JP6755193B2 - プレス装置 - Google Patents

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Description

本発明は、鍛造等を行うプレス装置に関する。
従来、モータの動力によって被成形物の鍛造を行うプレス装置がある(例えば特許文献1を参照)。このようなプレス装置では、モータの動力によって回転する回転軸の運動が並進運動に変換されてスライドに伝達される。そして、スライドの下部に保持された上金型と、ベッドに保持された下金型との間で被成形物が加圧され、鍛造等の成形が行われる。
近年、超塑性現象を利用した鍛造法が実用化されている。超塑性現象とは、特定の材料について低速で変形させたときに、材料に大きな伸び量が得られる現象である。超塑性現象を利用した鍛造を超塑性鍛造と呼ぶ。超塑性鍛造では、複雑な形状の成形を行えるという利点がある。また、超塑性鍛造では、材料の変形応力が小さくなるため、プレス装置の最大荷重を小さくすることができ、プレス装置の小型化が図れる。
特開2007−313532号公報
超塑性鍛造では、金型を低速で動かして被成形物を低速で変形させる。金型を動かす速度は、被成形物の組成にもよるが、例えば0.01mm/秒或いは0.001mm/秒など非常に低速になる。
回転軸の駆動によりスライドを移動させる機械式のプレス装置の中には、回転軸の駆動制御によってスライドの速度を制御できるものがある。このため、機械式のプレス装置を用いてスライドの速度を超塑性現象が発現する低い速度に制御することで超塑性鍛造が可能ではないかと考えられた。
しかしながら、機械式のプレス装置においては、負荷が加わった状態で超低速にスライドを移動させると、回転軸の動力をスライドに伝達する機械部分の摺動面において潤滑膜の形成が難しくなる。このため、機械部分の潤滑状態が悪化し、安定した運転が阻害される恐れが生じる。
本発明は、回転軸の運動をスライドに伝達して被成形物を成形するプレス装置において、被成形物を低速で変形させても機械部分の潤滑状態の悪化を防ぐことのできるプレス装置を提供することを目的とする。
本発明は、
第1金型を保持するベッドと、
前記ベッドに近接離間する方向へ進退可能な第1スライドと、
動力が入力されて回転可能な回転軸と、
前記回転軸の回転を並進運動へ変換して前記第1スライドへ伝達し、前記第1スライドを進退させる伝達機構と、
前記第1スライドの前記ベッド側に設けられ、前記第1スライドの進退方向に沿って前記第1スライドに近接離間可能であり、第2金型が前記第1金型と非接触にかつ前記第1金型と対向するように保持される第2スライドと、
前記第1スライドと前記第2スライドとの間に配置され、前記第2スライドを前記第1スライドに近接離間させる圧力を発生させる流体室と、
前記流体室への作動流体の給排と前記回転軸に入力される動力とを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1スライドが前記ベッドに近づく期間に、前記第1スライドの移動速度以下の相対速度で前記第2スライドが前記第1スライドに近づくように前記流体室の作動流体を排出させる近接制御と、前記第2スライドを前記第1スライドから遠ざけかつ前記第1スライドを前記ベッドから遠ざける戻し制御と、が可能であり、
前記制御部は、
1回の成形サイクル中に、前記近接制御と前記戻し制御とを交互に複数回繰り返す、
プレス装置である。
また、本発明は、
ベッドと、
前記ベッドに近接離間する方向へ進退可能であり、第1金型を保持する第1スライドと、
動力が入力されて回転可能な回転軸と、
前記回転軸の回転を並進運動へ変換して前記第1スライドへ伝達し、前記第1スライドを進退させる伝達機構と、
前記ベッドの前記第1スライド側に設けられ、前記第1スライドの進退方向に沿って前記ベッドに近接離間可能であり、第2金型が前記第1金型と非接触にかつ前記第1金型と対向するように保持される第2スライドと、
前記ベッドと前記第2スライドとの間に配置され、前記第2スライドを前記ベッドに近接離間させる圧力を発生させる流体室と、
前記流体室への作動流体の給排と前記回転軸に入力される動力とを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1スライドが前記ベッドに近づく期間に、前記第1スライドの移動速度以下の速度で前記第2スライドが前記ベッドに近づくように前記流体室の作動流体を排出させる近接制御と、前記第2スライドを前記ベッドから遠ざけかつ前記第1スライドを前記ベッドから遠ざける戻し制御と、が可能であり、
前記制御部は、
1回の成形サイクル中に、前記近接制御と前記戻し制御とを交互に複数回繰り返す、
プレス装置である。
本発明によれば、回転軸の運動をスライドに伝達して被成形物を成形するプレス装置において、被成形物を低速で変形させても、機械部分の潤滑状態の悪化を防ぐことができる。
本発明の実施形態のプレス装置を示す構成図である。 実施形態に係るプレス装置の第1例の動作を説明するタイミングチャートである。 実施形態に係るプレス装置の第2例の動作を説明するタイミングチャートである。 本発明の実施形態に係るプレス装置の変形例を示す構成図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態のプレス装置を示す構成図である。
本実施形態に係るプレス装置1は、図1に示すように、クラウン21、アップライト22、ベッド23、ボルスタ24、第1スライド18、ガイド19、駆動機構100及びピストンシリンダ20を備える。さらに、プレス装置1は、油圧回路70、制御部2、第1位置センサ61及び第2位置センサ62を備える。ベッド23の上部にはボルスタ24を介して下金型32が保持される。ピストンシリンダ20の下部には、上金型31が、下金型32と非接触にかつ下金型32と対向するように保持される。図1の実施形態において、下金型32は本発明に係る第1金型の一例に相当し、上金型31は本発明に係る第2金型の一例に相当する。
クラウン21、アップライト22及びベッド23は、プレス装置1の各駆動部を支持するフレーム部である。クラウン21、アップライト22及びベッド23は、これらの内部にタイロッド25aが挿入され、かつ、タイロッドナット25bにより締め付けられることで、互いに締結されている。ボルスタ24は、ベッド23の上部に固定される。
第1スライド18は、ガイド19によって例えば上下方向(ベッド23に近接離間する方向に相当)に進退可能にガイドされる。ガイド19は、アップライト22などのフレーム部に支持される。
駆動機構100は、第1スライド18を駆動する動力の発生と、動力の伝達とを行う。駆動機構100は、モータ11、伝動軸12、減速機13、エキセン軸14及びコネクティングロッド15を備える。このうち、伝動軸12は、本発明に係る回転軸の一例に相当する。減速機13、エキセン軸14及びコネクティングロッド15は、本発明に係る伝達機構の一例に相当する。
モータ11は、クラウン21などのフレーム部に固定される。エキセン軸14は主軸部14aが、クラウン21又はアップライト22などのフレーム部に回転可能に支持される。減速機13は、フレーム部材を介して、クラウン21又はアップライト22などのフレーム部に支持される。
モータ11は、例えばサーボモータなど、回転量を制御可能なモータである。伝動軸12は、モータ11により回転駆動される。すなわち、伝動軸12はモータ11の動力を入力して回転可能である。エキセン軸14は、回転軸に沿って貫通する中空部を有する。伝動軸12は、この中空部においてエキセン軸14と相対的に回転可能に配置される。減速機13は、伝動軸12の回転運動を減速してエキセン軸14に伝達する。
エキセン軸14は、主軸部14aに対して偏心した偏心部14bを有し、偏心部14bがコネクティングロッド15と接続されている。コネクティングロッド15は、エキセン軸14と第1スライド18とを連結し、エキセン軸14の回転運動を並進運動に変換して第1スライド18に伝達する。
ピストンシリンダ20は、ピストン20Aと、第2スライド20Bとを有する。第2スライド20Bには、ピストン20Aをスライド可能に嵌入するシリンダ部が設けられている。第2スライド20Bはシリンダ部の内側に油室Rを有し、油圧回路70により油室R内の作動油が増減されることで、第2スライド20Bがピストン20Aに対して相対的に進退する。これによりピストンシリンダ20が伸縮する。ピストン20Aと第2スライド20Bのシリンダ部との間にはオイルシールが設けられ、油室Rの油圧が保持される。
ピストンシリンダ20は、伸縮方向が第1スライド18の進退方向と同一になるように、第1スライド18の下部(ベッド23側)に取り付けられている。図1の例では、ピストン20Aが第1スライド18の下部に固定され、第2スライド20Bが第1スライド18に対して上下方向に進退可能に取り付けられている。なお、シリンダが第1スライド18の下部に固定され、シリンダに嵌入されるピストンが第2スライドとして第1スライド18に対して進退可能に組み合わされた構成が採用されてもよい。これらの構成により、第2スライド20Bが、第1スライド18に近接離間可能となる。
ピストンシリンダ20の油室Rの横方向の幅は、上金型31における被成形物と接触する部分の横方向の幅より広いと好ましい。また、油室Rの奥行方向の幅は、上金型31における被成形物と接触する部分の奥行方向の幅より広いと好ましい。このように油室Rを幅広な構成とすることで、上金型31に与える大きな圧力をピストンシリンダ20により容易に発生させることが可能となる。また、油室Rの高さ方向の幅は、少なくとも油室Rの横幅又は奥行幅よりも小さいと好ましい。これにより、作動油の圧縮に起因する第2スライド20Bの進退方向の変位を小さくできる。ここで、横方向とは、エキセン軸14の軸方向であり、奥行方向とは、第1スライド18の進退方向に垂直でかつエキセン軸14の軸方向に垂直な方向である。高さ方向とは第2スライド20Bの進退方向である。
第1位置センサ61は、第1スライド18の進退方向の位置を検出する。第1位置センサ61としては、例えば第1スライド18とベッド23との距離を測定する測定器を採用できる。
第2位置センサ62は、ピストン20Aに対する第2スライド20Bの進退方向の位置を検出する。すなわち、第2位置センサ62は、ピストンシリンダ20の伸縮量を検出する。第2位置センサ62としては、例えばピストン20Aと第2スライド20Bとの距離を測定する測定器を採用できる。
油圧回路70は、タンク71、72、モータポンプ73、第1流量制御弁74、第2流量制御弁75及びリリーフ弁76を備える。モータポンプ73は、電気的に駆動して油圧を発生させる。第1流量制御弁74は、モータポンプ73の油圧に基づいて、ピストンシリンダ20の油室Rに作動油を送る。第1流量制御弁74は、制御部2の制御によって、作動油の供給と非供給との状態を切り替え、作動油を供給している状態では作動油の供給量を調整可能な制御弁である。第2流量制御弁75は、制御部2の制御によって、ピストンシリンダ20の作動油をタンク71に排出する状態と非排出の状態とに切り替える制御弁である。さらに、第2流量制御弁75は、制御部2の制御によって、作動油を排出している状態において作動油の排出量を調整できる。リリーフ弁76は、安全弁であり、ピストンシリンダ20の油室Rに連結される油路の圧力を上限以下に抑える。
制御部2は、モータ11の回転量を制御することで、第1スライド18の進退位置と進退速度とを制御する。制御部2は、第1位置センサ61の検出値に基づくフィードバック制御によって、より正確に第1スライド18の進退位置及び進退速度の制御を行ってもよい。
制御部2は、さらに、油圧回路70の駆動により油室Rに作動油を給排(供給及び排出)することで、ピストンシリンダ20の伸縮量と伸縮速度とを制御する。例えば、制御部2は、油圧回路70の第1流量制御弁74を開、第2流量制御弁75を閉とすることで、モータポンプ73からピストンシリンダ20の油室Rに作動油を供給し、ピストンシリンダ20を伸長させる。これにより、第2スライド20Bが第1スライド18に対して相対的に下降する。さらに、制御部2は、第1流量制御弁74による作動油の供給量を制御することで、ピストンシリンダ20の伸長速度を制御する。これにより、第1スライド18に対する第2スライド20Bの相対的な下降速度が制御される。一方、制御部2は、第1流量制御弁74を閉、第2流量制御弁75を開とすることで、ピストンシリンダ20の油室Rから作動油を排出させ、ピストンシリンダ20を収縮させる。これにより、第2スライド20Bが第1スライド18に対して相対的に上昇する。さらに、制御部2は、第2流量制御弁75の作動油の排出量を制御することで、ピストンシリンダ20の収縮速度を制御する。これにより、第1スライド18に対する第2スライド20Bの相対的な上昇速度が制御される。さらに、制御部2は、第2位置センサ62の検出値に基づくフィードバック制御を行うことで、より正確にピストンシリンダ20の伸縮量及び伸縮速度の制御を行ってもよい。これにより、第1スライド18に対する第2スライド20Bの相対的な進退位置および進退速度がより正確に制御される。
<成形サイクルの第1例の動作説明>
図2は、実施形態に係るプレス装置の第1例の動作を説明するタイミングチャートである。図2において縦軸は第1スライド18の進退方向における移動位置を表わす。また、第1スライド18の移動位置とは、ベッド23から第1スライド18までの距離に相当する。上金型31の移動位置とは、ベッド23から上金型31までの距離に相当する。第2スライド20Bの移動位置とは、第1スライド18に対する第2スライド20Bの相対的な移動位置を表わし、第1スライド18から第2スライド20Bまでの距離に相当する。上金型31の移動位置を示すグラフ線と、第1スライド18の移動位置を示すグラフ線とは、成形サイクルの開始時点t1で重なるようにオフセットされている。
成形サイクルの開始時点t1において、第2スライド20Bは1回の成形サイクル中で第1スライド18から最も離れた初期位置p0に保持される。すなわち、成形サイクルの開始時点t1には、ピストンシリンダ20は成形サイクル中で最も伸長した状態にされる。なお、第2スライド20Bの初期位置p0は、ピストンシリンダ20が最大伸長量に達したときの位置或いは最大伸長量から余裕分を差し引いた伸長量に達したときの位置とするとよい。また、成形サイクルの開始時点t1は、上金型31と下金型32との間で被成形物の加圧が開始される直前の時点に設定されてもよい。
第1スライド18が下降して、上金型31と下金型32との間で被成形物の加圧が開始される期間T1になると、制御部2は、第1スライド18の下降速度を所定の低い速度に制御する。このときの第1スライド18の下降速度は、駆動機構100の荷重がかかる部位に焼き付きが生じない範囲で低い値に制御される。
続いて、被成形物への加圧が大きくなって、被成形物が変形される成形期間T2になると、制御部2は、第1スライド18の下降速度を維持したまま、ピストンシリンダ20の油室Rから作動油を所定の速度で排出する制御を行う。これにより、ピストンシリンダ20が収縮し、第2スライド20Bが、第1スライド18に近づく方向に相対的に変位する。第2スライド20Bの第1スライド18に対する相対的な移動速度は、第1スライド18の下降速度以下に制御される。これにより、上金型31が低速で下降する。一例として、第1スライド18の下降速度を0.1mm/秒に制御し、第2スライド20Bの相対速度を0.09mm/秒に制御した場合、上金型31の下降速度は0.01mm/秒となる。上金型31の下降速度は、例えば超塑性鍛造を実現する微速下降の値に設定される。以下、このように上金型31を微速下降する制御を「近接制御」と呼ぶ。
近接制御が行われる成形期間T2において、被成形物は上金型31と下金型32との間で加圧および低速の変形が行われて超塑性鍛造による成形が完了する。近接制御は、例えば、第1スライド18が下死点に到達する直前まで行われてもよい。
鍛造が完了したら、制御部2は、モータ11を駆動して第1スライド18を成形サイクルの初期位置まで上昇させる。また、第1スライド18を上昇させる際の期間T3において、制御部2は、ピストンシリンダ20の油室Rへ作動油を供給する制御を行う。これにより、ピストンシリンダ20が伸張して、第1スライド18に対する第2スライド20Bの移動位置が初期位置p0に戻される。そして、1回の成形サイクルが終了する。
このような成形サイクルによれば、近接制御により上金型31が微速下降することで、被成形物の超塑性鍛造を実現できる。さらに、上金型31の微速下降は、第1スライド18の移動速度と第2スライド20Bの移動速度との差分により発生する。このため、上金型31を微速下降させる場合でも、第1スライド18は微速下降させる必要がない。従って、超塑性鍛造を行っても、駆動機構100の荷重部分(例えばエキセン軸14、コネクティングロッド15及び第1スライド18の各接続部分)において潤滑状態が悪化することを防止でき、安定した運転を行うことができる。
<成形サイクルの第2例の動作説明>
図3は、実施形態に係るプレス装置の第2例の動作を説明するタイミングチャートである。図3の各グラフ線の移動位置の意味は、図2のものと同様である。
成形サイクルの第2例は、上金型31を微速移動させる近接制御と、ピストンシリンダ20を初期状態に戻す制御とを交互に複数回繰り返すことで、超塑性鍛造が行われるストロークを長くする動作例である。
成形サイクルの開始時点t1において、第2スライド20Bは1回の成形サイクル中で第1スライド18から最も離れた初期位置p0に保持される。
第1スライド18が下降して、被成形物が変形される成形期間T11になると、その始めの期間T12において、制御部2は、成形サイクルの第1例で示したのと同様に、上金型31を微速移動させる近接制御を実行する。
次に、ピストンシリンダ20が所定の長さまで収縮したら、続く期間T13において、制御部2は、ピストンシリンダ20に作動油を供給して、第1スライド18に対する第2スライド20Bの移動位置を初期位置p0に戻す。同時に、制御部2は、ピストンシリンダ20の伸張量と同程度だけ第1スライド18を上昇させる。以下、期間T13に示した、上記制御のことを「戻し制御」と呼ぶ。
1回の戻し制御における上金型31の移動位置の変化量は、1回の近接制御における上金型31の移動位置の変化量よりも小さくなるように制御される。好ましくは、制御部2は、戻し制御中に上金型31の移動位置が保持されるように、或いは、戻し制御中に上金型31と下金型32との間に加えられる荷重が保持されるように、戻し制御を行ってもよい。移動位置を保持する制御は、例えば第1位置センサ61及び第2位置センサ62の出力に基づいて、制御部2がモータ11の駆動量と作動油の排出量とを制御することで実現できる。荷重を保持する制御は、例えば歪みセンサなどを用いた荷重の測定値に基づいて制御部2が駆動制御を行うことで実現できる。
制御部2は、成形期間T11において、近接制御(期間T12、T14、T16、T18)と戻し制御(期間T13、T15、T17)とを交互に繰り返し行う。これにより、超塑性鍛造を実現する上金型31の微速移動を長いストロークで行うことができる。
なお、戻し制御の際には、シャットハイト調整装置によりシャットハイトを長くする制御が併用されてもよい。シャットハイトとは、第1スライド18の下死点位置からベッド23の上面までの長さのことを言う。シャットハイト調整装置は、例えばコネクティングロッド15と第1スライド18との接続部の長さを連続的に変更可能とする装置であり、接続部の長さを変えることでシャットハイトが増減する。このような制御の併用により、上金型31の微速移動をより長いストロークで行うことができる。
そして、成形期間T11が完了となったら、制御部2は、第1スライド18を成形サイクルの初期位置まで上昇させる。また、第1スライド18を上昇させる際の期間T19において、制御部2は、ピストンシリンダ20の油室Rへ作動油を供給する制御を行う。これにより、ピストンシリンダ20が伸張して、第1スライド18に対する第2スライド20Bの移動位置が初期位置p0に戻される。これにより1回の成形サイクルが終了する。
このような成形サイクルによれば、近接制御により上金型31が微速下降することで、被成形物の超塑性鍛造を実現できる。さらに、近接制御と戻し制御とが交互に複数繰り返されることで、上金型31が微速下降するストロークを長くすることができる。これにより、長いストロークで被成形物の超塑性鍛造を行うことができる。また、近接制御と戻し制御が繰り返される成形期間T11において、第1スライド18及び駆動機構100は駆動機構100の潤滑状態を悪化させない速度で駆動することができる。従って、駆動機構100の潤滑状態を維持して安定した運転を行うことができる。
以上のように、本実施形態のプレス装置1によれば、エキセン軸14の回転運動を第1スライド18の並進運動に変換してプレスを行う機械式のプレス装置1において、被成形物の微速プレスによって超塑性鍛造を実現できる。また、この超塑性鍛造の際、第1スライド18は微速移動させる必要がないので、荷重が加わる機械部分の潤滑状態を維持して、安定した運転を行うことができる。
(変形例)
図4は、本発明の実施形態に係るプレス装置の変形例を示す構成図である。
変形例のプレス装置1Aは、ピストンシリンダ20を固定する位置を、ベッド23の上部(ベッド23の第1スライド18側)に変更したものである。この場合、上金型31は第1スライド18の下部に保持され、下金型32はボルスタ24を介してピストンシリンダ20の上部に保持される。変形例において、上金型31は本発明に係る第1金型の一例に相当し、下金型32は本発明に係る第2金型の一例に相当する。
変形例においては、ピストンシリンダ20の油室Rに作動油が供給又は排出されることで、第2スライド20Bがベッド23に近接離間する。また、近接制御においては、制御部2は第1スライド18を第1速度V1(例えば0.1mm/秒)で下降させる。同時に、制御部2は、ピストンシリンダ20の油室Rから作動油を排出して第2スライド20Bを第1速度V1以下の第2速度V2(例えば0.09mm/秒)で下降させる。これにより、上金型31は下金型32に対して微小な速度(例えば0.01mm/秒)で相対的に移動する。
変形例のプレス装置1Aでは、図2又は図3に示した成形サイクルの制御を同様に適用できる。但し、図2及び図3において、第2スライド20Bの移動位置は、ベッド23から第2スライド20Bまでの距離を表わすものと読み替えられる。また、上金型31の移動位置は、上金型31から下金型32までの距離を表わすものと読み替えられる。変形例のプレス装置1Aにおいても、図2又は図3に示した成形サイクルにより、被成形物の低速な変形を行って超塑性鍛造が実現され、さらに、荷重が加わる機械部分の潤滑状態を維持して、安定した運転を行えるという効果が奏される。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限られない。例えば、上記実施形態では、回転軸の回転を並進運動に変換して第1スライドに伝達する伝達機構として、エキセン軸とコネクティングロッドとが採用された機械式のプレス装置を一例にとって説明した。しかし、クランク軸とコネクティングロッドとが伝達機構として用いられた機械式のプレス装置、エキセン軸又はクランク軸を用いないリンク式のプレス装置にも、本発明を同様に適用することができる。また、上記実施形態では、伝動軸と減速機とにより回転運動が伝達される機械式のプレス装置を一例にとって説明したが、回転運動を伝達する機構は実施形態の機構に限定されない。
また、上記実施形態では、作動流体として作動油を用いた例を示したが、作動流体として他の流体を用いてもよい。その場合、実施形態で油圧と記した部分は流体圧と読み替え、油室と記した部分は流体室と読み替えればよい。
また、上記実施形態では、成形サイクル中にピストンシリンダ20を動作させて超塑性鍛造を行う動作例について説明した。しかし、実施形態のプレス装置1、1Aは、低速な成形を行わない場合に、ピストンシリンダ20を動作させないように制御することで、通常の機械式のプレス装置と同様の成形サイクルで、被成形物の鍛造等の成形を行うことができる。また、上記実施形態では、第1スライド18と第2スライド20Bとが上下方向に進退する構成を示したが、進退する方向はその他の方向であってもよい。また、上記実施形態では、第1スライド18を移動させるのにサーボモータなどの電気的なモータ11の動力を用いた構成を示した。しかしながら、第1スライド18の移動量の制御が可能であれば、油圧モータなどその他の動力源を用いてもよい。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
1、1A プレス装置
2 制御部
11 モータ
12 伝動軸
13 減速機
14 エキセン軸
15 コネクティングロッド
18 第1スライド
19 ガイド
20 ピストンシリンダ
20A ピストン
20B 第2スライド
21 クラウン
22 アップライト
23 ベッド
24 ボルスタ
31 上金型
32 下金型
70 油圧回路
71、72 タンク
73 モータポンプ
74 第1流量制御弁
75 第2流量制御弁
76 リリーフ弁
100 駆動機構
R 油室(流体室)

Claims (7)

  1. 第1金型を保持するベッドと、
    前記ベッドに近接離間する方向へ進退可能な第1スライドと、
    動力が入力されて回転可能な回転軸と、
    前記回転軸の回転を並進運動へ変換して前記第1スライドへ伝達し、前記第1スライドを進退させる伝達機構と、
    前記第1スライドの前記ベッド側に設けられ、前記第1スライドの進退方向に沿って前記第1スライドに近接離間可能であり、第2金型が前記第1金型と非接触にかつ前記第1金型と対向するように保持される第2スライドと、
    前記第1スライドと前記第2スライドとの間に配置され、前記第2スライドを前記第1スライドに近接離間させる圧力を発生させる流体室と、
    前記流体室への作動流体の給排と前記回転軸に入力される動力とを制御する制御部と、
    を備え、
    前記制御部は、
    前記第1スライドが前記ベッドに近づく期間に、前記第1スライドの移動速度以下の相対速度で前記第2スライドが前記第1スライドに近づくように前記流体室の作動流体を排出させる近接制御と、前記第2スライドを前記第1スライドから遠ざけかつ前記第1スライドを前記ベッドから遠ざける戻し制御と、が可能であり、
    前記制御部は、
    1回の成形サイクル中に、前記近接制御と前記戻し制御とを交互に複数回繰り返す、
    プレス装置。
  2. ベッドと、
    前記ベッドに近接離間する方向へ進退可能であり、第1金型を保持する第1スライドと、
    動力が入力されて回転可能な回転軸と、
    前記回転軸の回転を並進運動へ変換して前記第1スライドへ伝達し、前記第1スライドを進退させる伝達機構と、
    前記ベッドの前記第1スライド側に設けられ、前記第1スライドの進退方向に沿って前記ベッドに近接離間可能であり、第2金型が前記第1金型と非接触にかつ前記第1金型と対向するように保持される第2スライドと、
    前記ベッドと前記第2スライドとの間に配置され、前記第2スライドを前記ベッドに近接離間させる圧力を発生させる流体室と、
    前記流体室への作動流体の給排と前記回転軸に入力される動力とを制御する制御部と、
    を備え、
    前記制御部は、
    前記第1スライドが前記ベッドに近づく期間に、前記第1スライドの移動速度以下の速度で前記第2スライドが前記ベッドに近づくように前記流体室の作動流体を排出させる近接制御と、前記第2スライドを前記ベッドから遠ざけかつ前記第1スライドを前記ベッドから遠ざける戻し制御と、が可能であり、
    前記制御部は、
    1回の成形サイクル中に、前記近接制御と前記戻し制御とを交互に複数回繰り返す、
    プレス装置。
  3. 前記制御部は、前記第1金型と前記第2金型との間で被成形物が変形する成形時に前記近接制御を行う、
    請求項1又は請求項2に記載のプレス装置。
  4. 前記制御部は、成形サイクルの開始時点から前記近接制御を開始するまで、前記第1スライドに対する前記第2スライドの位置を保持する、
    請求項1記載のプレス装置。
  5. 前記制御部は、成形サイクルの開始時点から前記近接制御を開始するまで、前記ベッドに対する前記第2スライドの位置を保持する、
    請求項2記載のプレス装置。
  6. 前記戻し制御による前記第1金型と前記第2金型との距離の変化量は、前記近接制御による前記第1金型と前記第2金型との距離の変化量より小さい、
    請求項又は請求項に記載のプレス装置。
  7. 前記制御部は、
    前記第1金型と前記第2金型との距離が保持されるように、或いは、前記第1金型と前記第2金型とに加えられる荷重が保持されるように、前記戻し制御を行う、
    請求項又は請求項に記載のプレス装置。
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