以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
(プリンタの全体構成)
図1、図2に示すように、本実施の形態に係るプリンタ1(本発明の「液体吐出装置」)は、印刷部2、給紙部3、メンテナンスユニット7等を備えている。
(印刷部)
印刷部2は、キャリッジ11、インクジェットヘッド12(本発明の「液体吐出ヘッド」)、搬送ローラ13、14、プラテン15などを備えている。キャリッジ11は、走査方向に延びた2本のガイドレール16に、走査方向に移動自在に支持されている。キャリッジ11は、図示しないベルトやプーリを介して、キャリッジモータ156(図15参照)に接続され、キャリッジモータ156に駆動されることで、走査方向に往復移動する。なお、以下では、図2に示すように、走査方向の右側及び左側を定義して説明を行う。
インクジェットヘッド12は、キャリッジ11に搭載され、その下面であるインク吐出面12a(本発明の「液体吐出面」)に形成された複数のノズル17からインクを吐出する。複数のノズル17は、走査方向と直交する搬送方向に配列されることによってノズル列18を形成している。インクジェットヘッド12には、4つのノズル列18が走査方向に並んで配置されている。複数のノズル17からは、走査方向の右側のノズル列18を形成するものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
搬送ローラ13は、インク吐出面12aと平行で且つ走査方向と直交する搬送方向における、キャリッジ11よりも上流側に配置されている。搬送ローラ13は、駆動ローラ13aと、駆動ローラ13aの上側に配置された従動ローラ13bとによって構成される。駆動ローラ13aは、後述するようにPFモータ101(図12参照)に接続されている。PFモータ101を逆転(CCW)させると、PFモータ101から駆動ローラ13aに動力が伝達され、駆動ローラ13aが図1の時計回り方向に回転する。これにより、記録用紙Pを、駆動ローラ13aと従動ローラ13bとで挟んだ状態で、搬送方向に搬送させることができる。一方、PFモータ101を正転(CW)させると、駆動ローラ13aが図1の反時計回り方向に回転する。
搬送ローラ14は、搬送方向におけるキャリッジ11よりも下流側に配置されている。搬送ローラ14は、駆動ローラ14aと、駆動ローラ14aの上側に配置された従動ローラ14bとによって構成される。駆動ローラ14aは、図示しない複数のギヤを介して駆動ローラ13aと接続されている。これにより、PFモータ101から駆動ローラ13aに動力が伝達されると、駆動ローラ14aにも駆動力が伝達され、駆動ローラ14aが回転する。また、このときの駆動ローラ13aと14aの回転の方向は同じとなる。これにより、PFモータ101を逆転(CCW)させると、記録用紙Pを、駆動ローラ14aと従動ローラ14bとで挟んだ状態で、搬送方向に搬送させることができる。
プラテン15は、搬送方向における搬送ローラ13と搬送ローラ14との間に、インク吐出面12aと対向するように配置されている。プラテン15は、搬送ローラ13、14に搬送される記録用紙Pを下側から支持する。
(給紙部)
給紙部3は、プラテン15の下方に配置されている。給紙部3は、用紙カセット21と、給紙ローラ22とを備えている。用紙カセット21には、上下に重ねられた複数の記録用紙Pが収容されている。給紙ローラ22は、後述するように、給紙ギヤ131(図12参照)を含む複数のギヤ(給紙ギヤ131以外は図示省略)を介して、ASFモータ102と接続可能に構成されている。そして、給紙ローラ22がASFモータ102と接続された状態で、ASFモータ102を正転させると、ASFモータ102から給紙ローラ22に動力が伝達され、給紙ローラ22が、図1の時計回り方向に回転する。これにより、用紙カセット21に収容された記録用紙Pが、搬送方向の上流側に向けて搬送される。用紙カセット21の搬送方向における上流側には、搬送方向の下流側から送られてきた記録用紙Pを、搬送ローラ13の搬送方向における上流側の位置まで案内するための供給経路10が設けられている。給紙ローラ22により搬送された記録用紙Pは、図1に矢印Aで示すように、供給経路10に沿って、搬送ローラ13の搬送方向における上流側まで搬送されることで、印刷部2に供給される。
(メンテナンスユニット)
次に、メンテナンスユニット7について説明する。図2〜図11に示すように、メンテナンスユニット7は、ワイパ59、ノズルキャップ61、切換バルブ62(本発明の「被駆動装置」)、吸引ポンプ63及び廃液タンク64を備えている。
<ワイパ>
ワイパ59は、プラテン15の右側に配置されている。ワイパ59は、ワイパ昇降装置157(図15参照)により、昇降させることができるようになっている。ワイパ昇降装置157によりワイパ59を上昇させた状態では、ワイパ59の上端がインク吐出面12aよりも上方に位置する。これにより、この状態で、キャリッジ11をワイパ59と対向する位置で移動させると、ワイパ59がインク吐出面12aに接触する。一方、ワイパ昇降装置157によりワイパ59を降下させた状態では、ワイパ59の上端がインク吐出面12aよりも下方に位置する。これにより、この状態で、キャリッジ11をワイパ59と対向する位置で移動させても、ワイパ59はインク吐出面12aに接触しない。
<ノズルキャップ>
ノズルキャップ61は、ゴム材料などからなり、走査方向におけるワイパ59の右側に配置されている。ノズルキャップ61は、2つのキャップ部61a、61bを有する。キャップ部61aと61bとは、キャップ部61aがキャップ部61bの右側に隣接するように走査方向に並んで配置されている。インク吐出面12aがノズルキャップ61と対向する位置までキャリッジ11を移動させると、最も右側のノズル列18がキャップ部61aと重なり、左側3列のノズル列18がキャップ部61bと重なる。また、ノズルキャップ61は、後述のキャップ昇降装置70によって昇降可能となっており、インク吐出面12aがノズルキャップ61と対向した状態で、ノズルキャップ61を上昇させると、ノズルキャップ61がインク吐出面12aに接触し、最も右側のノズル列18がキャップ部61aで覆われ、左側3列のノズル列18がキャップ部61bで覆われる。
<キャップ昇降装置>
ここで、ノズルキャップ61を昇降させるキャップ昇降装置70(本発明の「キャップ移動装置」)について説明する。キャップ昇降装置70は、図3〜図5に示すように、キャップ保持部71と、スライドカム72とを備えている。
キャップ保持部71は、キャップホルダ67と支持部材68とバネ69とを備えている。キャップホルダ67は、ノズルキャップ61を下方から支持することで、ノズルキャップ61の剛性を確保している。支持部材68は、キャップホルダ67の下方に配置され、キャップホルダ67を下方から支持する。また、支持部材68に対しては、その周囲を取り囲むようにガイド部材58が配置されている。支持部材68の搬送方向における両端面には、それぞれ、上下方向に延びた突出部68aが形成されている。これに対して、ガイド部材58には、上下方向に延び、突出部68aと係合するガイド溝58aが形成されている。これにより、支持部材68の突出部68aが、ガイド溝58aに沿って移動することで、支持部材68及びこれに支持されたノズルキャップ61が昇降可能となっている。なお、ガイド部材58は、プリンタ1の本体に設けられた図示しないフレームに固定されている。
また、支持部材68の下面の走査方向における両端部近傍の部分には、それぞれ、下側に突出した突出部68bが設けられ、各突出部68bの走査方向における外側の側面には、走査方向に延びた突起68cが形成されている。バネ69は、キャップホルダ67と支持部材68との間に配置され、キャップホルダ67を上方に付勢する。
スライドカム72は、2つの部分76、77を有している。部分76は、支持部材68の下方に配置され、搬送方向に延びている。部分76の走査方向における両端部には、それぞれ76aが形成されている。そして、溝76aに支持部材68の突起68cが挿通されることによって、支持部材68とスライドカム72とが連結されている。溝76aは、図3(b)に示すように、3つの平行部76b、76c、76dと、2つの傾斜部76e、76fとを有している。なお、図3(b)では、溝76aの構造をわかりやすくするため、スライドカム72の搬送方向の長さを、図3(a)よりも長く図示している。
平行部76bは、部分76の搬送方向における上流側の端部に設けられ、搬送方向と平行に延びている。平行部76cは、部分76の平行部76bよりも搬送方向の下流側且つ下側に配置され、搬送方向と平行に延びている。平行部76dは、搬送方向及び上下方向における平行部76bと平行部76cとの間に配置され、搬送方向と平行に延びている。傾斜部76eは、搬送方向における平行部76bと平行部76dとの間に配置され、搬送方向に対して傾斜して延びて、平行部76bと平行部76dとを接続する。傾斜部76fは、搬送方向における平行部76cと平行部76dとの間に配置され、搬送方向に対して傾斜して延びて、平行部76cと平行部76dとを接続する。なお、傾斜部76eと傾斜部76fとでは、搬送方向に対する傾斜角度及び搬送方向の長さがほぼ同じとなっている。
部分77は、部分76よりも幅が狭く、部分76の搬送方向における下流側の端部の中央部から、搬送方向の下流側に延びている。部分77の搬送方向における下流側の端部には、アーム支持部77aが設けられている。アーム支持部77aは、後述するアーム74を支持するための部分であり、走査方向に延びている。また、部分77の走査方向における左側の側面77bには、搬送方向に沿って延びたギヤ部77cが形成されている。また、スライドカム72に対して、ギヤ部77cと噛み合うオイルダンパ78が設けられている。オイルダンパ78は、後述するように、スライドカム72の搬送方向への滑り(急激な移動)を防止するためのものである。また、部分77の走査方向における左側の側面77bの、ギヤ部77cよりも搬送方向における上流側の部分に、搬送方向に延びた突出部77dが設けられている。一方、部分77の走査方向における左側には、ガイド部材80(本発明の「カム移動支持部」)が配置されている。ガイド部材80の走査方向における右側の面には、搬送方向に延びた溝80aが形成されている。溝80aには突出部77dが係合している。そして、突出部77dが溝80aに沿って移動することにより、スライドカム76が搬送方向に移動可能となっている。なお、ガイド部材80は、プリンタ1の本体に設けられた図示しないフレームに固定されている。
また、スライドカム72に対しては、搬送方向の位置を検出するためのセンサ79が設けられている。センサ79は、発光素子79aと受光素子79bとを有する。発光素子79aは、部分77の走査方向における左側に配置され、受光素子79bは、部分77の走査方向における右側に配置されている。そして、発光素子79aは受光素子79bに向けて光を照射する。受光素子79bは発光素子79aから照射された光を受信するためのものである。また、これに対応して、部分77の下面には、遮光部77eが設けられている。遮光部77eは、後述するようにスライドカム72が搬送方向に移動したときに、発光素子79aから照射された光を遮断するか否かが切り換わる。そして、センサ79では、発光素子79aから照射された光が受光素子79bで受信されたときにオフとなって信号を出力せず、発光素子79aから照射された光が受光素子79bで受信されないときにオンとなって信号を出力する。スライドカム72の位置と、センサ79のオンとオフの切り換わりについては後程詳細に説明する。
また、スライドカム72は、アーム74を介して、クランクギヤ73(本発明の「第1伝達ギヤ」)と連結されている。より詳細に説明すると、クランクギヤ73は、軸方向が走査方向と平行なギヤである。また。クランクギヤ73の中心からずれた部分の側面には、走査方向に延びたアーム支持部73aが設けられている。アーム74は、一方の端部がスライドカム72のアーム支持部77aに揺動自在に支持され、他方の端部がクランクギヤ73のアーム支持部73aに揺動自在に支持されている。これにより、スライドカム72とクランクギヤ73とが、アーム74を介して連結されている。
<切換バルブ>
切換バルブ62は、図3、図5に示すように、収容部材81と流路部材82とを備えている。収容部材81は、下端が塞がれた円筒形の部材である。収容部材81には、2つのキャップ連通ポート84a、84bと、大気連通ポート84cと、ポンプ連通ポート84dを有している。連通ポート84a〜84dは、収容部材81の内部空間81aに連通しているとともに、収容部材81の径方向の外側の互いに異なる方向に突出している。キャップ連通ポート84aは、チューブ86aを介してキャップ部61aと連通している。キャップ連通ポート84bは、チューブ86bを介してキャップ部61bと連通している。大気連通ポート84cは、チューブ86cを介して廃液タンク64と連通している。ポンプ連通ポート84dは、チューブ86dを介して吸引ポンプ63と連通している。
流路部材82は、ゴム材料などからなる円柱形状の部材であり、収容部材81の内部空間81aに回転可能に収容されている。流路部材82には、連通ポート84a〜84dを互いに連通させるためのインク流路を形成する図示しない溝等が形成されている。また、流路部材82は、バルブカム85に取り付けられている。バルブカム85は、バルブ駆動ギヤ134a(本発明の「第2伝達ギヤ」)を含むバルブ駆動ギヤ群134と接続されている。バルブ駆動ギヤ134aは軸方向が走査方向と平行なギヤである。なお、切換バルブ62の構造自体は従来と同様であるので、ここでは、これ以上の詳細な説明を省略する。
<選択ギヤ機構>
ここで、本実施の形態では、選択ギヤ機構136を介して、ASFモータ102から、キャップ昇降装置70及び切換バルブ62のうちいずれか一方に、選択的に動力の伝達が可能となっている。より詳細に説明すると、図3(a)に示すように、選択ギヤ機構136は、選択駆動ギヤ137と、遊星ギヤ機構139とを有する。選択駆動ギヤ137は、軸方向が走査方向と平行なギヤであり、後述のASF切換ギヤ122と噛み合い可能に構成されている。選択駆動ギヤ137は、ASF切換ギヤ122と噛み合った状態で、ASFモータ102から動力が伝達される。遊星ギヤ機構139は、太陽ギヤ139aと遊星ギヤ139bと、連結部材139cとを有している。太陽ギヤ139aは、軸方向が走査方向と平行なギヤであり、選択駆動ギヤ137と噛み合っている。遊星ギヤ139bは、軸方向が走査方向と平行なギヤであり、太陽ギヤ139aと噛み合っている。連結部材139cは、太陽ギヤ139aと遊星ギヤ139bとを連結している。また、太陽ギヤ139a及び遊星ギヤ139bは、連結部材139cに回転自在に支持されている。そして、遊星ギヤ機構139では、太陽ギヤ139aが回転したときに、遊星ギヤ139bが、自身の軸を中心に回転しつつ、太陽ギヤ139aの軸を中心に回動する。このとき、遊星ギヤ139bは、太陽ギヤ139aと連結部材139cとに案内されることで、太陽ギヤ139aの軸を中心に回動する。すなわち、本実施の形態では、太陽ギヤ139a及び連結部材139cが、本発明の「案内部」に相当する。
そして、選択駆動ギヤ137がASFモータ102に接続された状態で、ASFモータ102を正転(CW)させると、ASFモータ102の動力がギヤ137、139a、139bに伝達され、図6(a)、(b)、図7(a)、(b)に示すように、太陽ギヤ139aがこれらの図の反時計回り方向に回転し、遊星ギヤ139bが、太陽ギヤ139aの軸を中心にこれらの図の時計回り方向で回動する。これにより、遊星ギヤ139bは、上方に移動して、下方からクランクギヤ73と噛み合う。また、遊星ギヤ139bは、クランクギヤ73と噛み合った状態で、クランクギヤ73よりも下方に位置している。
そして、遊星ギヤ139bとクランクギヤ73とが噛み合った状態で、さらにASFモータ102の正転を継続すると、ASFモータ102の動力がクランクギヤ73に伝達され、クランクギヤ73がこれらの図の反時計回り方向に回転する。これに連動して、スライドカム72が搬送方向に往復移動する。
そして、スライドカム72が搬送方向の上流側に移動するときには、支持部材68の突起68cが、溝76aの摺動面76a1の、平行部76b、傾斜部76e、平行部76d、傾斜部76f、平行部76cによって形成される部分とこの順に摺動する。これにより、キャップ保持部71及びノズルキャップ61が降下する。一方、スライドカム72が搬送方向の下流側に移動するときには、支持部材68の突起68cが、溝76aの摺動面76a1の、平行部76c、傾斜部76f、平行部76d、傾斜部76e、平行部76bによって形成される部分とこの順に摺動する。これにより、キャップ保持部71及びノズルキャップ61が上昇する。このとき、オイルダンパ78は、スライドカム72の移動に連動して回転する。このように、キャップ昇降装置70では、クランクギヤ73の一方向の回転を、スライドカム72を搬送方向に往復移動に変換し、支持部材68の突起68cを、スライドカム72の溝76aの摺動面76a1と摺動させることで、キャップ保持部71及びノズルキャップ61を昇降させる。
そして、図6(a)に示すように、突起68cが、平行部76bに位置しているときには、ノズルキャップ61が、インク吐出面12aに接触して、複数のノズル17を覆う(以下、このときのノズルキャップ61の位置を「キャッピング位置」とする)。また、図6(b)に示すように、突起68cが、平行部76cに位置しているときには、ノズルキャップ61がインク吐出面12aから離れる(以下、このときのノズルキャップ61の位置を「アンキャッピング位置」とする)。また、図7(a)、(b)に示すように、突起68cが、平行部76dに位置しているときには、ノズルキャップ61がインク吐出面12aから離れるが、突起68cが平行部76cに位置しているときよりも、ノズルキャップ61とインク吐出面12aとの距離が小さい(以下、このときのノズルキャップ61の位置を「中間位置」とする)。
ここで、ノズルキャップ61を、キャッピング位置、アンキャッピング位置及び中間位置の間で移動させるときの、ASFモータ102の制御について説明する。本実施の形態では、図8(a)に示すように、突起68cが平行部76cの所定部分(図8(b)で突起68cが位置する部分)よりも搬送方向の下流側(傾斜部76fと反対側)に位置しているとき、及び、図8(g)に示すように、突起68cが平行部76bの所定部分(図8(f)で突起68cが位置する部分)よりも搬送方向の上流側に位置しているときには、遮光部77eが発光素子79a及び受光素子79bと対向しない。一方、図8(b)〜(f)に示すように、突起68cが平行部76cの上記所定部分よりも搬送方向の上流側(傾斜部76f側)で、且つ、平行部76bの上記所定部分よりも搬送方向の下流側(傾斜部76e側)に位置しているときに、遮光部77eが発光素子79a及び受光素子79bと対向する。なお、図8(a)〜(g)では、図面をわかりやすくするため、スライドカム72の搬送方向の長さを、図3(a)よりも長くしている。
このことを利用して、本実施の形態では、図6(a)に示すように、ノズルキャップ61がキャッピング位置に位置している状態で、ASFモータ102を正転させてスライドカム72を搬送方向の上流側に移動させ、センサ79がオフからオンに切り換わったときに、さらにASFモータ102を所定量だけ回転させることにより、図7(a)に示すように、ノズルキャップ61をキャッピング位置から中間位置に移動させる。このとき、平行部76dが搬送方向と平行に延びているため、センサ79がオフからオンに切り換わってからのASFモータ102の回転量に多少のばらつきがあっても、突起68cは、平行部76dのいずれかの部分に位置し、ノズルキャップ61は確実に中間位置に位置する。これにより、センサ79がオフからオンに切り換わってからのASFモータ102の回転量に多少のばらつきがあっても、ノズルキャップ61とインク吐出面12aとの距離にばらつきが生じることがない。
また、本実施の形態では、この状態から、さらにASFモータ102を正転させ、センサ79がオンからオフに切り換わったときに、さらにASFモータ102を所定量だけ回転させることにより、図6(b)に示すように、ノズルキャップ61を中間位置からアンキャッピング位置に移動させることができる。このとき、平行部76cが搬送方向と平行に延びているため、センサ79がオンからオフに切り換わってからのASFモータ102の回転量に多少のばらつきがあっても、突起68cは、平行部76cのいずれかの部分に位置し、ノズルキャップ61は確実にアンキャッピング位置に位置する。
また、本実施の形態では、この状態から、さらにASFモータ102を正転させてスライドカム72を搬送方向の下流側に移動させ、センサ79がオフからオンに切り換わったときに、さらにASFモータ102を所定量だけ回転させることにより、図7(b)に示すように、ノズルキャップ61をアンキャッピング位置から中間位置に移動させることができる。このとき、平行部76dが搬送方向と平行に延びているため、センサ79がオフからオンに切り換わってからのASFモータ102の回転量に多少のばらつきがあっても、突起68cは、平行部76dのいずれかの部分に位置し、ノズルキャップ61は確実に中間位置に位置する。すなわち、センサ79がオフからオンに切り換わってからのASFモータ102の回転量に多少のばらつきがあっても、ノズルキャップ61とインク吐出面12aとの距離にばらつきが生じることがない。
また、本実施の形態では、この状態から、さらにASFモータ102を正転させ、センサ79がオンからオフに切り換わったときに、さらにASFモータ102を所定量だけ回転させることにより、図6(a)に示すように、ノズルキャップ61を中間位置からキャッピング位置に移動させることができる。このとき、平行部76bが搬送方向と平行に延びているため、センサ79がオンからオフに切り換わってからのASFモータ102の回転量に多少のばらつきがあっても、突起68cは、平行部76bのいずれかの部分に位置し、ノズルキャップ61は確実にキャッピング位置に位置する。
一方、選択駆動ギヤ137がASFモータ102に接続された状態で、ASFモータ102を逆転(CCW)させると、ASFモータ102の動力がギヤ137、139a、139bに伝達され、図9に示すように、太陽ギヤ139aが図9の時計回り方向に回転する。これにより、遊星ギヤ139bが、太陽ギヤ139aの軸を中心に図9の反時計回り方向に回動し、上側からバルブ駆動ギヤ134aと噛み合う。遊星ギヤ139bとバルブ駆動ギヤ134aとが噛み合った状態で、さらにASFモータ102の逆転を継続すると、ASFモータ102の動力がバルブ駆動ギヤ134aに伝達され、バルブ駆動ギヤ群134を構成する各ギヤが回転し、バルブカム85及び流路部材82が回転する。そして、切換バルブ62では、流路部材82を回転させることにより、キャップ連通ポート84a、84bとポンプ連通ポート84dとの連通とその遮断等、連通ポート84a〜84d間の連通関係を切り換えることができる。
<ギヤの材質>
ここで、遊星ギヤ139bと、遊星ギヤ139bと噛み合い可能なクランクギヤ73及びバルブ駆動ギヤ134aの材質について説明する。本実施の形態では、図10に示すように、クランクギヤ73が、ガラス繊維を例えば含有する、ポリアセタール樹脂(POM)などの合成樹脂材料によって構成されている。ここで、クランクギヤ73におけるガラス繊維の含有率は、例えば、25重量%程度である。これに対して、遊星ギヤ139b及びバルブ駆動ギヤ134aは、ガラス繊維を含有しない、ポリアセタール樹脂などの合成樹脂材料によって構成されている。ここで、図10では、各ギヤにおけるガラス繊維の含有の有無を示している。なお、プリンタ1における、遊星ギヤ139b、クランクギヤ73及びバルブ駆動ギヤ134a以外のギヤについては、例えば、遊星ギヤ139b及びバルブ駆動ギヤ134aと同様の、ガラス繊維を含有しない合成樹脂材料によって構成されている。
ガラス繊維を含有する合成樹脂材料によって構成されるクランクギヤ73は、ガラス繊維を含有しない合成樹脂材料によって構成される遊星ギヤ139b及びバルブ駆動ギヤ134aよりも動摩擦係数が大きくなる。例えば、ガラス繊維を含有しないポリアセタール樹脂の同じ材料に対する動摩擦係数が0.3程度となる。これに対して、ガラス繊維を25重量%含有するポリアセタール樹脂の、同じ材料に対する動摩擦係数が0.5程度となる。また、例えば、ガラス繊維を含有しないPOM樹脂である、ポリプラスチック株式会社製のジュラコン(登録商標)M90−44では、炭素鋼に対する動摩擦係数が0.46程度となる。これに対して、ガラス繊維を20質量%含有するPOM樹脂である、ポリプラスチック株式会社製のジュラコン(登録商標)GH20では、炭素鋼に対する動摩擦係数が0.55程度となる。また、ガラス繊維を25質量%含有するPOM樹脂である、ポリプラスチック株式会社製のジュラコン(登録商標)GH25では、炭素鋼に対する動摩擦係数が0.60程度となる。
これにより、遊星ギヤ139bとクランクギヤ73とが噛み合った状態での、遊星ギヤ139bとクランクギヤ73の間の最大摩擦力が、遊星ギヤ139bとバルブ駆動ギヤ134aとが噛み合った状態での、遊星ギヤ139bとバルブ駆動ギヤ134aとの間の最大摩擦力よりも大きくなる。
吸引ポンプ63は、チューブポンプであり、上記のとおりチューブ86dを介して切換バルブ62のポンプ連通ポート84dと連通しており、切換バルブ62と反対側において、チューブ86eを介して廃液タンク64と連通している。また、図11に示すように、吸引ポンプ63は、ギヤ63aを有する。ギヤ63aは、ポンプ駆動ギヤ141aを含むポンプ駆動ギヤ群141と接続され、後述するようにポンプ駆動ギヤ群141を介してPFモータ101と接続可能に構成されている。そして、吸引ポンプ63とPFモータ101とが接続された状態で、PFモータ101が正転すると、PFモータ101の動力が吸引ポンプ63に伝達され、吸引ポンプ63は、チューブ86dと86eとの連通を遮断する遮断状態となる。そして、さらにPFモータ101の正転が継続されると、吸引ポンプ63は吸引を行う。一方、PFモータ101が逆転すると、PFモータ101の動力が吸引ポンプ63に伝達され、吸引ポンプ63は、チューブ86dと86eとが連通された連通状態となる。なお、回転の方向によって遮断状態と連通状態との間で切換可能なチューブポンプは公知のものであるため、ここでは、これ以上の詳細な説明は省略する。
廃液タンク64は、後述の吸引パージ等によって排出されたインクなどを貯留するためのものである。廃液タンク64のインクが貯留される空間は大気連通している。これにより、チューブ86cを介して廃液タンク64と連通する大気連通ポート84cは大気連通している。また、吸引ポンプ63が上記連通状態となっているときに、ポンプ連通ポート84dが、チューブ86d、86e、吸引ポンプ63及び廃液タンク64を介して大気連通する。
(モータの接続の切換)
次に、PFモータ101及びASFモータ102の接続の切換について図12(a)〜(c)、図13(a)〜(c)を用いて説明する。
図12(a)〜(c)、図13(a)〜(c)に示すように、PFモータ101には、駆動軸105が接続されている。駆動軸105には、駆動ローラ13aが取り付けられている。また、駆動軸105には、PF入力ギヤ111が取り付けられている。そして、PFモータ101が駆動されると、駆動軸105と駆動ローラ13aとPF入力ギヤ111とが一体的に回転する。
また、PF入力ギヤ111は、PF切換ギヤ112と噛み合っている。PF切換ギヤ112は、走査方向に延びた軸106に回転自在に支持されている。また、PF切換ギヤ112は、キャリッジ11の走査方向への移動に連動して、軸106に沿って走査方向に移動可能となっている。これにより、PF切換ギヤ112を、図12(a)〜(c)のいずれかの位置に選択的に移動させることができるようになっている。そして、PF切換ギヤ112は、図12(a)、(b)で示す位置に位置している状態で、ポンプ駆動ギヤ141aと噛み合わず、図12(c)に示す位置に位置している状態で、ポンプ駆動ギヤ141aと噛み合う。また、PF入力ギヤ111は、走査方向に延びており、PF切換ギヤ112は、図12(a)〜(c)のいずれに位置しているときにも、PF入力ギヤ111と噛み合う。
図12(a)〜(c)、図13(a)〜(c)に示すように、ASFモータ102は、ASF入力ギヤ群120と接続されている。また、ASF入力ギヤ群120は、クラッチギヤ121を有する。クラッチギヤ121は、図13(a)〜(c)及び図14(a)、(b)に示すように、2つのギヤ121a、121bを有する。ギヤ121a(本発明の「第1ギヤ」)は、軸方向が走査方向と平行なギヤであり、ASF入力ギヤ群120を構成する他のギヤを介して、ASFモータ102と接続されている。ギヤ121b(本発明の「第2ギヤ」)はギヤ121aと同軸に配置され、走査方向に延び、ASF切換ギヤ122と噛み合っている。
また、ギヤ121aとギヤ121bとは、回転方向に遊びを持って連結されている。より詳細に説明すると、図14(a)、(b)に示すように、ギヤ121aの側面には、2つの突出部121a1が形成されている。2つの突出部121a1は、ギヤ121aの周方向に約180°ずれて配置されている。また、各突出部121a1は、ギヤ121aの周方向に90°よりも小さい角度にわたって延びている。一方、ギヤ121bの内部には、走査方向に延びた円筒状のリブ121b1と、リブ121b1の外周面から、ギヤ121bの径方向における外側に延びた4つのリブ121b2とが形成されている。4つのリブ121b2のうち、ギヤ121bの周方向に隣接するリブ121b2同士は、ギヤ121bの周方向に互いに約90°ずれて配置されている。そして、ギヤ121aの各突出部121a1が、ギヤ121bの周方向に隣接する2つのリブ121b2の間の空間121b3に挿通されることによって、ギヤ121aとギヤ121bとが連結されている。ASFモータ102が回転すると、ギヤ121aが回転する。そして、ギヤ121aの回転方向における、突出部121a1の下流側の端部がリブ121b2に接触するまでは、ギヤ121aが単独で回転し、突出部121a1の下流側の端部がリブ121b2に接触した後は、ギヤ121aとギヤ121bとが一体的に回転する。
また、ASF切換ギヤ122は、PF切換ギヤ112との走査方向における位置関係が常に保持されるように軸106に取り付けられている。これにより、キャリッジ11の移動に連動してPF切換ギヤ112が走査方向に移動すると、ASF切換ギヤ122も走査方向に移動する。
そして、本実施の形態では、ASF切換ギヤ122を、走査方向に移動させることにより、図13(a)〜(c)、のいずれかの位置に選択的に移動させることができるようになっている。そして、ASF切換ギヤ122は、図13(a)で示す位置に位置している状態では、給紙ギヤ131と噛み合う。また、ASF切換ギヤ122は、図13(b)、(c)で示す位置に位置している状態では、選択駆動ギヤ137と噛み合う。また、ギヤ121bが走査方向に延びていることにより、ASF切換ギヤ122が図13(a)〜(c)のいずれの位置に位置している状態でも、ASF切換ギヤ122は、ギヤ121bと噛み合っている。
ここで、ASF切換ギヤ122を図13(a)〜(c)に示す位置の間で移動させて、ASF切換ギヤ122と噛み合うギヤを切り換える前には、ASFモータ102を駆動して、ASF切換ギヤ122とこれに噛み合うギヤとを両方向に微小角度ずつ交互に回転させることによって、ギヤ間の噛み合いを外れやすくする。本実施の形態では、ASFモータ102とASF切換ギヤ122との間にクラッチギヤ121が介在しており、クラッチギヤ121のギヤ121aとギヤ121bとが遊びの範囲で相対回転可能となっている。したがって、このとき、ASF切換ギヤ122、及び、これと噛み合うギヤがスムーズに回転する。これにより、上記動作を行う回数を少なくして、ASF切換ギヤ122と噛み合うギヤを切り換えるのにかかる時間を短くすることができる。
(制御装置)
次に、プリンタ1の動作を制御するための制御装置150について説明する。制御装置150は、図15に示すように、CPU(Central Processing Unit)151、ROM(Read Only Memory)152、RAM(Random Access Memory)153、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)154等を備え、これらが協働してキャリッジモータ156、インクジェットヘッド12、PFモータ101、ASFモータ102、ワイパ昇降装置157等の動作を制御する。
ここで、図15では、CPU151を1つだけ図示しているが、制御装置150は、CPU151を1つだけ備え、この1つのCPU151が処理を一括して行ってもよいし、CPU151を複数備え、これら複数のCPU151が処理を分担して行ってもよい。また、図15では、ASIC154を1つだけ図示しているが、制御装置150は、ASIC154を1つだけ備え、この1つのASIC154が処理を一括して行ってもよいし、ASIC154を複数備え、これら複数のASIC154が処理を分担して行ってもよい。
(印刷動作)
次に、プリンタ1において印刷を行う方法について説明する。プリンタ1では、印刷や後述のメンテナンスなどを行わない待機状態において、ノズルキャップ61がキャッピング位置に位置している。これにより、ノズルキャップ61がインク吐出面12aに接触し、ノズル17内のインクの乾燥が防止されている。また、上記待機状態では、遊星ギヤ139bが、クランクギヤ73と噛み合った状態に維持されている。また、上記待機状態では、切換バルブ62において、図16(a)に示すように、キャップ連通ポート84a、84bと、ポンプ連通ポート84dとが連通した状態となっている。また、吸引ポンプ63は、上記連通状態となっている。これにより、待機状態では、複数のノズル17を覆うノズルキャップ61のキャップ部61a、61bが、吸引ポンプ63を介して大気連通している。また、待機状態では、PF切換ギヤ112及びASF切換ギヤ122が図12(c)に示す位置に位置している。なお、図16(a)では吸引ポンプ63に、上下両方を向いた矢印を付すことによって、吸引ポンプ63が連通状態であることを示している。
プリンタ1において印刷を行うためには、図17に示すように、まず、ASFモータ102を正転させることによって、ノズルキャップ61をキャッピング位置からアンキャッピング位置まで降下させる(S101)。次に、キャリッジモータ156を駆動してキャリッジ11を移動させることで、PF切換ギヤ112及びASF切換ギヤ122を図12(a)の位置に移動させたうえで、ASFモータ102を正転させることにより、用紙カセット21から印刷部2に記録用紙Pを供給させる(S102)。
続いて、PFモータ101を正転させて、搬送ローラ13、14に、供給された記録用紙Pを搬送方向に搬送させ、キャリッジモータ156を駆動してキャリッジ11を走査方向に往復移動させつつ、インクジェットヘッド12を駆動して複数のノズル17からインクを吐出させることにより、記録用紙Pに印刷を行わせる(S103)。そして、印刷の完了後、上記待機状態に戻す(S104)。具体的には、キャリッジモータ156を駆動して、キャリッジ11を、インク吐出面12aがノズルキャップ61と対向する位置まで移動させ、この状態で、ASFモータ102を正転させることによって、ノズルキャップ61をアンキャッピング位置からキャッピング位置まで上昇させる。また、ノズルキャップ61がキャッピング位置に到達するまで、ASFモータ102を正転させた後、ASFモータ102を停止させることによって、遊星ギヤ139bをクランクギヤ73と噛み合った状態に維持させる。
ここで、印刷を行うときには、上述したように、印刷が開始されるまでの間に、ASF切換ギヤ122と噛み合うギヤを切り換える。そして、ASF切換ギヤ122と噛み合うギヤを切り換える前には、上述したように、ASFモータ102を駆動して、ASF切換ギヤ122とこれに噛み合うギヤとを、両方向に微小角度ずつ回転させて、ギヤ間の噛み合いを外れやすくする。本実施の形態では、上述したように、ASFモータ102とASF切換ギヤ122との間にクラッチギヤ121が介在していることにより、ASF切換ギヤ122と噛み合うギヤを切り換えるのにかかる時間を短くすることができる。これにより、印刷が開始されるまでの時間を短くすることができる。
(メンテナンス)
次に、メンテナンスユニット7を用いたメンテナンスについて説明する。メンテナンスでは、図18に示すように、まず、流路部材82が収容部材81に固着して、流路部材82を回転させることができなくなっているか否かを判定する(S201)。そして、流路部材82が収容部材81に固着していない場合には(S201:NO)、そのままS203に進み、流路部材82が収容部材81に固着している場合には(S201:YES)、バルブクリーニングを行ってから(S202)、S203に進む。なお、S201では、例えば、待機状態で、ASFモータ102を所定時間逆転させたときに、流路部材82が回転しないことにより、ASFモータ102に流れる電流が所定の閾値を超えた場合に、流路部材82が収容部材81に固着していると判定する。
バルブクリーニングでは、図16(b)に示すように、待機状態から、PFモータ101を正転させることで、吸引ポンプ63に吸引を行わせる。すると、複数のノズル17からインクジェットヘッド12内のインクが排出されて切換バルブ62に流れ込む。これにより、切換バルブ62内で固化したインクが、切換バルブ62に流れ込んだインクの水分を吸収して溶け、流路部材82の収容部材81への固着が解消される。さらに、吸引ポンプ63による吸引中に、ASFモータ102を逆転させて、流路部材82を回転させる。すると、切換バルブ62内に流れ込んだインクが切換バルブ62内の各部分に均等に行き渡る。これにより、流路部材82の収容部材81への固着を効率よく解消させることができる。なお、図16(b)では、吸引ポンプ63に、下向きの矢印を付すことによって、吸引ポンプ63が遮断状態となって吸引を行っていることを示している。後述の図16(c)〜(f)についても同様である。
後述の吸引パージや空吸引を行ったときには、切換バルブ62にインクが流れ込む。切換バルブ62内に流れ込んだインクが長期間放置されると固化し、流路部材82が収容部材81に固着してしまう虞がある。流路部材82が収容部材81に固着すると、後述の吸引パージや空吸引を行う際に、流路部材82を回転させることができなくなってしまう虞がある。そこで、本実施の形態では、上述したようにバルブクリーニングを行うことにより、流路部材82の収容部材81への固着を解消させる。
S203では、吸引パージを行わせる。より詳細には、S203では、インクジェットヘッド12内の増粘したブラックインクを排出させるためのブラックの吸引パージと、インクジェットヘッド12内の増粘したカラーインクを排出させるためのカラーの吸引パージとを続けて行わせる。
ブラックの吸引パージでは、ノズルキャップ61をキャッピング位置に位置させ、切換ギヤ112、122を図12(c)の位置に位置させた状態で、ASFモータ102を逆転させて、流路部材82を回転させることにより、図16(c)に示すように、キャップ連通ポート84aとポンプ連通ポート84dとを連通させ、キャップ連通ポート84bと大気連通ポート84cとを連通させる。そして、この状態で、PFモータ101を正転させて、吸引ポンプ63に吸引を行わせる。これにより、最も右側のノズル列18を形成する複数のノズル17からインクジェットヘッド12内の増粘したブラックインクが排出される。なお、キャップ連通ポート84bと大気連通ポート84cとを連通させているのは、吸引時のノズルキャップ61の変形によってキャップ部61b内の空間の容積が減少したときの、キャップ部61b内の圧力上昇を抑えるためである。
カラーの吸引パージでは、ノズルキャップ61をキャッピング位置に位置させ、切換ギヤ112、122を図12(c)の位置に位置させた状態で、ASFモータ102を逆転させて、流路部材82を回転させることにより、図16(d)に示すように、キャップ連通ポート84bとポンプ連通ポート84dとを連通させ、キャップ連通ポート84aと大気連通ポート84cとを連通させる。そして、この状態で、PFモータ101を正転させて、吸引ポンプ63に吸引を行わせる。これにより、左側3列のノズル列18を形成する複数のノズル17からインクジェットヘッド12内の増粘したカラーインクが排出される。なお、キャップ連通ポート84aと大気連通ポート84cとを連通させているのは、吸引時のノズルキャップ61の変形によってキャップ部61a内の空間の容積が減少したときのキャップ部61a内の圧力上昇を抑えるためである。
次に、吸引パージによってノズルキャップ61に溜まったインクを排出させる空吸引を行わせる(S204)。より詳細には、S204では、ブラックの吸引パージによってキャップ部61aに溜まったブラックインクを排出させるためのブラックの空吸引と、カラーの吸引パージによってキャップ部61bに溜まったカラーインクを排出させるためのカラーの空吸引とを続けて行わせる。
ブラックの空吸引では、切換ギヤ112、122を図12(c)の位置に位置させた状態で、ASFモータ102を正転させて、クランクギヤ73を回転させることにより、図7(a)に示すように、ノズルキャップ61をキャッピング位置から中間位置まで降下させる。続いて、ASFモータ102を逆転させて、流路部材82を回転させることにより、図16(e)に示すように、キャップ連通ポート84aとポンプ連通ポート84dとを連通させる。そして、この状態で、PFモータ101を正転させて、吸引ポンプ63に吸引を行わせる。これにより、キャップ部61aに溜まったブラッククインクが排出される。
カラーの空吸引では、図7(a)に示すように、ノズルキャップ61を中間位置に位置させた状態で、ASFモータ102を逆転させて、流路部材82を回転させることにより、図16(f)に示すように、キャップ連通ポート84bとポンプ連通ポート84dとを連通させる。そして、この状態で、PFモータ101を正転させて、吸引ポンプ63に吸引を行わせる。これにより、キャップ部61bに溜まったカラーインクが排出される。
本実施の形態と異なり、空吸引を行わせる際に、ノズルキャップ61をキャッピング位置からアンキャッピング位置まで降下させると、ノズルキャップ61がインク吐出面12aから離れる際に、これらの間にできるインク(ブリッジ)が破壊され、ノズルキャップ61からインクがこぼれてしまう虞がある。そこで、本実施の形態では、空吸引を行わせる際に、ノズルキャップ61を中間位置まで降下させる。ここで、本実施の形態では、ノズルキャップ61を中間位置まで降下させても、ブリッジが破壊されないように中間位置の高さが設定されている。これにより、空吸引の際に、ブリッジが破壊されてノズルキャップ61からインクがこぼれてしまうのを防止することができる。
次に、ワイパ59により、インク吐出面12aに付着したインクを拭き取るワイピングを行わせる(S205)。ワイピングを行わせるためには、ASFモータ102を正転させて、クランクギヤ73を回転させることにより、図6(b)に示すように、ノズルキャップ61をアンキャッピング位置まで降下させる。また、ワイパ昇降装置157を駆動してワイパ59を上昇させる。そして、キャリッジモータ156を駆動してキャリッジ11を走査方向に移動させる。これにより、インク吐出面12aに付着したインクがワイパ59によって拭き取られる。ここで、ノズルキャップ61が中間位置に位置している状態では、アンキャッピング位置に位置している状態よりも、ノズルキャップ61とインク吐出面12aとの距離が小さく、この状態でキャリッジ11を走査方向に移動させると、インク吐出面12aがノズルキャップ61と接触してしまう虞がある。そこで、本実施の形態では、インク吐出面12aがノズルキャップ61と接触してしまうのを防止するために、ワイピングの際に、ノズルキャップ61を中間位置からアンキャッピング位置まで降下させている。
次に、複数のノズル17から、ワイピングによって流れ込んだインクなどを排出するためのフラッシングを行わせる(S206)。フラッシングを行わせるためには、キャリッジモータ156を駆動させて、キャリッジ11をインク吐出面12aがノズルキャップ61と対向する位置に戻したうえで、ASFモータ102を正転させて、クランクギヤ73を回転させることにより、図7(b)に示すように、ノズルキャップ61を中間位置まで上昇させる。そして、この状態で、インクジェットヘッド12に複数のノズル17からノズルキャップ61に向けてインク吐出させる。
ここで、本実施の形態と異なり、フラッシングの際に、ノズルキャップ61をアンキャッピング位置に位置させたままとすることも考えられる。しかしながら、この場合には、フラッシングによってノズル17から吐出されたインクがノズルキャップ61で跳ね返り、ノズルキャップ61の外部に飛び出してしまう虞がある。そこで、本実施の形態では、フラッシングの際に、ノズルキャップ61をアンキャッピング位置よりもインク吐出面12aに近い中間位置に位置させている。これにより、フラッシングによりノズル17から吐出されたインクが、ノズルキャップ61で跳ね返ってノズルキャップ61の外部に飛び出してしまうのを防止することができる。
次に、フラッシングによってノズルキャップ61に溜まったインクを排出させるために、S204と同様の空吸引を行わせる(S207)。そして、S207の空吸引の完了後、ASFモータ102を正転させて、図6(a)に示すように、ノズルキャップ61をキャッピング位置に移動させることにより、上述の待機状態に戻す(S208)。このときにも、ノズルキャップ61がキャッピング位置に到達するまでASFモータ102を正転させた後、ASFモータ102を停止させることによって、遊星ギヤ139bをクランクギヤ73と噛み合った状態に維持させる。以上により、メンテナンスが終了する。
ここで、プリンタ1では、待機状態から、印刷が開始されるまでの時間を極力短くするために、ノズルキャップ61をキャッピング位置からアンキャッピング位置まで移動させるのにかかる時間を極力短くすることが要求される。一方で、本実施の形態では、遊星ギヤ139bが、クランクギヤ73と噛み合う位置と、バルブ駆動ギヤ134aと噛み合う位置との間で移動可能となっている。そのため、遊星ギヤ139bがクランクギヤ73と噛み合った状態で、遊星ギヤ139bに外力が加わると、遊星ギヤ139bのクランクギヤ73との噛み合いが外れてしまう虞がある。
遊星ギヤ139bのクランクギヤ73との噛み合いが外れると、ノズルキャップ61をキャッピング位置からアンキャッピング位置に移動させるためにASFモータ102を駆動したときに、遊星ギヤ139bがクランクギヤ73と噛み合う位置に移動した時点から、クランクギヤ73の回転、すなわち、ノズルキャップ61の降下が開始される。この場合には、遊星ギヤ139bがクランクギヤ73と噛み合う位置に移動するまでの間、ノズルキャップ61が降下しないため、その分、ノズルキャップ61をキャッピング位置からアンキャッピング位置まで移動させるのにかかる時間が長くなってしまう。その結果、印刷が開始されるまでの時間が長くなってしまう。
また、本実施の形態では、遊星ギヤ139bは、下方からクランクギヤ73と噛み合うため、重力の影響により、遊星ギヤ139bのクランクギヤ73との噛み合いが外れやすい。
また、本実施の形態では、ASFモータ102とASF切換ギヤ122との間に、クラッチギヤ121が介在している。これにより、上述したように、ASF切換ギヤ122と噛み合うギヤを切り換えるのにかかる時間が短くなり、印刷が開始されるまでの時間を短くすることができる。しかしながら、ASFモータ102とASF切換ギヤ122との間に、クラッチギヤ121が介在していると、クラッチギヤ121において、ギヤ121aとギヤ121bとが遊びの範囲内で相対回転したときに、遊星ギヤ139bのクランクギヤ73との噛み合いが外れやすくなる。そして、遊星ギヤ139bのクランクギヤ73との噛み合いが外れると、上記のとおり、印刷が開始されるまでの時間が長くなってしまう。
そこで、本実施の形態では、クランクギヤ73を、ガラス繊維を含有する合成樹脂材料によって構成されたものとしている。これにより、クランクギヤ73及び遊星ギヤ139bの両方が、ガラス繊維を含有しない合成樹脂材料によって構成されている場合よりも、遊星ギヤ139bとクランクギヤ73との間の最大摩擦力が大きくなり、遊星ギヤ139bのクランクギヤ73との噛み合いを外れにくくすることができる。その結果、ノズルキャップ61をキャッピング位置からアンキャッピング位置まで移動させるのにかかる時間を短くすることができる。
ここで、本実施の形態と異なり、クランクギヤ73の代わりに、遊星ギヤ139bを、ガラス繊維を含有する合成樹脂材料によって構成されたものとすることも考えられる。しかしながら、この場合には、遊星ギヤ139b及びバルブ駆動ギヤ134aの両方が、ガラス繊維を含有しない合成樹脂材料によって構成されている場合と比較して、遊星ギヤ139bとバルブ駆動ギヤ134aとの間の最大摩擦力が大きくなり、遊星ギヤ139bとバルブ駆動ギヤ134aとの噛み合いが外れにくくなる。遊星ギヤ139bをバルブ駆動ギヤ134aと噛み合う位置から、クランクギヤ73と噛み合う位置に移動させるときには、ASFモータ102を駆動して、遊星ギヤ139b及びバルブ駆動ギヤ134aを両方向に微小角度ずつ交互に回転させることによって、遊星ギヤ139bとバルブ駆動ギヤ134aとの噛み合いを外れやすくするが、遊星ギヤ139bとバルブ駆動ギヤ134aとの噛み合いが外れにくいと、この動作を行う回数が多くなり、遊星ギヤ139bの移動を開始させるまでの時間が長くなってしまう。
そこで、本実施の形態では、クランクギヤ73を、ガラス繊維を含有する合成樹脂材料によって構成されるものとし、遊星ギヤ139b及びバルブ駆動ギヤ134aを、ガラス繊維を含有しない合成樹脂材料によって構成されるものとしている。これにより、遊星ギヤ139bとバルブ駆動ギヤ134aとの噛み合いが外れにくくなるのを防止することができる。
また、本実施の形態では、ASFモータ102を正転させて、ノズルキャップ61をキャッピング位置まで移動させた後、ASFモータ102を停止させることによって、遊星ギヤ139bを、クランクギヤ73と噛み合った状態に維持している。これにより、次の印刷時などに、ノズルキャップ61をキャッピング位置からアンキャッピング位置まで移動させる際に、ASFモータ102を正転させると、直ちにノズルキャップ61の降下が開始される。その結果、ノズルキャップ61をキャッピング位置からアンキャッピング位置まで移動させるのにかかる時間を短縮することができる。
次に、本実施の形態の種々の変更を加えた変形例について説明する。尚、変形例の構成のうち本実施の形態と同じ構成については、本実施の形態と同じ符号を用い、説明についても適宜省略する。
上述の実施の形態では、互いに噛み合い可能なクランクギヤ73及び遊星ギヤ139bのうち、クランクギヤ73のみが、ガラス繊維を含有する合成樹脂材料によって構成され、遊星ギヤ139bが、ガラス繊維を含有しない合成樹脂材料によって構成されていたが、これには限られない。
変形例1では、図19(a)に示すように、遊星ギヤ139bが、ガラス繊維を含有する合成樹脂材料によって構成され、クランクギヤ73及びバルブ駆動ギヤ134aが、ガラス繊維を含有しない合成樹脂材料によって構成されている。この場合でも、上述の実施の形態と同様、クランクギヤ73及び遊星ギヤ139bの両方がガラス繊維を含有しない合成樹脂材料によって構成されている場合と比較して、クランクギヤ73と遊星ギヤ139bとの噛み合いを外れにくくすることができる。
変形例2では、図19(b)に示すように、クランクギヤ73及び遊星ギヤ139bが、ガラス繊維を含有する合成樹脂材料によって構成され、バルブ駆動ギヤ134aが、ガラス繊維を含有しない合成樹脂材料によって構成されている。この場合には、上述の実施の形態や変形例1のように、クランクギヤ73及び遊星ギヤ139bのうち片方のギヤのみがガラス繊維を含有する合成樹脂材料によって構成されている場合よりもさらに、クランクギヤ73と遊星ギヤ139bとの噛み合いを外れにくくすることができる。
また、上述の実施の形態や変形例1、2では、バルブ駆動ギヤ134aが、ガラス繊維を含有しない合成樹脂材料によって構成されていたが、これには限られない。
変形例3では、図19(c)に示すように、クランクギヤ73及びバルブ駆動ギヤ134aが、ガラス繊維を含有する合成樹脂材料によって構成され、遊星ギヤ139bが、ガラス繊維を含有しない合成樹脂材料によって構成されている。
変形例4では、図19(d)に示すように、遊星ギヤ139b及びバルブ駆動ギヤ134aが、ガラス繊維を含有する合成樹脂材料によって構成され、クランクギヤ73が、ガラス繊維を含有しない合成樹脂材料によって構成されている。
変形例5では、図19(e)に示すように、クランクギヤ73、遊星ギヤ139b及びバルブ駆動ギヤ134aが、全てガラス繊維を含有する合成樹脂材料によって構成されている。
変形例3〜5でも、上述の実施の形態や変形例1、2と同様、クランクギヤ73と遊星ギヤ139bとの噛み合いを外れにくくすることができる。
ただし、変形例1〜5のように、遊星ギヤ139b及びバルブ駆動ギヤ134aのうち、少なくとも一方のギヤが、ガラス繊維を含有する合成樹脂材料によって構成されている場合には、上述の実施の形態と比較して、バルブ駆動ギヤ134aと遊星ギヤ139bとの噛み合いが外れにくくなる。
また、変形例2〜5のように、クランクギヤ73、バルブ駆動ギヤ134a及び遊星ギヤ139bのうち2以上のギヤがガラス繊維を含有する合成樹脂材料によって構成されている場合において、ガラス繊維を含有するギヤ間で、ガラス繊維の含有率が同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
ただし、変形例2、5のように、クランクギヤ73及び遊星ギヤ139bの両方がガラス繊維を含有する合成樹脂材料によって構成されている場合には、図20(a)に示すように、クランクギヤ73におけるガラス繊維の含有率R1が、遊星ギヤ139bにおけるガラス繊維の含有率R2よりも高いことが好ましい。
ガラス繊維を含有する合成樹脂材料からなるギヤでは、ガラス繊維の含有率が高いほど、動摩擦係数が大きくなる。例えば、ガラス繊維を20質量%含有するABS/PBT樹脂である、ダイセルポリマー株式会社製のノバロイ(登録商標)B2504では、同じ材料に対する動摩擦係数が0.32程度である。これに対して、ガラス繊維を45質量%含有するABS/PBT樹脂である、ダイセルポリマー株式会社製のノバロイ(登録商標)B2509では、同じ材料に対する動摩擦係数が0.36程度となる。また、上述したように、ガラス繊維を20質量%含有するPOM樹脂である、ポリプラスチック株式会社製のジュラコン(登録商標)GH20では、炭素鋼に対する動摩擦係数が、0.55程度となる。これに対して、ガラス繊維を25質量%含有するPOM樹脂である、ポリプラスチック株式会社製のジュラコン(登録商標)GH25では、炭素鋼に対する動摩擦係数が、0.60程度となる。
したがって、クランクギヤ73におけるガラス繊維の含有率R1を、遊星ギヤ139bにおけるガラス繊維の含有率R2よりも高くすれば、クランクギヤ73と遊星ギヤ139bとの噛み合いを外れにくくしつつも、バルブ駆動ギヤ134aとクランクギヤ73との噛み合いを極力外れやすくすることができる。
また、変形例3、5のように、クランクギヤ73及びバルブ駆動ギヤ134aの両方がガラス繊維を含有する合成樹脂材料によって構成されている場合には、図20(b)に示すように、クランクギヤ73におけるガラス繊維の含有率R3が、バルブ駆動ギヤ134aにおけるガラス繊維の含有率R4よりも高いことが好ましい。
上述したように、ガラス繊維を含有する合成樹脂材料からなるギヤでは、ガラス繊維の含有率が高いほど、動摩擦係数が大きくなる。したがって、クランクギヤ73におけるガラス繊維の含有率R3を、バルブ駆動ギヤ134aにおけるガラス繊維の含有率R4よりも高くすれば、クランクギヤ73と遊星ギヤ139bとの噛み合いを外れにくくしつつも、バルブ駆動ギヤ134aとクランクギヤ73との噛み合いを極力外れやすくすることができる。
また、上述の実施の形態では、ASF切換ギヤ122とASFモータ102との間に、ASF切換ギヤ122と噛み合い可能に構成されたクラッチギヤ121が設けられていたが、これには限られない。クラッチギヤは、ASF切換ギヤ122とASFモータ102との間に介在し、且つ、別のギヤを介してASF切換ギヤ122と接続可能に構成されていてもよい。あるいは、クラッチギヤは、ASF切換ギヤ122と太陽ギヤ139aとの間に介在するギヤであるなど、ASFモータ102とクランクギヤ73との間に介在するギヤのうち、ASF切換ギヤ122よりもクランクギヤ73側のギヤであってもよい。さらには、ASFモータ102とクランクギヤ73との間に、クラッチギヤは介在していなくてもよい。
また、上述の実施の形態では、遊星ギヤ139bが、下方からクランクギヤ73と噛み合うようになっていたが、これには限らない。遊星ギヤ139bは、水平方向からクランクギヤ73と噛み合うようになっていてもよいし、上方からクランクギヤ73と噛み合うようになっていてもよい。これらの場合でも、何らかの要因によって、遊星ギヤ139bに、クランクギヤ73から離れる方向の外力が加わったときに、遊星ギヤ139bがクランクギヤ73から外れてしまうのを防止することができる。
また、上述の実施の形態では、遊星ギヤ139bが、スライドカム72と連結されたクランクギヤ73と噛み合い可能となっていたが、これには限られない。遊星ギヤ139bは、他のギヤを介して、クランクギヤ73と接続可能となっていてもよい。なお、この場合には、上記他のギヤが、本発明の「第1伝達ギヤ」に相当する。
また、上述の実施の形態では、遊星ギヤ139bと噛み合い可能なバルブ駆動ギヤ134aが、バルブ駆動ギヤ群134を構成する他のギヤを介して、バルブカム85と接続されていたが、これには限られない。遊星ギヤ139bが、バルブカム85と直接接続されたギヤと噛み合い可能に構成されていてもよい。なお、この場合には、バルブカム85と直接接続されたギヤが、本発明の「第2伝達ギヤ」に相当する。
また、上述の実施の形態では、遊星ギヤ139bが、ノズルキャップ61を昇降させるためのクランクギヤ73と噛み合う位置と、バルブカム85を回転させるためのバルブ駆動ギヤ134aと噛み合う位置との間で移動可能となっていたが、これには限られない。遊星ギヤ139bは、クランクギヤ73と噛み合う位置と、バルブカム85以外の被駆動装置に動力を伝達するためのギヤ(本発明の「第2伝達ギヤ」)と噛み合う位置との間で移動可能となっていてもよい。
また、上述の実施の形態では、遊星ギヤ139bが、太陽ギヤ139aと連結部材139cとによって案内されて、クランクギヤ73と噛み合う位置と、バルブ駆動ギヤ134aと噛み合う位置との間で移動するようになっていたが、これには限られない。遊星ギヤ139bが、上述の実施の形態とは別の構成の案内部によって案内されるようになっていてもよい。
また、上述の実施の形態では、遊星ギヤ139bが、太陽ギヤ139aの回転方向(ASFモータ102の回転方向)に応じて、太陽ギヤ139aの軸を中心に回動することで、クランクギヤ73と噛み合う位置と、バルブ駆動ギヤ134aと噛み合う位置との間で移動可能となっていたが、これには限られない。遊星ギヤ機構139とは別の構成によって、ASFモータ102の回転方向に応じて互いに異なる方向に移動して、クランクギヤ73と噛み合う位置と、バルブ駆動ギヤ134aと噛み合う位置との間で移動可能に構成されたギヤ(本発明の「移動ギヤ」)が設けられていてもよい。なお、この場合にも、移動ギヤは、上記2つの位置の間で移動するときに、上述の実施の形態の太陽ギヤ139aや連結部材139cとは異なる構成の案内部によって案内される。
また、上述の実施の形態では、キャップ昇降装置70が、ASFモータ102からの動力で駆動されるものであったが、これには限られない。例えば、キャップ昇降装置70が、PFモータ101など、ASFモータとは別のモータによって駆動されるものであってもよい。
また、ノズルキャップ61を昇降させるためのキャップ昇降装置の構成は、上述の実施の形態のキャップ昇降装置70の構成には限られない。キャップ昇降装置70とは別の構成の装置によって、ノズルキャップ61昇降させることができるようになっていてもよい。
また、変形例6のプリンタ200は、図21に示すように、用紙カセット21に収容された記録用紙Pを搬送するための給紙ローラ222と、給紙ローラ222から搬送された記録用紙Pを挟む駆動ローラ213aと従動ローラ213bとを有している。給紙ローラ222と駆動ローラ213aは共に、モータ201により駆動される。モータ201は、中間ギヤ238と繋がり、中間ギヤ238はモータ201から動力が伝達される。中間ギヤ238は太陽ギヤ239aと噛み合い、太陽ギヤ239aは遊星ギヤ239bと噛み合っている。駆動ローラ213aは、中間ギヤ248を介してローラ駆動ギヤ250と繋がり、給紙ローラ222は、中間ギヤ268を介して給紙駆動ギヤ270と繋がる。ローラ駆動ギヤ250は給紙駆動ギヤ270よりも上方に配置され、駆動ギヤ250と給紙駆動ギヤ270は、上下方向において遊星ギヤ239bを挟むように配置される。遊星ギヤ239bは上下方向に移動可能で、遊星ギヤ239bが上方に移動してローラ駆動ギヤ250と噛み合い、遊星ギヤ239bが下方に移動して給紙駆動ギヤ270と噛み合う。尚、モータ201と中間ギヤ238は、複数のギヤを介して動力伝達がされる構成であってもよい。図21ではモータ201と中間ギヤ238の間の構成については省略する。
そして、ローラ駆動ギヤ250と遊星ギヤ239bの間の動摩擦係数が、給紙駆動ギヤ270と遊星ギヤ239bの間の動摩擦係数よりも大きい。具体的には、ローラ駆動ギヤ250が、上述したようなガラス繊維を含有する合成樹脂材料によって構成される。これに対し、遊星ギヤ239bと給紙駆動ギヤ270は、ガラス繊維を含有しない、ポリアセタール樹脂等の合成樹脂材料によって構成される。
例えば、プリンタ200が、PCやタブレット端末等からデータサイズの大きい印刷データを受信して印刷を実行する際に、印刷途中で印刷データの受信待ちをする場合がある。その場合、必要な印刷データを受信し終わったら速やかに印刷を再開できるように、モータ201と駆動ローラ213aは動力が伝達可能な状態を保持するのが望ましい。プリンタ200は、駆動ローラ213aと給紙ローラ222のレイアウトの都合により、遊星ギヤ239bがローラ駆動ギヤ250の下方に位置している。その為、プリンタ200に振動が加わった場合等に、遊星ギヤ239bがローラ駆動ギヤ250から外れる虞がある。しかし、プリンタ200は、遊星ギヤ239bがガラス繊維を含む合成樹脂材料で構成されるため、遊星ギヤ239bとローラ駆動ギヤ250の間の動摩擦係数が大きくなり、遊星ギヤ239bがローラ駆動ギヤ250から外れにくい。
また、記録用紙Pを搬送する際に、遊星ギヤ239bは給紙駆動ギヤ270と噛み合って給紙ローラ222を駆動させた後、速やかに遊星ギヤ239bをローラ駆動ギヤ250と噛み合うように切り換えることができる。給紙駆動ギヤ270は、遊星ギヤ239bの下方に位置しており、給紙駆動ギヤ270と遊星ギヤ239bが噛み合った状態では外れない。また、データサイズの大きい印刷データの印刷を実行する際には、通常では記録用紙Pの一部がインクジェットヘッド12の下方に位置した状態が多く、印刷を再開する際に給紙ローラ222を使用するケースは少ない。その為、給紙駆動ギヤ270は、遊星ギヤ239bから速やかに外れることができ、印刷の際の動力伝達の切り換えを速やかに実現できる。
変形例6では、ローラ駆動ギヤ250のみ、ガラス繊維を含む合成樹脂材料で構成されていたが、これには限られない。例えば、ローラ駆動ギヤ250と遊星ギヤ239bが共にガラス繊維を含む合成樹脂材料で構成され、給紙駆動ギヤ270はガラス繊維を含まない合成樹脂材料で構成されていてもよい。
また、変形例7のプリンタ300は、図22に示すように、記録用紙Pを収容する用紙カセット320,321が上下方向に2つ並んで配置され、用紙カセット320は、給紙ローラ323により記録用紙Pが給紙され、用紙カセット321は、給紙ローラ322により記録用紙Pが給紙される。そして、プリンタ300は、PFモータ101により、給紙ローラ322と給紙ローラ323を選択的に駆動するように構成される。給紙ローラ322は、ベルト372と中間ギヤ317を介して給紙駆動ギヤ370に繋がる。また、給紙ローラ323は、ベルト384を介して給紙駆動ギヤ380に繋がる。給紙駆動ギヤ370は、給紙駆動ギヤ380より上方に配置される。さらに、プリンタ300は、PFモータ101により駆動される太陽ギヤ339aと、太陽ギヤ339aに噛み合う遊星ギヤ339bを備えている。遊星ギヤ339bは、上下方向において給紙駆動ギヤ370と給紙駆動ギヤ380の間に位置する。用紙カセット321に収容される記録用紙Pから給紙するときには、遊星ギヤ339bを給紙駆動ギヤ370に噛み合わせた状態で、PFモータ101を駆動して給紙ローラ322を駆動させる。また、用紙カセット320に収容される記録用紙Pから給紙するときには、遊星ギヤ339bを給紙駆動ギヤ380に噛み合わせた状態で、PFモータ101を駆動して給紙ローラ323を駆動させる。尚、図22のプリンタ300は、構成の一部のみ図示したもので、上記の実施の形態と共通する箇所については図示を省略している。また、図22では示していないが、給紙駆動ギヤ370,380等は、記録用紙Pと干渉しないように走査方向にずれて配置されたり、記録用紙Pの搬送経路を形成するリブ等が適宜設けられたりする。
例えば、2つの用紙カセット320,321のうち用紙カセット321を標準カセットとして設計する場合には、給紙ローラ322に繋がる給紙駆動ギヤ370が、ガラス繊維を含む合成樹脂材料で構成される。遊星ギヤ339bと給紙駆動ギヤ380は、ガラス繊維を含まない合成樹脂材料により構成される。
その為、遊星ギヤ339bと給紙駆動ギヤ370の間の動摩擦係数が、遊星ギヤ339bと給紙駆動ギヤ380の間の動摩擦係数よりも大きい。これにより、プリンタ300は、印刷が実行されずに待機しているときに、遊星ギヤ339bを給紙駆動ギヤ370に噛み合った状態を保持しやすい。
変形例7では、給紙駆動ギヤ370のみ、ガラス繊維を含む合成樹脂材料で構成されていたが、これには限られない。例えば、遊星ギヤ339bと給紙駆動ギヤ370が共にガラス繊維を含む合成樹脂材料で構成され、給紙駆動ギヤ380はガラス繊維を含まない合成樹脂材料で構成されていてもよい。
また、以上では、ノズルからインクを吐出することによって記録用紙に印刷を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。インク以外の液体を吐出する、プリンタ以外の液体吐出装置に本発明を適用することも可能である。
また、プリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。1つのモータと2つの被駆動対象とを選択的に駆動させる動力伝達機構を有する装置であれば、本発明を適用することも可能である。