JP6754712B2 - ポリエステルフィルムの製造方法及びフィルム成形用加熱ロール - Google Patents

ポリエステルフィルムの製造方法及びフィルム成形用加熱ロール Download PDF

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Description

本発明は、ポリエステルフィルムの製造方法及びフィルム成形用加熱ロールに関する。
高分子を含むフィルムとしては、例えば、包装材料、光学材料や、特定の高分子の結晶化状態を制御して得られる、圧電性材料が知られている。
これらのフィルムは、高分子押し出し法や延伸法などにより製造されることが知られている。
延伸方法としては、押出機でフィルム原料を溶融し、濾過した後、口金よりフィルムを吐出させて、キャスティングドラム上で冷却固化し、縦及び横の二方向に延伸したフィルムを一端弛緩させた後、さらに縦及び横方向に延伸する逐次二軸延伸方法や、得られたフィルムを搬送方向に延伸する一軸延伸方法が知られている。
逐次二時延伸法で用いられる縦延伸装置は、一般的に、未延伸フィルムを延伸できる温度に加熱する予熱ロール群と、予熱ロール群よりも周速の大きい延伸ロール群と、を備え、両ロール群の周速差を利用して未延伸フィルムを長手方向に延伸する。
縦延伸装置において、ロール表面の材質やロール表面の粗さは、フィルムの剥離ムラの発生に影響することが報告されている。例えば、高温縦延伸する際に、擦り傷、ロールとの粘着傷を抑制するために、表面に樹脂成分、金属及びセラミックのいずれか1種又はこれら2種以上を組み合わせたものとフッ素樹(テフロン(登録商標))とが分散されるように被覆されたロールを用いることを特徴とするポリエステルフィルムの製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また粘着ムラや擦り傷を発生させることなしに従来の粗面化ロールの場合よりもシートを大幅に高温にまで加熱することが可能な縦延伸装置として、熱可塑性樹脂をガラス転移温度以上に加熱するロールにRmaxが1.0μm以上6.0μm以下であり凹部が10個/mm以上あって、断面曲線の中心線より1.5μm以上高い凸部がないように表面仕上げをしたロールを用いた熱可塑性樹脂シートの延伸装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特開昭60−078724号公報 特開昭62−116127号公報
ところで、特許文献1に記載の製造方法によって得られたポリエステルフィルムは、剥離力が不十分であるために、ロールに対するフィルムのべたつきが改善されず、剥離ムラが発生しやすいという問題がある。
さらに、特許文献2に記載の熱可塑性樹脂シートの延伸装置では、凹部を多くすることでフィルムとロールとの粘着を防止することを示しているが、フィルムをガラス転移点以上の温度まで加熱すると、ロール表面の溝(凹部)に軟化したフィルムが埋設してしまい、十分な離型性が得られず、ロールに巻きついて生産性が低下するという問題がある。
本発明者らは、上記事情に鑑み、鋭意検討の結果、特定のシリコーン樹脂を含む表面層を有する加熱ロールを用いて、フィルムを予熱又は延伸することで、剥離ムラが低減されたフィルムが得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、剥離ムラの発生を低減させたポリエステルフィルムの製造方法及びフィルム成形用加熱ロールを提供することを目的とする。
課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 赤外光入射角45°の条件でフーリエ変換赤外分光減衰全反射法により求められる、2079cm−1〜2415cm−1の範囲におけるSi−Hの伸縮振動に由来する最大吸収ピーク強度Paと、1040cm−1〜1060cm−1の範囲におけるSi−O−Siの伸縮振動に由来する最大吸収ピーク強度Pbと、が下記関係式(1)を満たすシリコーン樹脂を含み、かつ、厚さが0.5μm〜3.0μmである表面層を有し、前記表面層における表面温度T(℃)が下記関係式(2)の関係を満たす加熱ロールを用いて、ポリエステルフィルムを予熱する工程と、予熱された前記ポリエステルフィルムを延伸する工程と、を有するポリエステルフィルムの製造方法。
Pa/Pb≦2.0 ・・・関係式(1)
Tg≦T(℃)≦(Tg+10)・・・関係式(2)
[関係式(2)中、Tgはポリエステルフィルムのガラス転移温度を示す。]
<2>前記表面層の鉛筆硬度が5H以上であり、前記表面層の剥離強度が2N/50mm以下である、<1>に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
<3> 前記ポリエステルフィルムは、脂肪族ポリエステルフィルムである<1>又は<2>に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
<4> 前記脂肪族ポリエステルフィルムは、ヘリカルキラル高分子を含む<3>に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
<5> 前記脂肪族ポリエステルフィルムは、ポリ乳酸系高分子を含む<3>に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
<6> 赤外光入射角45°の条件でフーリエ変換赤外分光減衰全反射法により求められる、2079cm−1〜2415cm−1の範囲における2247cm−1付近のSi−Hの伸縮振動に由来する最大吸収ピーク強度Paと、1040cm−1〜1060cm−1の範囲におけるSi−O−Siの伸縮振動に由来する最大吸収ピーク強度Pbと、が下記関係式(1)を満たすシリコーン樹脂を含み、かつ、厚さが0.5μm〜3.0μmである表面層を有するフィルム成形用加熱ロール。
Pa/Pb≦2.0 ・・・関係式(1)
本発明によれば、剥離ムラの発生を低減させたポリエステルフィルムの製造方法及びフィルム成形用加熱ロールが提供される。
本実施形態のポリエステルフィルムの製造方法の一例を示す工程図である。 本実施形態のポリエステルフィルムの製造方法の一例を示す工程図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本明細書において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
なお、本明細書において、「ポリエステルフィルム」は、ポリエステルシートを包含する概念である。
また、本明細書において、フィルムの主面とは、フィルムの厚み方向と直交する面(言い換えれば、長さ方向及び幅方向を含む面)のことを意味する。なお、「主面」を単に「面」とも称することがある。
本明細書において、部材の「面」は、特に断りが無い限り、部材の「主面」を意味する。
<<ポリエステルフィルムの製造方法>>
本実施形態のポリエステルフィルムの製造方法(以下、単に「製造方法」ともいう。)は、少なくとも、赤外光入射角45°の条件でフーリエ変換赤外分光減衰全反射法(以下「FT−IR−ATR法」ともいう。)により求められる、2079cm−1〜2415cm−1の範囲におけるSi−Hの伸縮振動に由来する最大吸収ピーク強度Paと、1040cm−1〜1060cm−1の範囲におけるSi−O−Siの伸縮振動に由来する最大吸収ピーク強度Pbと、が下記関係式(1)を満たすシリコーン樹脂(以下、「特定シリコーン樹脂」ともいう。)を含み、かつ、厚さが0.5μm〜3.0μmである表面層を有し、前記表面層における表面温度T(℃)が下記関係式(2)の関係を満たす加熱ロールを用いて、ポリエステルフィルムを予熱する工程と、予熱された前記ポリエステルフィルムを延伸する工程と、を有する。
Pa/Pb≦2.0 ・・・関係式(1)
Tg≦T(℃)≦(Tg+10)・・・関係式(2)
[関係式(2)中、Tgはポリエステルフィルムのガラス転移温度を示す。]
本実施形態の製造方法は、特定のシリコーン樹脂を含み、かつ、厚みが特定の範囲内にある表面層を有し、表面層における表面温度が特定の範囲内にある加熱ロールを用いて、ポリエステルフィルムを予熱する工程と、予熱されたポリエステルフィルムを延伸する工程と、を有することで、剥離ムラの発生を低減させたポリエステルフィルムを製造することが可能となる。
この理由は明らかではないが、以下のように推測される。
一般にフィルムの延伸方法としては、縦延伸、横延伸、縦横延伸などが知られている。特に、ロールを用いてフィルムを延伸する場合、延伸する前にフィルムをガラス転移点以上の温度まで加熱する必要がある。ガラス転移点以上の温度までフィルムを加熱すると、フィルムの粘性が増すために、延伸前のロールに張り付きやすく、剥離点が安定せず、剥離ムラが発生しやすい。
本実施形態の製造方法において、加熱ロールの表面層に特定のシリコーン樹脂を含ませることで、剥離性を付与することが可能となる。特に、赤外光入射角45°の条件でFT−IR−ATR法により求められる、2079cm−1〜2415cm−1の範囲におけるSi−Hの伸縮振動に由来する最大吸収ピーク強度Paと、1040cm−1〜1060cm−1の範囲におけるSi−O−Siの伸縮振動に由来する最大吸収ピーク強度Pbと、が関係式(1)を満たすシリコーン樹脂は、皮膜強度が優れる為、フィルムが金属ロール上を搬送しても剥れにくい傾向があり、効果的に剥離性を付与することが可能である。そのため、このシリコーン樹脂を含む表面層を有する加熱ロールを用いて、ポリエステルフィルムを予熱する工程と、予熱されたポリエステルフィルムを延伸する工程と、を有するポリエステルフィルムの製造方法では、剥離ムラの発生がより低減されたポリエステルフィルムを効果的に得られると推察される。
また、表面層の表面温度がポリエステルフィルムのガラス転移温度(Tg)〜(Tg)+10℃の範囲にある加熱ロールを用いて、ポリエステルフィルムを予熱又は予熱されたポリエステルフィルムを延伸した場合であっても、加熱ロールの表面層には、特定のシリコーン樹脂が含まれているため、ポリエステルフィルムは加熱ロールに張り付きにくく、剥離ムラの発生が低減されると推察される。
なお、本実施形態におけるポリエステルフィルムの製造方法は、必要に応じ、その他の工程を有していてもよい。
<ポリエステルフィルム>
本実施形態の製造方法により得られるポリエステルフィルムは、ポリエステルを主成分(すなわち、ポリマー成分全体の50質量%以上を占める成分)としたフィルムである。
ポリエステルフィルムに用いられるポリエステルとしては、特に制限はなく、ジカルボン酸とジオールとの重縮合物、環状ラクトンの開環重合物、ヒドロキシカルボン酸の重縮合物、二塩基酸とジオールの重縮合物などが挙げられる。具体的には、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとの重縮合物である芳香族ポリエステル、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールからの重縮合物、脂肪族ヒドロキシカルボン酸の重縮合物である脂肪族ポリエステル等が挙げられる。
ポリエステルは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
芳香族ポリエステルの具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート及び、ポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4、4’−ジカルボキシレートなどのほか、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレート及びポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート/イソフタレートなどの共重合体や混合物が挙げられる。
これらの中でも、芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートであることが好ましい。
脂肪族ポリエステルの具体例としては、ポリブチレンセバケート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート/アジペート、ポリプロピレンセバケート、ポリプロピレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート/アジペート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、光学活性を有するヘリカルキラル高分子などが挙げられる。
本実施形態の製造方法により得られるポリエステルフィルムは、脂肪族ポリエステルフィルムであることが好ましい。
脂肪族ポリエステルフィルムに用いられる脂肪族ポリエステルとしては、特に制限はなく、上記の脂肪族ポリエステルが挙げられ、具体例も同様である。脂肪族ポリエステルは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
脂肪族ポリエステルフィルムに用いられる脂肪族ポリエステルとしては、延伸処理のみで圧電性を発現する光学活性を有するヘリカルキラル高分子であることが好ましい。
<ヘリカルキラル高分子>
本実施形態の製造方法により得られるポリエステルフィルムは、ヘリカルキラル高分子を含むことが好ましい。ヘリカルキラル高分子は、光学活性を有するヘリカルキラル高分子である。ここで、「光学活性を有するヘリカルキラル高分子」とは、分子構造が螺旋構造であり分子光学活性を有する高分子を指す。
ヘリカルキラル高分子としては、例えば、ポリ(グルタル酸γ−ベンジル)、ポリ(グルタル酸γ−メチル)等のポリペプチド、酢酸セルロース、シアノエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリ乳酸系高分子、ポリプロピレンオキシド、ポリ(β―ヒドロキシ酪酸)などを挙げられる。
ヘリカルキラル高分子は、光学純度が99.00%ee以上であることが好ましく、99.50%ee以上であることがより好ましく、99.99%ee以上であることがさらに好ましい。望ましくは100.00%eeである。
ヘリカルキラル高分子の光学純度を上記範囲とすることで、高分子フィルム中での高分子結晶の結晶化度及びパッキング性が高くなる。その結果、例えば高分子フィルムを圧電フィルムとして用いたときには、圧電性(圧電定数)をより向上させることができる。
ここで、ヘリカルキラル高分子の光学純度は、下記式にて算出した値である。
光学純度(%ee)=100×|L体量−D体量|/(L体量+D体量)
すなわち、ヘリカルキラル高分子の光学純度は、
『「ヘリカルキラル高分子のL体の量〔質量%〕とヘリカルキラル高分子のD体の量〔質量%〕との量差(絶対値)」を「ヘリカルキラル高分子のL体の量〔質量%〕とヘリカルキラル高分子のD体の量〔質量%〕との合計量」で割った(除した)数値』に、『100』をかけた(乗じた)値である。
なお、ヘリカルキラル高分子のL体の量〔質量%〕とヘリカルキラル高分子のD体の量〔質量%〕は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた方法により得られる値を用いる。
測定方法は以下のとおりである。
50mLの三角フラスコに1.0gのサンプル(ポリエステルフィルム)を計りこみ、IPA(イソプロピルアルコール)2.5mLと、5.0mol/L水酸化ナトリウム溶液5mLとを加える。次に、サンプル溶液が入った前記三角フラスコを、温度40℃の水浴に入れ、ヘリカルキラル高分子が完全に加水分解するまで、約5時間攪拌する。
前記サンプル溶液を室温まで冷却後、1.0mol/L塩酸溶液を20mL加えて中和し、三角フラスコを密栓してよくかき混ぜる。サンプル溶液の1.0mLを25mLのメスフラスコに取り分け、移動相で25mLとしてHPLC試料溶液1を調製する。HPLC試料溶液1を、HPLC装置に5μL注入し、下記HPLC条件で、ヘリカルキラル高分子のD/L体ピーク面積を求め、L体の量とD体の量を算出する。
−HPLC測定条件−
・カラム
光学分割カラム、(株)住化分析センター製 SUMICHIRAL OA5000・測定装置
日本分光社製 液体クロマトグラフィ
・カラム温度
25℃
・移動相
1.0mM−硫酸銅(II)緩衝液/IPA=98/2(V/V)
硫酸銅(II)/IPA/水=156.4mg/20mL/980mL
・移動相流量
1.0ml/分
・検出器
紫外線検出器(UV254nm)
上記ヘリカルキラル高分子としては、ポリエステルフィルムを圧電フィルムとして用いたときには圧電性をより向上させる観点から、下記式(1)で表される繰り返し単位を含む主鎖を有する化合物が好ましい。

前記式(1)で表される繰り返し単位を主鎖とする化合物の中でも、ポリ乳酸系高分子が好ましい。
ここで、ポリ乳酸系高分子とは、「ポリ乳酸(L−乳酸及びD−乳酸から選ばれるモノマー由来の繰り返し単位のみからなる高分子)」、「L−乳酸またはD−乳酸と、該L−乳酸またはD−乳酸と共重合可能な化合物とのコポリマー」、又は、両者の混合物をいう。
ポリ乳酸系高分子の中でも、機械的な延伸操作のみで圧電性が発現する点から、ポリ乳酸が好ましく、L−乳酸のホモポリマー(PLLA)またはD−乳酸のホモポリマー(PDLA)が最も好ましい。
ポリ乳酸は、乳酸がエステル結合によって重合し、長く繋がった高分子である。
ポリ乳酸は、ラクチドを経由するラクチド法;溶媒中で乳酸を減圧下加熱し、水を取り除きながら重合させる直接重合法;などによって製造できることが知られている。
ポリ乳酸としては、L−乳酸のホモポリマー、D−乳酸のホモポリマー、L−乳酸およびD−乳酸の少なくとも一方の重合体を含むブロックコポリマー、及び、L−乳酸およびD−乳酸の少なくとも一方の重合体を含むグラフトコポリマーが挙げられる。
上記「L−乳酸またはD−乳酸と共重合可能な化合物」としては、グリコール酸、ジメチルグリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシプロパン酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシカプロン酸、3−ヒドロキシカプロン酸、4−ヒドロキシカプロン酸、5−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシメチルカプロン酸、マンデル酸等のヒドロキシカルボン酸;グリコリド、β−メチル−δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等の環状エステル;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テレフタル酸等の多価カルボン酸及びこれらの無水物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、1,4−ヘキサンジメタノール等の多価アルコール;セルロース等の多糖類;α−アミノ酸等のアミノカルボン酸;等を挙げることができる。
上記「L−乳酸またはD−乳酸と、該L−乳酸またはD−乳酸と共重合可能な化合物とのコポリマー」としては、らせん結晶を生成可能なポリ乳酸シーケンスを有する、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーが挙げられる。
また、ヘリカルキラル高分子中におけるコポリマー成分に由来する構造の濃度は20mol%以下であることが好ましい。
例えば、ヘリカルキラル高分子がポリ乳酸系高分子である場合、ポリ乳酸系高分子中における、乳酸に由来する構造と、乳酸と共重合可能な化合物(コポリマー成分)に由来する構造と、のモル数の合計に対して、コポリマー成分に由来する構造の濃度が20mol%以下であることが好ましい。
ポリ乳酸系高分子は、例えば、特開昭59−096123号公報、及び特開平7−033861号公報に記載されている乳酸を直接脱水縮合して得る方法;米国特許2,668,182号及び4,057,357号等に記載されている乳酸の環状二量体であるラクチドを用いて開環重合させる方法;などにより製造することができる。
さらに、上記各製造方法により得られたポリ乳酸系高分子は、光学純度を99.00%ee以上とするために、例えば、ポリ乳酸をラクチド法で製造する場合、晶析操作により光学純度を99.00%ee以上の光学純度に向上させたラクチドを、重合することが好ましい。
−重量平均分子量−
ヘリカルキラル高分子の重量平均分子量(Mw)は、5万〜100万であることが好ましい。
ヘリカルキラル高分子のMwが5万以上であると、ポリエステルフィルムの機械的強度が向上する。上記Mwは、10万以上であることが好ましく、20万以上であることがさらに好ましい。
一方、ヘリカルキラル高分子のMwが100万以下であると、成形(例えば押出成形)によってポリエステルフィルムを得る際の成形性が向上する。上記Mwは、80万以下であることが好ましく、30万以下であることがさらに好ましい。
また、ヘリカルキラル高分子の分子量分布(Mw/Mn)は、ポリエステルフィルムの強度の観点から、1.1〜5であることが好ましく、1.2〜4であることがより好ましい。さらに1.4〜3であることが好ましい。
なお、ヘリカルキラル高分子の重量平均分子量Mw及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用いて測定された値を指す。ここでMnは、ヘリカルキラル高分子の数平均分子量である。
以下、GPCによるヘリカルキラル高分子(X)のMw及びMw/Mnの測定方法の一例を示す。
−GPC測定装置−
Waters社製GPC−100
−カラム−
昭和電工(株)製、Shodex LF−804
−サンプルの調製−
ポリエステルフィルムを40℃で溶媒(例えば、クロロホルム)へ溶解させ、濃度1mg/mlのサンプル溶液を準備する。
−測定条件−
サンプル溶液0.1mlを溶媒〔クロロホルム〕、温度40℃、1ml/分の流速でカラムに導入する。
カラムで分離されたサンプル溶液中のサンプル濃度を示差屈折計で測定する。
ポリスチレン標準試料にてユニバーサル検量線を作成し、ヘリカルキラル高分子の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を算出する。
ヘリカルキラル高分子の例であるポリ乳酸系高分子は、市販のポリ乳酸を用いることができる。
市販品としては、例えば、PURAC社製のPURASORB(PD、PL)、三井化学(株)製のLACEA(H−100、H−400)、NatureWorks LLC社製のIngeoTM biopolymer、等が挙げられる。
ヘリカルキラル高分子としてポリ乳酸系高分子を用いるときに、ポリ乳酸系高分子の重量平均分子量(Mw)を5万以上とするためには、ラクチド法、または直接重合法によりポリ乳酸系高分子を製造することが好ましい。
ポリエステルフィルムは、前述したヘリカルキラル高分子を、1種のみ含有してもよく、2種以上含有してもよい。
ポリエステルフィルム中におけるヘリカルキラル高分子の含有量(2種以上である場合には総含有量)は、ポリエステルフィルムの全量に対し、80質量%以上が好ましい。
(安定化剤)
本実施形態の製造方法により得られるポリエステルフィルムは、安定化剤として、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基を有する重量平均分子量が200〜60,000の化合物を含むことが好ましい。
この安定化剤は、ヘリカルキラル高分子の加水分解反応(この加水分解反応は、例えば下記反応スキームにて進行するものと推定される)を抑制し、フィルムの耐湿熱性を改良するために用いられる。
安定化剤については、国際公開第2013/054918号パンフレットの段落0039〜0055の記載を適宜参照できる。
(その他の成分)
本実施形態の製造方法により得られるポリエステルフィルムは、本発明の効果を損なわない限度において、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンやポリスチレンに代表される公知の樹脂や、シリカ、ヒドロキシアパタイト、モンモリロナイト等の無機フィラー、フタロシアニン等の公知の結晶核剤等他の成分を含有していてもよい。
なお、ポリエステルフィルムがヘリカルキラル高分子以外の成分を含む場合、ヘリカルキラル高分子以外の成分の含有量は、結晶化高分子フィルム全質量中に対して、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
−無機フィラー−
例えば、ポリエステルフィルムを、気泡等のボイドの発生を抑えた透明なフィルムとするために、結晶化高分子フィルム中に、ヒドロキシアパタイト等の無機フィラーをナノ分散してもよい。但し、無機のフィラーをナノ分散させるためには、凝集塊の解砕に大きなエネルギーが必要であり、また、フィラーがナノ分散しない場合、フィルムの透明度が低下する場合がある。本実施形態の製造方法により得られるポリエステルフィルムが無機フィラーを含有するとき、結晶化高分子フィルム全質量に対する無機フィラーの含有量は、1質量%未満とすることが好ましい。
−結晶促進剤(結晶核剤)−
結晶促進剤は、結晶化促進の効果が認められるものであれば、特に限定されないが、ヘリカルキラル高分子の結晶格子の面間隔に近い面間隔を持つ結晶構造を有する物質を選択することが望ましい。面間隔が近い物質ほど核剤としての効果が高いからである。
例えば、ヘリカルキラル高分子としてポリ乳酸系高分子を用いた場合、有機系物質であるフェニルスルホン酸亜鉛、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート、フェニルホスホン酸亜鉛、フェニルホスホン酸カルシウム、フェニルホスホン酸マグネシウム、無機系物質のタルク、クレー等が挙げられる。それらのうちでも、最も面間隔がポリ乳酸の面間隔に類似し、良好な結晶形成促進効果が得られるフェニルホスホン酸亜鉛が好ましい。なお、使用する結晶促進剤は、市販されているものを用いることができる。具体的には例えば、フェニルホスホン酸亜鉛;エコプロモート(日産化学工業(株)製)等が挙げられる。
結晶核剤の含有量は、ヘリカルキラル高分子100重量部に対して通常0.01重量部〜1.0重量部、好ましくは0.01重量部〜0.5重量部、より良好な結晶促進効果とバイオマス度維持の観点から特に好ましくは0.02重量部〜0.2重量部である。結晶核剤の上記含有量が、0.01重量部未満では結晶促進の効果が十分でなく、1.0重量部を超えると結晶化の速度を制御しにくくなり、結晶化高分子フィルムの透明性が低下する傾向にある。
以下、本実施形態のポリステルフィルムの製造方法の各工程について説明する。
[ポリエステルフィルム予熱工程]
本実施形態の製造方法は、赤外光入射角45°の条件でFT−IR−ATR法により求められる、2079cm−1〜2415cm−1の範囲におけるSi−Hの伸縮振動に由来する最大吸収ピーク強度Paと、1040cm−1〜1060cm−1の範囲におけるSi−O−Siの伸縮振動に由来する最大吸収ピーク強度Pbと、が下記関係式(1)を満たすシリコーン樹脂(特定シリコーン)を含み、かつ、厚さが0.5μm〜3.0μmである表面層を有し、前記表面層における表面温度T(℃)が前記関係式(2)の関係を満たす加熱ロールを用いて、ポリエステルフィルムを予熱する工程(以下、「ポリエステルフィルム予熱工程」ともいう。)を含む。
Pa/Pb≦2.0 ・・・関係式(1)
Tg≦T(℃)≦(Tg+10)・・・関係式(2)
[関係式(2)中、Tgはポリエステルフィルムのガラス転移温度を示す。]
ポリエステルフィルム予熱工程では、特定シリコーン樹脂を含む表面層を有する加熱ロールを用いて、ポリエステルフィルムの予熱を行う。
加熱ロールは、特定シリコーン樹脂を含む表面層を有するので、ポリエステルフィルムの主面と接触した際に、表面層の離型性をより高めることが可能となる。すなわち、ポリエステルフィルムを予熱した場合、ポリエステルフィルムは加熱ロールに張り付きにくく、剥離ムラの発生が低減される傾向がある。以下、特定シリコーン樹脂について説明する。
<特定シリコーン樹脂>
ポリエステルフィルム予熱工程において、加熱ロールの表面層が有する特定シリコーン樹脂は、少なくとも、主鎖としてシロキサン結合(−Si−O−Si−)と、主鎖のケイ素原子と結合する有機基を有する側鎖と、を有するオルガノポリシロキサンを含む。
フィルム搬送時に剥れ難いといった耐久性の観点から、特定シリコーン樹脂は、架橋成分として、架橋構造を有するポリシロキサン(架橋ポリシロキサン)をさらに含むことが好ましい。架橋成分としては、3官能性シロキサン単位([RSiO3/2])を有する3官能性シロキサン成分及び4官能性シロキサン単位([SiO4/2])を有する4官能性シロキサン成分からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
特定シリコーン樹脂が架橋成分を含む場合、架橋ポリシロキサンを構成する全オルガノポリシロキサン成分中の架橋成分の割合は0.2モル%〜20.0モル%であることが好ましく、0.5モル%〜10.0モル%であることがより好ましい。
特定シリコーン樹脂としては、特に制限はなく、例えば、付加反応型シリコーン樹脂、縮合反応型シリコーン樹脂、及び光硬化型シリコーン樹脂が挙げられる。これらの中でも、付加反応型シリコーン樹脂が好ましい。
−付加反応型シリコーン樹脂−
付加反応型シリコーン樹脂は、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基(ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等の1価の炭化水素基が挙げられ、中でもビニル基が特に好ましい。)を有するオルガノポリシロキサンと、1分子中にケイ素原子に結合する水素原子(Si−H基)を有するオルガノポリシロキサン(以下、単に「オルガノハイドロジェンポリシロキサン」ともいう。)と、を反応させて得ることができる。
付加反応型シリコーン樹脂に用いられるビニル基(−CH=CH)を有するオルガノポリシロキサンとしては、主鎖の両末端又は片末端においてケイ素原子にビニル基が結合したオルガノポリシロキサン、主鎖の両末端以外のケイ素原子にビニル基が結合した側鎖を有するオルガノポリシロキサンが挙げられる。
ビニル基を有するオルガノポリシロキサンは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ビニル基を有するオルガノポリシロキサンは、例えば、下記一般式(2)及び一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
一般式(2)中、Rは、それぞれ独立に、置換又は無置換の炭素数1〜10の1価の飽和炭化水素基を表し、aは、「−(Si(R)(R)−O)−」の部分構造の繰り返し数であって20〜300の整数を表す。一般式(2)中、Meは、メチル基を表す。
なお、Rで表される飽和炭化水素基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれないものとする。以下、同様である。
置換基としては、特に限定されず、例えば、アルコキシ基、シアノ基及びハロゲン原子等が挙げられる。
置換又は無置換の炭素数1〜10の1価の飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;およびこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部または全部をハロゲン原子、シアノ基、アルコシキ基などで置換した1価の飽和炭化水素基等が挙げられる。
これらの中でも、Rとしては、無置換の炭素数1〜10の1価の飽和炭化水素基であることが好ましく、無置換の炭素数1〜5の1価の飽和炭化水素基であることがより好ましく、無置換の炭素数1〜3の1価の飽和炭化水素基であることがさらに好ましい。
実用上の観点から、Rは、Rで表される全ての置換又は無置換の炭素数1〜10の1価の飽和炭化水素基のうち、80モル%以上がメチル基であることが好ましい。
一般式(1)で表されるビニル基を有するオルガノポリシロキサンの粘度は、シロキサン構造単位の部分構造の繰り返し数aの数によって、粘度の調整することが可能である。
オルガノポリシロキサンの粘度は、例えば、25℃におけるオルガノポリシロキサンの粘度が30mPa・s〜10,000mPa・sとなるように調整することが好ましい。
適度な粘度が得られる点で、シロキサン構造単位の部分構造の繰り返し数aは、20〜300が好ましく、50〜300がより好ましい。
一般式(3)中、Rは、それぞれ独立に、置換又は無置換の炭素数1〜10の1価の飽和炭化水素基を表し、b及びcは、「−(Si(R)(R)−O)−」又は「−(Si(R)(−CH=CH)−O)−」の部分構造の繰り返し数であって20〜300の整数を表す。
なお、一般式(3)中、R並びにb及びcの詳細は、一般式(2)中のR及びaとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
本実施形態に用いられるビニル基を有するオルガノポリシロキサンは、直鎖状の分子構造を基本とするが、本発明の効果に影響しない範囲で、式(4)で示されるような、3官能性シロキサン単位を起点とした分岐状の構造を分子内に含んでいてもよい。
式(4)中、Rは、それぞれ独立に、置換又は無置換の炭素数1〜10の1価の飽和炭化水素基を表し、*は結合部位を表す。
なお、式(4)中、Rの詳細は、一般式(1)中のRとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
付加反応型シリコーン樹脂に用いられるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、少なくとも1つのケイ素原子に結合する水素原子(Si−H基)を有する。
オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記一般式(5)で表される化合物が挙げられる。
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
一般式(5)中、Rは、それぞれ独立に、置換又は無置換の炭素数1〜10の1価の飽和炭化水素基を表し、d及びeは、「−(Si(R)(H)−O)−」又は「−(Si(R)(R)−O)−」の部分構造の繰り返し数であって20〜300の整数を表す。
なお、一般式(5)中、R並びにd及びeの詳細は、一般式(1)中のR及びaとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを構成する、ケイ素原子と結合する全置換基のうち、31モル%〜50モル%が水素原子で置換されたオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。
付加反応型シリコーン樹脂としては、ビニル基を有するオルガノポリシロキサンが一般式(3)で表される化合物(Rとしては、無置換の炭素数1〜10の1価の飽和炭化水素基であることが好ましく、無置換の炭素数1〜5の1価の飽和炭化水素基であることがより好ましく、無置換の炭素数1〜3の1価の飽和炭化水素基であることがさらに好ましい)であり、オルガノハイドロジェンポリシロキサンが一般式(5)で表される化合物(Rとしては、無置換の炭素数1〜10の1価の飽和炭化水素基であることが好ましく、無置換の炭素数1〜5の1価の飽和炭化水素基であることがより好ましく、無置換の炭素数1〜3の1価の飽和炭化水素基であることがさらに好ましい)である、組み合わせが好ましい。
付加反応型シリコーン樹脂の合成方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法で合成することができる。
付加反応型シリコーン樹脂の合成方法としては、例えば、ビニル基を有するオルガノポリシロキサン、白金化合物、乳化剤、及び水からなるエマルジョン、並びに、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、乳化剤、及び水からなるエマルジョンをそれぞれ製造し、この2種類のエマルジョンを混合して得る方法が挙げられる。
付加反応型シリコーン樹脂の合成に用いられる白金触媒としては、前記オルガノポリシロキサン中のビニル基と、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のSi−H基と、の付加反応による硬化を促進させる為に使用される、公知の触媒を使用することができる。
白金触媒としては、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸のアルデヒド溶液、塩化白金酸とオレフィン化合物との錯塩等が挙げられる。
特定シリコーン樹脂は、赤外光入射角45°の条件でFT−IR−ATR法により求められる、2079cm−1〜2415cm−1の範囲におけるSi−Hの伸縮振動に由来する最大吸収ピーク強度Paと、1040cm−1〜1060cm−1の範囲におけるSi−O−Siの伸縮振動に由来する最大吸収ピーク強度Pbと、が下記関係式(1)を満たす。
Pa/Pb≦2.0 ・・・式(1)
Pa/Pbが2.0を超えると、フィルム製造時の破層フィルムとの擦れや、フィルムとの密着によって皮膜が剥れやすく、剥離ムラの発生を十分に抑制することが困難になる。剥離ムラが抑制されたポリエステルフィルムを効果的に得る観点から、Pa/Pbとしては、Pa/Pb≦1.5を満たすことが好ましく、Pa/Pb≦1.0を満たすことがより好ましい。Pa/Pbが上記関係を満たすことで、特定シリコーン樹脂を特定の範囲の架橋密度とすることが可能となり、この特定シリコーン樹脂を含む表面層は、優れた離型性と耐久硬度とを有する。このため、剥離ムラのないフィルムを得ることが可能となる。
Pa/Pbの値を算出するための各ピーク強度の測定は、FT−IR−ATR法、即ち、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR法)のうち、減衰全反射法(ATR法:Attenuated Total Reflection)と呼ばれる測定方法により行う。具体的には、以下の手順により測定を行う。
(1)加熱ロール表面から、特定シリコーン樹脂を含む表面層を金属ナイフで10mm×10mmに切り取り、サンプルとする。
(2)採取したサンプルを用いて、Si−O−Si及びSi−Hの伸縮振動に由来するスペクトルを測定する。
(測定)
フーリエ変換赤外分光計:(製品名:TENSOR(登録商標)、ブルカー・オプティクス(株)製)
検知器:DTGS(重水素化硫酸三グリシン)
測定モード:減衰全反射法(ATR法)
分解能:4cm−1
積算回数:256回
ATR結晶:Ge(ゲルマニウム)
入射角:45°
ポリエステルフィルム予熱工程において用いられる加熱ロールは、前記特定シリコーン樹脂を含む表面層を有する。加熱ロールは、特定シリコーン樹脂を含む表面層を有するので、ポリエステルフィルムの主面と接触した際に、表面層の離型性をより高めることが可能となる。
表面層の離型性の観点から、前記表面層における特定シリコーン樹脂の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。
加熱ロールが有する表面層は、特定シリコーン樹脂に加えて、本発明の効果を損なわない範囲において、含フッ素シリコーン樹脂及び酸化チタン、二酸化珪素、硫酸バリウム等の無機粒子などのその他の成分を含んでいてもよい。
加熱ロールが有する表面層の厚みは0.5μm〜3.0μmである。表面層の厚みが0.5μm未満であると、ポリエステルフィルムは加熱ロールに張り付きやすく、剥離ムラの発生を十分に抑制することが困難である。表面層の厚みが3.0μmを超えると、表面層が厚すぎて、ポリエステルフィルムを十分に予熱することができず、ポリエステルフィルムを十分に延伸することが困難となる。
剥離ムラの発生を抑制する観点から、表面層の厚みとしては、0.5μm〜2.5μmであることが好ましく、1.0μm〜2.5μmであることがより好ましい。
表面層の厚みの測定方法としては、例えば、加熱ロールの断面を、電子顕微鏡写真等により拡大写真を撮影し、拡大写真の画像を用いて表面層の厚みを測定する方法等が挙げられる。
表面層の厚みは、表面層の平均の厚みを意味する。表面層の平均の厚みは、表面層について任意の5箇所を、例えば、形状測定レーザマイクロスコープ(製品名:VK−9700シリーズGrneration、((株)キーエンス製))により測定し、算術平均値によって表すことができる。
表面層の鉛筆硬度は、5H以上であることが好ましい。
表面層の鉛筆硬度が5H以上であると、前記シリコーン樹脂は十分に架橋されているため、表面層を形成したときに適度な硬さを得ることが可能となる。その結果、このような表面層を有する加熱ロールを用いることで、予熱工程において弾性率の低いフィルムが加熱ロールに粘着しにくくなり、ロールにべたつきにくい傾向がある。
上記観点から、表面層の鉛筆硬度としては、6H以上であることが好ましく、8H以上であることがより好ましく、9Hであることがさらに好ましい。
なお、表面層の鉛筆硬度は、JIS K5400に基づいて測定された値を意味する。
表面層の剥離強度が2N/50mm以下であることが好ましい。
表面層の剥離強度が2N/50mm以下であると、本実施形態の表面層を有する加熱ロールを用いて予熱した際に、ポリエステルフィルムが加熱ロールから剥離しやすく、剥離ムラの発生が抑制されたポリエステルフィルムを得ることが可能となる。
上記観点から、表面層の剥離強度としては、1.5N/50mm以下であることが好ましく、1N/50mm以下であることがより好ましい。表面層の剥離強度は、低いほど好ましい。
加熱ロールが有する表面層は、ある程度の凹凸(粗さ)を有することが好ましい。
加熱部材の上記表面がある程度の凹凸を有する場合には、後述するポリエステルフィルムの結晶化が進行する際に、フィルムが上記凹凸の凹部に密着しにくい状態(例えば、フィルムが上記凹凸の凹部には接触せず凸部のみに接触している状態)となり、その結果、得られるポリエステルフィルムの表面に加熱ロールの表面の凹凸がより転写されにくくなるため、と推察される。
表面層の表面粗さ(Ra;算術平均粗さ)は、縦延伸工程における未延伸のポリエステルフィルムが加熱ロールの表面に埋設することを抑制する観点から、Ra値が、2.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下であることがさらに好ましい。
Ra値の上限には特に制限はなく、Ra値は、加熱の効率の観点から、0.5μm以下が好ましく、0.3μm以下がより好ましく、0.25μm以下がさらに好ましい。
また、加熱ロールが有する表面層における最大高さRyは、縦延伸工程における未延伸のポリエステルフィルムが加熱ロールの表面に埋設することを抑制する観点から、Ry値が2.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下であることがさらに好ましい。
ここで、算術平均粗さRa及び最大高さRyは、表面層の凸凹の高さ方向に関するパラメータを表し、いずれもJIS B 0601(1994)に準じて測定し、求めることができる。
加熱ロールの基材の材質としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、ロール自体にキズがつきにくいようにする観点から、硬度が高い材質を用いることが好ましい。
硬度が高い材質としては、基材の中で、金属で構成された部分が硬質クロムメッキ、又はセラミック溶射等で構成された部分を有することがより好ましい。硬度が高い材質としては、特に硬質クロムメッキであることがさらに好ましい。
ポリエステルフィルム予熱工程は、ポリエステルフィルムを、表面層における表面温度T(℃)が下記関係式(2)を満たす加熱ロールで予熱される。
Tg≦T(℃)≦(Tg+10)・・・関係式(2)
[関係式(2)中、Tgはポリエステルフィルムのガラス転移温度を示す。]
加熱ロールの表面層における表面温度T(℃)が、ポリエステルフィルムのガラス転移温度(Tg)以上であると、剥離ムラの発生が抑制されたポリエステルフィルムを得ることが可能となる。加熱ロールの表面層における表面温度T(℃)が、ガラス転移温度(Tg)+10℃以下であると、各接触部位への粘着等によるフィルムの物性の不均一化、軟化による変形等を防止できる。
ここで、ポリエステルフィルムのガラス転移温度Tg(℃)は、示差走査型熱量計(DSC)を用い、ポリエステルフィルムに対して昇温速度10℃/分の条件で温度を上昇させたときの融解吸熱曲線から、曲線の屈曲点として得られるガラス転移温度(Tg)である。
ポリエステルフィルム予熱工程において、加熱ロールの表面層における表面温度T(℃)は、50℃〜100℃であることが好ましく、60℃〜95℃あることがより好ましい。
ポリエステルフィルム予熱工程において、予熱時間は、1秒〜60分であることが好ましく、1秒〜300秒であることがより好ましく、1秒〜60秒であることがさらに好ましい。
加熱ロールの表面温度とは、表面層における表面の温度を意味する。表面温度は、接触式熱電対温度計、非接触式温度計などを用いて、常法により測定することができる。
具体的には、以下の手順により測定を行う。
(1) ロールを加熱し、ロール表面の任意の点について、接触式温度計(型式:HFT−51、アンリツ(株)製)と測定プローブ(型式:U−131E−00−D0、アンリツ(株)製)とを用いて温度を測定する。
(2) 温度の測定時間は10秒間とし、小数点1桁の数値を切り捨てた値を読み取り、測定値とする。
(1)及び(2)の手順に従い、ロール表面の任意の5点について測定し、任意の5点の測定値の算術平均した値を表面温度とする。
[延伸工程]
本実施形態におけるポリエステルフィルムの製造方法は、前記ポリエステルフィルム予熱工程に加えて、予熱されたポリエステルフィルムを延伸する工程(延伸工程)を有する。
本実施形態のポリエステルフィルムの製造方法において、延伸の方法(延伸方法)は特に制限されず、一軸延伸、二軸延伸、固相延伸などの種々の延伸方法を用いることができる。
例えば、ポリ乳酸系高分子を含むポリエステルフィルムの製造工程において、ポリエステルフィルムを、主として一軸方向に延伸することで、ポリ乳酸系高分子の分子鎖を、一方向に配向させ、かつ高密度に整列させることができる。これにより、より高い圧電性が得られる。
延伸時の温度(延伸温度)は、一軸延伸方法や二軸延伸方法等のように、引張力のみでフィルムを延伸する場合は、高分子(A)のガラス転移温度より10℃〜20℃程度高い温度範囲であることが好ましい。
延伸は、1本または周速の等しい複数本の延伸ロールを使用して1段階で行ってもよく、周速の異なる複数本の延伸ロールを使用して多段階に行ってもよい。
延伸の倍率(延伸倍率)は、2倍〜30倍が好ましく、2倍〜15倍がより好ましい。
本実施形態のポリエステルフィルムの製造方法において、縦延伸工程により得られた一軸延伸フィルムを、さらに横の方向に延伸(横延伸)する工程を含むことにより、二軸延伸フィルムを得ることが可能である。
(その他の工程)
本実施形態のポリエステルフィルムの製造方法において、上記工程に加えて、その他の工程を有していてもよい。
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステルの溶融物を押し出す工程、冷却工程などが挙げられる。
本実施形態におけるポリエステルフィルムの製造方法は、ポリ乳酸系高分子を含むポリエステルフィルムを予熱する工程と、予熱されたポリエステルフィルムを主として一軸方向に延伸する工程と、を有することが好ましい。
本実施形態のポリエステルフィルムの製造方法について、図1を参照しながら、一軸延伸法によるポリ乳酸フィルムの製造を例に挙げて以下に説明する。
なお、本実施形態の製造方法の各工程の説明において、参照する図中では、同じ構成部分には、同じ符号を付している。各図の符号において、1は押出機、2はダイス、3はキャスタードラム、4はパスロール、5aは予熱ロール、5bは延伸ロール、6はピンチロール、7はテンターを表す。
なお、各工程で用いるポリエステルフィルムの成分の具体例、及び好ましい態様については、ポリエステルフィルムの各項に記載したとおりであるため、ここでは説明を省略する。
まず、樹脂ペレットを押出機1の原料投入部に供給し、樹脂を220℃で溶融押出して、フィルター等を介して異物やゲル化物などを取り除く。このようにして得られた樹脂の溶融体を、ダイス2に供給し、220℃に保った口金のスリットから吐出する。吐出した樹脂を、静電印加キャスト法を用いて表面温度50℃のキャスティングドラム3に巻き付けて冷却固化することにより、未延伸のポリ乳酸フィルムを得る。
次に、得られた未延伸ポリ乳酸フィルムは、パスロール4を介して、予熱ロール5aに搬送される。搬送された未延伸ポリ乳酸フィルムは、表面層における表面温度T(℃)が関係式(2)の関係を満たす加熱ロールを少なくとも1つを含む、予熱ロール5a、延伸ロール5b、ピンチロール6を用いて、縦の方向(搬送方向)に延伸(縦延伸)させる。
また、フィルムは、さらに、テンター7によって、縦の方向に延伸(縦延伸)してもよい。
一軸延伸フィルムの延伸前の加熱処理条件(加熱温度および加熱時間)や延伸条件(延伸温度および延伸速度)等によって制御した高分子圧電材料の製造方法は、例えば、国際公開第2012/026494号パンフレットの段落0035〜0056および段落0073〜0085に記載された方法を参照することができる。
(用途)
本実施形態のポリエステルフィルムの製造方法により得られるポリエステルフィルムは、例えば圧電フィルムとして好適に用いることができる。
また、本実施形態のポリエステルフィルムの製造方法により得られるポリエステルフィルムは、フィルムのキズや剥離ムラの欠点が少ないため、圧電フィルム以外にも、表示装置などに用いられる光学用フィルムとして用いることが可能である。特に、プリズムシート用ベースフィルム、ハードコート用ベースフィルム、反射防止(AR)フィルム用ベースフィルム、光拡散用ベースフィルム、透明導電性フィルムなどとして好適に用いることができる。
<フィルム成形用加熱ロール>
本実施形態のフィルム成形用加熱ロールは、赤外光入射角45°の条件でFT−IR−ATR法により求められる、2079cm−1〜2415cm−1の範囲におけるSi−Hの伸縮振動に由来する最大吸収ピーク強度Paと、1040cm−1〜1060cm−1の範囲におけるSi−O−Siの伸縮振動に由来する最大吸収ピーク強度Pbと、が下記関係式(1)を満たすシリコーン樹脂を含み、かつ、厚さが0.5μm〜3.0μmである表面層を有する。
Pa/Pb≦2.0 ・・・関係式(1)
なお、フィルム成形用加熱ロールが含む特定シリコーン樹脂及び表面層の具体例、及び好ましい態様については、特定シリコーン樹脂の各項と同様である。
本実施形態のフィルム成形用加熱ロールは、フィルムの種類に関わらず、フィルムの製造工程に用いることが可能である。
中でも、ポリエステルフィルムを熱処理する工程に用いることが好ましく、脂肪族ポリエステルフィルムを熱処理する工程に用いることが好ましく、ヘリカルキラル高分子を含むフィルム熱処理する工程に用いることがより好ましく、ポリ乳酸系高分子を含むフィルム熱処理する工程に用いることがさらに好ましい。
フィルム成形用加熱ロールは、単一のロールであってもよいし、ピンチロール(一対のロール)であってもよい。
また、フィルム成形用加熱ロールは、予熱ロール及び延伸工程で用いられる延伸ロールに用いてもよい。剥離ムラの発現が抑制される点から、フィルム成形用加熱ロールは、予熱ロール及び延伸ロールの両方に用いることが好ましい。
予熱ロール及び延伸ロールが複数のロールから構成される場合、複数のロール中、少なくとも1つがフィルム成形用加熱ロールであることが好ましく、全部のロールがフィルム成形用加熱ロールであることがより好ましい。
以下、本発明の実施形態を実施例により更に具体的に説明するが、本実施形態はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
−加熱ロールAの作製−
常法に従い、クロムモリブデン鋼を主体とした鋼製のロールの表面に硬質クロムめっきを施し、表面を研磨した。次いでこの表面をシリコーン樹脂A(商品名:Aμcoat(登録商標)NFX−5131、日本フッソ工業(株)製)でコーティングして、シリコーン樹脂を含む表面層を形成させた加熱ロールを作製した。
<ピーク強度比;Pa/Pb>
上記で作成した加熱ロール表面から、表面層を金属ナイフで10mm×10mmに切り取り、サンプルとした。
採取したサンプルは、フーリエ変換分光計(製品名:TENSOR(登録商標)、ブルカー・オプティクス(株)製)を用いて、減衰全反射法(ATR法)によって、Si−O−Si及びSi−Hの伸縮振動に由来するスペクトルを測定した。
検知器はDTGS(重水素化硫酸三グリシン)、分解能4cm−1、積算回数256回、ATR結晶はGe(ゲルマニウム)、入射角45°とし、吸収強度を計測した。
(FT−IR−ATR法による「特徴的なスペクトルのピーク高さ」の算出)
Si−O−Siに由来するスペクトル(1056cm−1)のピーク高さをPa(高さのベースラインは915cm−1〜1288cm−1)、Si−Hに由来するスペクトル(2247cm−1)のピーク高さをPb(高さのベースラインは2415cm−1〜2079cm−1)として、Pa/Pbをピーク強度比として計算した。このときのシリコーン樹脂Aを含む表面層のFT−IRピーク強度比は、最も高いもので0.8%であった。結果を表2に示す。
<加熱ロール表面粗さ(Ra値)及び(Ry値)>
加熱ロール表面粗さは、JIS B 0601(1994)に準拠して以下の装置を用いて測定した。
上記サンプルを、表面粗さ計(型式:SJ−310、(株)ミツトヨ製)を用いて送り速さ0.5mm/秒、測定長1.25mm、カットオフ値0.25mmでRa値及びRy値を測定した。このときの表面粗さRa値は、0.2μm、最大高さRy値は、0.7μmであった。結果を表1に示す。
<表面層の厚み>
上記ピーク強度比の測定と同様に、加熱ロール表面から、表面層を金属ナイフで10mm×10mmに切り取った。切り取った部分に、レプリカフィルム(商品名:レプリセット−T1、丸本ストルアス(株)製)を充填し、加熱ロールの表面レプリカを採取した。
採取したレプリカフィルムの断面(表面層を切り取った箇所と切り取っていない箇所との断面)界面を、形状測定レーザマイクロスコープ(製品名:VK−9700シリーズGrneration、(株)キーエンス製)にて撮像し、表面層の厚みを計測した。
レプリカフィルム内の厚さを任意の5箇所を測定し、その算術平均の厚みを表面層の厚みとした。計測結果を表1に示す。
<剥離強度>
剥離強度は、幅25mmの布テープ(NO.750、日東電工CSシステム(株)製)を用いた非粘着性試験に従って測定した。
幅25mmの布テープを長さ100mmでカットした。カットした布テープを、上記で作製した加熱ロールAの上に、加熱ロールの回転方向と垂直になるように布テープを貼り付けた。その後、デジタルフォースゲージ(型式:FGC−10、日本電産シンポ(株)製)を用いて、布テープを、剥離速度20mm/秒で剥がすのに必要な力(N/50mm)の最大値を測定値とした。結果を表1に示す。
<ポリ乳酸フィルムの作製>
図2に示す装置を用いて、以下のようにしてポリ乳酸フィルムを作製した。
ガラス転移温度(Tg)が63℃であるL−ポリ乳酸(ヘリカルキラル高分子)のペレットを100℃で8時間乾燥した後、押出機1に供給し、220℃で溶融し、溶解した樹脂をダイス2に押出して濾過を行った。その後、得られた溶融物を220℃に保った口金のスリットより吐出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度50℃のキャスティングドラム3に巻き付けて冷却固化し、未延伸ポリ乳酸フィルムを得た。
なお、ポリ乳酸フィルムを形成する樹脂のガラス転移温度(Tg)は、以下の方法に従って測定した。
示差走査熱量計(DSC)(製品名;Diamond DSC、パーキンエルマー社製)を用いて、L−ポリ乳酸のサンプル約5mgをアルミニウム製受け皿で、25℃から昇温速度10℃/分で昇温し、必要熱量を測定した。Tgは、得られた吸発熱曲線の樹脂のガラス転移温度を示す曲線の段差が現れる温度とした。測定結果を表1に示す。
なお、Tgは既述の方法により測定した。
図2における予熱ロール(5a)および延伸ロール(5b)の全てが、上記で作製した加熱ロールAで構成されたロールを用いて縦延伸を行った。
予熱ロール(5a)および延伸ロール(5b)(加熱ロール)において、ロール表面の温度(T)が70℃となるように調整して、延伸倍率2.0倍となるように、未延伸ポリ乳酸フィルムを縦延伸して、一軸延伸ポリ乳酸フィルムを得た。
なお、ロール表面の温度(T)は、任意の5点の測定値を既述の方法により測定した算術平均値である。測定結果を表1に示す。
その後、得られた一軸延伸ポリ乳酸フィルムは、テンター7に導入し、温度150℃で熱処理して、厚さ100μmの一軸延伸ポリ乳酸フィルムを得た。得られた一軸延伸ポリ乳酸フィルムについて、以下の評価を行った。各評価の結果を表2に示す。
[評価]
<鉛筆硬度>
鉛筆硬度は、手かき法(旧 JIS K5400)に準じて評価をおこなった。
鉛筆(商品名:ユニ、三菱鉛筆(株)製)を用いて、加熱ロールの最表面の中央部をロール幅方向(周方向に垂直方向)にひっかき、この操作を5回繰り返した。
鉛筆硬度は、5回中、表面層の剥れが1回以上認められた鉛筆の硬さの一段下の濃度記号をとした。
鉛筆硬度9Hを最も硬いものとし、9Hで剥れが認められない場合の表面層の強度は“9Hでも剥れない“とした。鉛筆硬度の許容範囲は、5H以上であり、6H以上であることが好ましい。
<剥離ムラ>
上記で得られた一軸延伸ポリ乳酸フィルムの表面を目視で観察した。
(評価基準)
有;剥離ムラの発生が見られず、良好な状態である。
無;フィルム幅方向全面に剥離ムラの発生が見られ、許容できない。
(実施例2)
−シリコーン樹脂B−
FT−IR−ATR法による2247cm−1に対する1056cm−1のピーク強度比が異なるシリコーン樹脂Bを準備した。シリコーン樹脂Bを含む表面層のピーク強度比(Pa/Pb)が、最も高いもので1.5%であった。
実施例1において、加熱ロールBを用いた以外、実施例1と同様の操作を行って、一軸延伸ポリ乳酸フィルムを作製した。作製した一軸ポリ乳酸フィルムの評価結果を表2に示す。
(比較例1)
−加熱ロールDの作製−
加熱ロールAの作製において、シリコーン樹脂Aの代わりにフッ素樹脂コーティング(商品名:NF−015A、日本フッソ工業(株)製)を用いた以外は、同様の操作を行って加熱ロールDを作製した。
実施例1において、加熱ロールDを用いた以外、実施例1と同様の操作を行って、一軸延伸ポリ乳酸フィルムを作製した。作製した一軸ポリ乳酸フィルムの評価結果を表2に示す。
(比較例2)
−シリコーン樹脂C−
FT−IR−ATR法による2247cm−1に対する1056cm−1のピーク強度比が異なるシリコーン樹脂Cを準備した。シリコーン樹脂Cを含む表面層のピーク強度比(Pa/Pb)が、最も高いもので3.0%であった。
実施例1において、加熱ロールCを用いた以外、実施例1と同様の操作を行って、一軸延伸ポリ乳酸フィルムを作製した。作製した一軸ポリ乳酸フィルムの評価結果を表2に示す。
(比較例3及び比較例4)
実施例1において、表1に示す加熱ロールに変更した以外、実施例1と同様の操作を行って、一軸延伸ポリ乳酸フィルムを作製した。作製した一軸ポリ乳酸フィルムの評価結果を表2に示す。
表2中、「−」は、測定結果がないことを意味する。
表2に示すように、ピーク強度比(Pa/Pb)が2.0以下の範囲にある特定シリコーン樹脂を含む表面層を有する加熱ロールを用いた実施例1及び実施例2は、剥離ムラの発生が抑制されていることがわかった。
一方、ピーク強度比(Pa/Pb)が2.0を超える加熱ロールを用いた比較例2は、剥離ムラが発生していることが確認された。また、剥離強度が2N/50mmを超えていた。
また、フッ素樹脂を含む表面層を有する加熱ロールを用いた比較例1は、剥離ムラが発生していることが確認された。剥離強度が2N/50mmを超えていた。
なお、表面層を有さない加熱ロールを用いた比較例3及び4は、剥離ムラが発生していることが確認された。これは、剥離強度が2N/50mmを超えるため、加熱ロールの粘着力が高いことが要因である。
従って、本実施形態の製造方法により得られたポリエステルフィルムは、剥離ムラの発生が抑制されていることがわかった。
1 押出機
2 ダイス
3 キャスタードラム
4 パスロール
5a 予熱ロール
5b 延伸ロール
6 ピンチロール
7 テンター

Claims (6)

  1. 赤外光入射角45°の条件でフーリエ変換赤外分光減衰全反射法により求められる、2079cm−1〜2415cm−1の範囲におけるSi−Hの伸縮振動に由来する最大吸収ピーク強度Paと、1040cm−1〜1060cm−1の範囲におけるSi−O−Siの伸縮振動に由来する最大吸収ピーク強度Pbと、が下記関係式(1)を満たすシリコーン樹脂を含み、かつ、厚さが0.5μm〜3.0μmである表面層を有し、前記表面層における表面温度T(℃)が下記関係式(2)の関係を満たす加熱ロールを用いて、ポリエステルフィルムを予熱する工程と、
    予熱された前記ポリエステルフィルムを延伸する工程と、
    を有するポリエステルフィルムの製造方法。
    Pa/Pb≦2.0 ・・・関係式(1)
    Tg≦T(℃)≦(Tg+10)・・・関係式(2)
    [関係式(2)中、Tgはポリエステルフィルムのガラス転移温度を示す。]
  2. 前記表面層の鉛筆硬度が5H以上であり、
    前記表面層の剥離強度が2N/50mm以下である、請求項1に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
  3. 前記ポリエステルフィルムは、脂肪族ポリエステルフィルムである請求項1又は請求項2に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
  4. 前記脂肪族ポリエステルフィルムは、ヘリカルキラル高分子を含む請求項3に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
  5. 前記脂肪族ポリエステルフィルムは、ポリ乳酸系高分子を含む請求項3に記載のポリエステルフィルムの製造方法。
  6. 赤外光入射角45°の条件でフーリエ変換赤外分光減衰全反射法により求められる、2079cm−1〜2415cm−1の範囲におけるSi−Hの伸縮振動に由来する最大吸収ピーク強度Paと、1040cm−1〜1060cm−1の範囲におけるSi−O−Siの伸縮振動に由来する最大吸収ピーク強度Pbと、が下記関係式(1)を満たすシリコーン樹脂を含み、かつ、厚さが0.5μm〜3.0μmである表面層を有するフィルム成形用加熱ロール。
    Pa/Pb≦2.0 ・・・関係式(1)
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