以下、本発明の各実施形態に係る作業機械の一態様として、油圧ショベルについて説明する。
(油圧ショベル1の概略構成)
まず、油圧ショベル1の概略構成について、図1及び図2を参照して説明する。
図1は、本発明の各実施形態に係る油圧ショベル1の一構成例を示す側面図である。図2は、油圧ショベル1に搭載された第1操作レバー21及び第2操作レバー22の一構成例を示す図である。
油圧ショベル1は、路面を走行するための下部走行体101と、下部走行体101の上方に旋回可能に取り付けられた上部旋回体102と、上部旋回体102に俯仰動可能に連結されて掘削等の作業を行うフロント作業装置103と、を備えている。
下部走行体101は、その左右にそれぞれ配置されたクローラ101A(図1では左側のみを示す)と、各クローラ101Aを回転駆動させるための左右の各走行モータ(不図示)と、を有している。油圧ショベル1は、各走行モータの駆動力により各クローラ101Aを地面に接触させた状態で走行する。各クローラ101Aは、独立して回転駆動可能である。
上部旋回体102は、その前部に配置されて、オペレータが搭乗する運転室102Aと、後部に配置されて、フロント作業装置103とのバランスを保つためのカウンタウェイト102Bと、運転室102Aとカウンタウェイト102Bとの間に配置されて、エンジンや油圧ポンプ等の機器類を内部に収容する機械室102Cと、を備えている。上部旋回体102は、旋回モータ20A(図3参照)の駆動力によって下部走行体101に対して旋回する。
フロント作業装置103は、基端部が上部旋回体102に回動可能に取り付けられて、上部旋回体102に対して上下方向に回動(俯仰)するブーム31と、ブーム31の先端部に回動可能に取り付けられてブーム31に対して前後方向に回動するアーム32と、アーム32の先端部に回動可能に取り付けられてアーム32に対して前後方向に回動するバケット33と、を備えている。
バケット33は、例えば土砂等の荷を掬い上げ、所定の位置に荷を下ろすものである。このバケット33は、例えば、木材や岩石、廃棄物等を掴むグラップルや、岩盤を掘削するブレーカ等のアタッチメントに変更することが可能である。これにより、油圧ショベル1は、作業内容に適したアタッチメントを用いて、掘削や破砕等を含む様々な作業を行うことができる。
また、フロント作業装置103は、上部旋回体102とブーム31とを連結し、伸縮することによってブーム31を上部旋回体102に対して回動させるブームシリンダ31Aと、ブーム31とアーム32とを連結し、伸縮することによってアーム32をブーム31に対して回動させるアームシリンダ32Aと、アーム32とバケット33とを連結し、伸縮することによってバケット33をアーム32に対して回動させるバケットシリンダ33Aと、これらの各シリンダ31A,32A,33Aへ作動油を導くための複数の配管(不図示)と、を有している。
ブームシリンダ31A、アームシリンダ32A、バケットシリンダ33A、及び旋回モータ20Aはそれぞれ、第1〜第4メインポンプ41〜44(図3参照)から供給される圧油(作動油)によって駆動する油圧アクチュエータの一態様である。なお、以下の説明において、適宜、ブームシリンダ31A、アームシリンダ32A、バケットシリンダ33A、及び旋回モータ20Aを「油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20A」ともいう。
上部旋回体102の運転室102Aには、図2に示すような第1操作レバー21及び第2操作レバー22が設けられている。第1操作レバー21及び第2操作レバー22は、油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aを操作するための操作装置の一態様である。図2では、運転席に着座したオペレータの左側に設けられた第1操作レバー21がアーム32及び上部旋回体102の駆動に対応し、右側に設けられた第2操作レバー22がブーム31及びバケット33の駆動に対応している。なお、以下の説明において、便宜上、第1操作レバー21及び第2操作レバー22を単に「操作レバー21,22」ともいう。
具体的には、オペレータが、第1操作レバー21を待機状態から前方向に倒すと上部旋回体102が右方向に旋回し、後方向に倒すと上部旋回体102が左方向に旋回する。また、オペレータが、第1操作レバー21を待機状態から左方向に倒すとアーム32がダンプし、右方向に倒すとアーム32がクラウドする。すなわち、第1操作レバー21を前後方向に操作すると旋回モータ20Aが駆動し、第1操作レバー21を左右方向に操作するとアームシリンダ32Aが駆動する。
同様にして、オペレータが、第2操作レバー22を待機状態から前方向に倒すとブーム31が下がり、後方向に倒すとブーム31が上がる。また、オペレータが、第2操作レバー22を待機状態から左方向に倒すとバケット33がクラウドし、右方向に倒すとバケット33がダンプする。すなわち、第2操作レバー22を前後方向に操作するとブームシリンダ31Aが駆動し、第2操作レバー22を左右方向に操作するとバケットシリンダ33Aが駆動する。
図2では、第2操作レバー22のみを待機状態から右方向に操作量が100[%]となるように倒し、バケット33のみをダンプさせた状態を示している。なお、「待機状態」とは、第1操作レバー21及び第2操作レバー22がそれぞれ、前後方向及び左右方向のいずれにおいても真ん中に位置している状態であり(中立状態)、図2における第1操作レバー21の位置、及び第2操作レバー22における二点鎖線の位置である。
第1操作レバー21及び第2操作レバー22はそれぞれ、後述する各実施形態に係るコントローラと電気的に接続されており(図3参照)、第1操作レバー21及び第2操作レバー22を操作することにより、その操作量に応じて油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aの駆動が制御されている。
(油圧駆動装置10の構成)
次に、上部旋回体102やフロント作業装置103を駆動するための油圧駆動装置10の構成について、図3を参照して説明する。
図3は、油圧駆動装置10の一構成例を示す油圧回路図である。
油圧駆動装置10は、第1〜第4メインポンプ41〜44と、第1〜第4メインポンプ41〜44から供給される圧油によって駆動する油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aと、第1操作レバー21及び第2操作レバー22と、第1〜第4メインポンプ41〜44と油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aとの間に設けられた第1〜第4方向切換手段410,420,430,440と、を有している。
第1〜第4メインポンプ41〜44はそれぞれ、不図示のエンジンにより駆動される可変容量型の油圧ポンプの一態様であり、図3では両傾転可変容量ポンプを示している。なお、第1〜第4メインポンプ41〜44の最大吐出流量は、全て等しく「4」に設定されている。第1〜第4メインポンプ41〜44はそれぞれ、後述する各実施形態に係るコントローラと電気的に接続されており、コントローラから出力されるポンプ指令信号に基づいて吐出流量が制御される。
第1方向切換手段410は、4つの第1〜第4切換弁41A〜Dを有しており、第1メインポンプ41の接続先、すなわち圧油の供給先を油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aのいずれかに切り換える。具体的には、第1メインポンプ41は、第1方向切換手段410の第1切換弁41Aが「開」状態になるとブームシリンダ31Aに、第2切換弁41Bが「開」状態になるとアームシリンダ32Aに、第3切換弁41Cが「開」状態になるとバケットシリンダ33Aに、第4切換弁41Dが「開」状態になると旋回モータ20Aに、それぞれ接続される。
同様に、第2方向切換手段420は、4つの第1〜第4切換弁42A〜Dを有し、第2メインポンプ42の接続先を油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aのいずれかに切り換える。第3方向切換手段430は、4つの第1〜第4切換弁43A〜Dを有し、第3メインポンプ43の接続先を油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aのいずれかに切り換える。第4方向切換手段440は、4つの第1〜第4切換弁44A〜Dを有し、第4メインポンプ44の接続先を油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aのいずれかに切り換える。
第1〜第4方向切換手段410,420,430,440のそれぞれが4つずつ有している切換弁は、後述する各実施形態に係るコントローラと電気的に接続されており、コントローラから出力される切換弁指令信号に基づいて開閉動作が行われる。
第1〜第4メインポンプ41〜44と油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aとの接続関係を油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20A側からみると、例えば、ブームシリンダ31Aは、第1方向切換手段410の第1切換弁41A、第2方向切換手段420の第1切換弁42A、第3方向切換手段430の第1切換弁43A、及び第4方向切換手段440の第1切換弁44Aのそれぞれの開閉動作により、最大で4台のメインポンプ(第1〜第4メインポンプ41〜44の全て)に接続されて4つの閉回路が形成される。
同様に、アームシリンダ32A、バケットシリンダ33A、及び旋回モータ20Aのそれぞれについても最大で4つの閉回路が形成される。すなわち、油圧駆動装置10では、複数の切換弁の開閉動作により、油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aのうちの1つと第1〜第4メインポンプ41〜44のうちの少なくとも1つとが接続されて、複数の閉回路が形成される。
また、図3に示すように、ブームシリンダ31Aと第1〜第4メインポンプ41〜44のそれぞれとの間に形成される閉回路には、メイクアップ弁451A,451B、フラッシング弁452A、及びメインリリーフ弁453A,453Bを介してチャージ回路40Cが接続されている。
チャージ回路40Cは、片傾転固定容量型のチャージポンプ45と、チャージ回路40C内の圧力、すなわちチャージポンプ45の吐出圧が設定圧力以上にならないようチャージ回路40C内の圧力を制御するためのリリーフ弁46と、を備えている。
メイクアップ弁451Aは、ブームシリンダ31Aのロッド室に接続された油路31Cの圧力が下がると、作動油タンク40から吸い込んだ作動油を油路31Cに補充するためのものである。同様に、メイクアップ弁451Bは、ブームシリンダ31Aのボトム室に接続された油路31Dの圧力が下がると、作動油タンク40から吸い込んだ作動油を油路31Dに補充するためのものである。
フラッシング弁452Aは、ブームシリンダ31Aのヘッド室とロッド室との受圧面積差によって生じる余剰油をチャージ回路40Cのリリーフ弁46を介して作動油タンク40へ排出させるためのものである。メインリリーフ弁453A,453Bは、油路31C,31Dの圧力が設定圧力以上の高圧になると油をチャージ回路40Cに逃がすためのものである。
同様にして、アームシリンダ32Aと第1〜第4メインポンプ41〜44のそれぞれとの間に形成される閉回路には、メイクアップ弁451C,451D、フラッシング弁452B、及びメインリリーフ弁453C,453Dを介して、バケットシリンダ33Aと第1〜第4メインポンプ41〜44のそれぞれとの間に形成される閉回路には、メイクアップ弁451E,451F、フラッシング弁452C、及びメインリリーフ弁453E,453Fを介して、旋回モータ20Aと第1〜第4メインポンプ41〜44のそれぞれとの間に形成される閉回路には、メイクアップ弁451G,451H、フラッシング弁452D、及びメインリリーフ弁453G,453Hを介して、それぞれチャージ回路40Cが接続されている。
以下、油圧駆動装置10の駆動を制御するコントローラの具体的な構成について、実施形態ごとに説明する。
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係るコントローラ5の構成について、図4〜10を参照して説明する。
(コントローラ5のハードウェア構成)
まず、コントローラ5のハードウェア構成について、図4を参照して説明する。
図4は、コントローラ5のハードウェア構成図である。
コントローラ5は、CPU61、RAM62、ROM63、HDD64、入力I/F65、出力I/F66、及びバス67を含む。そして、CPU61、RAM62、ROM63、HDD64、入力I/F65、及び出力I/F66がバス67を介して互いに接続されて構成される。さらに、第1操作レバー21、第2操作レバー22、及び圧力センサ23が、入力I/F65に接続され、第1方向切換手段410の第1〜第4切換弁41A〜D、第2方向切換手段420の第1〜第4切換弁42A〜D、第3方向切換手段430の第1〜第4切換弁43A〜D、及び第4方向切換手段440の第1〜第4切換弁44A〜D、ならびに第1〜第4メインポンプ41〜44が、出力I/F66に接続されている。
このようなハードウェア構成において、ROM63やHDD64若しくは図示しない光学ディスク等の記録媒体に格納された油圧駆動プログラム(ソフトウェア)をCPU61が読み出してRAM62上に展開し、展開された油圧駆動プログラムを実行することにより、油圧駆動プログラムとハードウェアとが協働して、油圧駆動装置10の機能を実現する。
なお、本実施形態では、コントローラ5の構成をソフトウェアとハードウェアとの組み合わせにより説明しているが、これに限らず、油圧ショベル1側で実行される駆動プログラムの機能を実現する集積回路を用いて構成してもよい。
(コントローラ5の機能構成)
次に、コントローラ5が有する機能について、図5〜9を参照して説明する。
図5は、第1実施形態に係るコントローラ5が有する機能を示す機能ブロック図である。図6は、第1実施形態に係るコントローラ5で実行される処理のうち、ポンプ割当て処理以外の処理の流れを示すフローチャートである。図7は、ポンプ割当て処理の流れを示すフローチャートである。図8は、操作レバー21,22の操作量に対する各油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aの要求流量の特性の一例を示すグラフである。図9は、優先順位マップの一例を示す図である。
コントローラ5は、図5に示すように、データ取得部50、要求値決定部51、要求比率演算部52、特定条件判定部53、閾値記憶部54、要求値補正部55、ポンプ割当て決定部56、優先順位記憶部57、及び指令信号出力部58を含む。
データ取得部50は、圧力センサ23(図4参照)から検出した圧力データ、及び操作レバー21,22から検出した操作位置及び操作量のデータを取得する。
要求値決定部51は、データ取得部50で取得した操作レバー21,22の操作量に基づいて、油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aのそれぞれが要求する圧油の流量又は当該圧油の流量に相当する数値を油圧アクチュエータ要求値(以下、単に「要求値」とする)として決定する。
具体的には、図8に示す「操作レバー21,22に対する要求流量(要求値)の特性(以下、単に「特性」とする)」を用いて、データ取得部50で取得した操作レバー21,22の操作量から油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aの要求値をそれぞれ決定する。
本実施形態では、図8に示すように、操作レバー21,22の操作量と各油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aの要求流量とは比例関係にあり、操作レバー21,22の操作量[%]が増加するにつれて、各油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aの要求流量も増加している。
また、要求値決定部51は、油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aのうち、要求値決定部51で決定した要求値が最大となる油圧アクチュエータを「第1油圧アクチュエータ」として特定した上で、当該第1油圧アクチュエータの要求値を第1油圧アクチュエータ要求値Qi(以下、単に「第1要求値Qi」とする)として決定する。
さらに、要求値決定部51は、油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aのうち、第1油圧アクチュエータ以外の所定の油圧アクチュエータを「第2油圧アクチュエータ」として特定した上で、当該第2油圧アクチュエータの要求値を第2油圧アクチュエータ要求値Qj(以下、単に「第2要求値Qj」とする)として決定する。
なお、本実施形態では、要求値として油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aのそれぞれが要求する圧油の流量である要求流量を用いているが、これに限らず、例えば、要求流量を油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)の受圧面積で除算することにより求まる要求速度(要求速度=要求流量/油圧アクチュエータの受圧面積)を用いてもよい。
要求比率演算部52は、要求値決定部51で決定した第1要求値Qiに対する第2要求値Qjの比率Qratio(Qratio=Qj/Qi)を演算する。
特定条件判定部53は、第1要求値Qiに対する第2要求値Qjの比率Qratioが所定の閾値Qth(以下、単に「閾値Qth」とする)より小さい場合(Qratio<Qth)には特定の条件を満たすと判定し、反対に、比率Qratioが閾値Qth以上の場合(Qratio≧Qth)には特定の条件を満たさないと判定する。
ここで、「閾値Qth」とは、オペレータによる操作レバー21,22の微操作が意図しない誤操作であるか否かの基準となる値であり、閾値記憶部54に予め記憶されている。したがって、「特定の条件」とは、オペレータによる操作レバー21,22の微操作が意図しない誤操作であると決定するための条件であり、コントローラ5に特定の条件を満たすか否かを判定させることにより、その結果、オペレータによる操作レバー21,22の微操作が意図しない誤操作であるか否かを判断することができる。
なお、特定条件判定部53は、必ずしも閾値Qthを用いて特定の条件を満たすか否かを判定する必要はなく、第1要求値Qiと第2要求値Qjとを比較して、第1要求値Qiに対する第2要求値Qjが特定の条件を満たすか否かを判定すればよく、その判定方法について特に制限はない。
要求値補正部55は、特定条件判定部53により特定の条件を満たすと判定された場合に、要求値決定部51で決定された第2要求値Qjを「0」に補正する(Qj←0)。なお、要求値補正部55での補正値は必ずしも「0」である必要はなく、第2油圧アクチュエータの操作がなされていない状態に対応する値であればよい。
ポンプ割当て決定部56は、図9に示す優先順位マップに基づいて、油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aに対する第1〜第4メインポンプ41〜44のそれぞれの割当てを決定する。ここで、「優先順位マップ」とは、油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aと第1〜第4メインポンプ41〜44との間の優先的な接続関係を定めたものであり、優先順位記憶部57に予め記憶されている。
具体的には、優先順位マップは、図9に示すように、油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aの側から見た場合に(図9に示す矢印Xの方向)、油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aのそれぞれに対して割り当てられる第1〜第4メインポンプ41〜44の優先順位(以下、単に「油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aの側から見た優先順位」とする)と、第1〜第4メインポンプ41〜44の側から見た場合に(図9に示す矢印Yの方向)、第1〜第4メインポンプ41〜44のそれぞれが割り当てられるべき油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aの優先順位(以下、単に「第1〜第4メインポンプ41〜44の側から見た優先順位」とする)と、によって規定されている。
ポンプ割当て決定部56は、まず、油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aの側から見た優先順位に基づいて、油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aのそれぞれに対する第1〜第4メインポンプ41〜44の割当てを仮決定した上で、次に、第1〜第4メインポンプ41〜44の側から見た優先順位に基づいて、油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20A間の割当てを調整し、油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aのそれぞれに対する第1〜第4メインポンプ41〜44の割当てを本決定する。
また、ポンプ割当て決定部56は、特定条件判定部53により特定の条件を満たさないと判定された場合には要求値決定部51により決定された第2要求値Qjに基づき、要求値補正部55により第2要求値Qjが「0」に補正された場合には補正値である「0」に基づいて、第2油圧アクチュエータに対する第1〜第4メインポンプ41〜44の割当てを決定する。
指令信号出力部58は、ポンプ割当て決定部56により決定された第1〜第4メインポンプ41〜44の割当てに基づいて、第1方向切換手段410の第1〜第4切換弁41A〜D、第2方向切換手段420の第1〜第4切換弁42A〜D、第3方向切換手段430の第1〜第4切換弁43A〜D、及び第4方向切換手段440の第1〜第4切換弁44A〜Dをそれぞれ開閉動作させるための切換弁指令信号、ならびに第1〜第4メインポンプ41〜44をそれぞれ作動させるためのポンプ指令信号を出力する。
次に、コントローラ5内で実行される処理の流れを、操作レバー21,22が図10に示す位置に操作された場合を例に挙げて説明する。
図10は、特定の条件を満たす操作がなされた場合の第1操作レバー21及び第2操作レバー22の位置の一例を示す図である。具体的には、オペレータが、待機状態からバケット33をダンプする方向(右方向)に操作量100[%]で第2操作レバー22を操作している際に、意図せず誤ってアーム32をクラウドする方向(右方向)に操作量1[%]で第1操作レバー21を微操作してしまった状態を示している。なお、図10において、待機状態における第1操作レバー21及び第2操作レバー22の位置を二点鎖線で示している。
図10に示すようなケースとしては、例えば、所定の油圧アクチュエータを高速で操作しているような場合に、オペレータの意識が当該油圧アクチュエータに集中してしまい、他の油圧アクチュエータにまで意識が回らず、意図せず誤って他の油圧アクチュエータの操作方向に操作レバー21,22を微操作してしまうケースである。また、操作レバー21,22は運転席の左右両側に位置しているため、オペレータの癖等によっては操作レバー21,22をオペレータの身体側に引き込む方向(左右側から中央内側に向かう方向)に操作レバー21,22を操作しやすく、これによっても誤った微操作が生じてしまうことがある。
まず、コントローラ5では、図6に示すように、データ取得部50が、油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aと第1〜第4メインポンプ41〜44との間にそれぞれ形成される閉回路の圧力、ならびに操作レバー21,22の操作位置及びその操作量に関するデータを取得する(ステップS501)。
次に、要求値決定部51は、図8に示す特性を用いて、油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aの要求値を(ブーム,アーム,バケット,上部旋回体)=(0,0.04,4,0)として決定する(ステップS502)。
ここで、バケットシリンダ33Aの要求値が「4」で最大であるため、要求値決定部51は、バケットシリンダ33Aを第1油圧アクチュエータとして特定した上で、第1要求値Qiを「4」と決定すると共に(ステップS503A)、ブームシリンダ31Aを第2油圧アクチュエータとして特定した上で、第2要求値Qjを「0」と決定する(ステップS503B)。
次に、要求比率演算部52は、第1要求値Qiに対する第2要求値Qjの比率Qratioを演算し、Qratio=0/4=0となる(ステップS504)。
次に、特定条件判定部53は、ステップS504で演算された比率Qratioが閾値Qthより小さいか否かを判定する(ステップS505)。ここで、閾値Qthを「0.05」とすると、比率Qratioは閾値Qthより小さくなる(Qratio=0<0.05=Qth)ため(ステップS505/YES)、特定条件判定部53は特定の条件を満たすと判定する(ステップS506)。
次に、要求値補正部55は、第2要求値Qjを「0」に補正し(ステップS507)、補正した第2要求値Qjである「0」を残り要求値に代入する(ステップS508)。なお、ブームシリンダ31Aを第2油圧アクチュエータとしているため、第2要求値Qjは元々「0」であり、補正前後における第2要求値Qjの値は変わらない。
仮に、ステップS505において、比率Qratioが閾値Qth以上(Qratio≧Qth)となり(ステップS505/NO)、特定条件判定部53が特定の条件を満たさないと判定した場合(ステップS509)、要求値決定部51は、第2要求値Qjを残り要求値に代入する(ステップS510)。
ここで、「残り要求値」とは、後述するステップS517において割り当てられていないメインポンプがある場合に、割り当てた分の要求値を差し引いた要求値を示している。したがって、初期の残り要求値は、まだメインポンプの割り付けがなされていないため、ステップS503Bで決定された第2要求値Qj又はステップS508で補正された第2要求値Qj(=0)そのものとなる。
次に、特定条件判定部53は、特定の条件を満たすか否かの判定を行っていない油圧アクチュエータがあるか否かを判定する(ステップS511)。アームシリンダ32A及び旋回モータ20Aについて、特定の条件を満たすか否かの判定を行っていないため(ステップS511/YES)、ステップS503Bに戻る。
ステップS503Bにおいて、第2油圧アクチュエータとして旋回モータ20Aを特定すると、第2要求値Qjは「0」でブームシリンダ31Aと同様であるため、コントローラ5では、前述したブームシリンダ31Aの処理と同様の処理が行われる。
ステップS503Bにおいて、第2油圧アクチュエータとしてアームシリンダ32Aを特定すると、第2要求値Qjは「0.04」であり、比率Qratio=0.04/4=0.01となる(ステップS504)。したがって、比率Qratioは閾値Qthより小さくなる(Qratio=0.01<0.05=Qth)ため(ステップS505/YES)、特定条件判定部53は特定の条件を満たすと判定する(ステップS506)。そして、要求値補正部55は、第2要求値Qjを「0.04」から「0」に補正して(ステップS507)、補正した第2要求値Qj=0を残り要求値に代入する(ステップS508)。
以上から、ステップS502において決定された要求値(ブーム,アーム,バケット,上部旋回体)=(0,0.04,4,0)は、ステップS508により(ブーム,アーム,バケット,上部旋回体)=(0,0,4,0)へ補正されて残り要求値に代入される(ステップS508)。
そして、ステップS511において、特定の条件を満たすか否かの判定を行っていない油圧アクチュエータはないため(ステップS511/NO)、ポンプ割当て処理に進む(ステップS512)。
図7に示すように、ポンプ割当て決定部56は、バケットシリンダ33Aに対し、図9に示す矢印Xの方向から見た優先順位に従って、具体的には、第3メインポンプ43、第4メインポンプ44、第1メインポンプ41、第2メインポンプ42の優先順位に従って、第1〜第4メインポンプ41〜44を流量「1」ずつで仮に割当てる(ステップS513)。
なお、第1〜第4メインポンプ41〜44の全てがバケットシリンダ33Aにのみ接続されているので、図9に示す矢印Yの方向から見た優先順位に従った割当ての調整(ステップS514)は行われずに、次の処理へ進む。
残り要求値が(0,0,4,0)であり、割当て値が(0,0,4,0)であるため、更新後の残り要求値は、(0,0,4,0)−(0,0,4,0)=(0,0,0,0)となる(ステップS515)。
油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aの全てに係る更新後の残り要求値が「0」であるため(ステップS516/YES)、指令信号出力部58は、割当て値(0,0,4,0)に従って、バケットシリンダ33Aに第1〜第4メインポンプ41〜44の全てがそれぞれ流量「1」で割り当てられるように、切換弁指令信号及びポンプ指令信号を出力する(ステップS518)。
具体的には、指令信号出力部58は、第1〜第4方向切換手段410,420,430,440の各第3切換弁41C,42C,43C,44Cに対して「開」の切換弁指令信号を出力すると共に、第1〜第4メインポンプ41〜44に対して吐出流量がそれぞれ「1」となるようにポンプ指令信号を出力する。
これにより、バケットシリンダ33Aと、第1メインポンプ41、第2メインポンプ42、第3メインポンプ43、及び第4メインポンプ44のそれぞれとが閉回路状に接続され、バケットシリンダ33Aに対して流量「4」で圧油が供給される。
仮に、ステップS516において更新後の残り要求値が全て「0」でない場合(ステップS516/NO)には、第1〜第4メインポンプ41〜44のうち割り当てられていないメインポンプがあるか否かの判断を行う(ステップS517)。
ステップS517において、割り当てられていないメインポンプがない場合(ステップS517/NO)には、ステップS518の処理に進んでコントローラ5におけるポンプ割当て処理を終了する。一方、ステップS517において、割り当てられていないメインポンプがある場合(ステップS517/YES)には、ステップS513に戻り、更新後の残り要求値が全て「0」になるか(ステップS516/YES)、又は割り当てられていないメインポンプがない状態(ステップS517/NO)になるまで繰り返す。
ここで、従来は、コントローラが特定の条件を満たすか否かの判定を行っていなかったため、特定の条件を満たす場合であっても、すなわちオペレータによる微操作が誤操作に該当するような場合であっても、誤操作がなされた油圧アクチュエータの要求値に対する補正がなされないままポンプ割当て処理が行われていた。
したがって、従来のコントローラにおいて図10に示す例の処理を実行すると、アームシリンダ32Aの要求値が補正されないまま、要求値決定部51で決定された要求値(ブーム,アーム,バケット,上部旋回体)=(0,0.04,4,0)が残り要求値にそのまま代入されていた。
ポンプ割当て決定部56は、図9に示す優先順位マップに基づいて、アームシリンダ32Aに対して第4メインポンプ44を流量「0.04」で、かつバケットシリンダ33Aに対して、第3メインポンプ43、第4メインポンプ44、第1メインポンプ41、第2メインポンプ42の優先順位に従って、第1〜第4メインポンプ41〜44を流量「1」ずつで仮に割当てる(ステップS513に相当)。
しかしながら、第4メインポンプ44は、アームシリンダ32A及びバケットシリンダ33Aの両方に仮割当てされている。図9において、第4メインポンプ44の欄を矢印Yの方向に見ると、優先順位1位がアームシリンダ32A、2位がバケットシリンダ33Aとなっている。したがって、第4メインポンプ44は、バケットシリンダ33Aよりもアームシリンダ32Aを優先し、ポンプ割当て決定部56は、アームシリンダ32Aに対して第4メインポンプ44を割り当て、バケットシリンダ33Aに対しては第4メインポンプ44を割り当てないように調整する(ステップS514に相当)。
この調整によって割当て値が(0,0.04,3,0)となるため、指令信号出力部58は、第1方向切換手段410の第3切換弁41C、第2方向切換手段420の第3切換弁42C、第3方向切換手段430の第3切換弁43C、及び第4方向切換手段440の第2切換弁44Bに対して、それぞれ「開」の切換弁指令信号を出力すると共に、第1〜第3メインポンプ41〜43に対して吐出流量がそれぞれ「1」、かつ第4メインポンプ44に対して吐出流量が「0.04」となるようにポンプ指令信号を出力する(ステップS518に相当)。
したがって、バケット33のダンプ操作に必要な圧油の流量(バケットシリンダ33Aへ供給する流量)が「4」から「3」に減少してしまうため、バケット33のダンプ速度が急激に低下してしまう。
しかしながら、本実施形態では、微操作が行われたアームシリンダ32Aに対して特定の条件を満たすか否かを判定し、特定の条件を満たす場合にはアームシリンダ32Aの要求値が「0」に補正されるため、バケットシリンダ33Aへ供給する流量が「4」から「3」に減少することなく、バケットシリンダ33Aに対して流量「4」で圧油が供給される。
そのため、オペレータが意図せず誤ってアーム32をクラウドする方向(右方向)に第1操作レバー21を微操作してしまった場合であっても、アームシリンダ32Aに対してメインポンプが割り当てられることなく、バケットシリンダ33Aに対して割り当てられるメインポンプの数を維持することができるため、バケット33のダンプ速度の急激な低下を抑制することができる。これにより、本来オペレータが意図して操作を行っている油圧アクチュエータの動作速度の低下を抑制することができ、オペレータが意図する操作に応じた操作性や作業性を維持することが可能となる。
なお、「特定の条件を満たすか否かを判定する」とは、操作レバー21,22により操作がなされた複数の油圧アクチュエータのうち、要求値が最大となる油圧アクチュエータ(第1油圧アクチュエータ)、すなわちオペレータが意図して操作を行っている油圧アクチュエータの要求値(第1要求値Qi)に対して所定の不感帯を設けることである。したがって、ある1つの油圧アクチュエータのみを操作する場合にも設けられている、操作レバー21,22の操作量に対する不感帯とは異なるものである。
本実施形態では、特定の条件の判定は、第2操作レバー22によって操作されたバケットシリンダ33A(第1油圧アクチュエータ)と、第1操作レバー21によって操作されたアームシリンダ32A(第2油圧アクチュエータ)との間、すなわち第1操作部材により操作される第1油圧アクチュエータと、第1操作部材とは別の第2操作部材により操作される第2油圧アクチュエータとの間においても行われているが、これに限らず、例えば共通する1つの操作部材によって操作される第1油圧アクチュエータと第2油圧アクチュエータとの間でのみ特定の条件の判定を行ってもよい。この場合については、次の第2実施形態において説明する。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について、操作レバー21,22が図11に示す位置に操作された場合を例に挙げて説明する。なお、本実施形態及び後述する第3実施形態において、第1実施形態で説明した構成及び機能と同様の構成及び機能については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
図11は、第2実施形態において、特定の条件を満たす操作がなされた場合の第1操作レバー21及び第2操作レバー22の位置の一例を示す図である。
図11では、オペレータが、待機状態からバケット33をダンプする方向(右方向)に操作量100[%]で第2操作レバー22を操作すると共に、アーム32をクラウドする方向(右方向)に操作量1[%]で第1操作レバー21を操作している際に、意図せず誤ってブーム31を上げる方向(後方向)に操作量1[%]で第2操作レバー22をさらに動かしてしまった状態を示している。なお、図11において、待機状態における操作レバー21,22の位置を二点鎖線で示している。
第1実施形態と同様に、要求値決定部51は、データ取得部50により取得されたデータ(ステップS501)に基づき、図8に示す特性を用いて、油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aの要求値を(ブーム,アーム,バケット,上部旋回体)=(0.04,0.04,4,0)として決定する(ステップS502)。そして、バケットシリンダ33Aの要求値が「4」で最大であるため、要求値決定部51は、バケットシリンダ33Aを第1油圧アクチュエータとして特定した上で、第1要求値Qiを「4」と決定する(ステップS503A)。
本実施形態では、第1実施形態と異なり、共通の1つの操作部材により第1油圧アクチュエータ及び第2油圧アクチュエータを操作する。換言すれば、第1油圧アクチュエータを操作する操作部材で共通して操作される油圧アクチュエータが第2油圧アクチュエータに該当することとなる。したがって、特定条件判定部53で行われる特定の条件を満たすか否かの判定は、第1油圧アクチュエータを操作する操作部材で共通して操作される油圧アクチュエータに対してのみ行われる。
図11に示す例では、第1油圧アクチュエータであるバケットシリンダ33Aの操作は第2操作レバー22によってなされており、その第2操作レバー22ではブームシリンダ31Aの操作にも対応している。したがって、ブームシリンダ31Aが第2油圧アクチュエータに該当し、アームシリンダ32A及び旋回モータ20Aは第2油圧アクチュエータとして特定の条件を満たすか否かの判定は行われない。
具体的には、要求値決定部51は、ブームシリンダ31Aを第2油圧アクチュエータとして特定し、第2要求値Qjを「0.04」と決定する(ステップS503B)。第1実施形態と同様に、第1要求値Qiに対する第2要求値Qjの比率Qratioが閾値Qthより小さくなる(Qratio=0<0.05=Qth)ので(ステップS505)、特定条件判定部53は特定の条件を満たすと判定する(ステップS506)。そして、要求値補正部55により、ブームシリンダ31Aの要求値が「0.04」から「0」に補正されて(ステップS507)、補正後の第2要求値である「0」が残り要求値に代入される(ステップS508)。
一方、アームシリンダ32Aの要求値、及び旋回モータ20Aの要求値に対しては補正がなされないため、アームシリンダ32Aの要求値は「0.04」のまま、旋回モータ20Aの要求値は「0」のまま、それぞれ残り要求値に代入される。したがって、残り要求値(0,0.04,4,0)に基づいてポンプ割当て処理(ステップS512)が実行される。
以上より、アームシリンダ32Aは、要求値がブームシリンダ31Aの要求値と同じ「0.04」であっても、ブームシリンダ31Aと異なり、特定の条件を満たすか否かの判定が行われず、要求値が補正されないため、アームシリンダ32Aに対する第1操作レバー21の操作は誤った微操作として扱われない。
操作レバー21,22におけるオペレータの意図しない誤った微操作は、オペレータの手の動きの癖等が原因となって発生しやすい。したがって、所定の操作レバー内において、オペレータの意図しない誤った微操作が行われやすい。具体的には、共通で用いられる1つの操作レバーにおいて、操作を意図して操作量を多く入力した方向とは異なる方向に力を作用させてしまうことにより発生しやすい。図11に示す例では、第2操作レバー22内において、操作を意図して入力した右方向(バケット33がダンプする方向)とは異なる後方向(ブーム31を上げる方向)に力を作用させてしまっている。
このような事態が想定されやすいことから、第1油圧アクチュエータを操作する操作部材で共通して操作される第2油圧アクチュエータに対してのみ特定の条件を満たすか否かを判定してポンプ割当て処理を行うことにより、本来オペレータが意図した操作(図11に示す例では、アーム32をクラウドさせる操作)まで受け付けなくなるといった問題を抑制することができる。これにより、従来通りの作業性を確保しつつも、オペレータによる意図しない誤った微操作によって、上部旋回体102やフロント作業装置103の動作速度が急激に低下しないようにすることが可能となる。
なお、上記では、第2操作レバー22によって操作されるブームシリンダ31A及びバケットシリンダ33Aの間において特定の条件の判定を行う旨を説明したが、これに限らず、第1操作レバー21によって操作されるアームシリンダ32A及び旋回モータ20Aの間において特定の条件の判定を行ってもよい。したがって、操作部材を共通とする複数の油圧アクチュエータ間における特定の条件の判定を、複数の操作部材ごとに並行して実行することも可能である。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について、図12〜14を参照して説明する。
図12は、第3実施形態において、操作レバー21,22の稼働可能な範囲のうち、オペレータによる意図した微操作領域の一例を示す図である。図13は、第3実施形態に係るコントローラ5Aが有する機能を示す機能ブロック図である。図14は、第3実施形態に係るコントローラ5Aで実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図12において斜線で示すように、操作レバー21,22のそれぞれの稼働可能領域(範囲)には、オペレータによる誤った微操作が考えにくく、当該微操作がオペレータの意図したものである可能性が高い所定の領域として微操作領域21X,22Xが存在する。
例えば、オペレータが、上部旋回体102を右に旋回させるべく第1操作レバー21を前方向に操作する際、第1操作レバー21の操作位置が、アーム32をダンプする方向(左方向)、すなわち図12における微操作領域211Xに含まれるように、誤って操作する可能性は低いと考えられる。これは、第1操作レバー21は、通常、オペレータの左手で操作されることから、オペレータの左腕の動きを考慮すると、左腕を外側に向かって開くように第1操作レバー21を誤って倒すことは考えづらいからである。
また、オペレータが、アーム32をダンプさせるべく第1操作レバー21を左方向に操作する際、第1操作レバー21の操作位置が、上部旋回体102を右に旋回させる方向(前方向)、すなわち図12における微操作領域212Xに含まれるように、誤って操作する可能性も低いと考えられる。この場合についても同様に、オペレータの左腕の動きを考慮すると、左腕を自身の体から離すように前方へ向かって第1操作レバー21を誤って押し倒すことは考えづらいからである。
第2操作レバー22についても同様に、オペレータの右腕の動きを考慮すると、右腕を外側に向かって開くように誤って倒すことや、右腕を自身の体から離すように前方へ向かって誤って押し倒すことは考えづらい。したがって、第2操作レバー22の操作位置が図12に示す微操作領域22Xに含まれるように、オペレータが誤って操作する可能性は低い。なお、図12では、微操作領域21X,22Xの一例を示しており、操作レバー21,22における微操作領域21X,22Xは、図12に示した領域に限られない。
このように、第2油圧アクチュエータに対して微操作が行われた際に、当該第2油圧アクチュエータに対する操作レバー21,22の操作位置が微操作領域21X,22Xに含まれる場合、コントローラ5Aは、第1要求値Qiに対する第2要求値Qjの比率Qratioが閾値Qthより小さい場合であっても、特定の条件を満たさないと判定する。
図13に示すように、コントローラ5Aは、第1実施形態に係るコントローラ5と異なり、微操作領域記憶部59をさらに含む。微操作領域記憶部59は、前述した微操作領域21X,22Xを予め記憶しておく。
また、特定条件判定部53Aは、第1実施形態に係るコントローラ5の特定条件判定部53と異なり、操作レバー21,22からの操作位置に関するデータから、第2油圧アクチュエータに対する操作レバー21,22の操作位置が微操作領域21X,22Xに含まれる場合には、第1要求値Qiに対する第2要求値Qjの比率Qratioが閾値Qthより小さい場合(Qratio<Qth)であっても、特定の条件を満たさないと判定する。
具体的には、図14に示すように、特定条件判定部53Aは、ステップS505において比率Qratioが閾値Qthより小さい場合に(ステップS505/YES)、第2油圧アクチュエータに対する操作レバー21,22の操作位置が微操作領域21X,22Xに含まれているか否かを判定する(ステップS505A)。
ステップS505Aにおいて、第2油圧アクチュエータに対する操作レバー21,22の操作位置が微操作領域21X,22Xに含まれていると判定された場合(ステップS505A/YES)、特定条件判定部53Aは、特定の条件を満たさないと判定する(ステップS509)。コントローラ5A内において、ステップS509以降に実行される処理については、第1実施形態に係るコントローラ5内で実行される処理と同様である。
ステップS505Aにおいて、第2油圧アクチュエータに対する操作レバー21,22の操作位置が微操作領域21X,22Xに含まれていないと判定された場合(ステップS505A/NO)、特定条件判定部53Aは、特定の条件を満たすと判定する(ステップS506)。コントローラ5A内において、ステップS506以降に実行される処理については、第1実施形態に係るコントローラ5内で実行される処理と同様である。
このように、第1実施形態において、特定条件判定部53により特定の条件を満たすと判定され、要求値補正部55によって第2要求値Qjが「0」に補正される場合であっても、第2油圧アクチュエータに対する操作レバー21,22の操作位置が微操作領域21X,22Xに含まれている場合には、特定条件判定部53Aによって特定の条件を満たさないと判定されるため(ステップ509)、要求値補正部55により第2要求値Qjが「0」に補正されずに残り要求値にそのまま代入される(ステップS510)。
コントローラ5Aが、オペレータが誤った微操作をしやすい操作レバー21,22の位置(領域)や、オペレータが誤った微操作をしにくいと考えられる操作レバー21,22の位置(領域)等といった所定の領域を予め記憶しておき、操作レバー21,22の操作位置が当該所定の領域に含まれる場合には、特定条件判定部53Aで特定の条件を満たさないと判定することで、オペレータの駆動意図をさらに精度良く判定することが可能となるため、操作性や作業性の向上につながる。
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
例えば、上記実施形態では、第1操作レバー21でアーム32の操作及び上部旋回体102の操作を共通とし、第2操作レバー22でブーム31の操作及びバケット33の操作を共通としていたが、必ずしもこれらの組み合わせである必要はなく、例えばブーム31の操作及びアーム32の操作が共通の操作レバー、上部旋回体102の操作及びバケット33の操作が共通の操作レバーであってもよい。
また、上記実施形態では、操作レバー21,22の操作量0〜100[%]に対して、各油圧アクチュエータの要求流量が0〜4となっていたが、必ずしも各油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aの最大要求流量が4である必要はなく、また、各油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aにおいて、その動作方向によって最大要求流量が異なっていてもよい。
また、ポンプ割当て処理(ステップS512)は、上記実施形態の中で説明した処理内容に限定されず、第1〜第4メインポンプ41〜44を各油圧アクチュエータ31A,32A,33A,20Aに割り当てることが可能な処理であればよい。また、優先順位マップも図9に示す内容に限定されない。