JP6754586B2 - 放射性物質含有廃棄物収容容器 - Google Patents
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Description
汚染水を処理する際に多核種除去設備から発生した使用済みの吸着材や沈殿処理生成物は、ポリエチレン製の高性能容器(High Integrity Container)(以下、HICと記す。)に貯蔵されている。今後、一部の汚染水処理と並行して、廃炉に向けた作業に伴い発生する放射性物質含有廃棄物の処理、処分をする必要がある。
これらの放射性物質含有廃棄物の形態や保管要領については、現時点では未定であるが、ポリエチレン製HICとは別の仕様で、様々な環境下で安定的に貯蔵・保管できる放射性物質含有廃棄物収容容器(以下、収容容器と記す。)があれば、処理、処分の方法の幅が広がる。
例えば、特許文献1には、放射性物質含有廃棄物を収容する内缶と、内缶が装填されて密閉される金属製の外缶とを有することを特徴とする放射性物質含有廃棄物収容容器が記載されている。この内缶は、セメントと、セメントに対する重量比が1〜4の範囲で添加され平均粒径100〜250μmの粉末状ないし球状の小鋼球群と、セメントに対する重量比が1〜4の範囲で添加され平均粒径600〜850μmの粉末状又は球状の大鋼球群とを含み、硬化後の密度が4.0g/cm3以上である放射線遮蔽用コンクリートで構成されている。この収容容器は、内缶と外缶の2層構造からなり、内缶の密度が高く、かつ小鋼球及び大鋼球が均一に分布するため、高い放射線遮蔽能力を均一に発揮することができる。
SFPICは、鋼繊維補強コンクリートの細孔にポリマーを含浸・重合させたものであり、通常のコンクリートに比べ、気密性に優れている。そのため、SFPIC製の収容容器は、潮解性をもつ物質を内部に収容した場合でも、外部へ漏出することを防ぐことができる。また、SFPICは、通常のコンクリートよりも強度が高いことが知られ、基材となるコンクリートは、無機材料であるため、化学的に安定であるという特徴をもつ。
したがって、内側容器に加わる外力を低減することができ、内側容器の破損や破壊を防止することができる。
収容容器1は、放射性物質含有廃棄物を収容する容器であり、図1に示すとおり、放射性物質含有廃棄物が収容される内側容器30と、内側容器30が内部に配置される本体容器10と、内側容器30と本体容器10との間に充填される充填材50とを備えている。そして、本体容器10は、本体蓋部11、本体側壁部12および本体底部13を有し、その本体底部13の下面に緩衝部材20が取り付けられている。
本体容器10は、図2(a)に示すとおり、本体蓋部11、本体側壁部12および本体底部13を有している。
本体容器10は金属製の円筒状の容器であり、本体容器10には、例えば、ステンレス製鋼板を使用できる。
本体蓋部11は、円形状であり、本体蓋部11の下端には、蓋側フランジ部16が形成されている(図2(b))。この蓋側フランジ部16には、上下を貫通する貫通孔15が複数、等間隔に形成されている(本実施形態では12個)。
本体側壁部12の上端には、側壁側フランジ部18が形成されている(図2(c))。この側壁側フランジ部18は、本体蓋部11の蓋側フランジ部16と重なり合わされる。側壁側フランジ部18には、上下を貫通する貫通孔19が複数形成されている。この貫通孔19は、本体蓋部11の貫通孔15と対応する位置にそれぞれ形成されている。また、本体側壁部12の上側の外周には、互いに対向する吊り部17,17が2組形成されている。収容容器1は、この吊り部17にワイヤを接続し、クレーンによって運搬される。
本体底部13は、本体側壁部12の直径よりも大きい直径を有する円板であり、その外縁が本体側壁部12の下端に巻き込まれて、本体側壁部12と結合される。そのため、本体底部13の外径は、本体側壁部12の外径よりも大きくなっている。
この本体底部13の下面には、緩衝部材20が、本体容器10(本体底部13)とは別体で取り付け、固着されている(図1(b))。この緩衝部材20は、円環状であり、本体底部13の下面の円周に沿って、取り付けられている。緩衝部材20は、金属製であり、緩衝部材20には、例えば、ステンレス製鋼板を使用することができる。この緩衝部材20は、本体底部13に対して、溶接によって固着されている。
この本体容器10の強度は、内側容器30よりも大きく、本体容器10の降伏強度は、205MPa以上400MPa以下である。
内側容器30は、本体容器10の内部に配置され、放射性物質含有廃棄物を収容するためのものである。内側容器30は、図3(a)に示すとおり、内側蓋部31、内側側壁部32、および内側底部33を有し、内側側壁部32と内側底部33の間には、内側底部33に向かって内側容器30の内径および外径が小さくなるようにハンチ部35が形成されている。このハンチ部35は、内側容器30の内側および外側の両側とも傾斜している。
また、内側容器30の外径は、本体容器10の内径よりも小さく、内側容器30の高さは本体容器10の高さよりも低くなるように、それぞれ設計されている。
内側容器30は、円筒状の容器であり、内側容器30には、ポリマー含浸コンクリート(Polymer Impregnated Concrete)(以下、PICと記す。)又は鋼繊維補強ポリマー含浸コンクリート(Steel Fiber reinfoced Polymer Impregnated Concrete)(以下、SFPICと記す。)を使用する。
なお、内側容器30の厚さは、100mm以下に設計されている。
小蓋38には、上下を貫通する貫通孔43が複数形成されており、この貫通孔43を介して、ボルト等によって、窓部37に取り付けられる(図3(c))。
内側側壁部32の上端面には、穴34が複数形成されている(図3(d))。この穴34は、貫通孔36と対応する位置に形成されている。
また、内側容器30は、図4に示したように、鉄筋39が含まれているものを使用することもできる。この鉄筋39は、内側側壁32の内部に螺旋状に設けられ、内側底部33の内部には、網目状に設けられている。
この内側容器30の圧縮強度は、120MPa以上250MPa以下である。
充填材50は、図5(a)に示すように、本体容器10と内側容器30との間に形成される隙間に充填されるものである。充填材50は、充填材50の層の強度が、本体容器10および内側容器30よりも小さくなるものを使用し、この充填材50には、ペースト、モルタル、コンクリートの何れかを使用できる。
ここで、コンクリートとは、セメント、水、細骨材、粗骨材および必要に応じて加える混和材料を構成材料であり、これらを練り混ぜたものやその他の方法によって混合したもの、又は硬化させたものをいう。また、コンクリートのうち、粗骨材を含まないものがモルタルであり、モルタルのうち、細骨材を含まないものがペーストである。なお、細骨材とは、10mm網ふるいを全部通り、5mm網ふるいを質量で85%以上通る骨材をいう。粗骨材とは、5mm網ふるいに質量で85%以上とどまる骨材をいう。
充填材50は、本体容器10と内側容器30の間の隙間に充填された後、硬化し、層を形成する。この充填材50の層は、本体容器10と内側容器30の間に円環状に配置される。ペースト、モルタル、コンクリートの選択は、本体容器10と内側容器30の間の隙間の幅によって使い分けることができる。隙間の幅が、5cm未満の場合はペースト、5cmから10cmの場合はモルタル、10cmから30cmの場合はコンクリートをそれぞれ使用する。
また、充填材50の圧縮強度は、15MPa以上60MPa以下である。
まず、本体底部13にかさ上げ部材(図示しない)を配置し、本体容器10の内部に内側容器30を配置する(図6(a))。内側容器30の外径は、本体容器10の内径よりも小さいため、本体側壁部12と内側側壁部32の間には、隙間が形成される。また、内側容器30は、この隙間の大きさがほぼ等しくなるように、本体容器10の内部に配置されている。また、かさ上げ部材によって、本体底部13と内側底部33の間にも隙間が形成される。そのため、内側容器30の周囲全体に隙間が形成される。
本体側壁部12と内側側壁部32との間の隙間の大きさはほぼ等しいため、本体側壁部12と内側側壁部32との間の充填材50の層は、ほぼ等しい厚さとなる。一方、内側容器30の内側側壁部32と内側底部33の間には、ハンチ部35が形成されているため、ハンチ部35と、本体側壁部12および本体底部13の間付近には、充填材50が本体壁部12と内側側壁部32(あるいは、本体底部13と内側底部33)の間の隙間よりも多く充填される。そのため、ハンチ部35付近に形成される充填材50の層は、内側側壁部32と内側底部33の隙間の充填材50の層よりも厚くなる。
そして、円環状のせき止めリング40を内側蓋部31の上面に設け、せき止めリング40と本体容器10の本体側壁部12よって形成される領域に補強材41を流し込む(図7(a))。この際、補強材41は、内側蓋部31と内側側壁部32とを固定しているボルト44を覆い、本体側壁部12の上端面と同じ高さとなるように設けられ、硬化する。この補強材41には、例えば、モルタルを使用することができる。
そして、貫通孔15と貫通孔19が重なり合うように、本体蓋部11を本体側壁部12の上端にセットし、貫通孔15、19を介して、ボルトで固定する(図8(a))。補強材41は、本体側壁部32の上端面と同じ高さに設けられているため、本体蓋部11の下面と接し、本体蓋部11と内側蓋部31の間に配置される(図8(b))。
補強材41は、図9に示すように、充填材50、内側蓋部31およびボルト44の上に配置され、内側蓋部31と本体蓋部11の間の空間を埋めるように配置される。また、この補強材41は、円環状に設けられる。
放射性物質含有廃棄物が収容された収容容器1は、図8(c)に示すように、吊り部17にワイヤが取りつけられ、クレーンによって運搬される。
収容容器1は、クレーンによって運搬されている途中で、地面に落下した場合、強い衝撃を受ける。例えば、収容容器1が垂直に地面に落下した場合、まず緩衝部材20が地面から衝撃を受け、外力を吸収し、変形する。この緩衝部材20は、本体容器10とは別部材で構成されているため、緩衝部材20が外力を受けて変形しても、本体容器10は応力を受けない。そのため、衝撃により本体容器10が変形することを防止できる。また、緩衝部材20が外力を吸収すれば、内側容器30は大きな外力を受けないため、内側容器30の破損や破壊を防止でき、放射性物質含有廃棄物が内側容器30の外部に漏出することを防止できる。
また、本実施形態に係る収容容器1において、緩衝部材20は円環状のものを使用するため、緩衝部材20を本体底部13の下面全体に設けた場合と比較し、コストを削減することができる。さらに、落下により地面から受ける外力は、円環状の緩衝部材20が折れ曲がるのに使われるため、本体底部13に加わる外力が低減される。そのため、収容容器1に落下の衝撃により外力が加わったときに、本体容器1が変形することを防止できる。
このように、内側蓋部31が本体蓋部11に衝突することを防止できるため、内側蓋部31(内側容器30)が破損、破壊することを防止でき、放射性物質含有廃棄物が内側容器30の外部に漏出することを防止できる。
また、補強材41は、内側蓋部31と内側側壁部32を固定するボルト44の上に流し込まれ、硬化する。補強材41が、ボルト44上で硬化することで、ボルト44はより強固に固定される。したがって、内側蓋部31と内側側壁部32をより強固に固定され、内側蓋部31がずれたり、外れたりすることを防止でき、放射性物質含有廃棄物が内側容器30の外部に漏出することを防止できる。
そうすると、収容容器1が、例えば、本体側壁部12と本体底部13とが結合している縁部分から外力を受けた場合、ハンチ部35が形成されていない場合と比べ、充填材50はより大きな力を吸収する。
したがって、ハンチ部35を形成することで、充填材50の層を厚く形成でき、外力を吸収できるため、内側容器30に加わる外力を低減することができ、内側容器30の破損や破壊を防止することができる。
また、本実施形態では、金属製かつ円環状の緩衝部材20について説明したが、緩衝部材20は円環状に限定されず、収容容器1が衝撃を受けたときに外力を吸収し、収容容器の重量に耐えることができるものであればよい。例えば、3つの緩衝部材を本体底部13の下面の円周に沿って、等間隔に設けることもできる。
さらに、本実施形態では、補強材41は、結合部材としてのボルト44の上に設けたが、補強材41を設ける位置が本体蓋部11と内側蓋部31の間の空間であれば、内側蓋部31が上方向に移動することが規制され、内側蓋部31が破損、破壊されることを防止することができるため、設けられる位置は限定されない。
10 本体容器
11 本体蓋部
12 本体側壁部
13 本体底部
15 貫通孔
16 蓋側フランジ部
17 吊り部
18 側壁側フランジ部
19 貫通孔
20 緩衝部材
30 内側容器
31 内側蓋部
32 内側側壁部
33 内側底部
34 穴
35 ハンチ部
36 貫通孔
37 窓部
38 小蓋
39 鉄筋
40 せき止めリング(リング部材)
41 補強材
42 穴
43 貫通孔
44 ボルト(結合部材)
45 エポキシ樹脂接着剤
50 充填材
Claims (2)
- 放射性物質含有廃棄物が収容される本体容器が備えられた放射性物質含有廃棄物収容容器において、
前記本体容器の底部の下面に緩衝部材が取り付けられ、
放射性物質含有廃棄物を収容する内側容器が、前記本体容器の内部に配置され、
前記内側容器の側壁部の上端が、前記内側容器の蓋部と結合部材により結合され、
前記内側容器の蓋部の上にリング部材が配置され、
前記本体容器の蓋部と前記内側容器の蓋部との間であって、前記リング部材と前記本体容器の側壁部との間に充填された補強材が、前記結合部材を覆って硬化している、
ことを特徴とする放射性物質含有廃棄物収容容器。 - 前記内側容器の蓋部に窓部が形成され、この窓部に着脱される小蓋を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の放射性物質含有廃棄物収容容器。
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