最初に、図1を参照して、本発明の実施例に係る建設機械としてのショベル(掘削機)について説明する。図1はショベルの側面図である。図1に示すショベルの下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には作業要素としてのブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端には作業要素としてのアーム5が取り付けられ、アーム5の先端には作業要素及びエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5、バケット6は、アタッチメントとしての掘削アタッチメントを構成し、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、運転室としてのキャビン10が設けられ、且つエンジン11等の動力源が搭載される。
図2は、図1のショベルの駆動系の構成例を示すブロック図であり、機械的動力系、高圧油圧ライン、パイロットライン、電気制御系をそれぞれ二重線、太実線、破線、点線で示す。
ショベルの駆動系は、主に、エンジン11、レギュレータ13、メインポンプ14、パイロットポンプ15、コントロールバルブ17、操作装置26、減圧弁27、吐出圧センサ28、圧力センサ29、コントローラ30、スイッチ31等を含む。
エンジン11は、ショベルの駆動源である。本実施例では、エンジン11は、例えば、所定の回転数を維持するように動作する内燃機関としてのディーゼルエンジンである。また、エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15の入力軸に連結される。
メインポンプ14は、高圧油圧ラインを介して作動油をコントロールバルブ17に供給するための装置であり、例えば、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御するための装置である。本実施例では、レギュレータ13は、例えば、メインポンプ14の吐出圧、コントローラ30からの指令電流等に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによってメインポンプ14の吐出量を制御する。
パイロットポンプ15は、パイロットラインを介して操作装置26を含む各種油圧制御機器に作動油を供給する装置であり、例えば、固定容量型油圧ポンプである。
コントロールバルブ17は、ショベルにおける油圧システムを制御する油圧制御装置である。具体的には、コントロールバルブ17は、メインポンプ14が吐出する作動油の流れを制御する複数の制御弁を含む。そして、コントロールバルブ17は、それら制御弁を通じ、メインポンプ14が吐出する作動油を1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給する。それら制御弁は、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び、油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、左側走行用油圧モータ1L、右側走行用油圧モータ1R、及び旋回用油圧モータ2Aを含む。旋回用油圧モータ2Aは、下部走行体1に対して上部旋回体3を旋回させる旋回装置の一例であり、電動アクチュエータとしての旋回用電動モータで置き換えられてもよい。
操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータの操作のために用いる装置である。本実施例では、操作装置26は、パイロットライン及び減圧弁27を介して、パイロットポンプ15が吐出する作動油を油圧アクチュエータのそれぞれに対応する制御弁のパイロットポートに供給する。パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力(以下、「パイロット圧」とする。)は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26のレバー又はペダルの操作方向及び操作量に応じた圧力である。
減圧弁27は、操作装置26が生成したパイロット圧を減圧して出力する装置である。本実施例では、減圧弁27は、コントローラ30からの指令電流に応じてパイロット圧を増減させる。減圧弁27は、例えば、指令電流が大きいほどパイロット圧を低減させる。
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出するためのセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
圧力センサ29は、操作装置26を用いた操作者の操作内容を検出するためのセンサである。本実施例では、圧力センサ29は、例えば、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26のレバー又はペダルの操作方向及び操作量を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作装置26の操作内容は、圧力センサ以外の他のセンサを用いて検出されてもよい。
コントローラ30は、ショベルを制御するための制御装置である。本実施例では、コントローラ30は、例えば、CPU、RAM、NVRAM、ROM等を備えたコンピュータで構成される。また、コントローラ30は、感度調整部300に対応するプログラムをROMから読み出してRAMにロードし、対応する処理をCPUに実行させる。
具体的には、コントローラ30は、圧力センサ29、スイッチ31等の出力に基づいて感度調整部300による処理を実行する。そして、コントローラ30は、感度調整部300の処理結果に応じた指令を減圧弁27等に対して出力する。
感度調整部300は、操作装置26としての操作レバーの感度を調整する機能要素である。本実施例では、キャビン10内に設置された2本の操作レバーのうちの左操作レバーはアーム操作レバー及び旋回操作レバーとして機能し、右操作レバーはブーム操作レバー及びバケット操作レバーとして機能する。具体的には、左操作レバーの前後方向への操作がアーム操作レバーの操作に対応し、左操作レバーの左右方向への操作が旋回操作レバーの操作に対応する。また、右操作レバーの前後方向への操作がブーム操作レバーの操作に対応し、右操作レバーの左右方向への操作がバケット操作レバーの操作に対応する。操作者は、左操作レバーを利用してアーム5と旋回装置を同時に操作でき、右操作レバーを利用してブーム4とバケット6を同時に操作できる。なお、操作レバーの前後方向と左右方向はほぼ直交する。
感度調整部300は、例えば、左操作レバーに関し、アーム操作レバーの感度を維持し且つ旋回操作レバーの感度を下げることができる。この場合、操作者は、左操作レバーを前後方向に操作した(傾けた)つもりが僅かに斜め方向に操作して(傾けて)しまったときであっても、旋回装置を動かしてしまうことはない。旋回操作レバーの感度を下げることで、旋回操作レバーに対する操作が反映され難くなっているためである。
スイッチ31は、ショベルの動作モードを切り替える機能要素である。本実施例では、スイッチ31は、タッチパネル付きの車載ディスプレイ等の表示装置の画面に表示されるソフトウェアスイッチである。スイッチ31は、キャビン10内に設置されたハードウェアスイッチであってもよい。
ショベルの動作モードは誤操作防止モードを含む。誤操作防止モードは操作レバーの誤操作を抑制或いは防止する動作モードである。誤操作防止モードが選択されると、ショベルは、必要に応じて感度調整部300による操作レバーの感度の調整を開始させる。この構成により、操作者は、操作レバーの感度を調整する機能の作動・停止を切り替えることができる。
次に図3を参照し、ショベルに搭載される油圧システムの詳細について説明する。図3は、図1のショベルに搭載される油圧システムの構成例を示す概略図である。図3は、図2と同様に、機械的動力系、高圧油圧ライン、パイロットライン、電気制御系をそれぞれ二重線、太実線、破線、点線で示す。
図3において、油圧システムは、エンジン11によって駆動されるメインポンプ14L、14Rから、センターバイパス管路40L、40R、パラレル管路42L、42Rを経て作動油タンクまで作動油を循環させる。メインポンプ14L、14Rは、図2のメインポンプ14に対応する。
センターバイパス管路40Lは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁171L〜175Lを通る高圧油圧ラインである。センターバイパス管路40Rは、コントロールバルブ17内に配置された制御弁171R〜175Rを通る高圧油圧ラインである。
制御弁171Lは、メインポンプ14Lが吐出する作動油を左側走行用油圧モータ1Lへ供給し、且つ、左側走行用油圧モータ1Lが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁171Rは、走行直進弁としてのスプール弁である。制御弁171Rは、下部走行体1の直進性を高めるべくメインポンプ14Lから左側走行用油圧モータ1L及び右側走行用油圧モータ1Rのそれぞれに作動油が供給されるように作動油の流れを切り換える。具体的には、左側走行用油圧モータ1L及び右側走行用油圧モータ1Rと他の何れかの油圧アクチュエータとが同時に操作された場合、メインポンプ14Lは、左側走行用油圧モータ1L及び右側走行用油圧モータ1Rの双方に作動油を供給する。他の油圧アクチュエータが何れも操作されていない場合には、メインポンプ14Lが左側走行用油圧モータ1Lに作動油を供給し、メインポンプ14Rが右側走行用油圧モータ1Rに作動油を供給する。
制御弁172Lは、メインポンプ14Lが吐出する作動油をオプション用油圧アクチュエータへ供給し、且つ、オプション用油圧アクチュエータが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。オプション用油圧アクチュエータ50は、例えば、グラップル開閉シリンダである。
制御弁172Rは、メインポンプ14Rが吐出する作動油を右側走行用油圧モータ1Rへ供給し、且つ、右側走行用油圧モータ1Rが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁173Lは、メインポンプ14Lが吐出する作動油を旋回用油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回用油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
制御弁173Rは、メインポンプ14Rが吐出する作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出するためのスプール弁である。
制御弁174L、174Rは、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。本実施例では、制御弁174Lは、ブーム4の上げ操作が行われた場合にのみ作動し、ブーム4の下げ操作が行われた場合には作動しない。
制御弁175L、175Rは、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出するために作動油の流れを切り換えるスプール弁である。
パラレル管路42Lは、センターバイパス管路40Lに並行する高圧油圧ラインである。パラレル管路42Lは、制御弁171L〜174Lの何れかによってセンターバイパス管路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。パラレル管路42Rは、センターバイパス管路40Rに並行する高圧油圧ラインである。パラレル管路42Rは、制御弁172R〜174Rの何れかによってセンターバイパス管路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
レギュレータ13L、13Rは、メインポンプ14L、14Rの吐出圧に応じてメインポンプ14L、14Rの斜板傾転角を調節することによって、メインポンプ14L、14Rの吐出量を制御する。レギュレータ13L、13Rは、図2のレギュレータ13に対応する。レギュレータ13L、13Rは、例えば、メインポンプ14L、14Rの吐出圧が所定値以上となった場合にメインポンプ14L、14Rの斜板傾転角を調節して吐出量を減少させる。吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14の吸収馬力がエンジン11の出力馬力を超えないようにするためである。
アーム操作レバー26Aは、操作装置26の一例であり、アーム5を操作するために用いられる。また、アーム操作レバー26Aは、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用して、レバー操作量に応じたパイロット圧を制御弁175L、175Rのパイロットポートに作用させる。具体的には、アーム操作レバー26Aは、アーム閉じ方向に操作された場合に、制御弁175Lの右側パイロットポートにパイロット圧を作用させ、且つ、制御弁175Rの左側パイロットポートにパイロット圧を作用させる。このときのパイロット圧は、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用するリモコン弁26AVLによって生成される。一方、アーム操作レバー26Aは、アーム開き方向に操作された場合には、制御弁175Lの左側パイロットポートにパイロット圧を作用させ、且つ、制御弁175Rの右側パイロットポートにパイロット圧を作用させる。このときのパイロット圧は、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用するリモコン弁26AVRによって生成される。
減圧弁27AL、27ARは、コントローラ30からの指令に応じて動作する電磁弁であり、図2の減圧弁27に対応する。減圧弁27ALは、アーム操作レバー26Aが閉じ方向に操作されたときにリモコン弁26AVLが生成したパイロット圧を減圧して制御弁175Lの右側パイロットポート及び制御弁175Rの左側パイロットポートに作用させる。減圧弁27ARは、アーム操作レバー26Aが開き方向に操作されたときにリモコン弁26AVRが生成したパイロット圧を減圧して制御弁175Lの左側パイロットポート及び制御弁175Rの右側パイロットポートに作用させる。
圧力センサ27Aは、減圧弁27AL、27ARが減圧した減圧後パイロット圧を検出するためのセンサであり、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
圧力センサ29Aは、図2の圧力センサ29に対応する。圧力センサ29Aは、アーム操作レバー26Aに対する操作者の操作内容を圧力の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作内容は、例えば、レバー操作方向、レバー操作量(レバー操作角度)等である。
左右走行レバー(又はペダル)、ブーム操作レバー、バケット操作レバー、及び旋回操作レバー(何れも図示せず。)はそれぞれ、下部走行体1の走行、ブーム4の上下動、バケット6の開閉、及び、上部旋回体3の旋回を操作するための操作装置である。これらの操作装置は、アーム操作レバー26Aと同様に、パイロットポンプ15が吐出する作動油を利用して、レバー操作量(又はペダル操作量)に応じたパイロット圧を油圧アクチュエータのそれぞれに対応する制御弁の左右何れかのパイロットポートに作用させる。また、これらの操作装置のそれぞれに対する操作者の操作内容は、圧力センサ29Aと同様、対応する圧力センサによって圧力の形で検出され、検出値がコントローラ30に対して出力される。
また、図3は、明瞭化のため、アーム操作レバー26A及びそのパイロットラインのみを示すが、実際には、ブーム操作レバー、バケット操作レバー、旋回操作レバー等も同様にパイロットラインを介して対応する制御弁のパイロットポートに接続されている。
ここで、図3の油圧システムで採用されるネガティブコントロール制御(以下、「ネガコン制御」とする。)について説明する。
センターバイパス管路40L、40Rは、最も下流にある制御弁175L、175Rのそれぞれと作動油タンクとの間にネガティブコントロール絞り18L、18Rを備える。メインポンプ14L、14Rが吐出した作動油の流れは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rで制限される。そして、ネガティブコントロール絞り18L、18Rは、レギュレータ13L、13Rを制御するための制御圧(以下、「ネガコン圧」とする。)を発生させる。
ネガコン圧センサ19L、19Rは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rの上流で発生させたネガコン圧を検出するセンサである。本実施例では、ネガコン圧センサ19L、19Rは、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
コントローラ30は、ネガコン圧に応じた指令をレギュレータ13L、13Rに対して出力する。レギュレータ13L、13Rは、指令に応じてメインポンプ14L、14Rの斜板傾転角を調節することによって、メインポンプ14L、14Rの吐出量を制御する。具体的には、レギュレータ13L、13Rは、ネガコン圧が大きいほどメインポンプ14L、14Rの吐出量を減少させ、ネガコン圧が小さいほどメインポンプ14L、14Rの吐出量を増大させる。
油圧アクチュエータが何れも操作されていない場合(以下、「待機モード」とする。)、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油は、センターバイパス管路40L、40Rを通ってネガティブコントロール絞り18L、18Rに至る。そして、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油の流れは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rの上流で発生するネガコン圧を増大させる。その結果、レギュレータ13L、13Rは、メインポンプ14L、14Rの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油がセンターバイパス管路40L、40Rを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。
一方、何れかの油圧アクチュエータが操作された場合、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油の流れは、ネガティブコントロール絞り18L、18Rに至る量を減少或いは消失させ、ネガティブコントロール絞り18L、18Rの上流で発生するネガコン圧を低下させる。その結果、レギュレータ13L、13Rは、メインポンプ14L、14Rの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータの駆動を確かなものとする。
上述のような構成により、図3の油圧システムは、待機モードにおいては、メインポンプ14L、14Rにおける無駄なエネルギ消費を抑制できる。なお、無駄なエネルギ消費は、メインポンプ14L、14Rが吐出する作動油がセンターバイパス管路40L、40Rで発生させるポンピングロスを含む。
また、図3の油圧システムは、油圧アクチュエータを作動させる場合には、メインポンプ14L、14Rから必要十分な作動油を作動対象の油圧アクチュエータに確実に供給できるようにする。
次に図4を参照し、コントローラ30が操作レバーの感度を調整する処理(以下、「感度調整処理」とする。)について説明する。図4は、感度調整処理の流れを示すフローチャートである。図4の例では、アーム操作レバー26A及び旋回操作レバーとして機能する左操作レバーの感度調整処理について説明する。但し、以下の説明は、ブーム操作レバー及びバケット操作レバーとして機能する右操作レバーにも同様に適用される。
最初に、コントローラ30の感度調整部300は、誤操作防止モードであるか否かを判定する(ステップST1)。誤操作防止モードは、例えば、スイッチ31を介した操作者の操作入力によって選択される。感度調整部300は、所定の条件が満たされた場合に誤操作防止モードを自動的に選択してもよい。
誤操作防止モードであると判定した場合(ステップST1のYES)、感度調整部300は、アーム操作レバー26Aのレバー操作量と旋回操作レバーのレバー操作量とを比較し、アーム操作レバー26Aのレバー操作量が旋回操作レバーのレバー操作量に所定量αを加えた量以上であるか否かを判定する(ステップST2)。所定量αは、コントローラ30等に予め設定された量であり、例えば、アーム操作レバー26Aのレバー操作量が旋回操作レバーのレバー操作量よりも圧倒的に大きいか否かを判定するために用いられる。感度調整部300は、例えば、圧力センサ29Aの出力に基づき、アーム操作レバー26A及び旋回操作レバーのそれぞれのレバー操作量を比較可能な値として取得する。例えば、アーム操作レバー26A及び旋回操作レバーのそれぞれのレバー操作量をパイロット圧、レバー傾斜角度等の比較可能な値の形で取得する。
そして、アーム操作レバー26Aのレバー操作量が旋回操作レバーのレバー操作量に所定量αを加えた量未満であると判定した場合(ステップST2のNO)、感度調整部300は、アーム操作レバー26Aのレバー操作量と旋回操作レバーのレバー操作量とを比較し、旋回操作レバーのレバー操作量がアーム操作レバー26Aのレバー操作量に所定量αを加えた量以上であるか否かを判定する(ステップST3)。ここでの所定量αは、コントローラ30等に予め設定された量であり、例えば、旋回操作レバーのレバー操作量がアーム操作レバー26Aのレバー操作量よりも圧倒的に大きいか否かを判定するために用いられる。なお、ステップST3における所定量αは、ステップST2における所定量αと異なる量であってもよい。
そして、旋回操作レバーのレバー操作量がアーム操作レバー26Aのレバー操作量に所定量αを加えた量以上であると判定した場合(ステップST3のYES)、感度調整部300は、アーム操作レバー26Aの感度を下げる(ステップST4)。例えば、感度調整部300は、図3に示す減圧弁27AL及び減圧弁27ARのそれぞれに制御指令を出力し、アーム操作レバー26Aが生成するパイロット圧を減圧する。
この処理により、操作者が右旋回のために左操作レバーを右方向に操作したつもりが僅かに右斜め上方向に操作してしまったときであっても、アーム5が開いてしまうのを抑制或いは防止できる。意図せず増大させてしまったアーム開き側パイロット圧を減圧できるためである。
旋回操作レバーのレバー操作量がアーム操作レバー26Aのレバー操作量に所定量αを加えた量未満であると判定した場合(ステップST3のNO)、感度調整部300は、操作レバーの感度を調整することなく、通常制御を実行する(ステップST5)。旋回操作レバーのレバー操作量とアーム操作レバー26Aのレバー操作量との差が所定量α未満、すなわち、旋回操作レバーとアーム操作レバー26Aとがほぼ同じレバー操作量で同時に操作されており、操作レバーの感度を調整する必要がないと判断できるためである。なお、通常制御は、操作装置26が生成したパイロット圧に基づく、感度調整を伴わない制御である。
一方、アーム操作レバーのレバー操作量が旋回操作レバーのレバー操作量に所定量αを加えた量以上であると判定した場合(ステップST2のYES)、感度調整部300は、旋回操作レバーの感度を下げる(ステップST6)。例えば、感度調整部300は、上述のように減圧弁に制御指令を出力し、旋回操作レバーが生成するパイロット圧を減圧する。
この処理により、操作者がアーム閉じのために左操作レバーを後方(手前側)に操作したつもりが僅かに右斜め下方向に操作してしまったときであっても、上部旋回体3が左旋回してしまうのを抑制或いは防止できる。意図せず増大させてしまった左旋回側パイロット圧を減圧できるためである。
また、図4の例では、感度調整部300は、レバー操作量が小さい方の操作レバーの感度を自動的に低減させる。しかしながら、本発明はこの構成に限定されない。例えば、操作者は、所望の操作レバーの感度が所望のレベルに低減されるように設定してもよい。例えば、操作者は、スイッチ31を用いて特定の操作レバーの感度のみが低減されるように設定してもよく、その低減の程度を詳細に設定してもよい。例えば、操作者は、動かすつもりのない操作レバーの感度を大幅に低減させてもよい。
次に図5を参照し、操作レバーの感度を調整する具体的な方法について説明する。図5(A)及び図5(B)は何れも、アーム操作レバー26Aのレバー操作量を表す圧力センサ29Aの検出値(以下、「1次側パイロット圧」とする。)と圧力センサ27Aの検出値(以下、「2次側パイロット圧」とする。)との関係を示す図である。なお、1次側パイロット圧は、減圧弁27AL、27ARの上流側(アーム操作レバー26A側)のパイロット圧であり、2次側パイロット圧は、減圧弁27AL、27ARの下流側(制御弁175L、175R側)のパイロット圧である。レバー操作量は、1次側パイロット圧とリモコン弁26AVの特性とに基づいて算出され得る。1次側パイロット圧は実際には正値で表されるが、図5(A)及び図5(B)では、便宜上、アーム開き方向の1次側パイロット圧が正値で表され、アーム閉じ方向の1次側パイロット圧が負値で表される。横軸右側がアーム開き方向の1次側パイロット圧(正値)を示し、横軸左側がアーム閉じ方向の1次側パイロット圧(負値)を示す。また、縦軸がパイロットポートに作用する2次側パイロット圧を示す。また、実線は感度調整後の関係を示し、破線は感度調整前の関係を示す。
図5(A)は、アーム操作レバー26Aの不感帯を拡げることでアーム操作レバー26Aの感度を下げる方法を示す。具体的には、レバー操作量に基づき、減圧弁で2次側パイロット圧をシフトさせる方法を示す。不感帯は、レバー操作量が実際にはゼロでなくてもゼロと見なされる範囲を意味する。感度調整部300は、減圧弁27AL及び減圧弁27ARに指令を出力し、1次側パイロット圧−L1〜+L1の範囲W1であった不感帯を、1次側パイロット圧−L2〜+L2の範囲W2まで拡大する。そのため、アーム操作レバー26Aの開き側の1次側パイロット圧が0〜+L2であれば、アーム開き側パイロットポートに作用する2次側パイロット圧は、制御弁175L及び制御弁175Rを中立位置から変位させないレベルで維持される。同様に、アーム操作レバー26Aの閉じ側の1次側パイロット圧が−L2〜0であれば、アーム閉じ側パイロットポートに作用する2次側パイロット圧は、制御弁175L及び制御弁175Rを中立位置から変位させないレベルで維持される。図5(A)の例では、アーム開き側とアーム閉じ側の両方で同じ幅(L2−L1)だけ不感帯を変更しているが、アーム開き側とアーム閉じ側のそれぞれで異なる幅だけ不感帯を変更してもよい。
図5(B)は、アーム操作レバー26Aの1次側パイロット圧に対する2次側パイロット圧の増大率を小さくすることでアーム操作レバー26Aの感度を下げる方法を示す。具体的には、レバー操作量に基づき、減圧弁で2次側パイロット圧の増大率(傾き)を変える方法を示す。感度調整部300は、減圧弁27AL及び減圧弁27ARに指令を出力し、アーム操作レバー26Aを開き方向に操作したときの1次側パイロット圧に対する2次側パイロット圧の増大率をθ1からθ2に低減させる。そのため、1次側パイロット圧が+L1のときに増大し始めて+L2のときに最大値に達していた2次側パイロット圧は+L2ではなく+L3のときに遅れて最大値に達するようになる。アーム操作レバー26Aを閉じ方向に操作したときも同様である。図5(B)の例では、アーム開き側とアーム閉じ側の両方で同じ傾き(θ1−θ2)だけ増大率を変更しているが、アーム開き側とアーム閉じ側のそれぞれで異なる傾きだけ増大率を変更してもよい。
このように、感度調整部300は、減圧弁27AL及び減圧弁27ARを制御して1次側パイロット圧と2次側パイロット圧との関係を変更することで操作レバーの感度を調整できる。したがって、操作者が左操作レバーを旋回方向のみに操作しようとした際に、意図せずアーム開き方向へ左操作レバーを傾けてしまったとしても、アーム5が開くことはない。その結果、操作者が意図しないアーム開き動作を防止することができる。また、図5では、アーム操作レバー26Aに関して説明したが、他の操作レバーについても同様である。
次に図6を参照し、誤操作率について説明する。図6は、左操作レバーを真上から見た図であり、縦軸がアーム操作レバー26Aの操作方向に対応し、横軸が旋回操作レバーの操作方向に対応する。
図6の斜線領域は不感帯を示す。具体的には、横方向に延びる斜線領域がアーム操作レバー26Aの不感帯を示し、縦方向に延びる斜線領域が旋回操作レバーの不感帯を示す。図6のドットパターン領域は微操作領域を示す。具体的には、横方向に延びるドットパターン領域がアーム操作レバー26Aの微操作領域を示し、縦方向に延びるドットパターン領域が旋回操作レバーの微操作領域を示す。
レバー位置P0は、左操作レバーが中立位置にある状態を示し、レバー位置P1は、操作者が意図した通りに旋回操作レバーが左旋回方向に操作された状態を示す。
レバー位置P2は、操作者が意図した通りに旋回操作レバーが右旋回方向に操作され且つアーム操作レバー26Aが閉じ方向に操作された状態を示す。
レバー位置P3は、操作者が意図した通りに旋回操作レバーが右旋回方向に操作されたが、操作者の意図に反してアーム操作レバー26Aが開き方向に誤って操作されてしまった状態を示す。
レバー位置P4は、操作者が意図した通りにアーム操作レバー26Aが開き方向に操作されたが、操作者の意図に反して旋回操作レバーが左旋回方向に誤って操作されてしまった状態を示す。
上述の例では、レバー位置P3及びレバー位置P4のそれぞれが示す状態は、誤操作が行われている状態を示す。すなわち、上述の例では、誤操作が行われている状態は、アーム操作レバー26Aが微操作領域を超えて操作されているときに旋回操作レバーが微操作されている状態、及び、旋回操作レバーが微操作領域を超えて操作されているときにアーム操作レバー26Aが微操作されている状態である。
誤操作率は、通常制御において、所定時間内に、図6で示す微操作領域で操作された時間(誤操作が行われた時間)の統計値に基づいて算出される。例えば、左操作レバーの総操作時間に対する誤操作時間の比率として導き出される。総操作時間は、例えば、操作レバーが中立位置以外の位置に存在する時間、又は、不感帯以外の位置に存在する時間である。誤操作時間は、例えば、誤操作が行われている状態の時間である。なお、誤操作率は、操作レバーの総操作回数に対する誤操作回数の比率として導き出されてもよく、他の方法で導き出されてもよい。なお、操作レバーの1回の操作は、例えば、操作レバーが中立位置から出た後で中立位置に戻るまでの操作である。また、誤操作率の算出だけでなく、操作者が誤操作し易いレバー操作の特徴を把握することもできる。例えば、ある操作者はアーム閉じのみを行おうとする際に意図せず左操作レバーを右旋回方向へ傾けてしまう傾向がある。このような操作の特徴を操作者毎に把握できる。この特徴を利用し、コントローラ30は、右旋回操作に対する感度のみを低減させればよい。この場合、左旋回操作に対する感度については、通常制御からの変更は不要である。
次に図7を参照し、コントローラ30が誤操作防止モードの利用を操作者に促す処理(以下、「利用促進処理」とする。)について説明する。図7は、利用促進処理のフローチャートである。コントローラ30は、所定の制御周期で繰り返し利用促進処理を実行する。
最初に、コントローラ30は、誤操作率が所定の閾値以上であるかを判定する(ステップST11)。例えば、コントローラ30は、操作レバーの操作内容を時系列で記憶する。そして、所定時間における操作履歴に基づいて誤操作率を導き出す。所定時間は、例えば、エンジン始動後の所定時間(例えば1時間)である。その上で、所定時間における誤操作率が閾値以上であるか否かを判定する。
誤操作率が閾値以上であると判定した場合(ステップST11のYES)、コントローラ30は、誤操作防止モードの利用を促進する(ステップST12)。例えば、コントローラ30は、誤操作防止モードの利用を促進するテキストメッセージをソフトウェアスイッチとしてのスイッチ31とともに表示装置の画面に表示させる。操作者は、スイッチ31を押下することで誤操作防止モードを開始させることができる。誤操作防止モードの利用を促進する音声メッセージを車載スピーカから出力させてもよい。
コントローラ30は、誤操作防止モードを自動的に開始させてもよい。この場合、コントローラ30は、誤操作防止モード中であることを表す画像を表示装置の画面に表示させてもよく、誤操作防止モード中であることを表す音声メッセージを車載スピーカから出力させてもよい。
誤操作防止モードが開始された場合、感度調整部300は、誤操作率に応じて操作レバーの感度の調整内容を変更してもよい。例えば、感度調整部300は、誤操作率が高いほど不感帯の幅を大きくしてもよい。或いは、感度調整部300は、誤操作率が高いほどレバー操作量に対するパイロット圧の増大率を低減させてもよい。
誤操作率が閾値未満であると判定した場合(ステップST11のNO)、コントローラ30は、誤操作防止モードの利用を促進することなく、今回の利用促進処理を終了させる。
このように、コントローラ30は、操作レバーの操作履歴に基づいて誤操作率を導き出し、その誤操作率が所定の閾値以上の場合、誤操作防止モードの利用を操作者に促すことができ、或いは、誤操作防止モードを自動的に開始させることができる。
また、コントローラ30は、誤操作率に応じて操作レバーの感度の調整内容を変更できる。そのため、誤操作の頻度に応じた適切な感度調整を行うことができる。更に、操作の特徴を操作者毎に把握することもでき、その特徴に応じて感度を変更すべきレバー操作方向と感度調整量とを決定できる。
以上の構成により、コントローラ30は、例えば狭小空間での溝掘り作業等のシーケンス作業においてアーム操作中に誤って旋回操作が入ってしまうのを抑制或いは防止できる。そのため、ショベルが周囲の地物に誤って接触するのを抑制或いは防止できる。その結果、ショベルの安全性、操作性、及び作業効率を向上させることができる。
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、上述の実施例では、感度調整部300は、レバー操作量が小さい方の操作レバーの感度を自動的に低減させる。しかしながら、本発明はこの構成に限定されない。例えば、感度調整部300は、図6に示すような微操作領域を利用して誤操作が行われている状態であるか否かを判定し、誤操作が行われていると判定した場合に限り、レバー操作量が小さい方の操作レバーの感度を自動的に低減させてもよい。すなわち、誤操作防止モードにおいても、誤操作が行われていないと判定した場合には、レバー操作量が小さい方の操作レバーの感度を低減させずに維持してもよい。