ωの速度反転時(ω=0)からの積分値で与えられる。
なお、図示を省略するが、負荷摩擦特性関数Gも、図3(b)に示すモータ摩擦特性関数Gと同様に規定される。即ち、負荷摩擦特性関数Gは、変位θ(負荷角速度ωの速度反転時(ω=0)からの積分値)に応じた直線の傾き、及び、オフセット(−τfLc〜+τfLcの範囲)によって規定される。
(不感帯の特性)
図4は、第1の実施形態に係る機械系の連結部材における不感帯の特性を説明する図である。
図4(a)に示す不感帯特性関数Fは、モータ20と負荷21との間に設けられた連結部材22のガタ(不感帯)の幅を示す不感帯幅BLに基づく伝達特性を表している。
不感帯特性関数Fは、不感帯幅BLによって規定される非線形特性であって、連結部材22のねじれ角度(θ−θ)を入力変数とする。図4(a)に示すように、連結部材22のねじれ角度(θ−θ)の絶対値が不感帯幅BL以下の場合(−BL≦θ−θ≦+BL)、ガタ出力はゼロとなる。即ち、この場合、ねじれ角度(θ−θ)がガタの幅内にあるため、モータ20から負荷21へトルクが伝達されない。他方、連結部材22のねじれ角度(θ−θ)の絶対値が不感帯幅BLよりも大きい場合(θ−θ<−BL,θ−θ>+BL)、ガタ出力は、ねじれ角度(θ−θ)から不感帯幅BLだけ小さい値(θ−θ+BL(θ−θ<−BL)、又は、θ−θ−BL(θ−θ>+BL))となる。つまり、連結部材22の特性(ねじれ剛性係数K、ねじれ粘性係数D)を通じてトルクの伝達に寄与する成分は、ねじれ角度(θ−θ)全体から不感帯幅BLが除かれた部分だけであることが表現されている。
また、図4(b)に示すガタ変位関数F’は、ガタ変位BKLS[θ−θ]とねじれ角度(θ−θ)との関係をしている。
ガタ変位BKLS[θ−θ]は、不感帯幅BL(−BL〜+BL)の幅を有する不感帯における変位量を示すパラメータであって、ねじれ角度(θ−θ)に対し、図4(b)に示すような特性を有している。即ち、図4(a)に示すガタ出力は、ガタ変位BKLS[θ−θ]を用いて“θ−θ―BKLS”と表すことができる。
図4(b)に示すように、ガタ変位BKLS[θ−θ]は、ねじれ角度(θ−θ)が不感帯の最小値(−BL)よりも小さい範囲では、ガタ変位BKLS[θ−θ]は最小値(−BL)をとり、ねじれ角度(θ−θ)が不感帯の最大値(+BL)よりも大きい範囲では、ガタ変位BKLS[θ−θ]は最大値(+BL)をとる。また、ねじれ角度(θ−θ)が不感帯の最小値(−BL)以上かつ最大値(+BL)以下の範囲においては、ガタ変位BKLS[θ−θ]は、ねじれ角度(θ−θ)と同一の値を有する特性となる。
(駆動システムの機能構成)
図5は、第1の実施形態に係る駆動システムの機能構成を示す図である。
図5に示すように、第1の実施形態に係る駆動システム9は、制御装置1と、機械系2と、パラメータ同定装置3と、を備えている。
制御装置1は、フィードバック制御部10と、フィードフォワード制御部11と、を備えている。
フィードバック制御部10は、回転検出器を通じて観測されるモータ角速度ωと、負荷角度指令θREFにより指定される負荷21の目標角度θREF及び観測される現在の負荷角度θの偏差(θREF−θ)と、に基づいて、モータ20の制御を行う。
具体的には、フィードバック制御部10は、目標角度θREFと負荷角度θとの偏差(θREF−θ)をゼロとするためのトルクを算出し、その算出結果を示すトルク指令を出力する。その際、フィードバック制御部10は、回転検出器を通じて観測されたモータ角速度ωを参照して、適切かつ迅速なフィードバック制御がなされるようなトルクを算出する。
フィードフォワード制御部11は、機械系2を模した2慣性系モデルMODを内部に有している。この2慣性系モデルMODは、複数のモデルパラメータ群からなり、図2に示す機械系2の逆モデルとなるように構成されている。
具体的には、複数のモデルパラメータ群とは、モデルモータ慣性モーメントJM0、モデルモータ粘性係数DM0、モデルモータ摩擦トルクτfM0、モデル負荷慣性モーメントJL0、モデル負荷粘性係数DL0、モデル負荷摩擦トルクτfL0、モデル不感帯幅BL、及び、モデルねじれ剛性係数KR0である。
なお、本実施形態において、連結部材22のねじれ粘性係数Dについては、運動の影響が十分に小さいものとみなし、モデル化の対象外としている。
2慣性系モデルMODは、機械系2を模して図2のように構築されたモデルの逆モデルであり、負荷21の目標角度θREFが入力された時に、機械系2を通じて、負荷21を当該目標角度θREFに位置させるために与えるべきトルクτを演算して出力する。2慣性系モデルMODをなす上記モデルパラメータ群(JM0、DM0、τfM0、JL0、DL0、τfL0、BL、KR0)は、機械系2の実際の特性を表すパラメータ群(J、D、τfM、J、D、τfL、BL、K)の各々に対応している。
ここで、モデルパラメータ群(JM0、DM0、τfM0、JL0、DL0、τfL0、BL、KR0)と、機械系2の実際の特性を示すパラメータ群(J、D、τfM、J、D、τfL、BL、K)との間に誤差が全くないと仮定すると、2慣性系モデルMODは、現実の機械系2の逆モデルに完全に一致するものとなる。そうすると、フィードフォワード制御部11が目標角度θREF及び2慣性系モデルMODに基づいて算出したトルクを機械系2に出力して駆動した結果、機械系2を通じて実際に得られる負荷角度θは、完全に目標角度θREFに一致するはずである(θ=θREF)。このように、フィードフォワード制御部11は、予め機械系2を模して規定された2慣性系モデルMODに基づいて、機械系2固有の特性を織り込みながらトルクを算出することで、フィードバック制御よりも応答性が高いフィードフォワード制御において、より高精度な制御を実現することができる。
なお、図5に示すように、制御装置1は、フィードバック制御部10により算出されたトルクと、フィードフォワード制御部11により算出されたトルクと、を加算して得られるトルクτ(トルク指令τ)を機械系2(モータ20(図1、図2))に向けて出力する。
以上のように、本実施形態に係る制御装置1は、モータ20、負荷21及び連結部材22を具備する機械系2を模した2慣性系モデルMODをなす複数のモデルパラメータ群(JM0、DM0、τfM0、JL0、DL0、τfL0、BL、KR0)に基づいて、モータ20に発生させるべきトルクτを算出し、トルク指令τを出力する。
フィードフォワード制御部11において、モデルパラメータ群(JM0、DM0、τfM0、JL0、DL0、τfL0、BL、KR0)は、予め、機械系2の特性を表すパラメータとして想定される値で規定されている。しかしながら、実際には、モデルパラメータ群(JM0、DM0、τfM0、JL0、DL0、τfL0、BL、KR0)と、機械系2固有のパラメータ群(J、D、τfM、J、D、τfL、BL、K)との間に誤差があると、精度の高いフィードフォワード制御を実現することができない。
そこで、本実施形態に係る駆動システム9は、上述の複数のモデルパラメータ群を精度良く同定可能なパラメータ同定装置3を備えている。
図5に示すように、パラメータ同定装置3は、機械系2におけるモータ角度θ、モータ角速度ω、負荷角度θ及び負荷角速度ωの実測値を入力する。また、パラメータ同定装置3は、制御装置1から機械系2に向けて出力されるトルク指令τを入力する。パラメータ同定装置3は、上記4個の実測値及びトルク指令τに基づいて、上述のモデルパラメータ群(JM0、DM0、τfM0、JL0、DL0、τfL0、BL、KR0)を同定する。
以下、パラメータ同定装置3の機能について詳細に説明する。
(パラメータ同定装置の機能構成)
図6は、第1の実施形態に係るパラメータ同定装置の機能構成を示す図である。
図6に示すように、パラメータ同定装置3は、データ取得部30と、位相面図生成部31と、パラメータ同定部32と、角度指令出力部33を備えている。
データ取得部30は、モータ20に対するトルク指令τと、モータ20の角度(モータ角度θ)及び角速度(モータ角速度ω)の実測値と、負荷21の角度(負荷角度θ)及び角速度(負荷角速度ω)の実測値と、を取得する。
位相面図生成部31は、データ取得部30によって取得されたトルク指令τと、モータ20の角度及び角速度の実測値と、負荷21の角度及び角速度の実測値と、に基づいて複数の位相面図を生成する。
ここで、図6に示すように、位相面図生成部31は、連結部材22のねじれ角度(θ−θ)とトルク指令τとの関係を示す「ねじれ角度−トルク指令」位相面図P0a、P0bを生成する。
また、位相面図生成部31は、モータ20及び負荷21の角度θとトルク指令τとの関係を示す「角度−トルク指令」位相面図P1a、P1bを生成する。
また、位相面図生成部31は、モータ20及び負荷21の角速度ωとトルク指令τとの関係を示す「角速度−トルク指令」位相面図P2a、P2bを生成する。
また、位相面図生成部31は、モータ20及び負荷21の角度θと連結部材22のねじれ角度(θ−θ)との関係を示す「角度−ねじれ角度」位相面図P3a、P3bを生成する。
また、位相面図生成部31は、モータ20及び負荷21の角速度ωと連結部材22のねじれ角度(θ−θ)との関係を示す「角速度−ねじれ角度」位相面図P4a、P4bを生成する。
パラメータ同定部32は、位相面図生成部31によって生成された複数の位相面図に基づいて、上述の2慣性系モデルMODのモデルパラメータ群(JM0、DM0、τfM0、JL0、DL0、τfL0、BL、KR0)を同定する。
角度指令出力部33は、制御装置1に対し、パラメータ同定用の負荷角度指令θREFを出力する。具体的には、角度指令出力部33は、負荷21を小振幅動作させるための負荷角度指令θREF1と、負荷21を大振幅動作させるための負荷角度指令θREF2を出力する。ここで、負荷角度指令θREF1は、機械系2の運動においてモータ20及び負荷21の慣性、粘性の影響を無視できる程度に小さい振幅で、負荷21を正弦波運動させる指令である。他方、負荷角度指令θREF2は、機械系2の運動においてモータ20及び負荷21の慣性、粘性の影響が十分に表れる程度に大きい振幅で、負荷21を正弦波運動させる指令である。
(パラメータ同定装置の処理フロー)
図7は、第1の実施形態に係るパラメータ同定装置の処理フローを示す図である。
また、図8〜図17は、それぞれ、第1の実施形態に係るパラメータ同定装置の処理を説明するための第1図〜第10図である。
図7に示す処理フローは、例えば、機械系2の実運転の開始前等において、パラメータ同定装置3(図5、図6)が2慣性系モデルMOD(図5)についてのパラメータ同定を行う際に実行される。
まず、パラメータ同定装置3の角度指令出力部33は、小振幅動作用の負荷角度指令θREF1を出力することで、負荷21の角度(負荷角度θ)を小振幅かつ低周波数で正弦波運動させる(ステップS01)。
次に、パラメータ同定装置3のデータ取得部30は、小振幅かつ低周波数で正弦波運動中の機械系2から、トルク指令τ、モータ角速度ω、モータ角度θ、負荷角速度ω及び負荷角度θの実測値を取得する(ステップS02)。
次に、パラメータ同定装置3の位相面図生成部31は、ステップS02で取得された実測値から複数の位相面図を生成する(ステップS03)。
次に、パラメータ同定装置3のパラメータ同定部32は、ステップS03で生成された各種位相面図に基づいて、2慣性系モデルMODをなす各種モデルパラメータのうち、モデルモータ摩擦トルクτfM0、モデル負荷摩擦トルクτfL0、モデル不感帯幅BL及びモデルねじれ剛性係数KR0を同定する(ステップS04)。
次に、パラメータ同定装置3の角度指令出力部33は、大振幅動作用の負荷角度指令θREF2を出力することで、負荷21の角度(負荷角度θ)を大振幅で正弦波運動させる(ステップS05)。
次に、パラメータ同定装置3のデータ取得部30は、大振幅で正弦波運動中の機械系2から、トルク指令τ、モータ角速度ω、モータ角度θ、負荷角速度ω及び負荷角度θの実測値を取得する(ステップS06)。
次に、パラメータ同定装置3の位相面図生成部31は、ステップS06で取得された実測値から複数の位相面図を生成する(ステップS07)。
次に、パラメータ同定装置3のパラメータ同定部32は、ステップS07で生成された各種位相面図に基づいて、2慣性系モデルMODをなす各種モデルパラメータのうち、モデルモータ慣性モーメントJM0、モデルモータ粘性係数DM0、モデル負荷慣性モーメントJL0、モデル負荷粘性係数DL0を同定する(ステップS08)。
ここで、図2に示すブロック線図に基づいて、モータ20についての運動方程式である式(1)、及び、負荷21についての運動方程式である式(2)を得ることができる。
Figure 0006756653
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式(1)、(2)より、トルク指令τについての式(3)及び連結部材22のねじれ角度(θ−θ)についての式(4)を得ることができる。
Figure 0006756653
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式(3)において、全体慣性モーメントJは、モータ慣性モーメントJと負荷慣性モーメントJとの和である(J=J+J)。また、全体粘性係数Dは、モータ粘性係数Dと負荷粘性係数Dとの和である(D=D+D)。また、式(3)、(4)においては、角度θ=θ≒θとしている。
また、負荷角度指令θREF1(及びθREF2)は、正弦波であるから、角度θを“θ=θ・sin(2πf・t)”とすると、角速度sθ(=ω)は、“sθ=(2πf)θ・cos(2πf・t)”、角加速度sθは、“sθ=−(2πf)θ・sin(2πf・t)”である。したがって、角速度sθ(=ω)は、角度θの関数として、式(5)のように表される。
Figure 0006756653
また、角加速度sθは、角度θの関数として式(6)のように表され、また、角速度ωの関数として式(7)のように表される。
Figure 0006756653
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式(5)〜(7)と、上述の式(3)とを用いて、トルク指令τと角度θとの関係を示す式(8)と、トルク指令τと角速度ωとの関係を示す式(9)とを得る。
Figure 0006756653
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なお、式(9)において“ω=θ・2πf”としている。
また、式(5)〜(7)と、上述の式(4)とを用いて、ねじれ角度(θ−θ)と角度θとの関係を示す式(10)と、ねじれ角度(θ−θ)と角速度ωとの関係を示す式(11)とを得る。
Figure 0006756653
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次に、図8〜図12、並びに、上述の式(8)〜式(11)を参照しながら、小振幅動作時において位相面図生成部31が生成する位相面図、及び、パラメータ同定部32が行うパラメータ同定処理(ステップS03、ステップS04)について詳細に説明する。
ステップS03において、位相面図生成部31は、ステップS02で取得されたねじれ角度(θ−θ)の実測値と、トルク指令τとを紐付けて、ねじれ角度(θ−θ)を横軸にとりトルク指令τを縦軸にとる位相面図にプロットする。ここで、「ねじれ角度(θ−θ)の実測値」は、モータ角度θの実測値から負荷角度θの実測値を差し引くことで得られる。これにより、位相面図生成部31は、図8に示すような、ねじれ角度(θ−θ)を横軸にとり、トルクτを縦軸にとる位相面図であるねじれ角度−トルク指令位相面図P0aを生成する。ねじれ角度−トルク指令位相面図P0aは、小振幅動作時に取得された実測値に基づいて生成された位相面図である。
なお、位相面図生成部31は、負荷角度θの正方向から負方向への移動時に取得される実測値と、負方向から正方向への移動時に取得される実測値と、の各々について上記実測値の紐付けを行う。このようにして生成されたねじれ角度−トルク指令位相面図P0aには、主に、機械系2の非線形摩擦特性(図3(a)参照)と不感帯特性関数Fに起因するヒステリシス曲線が表れる。
なお、図8(ねじれ角度−トルク指令位相面図P0a)に示す曲線における各動作点・動作領域(T1〜T5)では、それぞれ、以下のような状態となっている。
動作点T1・・・ギア(不感帯)が接触して駆動中の状態。摩擦も最大の状態。
動作領域T2・・・駆動力(トルクτ)が減少し、軸(連結部材22)のねじれが減少していく状態。
動作領域T3・・・駆動力が変わらないまま、軸のねじれのみが変化している。即ち、連結部材の不感帯(ガタ)を移動中。
動作領域T4・・・反対方向への駆動力が増し、軸のねじれが増加していく状態。負荷摩擦特性関数Gに基づき、摩擦が非線形に変化(増加)している。
動作点T5・・・ギアが接触して駆動中の状態。摩擦も最大の状態。
小振幅、低周波数の正弦波運動時においては、慣性モーメント(J、J)及び粘性係数(D、D)の影響を無視できる。したがって、式(8)より、動作点T1、T5におけるトルク指令τは、全体摩擦成分(τfMc+τfLc)となる。
また、ガタ移動中(動作領域T3)では負荷21の影響を受けない(モータ20の特性だけが見える)ため、同領域中におけるトルク指令τは、モータ摩擦トルクτfMの飽和値であるモータクーロン摩擦トルクτfMcとなる。
また、トルク指令τとねじれ角度(θ−θ)との関係は、ねじれ剛性係数Kによって示されるから、動作領域T2における傾きからねじれ剛性係数Kが特定される。
また、不感帯を移動中のねじれ角度(θ−θ)の変化量は、全不感帯幅(ガタの端から端までの長さ=2BL)に相当するから、動作領域T3のねじれ角度(θ−θ)の大きさより、不感帯幅BLが特定される。
以上より、パラメータ同定部32は、ねじれ角度−トルク指令位相面図P0aに基づいて、モータクーロン摩擦トルクτfMc、負荷クーロン摩擦トルクτfLc、不感帯幅BL、ねじれ剛性係数Kを特定できる。
更に、位相面図生成部31は、小振幅動作時に取得された各種実測値に基づいて、角度θとトルク指令τとの関係を示す角度−トルク指令位相面図P1a(図9参照)を生成する。
式(8)において、慣性モーメント(J、J)及び粘性係数(D、D)の影響を無視した場合、トルク指令τは、全体摩擦トルク(モータ摩擦トルクτfM[θ]と負荷摩擦トルクτfL[θ]との和)で表される。ここで、モータ摩擦トルクτfM[θ]及び負荷摩擦トルクτfL[θ]は、それぞれ、モータ摩擦特性関数G、及び、負荷摩擦特性関数Gで規定される特性である(図3参照)。
図9に示すように、パラメータ同定部32は、角度−トルク指令位相面図P1aの曲線(カーブ)に基づいて、『τfMc+τfL[θ]』を特定する。ここで、パラメータ同定部32は、角度(変位)θに対するモータ摩擦トルクτfM[θ]の変化の度合いが負荷摩擦トルクτfL[θ]に比べて十分に小さいと仮定している。
また、パラメータ同定部32は、τfL[θ]の飽和点において、『τfMc+τfLc』を特定する。
更に、位相面図生成部31は、小振幅動作時に取得された各種実測値に基づいて、角速度ωとトルク指令τとの関係を示す角速度−トルク指令位相面図P2a(図10参照)を生成する。
式(9)において、慣性モーメント(J、J)及び粘性係数(D、D)の影響を無視した場合、トルク指令τは、全体摩擦トルク(モータ摩擦トルクτfM[θ]と負荷摩擦トルクτfL[θ]との和)で表される。ここで、モータ摩擦トルクτfM[θ]及び負荷摩擦トルクτfL[θ]の角速度ωについての特性は、それぞれ、モータ摩擦特性関数G、及び、負荷摩擦特性関数G(角度θの関数)の微分特性である。
図10に示すように、パラメータ同定部32は、角速度−トルク指令位相面図P2aの曲線に基づいて、『τfMc』、『τfMc+τfLc』を特定する。
更に、位相面図生成部31は、小振幅動作時に取得された各種実測値に基づいて、角度θとねじれ角度(θ−θ)との関係を示す角度−ねじれ角度位相面図P3a(図11参照)を生成する。
式(10)において、慣性モーメント(J、J)及び粘性係数(D、D)の影響を無視した場合、ねじれ角度(θ−θ)は、ガタ変位成分(BKLS[θ−θ])と、負荷摩擦トルク成分(τfL[θ]/K)との和で表される。
なお、小振幅動作時においては慣性、粘性の影響が小さいため、ねじれ角度(θ−θ)がガタ変位BKLSを移動するタイミングは、角速度ωの反転時(即ち、角度θの最大値及び最小値)に一致する。
図11に示すように、パラメータ同定部32は、角度−ねじれ角度位相面図P3aの曲線に基づいて、『(τfL[θ]/K)+BL』、『(τfLc/K)+BL』を特定する。
更に、位相面図生成部31は、小振幅動作時に取得された各種実測値に基づいて、角速度ωとねじれ角度(θ−θ)との関係を示す角速度−ねじれ角度位相面図P4a(図12参照)を生成する。
式(11)において、慣性モーメント(J、J)及び粘性係数(D、D)の影響を無視した場合、ねじれ角度(θ−θ)は、ガタ変位成分(BKLS[θ−θ])と、負荷摩擦トルク成分(τfL[θ]/K)との和で表される。
なお、小振幅動作時においては慣性、粘性の影響が小さいため、ねじれ角度(θ−θ)がガタ変位BKLSを移動するタイミングは、角速度ωの反転時(ω=0)に一致する。
図12に示すように、パラメータ同定部32は、角速度−ねじれ角度位相面図P4aの曲線に基づいて、『(τfLc/K)+BL』を特定する。
また、角速度ωをモータ角速度ωとして角速度−ねじれ角度位相面図P4aを生成した場合、ガタ変位BKLS移動中に、負荷角速度ωは変化しないままモータ角速度ωのみが上昇する動作領域が現れる(図12に示す矢印Q)。この矢印Qで示される動作領域のねじれ角度(θ−θ)の幅は、全不感帯幅(2BL)に相当する。したがって、パラメータ同定部32は、角速度−ねじれ角度位相面図P4aに基づいて、更に、『2BL』を特定する。
以上の通り、パラメータ同定部32は、小振幅動作時の各種実測値によって生成された4つの位相面図P1a〜P4aに基づいて、『τfMc+τfL[θ]』、『τfMc+τfLc』、『τfMc』、『(τfL[θ]/K)+BL』、『(τfLc/K)+BL』、『2BL』を特定する。パラメータ同定部32は、特定したこれらの数値群を連立して解くことで、モータ摩擦トルクτfM、負荷摩擦トルクτfL、不感帯幅BL、ねじれ剛性係数Kを特定する。
次に、図13〜図17、並びに、上述の式(8)〜式(11)を参照しながら、大振幅動作時において位相面図生成部31が生成する位相面図、及び、パラメータ同定部32が行うパラメータ同定処理(ステップS07、ステップS08)について詳細に説明する。
ステップS07において、位相面図生成部31は、ステップS06で取得されたねじれ角度(θ−θ)の実測値と、トルク指令τとを紐付けてプロットすることで、ねじれ角度−トルク指令位相面図P0bを生成する。ねじれ角度−トルク指令位相面図P0bは、大振幅動作時に取得された実測値に基づいて生成された位相面図である。
大振幅の正弦波運動時であっても、不感帯を移動中のねじれ角度(θ−θ)の変化量は、全不感帯幅(ガタの端から端までの長さ=2BL)に相当する。したがって、パラメータ同定部32は、ねじれ角度−トルク指令位相面図P0bに基づいて、トルク指令τが変わらないままねじれ角度(θ−θ)が変化している動作領域(図8の動作領域T3に相当)の当該ねじれ角度(θ−θ)の大きさより、不感帯幅BLを特定できる。
更に、位相面図生成部31は、大振幅動作時に取得された各種実測値に基づいて、角度θとトルク指令τとの関係を示す角度−トルク指令位相面図P1b(図14参照)を生成する。
式(8)において、慣性モーメント(J、J)及び粘性係数(D、D)の影響を考慮した場合、トルク指令τは、全体摩擦トルク成分(モータ摩擦トルクτfM[θ]と負荷摩擦トルクτfL[θ]との和)と、全体慣性成分(−J(2πf)θ)と、全体粘性成分(±D(2πf)(θ −θ1/2)との和で表される。
ここで、大振幅動作時においては、モータ摩擦トルクτfM[θ]及び負荷摩擦トルクτfL[θ]は、クーロン摩擦に基づく挙動が支配的となる。したがって、角度−トルク指令位相面図P1b上における全体摩擦トルク成分は、角速度ωの反転時(即ち、角度θの最大値及び最小値)のタイミングで、全体クーロン摩擦トルク成分(τfMc+τfLc)の符号が反転する挙動となる。
また、角度−トルク指令位相面図P1b上において、全体慣性成分(−J(2πf)θ)は、傾きが−J(2πf)の直線特性となる。
また、角度−トルク指令位相面図P1b上において、全体粘性成分(±D(2πf)(θ −θ1/2)は、膨らみの度合いがD(2πf)となる楕円特性となる。
図14に示すように、パラメータ同定部32は、角度−トルク指令位相面図P1bに基づいて、『2(τfMc+τfLc)』、『J(2πf)』、『D(2πf)』を特定する。特に、図14に示す例では、角度−トルク指令位相面図P1bにおいて楕円成分がほとんど見られないため、全体粘性係数Dはほぼゼロであることが読み取れる。
更に、位相面図生成部31は、大振幅動作時に取得された各種実測値に基づいて、角速度ωとトルク指令τとの関係を示す角速度−トルク指令位相面図P2b(図15参照)を生成する。
式(9)において、慣性モーメント(J、J)及び粘性係数(D、D)の影響を考慮した場合、トルク指令τは、全体摩擦トルク成分(モータ摩擦トルクτfM[θ]と負荷摩擦トルクτfL[θ]との和)と、全体慣性成分(±J(2πf)(ω −ω1/2)と、全体粘性成分(Dω)との和で表される。
ここで、大振幅動作時においては、モータ摩擦トルクτfM[θ]及び負荷摩擦トルクτfL[θ]は、クーロン摩擦に基づく挙動が支配的となる。したがって、角度−トルク指令位相面図P1b上における全体摩擦トルク成分は、角速度ωの反転時(ω=0)のタイミングで、全体クーロン摩擦トルク成分(τfMc+τfLc)の符号が反転する挙動となる。
また、角速度−トルク指令位相面図P2b上において、全体慣性成分(±J(2πf)(ω −ω1/2)は、膨らみの度合いがJ(2πf)となる楕円特性となる。
また、角速度−トルク指令位相面図P2b上において、全体粘性成分(Dω)は、傾きがDの直線特性となる。
図15に示すように、パラメータ同定部32は、角速度−トルク指令位相面図P2bに基づいて、『2(τfMc+τfLc)』、『J(2πf)』、『D』を特定する。特に、図15に示す例では、角速度−トルク指令位相面図P2bにおいて直線成分がほとんど見られないため、全体粘性係数Dはほぼゼロであることが読み取れる。
更に、位相面図生成部31は、大振幅動作時に取得された各種実測値に基づいて、角度θとねじれ角度(θ−θ)との関係を示す角度−ねじれ角度位相面図P3b(図16参照)を生成する。
式(10)において、慣性モーメント(J、J)及び粘性係数(D、D)の影響を考慮した場合、ねじれ角度(θ−θ)は、ガタ変位成分(BKLS[θ−θ])と、負荷摩擦トルク成分(τfL[θ]/K)と、負荷慣性成分(−(J/K)(2πf)θ)と、負荷粘性成分(±(D/K)(2πf)(θ −θ1/2)との和で表される。
ここで、大振幅動作時においては、負荷摩擦トルクτfL[θ]は、クーロン摩擦に基づく挙動が支配的となる。したがって、角度−ねじれ角度位相面図P3b上における負荷摩擦トルク成分は、角速度ωの反転時(即ち、角度θの最大値及び最小値)のタイミングで、負荷クーロン摩擦トルク成分(τfLc)の符号が反転する挙動となる。
また、大振幅動作時においては、慣性、粘性の影響が大きいため、ねじれ角度(θ−θ)がガタ変位BKLSを移動するタイミングは、角度θが最小値から最大値に向かう途中、トルク指令τがゼロとなるタイミングと一致する(図14の角度−トルク指令位相面図P1b参照)。
また、角度−ねじれ角度位相面図P3b上において、負荷慣性成分(−(J/K)(2πf)θ)は、傾きが−(J/K)(2πf)の直線特性となる。
また、角度−ねじれ角度位相面図P3b上において、負荷粘性成分(±(D/K)(2πf)(θ −θ1/2)は、膨らみの度合いが(D/K)(2πf)となる楕円特性となる。
図16に示すように、パラメータ同定部32は、角度−ねじれ角度位相面図P3bに基づいて、『2τfLc/K』、『2BL』、『−(J/K)(2πf)』、『(D/K)(2πf)』を特定する。特に、図16に示す例では、角度−ねじれ角度位相面図P3bにおいて楕円成分がほとんど見られないため、負荷粘性係数Dはほぼゼロであることが読み取れる。
更に、位相面図生成部31は、大振幅動作時に取得された各種実測値に基づいて、角速度ωとねじれ角度(θ−θ)との関係を示す角速度−ねじれ角度位相面図P4b(図17参照)を生成する。
式(11)において、慣性モーメント(J、J)及び粘性係数(D、D)の影響を考慮した場合、ねじれ角度(θ−θ)は、ガタ変位成分(BKLS[θ−θ])と、負荷摩擦トルク成分(τfL[θ]/K)と、負荷慣性成分(±(J/K)(2πf)(ω −ω1/2)と、負荷粘性成分((D/K)ω)との和で表される。
ここで、大振幅動作時においては、負荷摩擦トルクτfL[θ]は、クーロン摩擦に基づく挙動が支配的となる。したがって、角速度−ねじれ角度位相面図P4b上における負荷摩擦トルク成分は、角速度ωの反転時(ω=0)のタイミングで、負荷クーロン摩擦トルク成分(τfLc)の符号が反転する挙動となる。
また、大振幅動作時においては、慣性、粘性の影響が大きいため、ねじれ角度(θ−θ)がガタ変位BKLSを移動するタイミングは、角度θが最小値から最大値に向かう途中、トルク指令τがゼロとなるタイミングと一致する(図15の角速度−トルク指令位相面図P2b参照)。
また、角速度−ねじれ角度位相面図P4b上において、負荷慣性成分(±(J/K)(2πf)(ω −ω1/2)は、膨らみの度合いが((J/K)(2πf))の楕円特性となる。
また、角速度−ねじれ角度位相面図P4b上において、負荷粘性成分((D/K)ω)は、傾きが(D/K)となる直線特性となる。
図17に示すように、パラメータ同定部32は、角速度−ねじれ角度位相面図P4bに基づいて、『2τfLc/K』、『2BL』、『(J/K)(2πf)』、『D/K』を特定する。特に、図17に示す例では、角速度−ねじれ角度位相面図P4bにおいて直線成分がほとんど見られないため、負荷粘性係数Dはほぼゼロであることが読み取れる。
以上の通り、パラメータ同定部32は、大振幅動作時の各種実測値によって生成された4つの位相面図P1b〜P4bに基づいて、『J(2πf)』、『D(2πf)』、『−(J/K)(2πf)』、『(D/K)(2πf)』、『(J/K)(2πf)』、『D/K』等を特定する。パラメータ同定部32は、(ステップS04で特定したパラメータを含めて)これらの数値群を連立して解くことで、モータ慣性モーメントJ、負荷慣性モーメントJ、モータ粘性係数D及び負荷粘性係数Dを特定する。
パラメータ同定部32は、以上のようにして同定した各種パラメータを、2慣性系モデルMODの各種モデルパラメータ群(JM0、DM0、τfM0、JL0、DL0、τfL0、BL、KR0)に代入する。
(作用、効果)
以上、第1の実施形態に係るパラメータ同定装置3は、上述のデータ取得部30と、位相面図生成部31と、パラメータ同定部32と、を備える態様とする。
このようにすることで、小振幅動作時に取得された位相面図と、大振幅動作時に取得された位相面図との両方に基づいて、機械系2の各種パラメータを精度良く、かつ、過不足なく同定することができる。
即ち、小振幅、低周波数の状態であれば、慣性モーメント及び粘性係数の影響が小さく、モータ20、負荷21の摩擦、連結部材22の剛性及び不感帯幅の特性を捉えやすい。他方、大振幅の状態であれば、相対的に、モータ20、負荷21の摩擦、連結部材22の剛性及び不感帯幅の影響が小さくなり、慣性モーメント及び粘性係数の特性を捉えやすくなる。そこで、上述のような2段階のステップを実施する態様とすることで、2慣性系モデルMODを構成する全てのパラメータを高精度に同定することができる。
したがって、モータ20及び負荷21を有する機械系2を精度よく模した2慣性系モデルMODを得ることができる。
以上、第1の実施形態に係る駆動システム9及びパラメータ同定装置3について詳細に説明したが、駆動システム9、パラメータ同定装置3の具体的な態様は、上述のものに限定されることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を加えることは可能である。
例えば、他の実施形態に係るパラメータ同定部32は、複数の位相面図(P0a、P0b、P1a、P1b、・・、P4a、P4b)から同定可能なモデルパラメータのうち、同種類のものについて複数通りの値が同定された場合、その平均値をモデルパラメータとしてもよい。例えば、パラメータ同定部32は、小振幅時に取得されたねじれ角度−トルク指令位相面図P0aから同定された不感帯幅BLと、角速度−ねじれ角度位相面図P4aから同定された不感帯幅BLと、の平均値を2慣性系モデルMODのモデル不感帯幅BLに採用してもよい。
また、他の実施形態に係る位相面図生成部31は、小振幅時においては一つの位相面図(ねじれ角度−トルク指令位相面図P0a)のみを生成する態様であってもよい。この場合、パラメータ同定部32は、生成されたねじれ角度−トルク指令位相面図P0aに基づいて、モデルモータクーロン摩擦トルクτfMc0、モデル負荷クーロン摩擦トルクτfLc0、モデルねじれ剛性係数KR0及びモデル不感帯幅BLを同定する。
このようにすることで、各モデルパラメータの同定処理を簡素化することができる。
また、他の実施形態に係る位相面図生成部31は、機械系2の反復動作ごとに実測データの取得を複数回繰り返し、これを平均化したものに基づいて各位相面図を生成してもよい。
このようにすることで、実測データのばらつき誤差が低減されるため、モデルパラメータの同定精度を更に高めることができる。
また、第1の実施形態に係るパラメータ同定装置3は、制御装置1におけるフィードフォワード性能向上に対してだけではなく、駆動システム9の初期出荷検査、異常診断や機械調整等にも利用することができる。
また、上記のようにして同定された慣性モーメントJのパラメータは、フィードフォワード性能向上に資するだけでなく、フィードバック制御のゲインの調整(変更)にも用いることができる。
また、第1の実施形態において、パラメータ同定装置3は、上位機器から入力されるトルク指令を「トルクτ」として、上述の各種処理を行うものとして説明したが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。
例えば、他の実施形態に係るパラメータ同定装置3は、“トルク指令”ではなく、モータ20に流れる検出電流値から求まる“実測トルク”を「トルクτ」として用いて、上述の各種処理を行う態様であってもよい。
また、第1の実施形態において、制御装置1は、回転検出器から検出したモータ角度θを時間微分することでモータ角速度ωを検出するものとして説明したが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。例えば、制御装置1は、回転検出器から直接検出したモータ角速度ωを積分することでモータ角度θを検出する態様であってもよい。
負荷角度θ、負荷角速度ωについても同様である。
また、第1の実施形態において、フィードバック制御部10における位置ループの制御対象を負荷角度θとするフルクローズドシステムであるものとして説明したが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。他の実施形態においては、フィードバック制御部10における位置ループの制御対象をモータ角度θとするセミクローズドシステムであってもよい。
また、重力等の定常外乱がある場合には、トルクτやねじれ角度(θ−θ)に一定のオフセットがかかる。そこで、他の実施形態に係るパラメータ同定装置3は、更に、トルクτ、ねじれ角度(θ−θ)の平均を求めてオフセット分を除去する機能、折れ点を正負で平均をとる機能を有していてもよい。
また、上述の各実施形態においては、駆動システム9におけるパラメータ同定装置3の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各手順を行うものとしている。ここで、上述したパラメータ同定装置3の各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって上記各種処理が行われる。ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
また、パラメータ同定装置3の機能が、ネットワークで接続される複数の装置に渡って具備される態様であってもよい。
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。
1 制御装置
10 フィードバック制御部
11 フィードフォワード制御部
2 機械系
20 モータ
21 負荷
22 連結部材
3 パラメータ同定装置
30 データ取得部
31 位相面図生成部
32 パラメータ同定部
33 角度指令出力部
9 駆動システム
θREF 目標角度
τ トルク指令(トルク)
θ モータ角度(モータの角度)
ω モータ角速度(モータの角速度)
モータ慣性モーメント
モータ粘性係数
τfM モータ摩擦トルク
τfMc モータクーロン摩擦トルク
θ 負荷角度(負荷の角度)
ω 負荷角速度(負荷の角速度)
負荷慣性モーメント
負荷粘性係数
τfL 負荷摩擦トルク
τfLc 負荷クーロン摩擦トルク
ねじれ剛性係数
ねじれ粘性係数
BL 不感帯幅
MOD 2慣性系モデル
M0 モデルモータ慣性モーメント
M0 モデルモータ粘性係数
τfM0 モデルモータ摩擦トルク
τfMc0 モデルモータクーロン摩擦トルク
L0 モデル負荷慣性モーメント
L0 モデル負荷粘性係数
τfL0 モデル負荷摩擦トルク
τfLc0 モデル負荷クーロン摩擦トルク
BL モデル不感帯幅
R0 モデルねじれ剛性係数
F 不感帯特性関数
F’ ガタ変位関数
モータ摩擦特性関数
負荷摩擦特性関数

Claims (7)

  1. モータと負荷とが連結部材にて連結されてなる機械系を模した2慣性系モデルのモデルパラメータを同定するパラメータ同定装置であって、
    前記モータに対するトルク指令と、前記モータの角度及び角速度の実測値と、前記負荷の角度及び角速度の実測値と、を取得するデータ取得部と、
    取得された前記トルク指令と、前記モータの角度及び角速度の実測値と、前記負荷の角度及び角速度の実測値と、に基づいて複数の位相面図を生成する位相面図生成部と、
    生成された複数の前記位相面図に基づいて、前記モータの慣性、粘性、摩擦、前記負荷の慣性、粘性、摩擦、前記連結部材の剛性、及び、前記連結部材の不感帯幅を示すモデルパラメータを同定するパラメータ同定部と、
    を備え、
    前記パラメータ同定部は、
    前記負荷の小振幅動作時に取得された前記位相面図と、前記負荷の大振幅動作時に取得された前記位相面図との両方に基づいて、前記モデルパラメータを同定する
    パラメータ同定装置。
  2. 前記パラメータ同定部は、
    前記負荷の小振幅動作時に取得された前記位相面図に基づいて、少なくとも、前記モータの摩擦、前記負荷の摩擦を示すモデルパラメータを同定し、
    前記負荷の大振幅動作時に取得された前記位相面図に基づいて、少なくとも、前記モータの慣性、粘性、前記負荷の慣性、粘性を示すモデルパラメータを同定する
    請求項1に記載のパラメータ同定装置。
  3. 前記位相面図生成部は、少なくとも、
    前記負荷の角度と前記トルク指令との関係を示す位相面図と、
    前記モータ又は前記負荷の角速度と前記トルク指令との関係を示す位相面図と、
    前記負荷の角度と前記連結部材のねじれ角度との関係を示す位相面図と、
    前記モータ又は前記負荷の角速度と前記連結部材のねじれ角度との関係を示す位相面図と、
    を生成する請求項1又は請求項2に記載のパラメータ同定装置。
  4. 前記位相面図生成部は、更に、
    前記トルク指令と前記連結部材のねじれ角度との関係を示す位相面図を生成する
    請求項3に記載のパラメータ同定装置。
  5. 請求項1から請求項4の何れか一項に記載のパラメータ同定装置と、
    前記機械系と、
    前記負荷の目標とする角度に対する現在の角度の偏差に基づいて、前記トルク指令を算出するフィードバック制御部と、
    前記パラメータ同定装置によって同定された前記モデルパラメータに基づいて、前記トルク指令を算出するフィードフォワード制御部と、
    を備える駆動システム。
  6. モータと負荷とが連結部材にて連結されてなる機械系を模した2慣性系モデルのモデルパラメータを同定する方法であって、
    前記モータに対するトルク指令と、前記モータの角度及び角速度の実測値と、前記負荷の角度及び角速度の実測値と、を取得するデータ取得ステップと、
    取得された前記トルク指令と、前記モータの角度及び角速度の実測値と、前記負荷の角度及び角速度の実測値と、に基づいて複数の位相面図を生成する位相面図生成ステップと、
    生成された複数の前記位相面図に基づいて、前記モータの慣性、粘性、摩擦、前記負荷の慣性、粘性、摩擦、前記連結部材の剛性、及び、前記連結部材の不感帯幅を示すモデルパラメータを同定するパラメータ同定ステップと、
    を有し、
    前記パラメータ同定ステップは、
    前記負荷の小振幅動作時に取得された前記位相面図と、前記負荷の大振幅動作時に取得された前記位相面図との両方に基づいて、前記モデルパラメータを同定するステップを含む
    パラメータ同定方法。
  7. モータと負荷とが連結部材にて連結されてなる機械系を模した2慣性系モデルのモデルパラメータを同定するパラメータ同定装置のコンピュータを、
    前記モータに対するトルク指令と、前記モータの角度及び角速度の実測値と、前記負荷の角度及び角速度の実測値と、を取得するデータ取得部、
    取得された前記トルク指令と、前記モータの角度及び角速度の実測値と、前記負荷の角度及び角速度の実測値と、に基づいて複数の位相面図を生成する位相面図生成部、
    生成された複数の前記位相面図に基づいて、前記モータの慣性、粘性、摩擦、前記負荷の慣性、粘性、摩擦、前記連結部材の剛性、及び、前記連結部材の不感帯幅を示すモデルパラメータを同定するパラメータ同定部、
    として機能させ
    前記パラメータ同定部は、
    前記負荷の小振幅動作時に取得された前記位相面図と、前記負荷の大振幅動作時に取得された前記位相面図との両方に基づいて、前記モデルパラメータを同定する
    プログラム。
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