図1は本発明の実施形態に係るショベル(掘削機)の側面図である。ショベルの下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載されている。上部旋回体3にはブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。
ブーム4、アーム5、バケット6は、アタッチメントの一例としての掘削アタッチメントを構成し、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。ブーム4にはブーム角度センサS1が取り付けられ、アーム5にはアーム角度センサS2が取り付けられ、バケット6にはバケット角度センサS3が取り付けられている。
ブーム角度センサS1はブーム4の回動角度を検出する。本実施形態では、ブーム角度センサS1は加速度センサであり、上部旋回体3に対するブーム4の回動角度(以下、「ブーム角度α」とする。)を検出できる。ブーム角度αは、例えば、ブーム4を最も下げたときに最小角度となり、ブーム4を上げるにつれて大きくなる。
アーム角度センサS2はアーム5の回動角度を検出する。本実施形態では、アーム角度センサS2は加速度センサであり、ブーム4に対するアーム5の回動角度(以下、「アーム角度β」とする。)を検出できる。アーム角度βは、例えば、アーム5を最も閉じたときに最小角度となり、アーム5を開くにつれて大きくなる。
バケット角度センサS3はバケット6の回動角度を検出する。本実施形態では、バケット角度センサS3は加速度センサであり、アーム5に対するバケット6の回動角度(以下、「バケット角度γ」とする。)を検出できる。バケット角度γは、例えば、バケット6を最も閉じたときに最小角度となり、バケット6を開くにつれて大きくなる。
ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、及び、バケット角度センサS3はそれぞれ、可変抵抗器を利用したポテンショメータ、対応する油圧シリンダのストローク量を検出するストロークセンサ、連結ピン回りの回動角度を検出するロータリエンコーダ、ジャイロセンサ、加速度センサとジャイロセンサの組み合わせ等であってもよい。
ブームシリンダ7にはブームロッド圧センサS7R及びブームボトム圧センサS7Bが取り付けられている。アームシリンダ8にはアームロッド圧センサS8R及びアームボトム圧センサS8Bが取り付けられている。バケットシリンダ9にはバケットロッド圧センサS9R及びバケットボトム圧センサS9Bが取り付けられている。
ブームロッド圧センサS7Rはブームシリンダ7のロッド側油室の圧力(以下、「ブームロッド圧」とする。)を検出し、ブームボトム圧センサS7Bはブームシリンダ7のボトム側油室の圧力(以下、「ブームボトム圧」とする。)を検出する。アームロッド圧センサS8Rはアームシリンダ8のロッド側油室の圧力(以下、「アームロッド圧」とする。)を検出し、アームボトム圧センサS8Bはアームシリンダ8のボトム側油室の圧力(以下、「アームボトム圧」とする。)を検出する。バケットロッド圧センサS9Rはバケットシリンダ9のロッド側油室の圧力(以下、「バケットロッド圧」とする。)を検出し、バケットボトム圧センサS9Bはバケットシリンダ9のボトム側油室の圧力(以下、「バケットボトム圧」とする。)を検出する。
上部旋回体3には運転室であるキャビン10が設けられ且つエンジン11等の動力源が搭載されている。また、上部旋回体3には機体傾斜センサS4、旋回角速度センサS5、及びカメラS6が取り付けられている。
機体傾斜センサS4は水平面に対する上部旋回体3の傾斜を検出する。本実施形態では、機体傾斜センサS4は上部旋回体3の前後軸回りの傾斜角δ及び左右軸回りの傾斜角εを検出する加速度センサである。上部旋回体3の前後軸及び左右軸は、例えば、互いに直交してショベルの旋回軸上の一点であるショベル中心点を通る。
旋回角速度センサS5は、上部旋回体3の旋回角速度及び旋回角度を検出する。本実施形態では、ジャイロセンサである。レゾルバ、ロータリエンコーダ等であってもよい。
カメラS6はショベルの周辺の画像を取得する。本実施形態では、カメラS6は上部旋回体3に取り付けられる前方カメラを含む。前方カメラは、ショベルの前方を撮像するステレオカメラであり、キャビン10の屋根、すなわちキャビン10の外部に取り付けられている。キャビン10の天井、すなわちキャビン10の内部に取り付けられていてもよい。前方カメラは、掘削アタッチメントを撮像可能である。前方カメラは、単眼カメラであってもよい。
キャビン10内にはコントローラ30が設置されている。コントローラ30は、ショベルの駆動制御を行う主制御部として機能する。本実施形態では、コントローラ30は、CPU、RAM、ROM等を含むコンピュータで構成されている。コントローラ30の各種機能は、例えば、ROMに格納されたプログラムをCPUが実行することで実現される。
図2は、図1のショベルの駆動系の構成例を示すブロック図であり、機械的動力系、高圧油圧ライン、パイロットライン、及び電気制御系をそれぞれ二重線、太実線、破線、及び点線で示している。
ショベルの駆動系は、主に、エンジン11、レギュレータ13、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、吐出圧センサ28、操作圧センサ29、コントローラ30、比例弁31等を含む。
エンジン11は、ショベルの駆動源である。本実施形態では、エンジン11は、例えば、所定の回転数を維持するように動作するディーゼルエンジンである。また、エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15の入力軸に連結されている。
メインポンプ14は、高圧油圧ラインを介して作動油をコントロールバルブ17に供給する。本実施形態では、メインポンプ14は、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御する。本実施形態では、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによってメインポンプ14の吐出量を制御する。
パイロットポンプ15は、パイロットラインを介して操作装置26及び比例弁31を含む各種油圧制御機器に作動油を供給する。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。
コントロールバルブ17は、ショベルにおける油圧システムを制御する油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、制御弁171〜176を含む。コントロールバルブ17は、制御弁171〜176を通じ、メインポンプ14が吐出する作動油を1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給できる。制御弁171〜176は、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び、油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、左側走行用油圧モータ1L、右側走行用油圧モータ1R、及び旋回用油圧モータ2Aを含む。
操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータの操作のために用いる装置である。本実施形態では、操作装置26は、パイロットラインを介して、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給する。パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力(パイロット圧)は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26のレバー又はペダル(図示せず。)の操作方向及び操作量に応じた圧力である。操作装置26のうちの少なくとも1つは、パイロットライン及びシャトル弁32を介して、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給する。
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出する。本実施形態では、吐出圧センサ28は、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
操作圧センサ29は、操作装置26を用いた操作者の操作内容を検出する。本実施形態では、操作圧センサ29は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26のレバー又はペダルの操作方向及び操作量を圧力(操作圧)の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作装置26の操作内容は、操作圧センサ以外の他のセンサを用いて検出されてもよい。
比例弁31は、操作者による操作装置26の操作とは無関係に、シャトル弁32を介して、パイロットポンプ15が吐出する作動油を、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに供給する。本実施形態では、比例弁31は、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。
シャトル弁32は、2つの入口ポートと1つの出口ポートを有する。2つの入口ポートのうちの一方は操作装置26の1つに接続され、他方は比例弁31のうちの1つに接続されている。出口ポートは、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに接続されている。シャトル弁32は、操作装置26が生成する制御圧と比例弁31が生成する制御圧のうちの高い方を、出口ポートに接続された対応する制御弁のパイロットポートに作用させる。
この構成により、コントローラ30は、特定の操作装置26に対する操作が行われていない場合であっても、その特定の操作装置26に対応する油圧アクチュエータを動作させることができる。
ジャッキアップ支援部300は、操作者によるジャッキアップ操作を支援する機能要素である。コントローラ30は、例えば、ROMに格納された対応するプログラムをCPUに実行させてジャッキアップ支援部300による機能を実現する。
ジャッキアップ支援部300は、例えば、ジャッキアップが行われているときに、操作者による操作入力に応じて動作している油圧アクチュエータ以外の油圧アクチュエータを自動的に動作させることで、操作者によるジャッキアップ操作を支援する。操作者による操作入力に応じて動作している油圧アクチュエータの動作量を調整してもよい。ジャッキアップ支援部300の詳細については後述する。
次に図3を参照し、ショベルに搭載される油圧システムの構成例について説明する。図3は、図1のショベルに搭載される油圧システムの構成例を示す概略図である。図3は、図2と同様に、機械的動力系、高圧油圧ライン、パイロットライン、及び電気制御系を、それぞれ二重線、太実線、破線、及び点線で示している。
図3において、油圧システムは、エンジン11によって駆動されるメインポンプ14L、14Rから、センターバイパス管路40L、40R、パラレル管路42L、42Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させている。メインポンプ14L、14Rは、図2のメインポンプ14に対応する。
センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁171、173、175L及び176Lを通る高圧油圧ラインである。センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁172、174、175R及び176Rを通る高圧油圧ラインである。
制御弁171は、メインポンプ14Lが吐出する作動油を左側走行用油圧モータ1Lへ供給し、且つ、左側走行用油圧モータ1Lが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁172は、メインポンプ14Rが吐出する作動油を右側走行用油圧モータ1Rへ供給し、且つ、右側走行用油圧モータ1Rが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁173は、メインポンプ14Lが吐出する作動油を旋回用油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回用油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁174は、メインポンプ14Rが吐出する作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するためのスプール弁である。
制御弁175L、175Rは、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁176L、176Rは、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
パラレル管路42Lは、センターバイパス管路40Lに並行する高圧油圧ラインである。パラレル管路42Lは、制御弁171、173、175Lの何れかによってセンターバイパス管路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。パラレル管路42Rは、センターバイパス管路40Rに並行する高圧油圧ラインである。パラレル管路42Rは、制御弁172、174、175Rの何れかによってセンターバイパス管路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
レギュレータ13L、13Rは、メインポンプ14L、14Rの吐出圧に応じてメインポンプ14L、14Rの斜板傾転角を調節することによって、メインポンプ14L、14Rの吐出量を制御する。レギュレータ13L、13Rは、図2のレギュレータ13に対応する。レギュレータ13L、13Rは、例えば、メインポンプ14L、14Rの吐出圧の増大に応じてメインポンプ14L、14Rの斜板傾転角を調節して吐出量を減少させる。吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収馬力がエンジン11の出力馬力を超えないようにするためである。
アーム操作レバー26Aは、操作装置26の一例であり、アーム5を操作するために用いられる。アーム操作レバー26Aは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁176L、176Rのパイロットポートに導入させる。具体的には、アーム操作レバー26Aは、アーム閉じ方向に操作された場合に、制御弁176Lの右側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、アーム操作レバー26Aは、アーム開き方向に操作された場合には、制御弁176Lの左側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁176Rの右側パイロットポートに作動油を導入させる。
バケット操作レバー26Bは、操作装置26の一例であり、バケット6を操作するために用いられる。バケット操作レバー26Bは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁174のパイロットポートに導入させる。具体的には、バケット操作レバー26Bは、バケット開き方向に操作された場合に、制御弁174の右側パイロットポートに作動油を導入させ、バケット閉じ方向に操作された場合に、制御弁174の左側パイロットポートに作動油を導入させる。
ブーム操作レバー26Cは、操作装置26の一例であり、ブーム4を操作するために用いられる。ブーム操作レバー26Cは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧を制御弁175L、175Rのパイロットポートに導入させる。具体的には、ブーム操作レバー26Cは、ブーム上げ方向に操作された場合に、制御弁175Lの右側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁175Rの左側パイロットポートに作動油を導入させる。また、ブーム操作レバー26Cは、ブーム下げ方向に操作された場合には、制御弁175Lの左側パイロットポートに作動油を導入させ、且つ、制御弁175Rの右側パイロットポートに作動油を導入させる。
吐出圧センサ28L、28Rは、吐出圧センサ28の一例であり、メインポンプ14L、14Rの吐出圧を検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
操作圧センサ29A、29B、29Cは、操作圧センサ29の一例であり、アーム操作レバー26A、バケット操作レバー26B、ブーム操作レバー26Cに対する操作者の操作内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作内容は、例えば、レバー操作方向、レバー操作量(レバー操作角度)等である。
左右走行レバー(又はペダル)、旋回操作レバー(何れも図示せず。)は、下部走行体1の走行、上部旋回体3の旋回を操作するための操作装置である。これらの操作装置は、アーム操作レバー26A、バケット操作レバー26B、ブーム操作レバー26Cと同様に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用し、レバー操作量(又はペダル操作量)に応じた制御圧を対応する制御弁の左右何れかのパイロットポートに導入させる。これらの操作装置のそれぞれに対する操作者の操作内容は、操作圧センサ29A、29B、29Cと同様に、対応する操作圧センサによって圧力の形で検出され、検出値がコントローラ30に対して出力される。
コントローラ30は、操作圧センサ29A、29B、29C等の出力を受信し、必要に応じてレギュレータ13L、13Rに対して制御指令を出力し、メインポンプ14L、14Rの吐出量を変化させる。
比例弁31Lは、コントローラ30が出力する電流指令に応じてパイロットポンプ15からシャトル弁32Lを介して制御弁176Lの左側パイロットポート及び制御弁176Rの右側パイロットポートに導入される制御圧を調整する。比例弁31Rは、コントローラ30が出力する電流指令に応じてパイロットポンプ15からシャトル弁32Rを介して制御弁174の左側パイロットポートに導入される制御圧を調整する。比例弁31L、31Rは、図2の比例弁31に対応し、シャトル弁32L、32Rは、図2のシャトル弁32に対応する。
比例弁31Lは、制御弁176L、176Rを任意の弁位置で停止できるように制御圧を調整可能である。比例弁31Rは、制御弁174を任意の弁位置で停止できるように制御圧を調整可能である。
図3は、比例弁31L及びシャトル弁32Lを用いたアーム5を自動的に開くための構成と、比例弁31R及びシャトル弁32Rを用いたバケット6を自動的に閉じるための構成とを示している。しかしながら、本発明の実施形態に係るショベルは、アーム5を自動的に閉じるための構成、バケット6を自動的に開くための構成、ブーム4を自動的に上げるための構成、ブーム4を自動的に下げるための構成、下部走行体1を自動的に前進させるための構成、下部走行体1を自動的に後進させるための構成等を備えていてもよい。
ここで、図3の油圧システムで採用されるネガティブコントロール制御(以下、「ネガコン制御」とする。)について説明する。
センターバイパス管路40L、40Rには、最も下流にある制御弁176L、176Rのそれぞれと作動油タンクとの間にネガティブコントロール絞り18L、18Rが配置されている。メインポンプ14L、14Rが吐出した作動油の流れは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rで制限される。そして、ネガティブコントロール絞り18L、18Rは、レギュレータ13L、13Rを制御するための制御圧(以下、「ネガコン圧」とする。)を発生させる。ネガコン圧センサ19L、19Rは、ネガコン圧を検出するためのセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
コントローラ30は、ネガコン圧に応じてメインポンプ14L、14Rの斜板傾転角を調節することによって、メインポンプ14L、14Rの吐出量を制御する。コントローラ30は、ネガコン圧が大きいほどメインポンプ14L、14Rの吐出量を減少させ、ネガコン圧が小さいほどメインポンプ14L、14Rの吐出量を増大させる。
具体的には、図3で示されるように、ショベルにおける油圧アクチュエータが何れも操作されていない待機状態の場合、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油は、センターバイパス管路40L、40Rを通ってネガティブコントロール絞り18L、18Rに至る。そして、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油の流れは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rの上流で発生するネガコン圧を増大させる。その結果、コントローラ30は、メインポンプ14L、14Rの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油がセンターバイパス管路40L、40Rを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。
一方、何れかの油圧アクチュエータが操作された場合、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油の流れは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rに至る量を減少或いは消失させ、ネガティブコントロール絞り18L、18Rの上流で発生するネガコン圧を低下させる。その結果、コントローラ30は、メインポンプ14L、14Rの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータの駆動を確かなものとする。
上述のような構成により、図3の油圧システムは、待機状態においては、メインポンプ14L、14Rにおける無駄なエネルギ消費を抑制できる。無駄なエネルギ消費は、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油がセンターバイパス管路40L、40Rで発生させるポンピングロスを含む。また、図3の油圧システムは、油圧アクチュエータを作動させる場合には、メインポンプ14L、14Rから必要十分な作動油を作動対象の油圧アクチュエータに確実に供給できるようにする。
次に、図4を参照し、ジャッキアップ支援部300の詳細について説明する。図4は、ジャッキアップ支援部300が操作者によるジャッキアップ操作を支援する処理(以下、「ジャッキアップ支援処理」とする。)の一例のフローチャートである。
最初に、ジャッキアップ支援部300は、ブーム下げ操作が行われているか否かを判定する(ステップST1)。本実施形態では、ジャッキアップ支援部300は、操作圧センサ29Cの出力に基づいてブーム下げ操作が行われているか否かを判定する。
ブーム下げ操作が行われていると判定した場合(ステップST1のYES)、ジャッキアップ支援部300は、ジャッキアップが行われているか否かを判定する(ステップST2)。ジャッキアップが行われていないにもかかわらずジャッキアップ操作を支援してしまうのを防止するためである。これにより、ジャッキアップ支援部300は、転圧作業が行われているかジャッキアップが行われているかをより確実に判別でき、転圧作業が行われているにもかかわらずジャッキアップ操作を支援してしまうのを防止できる。本実施形態では、ジャッキアップ支援部300は、情報取得装置が取得する情報に基づいてジャッキアップが行われているか否かを判定する。情報取得装置が取得する情報は、ブーム角度α、アーム角度β、バケット角度γ、傾斜角δ、傾斜角ε、旋回角速度、旋回角度、ブームロッド圧、ブームボトム圧、アームロッド圧、アームボトム圧、バケットロッド圧、バケットボトム圧、カメラS6の撮像画像、メインポンプ14の吐出圧、操作装置26の操作圧等のうちの少なくとも1つを含む。情報取得装置は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、旋回角速度センサS5、カメラS6、ブームロッド圧センサS7R、ブームボトム圧センサS7B、アームロッド圧センサS8R、アームボトム圧センサS8B、バケットロッド圧センサS9R、バケットボトム圧センサS9B、吐出圧センサ28、操作圧センサ29等のうちの少なくとも1つを含む。
ジャッキアップ支援部300は、例えば、ブーム下げ操作が行われているときにブームロッド圧が所定値以上になっている場合にジャッキアップが行われていると判定する。或いは、ブーム下げ操作が行われているときにブームボトム圧が所定値未満になっている場合にジャッキアップが行われていると判定してもよい。或いは、ブーム下げ操作が行われているときに上部旋回体3の前後軸回りの傾斜角δが所定値以上になっている場合にジャッキアップが行われていると判定してもよい。上部旋回体3の左右軸回りの傾斜角εについても同様である。
一方、ジャッキアップ支援部300は、例えば、ブーム上げ操作が行われているときにブームロッド圧が所定値未満になっている場合にジャッキアップが行われていないと判定する。或いは、ブーム上げ操作が行われているときにブームボトム圧が所定値以上になっている場合にジャッキアップが行われていないと判定してもよい。或いは、ブーム上げ操作が行われているときに傾斜角δが所定値未満になっている場合にジャッキアップが行われていないと判定してもよい。傾斜角εについても同様である。
ジャッキアップが行われていると判定した場合(ステップST2のYES)、ジャッキアップ支援部300は、ジャッキアップ支援機能を開始する。一方、ジャッキアップが行われていないと判定した場合(ステップST2のNO)、ジャッキアップ支援部300は、ジャッキアップ支援機能を開始することなく、通常のブーム下げが行われるようにする。
次に、図5を参照し、ジャッキアップ支援機能の具体的な処理の一例について説明する。図5は、ジャッキアップ支援機能の具体的な処理の一例のフローチャートである。ジャッキアップ支援部300は、ジャッキアップ支援機能を開始した後、所定の制御周期で繰り返しこの処理を実行する。
最初に、ジャッキアップ支援部300は、ブーム下げ操作が行われているか否かを判定する(ステップST11)。本実施形態では、ジャッキアップ支援部300は、操作圧センサ29Cの出力に基づいてブーム下げ操作が行われているか否かを判定する。
ブーム下げ操作が行われていると判定した場合(ステップST11のYES)、ジャッキアップ支援部300は、アーム開き動作及びバケット閉じ動作を実行する(ステップST12)。ジャッキアップ支援部300は、例えば、ジャッキアップ支援機能を開始したときのバケット6の位置及び姿勢を維持するように、ブーム角度αの変化に応じてアーム角度β及びバケット角度γを自動的に変化させる。具体的には、ブーム下げ操作によるブームシリンダ7の収縮に応じ、アーム開き操作及びバケット閉じ操作が無くとも、アームシリンダ8を収縮させ、且つ、バケットシリンダ9を伸張させる。その後、ジャッキアップ支援部300は、ステップST11における判定を再び実行する。
ブーム下げ操作が行われていないと判定した場合(ステップST11のNO)、ジャッキアップ支援部300は、ブーム上げ操作が行われているか否かを判定する(ステップST13)。本実施形態では、ジャッキアップ支援部300は、操作圧センサ29Cの出力に基づいてブーム上げ操作が行われているか否かを判定する。
ブーム上げ操作が行われていないと判定した場合(ステップST13のNO)、ジャッキアップ支援部300は、ステップST11における判定を再び実行する。
ブーム上げ操作が行われていると判定した場合(ステップST13のYES)、ジャッキアップ支援部300は、アーム閉じ動作及びバケット開き動作を実行する(ステップST14)。ジャッキアップ支援部300は、例えば、ジャッキアップ支援機能を開始したときのバケット6の位置及び姿勢を維持するように、ブーム上げ操作によるブームシリンダ7の伸張に応じ、アーム閉じ操作及びバケット開き操作が無くとも、アームシリンダ8を伸張させ、且つ、バケットシリンダ9を収縮させる。
その後、ジャッキアップ支援部300は、終了条件が満たされたか否かを判定する(ステップST15)。終了条件は、ジャッキアップ支援機能を終了させるための条件である。本実施形態では、ジャッキアップ支援部300は、情報取得装置が取得する情報に基づいて終了条件が満たされたか否かを判定する。例えば、ブームロッド圧が所定値未満になった場合、ブームボトム圧が所定値以上になった場合、傾斜角δが所定値未満になった場合、或いは、傾斜角εが所定値未満になった場合に、終了条件が満たされたと判定する。
終了条件が満たされていないと判定した場合(ステップST15のNO)、ジャッキアップ支援部300は、ステップST11における判定を再び実行する。
終了条件が満たされたと判定した場合(ステップST15のYES)、ジャッキアップ支援部300は、ジャッキアップ支援機能を終了させる。
本実施形態では、ジャッキアップ支援部300は、ブーム上げ操作が行われていると判定した場合に限り、ステップST15の判定を実行している。但し、ブーム下げ操作が行われていると判定した場合、或いは、ブーム上げ操作及びブーム下げ操作が何れも行われていないと判定した場合にも、ステップST15の判定を実行してもよい。
ここで、図6及び図7を参照し、図5のジャッキアップ支援機能の効果について説明する。図6は、ジャッキアップ支援機能を実行せずにブーム下げ操作のみでジャッキアップを行ったときのショベルの姿勢の時間的推移を示す。図7は、ジャッキアップ支援機能を実行しながらブーム下げ操作のみでジャッキアップを行ったときのショベルの姿勢の時間的推移を示す。図6及び図7では、上部旋回体3は、下部走行体1に対して90度だけ右側に旋回した状態(すなわち旋回角度90度の状態)にある。この状態は、例えば、右側クローラシュー1CRの清掃、点検等のため、ジャッキアップによって右側クローラシュー1CRを持ち上げる際に適している。図6(A)のショベルの姿勢は、図7(A)のショベルの姿勢と同じであり、バケット6の背面が地面(水平面)に接触している。図中の黒色矢印は、操作者による操作に応じた油圧アクチュエータの動作方向を示す。図6(B)及び図6(C)における白色矢印は、ジャッキアップに伴ってバケット6が引き摺られる方向を示し、点線で描かれたバケット6は、引き摺られる前のバケット6の位置及び姿勢を示す。図7(B)及び図7(C)における斜線ハッチングの矢印は、操作者による操作とは無関係に自動的に動く油圧アクチュエータの動作方向を示す。
図6(A)に示すショベルの状態でブーム下げ操作が行われると、ショベルは、図6(B)に示すように、ブームシリンダ7の収縮に伴って支点P1を含む回動軸回りに回動してその一端が浮き上がる。そして、ブーム角度αはブーム角度α1まで減少し、上部旋回体3の前後軸回りの傾斜角δは傾斜角δ1まで増大する。図6の例では、支点P1は、左側クローラシュー1CLの接地面の左端である。右側クローラシュー1CRは、ジャッキアップによって浮き上がる。
一方、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9は、アーム操作レバー26A及びバケット操作レバー26Bが何れも操作されていないため伸縮しない。そのため、アーム角度β及びバケット角度γは、図6(A)における状態で維持される。その結果、図6(B)の白色矢印で示すように、バケット6は、上部旋回体3に向かって引き寄せられ、面接触していたその背面は、点P2のところで線接触若しくは点接触するのみとなる。すなわち、バケット6の爪先の延長線と地面との間の角度は、ゼロ度から角度θ1に増大する。この場合、バケット6が引き寄せられる代わりに左側クローラシュー1CLがバケット6側に引き摺られることもある。
その後、ブーム下げ操作が更に継続されると、右側クローラシュー1CRは、図6(C)に示すように更に浮き上がり、ブーム角度αはブーム角度α2まで減少し、傾斜角δは傾斜角δ2まで増大する。
また、アーム角度β及びバケット角度γは、図6(A)における状態でなおも維持される。その結果、図6(C)の白色矢印で示すように、バケット6は、上部旋回体3に向かって更に引き寄せられ、点P2のところで線接触若しくは点接触していたその背面は、点P3のところで線接触若しくは点接触するようになる。すなわち、バケット6の爪先の延長線と地面との間の角度は、角度θ1から角度θ2に更に増大する。
このように、アーム操作及びバケット操作が行われることなくブーム下げ操作のみでジャッキアップが行われると、バケット6は、上部旋回体3に向かって引き摺られ、接触面(地面)を削ってしまう。また、バケット6の背面と地面との接触面積が小さくなり、ショベルの状態が不安定になってしまう。
ジャッキアップ支援部300は、このような問題を回避するため、ジャッキアップ支援機能を開始したときのバケット6の位置及び姿勢を維持するように、掘削アタッチメントの姿勢を制御する。
例えば、図7(A)に示すショベルの状態でブーム下げ操作が行われると、ショベルは、図7(B)に示すように、ブームシリンダ7の収縮に伴って支点P1を含む回動軸回りに回動してその一端が浮き上がる。そして、ブーム角度αはブーム角度α1まで減少し、上部旋回体3の前後軸回りの傾斜角δは傾斜角δ1まで増大する。
このとき、ジャッキアップ支援部300は、アーム角度βがアーム角度β1となるまでアームシリンダ8を収縮させ、且つ、バケット角度γがバケット角度γ1となるまでバケットシリンダ9を伸張させる。バケット6の位置及び姿勢を維持するためである。すなわち、バケット6が上部旋回体3に向かって引き寄せられないようにするためである。その結果、掘削アタッチメントの姿勢は、図7(B)に示すような姿勢に変化するが、バケット6の位置及び姿勢は、図7(A)の状態のまま維持される。
その後、ブーム下げ操作が更に継続されると、右側クローラシュー1CRは、図7(C)に示すように更に浮き上がり、ブーム角度αはブーム角度α2まで減少し、傾斜角δは傾斜角δ2まで増大する。
このときも同様に、ジャッキアップ支援部300は、アーム角度βがアーム角度β2となるまでアームシリンダ8を更に収縮させ、且つ、バケット角度γがバケット角度γ2となるまでバケットシリンダ9を更に伸張させる。その結果、掘削アタッチメントの姿勢は、図7(C)に示すような姿勢に変化するが、バケット6の位置及び姿勢は、図7(A)の状態のまま維持される。
このように、アーム操作及びバケット操作が行われることなくブーム下げ操作のみでジャッキアップが行われた場合であっても、ジャッキアップ支援部300は、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9を適切に伸縮させ、バケット6の位置及び姿勢を維持する。そのため、バケット6が引き摺られるのを防止し、バケット6によって地面が削られてしまうのを防止できる。また、バケット6の背面と地面との接触面積を維持することでショベルの状態が不安定になってしまうのを防止できる。
なお、上述の実施形態では、ジャッキアップ支援部300は、ブーム下げ操作でジャッキアップが行われた場合に、アーム開き動作とバケット閉じ動作を自動的に行ってジャッキアップ操作を支援する。しかしながら、ジャッキアップ支援部300は、アーム開き動作及びバケット閉じ動作の何れか一方のみを自動的に行うようにしてもよい。或いは、ブーム下げ操作とアーム開き操作でジャッキアップが行われた場合に、バケット閉じ動作を自動的に行ってジャッキアップ操作を支援してもよい。或いは、ブーム下げ操作とバケット閉じ操作でジャッキアップが行われた場合に、アーム開き動作を自動的に行ってジャッキアップ操作を支援してもよい。
或いは、ジャッキアップ支援部300は、操作者による操作が行われた油圧アクチュエータの動作量を自動的に調整してもよい。例えば、ブーム下げ操作でジャッキアップが行われた場合に、アーム開き動作とバケット閉じ動作を自動的に行い、且つ、操作者によるブーム下げ動作に調整を加えることでジャッキアップ操作を支援してもよい。この場合、ジャッキアップ支援部300は、例えば、比例弁等を用いて、ブーム操作レバー26Cの下げ操作量に対応するブームシリンダ7の収縮量を低減させてもよい。
次に、図8を参照し、ジャッキアップ支援機能の具体的な処理の別の一例について説明する。図8は、ジャッキアップ支援機能の具体的な処理の別の一例のフローチャートである。
図8のフローチャートは、ステップST25〜ステップST28を有する点で、図5のフローチャートと相違する。図8のステップST21〜ステップST24及びステップST29は、図5のステップST11〜ステップST15に対応する。そのため、共通部分の説明を省略し、相違部分を詳説する。
ブーム下げ操作もブーム上げ操作も行われていないと判定した場合(ステップST23のNO)、ジャッキアップ支援部300は、下部走行体1がアタッチメントに近づいているか否かを判定する(ステップST25)。本実施形態では、ジャッキアップ支援部300は、姿勢センサの出力に基づいて下部走行体1が掘削アタッチメントに近づいているか否かを判定する。姿勢センサは、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3及び機体傾斜センサS4の少なくとも1つを含む。
下部走行体1がアタッチメントに近づいていると判定した場合(ステップST25のYES)、ジャッキアップ支援部300は、アーム閉じ動作及びバケット開き動作を実行する(ステップST26)。ジャッキアップ支援部300は、例えば、ジャッキアップ支援機能を開始したときのバケット6の位置及び姿勢を維持するように、アーム閉じ動作及びバケット開き動作を実行する。具体的には、走行レバー又は走行ペダルを用いた前進操作による左側走行用油圧モータ1L及び右側走行用油圧モータ1Rの回転に応じ、アーム閉じ操作及びバケット開き操作が無くとも、アームシリンダ8を伸張させ、且つ、バケットシリンダ9を収縮させる。
下部走行体1がアタッチメントに近づいていないと判定した場合(ステップST25のNO)、ジャッキアップ支援部300は、下部走行体1がアタッチメントから遠ざかっているか否かを判定する(ステップST27)。本実施形態では、ジャッキアップ支援部300は、姿勢センサの出力に基づいて下部走行体1が掘削アタッチメントから遠ざかっているか否かを判定する。
下部走行体1がアタッチメントから遠ざかっていると判定した場合(ステップST27のYES)、ジャッキアップ支援部300は、アーム開き動作及びバケット閉じ動作を実行する(ステップST28)。ジャッキアップ支援部300は、例えば、ジャッキアップ支援機能を開始したときのバケット6の位置及び姿勢を維持するように、アーム開き動作及びバケット閉じ動作を実行する。具体的には、走行レバー又は走行ペダルを用いた後進操作による左側走行用油圧モータ1L及び右側走行用油圧モータ1Rの回転に応じ、アーム開き操作及びバケット閉じ操作が無くとも、アームシリンダ8を収縮させ、且つ、バケットシリンダ9を伸張させる。
下部走行体1がアタッチメントから遠ざかっていないと判定した場合(ステップST27のNO)、ジャッキアップ支援部300は、終了条件が満たされたか否かを判定する(ステップST29)。
終了条件が満たされていないと判定した場合(ステップST29のNO)、ジャッキアップ支援部300は、ステップST21における判定を再び実行する。
終了条件が満たされたと判定した場合(ステップST29のYES)、ジャッキアップ支援部300は、ジャッキアップ支援機能を終了させる。
ここで、図9及び図10を参照し、図8のジャッキアップ支援機能の効果について説明する。図9は、ジャッキアップ支援機能を実行せずにジャッキアップを行い且つ下部走行体1を前進させたときのショベルの姿勢の時間的推移を示す。図10は、ジャッキアップ支援機能を実行しながらジャッキアップを行い且つ下部走行体1を前進させたときのショベルの姿勢の時間的推移を示す。図9及び図10では、上部旋回体3は、下部走行体1と同じ方向を向いた状態(すなわち、旋回角度ゼロ度の状態)にある。この状態は、例えば、ショベルを輸送トレーラの荷台に積み込むときに、ジャッキアップによってクローラシューの一端を荷台に載せる際に適している。図9(A)のショベルの姿勢は、図10(A)のショベルの姿勢と同じであり、バケット6の背面が水平面(例えば輸送トレーラの荷台)に接触している。図中の黒色矢印は、操作者による操作に応じた油圧アクチュエータの動作方向を示す。図9(B)及び図9(C)における白色矢印は、バケット6が引き摺られる方向を示し、点線で描かれたバケット6は、引き摺られる前のバケット6の位置及び姿勢を示す。図10(B)及び図10(C)における斜線ハッチングの矢印は、操作者による操作とは無関係に自動的に動く油圧アクチュエータの動作方向を示す。
図9(A)に示すショベルの状態でブーム下げ操作が行われると、ショベルは、図9(B)に示すように、ブームシリンダ7の収縮に伴って支点P1を含む回動軸回りに回動してその一端が浮き上がる。そして、ブーム角度αはブーム角度α11まで減少し、上部旋回体3の左右軸回りの傾斜角εは傾斜角ε11まで増大する。図9の例では、支点P1は、左側クローラシュー1CL及び右側クローラシュー1CRの接地面の後端である。左側クローラシュー1CL及び右側クローラシュー1CRの前端は、ジャッキアップによって浮き上がる。
一方、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9は、アーム操作レバー26A及びバケット操作レバー26Bが何れも操作されていないため伸縮しない。そのため、アーム角度β及びバケット角度γは、図9(A)における状態で維持される。その結果、図9(B)の白色矢印で示すように、バケット6は、上部旋回体3に向かって引き寄せられ、面接触していたその背面は、点P2のところで線接触若しくは点接触するのみとなる。この場合、バケット6が引き寄せられる代わりに下部走行体1がバケット6側に引き摺られることもある。
その後、前進操作が行われると、ショベルは、図9(C)に示すように右側に移動する。また、アーム角度β及びバケット角度γは、図9(A)における状態でなおも維持される。その結果、図9(C)の白色矢印で示すように、バケット6は、ショベルの移動に伴って右側に引き摺られ、点P2のところで線接触若しくは点接触していたその背面は、点P3のところで線接触若しくは点接触するようになる。
このように、アーム操作及びバケット操作が行われることなくブーム下げ操作のみでジャッキアップが行われると、バケット6は、上部旋回体3に向かって引き摺られ、接触面(例えば輸送トレーラの荷台)を損傷してしまう。また、バケット6の背面と接触面との接触面積が小さくなり、ショベルの状態が不安定になってしまう。
また、その後にアーム操作及びバケット操作が行われることなく前進操作が行われると、バケット6は、ショベルの移動に伴って右側に押しやられ、接触面を損傷してしまう。
ジャッキアップ支援部300は、このような問題を回避するため、ジャッキアップ支援機能を開始したときのバケット6の位置及び姿勢を維持するように、掘削アタッチメントの姿勢を制御する。
例えば、図10(A)に示すショベルの状態でブーム下げ操作が行われると、ショベルは、図10(B)に示すように、ブームシリンダ7の収縮に伴って支点P1を含む回動軸回りに回動してその一端が浮き上がる。そして、ブーム角度αはブーム角度α11まで減少し、上部旋回体3の左右軸回りの傾斜角εは傾斜角ε11まで増大する。
このとき、ジャッキアップ支援部300は、アーム角度βがアーム角度β11となるまでアームシリンダ8を収縮させ、且つ、バケット角度γがバケット角度γ11となるまでバケットシリンダ9を伸張させる。バケット6の位置及び姿勢を維持するためである。すなわち、バケット6が上部旋回体3に向かって引き寄せられないようにするためである。その結果、掘削アタッチメントの姿勢は、図10(B)に示すような姿勢に変化するが、バケット6の位置及び姿勢は、図10(A)の状態のまま維持される。
その後、前進操作が行われると、ショベルは、図10(C)に示すように右側に移動する。この場合、ジャッキアップ支援部300は、アーム角度βがアーム角度β12となるまでアームシリンダ8を伸張させ、且つ、バケット角度γがバケット角度γ12となるまでバケットシリンダ9を収縮させる。その結果、掘削アタッチメントの姿勢は、図10(C)に示すような姿勢に変化するが、バケット6の位置及び姿勢は、図10(A)の状態のまま維持される。
このように、ジャッキアップが行われた後で前進操作が行われた場合であっても、ジャッキアップ支援部300は、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9を適切に伸縮させ、バケット6の位置及び姿勢を維持する。そのため、バケット6が引き摺られるのを防止し、バケット6によって接触面が損傷されてしまうのを防止できる。或いは、バケット6によって輸送トレーラがショベル側に引き寄せられ、輸送トレーラのブレーキが損傷されてしまうのを防止できる。また、バケット6の背面と接触面との接触面積を維持することでショベルの状態が不安定になってしまうのを防止できる。
なお、上述の実施形態では、ジャッキアップ支援部300は、下部走行体1の前端が浮き上がった状態で前進操作が行われた場合に、アーム閉じ動作とバケット開き動作を自動的に行ってジャッキアップ操作を支援する。しかしながら、ジャッキアップ支援部300は、アーム閉じ動作及びバケット開き動作の何れか一方のみを自動的に行うようにしてもよい。或いは、ブーム上げ動作を追加的に行うようにしてもよい。或いは、前進操作とアーム閉じ操作が行われた場合に、バケット開き動作を自動的に行ってジャッキアップ操作を支援してもよい。或いは、前進操作とバケット開き操作が行われた場合に、アーム閉じ動作を自動的に行ってジャッキアップ操作を支援してもよい。
或いは、ジャッキアップ支援部300は、操作者による操作が行われた油圧アクチュエータの動作量を自動的に調整してもよい。例えば、前進操作が行われた場合に、アーム閉じ動作とバケット開き動作を自動的に行い、且つ、操作者による前進操作に調整を加えることでジャッキアップ操作を支援してもよい。この場合、ジャッキアップ支援部300は、例えば、比例弁等を用いて、走行レバーの操作量に対応する左側走行用油圧モータ1L及び右側走行用油圧モータ1Rの回転数を低減させてもよい。
以上の構成により、ジャッキアップ支援部300は、ジャッキアップ中の機体安定性を確保できる。また、地面の削り取り、輸送トレーラの荷台等の接触面の損傷を防止できる。操作者は、複雑な複合操作を行うことなく、ジャッキアップ操作を円滑に行うことができる。
また、ジャッキアップ支援部300は、ブーム下げ操作によってショベルの一端を持ち上げるときばかりでなく、一端が持ち上げられたショベルをブーム上げ操作によって元に戻すときにもジャッキアップ操作を支援できる。同様に、一端が持ち上げられたショベルを前進させるときばかりでなく、一端が持ち上げられたショベルを後進させるときにもジャッキアップ操作を支援できる。なお、ジャッキアップ操作は、ショベルの一端を持ち上げるための操作ばかりでなく、持ち上げられた一端を下ろすまでの一連の操作を含む。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に制限されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形、置換等が適用され得る。また、別々に説明された特徴は、技術的な矛盾が生じない限り、組み合わせが可能である。
例えば、上述の実施形態では、ジャッキアップ操作は、水平面にバケット6の背面を押し付けてショベルの一端を持ち上げるための操作、及び、その持ち上げられた一端を下ろすまでの一連の操作を含む。しかしながら、ジャッキアップ操作は、傾斜面にバケット6の背面を押し付けてショベルの一端を持ち上げるための操作、及び、その持ち上げられた一端を下ろすまでの一連の操作を含んでいてもよい。
また、ジャッキアップ支援部300は、上部旋回体3が下部走行体1に対して90度だけ旋回した状態、又は、下部走行体1と同じ方向を向いた状態にあるときに限り、ジャッキアップ操作を支援してもよい。この場合、ジャッキアップ支援部300は、上部旋回体3が下部走行体1に対して斜めを向いているときには、他の条件が満たされたときであってもジャッキアップが行われていると判定しないようにしてもよい。不安定な姿勢でジャッキアップが行われないようにするためである。